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  • 特許-紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法 図1
  • 特許-紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法 図2
  • 特許-紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20240318BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020183240
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073322
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮 隆
(72)【発明者】
【氏名】馬場 大輔
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-074060(JP,A)
【文献】特開2002-293317(JP,A)
【文献】特開2015-199514(JP,A)
【文献】特開平02-178018(JP,A)
【文献】特開2014-234443(JP,A)
【文献】特開平03-142219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部及び底部を有し、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法であって、
紙配合樹脂層とこれよりも内側に配置されるPE系樹脂層とを含むパリソンを共押し出しする押し出し工程と、
前記パリソンを成形型で挟み潰すことで前記口部から前記肩部にかけてバリを生じさせるバリ出し工程と、
前記バリを生じさせた状態で前記パリソンを前記成形型内でブロー成形するブロー成形工程と、
前記バリ出し工程以降に成形品本体から前記バリを除去するバリ除去工程と、を有し、
前記ブロー成形工程においてブロー比が2倍以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記紙配合樹脂層が、紙成分とPPとからなる紙配合樹脂と、LDPEとのブレンド樹脂からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PE系樹脂層がLDPEまたはLLDPEからなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PE系樹脂層が植物由来樹脂からなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ブロー成形工程は、前記紙配合樹脂層よりも外側にインモールド成形によって紙ラベルを装着させるインモールド成形工程を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CO2削減、環境負荷軽減などの環境適合のために合成樹脂使用量の削減が求められている。このような要求は、口部、肩部、胴部及び底部を有するボトル状又はチューブ状などの容器の製造においても顕著である。その対策として、紙配合樹脂層を含む積層容器をブロー成形によって製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-147170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙配合樹脂層とこれよりも内側に配置されるオレフィン系樹脂層とを含むパリソンを共押し出しして成形型内で押し出しブロー成形する場合、紙配合樹脂のブロー成形時における延伸性がオレフィン系樹脂に比べ著しく乏しく、肩部から胴部にかけての周方向に顕著な延伸ムラが生じ、周方向の偏肉が著しくなり、耐久性、耐落下衝撃性、圧縮強度などに劣る積層容器が製造されてしまう場合があり、改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、肩部から胴部にかけての延伸ムラを抑制することができる、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、口部、肩部、胴部及び底部を有し、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法であって、紙配合樹脂層とこれよりも内側に配置されるPE系樹脂層とを含むパリソンを共押し出しする押し出し工程と、前記パリソンを成形型で挟み潰すことで前記口部から前記肩部にかけてバリを生じさせるバリ出し工程と、前記バリを生じさせた状態で前記パリソンを前記成形型内でブロー成形するブロー成形工程と、前記バリ出し工程以降に成形品本体から前記バリを除去するバリ除去工程と、を有し、前記ブロー成形工程においてブロー比が2倍以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、上記構成において、前記紙配合樹脂層が、紙成分とPPとからなる紙配合樹脂と、LDPEとのブレンド樹脂からなるのが好ましい。
【0009】
本発明の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、上記構成において、前記PE系樹脂層がLDPEまたはLLDPEからなるのが好ましい。
【0010】
本発明の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、上記構成において、前記PE系樹脂層が植物由来樹脂からなるのが好ましい。
【0011】
本発明の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、上記構成において、前記ブロー成形工程は、前記紙配合樹脂層よりも外側にインモールド成形によって紙ラベルを装着させるインモールド成形工程を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、肩部から胴部にかけての延伸ムラを抑制することができる、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態である、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法において、バリ出し工程を行っている時の状態を示す一部断面上面図である。
図2図1に示す状態からブロー成形工程及びバリ除去工程を経て製造された積層容器を示す側面図である。
図3】本発明の第2実施形態である、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法によって製造された積層容器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0015】
まず、図1図2を参照して本発明の第1実施形態について例示説明する。本実施形態である、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、押し出し工程、バリ出し工程(図1参照)、ブロー成形工程及びバリ除去工程を有しており、図2に示すように、口部1、肩部2、胴部3及び底部4を有し、ボトル状をなす積層容器を製造するためのものである。なお、本実施形態により製造される積層容器は、口部1、肩部2、胴部3及び底部4を有していればボトル状に限らず、例えばチューブ状をなすものであってもよい。
【0016】
なお、本明細書において、上下方向とは口部1の中心軸線Oに沿う方向を意味し、上方とは底部4から口部1に向かう方向を意味し、下方とはその反対方向を意味し、径方向とは中心軸線Oに垂直な直線に沿う方向を意味し、周方向とは中心軸線Oを周回する方向を意味している。
【0017】
口部1は、中心軸線に沿って延びる円筒状をなしている。図示は省略するが、口部1の外周面は、通常、口部1にキャップなどの部材を取り付けるためのねじ山などの凹凸部を有している。肩部2は、口部1の下端から側方に延びる部分である。胴部3は、肩部2の外周縁から下方に延びる部分である。底部4は、積層容器における口部1と反対側の末端部(下端部)である。本実施形態では、肩部2は、口部1の下端から下方に向けて拡径する円錐面状をなし、胴部3は円筒状をなしているが、これに限らない。例えば、胴部3は楕円筒状や角筒状をなしてもよいし、取っ手部などを有していてもよい。
【0018】
押し出し工程は、紙配合樹脂層6とこれよりも内側に配置されるPE系樹脂層7とを含む筒状のパリソン8を共押し出しする工程である。図2にパリソン8の形状を二点鎖線で示す。なお、パリソン8の横断面(水平断面)は真円であるが、これに限らず、例えば楕円でもよい。
【0019】
紙配合樹脂層6は、紙成分とポリオレフィン系樹脂とからなる紙配合樹脂を含むことが好ましい。このような紙配合樹脂としては、例えば、株式会社環境経営総合研究所製のMAPKA(登録商標)などが挙げられる。環境適合性と成形性との両立の観点から、紙配合樹脂に含まれる紙成分の割合は、51~60重量%であることが好ましい。紙配合樹脂は、吸湿の問題があるため、成形前に例えば80℃で6時間程度以上の乾燥を行うことが好ましい。つまり、紙配合樹脂は、成形開始時に水分率が500ppm以下程度の乾燥状態であることが好ましい。
【0020】
紙配合樹脂層6は、紙成分とPP(ポリプロピレン)とからなる紙配合樹脂と、LDPE(低密度ポリエチレン)などの柔軟性のあるオレフィン系樹脂とのブレンド樹脂からなることが好ましく、このような構成により、本実施形態のように紙配合樹脂層6よりも内側にPE(ポリエチレン)系樹脂層7を設けた場合でも周方向の延伸ムラを抑制することができる。なお、紙配合樹脂層6は、適宜、相溶性改善などの改質などを目的とする添加剤を含んでよい。環境適合性の観点から、LDPEは植物由来樹脂であることが好ましい。
【0021】
紙配合樹脂層6のMFR(メルトフローレート)は、5g/10min(230℃、2.16kg)以下であることが好ましく、より好ましくは、0.6~1.3g/10min(230℃、2.16kg)である。
【0022】
PE系樹脂層7は、LDPEまたはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)からなることが好ましく、このような構成により、周方向の延伸ムラを抑制することができる。環境適合性の観点から、PE系樹脂層7は、植物由来樹脂であるLDPEまたはLLDPEからなることがより好ましい。
【0023】
また、環境適合性の観点から、紙配合樹脂層6の厚さは、PE系樹脂層7よりも大きいことが好ましい。
【0024】
バリ出し工程は、パリソン8を成形型9で挟み潰すことで口部1から肩部2にかけてバリ5を生じさせる工程である。図2にバリ5の形状を破線と網掛けで示す。
【0025】
図1に示すように、成形型9は、パリソン8を側方から挟み込むことができる割り型で構成され、内部に容器形状に対応する形状の成形面10(キャビティ形成面)を有している。図1では成形型9はパーティングライン11を境に側方に2つの部分型9aに分割されている。成形面10は、口部1を成形する部分である口部成形面10aと、肩部2を成形する部分である肩部成形面10bと、胴部3を成形する部分である胴部成形面10cと、を含んでいる。
【0026】
図1図2に示すように、口部成形面10aは、パリソン8の外径D1よりも小さい外径D2を有する。なお、本実施形態では口部成形面10aはパリソン8と同軸に配置されているが、口部成形面10aをパリソン8に対して偏心させて配置してもよい。
【0027】
口部成形面10aと肩部成形面10bとは、パーティングライン11に沿って、口部成形面10aから肩部成形面10bにかけて延びる隙間で構成される逃げ部12を有している。パリソン8を口部成形面10aと肩部成形面10bとで挟み潰すことで、パリソン8の一部を逃げ部12内に逃がし、バリ5とすることができる。つまり、逃げ部12は、パリソン8を成形型9で挟み潰すことで口部1から肩部2にかけてバリ5を生じさせる隙間である。本実施形態では、逃げ部12は、口部成形面10aの上端から肩部成形面10bの径方向中間部までに跨る部分に設けられている。
【0028】
逃げ部12は、中心軸線Oを挟んで互いに対向する2つの部分12aで構成されている。これに対応し、バリ5は、中心軸線Oを挟んで互いに対向する2つの部分5aで構成されている。なお、成形型9を側方に3つの部分型9aに分割した構成とし、逃げ部12を3つの部分12aで構成し、それにより、バリ5を3つの部分5aで構成してもよい。
【0029】
ブロー成形工程は、バリ5を生じさせた状態でパリソン8を成形型9内でブロー成形する工程である。
【0030】
ブロー成形工程では、バリ5を生じさせた状態でパリソン8をブロー成形することにより、延伸材料の周方向の膨張を抑制することができ、肩部2から胴部3にかけての周方向に生じる延伸ムラを抑制することができる。
【0031】
このような延伸ムラの抑制効果をより確実に得るためには、ブロー成形工程におけるブロー比を2倍以下とすることが好ましい。つまり、円筒状のパリソン8から円筒状の胴部3を形成する場合、胴部3の最大外径D3はパリソンの外径D1の2倍以下とすることが好ましい。
【0032】
バリ除去工程は、バリ出し工程以降に成形品本体からバリ5を除去する工程である。バリ除去工程は、バリ出し工程と同時に行ってもよい。例えば、バリ除去工程は、成形型9の逃げ部12の基端部に設けられた刃(図示省略)によって型締めと同時に成形品本体からバリ5を切り離す工程であってもよい。また、バリ除去工程は、ブロー成形工程の後に行ってもよい。例えば、バリ除去工程は、成形型9から成形品を取り出した後に成形品本体からバリ5を除去する工程であってもよい。
【0033】
バリ5の除去は、成形型9の型開き前に成形型9内で行ってもよいし、型開き後に成形型9の外部で行ってもよい。押し出し工程、バリ出し工程、ブロー成形工程及びバリ除去工程を経ることにより、積層容器を得ることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、口部1から肩部2にかけてバリ5を生じさせた状態でパリソン8をブロー成形することにより、肩部2から胴部3にかけての周方向に生じる延伸ムラを抑制し、その結果、肩部2から胴部3にかけて周方向の偏肉が抑制された、優れた耐久性、耐落下衝撃性、圧縮強度などを有する、紙配合樹脂層6を含む積層容器を得ることができる。
【0035】
なお、本実施形態では、口部1の上端から肩部2の径方向中間部までに跨る部分にバリ5を生じさせているが、バリ5を生じさせる範囲(つまり逃げ部12を設ける範囲)は、口部1から肩部2にかけての範囲であれば、パリソン8の材質や容器形状などに応じて適宜設定することができる。
【0036】
次に、図3を参照して本発明の第2実施形態について例示説明する。本実施形態である、紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、ブロー成形工程が、紙配合樹脂層6よりも外側にインモールド成形によって紙ラベル13を装着させるインモールド成形工程を含む点のみにおいて、第1実施形態と相違している。なお、図3において、第1実施形態の要素に対応する要素に同一の符号を付している。
【0037】
紙ラベル13の装着は、ラベル内側に接着層を設けることで行ってもよいし、例えば特許6120755号に記載されるように、ラベル端部と胴部表面との絡み合いにより行ってもよい。また、紙ラベル13の接着性を高めるために、紙配合樹脂層6と紙ラベル13との間に、PE系樹脂層などの他の樹脂層を設けてもよい。
【0038】
本実施形態のように、紙ラベル13を設けることにより、容器全体としての紙比率を高め、環境適合性を高めることができる。また、胴部3の剛性が大きくなるため、流通過程において潰れにくくなり、合成樹脂使用量を減らすことができる。また、容器が紙として廃棄可能になる51重量%以上の紙比率の達成をより容易にすることができる。
【0039】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0040】
したがって、前記実施形態の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0041】
前記実施形態の紙配合樹脂層を含む積層容器の製造方法は、口部1、肩部2、胴部3及び底部4を有し、紙配合樹脂層6を含む積層容器の製造方法であって、紙配合樹脂層6とこれよりも内側に配置されるPE系樹脂層7とを含むパリソン8を共押し出しする押し出し工程と、パリソン8を成形型9で挟み潰すことで口部1から肩部2にかけてバリ5を生じさせるバリ出し工程と、バリ5を生じさせた状態でパリソン8を成形型9内でブロー成形するブロー成形工程と、バリ出し工程以降に成形品本体からバリ5を除去するバリ除去工程と、を有する限り、種々変更可能である。
【0042】
しかし、ブロー成形工程においてブロー比は2倍以下であるのが好ましい。
【0043】
また、紙配合樹脂層6は、紙成分とPPとからなる紙配合樹脂と、LDPE等の柔軟性のあるオレフィン系樹脂とのブレンド樹脂からなるのが好ましい。
【0044】
また、PE系樹脂層7はLDPEまたはLLDPEからなるのが好ましい。
【0045】
また、PE系樹脂層7は植物由来樹脂からなるのが好ましい。
【0046】
また、ブロー成形工程は、紙配合樹脂層6よりも外側にインモールド成形によって紙ラベル13を装着させるインモールド成形工程を含むのが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 口部
2 肩部
3 胴部
4 底部
5 バリ
5a バリの部分
6 紙配合樹脂層
7 PE系樹脂層
8 パリソン
9 成形型
9a 部分型
10 成形面
10a 口部成形面
10b 肩部成形面
10c 胴部成形面
11 パーティングライン
12 逃げ部
12a 逃げ部の部分
13 紙ラベル
D1 パリソンの外径
D2 口部成形面の外径
D3 胴部の最大外径
図1
図2
図3