(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】リアクタ及び室外機
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240318BHJP
F24F 1/22 20110101ALI20240318BHJP
F24F 1/24 20110101ALI20240318BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20240318BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H01F37/00 M
F24F1/22
F24F1/24
H01F27/22
H01F27/24 P
(21)【出願番号】P 2018041820
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】足立 直也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純一
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤一
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩田 淳
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-218002(JP,A)
【文献】特開2008-121966(JP,A)
【文献】特開2016-127109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F37/00
H01F27/22-27/24
F24F1/22-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を巻き回してなるコイルと、
該コイルが組み込まれる第1のコアと、
該第1のコアに対向配置され、前記第1のコアよりも発熱が少ない第2のコアと、
前記第2のコアが固定されるベースプレートと、
を備え
、内部に電装部品が収容設置されるコントロールボックスの外表面に対して前記ベースプレートを介して固定されることを特徴とするリアクタ。
【請求項2】
前記第1のコアはEコアであり、前記第2のコアはIコアであることを特徴とする請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
前記コントロールボックスと、
該コントロールボックスの
前記外表面に対して前記ベースプレートを介して固定された請求項1又は請求項2に記載のリアクタと、
を備えることを特徴とする室外機。
【請求項4】
前記第1のコアには、冷却機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気調和機、特にはパッケージエアコンに用いられるリアクタ、及びこのリアクタを用いた室外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の室外機においては、電装品モジュールにリアクタが配設される(例えば特許文献1)。このような室外機に使用されるリアクタは通常はコア及び巻線により構成されており、コアは、一般的に特許文献2に示されるようなE型状のコアとI型状のコアとにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-175224号公報
【文献】特開平8-148353号公報(特許第2652525号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、リアクタを室外機のコントロールボックスに配置する際、リアクタから発生する熱が問題となっていた。ここで、
図3~
図5を示してリアクタから発生する熱により生じる問題についてより詳しく説明する。
図4は参考例としての室外機における内部の部分構成の一例を示す正面図である。室外機101は、内部に電装部品が収容設置されるコントロールボックス(板金)120と、コントロールボックス120内に設置されたリアクタ110と、を備えている。リアクタ110は、巻線111を巻き回してなるコイル112と、コイル112が組み込まれる第1のコア113と、第1のコア113に対向配置され、第1のコア113よりも発熱が少ない第2のコア114と、ベースプレート115と、を備える。
【0005】
ここで、
図3を示して第1のコア113及び第2のコア114の構成についてより詳しく説明する。
図3はリアクタ110を示す正面図である。
図3に示すように、リアクタ110において、第1のコア113はE字型形状をしたEコアであり、第2のコア114はI字型形状をしたIコアである。第1のコア113においては、基部116の中央部分にコイル112を嵌挿装着させる中央脚部117が形成されている。また、基部116の両端部には、中央脚部117と平行にかつ中央脚部117の長さよりも少し長い外脚部118a,118bが形成されている。
【0006】
外脚部118a,118bの第2のコア114側の面は第2のコア114と直接接触しており、第2のコア114の中央部においては第1のコア113との間にエアギャップ119が生じる。また、基部116のベースプレート115側の面はベースプレート115に溶接で固定されている。
図4に示すように、リアクタ110はベースプレート115を介してコントロールボックス120内に固定設置されている。
【0007】
このような室外機101において、リアクタ110には大電流が流れるため発熱が伴う(
図4中の波線の矢印参照)。また、第1のコア113と第2のコア114とを比較すると、上記のエアギャップ119の存在により、第1のコア113の方が磁束密度は高くなる。従って、損失密度が高くなるため、第1のコア113は温度が上がりやすい傾向にある。特に、第1のコア113においては、基部116で最も発熱を伴う(
図4中の網目状の模様で示した部分)。そこで、
図4に示すように、熱対策として第1のコア113の基部116をベースプレート115に溶接固定し、ベースプレート115をコントロールボックス120内に固定している。これにより、第1のコア113で発生する熱をベースプレート115、コントロールボックス120の順に伝え、そしてコントロールボックス120の外部に熱を放出させている。
【0008】
リアクタ110はコントローラ構成に必要な部品であるため、コントローラASSY(Assembly)内に組み込まれる。この際、第1のコア113で発生する熱をコントロールボックス120外に放出させるため、例えば
図4のように、リアクタ110はコントロールボックス120の内部に実装されることが多い。しかし、最も発熱を伴う基部116をベースプレート115に固定しているため、固定部が発熱の影響で劣化することが課題となっていた。また、巻線111等で発生する熱がコントロールボックス120内に籠るという問題もあった。
【0009】
そこで、
図5の室外機101’に示すように、リアクタ110をコントロールボックス120の外表面に対してベースプレート115を介して固定する手法が報告されている。しかしながら、
図5のようにリアクタ110をコントロールボックス120の外表面に設置しても、依然として基部116はベースプレート115に固定されている。従って、第1のコア113で発生する熱は固定部やコントロールボックス120内に伝わってしまう。このように、固定部の劣化抑制の根本的な解決法は現状報告されていなかった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、固定部の劣化を抑制することができるリアクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、巻線を巻き回してなるコイルと、該コイルが組み込まれる第1のコアと、該第1のコアに対向配置され、前記第1のコアよりも発熱が少ない第2のコアと、前記第2のコアが固定されるベースプレートと、を備え、内部に電装部品が収容設置されるコントロールボックスの外表面に対して前記ベースプレートを介して固定されるリアクタを提供する。
【0012】
本発明のリアクタにおいては、発熱が少ない第2のコアがベースプレートに固定されている。一般的に、発熱が多い第1のコアがベースプレートに固定されるが、第1のコアをベースプレートに固定すると、第1のコアから直接熱が固定部に伝わるため、固定部が劣化する恐れがある。一方、本発明のように発熱が少ない第2のコアをベースプレートに固定すれば、第1のコアからの発熱が固定部に伝わりにくくなるため、固定部の劣化を抑制することができる。
【0013】
前記リアクタにおいて、前記第1のコアはEコアであり、前記第2のコアはIコアであることが好ましい。
【0014】
第1のコアがEコアであり、第2のコアがIコアである場合、第2のコア(Iコア)の中央部においては第1のコア(Eコア)との間にエアギャップがあるため、Eコアの方が磁束密度は高くなる。従って、損失密度が高くなるため、Eコアは温度が上がりやすい傾向にある。一方、本発明のリアクタにおいては、発熱が少ないIコアがベースプレートに固定されており、発熱が比較的多くなるEコアからの熱は固定部に伝わりにくいため、Eコアの発熱による固定部の劣化を優位に抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記コントロールボックスと、該コントロールボックスの外表面に対して前記ベースプレートを介して固定された上述のリアクタと、を備える室外機を提供する。
【0016】
本発明の室外機においては、リアクタがコントロールボックスの外部に配置されているため、リアクタの巻線等から発生する熱がコントロールボックス内に籠る恐れが少ない。また、コントロールボックスの外部において、リアクタは第2のコアが固定されたベースプレートを介して固定されている。即ち、発熱の多い第1のコアはコントロールボックスから最も離れた位置に配置されている。従って、第1のコアから発生する熱は第2のコア及びベースプレートを介さなければコントロールボックスには到達しないため、熱がコントロールボックスに伝わりにくい。これにより、リアクタからのコントロールボックスへの熱の影響を最小限とすることができ、コントロールボックス内の熱設計が容易となる。また、発熱の多い第1のコアが外部に曝されていることで、空冷により第1のコアを冷却することができる。
【0017】
前記室外機において、前記第1のコアには、冷却機構が設けられていることが好ましい。
【0018】
第1のコアに冷媒配管等から構成される冷却機構が設けられていれば、第1のコア(及びリアクタ全体)の放熱性を向上させることができる。これにより、リアクタの小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリアクタであれば、発熱が少ない第2のコアがベースプレートに固定されており、第1のコアからの発熱が固定部に伝わりにくくなるため、固定部の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る室外機における内部の部分構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る室外機における内部の部分構成を示す正面図である。
【
図4】参考例としての室外機における内部の部分構成の一例を示す正面図である。
【
図5】参考例としての室外機における内部の部分構成の別の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るリアクタ及び室外機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る室外機における内部の部分構成を示す正面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る室外機1は、内部に電装部品が収容設置されるコントロールボックス(板金)20と、コントロールボックス20の外表面に対して固定されたリアクタ10と、を備えている。また、コントロールボックス20の上部には、リアクタ10を覆うように天井部21が設けられている。リアクタ10は、巻線11を巻き回してなるコイル12と、コイル12が組み込まれる第1のコア13と、第1のコア13に対向配置され、第1のコア13よりも発熱が少ない第2のコア14と、ベースプレート15と、を備える。
【0024】
ここで、第1のコア13はE字型形状をしたEコアであり、第2のコア14はI字型形状をしたIコアである。第1のコア13においては、基部16の中央部分にコイル12を嵌挿装着させる中央脚部17が形成されている。また、基部16の両端部には、中央脚部17と平行にかつ中央脚部17の長さよりも少し長い外脚部18a,18bが形成されている。外脚部18a,18bの第2のコア14側の面は第2のコア14と直接接触している。
【0025】
第2のコア14のベースプレート15側の面はベースプレート15に溶接で固定されており、リアクタ10はベースプレート15を介してコントロールボックス20の外表面に対して固定設置されている。
【0026】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記したように、本実施形態のリアクタ10においては、発熱が少ない第2のコア14がベースプレート15に固定されている。一般的に、発熱が多い第1のコア13がベースプレート15に固定されるが、第1のコア13をベースプレート15に固定すると、第1のコア13から直接熱が固定部に伝わるため、固定部が劣化する恐れがある。一方、本実施形態のように発熱が少ない第2のコア14をベースプレート15に固定すれば、第1のコア13からの発熱が固定部に伝わりにくくなるため、固定部の劣化を抑制することができる。
【0027】
また、第1のコア13がEコアであり、第2のコア14がIコアである場合、第2のコア(Iコア)14の中央部においては第1のコア(Eコア)13との間にエアギャップがあるため、Eコア13の方が磁束密度は高くなる。従って、損失密度が高くなるため、Eコア13は温度が上がりやすい傾向にある。一方、本実施形態のリアクタ10においては、発熱が少ないIコア14がベースプレート15に固定されている。従って、発熱が比較的多くなるEコア13(特に
図1中の網目状の模様で示した基部16)からの熱は固定部に伝わりにくいため、Eコア13の発熱による固定部の劣化を優位に抑制することが可能となる。
【0028】
本実施形態の室外機1においては、リアクタ10がコントロールボックス20の外部に配置されているため、リアクタ10の巻線11等から発生する熱がコントロールボックス20内に籠る恐れが少ない。また、コントロールボックス20の外部において、リアクタ10は第2のコア14が固定されたベースプレート15を介して固定されている。即ち、発熱の多い第1のコア13はコントロールボックス20から最も離れた位置に配置されている。従って、第1のコア13から発生する熱は第2のコア14及びベースプレート15を介さなければコントロールボックス20には到達しないため、熱がコントロールボックス20に伝わりにくい(
図1中の波線の矢印参照)。これにより、リアクタ10からのコントロールボックス20への熱の影響を最小限とすることができ、コントロールボックス20内の熱設計が容易となる。また、発熱の多い第1のコア13が外部に曝されていることで、空冷により第1のコア13を冷却することができる。
【0029】
また、本実施形態の室外機1においては、コントロールボックス20の上部にリアクタ10(特にリアクタ10の外脚部18a側の面)を覆うように天井部21が設けられている。このため、例えば雨天時においては、上方から降り注ぐ雨水が天井部21に当たるため、天井部21によってリアクタ10を防水することができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、
図2を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は、第1実施形態と基本的に同様であるが、第1実施形態とは、第1のコア13の基部16に冷却機構22が設けられている点が異なっている。よって、本実施形態においては、この異なっている部分を説明し、その他の重複するものについては説明を省略する。
なお、第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0031】
図2は本実施形態に係る室外機1’における内部の部分構成を示す正面図である。
図2に示すように、第1のコア13の基部16における、コントロールボックス20とは反対側の面には冷却機構22が設けられている。この冷却機構22は冷媒配管から構成されている。
【0032】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記したように、第1のコア13に冷媒配管等から構成される冷却機構22が設けられていれば、第1のコア13(及びリアクタ10全体)の放熱性を向上させることができる。これにより、リアクタ10の小型化が可能となる。
【0033】
なお、冷却機構22の設置位置は、上記の第1のコア13の基部16に限定されず、例えば第1のコア13の外脚部18a,18b等であってもよい。
【0034】
また、以上に説明した2つの実施形態では、第1のコア13がEコアであり、第2のコア14がIコアである場合を例として説明したが、第1のコア13及び第2のコア14の形状はこれに限定されない。例えば、第1のコア13や第2のコア14は、U字型状のUコアであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,1’ 室外機
10 リアクタ
11 巻線
12 コイル
13 第1のコア(Eコア)
14 第2のコア(Iコア)
15 ベースプレート
16 基部
17 中央脚部
18a,18b 外脚部
20 コントロールボックス(板金)
21 天井部
22 冷却機構