(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】製造偏差に応じた製造プランの動的修正
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240318BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B23P21/00 307Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018113576
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カピラ, ヴィヴェック
(72)【発明者】
【氏名】ドゥスタート, スティーヴン
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】大山 健
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-297753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の工作機械(150)を使用するアセンブリの製造において使用可能な、コンピュータで実装される方法(200)であって、
該方法(200)は、
前記アセンブリのための事前決定された製造プラン(120)を読み出すこと(205)であって、前記事前決定された製造プランが、前記第1の工作機械を使用する複数の工程(175)を含む、読み出すこと(205)と、
前記事前決定された製造プランからの製造偏差を確認するために、入力データを取得すること(225)と、
前記製造偏差を確認することに応じて、前記事前決定された製造プランの前記複数の工程のうちの一又は複数を一又は複数の代替工程(145)で代替することによって、前記アセンブリのための修正後の製造プラン(140)を決定すること(245)と、
前記第1の工作機械に、前記修正後の製造プランの前記一又は複数の代替工程に対応する指令を送信すること(255)と
を含み、
前記事前決定された製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの第1の分布(405、500、600)に対応し、前記第1の分布が、前記被加工物の事前決定された場所における実質的に恒久的なファスナを含み、
前記修正後の製造プランは、前記被加工物に取り付けられる複数のファスナの、別の第2の分布(410、505、615、625)に対応し、前記第2の分布が、前記事前決定された場所における一時的ファスナを含む、方法(200)。
【請求項2】
前記第1の工作機械を使用する前記複数の工程が、被加工物に複数のファスナを取り付けることを含み、
前記複数のファスナの個々のファスナの取り付けが、前記複数の工程のうちの第1工程に対応し、前記第1工程が複数の既定のステップを含み、
前記複数の既定のステップの全てよりも少ない数のステップを含む第1の代替工程が、前記第1工程を代替する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の既定のステップが、前記被加工物に前記個々のファスナのためのパイロット穴を穿孔すること、前記被加工物の前記個々のファスナのための場所に、一時的ファスナを付加すること、前記一時的ファスナをドリルアウトすること、前記被加工物に恒久的ファスナを取り付けること、及び、前記恒久的ファスナにカラーを取り付けることのうちの、2つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記入力データが、前記アセンブリを対象とするセンサ(165)から取得されたセンサデータ(170)と、オペレータ入力データ(160)との一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記製造偏差の種類(426)と、前記アセンブリにおける前記製造偏差の場所(424)とを特定する識別コード(422)を生成することと、
前記識別コードを使用して、偏差マップ(135)を更新すること(235)と、
前記偏差マップを使用して、前記一又は複数の代替工程を決定することと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記製造偏差が、前記事前決定された製造プランによって指定された部品が入手不可であることと、前記事前決定された製造プランによって指定されていない場所に取り付けられた部品とのうちの一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記一又は複数の代替工程を決定するために、既定の修正規則(127)を適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記事前決定された製造プランの前記複数の工程が、前記アセンブリにおける複数の場所で同一の工程を実施することに対応し、
前記修正後の製造プランを決定することが、前記複数の場所の全てよりも少ない数の場所で、前記同一の工程を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記同一の工程が、被加工物に穴を形成するための穿孔工程を含み、
前記事前決定された製造プランにより、前記被加工物に形成された複数の穴の全検査が可能になり、
前記修正後の製造プランにより、前記複数の穴のランダムな部分検査が可能になる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
システム(100)であって、
該システム(100)は、
少なくとも第1の工作機械(150)、及び、
前記第1の工作機械に通信可能に連結された一又は複数のコンピュータプロセッサ(110)
を備え、前記一又は複数のコンピュータプロセッサ(110)は、
前記第1の工作機械に、製造されるアセンブリのための複数の工程(175)を含む事前決定された製造プラン(120)に対応する第1指令を送信すること(215)と、
前記事前決定された製造プランからの製造偏差の場所を特定する場所情報(424)を受信することに応じて、偏差マップ(135)を更新すること(235)と、
前記偏差マップを使用して、前記事前決定された製造プランの前記複数の工程のうちの一又は複数を代替する一又は複数の代替工程(145)を有する、修正後の製造プラン(140)を決定すること(245)と、
前記第1の工作機械又は第2の工作機械に、前記一又は複数の代替工程を含む第2指令を送信すること(255)とを、行うよう設定されており、
前記事前決定された製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの第1の分布(405、500、600)に対応し、前記第1の分布が、前記被加工物の事前決定された場所における実質的に恒久的なファスナを含み、
前記修正後の製造プランは、前記被加工物に取り付けられる複数のファスナの、別の第2の分布(410、505、615、625)に対応し、前記第2の分布が、前記事前決定された場所における一時的ファスナを含む、システム(100)。
【請求項11】
前記事前決定された製造プランの前記複数の工程が、前記アセンブリにおける複数の場所で同一の工程を実施することに対応し、
前記修正後の製造プランを決定することが、前記複数の場所の全てよりも少ない数の場所で、前記同一の工程を実施することを含む、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は概して製造に関し、より具体的には、製造偏差に応じて製造プランを動的に修正するための技法に関する。部分的又は全体的に自動化された製造プロセスは、航空宇宙業界及び自動車業界などの多数の業界において、一般的になってきている。このような製造プロセスは、相対的に複雑になることがあり、複数の段階のシーケンスとして配置されうる、複数の工作機械(machine tool)による工程を要することが多い。かかる工程のシーケンスにおいて、個々の工程は、過去の工程の結果に大いに依存する。この依存は、特定の工程を実施する前にアセンブリの一又は複数の予想特性について述べる「アセンブリ条件(condition of assembly)」であると説明されうる。
【0002】
部品が入手不可であることやオペレータによるエラーなどといった数多くの理由によって、アセンブリ条件により規定される特性からの偏差が発生することがある。場合によっては、このような製造偏差に適応することにより、製造プランの見直し及び/又は自動工作機械の再プログラミングが必要になることがあるが、それによって、労働力の点でコストがかさみ、生産量が低減しうる。更に、かかる見直しはいつでも実行可能というわけではなく、その代わりに、製造プランは、運営管理制御を通じて(例えば、オペレータに指令を伝える回状(memorandum)を使用して)見直されることもある。
【0003】
製造偏差にいかように適応しようとも、結果として生じる製造プロセスは準最適にとどまりうる。一例では、見直し後の製造プランが、例えば、他の下流工程における更なる修正の実施を要することによって、製造プロセスに非効率性を取り込みうる。別の例では、見直し後の製造プランは、オペレータエラー及び/又は器材エラーの発生可能性の増大といったリスクを増大させうる。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態は、少なくとも第1の工作機械を使用するアセンブリの製造において使用可能な、コンピュータで実装される方法を提供する。この方法は、アセンブリのための事前決定された製造プランを読み出すことであって、この事前決定された製造プランが、第1工作機械を使用する複数の工程を含む、読み出すことを含む。方法は、事前決定された製造プランからの製造偏差を確認するために、入力データを取得することを更に含む。方法は、製造偏差を確認することに応じて、事前決定された製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を一又は複数の代替工程で代替することによって、アセンブリのための修正後の製造プランを決定することを更に含む。方法は、第1工作機械に、修正後の製造プランの一又は複数の代替工程に対応する指令を送信することを更に含む。
【0005】
別の実施形態は、複数の工作機械を使用するアセンブリの製造において使用可能な、コンピュータで実装される方法を提供する。この方法は、複数の工作機械のうちの第1工作機械に、アセンブリのための事前決定された製造プランであって、複数の工程を含む事前決定された製造プランに対応する第1指令を送信することを含む。方法は、製造プランからの製造偏差の場所を特定する場所情報を受信することに応じて、偏差マップを更新することを更に含む。方法は、偏差マップを使用して、事前決定された製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を代替する一又は複数の代替工程を有する、修正後の製造プランを決定することを更に含む。方法は、複数の工作機械のうちの第1工作機械又は第2工作機械に、一又は複数の代替工程を含む第2指令を送信することを更に含む。
【0006】
別の実施形態は、少なくとも第1の工作機械と、第1工作機械に通信可能に連結された一又は複数のコンピュータプロセッサとを備える、システムを提供する。この一又は複数のコンピュータプロセッサは、第1工作機械に、製造されるアセンブリのための事前決定された製造プランであって、複数の工程を含む事前決定された製造プランに対応する、第1指令を送信するよう設定される。一又は複数のコンピュータプロセッサは、製造プランからの製造偏差の場所を特定する場所情報を受信することに応じて、偏差マップを更新するよう、更に設定される。一又は複数のコンピュータプロセッサは、偏差マップを使用して、事前決定された製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を代替する一又は複数の代替工程を有する、修正後の製造プランを決定するよう、更に設定される。一又は複数のコンピュータプロセッサは、第1工作機械又は第2工作機械に、一又は複数の代替工程を含む第2指令を送信するよう、更に設定される。
【0007】
前述の特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において単独で実現可能であるか、又は、更に別の実施形態において組み合わされうる。実施形態についての更なる詳細事項は、下記の説明及び図面を参照することによって理解しうる。
【0008】
本開示の上述の特徴を詳しく理解しうるように、上記で簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、実施形態の一部は付随する図面に示されている。しかし、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることから、付随する図面はこの開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】一実施形態による、製造プランを修正するための例示的なシステムを示す。
【
図1B】一実施形態による、製造プランを修正するための例示的なシステムを示す。
【
図2】一実施形態による、少なくとも第1の自動工作機械を使用するアセンブリの製造において使用可能な、例示的な方法である。
【
図3】一実施形態による、アセンブリにファスナを取り付けるための工程の例示的なシーケンスを示す。
【
図4】一実施形態による、偏差マップを使用して作成された修正後の製造プランを示す。
【
図5】一実施形態による、製造中のアセンブリの部分検査を可能にする修正後の製造プランを示す。
【
図6】一実施形態による、アセンブリにおけるファスナの予想分布に基づく修正後の製造プランを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに、同一の参照番号を使用した。一実施形態で開示されている要素は、特段の記載がなくとも、他の実施形態でも有益に利用されうると想定される。本書で言及されている図は、特に記載がない限り、縮尺どおりに描かれていると理解すべきではない。また、わかりやすく提示し、解説するために、多くの場合、図面は単純化されており、詳細事項や構成要素が省略されている。図面及び説明は、以下に記載している原理を明らかにする役割を果たしており、そこでは、同様の記号表示は同様の構成要素を表わす。
【0011】
本書で開示されている技法により、コンピュータベースのシステムは、事前決定された製造プランの一又は複数の工程を一又は複数の代替工程で代替することによって、製造偏差に適応しうる。このコンピュータベースのシステムは、事前決定された製造プランからの製造偏差が発生したことを確認するために、(例えばセンサデータ及び/又はオペレータ入力データから、)入力データを取得しうる。コンピュータベースのシステムは、製造偏差に応じて、一又は複数の代替工程を含む、修正後の製造プランを決定しうる。
【0012】
図1を参照するに、製造プランを修正するための例示的なシステム100は、複数の工作機械150-1、150-2、…150-K(概括的に工作機械150と称される)、複数のワークステーション155-1、155-2、…155-K(概括的にワークステーション155と称される)、及び、一又は複数のセンサ165に通信可能に連結されている、演算デバイス105を備える。個別の工作機械150は、分離されていることも、又は、一又は複数の他の工作機械150と共に単一のセルに統合されていることもある。各工作機械150は、部分的又は全体的に自動化されていることがあり、つまり、少なくとも部分的に、作業人員と関係なく製造工程(複数可)を実施することが可能でありうる。一部の実施形態では、各工作機械150は、コンピュータ数値制御(CNC)を介して制御される。航空宇宙関連又は自動車関連の製造に関しては、工作機械150の一部の非限定的な例は、穿孔用工作機械、溶接用工作機械、リベット結合用工作機械などを含む。しかし、本書に記載の技法は、レーザ又はプラズマによる切断ツール、曲げツール、穴あけツール、配索用ツール、ソーイングツールなどといった、他の任意の好適な種類(複数可)の工作機械にも適用されうる。
【0013】
各ワークステーション155は、関連する工作機械によって実施される製造工程(複数可)に関する情報を表示するよう設定されている、演算デバイスとして実装されうる。各ワークステーション155は、例えば人間-機械インタフェース(HMI)を使用して、製造工程(複数可)に関連するオペレータからオペレータ入力データ160を受信するよう、更に設定されうる。例えば、ワークステーション155に対するオペレータ入力データ160により、対応する工作機械150によって実施されている自動製造工程が一時停止又は停止して、オペレータの介入が可能になりうる。更に、工作機械150及びワークステーション155は1:1の比率で対応するように図示されているが、その他の配置も可能である。例えば、特定の工作機械150は対応するワークステーション155を有さないことがあり、1つのワークステーション155が複数の工作機械150に対応することもある、等である。
【0014】
一又は複数のセンサ165は通常、一又は複数の工作機械150、及び/又は、一又は複数の工作機械150を使用して製造中のアセンブリ(若しくはサブアセンブリ)を対象とする。一又は複数のセンサ165は、(例えばアセンブリ条件(COA)情報130として)アセンブリ条件及び/又は工作機械150の条件を表示する演算デバイス105に、センサデータ170を提供するよう構成される。一又は複数のセンサ165は、光センサ、近接センサ、熱センサなどといった、任意の好適な種類(複数可)のものを有しうる。例えば、光センサは、アセンブリを含む画像を取得するために使用されてよく、演算デバイス105が、COA情報130を決定するために、取得された画像に一又は複数の画像解析工程を実施する。COA情報130及び/又は工作機械150の条件は、製造プラン120がプラン修正モジュール125によって修正されるべきか否かを判定するために使用されうる。
【0015】
演算デバイス105は、任意の好適な形態で具現化されうる。一実施形態では、演算デバイスは、ワークステーション155に通信可能に連結されているプログラムサーバである。演算デバイス105は、一又は複数のコンピュータプロセッサ110と、メモリ115とを備える。一又は複数のコンピュータプロセッサ110は通常、本書に記載の様々な機能を実施 することが可能な、任意の処理素子を含む。一又は複数のコンピュータプロセッサ110は、演算デバイス105における単一素子として図示されているが、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、マルチコアを有する一又は複数のプロセッサ、並びにそれらの組み合わせを表すことが意図されている。メモリ115は、相対性能又はその他の能力(揮発性及び/又は不揮発性の媒体であるか、着脱式及び/又は非着脱式の媒体であるか、など)に関して選択された、多種多様なコンピュータ可読媒体を含みうる。メモリ115は、キャッシュ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶装置などを含みうる。メモリ115に含まれる記憶装置は、典型的には、演算デバイス105向けの不揮発性メモリを提供し、かつ、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、固体ドライブ、光記憶デバイス、及び/又は磁気記憶デバイスなどの、一又は複数の種々の記憶素子を含みうる。
【0016】
メモリ115は、複数の事前決定された製造プラン120-1、…120-N(概括的に製造プラン120と称される)を記憶し、事前決定された製造プランの各々は、一又は複数の工作機械150を使用して対応するアセンブリ(又はサブアセンブリ)を製造するために、使用されうる。具体的には、各製造プラン120は、アセンブリ又はサブアセンブリを製造するために一又は複数の工作機械150に通信される、複数の工程175-1、175-2、…175-P(概括的に工程175と称される)を含む。各工程175-1、175-2、…175-Pは、対応する工程175を実施する前に満たされるべき一又は複数の前提条件を規定する、それぞれのCOA180-1、…180-P(概括的にCOA180と称される)に対応する。一部の実施形態では、特定の工程175は、例えばCOA情報130を使用して、対応するCOA180が検証されなければ、進行しない。
【0017】
各製造プラン120はコンピュータ支援型製造(CAM)ソフトウェアを使用して作成されてよく、演算デバイス105及び/又はワークステーション155が、製造プラン120の工程175を、工作機械150による実行に適した機械コマンドに変換する。機械コマンドは、Gコード(「RS-274」とも称される)指令、拡張可能マークアップ言語(XML)、及び/又は、独自の数値制御(NC)プログラミング言語指令などの、任意の好適なフォーマットを有しうる。この様態では、複数の工作機械150は、色々な種類のアセンブリであって、それらに基づいて製造プラン120が選択されている、アセンブリを製造するよう、再構成されうる。
【0018】
メモリ115は、特定の製造プラン120から修正された製造プラン140を作成するよう設定されている、プラン修正モジュール125を更に備える。上述のように、プラン修正モジュール125は、アセンブリ条件(COA)情報130及び/又は工作機械150の条件を示すセンサデータ170などの、取得された入力データに応じて、修正後の製造プラン140を作成しうる。一部の実施形態では、演算デバイス105は、特定の工程175に関してCOA情報130がCOA180に合致しない場合に、製造偏差が発生したと判定する。あるいは、入力データは、オペレータ入力データ160として提供されうる。一例では、アセンブリの製造中にそれを視覚的に検査しているオペレータが、ワークステーション155を介して、製造プラン120からの製造偏差の存在を示すオペレータ入力データ160を提供しうる。別の例では、工作機械150の条件が、工作機械150が製造プラン120の一又は複数の工程175を完遂できないようなものになる。更に別の例では、製造プラン120によって指定された部品が入手不可であることを示す入力データを使用して、製造偏差が確認されうる。
【0019】
製造プラン120からの製造偏差が発生したことを入力データが示すと、プラン修正モジュール125は、製造プラン120の複数の工程175のうちの一又は複数を一又は複数の代替工程145で代替することによって、修正後の製造プラン140を作成する。一部の実施形態では、特定の工程175は、一又は複数の工作機械150によって実施される複数の既定のステップを含み、代替工程145は、この複数の既定のステップの全てよりも少ない数のステップを含む。換言すると、代替工程145では、工程175に含まれていた一又は複数のステップが省略されうる。他の実施形態では、代替工程145は、工程175のステップから改変されている、一又は複数のステップを含みうる。場合によっては、代替工程145は、元々の工程175には含まれない、一又は複数の他のステップを更に含みうる。
【0020】
一部の実施形態では、プラン修正モジュール125は、工程175からの代替工程145を決定する際に、一又は複数の事前決定された修正規則127にアクセスする。修正規則127は、任意の好適な、製造及び/又は安全をベースとした考察を反映しうる。修正規則127は、オペレータ入力データ160であると指定されうるが、これは必要条件ではない。非限定的な一例では、製造プラン120は、被加工物における複数の恒久的ファスナの取り付けを指定する。製造プラン120はシーケンスを規定し、このシーケンスにおいて、複数の恒久的ファスナの取り付けの前にパイロット穴を穿孔するための、別の工程175が指定される。製造プラン120は、複数の恒久的ファスナの取り付けの前に、一時的ファスナ(仮溶接など)を形成すること、及び一時的ファスナを除去することなどの、中間工程175を更に指定しうる。この例を継続するに、修正規則127は、どの工程(複数可)175が、特定の工程175の代替工程(複数可)145として適しうるかを規定している。例えば、製造プラン120が特定の場所での恒久的ファスナの取り付けを指定している工程175を含む場合、修正規則127は、その場所におけるパイロット穴、一時的ファスナ、又は一時的ファスナの除去を代替工程145とすることを、許容しうる。しかし、製造プラン120が一時的ファスナの取り付けを指定している別の工程175を含む場合、修正規則127は、パイロット穴を許容しうるが、一時的ファスナ又は恒久的ファスナの取り付けを代替工程145とすることは、許容しない。その他の修正規則127も使用可能である。
【0021】
非限定的な一例では、製造プラン120は、被加工物に取り付けられる複数のファスナの第1の分布に対応する。製造偏差を確認することに応じて、修正後の製造プラン140が、被加工物に取り付けられる複数のファスナの、別の第2の分布に対応するよう、プラン修正モジュール125によって決定される。かかる例では、対応する工程175の既定のステップは、個別のファスナの、被加工物におけるそれぞれの場所での取り付けに対応しうる。代替工程145では、既定のステップのうちの一又は複数を省略すること(例えば、特定の場所にはファスナを取り付けない)、既定のステップのうちの一又は複数を改変すること(例えば、ファスナの取り付け場所を変える)などが、行われうる。
【0022】
代替工程145の使用の非限定的な一例が、表1及び表2に関連して示されている。例示的な修正後の製造プラン140では、代替工程145は、複数の場所にパイロット穴を穿孔することを含み、このことは、複数の場所を穿孔し、この複数の場所にファスナを取り付けることの代替として行われる。
表1
表2
【0023】
上述のように、製造プラン120の様々な工程175は、密接に相互関連していることが多い。より具体的には、1つの工程175を完遂することが、後続の工程175のために必要なCOA180に対応しうる。この様態では、上流工程175の変化が、一又は複数の下流工程175に対して影響を与えうる。例えば、上流工程175の一部としてパイロット穴が特定の場所に穿孔されることがなければ、下流工程175の一部としてファスナがその場所に取り付けられることもなくなるだろう。
【0024】
製造プラン120の様々な工程175においてずっと、製造偏差の連続的な追跡を提供するために、プラン修正モジュール125(又は、演算デバイス105の別の好適な部分)は、特定された製造偏差に関する情報を含む偏差マップ135を生成し、維持するよう、更に設定されうる。一実施形態では、プラン修正モジュール125は、特定された製造偏差の各々についての識別コードを生成する。この識別コードは、各製造偏差に固有なものでありうる。一部の実施形態では、製造偏差の識別コードは種類情報と場所情報とを含む。プラン修正モジュール125は、生成された識別コードの各々を使用して偏差マップ135を更新してよく、かつ、偏差マップ135を使用して一又は複数の代替工程145を決定しうる。
【0025】
一実施形態では、プラン修正モジュール125は修正後の製造プラン140を作成するよう設定されてよく、この修正後の製造プラン140により、工程のランダム化が可能になる。例えば、仮に、製造プラン120が、一時的ファスナ又は恒久的ファスナの取り付けの前の、被加工物に形成されている複数の穴の全検査を指定している、工程175を含むものとする。プラン修正モジュール125は、複数の穴のランダムな部分検査を可能にする、修正後の製造プラン140を作成しうる。ランダムな部分検査を受けない穴については、修正後の製造プラン140は代替工程145を含んでよく、この代替工程145において、一時的ファスナ又は恒久的ファスナが取り付けられる。これにより、中間検査工程の範囲が減少するので、アセンブリの製造を合理化する上で有利になりうる。
【0026】
図2は、本書で開示されている実施形態による、少なくとも第1の工作機械を使用するアセンブリの製造において使用可能な、例示的な方法200を示している。方法200は、本書に記載の他の実施形態と併せて使用されうる。例えば、方法200は、
図1に示している演算デバイス105のプラン修正モジュール125を使用して、実施されうる。
【0027】
方法200は、演算デバイスがアセンブリのための事前決定された製造プランを読み出す、ブロック205において始まる。事前決定された製造プランは、演算デバイスに通信可能に連結された一又は複数の工作機械を使用して実施される複数の工程を含む。ブロック215において、製造プランに対応する第1指令が第1工作機械に送信される。一部の実施形態では、演算デバイスが、製造プランの工程を、一又は複数の工作機械による実行に適した機械コマンドに変換する。他の実施形態では、演算デバイスは、一又は複数の工作機械に関連する一又は複数のワークステーションに工程を送信し、一又は複数のワークステーションが、好適な機械コマンドへの変換を実施する。
【0028】
ブロック225において、演算デバイスは、事前決定された製造プランからの製造偏差を確認するために、入力データを取得する。一部の実施形態では、入力データは、例えばアセンブリを対象とする視覚センサを使用して取得された、センサデータを含む。他の実施形態では、入力データはオペレータ入力データを含む。更に別の例では、入力データが、製造プランによって指定された部品が入手不可であることを示す。製造偏差を確認することは、(センサデータ及び/又はオペレータ入力データに由来しうる)COA情報と、製造プランで指定されたCOAとを比較することによって、実施されうる。
【0029】
ブロック235において、演算デバイスは、製造偏差の場所を特定する場所情報を受信することに応じて、偏差マップを更新する。場所情報は、製造偏差に関して生成された(固有の)識別コードに含まれうる。
【0030】
ブロック245において、演算デバイスは、製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を一又は複数の代替工程で代替することによって、アセンブリのための修正後の製造プランを決定する。ブロック255において、一又は複数の代替工程を含む第2指令が、一又は複数の工作機械に送信される。第2指令は、第1工作機械及び/又は第2工作機械に送信されうる。方法200は、ブロック255の完了後に終了する。
【0031】
図3は、一実施形態による、アセンブリ310にファスナを取り付けるための工程の例示的なシーケンス300を示している。アセンブリ310は、航空機胴体部向けの外板アセンブリを表わしうるが、これは必要条件ではない。シーケンス300は、本書に記載の他の実施形態と併せて(例えば、
図1に示している一又は複数の工作機械150を使用して)、実施されうる。
【0032】
図305は、第1被加工物311と第2被加工物312とが、望ましい重複を有するよう工作機械を使用して位置付けられる工程の後の状態でありうる、アセンブリ310の第1の状態を示している。第1被加工物311は第1表面313を画定し、第2被加工物312は、反対側の第2表面314を画定している。
【0033】
図315は、アセンブリ310が第1表面313と第2表面314との間に延在するキャビティ320を画定している、アセンブリ310の第2の状態を示している。一部の実施形態では、
図315は、穿孔用工作機械を使用してアセンブリ310を通るキャビティ320が形成される工程の、後の状態でありうる。後続の図では、キャビティ320を有する第2の状態が、中点記号(・)によって表わされている。
【0034】
図325は、キャビティ320に一時的ファスナ330が形成された、アセンブリ310の第3の状態を示している。一部の実施形態では、一時的ファスナ330は、溶接用工作機械を使用して付加された仮ファスナ(又は「仮溶接(tack weld)」)を含む他の種類の一時的ファスナも使用可能である。後続の図では、一時的ファスナ330を有する第3の状態が、Tという文字によって表わされている。
【0035】
図335は、キャビティ340がアセンブリ310を通って形成されている、アセンブリ310の第4の状態を示している。キャビティ340は、一時的ファスナ330をドリルアウトすることによって形成されうる。キャビティ340はキャビティ320と実質的に同じサイズを有しうるが、これは必要条件ではない。一部の代替的実施形態では一時的ファスナ330は使用されず、シーケンス300が、
図315から
図345へと直接進行することもある。後続の図では、キャビティ340を有する第4の状態も、中点記号(・)によって表わされている。
【0036】
図345は、恒久的ファスナ350がキャビティ320(又はキャビティ340)を通って取り付けられた、アセンブリ310の第5の状態を示している。一部の実施形態では、恒久的ファスナ350は、アセンブリ310を通って延在するシャンク354と、アセンブリ310を通って延在することはないヘッド352とを有する、リベットを含む。場合によっては、ヘッド352は第1表面313と接触するが、これは必要条件ではない。後続の図では、恒久的ファスナ350を有する第5の状態が、Pという文字によって表わされている。
【0037】
図355は、カラー360が恒久的ファスナ350に取り付けられている、アセンブリ310の第6の状態を示している。後続の図では、カラー付きの恒久的ファスナ350を有する第6の状態が、Cという文字によって表わされている。シーケンス300にはアセンブリ310の6つの状態が図示されているが、代替的な実行形態は、異なる数の状態を有することもある。
【0038】
図4は、一実施形態による、偏差マップを使用して作成された修正後の製造プランを示している。修正後の製造プランは、本書に記載の他の実施形態と併せて(例えば、
図1に示している演算デバイス105のプラン修正モジュール125を使用して)、決定されうる。
【0039】
図400は、アセンブリに関する(例えば、アセンブリに含まれる被加工物の第1表面313に関する)既定の場所の、3×3の四角形のアレイを示している。この既定の場所は、座標(1,1)、(1,2)、(1,3)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,2)、及び(3,3)を有する。
【0040】
図405は、既定の製造プランによる複数のファスナの第1の分布(分布1)を示している。
図405において、カラー付きの恒久的ファスナ(それぞれが「C」という文字で示されている)が、座標(1,1)、(1,2)、(1,3)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,2)、及び(3,3)の各々に含まれるものとする。製造プランは、パイロット穴が座標(1,3)及び(3,1)に穿孔されるべきであることを、更に指定している。例えば、パイロット穴に対応する場所は、パイロット穴がランダムな部分検査にしたがって検査されうるように、一時的ファスナ又は恒久的ファスナを有さないままに保たれうる。
【0041】
図410は、修正後の製造プランによる複数のファスナの第2の分布(分布2)を示している。上述のように、修正後の製造プランは、製造偏差の確認に応じて決定されうる。例えば、製造偏差は、恒久的ファスナ及び/又はカラーが入手不可であることに基づいて、確認されうる。別の例では、製造偏差は、製造プランによって指定されていなかった場所における一時的ファスナの取り付けを検出することに基づいて、確認されうる。
図410の第2の分布における、一時的ファスナ(それぞれが「T」という文字で示されている)は、第1の分布のカラー付きの恒久的ファスナの各々を代替する。
【0042】
第1の分布と第2の分布との間の相違は、
図415に示す偏差マップ135に反映されうる。代替が行われた場所の各々(座標(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,2)、及び(3,3))について、偏差マップ135は、カラー付きの恒久的ファスナから一時的ファスナへの変化を示す(つまりC→T)。第1の分布と第2の分布との間のこのような相違は、追加的又は代替的に、偏差表420に記憶されうる。
【0043】
偏差表420の各製造偏差には、別個の識別コード422が割り振られうる。一部の実施形態では、識別コード422は、場所情報424と種類情報426との一方又は両方に基づく。場所情報424は、アセンブリにおける製造偏差の場所を表わす。種類情報426は、事前決定された複数の偏差種類のうちの、特定の種類を表わす。
【0044】
図示しているように、座標(1,1)における第1の製造偏差の発生には、(1153)という識別コード422が割り振られる。種類情報426は、座標(1,1)に予想される部品又は状態、及び、修正後の製造プランによる代替の部品又は状態を示す。第1の製造偏差に関して、「5」という値が割り振られているカラー付きの恒久的ファスナは、「3」という値が割り振られた一時的ファスナで代替されている。他の製造偏差は、1253、2153、2253、2353、3253、3353という識別コード422に対応する。図示している識別コード422は、場所情報424と種類情報426とを結び付けているが、異なる情報による他の組み合わせも可能である。更に、単純化された例が提示されているが、偏差が発生した工作機械の識別情報やプロセス情報などといった他の情報が、識別コード422に代替的に含まれることもある。
【0045】
図5は、一実施形態による、製造中のアセンブリの部分検査を可能にする、修正後の製造プランを示している。修正後の製造プランは、本書に記載の他の実施形態と併せて(例えば、
図1に示している演算デバイス105のプラン修正モジュール125を使用して)、決定されうる。
【0046】
図500は、事前決定された製造プランによる第1の分布を示している。より具体的には、事前決定された製造プランは、一時的ファスナ又は恒久的ファスナの取り付け前のパイロット穴の全検査を可能にするために、座標の各々にパイロット穴を指定している。しかし、検査及び全製造を合理化するためには、統計的に有意な数のパイロット穴を検査することだけが必要である。図示しているように、
図505は、座標(1,3)及び(3,1)にパイロット穴を指定している、修正後の製造プランを表わしている。修正後の製造プランは、他の座標には一時的ファスナを更に指定している。この様態では、修正後の製造プランにより、複数のパイロット穴のランダムな部分検査が可能になる。
【0047】
図6は、一実施形態による、アセンブリにおけるファスナの予想分布に基づく修正後の製造プランを示している。修正後の製造プランは、本書に記載の他の実施形態と併せて(例えば、
図1に示している演算デバイス105のプラン修正モジュール125を使用して)、決定されうる。
【0048】
図600は、特定の工程に関する予想分布(すなわち、アセンブリがどのようになると予想されるか)を示している。一部の実施形態では、予想分布は、この工程に対応するCOAに反映されうる。ここで、予想分布は、座標(1,1)~(3,3)の各々にパイロット穴を指定している。
図605は、一又は複数のセンサを介して感知されうるか、又は、オペレータによって検出されうる、実際の分布を示している。実際の分布は、パイロット穴が予想されていたところに一時的ファスナが取り付けられている座標(1,1)~(2,3)の各々について、製造偏差を有する。
【0049】
プラン修正モジュールは、複数の可能な修正後の製造プランを決定し、1つを選択しうる。
図615は、第1の修正後の製造プランによる分布3Aを示しており、分布3Aでは、恒久的ファスナが、座標(3,1)~(3,3)(領域620内のハイライトされた部分)のパイロット穴に取り付けられる。
図625は、第2の修正後の製造プランによる分布3Bを示しており、分布3Bでは、座標(1,1)~(2,3)(領域630内のハイライトされた部分)の一時的ファスナがドリルアウトされる。種々の修正後の製造プランからの選択は、製造プラン中の計画されている工程や工作機械の使用可能性などといった任意の好適な要因に基づくものでありうる。
【0050】
ゆえに、本書で開示されている実施形態は、非共形のアイテムやランダム検査プラン、及びその他の要因によって引き起こされるプランからの偏差に適応するための、部品特化型(part-specific)NCプログラムの工程の単純な修正を許容する、工作機械を制御するためのシステム及び方法を対象とする。このシステムは、NCプログラムサーバであって、(a)工作機械ワークステーションにダウンロードされるベースライン部品特化型NCプログラムをホスティングするよう設定され、(b)代替ステップで置換される、ベースライン部品特化型NCプログラムにおけるステップを特定し、かつ、対応する代替工程を特定する、機械可読型のステップ/、代替ファイルを用意するためのプログラムを伴って設定されている、NCプログラムサーバを備えうる。システムは、NCサーバと信号通信を行う、NC工作機械に取り付けられた工作機械ワークステーションを更に備えうる。この工作機械ワークステーションは、(a)ベースライン部品特化型NCプログラムをリクエストし、NCプログラムサーバからそれを受信するよう、(b)部品特化型ステップ/代替ファイルをリクエストし、NCプログラムサーバからそれを受信するよう、かつ、(c)部品特化型ステップ/代替ファイルを検査することによって、代替が必要であるか否かを判定するよう、設定されうる。
【0051】
代替が必要ではない場合、工作機械ワークステーションは、(a)ベースライン部品特化型NCプログラムをNC工作機械に送信することと、(b)NC工作機械に、部品特化型NCプログラムを実行するよう命令することとを、行いうる。しかし、代替が必要である場合、工作機械ワークステーションは、
部品特化型ステップ/代替ファイルを通して、
ステップ/代替ファイルにおける各ステップごとに、
ベースライン部品特化型NCプログラム中の対応するステップを見つけることと、
ベースライン部品特化型NCプログラム中の対応するステップを、ステップ/代替ファイル内の特定された代替物で置換することと、
修正後の部品特化型NCプログラムをNC工作機械に送信することと、
修正後の部品特化型NCプログラムを実行し、かつ、工作機械の不揮発性メモリ内の部品特化型完了ファイルに各代替ステップの状態を記録するよう、NC工作機械に命令することと、
工作機械が実行を完了した際に、
NC工作機械の不揮発性メモリから、部品特化型完了ファイルを読み出すことと、
部品特化型完了ファイルを、後処理検査に使用するために、NCプログラムサーバに記憶させることとを、繰り返し実行することによって、ベースライン部品特化型NCプログラムを修正しうる。
【0052】
一部の実施形態では、システムは、上流工程の製造偏差を確認し、確認された製造偏差及びそれ以外の製造偏差があればそれを反映した、偏差リストを抽出し、かつ、この偏差リストを工作機械ワークステーションに送る。工作機械ワークステーションは製造偏差(複数可)を処理し、システムは、機械データベースから偏差レポートを抽出して、偏差レポートと状態製造偏差プランとをリンクさせる。
【0053】
例示的なシーケンスでは、シーケンスは、代替ファイルがサーバにアップロードされることで始まる。オペレータPCからプログラムがリクエストされると、プログラムリクエストがサーバで受信される。プログラムリクエストに応じて、プログラムがデータPCにダウンロードされ、代替ファイルは、このデータPCによってリクエストされ、受信される。データPCは、プログラムと代替ファイルとを比較する。プログラムに代替が必要ない場合、ベースラインのプロセスが、NC機械に送信される(更に、NC機械を使用して実行される)。
【0054】
何らかの代替が必要な場合、データPCは、代替を要する一又は複数のステップを特定する。データPCは、代替を要するステップ及び代替工程の明細(例えば、全てのファスナの完全取り付けを欠落フレーム向けのパイロットのみの工程で代替すること)を示す。データPCはこの代替をNC機械に送信し、NC機械は、代替を伴うプログラムを実行する。処理された代替は、機械データベースに、固有の状態コードと共に記録される。状態コードを含む代替レポートが生成され、この代替レポートは、代替を追跡するために使用されうる。
【0055】
更に、本開示は以下の条項による例を含む。
【0056】
条項1.少なくとも第1の工作機械を使用するアセンブリの製造において使用可能な、コンピュータで実装される方法であって、アセンブリのための事前決定された製造プランを読み出すことであって、この事前決定された製造プランが、第1工作機械を使用する複数の工程を含む、読み出すことと、事前決定された製造プランからの製造偏差を確認するために、入力データを取得することと、製造偏差を確認することに応じて、事前決定された製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を一又は複数の代替工程で代替することによって、アセンブリのための修正後の製造プランを決定することと、第1工作機械に、修正後の製造プランの一又は複数の代替工程に対応する指令を送信することとを含む、方法。
【0057】
条項2.事前決定された製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの第1の分布に対応し、修正後の製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの、別の第2の分布に対応する、条項1に記載の方法。
【0058】
条項3.第1の分布が、被加工物の事前決定された場所に実質的に恒久的なファスナを含み、第2の分布が、この事前決定された場所に一時的ファスナを含む、条項2に記載の方法。
【0059】
条項4.第1工作機械を使用する複数の工程が、被加工物に複数のファスナを取り付けることを含み、複数のファスナの個々のファスナの取り付けが、複数の工程のうちの第1工程に対応し、第1工程が複数の既定のステップを含み、複数の既定のステップの全てよりも少ない数のステップを含む第1の代替工程が、第1工程を代替する、条項1に記載の方法。
【0060】
条項5.複数の既定のステップが、被加工物に個々のファスナのためのパイロット穴を穿孔すること、被加工物の個々のファスナのための場所に、一時的ファスナを付加すること、一時的ファスナをドリルアウトすること、被加工物に恒久的ファスナを取り付けること、及び、恒久的ファスナにカラーを取り付けることのうちの、2つ以上を含む、条項4に記載の方法。
【0061】
条項6.入力データが、アセンブリを対象とするセンサから取得されたセンサデータとオペレータ入力データとの一方を含む、条項1に記載の方法。
【0062】
条項7.製造偏差の種類とアセンブリにおける製造偏差の場所とを特定する識別コードを生成することを更に含む、条項1に記載の方法。
【0063】
条項8.識別コードを使用して偏差マップを更新することと、偏差マップを使用して、一又は複数の代替工程を決定することとを更に含む、条項7に記載の方法。
【0064】
条項9.製造偏差が、事前決定された製造プランによって指定された部品が入手不可であることと、事前決定された製造プランによって指定されていない場所に取り付けられた部品とのうちの一方を含む、条項1に記載の方法。
【0065】
条項10.一又は複数の代替工程を決定するために、既定の修正規則を適用することを更に含む、条項1に記載の方法。
【0066】
条項11.事前決定された製造プランの複数の工程が、アセンブリにおける複数の場所で同一の工程を実施することに対応し、修正後の製造プランを決定することが、複数の場所の全てよりも少ない数の場所で、同一の工程を実施することを含む、条項1に記載の方法。
【0067】
条項12.同一の工程が、被加工物に穴を形成するための穿孔工程を含み、事前決定された製造プランにより、被加工物に形成された複数の穴の全検査が可能になり、修正後の製造プランにより、複数の穴のランダムな部分検査が可能になる、条項11に記載の方法。
【0068】
条項13.複数の工作機械を使用するアセンブリの製造において使用可能な、コンピュータで実装される方法であって、複数の工作機械のうちの第1工作機械に、アセンブリのための事前決定された製造プランであって、複数の工程を含む事前決定された製造プランに対応する、第1指令を送信することと、製造プランからの製造偏差の場所を特定する場所情報を受信することに応じて、偏差マップを更新することと、偏差マップを使用して、事前決定された製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を代替する一又は複数の代替工程を有する、修正後の製造プランを決定することと、複数の工作機械のうちの第1工作機械又は第2工作機械に、一又は複数の代替工程を含む第2指令を送信することとを含む、方法。
【0069】
条項14.事前決定された製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの第1の分布に対応し、修正後の製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの、別の第2の分布に対応する、条項13に記載の方法。
【0070】
条項15.第1の分布が、被加工物の事前決定された場所に実質的に恒久的なファスナを含み、第2の分布が、この事前決定された場所に一時的ファスナを含む、条項14に記載の方法。
【0071】
条項16.事前決定された製造プランの複数の工程が、アセンブリにおける複数の場所で同一の工程を実施することに対応し、修正後の製造プランを決定することが、複数の場所の全てよりも少ない数の場所で、同一の工程を実施することを含む、条項13に記載の方法。
【0072】
条項17.システムであって、少なくとも第1の工作機械、及び、第1工作機械に通信可能に連結され、かつ、第1工作機械に、製造されるアセンブリのための事前決定された製造プランであって、複数の工程を含む事前決定された製造プランに対応する、第1指令を送信することと、製造プランからの製造偏差の場所を特定する場所情報を受信することに応じて、偏差マップを更新することと、偏差マップを使用して、事前決定された製造プランの複数の工程のうちの一又は複数を代替する一又は複数の代替工程を有する、修正後の製造プランを決定することと、第1工作機械又は第2工作機械に、一又は複数の代替工程を含む第2指令を送信することとを、行うよう設定された、一又は複数のコンピュータプロセッサを備える、システム。
【0073】
条項18.事前決定された製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの第1の分布に対応し、修正後の製造プランは、被加工物に取り付けられる複数のファスナの、別の第2の分布に対応する、条項17に記載のシステム。
【0074】
条項19.第1の分布が、被加工物の事前決定された場所に実質的に恒久的なファスナを含み、第2の分布が、この事前決定された場所に一時的ファスナを含む、条項18に記載のシステム。
【0075】
条項20.事前決定された製造プランの複数の工程が、アセンブリにおける複数の場所で同一の工程を実施することに対応し、修正後の製造プランを決定することが、複数の場所の全てよりも少ない数の場所で、同一の工程を実施することを含む、条項17に記載のシステム。
【0076】
本開示の様々な態様の説明は、例示を目的として提示されており、網羅的であること、又は開示された態様に限定されることを意図するものではない。当業者には、説明されている実施形態の範囲及び本質から逸脱することのない、多数の修正例及び変形例が自明となろう。本書で使用されている用語は、実施形態の原理、実践用的応用、若しくは、市場に見られる技術を凌駕する技術的改善を最もよく解説するため、又は、他の当業者が本書で開示されている実施形態を理解することを可能にするために、選ばれたものである。
【0077】
当業者には認識されうるように、本開示の態様は、システム、方法、又はコンピュータプログラム製品として具現化されうる。したがって、本開示の態様は、専らハードウェアの実施形態、専らソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェアとハードウェアの態様が組み合わされた実施形態の形式をとりうるが、本書ではそれらは全て、「回路(circuit)、「モジュール(module)」又は「システム(system)」と概括的に称されうる。更に、本開示の態様は、コンピュータ可読プログラムコードが内蔵されている一又は複数のコンピュータ可読媒体において具現化される、コンピュータプログラム製品の形態をとりうる。
【0078】
一又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されうる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体、又はコンピュータ可読記憶媒体でありうる。コンピュータ可読記憶媒体は、電子式、磁気式、光学式、電磁式、赤外線、若しくは半導体のシステム、装置、若しくはデバイス、又は、これらの任意の好適な組み合わせなどでありうるが、それらに限定されるわけではない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非包括的なリスト)は、一又は複数のワイヤを有する電気接続、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM若しくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯型コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、又は、これらの任意の好適な組み合わせを、含みうる。この文書の文脈において、コンピュータ可読記憶媒体は、指令を実行するシステム、装置又はデバイスによって使用されるか、又はそれと接続しているプログラムを包含しうるか、又は記憶しうる、任意の有形媒体でありうる。
【0079】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンドにおいて、又は搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードを内蔵している伝播データ信号を含みうる。かかる伝播信号は、電磁的形態、光学的形態、又は、これらの任意の好適な組み合わせを含むがそれらに限定されるわけではない、多種多様な形態のうちの任意の形態をとりうる。コンピュータ可読信号媒体は、指令を実行するシステム、装置、又はデバイスによって使用されるか、又はそれと接続しているプログラムを通信し、伝播し、送信することが可能な、コンピュータ可読記憶媒体ではない、任意のコンピュータ可読媒体でありうる。
【0080】
コンピュータ可読媒体で具現化されるプログラムコードは、例えば、無線、有線、光ファイバケーブル、RF、又は、これらの任意の好適な組み合わせを含むがそれらに限定されるわけではない、任意の適切な媒体を使用して送信されうる。
【0081】
本開示の態様の工程を実施するためのコンピュータプログラムコードは、Java、Smalltalk、C++などといったオブジェクト指向型プログラミング言語、及び、「C」プログラミング言語や類似のプログラミング言語などの従来的な手続き型プログラミング言語を含む、一又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれうる。プログラムコードは、専らユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、独立型のソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上でかつ部分的に遠隔コンピュータ上で、又は、専ら遠隔コンピュータ又は遠隔サーバ上で、実行されうる。最後の事例の場合、遠隔コンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)若しくはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通じてユーザのコンピュータに接続されうるか、又は、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて、)外部コンピュータへの接続がなされうる。
【0082】
本開示の態様は、本開示の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフロー図及び/又はブロック図を参照して、上述されている。フロー図及び/又はブロック図の各ブロック、並びに、フロー図及び/又はブロック図における複数のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム指令によって実装されうると、理解されよう。このようなコンピュータプログラム指令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は、機械を製造するための他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されてよく、これにより、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行されるこれらの指令が、フロー図及び/又はブロック図の一又は複数のブロック内に指定されている機能/作用を実装するための手段を創出する。
【0083】
このようなコンピュータプログラム指令は、コンピュータ可読媒体であって、製品を製造するような特定の様態で機能するよう、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又はそれ以外のデバイスに命令しうる、コンピュータ可読媒体に記憶されることも可能であり、このコンピュータプログラム指令は、フロー図及び/又はブロック図の一又は複数のブロック内に指定されている機能/作用を実装する指令を含む。
【0084】
コンピュータプログラム指令は、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又はそれ以外のデバイス上で実施されるべき一連の動作ステップを引き起こして、コンピュータで実装されるプロセスを生成するために、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又はそれ以外のデバイスにローディングされてもよく、これにより、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又はそれ以外のデバイスに読み込まれることも可能であるコンピュータ又は他のプログラマブル装置上で実行されるこの指令が、フロー図及び/又はブロック図の一又は複数のブロック内に指定されている機能/作用を実装するためのプロセスを提供する。
【0085】
図面のフロー図及びブロック図は、本開示の様々な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の実現可能な実行形態のアーキテクチャ、機能性、及び工程を示している。これに関して、フロー図及びブロック図の各ブロックは、特定の論理機能(複数可)を実装するための一又は複数の実行可能指令を含む、指令のモジュール、セグメント、又は部分を表わしうる。一部の代替的な実行形態では、ブロック内に記載されている機能は、図に記載されている順序を逸脱して発現しうる。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、関連の機能に応じて、実質的に同時に実行されうるか、又は、時に逆順に実行されうる。ブロック図及び/又はフロー図の各ブロック、並びに、ブロック図及び/又はフロー図におけるブロックの組み合わせは、特定の機能又は作用を実施する特殊用途ハードウェアベースのシステムによって実装されうるか、又は、特殊用途ハードウェアとコンピュータ指令との組み合わせで実施されうることにも、留意されたい。
【0086】
上記の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱しなければ、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。