(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】洗浄用スポンジ
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20240318BHJP
A47L 17/00 20060101ALI20240318BHJP
B60S 3/04 20060101ALI20240318BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A47L13/16 B
A47L17/00 Z
B60S3/04
C08L75/02
(21)【出願番号】P 2018170971
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】東海 真平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 忠史
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-032957(JP,U)
【文献】国際公開第2016/194737(WO,A1)
【文献】実開昭55-013535(JP,U)
【文献】特開2001-200087(JP,A)
【文献】特表2015-525822(JP,A)
【文献】特開2002-201301(JP,A)
【文献】特開2004-059907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂の発泡体からなる洗浄用スポンジ
であって、
セル径が400μm以下の微小セルが集まってなる
集合体サイズが1000~3000μmの微小セル集合体が、
セル径が600μm以上の通常セルが占める通常セル領域に点在した洗浄面を備え、
前記微小セル集合体は、前記洗浄面において5~40%の面積を占め、
前記ポリウレタン樹脂は、ウレア結合を含み、
前記ポリウレタン樹脂において、前記ウレア結合の数は、ウレタン結合の数の9倍以上である洗浄用スポンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄用スポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄用スポンジとして、メラミン樹脂の発泡体からなるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-258809号公報(段落[0010])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の洗浄用スポンジにおいて、洗浄性の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、ポリウレタン樹脂の発泡体からなる洗浄用スポンジにおいて、400μm以下の微小セルが集まってなる1000~3000μmの微小セル集合体が、洗浄面に設けられている洗浄用スポンジである。
【0006】
発明の第2態様は、前記微小セル集合体は、前記洗浄面において5~40%の面積を占める、第1態様に記載の洗浄用スポンジである。
【0007】
発明の第3態様は、前記ポリウレタン樹脂のうち前記微小セル集合体を構成する部分に、ウレア結合が含まれている、第1態様又は第2態様に記載の洗浄用スポンジである。
【0008】
発明の第4態様は、前記ポリウレタン樹脂において、前記ウレア結合の数は、ウレタン結合の数の9倍以上である、第3態様に記載の洗浄用スポンジである。
【発明の効果】
【0009】
発明の第1態様の洗浄用スポンジは、ポリウレタン樹脂の発泡体からなり、洗浄面に、400μm以下の微小セルが集まってなる1000~3000μmの微小セル集合体を有している。本態様によれば、後述する実験で確認されるように、洗浄性を向上させることが可能となる。微小セル集合体は、洗浄性の観点から、洗浄面において5~40%の面積を占めることが好ましい(発明の第2態様)。
【0010】
ポリウレタン樹脂の発泡体は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤を含む原料から製造され、発泡剤の反応により発泡セルが形成される。ここで、上記原料に、分解や反応により水を生成する添加剤をさらに加えておくと、その添加剤から生成された水と上記原料に残っているポリイソシアネートとの反応により、後発的に発泡セルを形成することが可能となり、この発泡セルにより、微小セルと微小セル集合体を構成することが可能となる。即ち、上記添加剤を原料に添加するだけで、微小セルと微小セル集合体を形成することが可能となる。また、このような方法によれば、ポリウレタン樹脂のうち微小セル集合体を構成する部分にウレア結合が生成されることとなる(発明の第3態様)。従って、第3態様の構成を有する洗浄用スポンジによれば、微小セル集合体の形成を容易にすることが可能となる。
【0011】
ポリウレタン樹脂においてウレア結合の数は、ウレタン結合の数の9倍以上であることが好ましい(発明の第4態様)。ポリウレタン樹脂においてウレア結合の数がウレタン結合の数の9倍未満であると、微小セル集合体が形成され難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る洗浄用スポンジの表面の微小セル集合体をマイクロスコープで撮影した写真
【
図2】洗浄用スポンジの表面の微小セルをマイクロスコープで撮影した拡大写真
【
図3】洗浄用スポンジの実施例及び比較例を示すテーブル
【
図4】(A)摩擦試験機で摩擦色落ち性試験を行うときの洗浄用スポンジの試験片とステンレス板との側面図、(B)油性インキが付されたステンレス板の平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一実施形態に係る洗浄用スポンジは、ポリウレタン樹脂からなる連続気泡構造の発泡体で構成される。
【0014】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の洗浄用スポンジは、発泡セルとして、通常セル20と、通常セル20よりも小さい微小セル30と、を有している。微小セル30は、複数集まって微小セル集合体30Gを構成している。洗浄用スポンジは、通常セル20で占められた通常セル領域に、微小セル集合体30Gが点在した海島構造となっている(以下、この構造を「ダブルセル構造」という)。
【0015】
本実施形態では、微小セル30は、400μm以下となっていて、100~300μmであることがより好ましい。微小セル集合体30Gは、1000~3000μmとなっていて、2000~3000μmであることがより好ましい。通常セル11は、例えば、600μm以上となっている。
【0016】
微小セル集合体30Gは、洗浄用スポンジの洗浄面(即ち、表面)において、5~40%の面積を占めていることが洗浄性の観点から好ましい。
【0017】
本実施形態の洗浄用スポンジは、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、炭酸水素ナトリウム、を含む原料を触媒の存在下で反応させて得られる。なお、洗浄用スポンジの原料には、有機個体酸がさらに含まれていてもよい。
【0018】
ポリオールとしては、ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができる。例えば、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールが挙げられ、それらのうち複数種類を使用してもよい。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0021】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、上述のポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、または1分子内にポリエーテルとポリエステルのセグメントを有するもの等が挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等が挙げられる。
【0023】
発泡剤としては、水が好ましい。水はポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡を行う。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して10~15重量部であることが好ましい。
【0024】
触媒としては、公知のウレタン化触媒を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒を用いてもよいし、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩またはオクテン酸鉛等の金属触媒(所謂、有機金属触媒)を用いてもよいし、アミン触媒と金属触媒を併用してもよい。アミン触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.05~0.5重量部が好ましい。金属触媒の量は、0又は0.05~0.5重量部が好ましい。
【0025】
炭酸水素ナトリウムの量は、ポリオール100重量部に対して10~40重量部であり、より好ましい範囲は30~40重量部である。炭酸水素ナトリウムの量を、この範囲とすることにより、炭酸水素ナトリウムによる吸熱反応を良好に行うことができ、ポリウレタン樹脂発泡体の製造時の発熱温度上昇を抑えることができる。なお、炭酸水素ナトリウムは、熱により分解して、水と炭酸ガスを生成する。この反応が吸熱反応である。
【0026】
有機固体酸は、炭酸水素ナトリウムと併用することにより、ポリウレタン樹脂発泡体の製造時に吸熱作用が大きくなり、ポリウレタン樹脂発泡体の発熱による温度上昇を、より効果的に抑えることができる。有機固体酸の量は、炭酸水素ナトリウムの量の1/60~1/30が好ましい。また、ポリオール100重量部に対する有機固体酸の量は、ポリオール100重量部に対して0.3~0.7重量部が好ましい。なお、有機個体酸は、炭酸水素ナトリウムと反応すると、有機個体酸のナトリウム塩と炭酸を生成し、炭酸が分解することで水と二酸化炭素が生成する。この反応が吸熱反応となる。
【0027】
有機固体酸としては、クエン酸(水和物、無水物ともに使用できる。)、フマル酸、マロン酸、ステアリン酸、ピルビン酸、フタル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、ヒドロキシ基を有する多塩基カルボン酸等が挙げられ、これらのうち二種類以上を併用してもよい。また、これらの中で、クエン酸とリンゴ酸(ヒドロキシ酸)がより好ましく、リンゴ酸が特に好ましい。
【0028】
洗浄用スポンジのポリウレタン樹脂発泡体の原料には、例えば、整泡剤や着色剤等が含まれていてもよい。整泡剤としては、ポリウレタン樹脂発泡体用の公知のものを用いることができ、例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤や、公知の界面活性剤を用いることができる。着色剤としては、カーボン顔料等が挙げられる。
【0029】
ポリウレタン樹脂発泡体の発泡硬化反応では、まず、ポリオール成分とイソシアネート等の反応が支配的に起こり、ポリオールとイソシアネートによるウレタン結合が生成される。また、発泡剤としての水とポリイソシアネートとの反応により生成された炭酸ガスにより、通常セル20(
図1参照)が形成される。この間、ポリオールとイソシアネートの反応の反応熱、水とポリイソシアネートの反応の反応熱により発泡体内で温度が上昇する。やがて、炭酸水素ナトリウムが、分解温度に達すると、分解して炭酸ガスと水が生成される。この水はイソシアネートと反応する。ここで、この水と反応すると想定されるイソシアネートは、ウレタン結合を生成するためにポリオール成分と反応したイソシアネート以外のイソシアネート(即ち、イソシアネートインデックスにおいて100を超える量に相当するイソシアネート)である。そして、このイソシアネートと炭酸水素ナトリウムから生成された水とが反応すると、ウレア結合が生成されると共に、炭酸ガスが生成され、微小セル30(
図2参照)と微小セル集合体30Gが形成される(即ち、ダブルセル構造が形成される)ものと想定される。
【0030】
なお、イソシアネートインデックスとは、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数を、ポリオール、発泡剤(水)等の全活性水素基のモル数で除した値に100をかけた値である。イソシアネートインデックスは、100を超えていることが好ましく、120以上であることがより好ましい。また、イソシアネートインデックスは、反応熱による過度な内部温度上昇の抑制の観点から160以下であることが好ましい。
【0031】
洗浄用スポンジを構成するポリウレタン樹脂において、ウレア結合の数は、ウレタン結合の数の9倍以上であることが好ましい。ポリウレタン樹脂においてウレア結合の数がウレタン結合の数の9倍未満であると、微小セル集合体が形成され難くなる。なお、ポリウレタン樹脂においてウレア結合の数がウレタン結合の数の9倍以上であると、発泡セルによりポリウレタン樹脂発泡体の見掛け密度を下げて軽量化を図ることが可能となる。また、ポリウレタン樹脂のうち微小セル集合体を構成する部分にウレア結合が含まれることで、当該部分の耐久性を向上させることが可能となる。
【0032】
本実施形態の洗浄用スポンジを製造するにあたっては、まず、上記したポリオール、発泡剤、炭酸水素ナトリウム、有機個体酸、整泡剤、触媒等を混合したものがA液として用意される。次いで、そのA液と、ポリイソシアネートを含むB液とを混合した液状の原料が、ベルトコンベア上に連続的に吐出される。上記原料は、ベルトコンベア上で反応して発泡し、連続したブロック状のポリウレタン樹脂の発泡体が得られる(所謂、スラブ成形法)。そのブロック状のポリウレタンフォームが、所定のサイズにカットされて、洗浄用スポンジが得られる。なお、ポリウレタンフォームの原料を、成形金型内で発泡させて洗浄用スポンジを成形してもよい(所謂、モールド成形法)。
【0033】
本実施形態の洗浄用スポンジでは、洗浄面に、400μm以下の微小セル30が集まってなる1000~3000μmの微小セル集合体30Gが設けられている。本実施形態の洗浄用スポンジによれば、後述する実験で確認されるように、洗浄性を向上させることが可能となる。また、洗浄用スポンジは、ポリウレタン樹脂の発泡体からなるので、メラミン樹脂の発泡体からなるものに比べて、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0034】
[確認実験]
図3に示される実施例1~3、比較例1,2の洗浄用スポンジに対して、洗浄性を確認した。
【0035】
[実施例1~3の洗浄用スポンジ]
実施例1~3では、上述の製造方法の通り、ポリオール、発泡剤(水)、炭酸水素ナトリウム、リンゴ酸、触媒等を含むA液と、ポリイソシアネートを含むB液とを混合した原料を、発泡成形し、洗浄用スポンジを得た。実施例1~3の洗浄用スポンジの原料の組成及び配合比は、
図3及び以下の通りである。実施例1~3では、ポリオール100重量に対して、アミン触媒、発泡剤、整泡材、炭酸水素ナトリウム、リンゴ酸、スズ触媒の量は同じになっている一方、ポリイソシアネートの量(即ち、イソシアネートインデックス)のみが異なっている。具体的には、実施例1,2,3では、それぞれイソシアネートインデックスが150、130、120である。実施例1~3の配合比によれば、洗浄用スポンジを構成するポリウレタン樹脂において推定されるウレア結合の数が、ウレタン結合の数の9倍以上となる。なお、
図3におけるウレア結合比率とは、原料から算出され、ウレア結合とウレタン結合の合計数でウレア結合の数を除したものに100をかけた値である。また、
図3におけるクリーミングタイムとは、A液とB液の混合を開始してから、発泡が開始するまでの時間であり、ライジングタイムとは、A液とB液の混合を開始してから、発泡によるポリウレタン発泡体の膨張が停止するまでの時間である。
【0036】
<A液>
ポリオール;三洋化成株式会社製の商品名「GP-3050」(水酸基価:56.1)
発泡剤;水(水酸基価:6233)
整泡剤;シリコーン系整泡剤。Momentive社製の商品名「L-636S」
アミン触媒A;Evonik社製の商品名「NE-300」(水酸基価:276)
スズ触媒;城北化学株式会社製の商品名「MRH-110」
<B液>
ポリイソシアネート;東ソー株式会社製の商品名「コロネート(登録商標)T-80」(NCO価48.23)
【0037】
[比較例1の洗浄用スポンジ]
比較例1の洗浄用スポンジは、実施例1~3と同様に、A液とB液を混合した原料を発泡成形して得られたポリウレタン樹脂発泡体からなる。但し、比較例1の配合は、実施例1~3に対して、炭酸水素ナトリウムと、有機個体酸(リンゴ酸)を含んでいない点で異なる。また、比較例1の配合は、実施例1~3とは、ポリオールに対する発泡剤、整泡剤、スズ触媒、ポリイソシアネートの配合比が異なる。
【0038】
[比較例2の洗浄用スポンジ]
比較例2の洗浄用スポンジは、実施例1~3及び比較例1とは異なり、メラミン樹脂の発泡体からなる。比較例2では、洗浄用スポンジとして、株式会社イノアックコーポレーション製の商品名「バソテクト(登録商標)W」を用いた。
【0039】
[測定方法]
<洗浄性>
洗浄用スポンジの洗浄性の評価を、以下の摩擦色落ち性試験にて行った。具体的には、
図4(A)に示されるように、JIS L 0823(染色堅牢度試験用摩擦試験機)に規定する学振型の摩擦試験機50の摩擦子51に、洗浄用スポンジの試験片10(サイズ:厚み10mm×幅30mm×長さ150mm)を固定し、その試験片10でステンレス板52の表面のうち油性インキが付された部分を擦る試験を行った。
【0040】
詳細には、100mmのストロークで水平に往復動する往復支持台53に上記ステンレス板52を載置して固定し、そのステンレス板52に上側から試験片10が接触するように摩擦子51を配置した。試験片10は、厚み方向が上下方向、長さ方向が往復支持台53の往復方向Hになるように配置した。ステンレス板52には、
図4(B)に示されるように、油性インキで、往復支持台53の往復方向Hと直交する方向に延びる複数の直線Lを、上記往復方向Hで30mmに渡って2mm間隔で引いた。また、摩擦子51の押圧荷重を500gとした。そして、往復支持台53を、毎分30回往復する速度で100回往復させ、ステンレス板52のうち油性インキが付された部分について上記往復動作の前後における色差ΔEを測定した。この測定には、スガ試験機株式会社製の色差計(型番:SM-T。JIS Z 8722に準拠)を用いた。なお、この摩擦色落ち性試験では、ΔEの絶対値が大きい程、油性インキの落ち具合が良いということとなり、洗浄性が高いといえる。
【0041】
<セル及び微小セル集合体のサイズ>
マイクロスコープ(株式会社キーエンスの商品名「VHX-5000」)を使用し、洗浄用スポンジの表面において、微小セル30、通常セル20及び微小セル集合体30Gがそれぞれ含まれる部分を撮影し、その撮影画像から微小セル30、通常セル20、微小セル集合体30Gのサイズを測定した。具体的には、微小セル30、通常セル20については、撮影画像において、セルの輪郭のうち最も離れた2点間の距離を測定した。そして、その距離を撮影画像内の任意の10個のセルについて測定し、それら測定値の平均値をセル径とした。また、セル同士の間を区切るセル膜の厚さも測定した。即ち、セルを囲むセル膜の厚みを、セル径の測定対象となった各セルについて撮影画像から1箇所測定し、その測定値を任意の10個のセルについて平均した平均値をセル膜厚とした。また、微小セル集合体30Gについては、撮影画像において、微小セル集合体30Gの輪郭のうち最も離れた2点間の距離を測定した。そして、その距離を撮影画像内で任意の10個のセルについて測定し、それら測定値のうち最大値と最小値を、それぞれ集合体サイズの最大値と最小値とした。
【0042】
<微小セル集合体の面積比率>
上記マイクロスコープを用いて、洗浄用スポンジの表面を、14mm×10mmの範囲でランダムに10箇所撮影した。そして、各撮影箇所において、撮影画像内の洗浄用スポンジの表面積に対する微小セル集合体30Gが占める面積の比率を画像処理にて算出した。その算出値を上記10箇所で平均したものを、微小セル集合体30Gの面積比率とした。
【0043】
<見掛け密度>
各実施例及び各比較例の洗浄用スポンジについて、見掛け密度をJIS K7220に準拠して測定した。
【0044】
[評価結果]
図3に示されるように、ポリウレタン樹脂発泡体からなる実施例1~3の洗浄用スポンジは、微小セル30と通常セル20を有するダブルセル構造となることが確認された。微小セル30のセル径は230~250μm、微小セル集合体30Gのサイズは1400~2500μmであった。また、通常セル20のセル径は1700~1800μmであった。一方、ポリウレタン樹脂発泡体からなるものの、原料に炭酸水素ナトリウムが含まれていない比較例1の洗浄用スポンジでは、ダブルセル構造が確認されなかった。
【0045】
また、実施例1~3の洗浄用スポンジでは、比較例2のメラミン樹脂発泡体からなる洗浄用スポンジに比べて、摩擦色落ち性試験において、色差ΔEの絶対値が大きくなることが確認された。即ち、実施例1~3の洗浄用スポンジは、比較例2の洗浄用スポンジに比べて、油性インキを落とし易くなっていることがわかった。
【0046】
なお、比較例1では、摩擦色落ち性試験中に摩擦子が21往復した時点で洗浄用スポンジが破断したため、洗浄性については確認できなかった。
図3に示す色差ΔEは、試験前から破断時点までの変化を表している。比較例1の洗浄用スポンジは、ポリウレタン樹脂発泡体からなると共に、見掛け密度が実施例1~3の洗浄用スポンジの2倍程度になっているが、ウレア結合比率が90%以上でダブルセル構造となった実施例1~3の洗浄用スポンジに比べて、擦る動作に対しては強度が弱いと考えられる。実施例1~3の洗浄用スポンジによれば、比較例1の洗浄用スポンジに比べて、軽量化と強度アップを図ることが可能となる。
【0047】
以上説明したように、本確認実験では、ポリウレタン樹脂発泡体からなりダブルセル構造を有する実施例1~3の洗浄用スポンジによれば、メラミン樹脂発泡体からなる比較例1の洗浄用スポンジよりも洗浄性を向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
20 通常セル
30 微小セル
30G 微小セル集合体