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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】素子内蔵基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240318BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H05K1/16 B
H05K1/16 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019068671
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167336
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 高章
(72)【発明者】
【氏名】田島 盛一
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 隆
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】丸山 高政
【審判官】寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332749(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、 前記基板本体の内部または表面に形成してある導体配線層と、
前記導体配線層の一部に接触するように、前記基板本体の内部に形成される素子形成層と、を有する素子内蔵基板であって、
前記素子形成層が、素子を形成するための機能性フィラーが内部に分散してある絶縁領域で構成してあり、
前記基板本体が、少なくとも一つの絶縁層を有し、
前記絶縁層の樹脂は熱可塑性樹脂で構成してあり、
前記基板本体は、前記絶縁層を貫通するスルーホール電極を有し、
前記スルーホール電極と前記導体配線層との間には、導体接続膜が介在してあり、
前記絶縁層を構成する樹脂の融点よりも、前記導体接続膜の融点が低い素子内蔵基板。
【請求項2】
前記絶縁領域を構成する樹脂は、熱可塑性の樹脂であって、前記基板本体を構成する樹脂の融点と実質的に同一の融点を有する樹脂で構成してある請求項1に記載の素子内蔵基板。
【請求項3】
前記機能性フィラーが、磁性体フィラーまたは誘電体フィラーである請求項1または2に記載の素子内蔵基板。
【請求項4】
前記基板本体が、少なくとも一つの絶縁層を有する請求項1~3のいずれかに記載の素子内蔵基板。
【請求項5】
前記基板本体を形成する樹脂は液晶ポリマーである請求項1~4のいずれかに記載の素子内蔵基板。
【請求項6】
第1支持基板の表面に、第1所定パターンの第1導体膜を形成する工程と、
一部の前記第1導体膜の上に、第1スルーホール電極となる第1導体ポストを形成する工程と
の一部の前記第1導体膜の上に、機能性フィラーと混合用樹脂粉とを塗布して原料粉を配置する工程と、
前記原料粉が配置された前記第1導体膜の上に、第1絶縁層を形成するための第1絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記第1絶縁層用樹脂粉を、前記混合用樹脂粉と共に第1熱プレスして、第1基板ユニットを形成する工程と、
前記第1導体ポストの頂面に、導体接続膜を形成する工程と、
第2支持基板の表面に、第2所定パターンの第2導体膜を形成する工程と、
一部の前記第2導体膜の上に、第2スルーホール電極となる第2導体ポストを形成する工程と、
前記第2導体ポストが形成された前記第2導体膜の上に、第2絶縁層を形成するための第2絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記第2絶縁層用樹脂粉を第2熱プレスして、第2基板ユニットを形成する工程と、
少なくとも前記第1基板ユニットと前記第2基板ユニットとを含む積層体を一括積層熱プレスして接合する工程と、を有し、
前記第1基板ユニットと前記第2基板ユニットとを含む積層体を熱プレスして接合する際に、前記第1基板ユニットの上に積層される別の基板ユニットの下面に形成してある導体膜に、前記導体接続膜が同時に接続され、
前記第1絶縁層用樹脂粉および前記第2絶縁層用樹脂粉は、融点が230~360℃の熱可塑性樹脂粉末であり、
前記一括積層熱プレス時の温度が、前記第1絶縁層用樹脂粉および前記第2絶縁層用樹脂粉の融点以下の温度であり、前記導体接続膜の融点よりも高い素子内蔵基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1絶縁層用樹脂粉と、前記第2絶縁層用樹脂粉と、前記混合用樹脂粉とが、実質的に同一の樹脂融点を有し、
前記導体接続膜の接続膜融点が、前記導体膜の導体膜融点よりも低い請求項6に記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層用樹脂粉が液晶ポリマーである請求項6または7に記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁層用樹脂粉の塗布と、前記機能性フィラーおよび前記混合用樹脂粉の塗布は、静電印刷法にて行われる請求項6~8のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1熱プレス時の温度が、前記第1絶縁層用樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低いと共に、前記混合用樹脂粉の融点よりも高く熱分解温度よりも低く、
前記第2熱プレス時の温度が、前記第2絶縁層用樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低い請求項7~9のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法により製造される素子内蔵基板。
【請求項12】
第1支持基板の表面に、第1所定パターンの第1導体膜を形成する工程と、
一部の前記第1導体膜の上に、第1スルーホール電極となる第1導体ポストを形成する工程と、
他の一部の前記第1導体膜の上に、機能性フィラーと混合用樹脂粉とを塗布して原料粉を配置する工程と、
前記原料粉が配置された前記第1導体膜の上に、第1絶縁層を形成するための第1絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記第1絶縁層用樹脂粉を、前記混合用樹脂粉と共に第1熱プレスして、第1基板ユニットを形成する工程と、
第2支持基板の表面に、第2所定パターンの第2導体膜を形成する工程と、
一部の前記第2導体膜の上に、第2スルーホール電極となる第2導体ポストを形成する工程と
記第2導体ポストが形成された前記第2導体膜の上に、第2絶縁層を形成するための第2絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記第2絶縁層用樹脂粉を第2熱プレスして、第2基板ユニットを形成する工程と、
前記第2導体ポストの頂面に、導体接続膜を形成する工程と、
少なくとも前記第1基板ユニットと前記第2基板ユニットとを含む積層体を一括積層熱プレスして接合する工程と、を有し、
前記第1基板ユニットと前記第2基板ユニットとを含む積層体を熱プレスして接合する際に、前記第2基板ユニットの上に積層される別の基板ユニットの下面に形成してある導体膜に、前記導体接続膜が同時に接続され、
前記第1絶縁層用樹脂粉および前記第2絶縁層用樹脂粉は、融点が230~360℃の熱可塑性樹脂粉末であり、
前記一括積層熱プレス時の温度が、前記第1絶縁層用樹脂粉および前記第2絶縁層用樹脂粉の融点以下の温度であり、前記導体接続膜の融点よりも高い素子内蔵基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1絶縁層用樹脂粉と、前記第2絶縁層用樹脂粉と、前記混合用樹脂粉とが、実質的に同一の樹脂融点を有し、
前記導体接続膜の接続膜融点が、前記導体膜の導体膜融点よりも低い請求項12に記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁層用樹脂粉が液晶ポリマーである請求項12または13に記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項15】
前記絶縁層用樹脂粉の塗布と、前記機能性フィラーおよび前記混合用樹脂粉の塗布は、静電印刷法にて行われる請求項12~14のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1熱プレス時の温度が、前記第1絶縁層用樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低いと共に、前記混合用樹脂粉の融点よりも高く熱分解温度よりも低く、
前記第2熱プレス時の温度が、前記第2絶縁層用樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低い請求項12~15のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法。
【請求項17】
請求項12~16のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法により製造される素子内蔵基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばキャパシタやインダクタなどの素子が内蔵してある素子内蔵基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタなどの受動素子が内蔵してある基板としては、たとえば下記の特許文献1に示す素子内蔵基板が知られている。この特許文献1にも示すように、従来の素子内蔵基板は、基板の内部に、キャパシタなどの素子を埋め込むための凹部または空間を作り、その内部に、素子を埋め込むことにより、基板を製造している。
【0003】
しかしながら、このような従来の素子内蔵基板では、キャパシタなどの素子を別に製造する必要があり、さらに、別に製造した素子を、基板の内部に埋め込むための作業を必要としている。また、別に製造した素子を基板の内部に埋め込むために、基板の薄型化が困難である。
【0004】
また、近年のプリント配線基板に対する信号周波数の高周波化より、従来のエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を使用した樹脂配線基板からより高周波特性の高い熱可塑性樹脂を使用したプリント配線基板の需要が高まっている。しかしながら、より高い成型温度が必要な熱可塑性樹脂での配線基板においては、受動素子の内蔵化は、内蔵する素子などの耐熱性の観点からも、より困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-131039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、製造が容易で薄型化が可能な素子内蔵基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る素子内蔵基板は、
基板本体と、
前記基板本体の内部または表面に形成してある導体配線層と、
前記導体配線層の一部に接触するように、前記基板本体の内部に形成される素子形成層と、を有する素子内蔵基板であって、
前記素子形成層が、素子を形成するための機能性フィラーが内部に分散してある絶縁領域で構成してある。
【0008】
本発明に係る素子内蔵基板では、たとえばキャパシタの一部あるいはインダクタの一部となる素子形成層が、絶縁層と共に形成される絶縁領域で構成してある。そのため、たとえば基板を製造する過程で、素子形成層も同時に形成することが可能となり、たとえばキャパシタあるいはインダクタなどの受動素子を、基板とは別に製造する必要がなくなる。したがって、基板の中に素子を埋め込む作業も必要ではなくなる。さらに、基板の製造過程で、素子を基板の中に作り込むため、基板の薄型化が可能になる。
【0009】
好ましくは、前記絶縁領域を構成する樹脂は、熱可塑性の樹脂であって、前記基板本体を構成する樹脂の融点と実質的に同一の融点を有する樹脂で構成してある。このような樹脂で構成することにより、基板本体の成形と同時に、絶縁領域も同時に成形することが容易である。そのため、基板の成形と同時に、基板の中に、キャパシタやインダクタなどの受動素子の成形も同時に行うことができる。
【0010】
前記機能性フィラーとしては、特に限定されないが、たとえば磁性体フィラーまたは誘電体フィラーであってもよい。磁性体フィラーを用いることで、インダクタを基板の内部に容易に製造することができ、素子内蔵基板の薄型化が容易である。誘電体フィラーを用いることで、キャパシタを基板の内部に容易に製造することができ、素子内蔵基板の薄型化が容易である。
【0011】
前記基板本体は、少なくとも一つの絶縁層を有していればよい。単一絶縁層の素子内蔵基板として用いてもよいし、複数の絶縁層が積層してあるマルチ積層基板型の素子内蔵基板として用いてもよい。
【0012】
好ましくは、前記基板本体の内部には、前記絶縁層を貫通するスルーホール電極を有する。素子内蔵基板がスルーホール電極を有することで、素子と回路を接続する立体的な回路接続が可能になる。
【0013】
好ましくは、前記絶縁層および前記絶縁領域は、絶縁粉体を熱プレスすることで同時に形成される。同時に形成されることで、素子内蔵基板の製造が容易になる。また、好ましくは、前記基板本体を形成する樹脂は、液晶ポリマーである。
【0014】
本発明の第1の観点に係る素子内蔵基板の製造方法は、
支持基板の表面に、所定パターンの導体膜を形成する工程と、
一部の前記導体膜の上に、機能性フィラーと混合用樹脂粉とを塗布して原料粉を配置する工程と、
前記原料粉が配置された前記導体膜の上に、絶縁層を形成するための絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記絶縁層用樹脂粉を、前記混合用樹脂粉と共に熱プレスして、基板ユニットを形成する工程と、を有する。
【0015】
なお、機能性フィラーと混合用樹脂粉とは、別々に塗布しても良いが、好ましくは、これらは予め混合してあり、混合粉(原料粉)として塗布されることが好ましい。その方が、分散性やシート形状維持性(濡れ性・浸透性)がよい。たとえば機能性フィラーのみ塗布して、絶縁用樹脂粉を上から塗布しても作成は可能である。
【0016】
本発明の第1の観点に係る素子内蔵基板の製造方法によれば、単一層の絶縁層を持つ素子内蔵基板でも、容易に製造することができる。
【0017】
本発明の第2の観点に係る素子内蔵基板の製造方法は、
第1支持基板の表面に、第1所定パターンの第1導体膜を形成する工程と、
一部の前記第1導体膜の上に、第1スルーホール電極となる第1導体ポストを形成する工程と、
他の一部の前記第1導体膜の上に、機能性フィラーと混合用樹脂粉とを塗布して原料粉を配置する工程と、
前記原料粉が配置された前記第1導体膜の上に、第1絶縁層を形成するための第1絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記第1絶縁層用樹脂粉を、前記混合用樹脂粉と共に第1熱プレスして、第1基板ユニットを形成する工程と、
第2支持基板の表面に、第2所定パターンの第2導体膜を形成する工程と、
一部の前記第2導体膜の上に、第2スルーホール電極となる第2導体ポストを形成する工程と、
前記第2導体ポストが形成された前記第2導体膜の上に、第2絶縁層を形成するための第2絶縁層用樹脂粉を塗布する工程と、
前記第2絶縁層用樹脂粉を第2熱プレスして、第2基板ユニットを形成する工程と、
少なくとも前記第1基板ユニットと前記第2基板ユニットとを含む積層体を一括積層熱プレスして接合する工程と、を有する。
【0018】
本発明の第2の観点に係る素子内蔵基板の製造方法によれば、マルチの絶縁層を持つ素子内蔵基板でも、容易に製造することができる。
【0019】
好ましくは、本発明の第2の観点に係る素子内蔵基板の製造方法は、
前記第1導体ポストおよび/または前記第2導体ポストの頂面に、導体接続膜を形成する工程をさらに有し、
前記第1基板ユニットと前記第2基板ユニットとを含む積層体を熱プレスして接合する際に、前記第1基板ユニットおよび/または前記第2基板ユニットの上に積層される別の基板ユニットの下面に形成してある導体膜に、前記導体接続膜が同時に接続される。
【0020】
このように構成することで、基板ユニットを構成する樹脂同士の接合と、積層方向に隣り合う基板ユニットの導体膜同士の接続を同時に行うことが可能になり、素子内蔵基板の製造が容易になる。
【0021】
好ましくは、前記第1絶縁層用樹脂粉と、前記第2絶縁層用樹脂粉と、前記混合用樹脂粉とが、実質的に同一の樹脂融点を有し、
前記導体接続膜の接続膜融点が、前記導体膜の導体膜融点よりも低く、
前記一括積層熱プレス時の温度が、前記樹脂融点以下の温度であり、前記接続膜融点よりも高い。
【0022】
このように構成することで、基板ユニットを構成する樹脂同士の接合と、積層方向に隣り合う基板ユニットの導体膜同士の接続を同時に行うことが可能になり、素子内蔵基板の製造が容易になる。
【0023】
好ましくは、前記第1熱プレス時の温度が、前記第1絶縁層用樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低いと共に、前記混合用樹脂粉の融点よりも高く熱分解温度よりも低く、
前記第2熱プレス時の温度が、前記第2絶縁層用樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低い。
【0024】
このように構成することで、キャパシタやインダクタなどの素子を形成すると共に、絶縁層の形成も同時に行うことができる。
【0025】
好ましくは、前記絶縁層用樹脂粉が液晶ポリマーである。また、好ましくは、前記絶縁層用樹脂粉の塗布と、前記機能性フィラーおよび前記混合用樹脂粉の塗布は、静電印刷法にて行われる。
【0026】
本発明の素子内蔵基板は、上記のいずれかに記載の素子内蔵基板の製造方法により製造されることがてきる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A図1Aは本発明の一実施形態に係る素子内蔵基板の概略断面図である。
図1B図1B図1Aに示すキャパシタ領域の要部拡大概略断面図である。
図1C図1C図1Aに示すインダクタ領域の要部拡大概略断面図である。
図1D図1Dは本発明の他の実施形態に係る素子内蔵基板の概略断面図である。
図2図2図1Aに示す素子内蔵基板の製造過程を示す概略断面図である。
図3図3図2の続きの工程を示す概略断面図である。
図4図4図3の続きの工程を示す概略断面図である。
図5図5図4の続きの工程を示す概略断面図である。
図6図6図5の続きの工程を示す概略断面図である。
図7図7図6の続きの工程を示す概略断面図である。
図8図8図7の続きの工程を示す概略断面図である。
図9図9図8の続きの工程を示す概略断面図である。
図10図10図9の続きの工程を示す概略断面図である。
図11図11図10の続きの工程を示す概略断面図である。
図12図12図11の続きの工程を示す概略断面図である。
図13A図13A図12の続きの工程を示す概略断面図である。
図13B図13B図13Aの続きの工程を示す概略断面図である。
図14A図14A図1Dに示す素子内蔵基板の製造過程を示し、図12の続きの工程を示す概略断面図である。
図14B図14B図14Aの続きの工程を示す概略断面図である。
図14C図14C図14Bの続きの工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0029】
第1実施形態
図1Aに示すように、本発明の一実施形態に係る素子内蔵基板2は、基板本体4を有する。基板本体4は、Z軸方向に積層してある複数の絶縁層6を有する。積層方向に隣り合う絶縁層6と絶縁層6との間には、導体配線層としての中間配線層8bが、X軸方向およびY軸方向に所定のパターンで形成してある。また、積層方向の最も外側に位置する絶縁層6の外表面には、導体配線層としての表面配線層8aが、X軸方向およびY軸方向に所定のパターンで形成してある。
【0030】
なお、図面において、Z軸が、絶縁層の積層方向に一致し、X軸およびY軸が、表面配線層8aおよび中間配線層8bが延在する平面に略平行である。X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直である。
【0031】
図1Aに示すように、表面配線層8aと中間配線層8bとを接続(電気的に/以下、特に断りが無い限り同様)するために、あるいは、異なる層に位置する中間配線層8bの相互間を接続するために、各絶縁層6には、Z軸方向に貫通するスルーホールが形成してあり、その内部に、スルーホール電極10が埋め込まれている。
【0032】
それぞれの絶縁層6は、熱可塑性樹脂で構成してあることが好ましく、特に限定されないが、高周波特性(誘電率、誘電正接)、低吸水率、耐熱性(耐リフロー特性)などの観点から、結晶性ポリエステルなどの液晶ポリマー(LCP)で構成されることが好ましい。
【0033】
表面配線層8aおよび中間配線層8bは、導電性を有してパターン加工し易いものであれば特に限定されず、たとえばCu、Ni、Al、Ti、Fe、Ag、Au、あるいはこれらの合金などで構成される。スルーホール電極10も、表面配線層8aまたは中間配線層8bと同様な金属(合金含む)で構成されるが、必ずしも同一である必要はない。表面配線層8aおよび中間配線層8bに関しても、両者は、同様な金属で構成されるが、必ずしも同一である必要はない。
【0034】
なお、スルーホール電極10と中間配線層8bとの間、あるいは、スルーホール電極10と表面配線層8aとの間には、導体接続膜28が介在してあることが好ましい。導体接続膜28は、表面配線層8aおよび中間配線層8bまたはスルーホール電極10を構成する金属よりも低融点の金属で構成してあることが好ましい。導体接続膜28を構成する金属の融点は、絶縁層6を熱プレスで積層方向に融着させる温度よりも低いことが好ましい。その熱プレス時に、同時に、導体接続膜28を介して、スルーホール電極10を中間配線層8bまたは表面配線層8aに接続させることができる。
【0035】
導体接続膜28を構成する金属としては、特に限定されないが、Sn,Ag,Sn-Ag,Cu-Ag,Sn-Cuなどが例示される。導体接続膜28を構成する金属の融点は、絶縁層6を構成する樹脂の融点(軟化温度)よりも少し低い材料で構成されることが好ましく、さらに好ましくは、絶縁層6を構成する樹脂の融点より、好ましくは10~50°C程度、さらに好ましくは20~40°C程度に融点が低いものがよい。
【0036】
本実施形態では、各絶縁層6のZ軸方向の厚みは、特に限定されないが、好ましくは、30~100μmである。各絶縁層6の厚みは、各スルーホール電極10のZ軸方向の高さに対応する。表面配線層8aおよび中間配線層8bの厚みは、特に限定されないが、好ましくは、5~20μmである。また、導体接続膜28の厚みは、特に限定されないが、好ましくは、0.2~5.0μmである。
【0037】
また、各表面配線層8aまたは中間配線層8bのパターン線幅は、特に限定されないが、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下も可能である。スルーホール電極10の外径も特に制限は無く、通常は、φ100~50μmで50μm以下でも製造は可能である。
【0038】
図1Aに示すように、本実施形態では、中間配線層8bの一部が、キャパシタ用電極層8b1として機能すると共に、中間配線層8bの他の一部が、インダクタ用導体層8b1として機能するようになっている。
【0039】
単一または複数の絶縁層6を挟んでZ軸方向に向き合う一対のキャパシタ用電極層8b1は、X軸およびY軸を含む平面で、略同一の面積を有し、それらの間が、絶縁領域としてのキャパシタ領域6aとなる。一対のキャパシタ用電極層8b1とキャパシタ領域6aとがキャパシタ素子を構成する。このキャパシタ素子は、図1Aに示す素子内蔵基板2の内部に内蔵される。なお、Z軸方向に向き合う一対のキャパシタ用電極層8b1は、X軸およびY軸を含む平面で、必ずしも同一面積でなくてもよい。
【0040】
それぞれのキャパシタ用電極層8b1は、たとえばスルーホール電極10を介して異なる層に位置する中間配線層8bに接続されたり、同じ層に位置する中間配線層8bに配線パターンで接続される。
【0041】
図1Bに示すように、キャパシタ領域6aでは、機能性フィラーとしての誘電体フィラー7aが、キャパシタ領域6aの内部に存在する樹脂6a1の内部に密に分散してある。
【0042】
キャパシタ領域6aの内部に存在する樹脂6a1は、絶縁層6を構成する樹脂と同一であることが好ましいが、必ずしも同一である必要はない。ただし、絶縁層6を構成する樹脂と、一対の電極層8b1間に位置するキャパシタ領域6aの内部に存在する樹脂6a1とは、実質的に同一の融点を有することが好ましい。実質的に同一とは、±15°Cの誤差は、実質的に同一とみなす趣旨である。
【0043】
キャパシタ領域6aに存在する誘電体フィラー7aとしては、特に限定されないが、たとえばチタン酸バリウムやチタン酸ストンチウムなどの常誘電体および強誘電体セラミックス粉末などが例示される。具体的には、誘電体フィラー7aとしては、一例として、Mg2 SiO4 、Mg2 TiO4 、MgTiO3 、ZnTiO3 、Zn2 TiO4 、CaTiO3 、SrZrO3 、BaTi2 5 、Ba2 Ti9 20、Ba2(Ti,Sn)9 20、ZrTiO4 、(Zr,Sn)TiO4 、BaNd2 Ti5 14 、BaNd2 Ti4 12、BaSm2 TiO14、BaO-CaO-Nd2 3 -TiO2 系、BaO-SrO-Nd2 3 -TiO2 系、Bi2 3 -BaO-Nd2 3 -TiO2 系、PbO-BaO-Nd2 3 -TiO2 系、(Bi2 3 ,PbO)-BaO-Nd 2 3 -TiO2 系、La2 Ti2 7 、Nd2 Ti2 7 、(Li,Sm)TiO3 、Ba(Mg1/3 Nd2/3 )O3 、Ba(Zn1/3 Ta2/3 )O3 、Ba(Zn1/3 Nd2/3 )O3 、Sr(Zn1/3 Nd2/3 )O3 などが例示される。
【0044】
フィラーの形状としては真球状のものが望ましく、粒径は0より大きく100μm以下が好ましく、平均粒径は0.1~20μmのものが好ましく、より好ましくは0.8~5μmである。キャパシタ領域6aにおける誘電体フィラー7aの体積密度(単位体積当たりのフィラー7aの体積)は、5~70%であることが好ましい。なお、フィラーの平均粒径は、0.8~5μmが最適だが、プレス後のシートの平坦性や絶縁性の観点から平均粒径は絶縁層6の厚みの半分以下が好ましい。
【0045】
図1Cに示すように、インダクタ用導体層8b2は、たとえば同じ層に位置する中間配線層8bに連続して接続するように形成してあり、Z軸から見て螺旋コイル状にパターニングしてある。このインダクタ用導体層8b2の少なくともZ方向の片側周囲に位置するインダクタ領域6bでは、機能性フィラーとしての磁性体フィラー7bが、インダクタ領域6bの内部に存在する樹脂6b1の内部に密に分散してある。
【0046】
インダクタ用導体層8b2とインダクタ領域6bとがインダクタ素子を構成する。このインダクタ素子は、図1Aに示す素子内蔵基板2の内部に内蔵される。
【0047】
インダクタ領域6bの内部に存在する樹脂6b1は、絶縁層6を構成する樹脂と同一であることが好ましいが、必ずしも同一である必要はない。ただし、絶縁層6を構成する樹脂と、インダクタ用導体層8b2の周囲に位置するインダクタ領域6bの内部に存在する樹脂6b1とは、実質的に同一の融点を有することが好ましい。
【0048】
インダクタ領域6bに存在する磁性体フィラー7bとしては、特に限定されないが、たとえば絶縁コーティングした金属磁性粉、あるいはフェライト粉などが例示される。金属磁性粉としては、たとえばカーボニル鉄、鉄-シリコン系合金、鉄-アルミ-珪素系合金、鉄-ニッケル系合金の鉄系合金などが例示され、鉄系ないしコバルト系のアモルファス合金などでもよい。また、フェライト粉としては、たとえばMn-Zn系、Ni-Zn系、Mn-Mg-Zn系などが例示される。磁性体フィラー7bの形状、粒径、体積密度などは、誘電体フィラー7aと同様である。
【0049】
次に、図1Aに示す多層構造の素子内蔵基板2の製造方法について詳細に説明する。
【0050】
まず、図2に示すように、支持基板20を準備する。支持基板20としては、特に限定されないが、SUS板などの金属板、ポリイミドフィルムなどの樹脂シート、ガラスエポキシ基板やその他などの高耐熱基板などが例示される。支持基板20としては、ハンドリング可能で、熱可塑性樹脂から成る絶縁層のプレス温度(溶融温度)に耐えれる耐熱性を持つものであればよい。
【0051】
支持基板20の表面には、予め下地導体膜22が形成してあることが好ましいが、支持基板20とは別に準備した下地導体膜22を支持基板20の表面に貼り付けてもよい。下地導体膜22は、後工程でのメッキ膜形成のためのシードとなる膜であり、たとえばCuや銅合金などの金属膜で構成される。
【0052】
下地導体膜22は、支持基板20の表面にスパッタになどで形成してもよいが、後々支持基板と共に剥離可能な方法で形成されることが好ましい。たとえば熱可塑性のポリイミド基板を支持基板20として、キャリア付きの極薄銅箔を貼ってハンドリング性を向上させているが、キャリア付き極薄銅箔そのものを、下地導体膜22付き支持基板20として使用してもよい。
【0053】
次に、図3に示すように、支持基板20の下地導体膜22の上に、所定パターンで、レジスト膜24を形成する。レジスト膜24のパターンは、たとえば導体配線層を形成するためのパターン24a、キャパシタ用電極層を形成するためのパターン24b、あるいはインダクタ用導体層を形成するためのパターン24cなどのいずれか一つ以上を含んであってもよい。
【0054】
次に、図4に示すように、所定パターンのレジスト膜24を用いて、レジスト膜24で覆われていない下地導体膜22の表面に、たとえば下地導体膜22をシードとして用いるメッキ法により、配線導体膜8を形成する。配線導体膜8は、図1Aに示す中間配線層8b、または図1Dに示す表面配線層8aとなる部分であり、たとえば電解銅メッキにより形成される。
【0055】
次に、図5に示すように、レジスト膜24を残した状態で、配線導体膜8の表面に、所定パターンでレジスト膜26を形成する。このレジスト膜26には、図1Aおよび図1Dに示すスルーホール電極10を形成するパターンで、スルーホール26aが形成してある。なお、図5に示すレジスト膜24は、除去した後に、レジスト膜26を所定パターンで形成してもよい。
【0056】
次に、図6に示すように、レジスト膜26で覆われていない配線導体膜8の表面に、たとえば電解銅メッキ法により、導体ポスト10aおよび枠体10bを形成する。導体ポスト10aは、図1Aおよび図1Dにおいて、スルーホール電極10となる部分である。
【0057】
また、枠体10bは、支持基板20の外周枠に沿って形成され、後工程において、絶縁層6を形成するための原料粉を線導体層8の上に塗布する際などに、原料粉が外側にはみ出さないようにするためなどに用いられる。枠体10bは、最終製品からは除去されてもよいし、残しておいてもよい。枠体10bは、必ずしも図6に示す工程で、導体ポスト10aと同時に形成されなくてもよい。その他の工程で、導体ポスト10aとは関係ない工程で、支持基板20の外周に取り付けられてもよい。
【0058】
次に、図7に示すように、図6に示すレジスト膜24および26が除去される。その結果、下地導体膜22の表面には、所定パターンの配線導体膜8が残される。配線導体膜8は、その一部は、図1Aまたは図1Dに示す表面配線層8aまたは中間配線層8bとなり、また、他の一部は、図1Aまたは図1Dに示すキャパシタ用電極層8a1または8b1となり、さらに他の一部は、図1Aまたは図1Dに示すインダクタ用導体層8a2または8b2となる。表面配線層8aまたは中間配線層8bの上には、導体ポスト10aが接続されて残される。
【0059】
なお、本実施形態では、導体ポスト10aの外径は、配線層8a,8bの線幅よりも小さいことが好ましい。配線層8a,8bの線幅は、前述したように、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下も可能である。導体ポスト10aの外径も、電気抵抗が高くなりすぎない範囲で、特に制限はない。なお、パターンの最小配線部よりは導体ポスト10aの外径の方が大きい場合が多い。
【0060】
次に、本実施形態では、図8に示すように、インダクタ用導体層8a2または8b2の上付近にのみ、第2原料粉7b1を塗布する。第2原料粉7b1は、たとえばスクリーン印刷、静電印刷、ノズル噴霧、ディスペンス法などの塗布方法により、インダクタ用導体層8a2または8b2の上付近にのみ塗布することができる。より好ましくは、静電印刷法にて塗布することで所定の位置にのみ塗布・固定化することが可能で、後から塗布する絶縁層用樹脂粉末と混合してしまうことなく塗布可能となる。
【0061】
第2原料粉7b1は、機能性フィラーとしての磁性体フィラー7b(図1C参照)と、インダクタ領域6bの樹脂6b1を構成することになる樹脂粉(混合用樹脂粉)とを含み、これらが混合されている。樹脂6b1を構成することになる樹脂粉は、本実施形態では、絶縁層6を形成することになる樹脂粉と同様であり、たとえばLCP粉末が用いられる。磁性体フィラー7bに対する樹脂粉の配合比は、第2原料粉7b1の全体を100%として、好ましくは0~50wt%、さらに好ましくは、10~40wt%である。
【0062】
図1Bに示す樹脂6b1を構成することになる樹脂粉の平均粒径は、磁性体フィラー7b(図1C参照)の平均粒径と同様であるが、磁性体フィラー7b(図1C参照)の平均粒径に対して、異なっていてもよい。
【0063】
次に、本実施形態では、図9に示すように、キャパシタ用電極層8a1または8b1の上付近にのみ、第1原料粉7a1を塗布する。第1原料粉7a1は、第2原料粉7b1と同様な塗布方法により、キャパシタ用電極層8a1または8b1の上付近にのみ塗布することができる。
【0064】
第1原料粉は、機能性フィラーとしての誘電体フィラー7a(図1B参照)と、キャパシタ領域6aの樹脂6a1を構成することになる樹脂粉(混合用樹脂粉)とを含み、これらが混合されている。樹脂6a1を構成することになる樹脂粉は、本実施形態では、絶縁層6を形成することになる樹脂粉と同様であり、たとえばLCP粉末が用いられる。
【0065】
第1原料粉における誘電体フィラー7aに対する樹脂粉の配合比は、第2原料粉7b1の場合と同様である。また、図1Bに示す樹脂6a1を構成することになる樹脂粉の平均粒径は、誘電体フィラー7a(図1B参照)の平均粒径と同様であるが、誘電体フィラー7a(図1B参照)の平均粒径に対して、異なっていてもよい。
【0066】
なお、図9に示す第2原料粉7b1の塗布と、第1原料粉7a1の塗布とは、その順序が逆であってもよい。塗布方法の制限はないが、特にスクリーン製版を使用する静電印刷を用いることにより、溶剤などを含まない第1原料粉7a1または第2原料粉7b1であっても、所定の部分のみに、再飛散することなく固定した状態で、容易に塗布することができる。
【0067】
次に、図10に示すように、支持基板20の下地導体膜22の表面、表面配線層8aまたは中間配線層8bの表面、第1原料粉7a1および第2原料粉の表面を覆うように、枠体10bの内側に、絶縁層用樹脂粉6αを塗布する。塗布のための方法は、第1原料粉7a1または第2原料粉7b1の塗布方法と同様であり、たとえば静電印刷法が用いられる。
【0068】
絶縁層用樹脂粉6αは、図1Aおよび図1Dに示す絶縁層6を形成するための樹脂粉であり、好ましくは融点が230~360℃の熱可塑性樹脂粉末、たとえば低誘電率や低誘電正接といった高周波特性や低吸水性の観点から液晶ポリマー(LCP)の粉末が好ましい。LCP粉末の粒径は、好ましくは、1~60μmの球状粉末であり、本実施形態では、樹脂粉αは、第1原料粉7a1および第2原料粉7b1に含まれる樹脂粉と同じ材質で同じ粒径範囲の粉が用いられる。
【0069】
絶縁層用樹脂粉6αには、LCP樹脂粉以外に、必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。
【0070】
次に、枠体10bよりも上に盛り上がっている絶縁層用樹脂粉6αを、Z軸の上から、熱プレスして溶融させて、図11に示すように、シート状の絶縁層6を形成する。熱プレス時の温度は、好ましくは、絶縁層用樹脂粉6αの融点以上の温度であり、樹脂粉6αの熱分解温度以下の温度であり、さらに好ましくは、絶縁層用樹脂粉6αの融点に10~50°C程度に高い温度である。また、熱プレス時の圧力は、特に限定されず、枠体10bの内側で、樹脂粉6αから所定厚みのシート状の絶縁層6を成形できる程度の圧力であればよい。
【0071】
シート状の絶縁層6を成形するための熱プレス時には、図10に示す原料粉7a1および7b1に含まれる樹脂粉も溶融してシート化され、図11に示すように、キャパシタ領域6aおよびインダクタ領域6bがそれぞれ形成される。
【0072】
キャパシタ領域6aでは、図1Bに示すように、絶縁層6と一体化されたシート状の樹脂6a1の内部に、誘電体粒子7aが緻密に分散されている。また、図11に示すインダクタ領域6bでは、図1Cに示すように、絶縁層6と一体化されたシート状の樹脂6b1の内部に、磁性体粒子7bが緻密に分散されている。
【0073】
なお、図11に示すように、必要に応じて、絶縁層6の上面の平坦化を図るためと、導体ポスト10aの頂部および絶縁領域6aの頂部に付着してある余分な絶縁層6を除去するためなどに、絶縁層6の上面の研磨処理を行ってもよい。研磨方法としては、特に限定されず、化学機械研磨(CMP)法、砥石研磨法、フライカットなどの方法が例示される。
【0074】
次に、図12に示すように、導体ポスト10aの頂部に、導体接続膜28を形成することで、基板ユニット30aを形成することができる。なお、枠体10bの上部にも、導体接続膜28を形成してもよいが、形成しなくてもよい。導体接続膜28を導体ポストの頂部に形成するための方法としては、たとえば電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法などの方法が例示される。
【0075】
導体接続膜28は、導体ポスト10aおよび表面配線層8a(または中間配線層8b)を構成する金属の融点よりも低い融点を有する金属で構成してある。
【0076】
上述した図2図12に示す製造工程と同様にして、図11に示す基板ユニット30a以外に、たとえば図13Aに示す基板ユニット30b~30dを製造することができる。なお、各基板ユニット30a~30dを積層して熱プレスする際には、図12に示す支持基板20および下地導体膜22は、各基板ユニット30a~30dから取り除かれている。
【0077】
図13Aに示すように、基板ユニット30bでは、シート状の絶縁層6の内部に、キャパシタ領域6aは形成されずに、インダクタ領域6bのみが形成してあり、そのインダクタ領域6bの頂部は、絶縁層6の表面から露出してあり、Z軸の上側に積層される絶縁層6のインダクタ用導体層8b2に接触可能になっている。また、基板ユニット30cおよび30dでは、キャパシタ領域6aおよびインダクタ領域6bは形成されずに、ポスト導体10aと、配線層8aまたは8bと、枠体10bのみが形成してある。
【0078】
これらの基板ユニット30a~30dは、導体箔8cと共に、図13Bに示すように、熱プレス装置40により熱プレス(一括積層熱プレス)される。導体箔8cとしては、特に限定されないが、配線層8a,8bを構成する金属と同様な金属で構成され、たとえば銅箔で構成される。導体箔8cは、積層方向の最上部に積層され、エッチングなどでパターニングされて、図1Aに示す表面配線層8aとなる。
【0079】
一括積層熱プレス時には、積層方向に隣り合う絶縁層6同士が熱融着すると共に、低融点の導体接続膜28がして、導体ポスト10aと配線層8bとを接続させると共に、導体ポスト10aと導体箔8cとを接続させる。一括積層熱プレス時の温度は、絶縁層を構成する樹脂の融点以下の温度であることが好ましく、導体接続膜28の融点よりも高いことが好ましい。
【0080】
このようにして図1Aに示す素子内蔵基板2を製造することができる。
【0081】
図1Aに示す本実施形態に係る素子内蔵基板2では、たとえばキャパシタの一部となるキャパシタ領域6aと、インダクタの一部となるインダクタ領域6bが、絶縁層6と共に形成される。そのため、たとえば多層基板を製造する過程で、素子形成層となるキャパシタ領域6aおよび/またはインダクタ領域6bも同時に形成することが可能となる。たとえばキャパシタあるいはインダクタなどの受動素子を、多層基板とは別に製造する必要がなくなる。したがって、多層基板の中に素子を埋め込む作業も必要ではなくなる。さらに、多層基板の製造過程で、素子を基板の中に作り込むため、多層基板の薄型化が可能になる。
【0082】
さらに本実施形態では、キャパシタ領域6aおよび/またはインダクタ領域6bに含まれる樹脂は、基板本体を構成する絶縁層6の樹脂の融点と実質的に同一の融点を有する。このように構成することで、基板本体4の成形と同時に、キャパシタ領域6aおよび/またはインダクタ領域6bも同時に成形することが可能である。その結果、多層基板の成形と同時に、多層基板の中に、キャパシタやインダクタなどの受動素子の成形も同時に行うことができる。
【0083】
また本実施形態の素子内蔵基板2では、基板本体4の内部には、絶縁層6を貫通するスルーホール電極10を有する。素子内蔵基板2がスルーホール電極10を有することで、キャパシタなどの素子と回路を接続する立体的な回路接続が可能になる。
【0084】
さらに本実施形態では、絶縁層6およびキャパシタ領域6aおよび/またはインダクタ領域6bは、熱プレスすることで同時に形成される。同時に形成されることで、素子内蔵基板2の製造が容易になる。
【0085】
また、本実施形態に係る素子内蔵基板の製造方法では、図13Bに示すように、基板ユニット30a~30dを構成する絶縁層6同士の熱融着接合と、積層方向に隣り合う基板ユニット30a~30dの配線膜8a,8bと導体ポスト10aとの接続を同時に行うことが可能になる。その結果、素子内蔵基板2の製造が容易になる。
【0086】
さらに、本実施形態では、絶縁層6を形成する樹脂の融点と、キャパシタ領域6aに含まれる樹脂の融点と、インダクタ領域6bに含まれる樹脂の融点とが、実質的に同一である。しかも、導体接続膜28の融点が、配線膜8a,8bの融点よりも低く、一括積層熱プレス時の温度が、絶縁層6の樹脂の融点以下の温度であり、導体接続膜28の融点よりも高い。
【0087】
このように構成することで、基板ユニット30a~30dを構成する樹脂同士の接合と、積層方向に隣り合う基板ユニット30a~30dの配線膜8a,8bと導体ポスト10aとの接続を同時に行うことが容易になる。
【0088】
さらに、図11に示すシート状の絶縁層6を形成するための熱プレス時の温度は、絶縁層6を形成するための樹脂粉の融点より高く熱分解温度よりも低いと共に、領域6a,6bに含まれる樹脂の融点よりも高く熱分解温度よりも低い。このように構成することで、絶縁層6の形成と同時に、キャパシタやインダクタなどの素子を同時に形成することができる。
【0089】
第2実施形態
図1Dに示すように、本発明の他の実施形態に係る素子内蔵基板2aは、以下に示す以外は、第1実施形態の素子内蔵基板2と同様であり、同様な作用効果を奏する。
【0090】
本実施形態の素子内蔵基板2aは、単一層の絶縁層6を持つ基板本体4aから成る単層基板である。絶縁層6の上下の各表面には、導体配線層としての表面配線層8aが、それぞれX軸方向およびY軸方向に所定のパターンで形成してある。また、絶縁層6には、Z軸方向に貫通するスルーホールが形成してあり、その内部に、スルーホール電極10が埋め込まれている。
【0091】
また、絶縁層6には、キャパシタ領域6aと、インダクタ領域6bとが、一体化されて形成してある。本実施形態では、表面配線層8aの一部が、キャパシタ用電極層8a1を兼ねてあり、表面配線層8aの他の一部が、インダクタ用導体層8a2を兼ねている。
【0092】
本実施形態の素子内蔵基板2aを製造する際には、図2から図12に示す製造工程は第1実施形態と同様である。本実施形態では、図12に示す製造工程から、図14Aに示すように、単一の基板ユニット30aの上面に、導体箔8cを重ねて積層し、Z軸方向から熱プレスすることで、導体箔8cを、基板ユニット30aの上面に接合する。
【0093】
導体箔8cは、図14Bおよび図14Cに示すように、レジスト膜27などを用いて所定パターンにエッチングされ、図1Dに示す素子内蔵基板2aの表面配線層8aとなる。図14Cに示すレジスト膜27、下地導体膜22および支持基板20は、最終製品の図1Dに示す素子内蔵基板2aからは除去される。枠体10bも除去されてもよい。
【0094】
本実施形態に係る素子内蔵基板2aの製造方法によれば、単一層の絶縁層6を持つ素子内蔵基板2aでも、容易に製造することができる。
【0095】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0096】
たとえば、素子内蔵基板2,2aの内部に形成される素子としては、キャパシタやインダクタに限らず、圧電体や抵抗体などの素子であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
2,2a… 素子内蔵基板
4,4a… 基板本体
6… 絶縁層
6α… 絶縁層用樹脂粉
6a… キャパシタ領域(絶縁領域/素子形成層)
6a1… 樹脂
6b… インダクタ領域(絶縁領域/素子形成層)
6b1… 樹脂
7a… 誘電体フィラー(機能性フィラー)
7a1… 第1原料粉
7b… 磁性体フィラー(機能性フィラー)
7b1… 第2原料粉
8… 配線導体膜
8a… 表面配線層(導体配線層)
8a1… キャパシタ用電極層
8a2… インダクタ用導体層
8b… 中間配線層(導体配線層)
8b1… キャパシタ用電極層
8b2… インダクタ用導体層
8c… 導体箔
10… スルーホール電極
10a… 導体ポスト
10b… 枠体
20… 支持基板
22… 下地導体膜
24… レジスト膜
26… レジスト膜
26a… スルーホール
28… 導体接続膜
30a~30d… 基板ユニット
40… 熱プレス装置
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C