(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】力ベクトル情報を利用するカテーテル接触場所の決定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20240318BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20240318BHJP
【FI】
A61B5/367 100
A61B5/287 100
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019082712
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ザール
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル・ジルバーマン
(72)【発明者】
【氏名】ローネン・クルプニク
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/197114(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/071490(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/058838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の心臓内に挿入されるように構成されているプローブと通信する電気インターフェースと、
プロセッサとを含み、前記プロセッサが、
前記電気インターフェースを介して前記プローブから、(i)前記心臓内における前記プローブの遠位先端部の位置を示す位置信号と、(ii)前記遠位先端部に加えられた接触力を示す接触力表示と、(iii)前記位置において前記遠位先端部によって取得された電気生理学的(EP)測定値とを受信し、
前記遠位先端部から受信した前記接触力表示に基づいて接触力ベクトルを計算し、
前記位置信号及び前記接触力ベクトルに基づいて、前記遠位先端部が組織に接触する、前記心臓の電気解剖学的マップ上の場所を推定し、
前記推定場所に関連付けられた前記EP測定値を用い、前記電気解剖学的マップを更新するように、
構成さ
れ、
前記プロセッサが、前記接触力ベクトルに基づいて推定された第1の接触場所候補を、前記位置信号に基づいて推定された、1つ以上の第2の接触場所候補と比較し、前記第1及び第2の接触場所候補のうちの1つを選択し、前記推定場所として供することにより、前記場所を推定するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記位置信号が、前記遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、
前記EP測定値が、前記位置において前記遠位先端部に取り付けられた電極によって提供され、
前記プロセッサが、前記接触力ベクトルと垂直、かつ、前記位置センサから前記電極に画定される方向に平行な第1のベクトルを計算し、前記位置センサを起点として前記第1のベクトルが前記電気解剖学的マップ上の組織の場所と交差する点を計算することにより、前記第1の接触場所候補を推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記位置信号が、前記遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、前記プロセッサが、前記第1の
接触場所
候補と前記位置センサとの間の距離を計算するように構成され、前記計算された距離が所定の距離を超える場合、前記第2の
接触場所
候補のうちの1つを選択し、前記推定場所として供するように構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記計算された距離が前記所定の距離以下である場合に、前記第1の
接触場所
候補を選択し、前記推定場所として供するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
方法であって、
プロセッサが、患者の心臓内に挿入されるように構成されているプローブと通信すること、
前記プロセッサが、前記プローブから、(i)前記心臓内における前記プローブの遠位先端部の位置を示す位置信号と、(ii)前記遠位先端部に加えられた接触力を示す接触力表示と、(iii)前記位置において前記遠位先端部によって取得された電気生理学的(EP)測定値とを受信すること、
前記プロセッサが、前記遠位先端部から受信した前記接触力表示に基づいて接触力ベクトルを計算すること、
前記プロセッサが、前記位置信号及び前記接触力ベクトルに基づいて、前記遠位先端部が組織に接触する、前記心臓の電気解剖学的マップ上の場所を推定すること、並びに
前記プロセッサが、前記電気解剖学的マップを、前記推定場所に関連付けられた前記EP測定値を用い更新すること、を含
み、
前記プロセッサが前記場所を推定することが、前記プロセッサが、前記接触力ベクトルに基づいて推定された第1の接触場所候補を前記位置信号に基づいて推定された1つ以上の第2の接触場所候補と比較すること、並びに前記プロセッサが、前記第1及び第2の接触場所候補のうちの1つを選択し、前記推定場所として供すること、を含む、方法。
【請求項6】
前記位置信号が、前記遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、
前記EP測定値が、前記位置において前記遠位先端部に取り付けられた電極によって提供され、
前記プロセッサが前記第1の接触場所候補を推定することは、
前記プロセッサが、前記接触力ベクトルと垂直、かつ、前記位置センサから前記電極に画定される方向に平行な第1のベクトルを計算し、
前記プロセッサが、前記位置センサを起点として前記第1のベクトルが前記電気解剖学的マップ上の組織の場所と交差する点を計算すること、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記位置信号が、前記遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、
前記プロセッサが前記場所を推定することが、
前記プロセッサが、前記第1の
接触場所
候補と前記位置センサとの間の距離を計算すること、及び前記計算された距離が所定の距離を超える場合、
前記プロセッサが、前記第2の
接触場所
候補のうちの1つを選択し、前記推定場所として供すること、を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサが前記場所を推定することは、前記計算された距離が前記所定の距離以下である場合、
前記プロセッサが、前記第1の
接触場所
候補を選択し、前記推定場所として供すること、を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、電気解剖学的マッピング、特に心臓の電気解剖学的マッピングに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルと心臓組織との接触を検証するための様々な技術が提案されてきた。例えば、米国特許第8,357,152号では、患者の体腔内に挿入するための遠位端と、遠位端に配置され、体腔内の組織と接触するように構成されている遠位先端部とを有する、医療用プローブを開示している。弾性部材が、遠位先端部をプローブの遠位端に連結し、この弾性部材は、遠位先端部が組織とつながったときに、この遠位先端部に加えられた圧力に応じて変形するように構成されている。プローブ内の位置センサは、プローブの遠位端に対する遠位先端部の位置を検知し、この位置は弾性部材の変形に応じて変化する。一部の実施形態では、プローブ内の位置センサによって提供される信号は、カテーテル遠位端の位置及び遠位先端部に加えられた力の両方を示す。
【0003】
別の例として、米国特許公開第2011/0125150号では、体内の組織へのアブレーション療法剤の有効な送達を評価するためのシステム及び方法を開示している。組織の三次元解剖学的マップが生成され、対応する体積を画定するマップと共に表示される。その体積内の場所に対応したインデックスが、その場所におけるアブレーション療法の状態を示すインデックスと共に生成される。このインデックスは、アブレーション電極がその場所に存在している持続時間、提供されたエネルギーの量、その場所におけるアブレーション電極と組織との間の電気結合の程度、及び温度といった1つ以上の因子から導かれ得る。一実施形態では、組織に対するアブレーション電極の向きは、カテーテルに取り付けられた力ベクトルセンサによって、又はインピーダンス測定によって測定できる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、プローブと通信する電気インターフェースと、プロセッサとを含む、システムを提供する。電気インターフェースは、患者の心臓内に挿入されるように構成されている。プロセッサは、電気インターフェースを介してプローブから、(i)心臓内におけるプローブの遠位先端部の位置を示す位置信号と、(ii)遠位先端部に加えられた接触力を示す接触力表示と、(iii)その位置において遠位先端部によって取得された電気生理学的(EP)測定値とを受信するように、構成されている。プロセッサは更に、遠位先端部から受信した接触力表示に基づいて接触力ベクトルを計算するように、構成されている。プロセッサは更に加えて、位置信号及び接触力ベクトルに基づいて、遠位先端部が組織に接触する、心臓の電気解剖学的マップ上の場所を推定し、推定場所に関連付けられたEP測定値を用い、電気解剖学的マップを更新するように、構成されている。
【0005】
一部の実施形態では、プロセッサは、接触力ベクトルに基づいて推定された第1の場所を位置信号に基づいて推定された1つ以上の第2の場所と比較し、第1及び第2の場所のうちの1つを選択し、推定場所として供することにより、場所を推定するように構成されている。
【0006】
一部の実施形態では、位置信号は、遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、プロセッサは、第1の場所と位置センサとの間の距離を計算するように構成され、計算された距離が所定の距離を超える場合、第2の場所のうちの1つを選択し、推定場所として供するように構成されている。
【0007】
一実施形態では、プロセッサは、計算された距離が所定の距離以下である場合に、第1の場所を選択し、推定場所として供するように構成されている。
【0008】
更に、本発明の一実施形態によれば、患者の心臓内に挿入されるように構成されているプローブと通信すること、及びプローブから、(i)心臓内におけるプローブの遠位先端部の位置を示す位置信号と、(ii)遠位先端部に加えられた接触力を示す接触力表示と、(iii)その位置において遠位先端部によって取得された電気生理学的(EP)測定値とを受信すること、を含む、方法が提供される。遠位先端部から受信した接触力表示に基づいて接触力ベクトルを計算する。位置信号及び接触力ベクトルに基づいて、遠位先端部が組織に接触する、心臓の電気解剖学的マップ上の場所を推定する。電気解剖学的マップを、推定場所に関連付けられたEP測定値を用い更新する。
【0009】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく心臓内の場所追跡及びアブレーションシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、カテーテル遠位端の詳細を示す、カテーテル遠位端の概略側面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による、カテーテルと組織との間の接触場所が決定される場面の概略描写図である。
【
図3B】本発明の一実施形態による、カテーテルと組織との間の接触場所が決定される場面の概略描写図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、カテーテル遠位端の正確な接触場所を決定するための方法を例示する、概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概略
カテーテル遠位端が組織と接触する(すなわち、触れる)場所を正確にマッピングすることは、心臓診断及び治療用途において重要である。例えば、心室の内側表面上の位置の場所なマッピングは、医師が正確な電気解剖学的データを取得することを可能にし、結果として、正しい診断を可能にする。その後、医師は、例えば、その場所でアブレーションを実施するかどうか、及びそれをどのように実施するかを決定できる。
【0012】
カテーテルは、接触場所を測定するために、通常、1つ以上の遠位電極に近接して、その遠位端に取り付けられた位置センサを有してもよい。以下の説明では、簡潔にするために、単一の遠位電極について説明する。
【0013】
遠位電極は、心電図などの電気解剖学的データ(例えば、電気生理学的信号)を組織の接触場所で取得するために使用され、必要に応じてまた、その場所でアブレーションを実施するために使用されてもよい。プロセッサは、心臓組織の電気解剖学的にマッピングされた表面上で位置センサによる測定位置に最も近い点として、遠位電極が組織と接触する場所を、決定し得る。
【0014】
プロセッサは、このような決定プロセスにおいて、カテーテルによって、少なくとも部分的に、既に取得された電気解剖学的マップを利用してもよい。プロセッサは、位置センサによって測定された位置を、マップ上に多数の方向に投影し、マッピングされた組織表面で最も近い1つ以上の交点を、電極の候補接触場所として選び得る。
【0015】
実際には、組織表面上の複数の相反する候補接触場所は、一定の許容差内で、位置センサによって測定された位置と一致し得る。従って、上記の決定プロセスは、誤った又は不確かな結果を生じることがある。例えば、以下に説明するように、カテーテル遠位端が組織の表面に対して垂直に向いていない場合、誤った結果を生じることがある。別の例として、カテーテル遠位端の近傍の組織が湾曲形状を有する場合、電気解剖学的マップ上の2つ以上の場所は、遠位電極が実際に触れる正確な場所を区別できない、位置センサに最も近い場所にある場合がある。
【0016】
本発明の実施形態は、接触力感知能力を有するカテーテルを使用して、遠位端上の組織によって加えられた力を測定する(すなわち、接触力ベクトルを測定する)。プロセッサは、接触した場所を決定する際に、位置センサによる位置測定に加えて、接触力ベクトル情報をインプットとして使用する。力の方向(以下、「力ベクトル」と呼ぶ)は、以下に詳述するように、遠位端位置に関して、接触した場所を追加情報として与える。
【0017】
従って、プロセッサは、接触した場所を決定するために、2つの基準を使用する。すなわち、マッピングされた組織で位置センサによる測定位置に最も近い点、及び力ベクトルが示すマッピングされた組織上の場所である。一実施形態では、異なる成り行きを対象に含めるために、両方の候補場所が定量化され、候補接触場所のうちどれが正しいかを判定する方法が提供される。
【0018】
多くの場合、接触力ベクトルに基づいて決定された接触場所は、位置センサを使用して決定された場所よりも正確であり得る。その典型的な理由は、力決定された場所が、力を誘発した組織上の接触場所をリアルタイムで直接示すことであると考えられる。一方、解剖学的マップとの位置の相関は、上述のように、確かさがより低くてもよい。
【0019】
以下の説明では、力ベクトルに基づいて導かれる場所を、「第1の場所」と呼ぶ。位置センサの位置を投影することに基づく、マップ上の1つ以上の最も近い場所を、「第2の場所」と呼ぶ。
【0020】
従って、開示された技術は、電気解剖学的マップの精度を実質的に改善することができる。開示された技術は、精度を向上させることにより、診断及び治療方針決定の質、アブレーション治療の質、あるいは、選んだ場合、別の治療的アプローチにおける最善での結果を、大幅に改善することができる。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく心臓内の場所追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)製のCARTO(登録商標)システムに基づくことができる。このシステムは、カテーテル28と制御コンソール34との形態をなす侵襲プローブを備えている。以下に記載される実施形態では、カテーテル28は、当該技術分野において既知のように、心内膜組織の電気解剖学的マップを生成し、任意選択的に組織上の場所をアブレーションすることが想定されている。あるいは、カテーテルは、心臓又は体内の他の臓器の、他の治療目的及び/又は診断目的で使用することができる。
【0022】
医師26は、カテーテル遠位端30が患者の心臓22の心室内に入るように、カテーテル28を、患者24の血管系を通して挿入する。医師は、遠位端30の遠位先端部が所望の場所で心内膜組織とつながるように、カテーテルを前進させる。遠位先端部は、少なくとも部分的に遠位電極50で覆われており、電極50は、電気解剖学的データを取得するために、及び任意的に高周波(RF)アブレーションのために使用されてもよい。プロセッサ36は、測定された電気解剖学的データを受信し、ディスプレイ42上に見られる患者24の心臓22の一部分の電気解剖学的マップ31を生成する。プロセッサ36は更に、メモリ内に電気解剖学的マップ31を記憶する。遠位端30は、先端が心臓組織と物理的に接触しているときに組織(すなわち、心臓の内側表面)が遠位先端部に加える力を測定する、接触力センサ57を備える。
【0023】
カテーテル28は、典型的には、その近位端で、好適なコネクタによってコンソール34に接続される。コンソールは、RF発生器40を備えていてもよく、このRF発生器は、遠位先端部につながっている場所において、心臓内の組織をアブレーションする必要のある場合に、カテーテルを介し、高周波電気エネルギーを供給する。あるいは、このカテーテル及びシステムは、冷凍アブレーションなど、当該技術分野において既知である他の技術によってアブレーションを実行するように構成することができる。
【0024】
コンソール34は、磁気位置感知を使用し、心臓22内部の遠位端30の位置座標を決定する。この目的のために、コンソール34内の駆動回路38が、磁場発生器32を駆動し、患者24の体内に磁場を発生させる。典型的には、磁場発生器は、患者の胴体の下の、患者の体外の既知の位置に置かれる。発生した磁場は、心臓22を含む既定の作業ボリューム内を貫く。これらの磁場に応答して、カテーテル28の遠位端30内の磁場位置センサ56は、磁場発生器32によって画定される固定基準枠に対するセンサ56の位置を示す、位置信号を生成する。プロセッサ36は、カテーテル28及び電気インターフェース回路35を通って走るワイヤ(図示せず)を介し、位置信号を受信する。プロセッサ36は、位置センサ56の位置座標を決定し、心臓22内の電極50の場所を表示するために、位置信号を処理する。この位置感知の方法は、上述のCARTOシステムに実装され、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、その開示が全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
プロセッサ36は、典型的には汎用コンピュータを含み、カテーテル28から信号を受信し、コンソール34の他の構成要素を制御するため、好適な前方端及び電気インターフェース回路35を備える。プロセッサは、本明細書で説明する機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよい。このソフトウェアは、例えばネットワークを通じて電子的形態でコンソール34にダウンロードされることができる。又は、ソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体などの有形媒体により提供されることができる。あるいは、プロセッサ36の機能の一部又は全ては、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。カテーテル、及びシステム20の他の構成要素から受信した信号に基づいて、プロセッサ36は、ディスプレイ42を駆動し、患者の体内での遠位端30の位置に関する視覚的フィードバック、並びに進行中の処置に関する状況情報及び助言を、医師26に与える。
【0026】
力ベクトル情報を利用するカテーテル接触場所の決定方法
図2は、本発明の実施形態による、遠位端30の詳細を示す、カテーテル28の遠位端30の概略側面図である。遠位端30は、可撓性遠位部分54及び遠位先端部52を備える。遠位部分54は可撓性であり、曲げ及び圧縮が妨げられない。遠位先端部52は、可撓性遠位部分54と比較して、典型的には、相対的に剛直である。図示したように、遠位先端部52は遠位電極50を含む。
【0027】
可撓性遠位部分54の屈曲の範囲制限は、組織によって遠位先端部52に加えられた機械的力63に応じ、支障ない。接触力センサ57は、この力を測定する。力63などの力は、例えば、電気解剖学的マッピング及び/又はアブレーション処置中に遠位先端部52が心内膜に押し付けられるときに発生する。例えば、電気解剖学的マッピング及び/又はアブレーション中の、遠位先端部と心内膜との間の良好な電気的接触を達成するための所望の接触圧は、既知である。従って、遠位部分54は、適用された圧力に応答して、例えば、十分な屈曲を可能にするように構成されてもよく、これは、遠位先端部の場所を遠位先端部52の最大でおよそその長さまで横方向に変化させ、遠位先端部52の対応する角度偏向によって、可撓性遠位部分54に対して最大で約90度まで変化させる。
【0028】
図2で分かるとおり、可撓性遠位部分54は、遠位先端部52に近接して位置決めされた磁気位置センサ56を備える。プロセッサ36は、電極50の位置を決定するために、位置センサ56を使用する。一部の実施形態では、位置センサ56はまた、遠位先端部52に加えられた接触力を示す接触力センサとしても機能し得る。位置センサは、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,357,152号に詳細に記載されるように、遠位端に対する遠位先端部の軸方向変位及び向きを示す信号に基づいて、接触力表示を提供する。そのような場合、位置センサ56はまた、接触力センサ57として機能する。一般に、遠位先端部52に加えられる力を測定するために、任意の別の種類の圧力センサが遠位部分54又は遠位先端部52に取り付けられてもよい。このようなセンサは、例えば、ひずみセンサであってもよい。
【0029】
一部の実施形態では、プロセッサ36は、接触力センサ57によって感知された遠位先端部52に加えられた力を分析し、力ベクトル63(すなわち、力の大きさ及び方向)を決定するように構成される。プロセッサ36は、力ベクトル63に基づいて、垂直な力ベクトル64を導出する。一般に、2つの反対方向に向く垂直ベクトルが存在し、プロセッサ36は、位置センサ56から電極50に画定される方向に向いてほぼ平行である垂直な力ベクトル64を選択し、反対方向に向いて平行な垂直ベクトルを無視する。
【0030】
以下に示すように、プロセッサ36は、接触力に基づいて接触場所候補、すなわち第1の場所61を決定する際に、垂直な力ベクトル64を使用する。そのような決定は、屈曲した遠位部分54により大部分について力ベクトルに垂直な方向のものとして画定される、幾何学的形状に依存する。一実施形態では、計算された垂直な力ベクトル64が指す、電気解剖学的マップ上の場所が、候補接触場所である。この理由は、以下に示すように、垂直な力ベクトル64が、先端が組織と接触している間、遠位先端部の方向に概ねその位置を指すからである。
【0031】
上述したように、プロセッサ36は、垂直な力ベクトル64を用いて、遠位先端部52の既知の物理的長さに基づいて、センサ56に対する電極50の第1の場所61を推定する。具体的には、プロセッサ36は、(i)プロセッサ36が垂直な力ベクトル64について決定している向きの、電気解剖学的マップ31上で推定された第1の接触場所61と、(ii)位置センサ56との間の距離として定義される、垂直な力ベクトル64の長さを計算する。この長さを、以下、力ベクトル導出距離‘FVDD’と呼ぶ。以下に示すように、FVDDは、電極50が組織に接触する場所を、正確に決定するための基準を設定するために機能する。
【0032】
力ベクトルに基づいて接触場所を決定する利点は、
図2に例示される場合において示される。図に見られるように、計算が、センサ56に最も近いマップ上の第2の候補場所を見つけるために、マップ上の位置センサ56の位置の投影のみに基づいている場合、電極50の2つの候補場所、すなわち第2の場所59A及び59Bが利用可能となる。更に見られるように、心臓22の心臓表面70の湾曲により、第2の場所59A及び59Bは、実際に有意に異なる。更に、
図2によって示される例では、組織70の壁の鋭い曲率は、実際に位置センサ56に近接した誤った場所(第2の場所59A)の原因となり得る。換言すれば、位置センサ56と第2の場所59Aとの間の距離58Aが、位置センサ56と第2の場所59Bとの間の距離58Bよりわずかに小さい場合、第2の場所59Aは、推定された接触場所として誤って選択され得る。
【0033】
接触場所のこのような誤りを回避するために、プロセッサ36は、第1のステップとして、垂直な力ベクトル64に基づく接触場所候補を、追加する。プロセッサ36によるFVDDの導出は、本明細書において、ステップごとに提供される、つまり、(a)力ベクトル63を測定し、(b)垂直な力ベクトル64を求め、(c)センサ56を起点とするように垂直な力ベクトルを平行移動させ、(d)垂直な力ベクトルを、例示的な場合では第1の場所61となる、電気解剖学的マップ上の組織の場所と交差する点まで伸ばし、(e)FVDDに必要とされる伸ばされた垂直な力ベクトルのノルム(長さ)を計算する。
【0034】
図2で分かるとおり、決定された第2の候補場所59A及び59B、並びに心臓表面70上の第1の場所61は全て、センサ56からの距離において同等である(すなわち、それぞれの距離58A、58B及び60は同等である)。更に、例示された場合において明らかなように、場所59Aは誤っており、場所59Bはより正確であり、場所61は電極50の正しい場所である。電極の正確な場所へのこのような及び他の競合するインプットは、様々な場面において生じ得る。一実施形態では、以下に説明するように、プロセッサ36が正しい決定に到達することを可能にする方法、すなわち、3つの異なる場所のうちどれが正しいかを判定することを可能にする方法が開示される。
【0035】
図2で分かるとおり、距離60は、ほぼ、センサ56と電極50の遠位縁との間の物理的長さである。以下の説明では、その長さを「L」とする。位置センサ56からの接触場所距離のいずれの力に由来する決定も、Lとほぼ等しいものとする。この制約は、センサ56と接触した組織との間の距離が、Lとほぼ等しい先端52の物理的長さによって制限されるという事実に基づく。いくらかの誤差eは合理的に予測されきる。例えば、最大で1mmに等しい誤差eまでの場所精度は良好であると考えられ、Lはミリメートル単位で測定され、多くの実施形態では、Lは数ミリメートルに等しくてもよい。従って、基準により、距離FVDDが既定の距離L+e(ミリメートル単位)より大きい場合、(すなわち、FVDDが既定の距離L+eを超える場合、FVDD>L+e)、プロセッサ36は、上述したように、センサ56の位置を解剖学的マップと相関させることに基づいて接触した場所を選択する(すなわち、センサ56の位置をマップの最も近い場所に投影することによって第2の場所を選択する)ものと、指定されてもよい。
【0036】
図2によって示される例では、力ベクトル導出距離60FVDDは、原理的には第2の場所59A及び59Bの両方と第1の場所61が可能であるように、FVDD≦L+eを維持する(すなわち、FVDDは既定の距離以内にある)。このような場合、プロセッサ36は、力ベクトル63から決定された場所、すなわち第1の場所61を選択する。
【0037】
一実施形態では、遠位先端部の推定位置に基づく接触場所、及び接触力ベクトルに基づく接触場所が両方とも可能である場合、プロセッサ36は、取り決めとして接触力ベクトルに基づいて接触場所を選択する。その取り決めの理由は明らかである。つまり、力決定場所61は、合理的な場合(すなわちFVDD≒Lとなる時)、力を誘発した組織上の接触した場所をリアルタイムで直接示すからである。一方で、そのような場合の解剖学的マップとの相関は、上記に説明した分析のように、確かさがより低い。
【0038】
一実施形態では、センサ56からの決定された場所の距離が、所定の距離(例えば、6mmの所定の距離)よりも大きい場合、プロセッサ36は、解剖学的マップと相関するセンサ56の位置に基づいて、接触場所を選択しない。なぜならば、その組織表面を遠くに示す場所は、完全にはマッピングされていないので、相関表示を使用する場合、プロセッサが誤った電極位置を決定することになり得るからである。別の実施形態では、Lには、先端部52の長さを所定のものとするのではなく、実験的証拠及び必要な精度に基づく値が割り当てられる。FVDDが特定の事前設定値(例えば、6mm)を上回り、FVDD>L+eとなる場合は、プロセッサ36は解剖学的マップと相関するセンサ56の位置に基づいて接触場所を選択しない。なぜならば、その組織表面を遠くに示す場所は、完全にはマッピングされていないので、相関表示を使用する場合、プロセッサが誤った電極位置を決定することになり得るからである。
【0039】
図2に示されている遠位端30の例となる概略側面図は、概念を明確化する目的のみのために選ばれたものである。2つ以上の遠位電極を含む他の遠位先端部が使用されてもよい。マルチレイ(すなわち、マルチチップ)装置などの他の種類の遠位端が使用されてもよい。あるいは、遠位装置は、電極を支えている螺旋状のガイドワイヤであってもよい。従って、
図2は、一般性を失うことなく、明確かつ単純に可能な限り概念を提示するために、例えば単一の先端の簡略化され場合を提供しているということを理解されたい。
【0040】
図3A及び3Bは、本発明の一実施形態による、カテーテルと組織との間の接触が決定される場面の概略描写図である。図は、2つの場面を示す。つまり、
図3Aは、心臓表面70が遠位電極50に弱いが検出可能な力を及ぼす、場面を例示する。
図3Aの例では、カテーテル遠位端54は、ほぼ直線的である。図から分かるとおり、記憶された電気解剖学的マップとの相関から得られた推定された第2の場所66、及び力ベクトルから決定された第1の場所67は、位置センサ56から同様の距離の場所にある。すなわち、距離68(FVDD)及び距離69は、同等である。図から分かるとおり、FVDD≒Lである。従って、上記の接触場所決定プロセスによれば、プロセッサ36は、力ベクトルから決定された正確な第1の場所67を選択する。
【0041】
図3Bは、遠位先端部52が強く屈曲し、遠位先端部52と密接している間に心臓表面70によって及ぼされる力ベクトル65から生じる、大きな角度偏向72を引き起こす場面を例示する。図から分かるとおり、力ベクトル65から決定された第1の場所74は、電極50から遠く離れている。一方、記憶された電気解剖学的マップ31との相関から決定された第2の場所71は、センサ56の近くの場所にある。換言すれば、距離79は距離78よりもはるかに大きい。
図3Bで分かるとおり、距離79は、センサ56と電極50との間の長さLよりもはるかに大きく、すなわち、FVDD>>Lとなり、上記のプロセスによる第2の場所71のプロセッサでの決定は、明らかに正確なものになる。
【0042】
接触力が検出されない場合、遠位電極50は、組織と全く接触しない可能性が高い。開示された技術は、遠位先端部が組織からどの程度の距離にあり得るかの単純な推定を提供する。推定は、力が検出されないとき、遠位端は屈曲していないという仮定に依存する。従って、垂直な力ベクトルは、カテーテル先端方向に正確に平行な方向を指す可能性が高い。この場面では、垂直な力ベクトルが向くマップ上の場所は、決定された場所として提供される。
【0043】
遠位先端部52が血液中にある場合、明確にFVDD>Lが常に適用され、誤差eを大きくとって、上記の考察に基づいて先端位置の推定を実際に決定するために使用してもよく、誤差eは、先端自体の長さのオーダーであってもよい。一実施形態では、このような推定が有効である誤差eの値は、プロセッサ36が、例えば、FVDDについてのe≦Lという基準を使用して(すなわち、条件FVDD≦2Lを使用して)場所を比較することによって、候補場所のどれがより妥当性が高いかを判定するように、機能する。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態による、カテーテル28の遠位先端部52と組織との正確な接触場所を決定するための方法を例示する、概略的なフローチャートである。説明を簡略化するため、
図4に例示されるプロセスは、接触力が常に検出される成り行きを構成する。このプロセスは、力測定ステップ80において、心臓表面70によって遠位先端部52に加えられた力を測定する接触力センサ57によって開始できる。
【0045】
次に、プロセッサ36は、計算ステップ82において、FVDDを計算する。次いで、プロセッサ36は、比較ステップ84において、FVDDとL+eとを比較する。FVDD>L+eとなる場合は、プロセッサ36は、相関ステップ86において、電極50の場所を決定するために、記憶された電気解剖学的マップ31上の最も近い場所と相関する、センサ56による位置測定のみを有する。一方、比較ステップ84において、FVDD≦L+eとなる場合は、プロセッサ36は、決定ステップ88において、計算された力ベクトルに基づいて接触場所を決定する(力ベクトルは、ステップ82でのFVDDの計算において、中間ステップとして計算される)。
【0046】
接触場所がどのように推定されたかに関わらず、プロセッサ36は、マッピングステップ90において、電極50から取得された電気解剖学的データを、推定場所と関連付ける。このプロセスは、再位置決めステップ92において、医師26が必要に応じてカテーテルの場所を変更することによって繰り返すことができるものであり、またステップ80に戻る。
【0047】
図4に示されている例となるフローチャートは、概念を明確化する目的のみで選ばれたものである。代替的な実施形態では、アブレーションステップ、接触力の繰り返し測定など、追加のステップが加えられてもよい。
【0048】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
患者の心臓内に挿入されるように構成されているプローブと通信する電気インターフェースと、
プロセッサとを含み、前記プロセッサが、
前記電気インターフェースを介して前記プローブから、(i)前記心臓内における前記プローブの遠位先端部の位置を示す位置信号と、(ii)前記遠位先端部に加えられた接触力を示す接触力表示と、(iii)前記位置において前記遠位先端部によって取得された電気生理学的(EP)測定値とを受信し、
前記遠位先端部から受信した前記接触力表示に基づいて接触力ベクトルを計算し、
前記位置信号及び前記接触力ベクトルに基づいて、前記遠位先端部が組織に接触する、前記心臓の電気解剖学的マップ上の場所を推定し、
前記推定場所に関連付けられた前記EP測定値を用い、前記電気解剖学的マップを更新するように、
構成されている、システム。
(2) 前記プロセッサが、前記接触力ベクトルに基づいて推定された第1の場所を前記位置信号に基づいて推定された1つ以上の第2の場所と比較し、前記第1及び第2の場所のうちの1つを選択し、前記推定場所として供することにより、前記場所を推定するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記位置信号が、前記遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、前記プロセッサが、前記第1の場所と前記位置センサとの間の距離を計算するように構成され、前記計算された距離が所定の距離を超える場合、前記第2の場所のうちの1つを選択し、前記推定場所として供するように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサは、前記計算された距離が前記所定の距離以下である場合に、前記第1の場所を選択し、前記推定場所として供するように構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 方法であって、
患者の心臓内に挿入されるように構成されているプローブと通信すること、
前記プローブから、(i)前記心臓内における前記プローブの遠位先端部の位置を示す位置信号と、(ii)前記遠位先端部に加えられた接触力を示す接触力表示と、(iii)前記位置において前記遠位先端部によって取得された電気生理学的(EP)測定値とを受信すること、
前記遠位先端部から受信した前記接触力表示に基づいて接触力ベクトルを計算すること、
前記位置信号及び前記接触力ベクトルに基づいて、前記遠位先端部が組織に接触する、前記心臓の電気解剖学的マップ上の場所を推定すること、並びに
前記電気解剖学的マップを、前記推定場所に関連付けられた前記EP測定値を用い更新すること、を含む、方法。
【0050】
(6) 前記場所を推定することが、前記接触力ベクトルに基づいて推定された第1の場所を前記位置信号に基づいて推定された1つ以上の第2の場所と比較すること、並びに前記第1及び第2の場所のうちの1つを選択し、前記推定場所として供すること、を含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記位置信号が、前記遠位先端部に近接して取り付けられた位置センサによって提供され、前記場所を推定することが、前記第1の場所と前記位置センサとの間の距離を計算すること、及び前記計算された距離が所定の距離を超える場合、前記第2の場所のうちの1つを選択し、前記推定場所として供すること、を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記場所を推定することは、前記計算された距離が前記所定の距離以下である場合、前記第1の場所を選択し、前記推定場所として供すること、を含む、実施態様7に記載の方法。