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特許7455521表示制御装置、表示装置及び表示制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3225 20160101AFI20240318BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G09G3/3225
G09G3/20 611H
G09G3/20 641P
G09G3/20 670J
G09G3/20 611A
G09G3/20 612U
G09G3/20 621J
G09G3/20 670A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019114322
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021001928
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】高杉 親知
(72)【発明者】
【氏名】池 ▲ヒョン▼宗
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-194256(JP,A)
【文献】特開2016-099593(JP,A)
【文献】特開2008-209708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0189593(US,A1)
【文献】特開2010-002531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の第1副画素、第2の色の第2副画素、第3の色の第3副画素及び第4の色の第4副画素を各々が含む複数の画素が配列された表示部を備える表示装置を制御する表示制御装置であって、
前記第1の色、前記第2の色および前記第3の色の階調を含む入力信号に対して、前記画素に含まれる前記第1副画素、前記第2副画素及び前記第3副画素の輝度のうちの少なくとも1つをゼロに減少させ、前記画素に含まれる前記第4副画素の輝度を増加させる変換処理を行う変換部と、
前記複数の画素のうち、前記変換処理を行わない前記画素を選択する選択部と、
を備え、
前記選択部は、前記第1副画素、前記第2副画素及び前記第3副画素の少なくとも1つの駆動トランジスタの閾値電圧のシフトを低減するための最小の頻度がn秒当たり1回であり、1秒間のフレーム数がm個である場合、各画素の選択比率は1/mn[回/フレーム]以上となるように、前記画素を選択し、
前記第4の色は、前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色の混合色である、
ことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記選択部は、所定の期間ごとに選択する画素を変化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記選択部は、乱数に基づいて1/mnの選択比率で画素を選択する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記表示部に互いに異なる時刻に表示される複数のフレーム画像の各々について、異なる画素を選択する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記複数のフレーム画像のフレーム番号に基づいて画素を選択する、
ことを特徴とする請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記複数の画素の各々が前記選択部によって選択される頻度は、対応する画素の前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色の階調に基づく基準値によって定められる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
画素の輝度が第1の閾値以下である場合、前記選択部は、100%の選択率で前記画素を選択し、
画素の輝度が前記第1の閾値と第2の閾値との間である場合、前記選択部は、前記画素の前記輝度に応じて100%からRm%へ減少する選択率で前記画素を選択し、
画素の輝度が前記第2の閾値以上である場合、前記選択部は、Rm%の選択率で前記画素を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項8】
画素の輝度が前記第2の閾値以上である場合、前記選択部によって選択される画素の位置はフレーム毎に異なる、
ことを特徴とする請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
画素の輝度が前記第2の閾値以上である場合、前記選択部によって選択される画素の配列方向は、フレーム毎に変化される、
ことを特徴とする請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記複数の画素は、複数の行及び複数の列をなすように配されており、
前記選択部は、前記行及び前記列の方向とは異なる方向に選択された画素が並ぶように画素を選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記選択部は、前記第1の色、前記第2の色又は前記第3の色の階調が前記第1副画素、前記第2副画素又は前記第3副画素の最大輝度を超えている画素を選択しない、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記複数の画素のうちの2つの各々に含まれる発光素子は、配線により相互に電気的に接続されており、
前記選択部は、前記2つの画素をともに選択するか、又はいずれも選択しない、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項13】
前記第1の色は赤色であり、
前記第2の色は緑色であり、
前記第3の色は青色であり、
前記第4の色は、前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色の混合色である、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項14】
前記第4の色は、前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色が同一の比率で混合された混合色とは異なる、
ことを特徴とする請求項13に記載の表示制御装置。
【請求項15】
前記第1副画素、前記第2副画素、前記第3副画素及び前記第4副画素の各々は、有機発光ダイオードを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項16】
前記第1副画素は、前記第1の色の第1カラーフィルタを更に含み、
前記第2副画素は、前記第2の色の第2カラーフィルタを更に含み、
前記第3副画素は、前記第3の色の第3カラーフィルタを更に含み、
前記第4副画素は、前記第1カラーフィルタ、前記第2カラーフィルタ及び前記第3カラーフィルタをいずれも含まない、
ことを特徴とする請求項15に記載の表示制御装置。
【請求項17】
前記有機発光ダイオードは前記第4の色の光を発する、
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の表示制御装置。
【請求項18】
前記第1副画素、前記第2副画素、前記第3副画素及び前記第4副画素の各々は、前記有機発光ダイオードを流れる電流を制御するトランジスタを含み、
前記トランジスタは、オフに制御されることにより、前記第1副画素、前記第2副画素、前記第3副画素又は前記第4副画素の輝度をゼロに制御する、
ことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の表示制御装置と、
前記変換処理に基づいて前記複数の画素が制御される前記表示部と、
を備える表示装置。
【請求項20】
第1の色の第1副画素、第2の色の第2副画素、第3の色の第3副画素及び第4の色の第4副画素を各々が含む複数の画素が配列された表示部を備える表示装置を制御する表示制御方法であって、
前記第1の色、前記第2の色および前記第3の色の階調を含む入力信号に対して、前記画素に含まれる前記第1副画素、前記第2副画素及び前記第3副画素の輝度のうちの少なくとも1つをゼロに減少させ、前記画素に含まれる前記第4副画素の輝度を増加させる変換処理を行う変換ステップと、
前記複数の画素のうち、前記変換処理を行わない前記画素を選択する選択ステップと、
を備え、
前記選択ステップは、前記第1副画素、前記第2副画素及び前記第3副画素の少なくとも1つの駆動トランジスタの閾値電圧のシフトを低減するための最小の頻度がn秒当たり1回であり、1秒間のフレーム数がm個である場合、各画素の選択比率は1/mn[回/フレーム]以上となるように、前記画素を選択し、
前記第4の色は、前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色の混合色である、
ことを特徴とする表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、表示装置及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の4色の副画素を含む自発光型ディスプレイ用の信号処理回路が開示されている。特許文献1の信号処理回路は、RGB入力信号をRGBW信号に変換する機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-133711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような信号の変換において、4つの副画素のうちの1つの輝度がゼロである場合がある。輝度がゼロである副画素に含まれるトランジスタと輝度がゼロではない他の副画素に含まれるトランジスタとでは、印加されるゲート電圧が大きく異なる。このような場合、閾値電圧の変動がトランジスタ間で異なることにより、閾値電圧の補償が適切に行えない場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、表示装置の画素に含まれるトランジスタの閾値電圧変動の補償を適切に行い得る表示制御装置、表示装置及び表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1の色の第1副画素、第2の色の第2副画素、第3の色の第3副画素及び第4の色の第4副画素を各々が含む複数の画素が配列された表示部を備える表示装置を制御する表示制御装置であって、前記複数の画素の各々に表示させる色を構成する前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色の階調を含む入力信号が入力される入力部と、前記複数の画素のうちの少なくとも一部を選択する選択部と、前記入力信号に基づいて、前記第1副画素、前記第2副画素、前記第3副画素及び前記第4副画素の輝度を制御する出力信号を出力する出力部と、を備え、前記選択部により選択されなかった画素に含まれる前記第1副画素、前記第2副画素及び前記第3副画素の輝度のうちの少なくとも1つは、前記出力信号によってゼロに制御され、前記選択部により選択された画素に含まれる前記第4副画素の輝度は、前記出力信号によってゼロに制御される、ことを特徴とする表示制御装置が提供される。
【0007】
本発明の他の一観点によれば、第1の色の第1副画素、第2の色の第2副画素、第3の色の第3副画素及び第4の色の第4副画素を各々が含む複数の画素が配列された表示部を備える表示装置を制御する表示制御方法であって、前記複数の画素の各々に表示させる色を構成する前記第1の色、前記第2の色及び前記第3の色の階調を含む入力信号が入力される入力ステップと、前記複数の画素のうちの少なくとも一部を選択する選択ステップと、前記入力信号に基づいて、前記第1副画素、前記第2副画素、前記第3副画素及び前記第4副画素の輝度を制御する出力信号を出力する出力ステップと、を備え、前記選択ステップにおいて選択されなかった画素に含まれる前記第1副画素、前記第2副画素及び前記第3副画素の輝度のうちの少なくとも1つは、前記出力信号によってゼロに制御され、前記選択ステップにおいて選択された画素に含まれる前記第4副画素の輝度は、前記出力信号によってゼロに制御される、ことを特徴とする表示制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示装置の画素に含まれるトランジスタの閾値電圧変動の補償を適切に行い得る表示制御装置、表示装置及び表示制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るパネルにおける画素及び副画素の配列図である。
図3】第1実施形態に係る副画素の構成の概略を示す回路図である。
図4】第1実施形態に係るタイミングコントローラの機能ブロック図である。
図5】第1実施形態に係るタイミングコントローラにおいて行われる処理の概略を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係るRGBW変換処理の概略を示す模式図である。
図7】第1実施形態に係る選択画素及び非選択画素の表示例を示す模式図である。
図8】第2実施形態に係る選択比率と画素輝度との関係を示すグラフである。
図9】第2実施形態に係る選択画素の分布の一例を示す模式図である。
図10】第2実施形態に係る選択画素の分布の一例を示す模式図である。
図11】第3実施形態に係る選択画素の分布の一例を示す模式図である。
図12】第3実施形態に係る選択画素の分布の一例を示す模式図である。
図13】第4実施形態に係る副画素の構成の概略を示す回路図である。
図14】第5実施形態に係る副画素の構成の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面を通じて共通する機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化することがある。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置の概略構成図である。本実施形態に係る表示装置は、入力されたRGBデータに基づいて、表示部に画像を表示する装置である。表示装置は、例えば、有機発光ダイオード(OLED)を発光素子として用いたOLEDディスプレイであり得る。また、本実施形態の表示装置の用途は、例えば、コンピュータの画像出力装置、テレビジョン受像機、スマートフォン、ゲーム機等であり得るが、特に限定されるものではない。
【0012】
図1に示されているように、表示装置は、タイミングコントローラ(TCON)1、パネル2、複数のソースドライブIC(SDIC)3及び複数のゲートドライブIC(GDIC)4を備える。パネル2は行列状に配列された複数の画素を備えており、画像を表示する表示部として機能する。
【0013】
タイミングコントローラ1は、複数のソースドライブIC3及び複数のゲートドライブIC4と通信可能に接続されている。タイミングコントローラ1は、外部システムから入力されるタイミング信号(垂直同期信号、水平同期信号、データイネーブル信号等)に基づいて、複数のソースドライブIC3及び複数のゲートドライブIC4の動作タイミングを制御する。また、タイミングコントローラ1は、外部システムから入力される入力信号であるRGBデータに基づいて、パネル2の各副画素の輝度を示すRGBWデータを生成し、RGBWデータを複数のソースドライブIC3に出力信号として出力する。なお、ソースドライブIC3及びゲートドライブIC4の個数は、図示したものに限定されるものではない。
【0014】
複数のソースドライブIC3の各々は、タイミングコントローラ1の制御に応じて、複数のデータラインを介してパネル2内の複数の画素を駆動するための電圧(映像信号)を供給する。複数のゲートドライブIC4の各々は、タイミングコントローラ1の制御に応じて、複数のゲートラインを介してパネル2内の複数の画素にスキャン信号を供給する。このように、タイミングコントローラ1は、表示装置全体の動作を制御する表示制御装置として機能する。
【0015】
図2は、第1実施形態に係るパネル2における画素(Pixel)20及び副画素(Sub Pixel)21、22、23、24の配列図である。パネル2は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素20を備える。複数の画素20の各々は、赤色の光を発する副画素21、緑色の光を発する副画素22、青色の光を発する副画素23及び白色の光を発する副画素24を含む。副画素21、22、23、24の輝度は、ソースドライブIC3から出力される電圧に応じて制御される。副画素21、22、23、24が所定の輝度比で発光することにより、画素20は加法混色によって種々の色を表示することができる。
【0016】
このように、本実施形態の表示装置は、白色の副画素24を含んでおり、RGBWの4色表示に対応した画素構成を有している。副画素21、22、23、24の各色は、OLEDと発光面の間に設けられたカラーフィルタの透過色(透過率の波長依存性)により規定されるものであり得る。具体的には、赤色の副画素21は、白色のOLED上に赤色のカラーフィルタを配することで形成され得る。緑色の副画素22は、白色のOLED上に緑色のカラーフィルタを配することで形成され得る。青色の副画素23は、白色のOLED上に青色のカラーフィルタを配することで形成され得る。白色の副画素24は、白色のOLED上に透明のカラーフィルタを配するか、あるいはカラーフィルタを配しないことで形成され得る。
【0017】
白色の副画素24は、カラーフィルタ等に起因するエネルギーの損失が小さく、消費電力に対して高い輝度が得られる。また、白色は、赤色、緑色及び青色の混合色であるため、白色の光は、赤色、緑色及び青色の成分を含む。そのため、赤色、緑色及び青色の成分の一部を白色の副画素24で代替して表示を行うことにより、表示装置の消費電力が低減される。
【0018】
なお、本明細書において、赤色は第1の色、緑色は第2の色、青色は第3の色、白色は第4の色と呼ばれることがある。また、本明細書において、副画素21は第1副画素、副画素22は第2副画素、副画素23は第3副画素、副画素24は第4副画素と呼ばれることがある。また、本明細書において、赤色のカラーフィルタは第1カラーフィルタ、緑色のカラーフィルタは第2カラーフィルタ、青色のカラーフィルタは第3カラーフィルタと呼ばれることがある。
【0019】
図3は、第1実施形態に係る副画素21の構成の概略を示す回路図である。図3には複数の画素20のうちのある1つの画素20に含まれる副画素21と、その副画素21に接続される1つのソースドライブIC3と、その副画素21に接続される1つのゲートドライブIC4とが図示されている。なお、図3においては副画素21の構成のみが例示されているが、副画素22、23、24も同様の構成を有する。
【0020】
副画素21は、スキャントランジスタM1、駆動トランジスタM2及びダイオードDを備える。ダイオードDは、表示装置の発光素子であり、例えばOLEDである。スキャントランジスタM1及び駆動トランジスタM2は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)である。本実施形態では、スキャントランジスタM1及び駆動トランジスタM2は、nチャネル型であるものとする。しかしながら、スキャントランジスタM1及び駆動トランジスタM2は、pチャネル型であってもよい。なお、駆動トランジスタM2がpチャネル型である場合には、副画素21の回路構成は、図3に示したものとは異なるものであり得る。
【0021】
ダイオードDのカソードは電位VSSを供給する電位線に接続されている。ダイオードDのアノードは、駆動トランジスタM2のソースに接続されている。駆動トランジスタM2のドレインは、電位VDDを供給する電位線に接続されている。駆動トランジスタM2のゲートは、スキャントランジスタM1のソースに接続されている。
【0022】
スキャントランジスタM1のドレインには、データラインDLが接続されている。ソースドライブIC3は、データラインDLを介してスキャントランジスタM1のドレインに映像信号を供給する。スキャントランジスタM1のゲートには、ゲートラインGLが接続されている。ゲートドライブIC4は、ゲートラインGLを介してスキャントランジスタM1のゲートに制御信号を供給する。スキャントランジスタM1は、ゲートに入力される制御信号のレベルに応じてオン又はオフに制御される。
【0023】
駆動トランジスタM2のドレインソース間を流れる電流は、データラインDL及びスキャントランジスタM1を介してソースドライブIC3から駆動トランジスタM2のゲートに入力される電圧(映像信号)に基づいて制御される。ダイオードDには、駆動トランジスタM2のドレインソース間を流れる電流が供給され、ダイオードDはその電流に応じた輝度で発光する。このようにして、ダイオードDは、副画素21に入力される映像信号に応じた輝度で発光する。
【0024】
図4は、第1実施形態に係るタイミングコントローラ1の機能ブロック図である。タイミングコントローラ1は、入力部11、ガンマ変換部12、選択部13、RGBW変換部14、電圧生成部15、出力部16及び記憶部17を備える。入力部11は、タイミングコントローラ1の入力インターフェースである。出力部16は、タイミングコントローラ1の出力インターフェースである。選択部13、RGBW変換部14及び電圧生成部15は、タイミングコントローラ1に設けられている情報処理の機能を担う部分である。選択部13、RGBW変換部14及び電圧生成部15の機能は、デジタル論理回路により実現されるものであってもよく、プロセッサがプログラムを実行することにより実現されるものであってもよい。記憶部17は、タイミングコントローラ1に設けられているメモリである。なお、記憶部17は、タイミングコントローラ1の外部に設けられていてもよい。
【0025】
図5は、第1実施形態に係るタイミングコントローラ1において行われる処理の概略を示すフローチャートである。本処理は、表示装置が画像を表示するタイミングが到来するたびに実行される。例えば、表示装置が1秒間に120個のフレーム画像を表示する場合には、1/120秒ごとの表示時刻に合せて本処理が行われる。
【0026】
ステップS101において、入力部11は、RGBデータの入力を受け付ける。RGBデータは、複数の画素20の各々に表示させる色を赤色、緑色及び青色の成分に分解したときの各々の階調を示す。RGBの階調は、例えばそれぞれ10ビットのデータである。言い換えると、赤色の階調データL、緑色の階調データL及び青色の階調データLのそれぞれが0から1023の階調値を有しており、3つの階調値の組み合わせにより画素20に表示させる色が表現されている。
【0027】
ステップS102において、ガンマ変換部12は、入力されたRGBデータの階調を表示装置に表示させる輝度に置き換えるためのガンマ変換処理を行う。これによりガンマ特性を考慮した適切な画像を表示装置に表示させることができる。より具体的には、赤色の階調データL、緑色の階調データL、青色の階調データLは、ガンマ値を含む変換式を用いた演算により赤色の輝度比Y、緑色の輝度比Y、青色の輝度比Yに置き換えられる。各輝度比は、各色の最大輝度に対する比率(例えば、0%から100%の範囲のパーセンテージ)で表現され得る。
【0028】
ステップS103において、選択部13は、複数の画素20の各々について、後述のステップS105におけるRGBW変換の対象から除外する選択画素とする否かを決定する。複数の画素20のうちのある画素が選択画素である場合(ステップS104におけるYES)には、その画素については、ステップS105のRGBW変換処理を省略してステップS106に移行する。複数の画素20のある画素が選択画素でない場合(ステップS104におけるNO)には、その画素については、ステップS105に移行してRGBW変換処理が行われる。この選択処理の詳細については後述する。
【0029】
ステップS105において、RGBW変換部14は、RGBに対応する輝度比をRGBWに対応する輝度比に変換するRGBW変換処理を行う。RGBW変換処理の概要について、図6を参照しつつ説明する。
【0030】
図6は、本実施形態に係るRGBW変換処理の概略を示す模式図である。本実施形態のRGBW変換は、入力されたRGBデータと同じ色が表示されるようにRGBWデータを生成する処理である。白色の副画素24から発せられる白色光は、赤色、緑色、青色の成分を含む。そこで、入力されたRGBデータのうちの一部を白色光で代替することにより、RGBWデータを生成することができる。図6には、異なる3種類の入力輝度信号に対するRGBW変換の例が示されている。
【0031】
図6のケース1は、「入力輝度[%]」の欄に示されているように、入力輝度(RGBデータの輝度)に含まれる赤色、緑色及び青色の輝度がすべて100%である場合の例を示している。言い換えると、ケース1は、画素20に白色を表示させる場合の例である。「W計算[%]」の欄は、白色の副画素24の輝度が100%である場合に、副画素24から発せられる白色光に含まれる赤色、緑色及び青色の割合を示している。副画素24から発せられる光の色は、OLEDの発光スペクトルに依存するものであるため、入力輝度信号における白色の色(赤色、緑色及び青色が同一の比率で混合された混合色)とは一致しない。具体的には、図6に示されているように、副画素24から発せられる白色光は、赤色の輝度が100%、緑色の輝度が80%、青色の輝度が50%の割合で各色が混合されたものである。すなわち、副画素24から発せられる白色光は、緑色と青色の成分が赤色に比べて少なく、赤色、緑色及び青色が等しい割合で混合されたものとは異なっている。なお、100%、80%、50%というRGBの混合比率は、一例であり、OLEDの材料等に依存してこれとは異なる比率である場合もある。
【0032】
この色の違いを調整するため、「出力輝度[%]」の欄に示されているように、副画素24の輝度を100%にするとともに、副画素22の輝度を20%、副画素23の輝度を50%とする。これにより、副画素24から発せられる白色光に不足している緑色と青色の成分が補われ、RGBデータの白色と同じ色が出力される。このとき、赤色の成分は、すべて副画素24により表現されているため、赤色の副画素21の輝度はゼロ(0%)である。
【0033】
図6のケース2は、赤色の輝度が100%、緑色の輝度が40%、青色の輝度が50%である場合の例を示している。この場合、副画素24の輝度を50%にするとともに、不足している赤色と青色の成分を補うため、副画素21の輝度を50%、副画素23の輝度を25%とする。これにより、RGBデータの色(入力輝度)と同じ色を出力することができる。このとき、緑色の成分は、すべて副画素24により表現されているため、緑色の副画素22の輝度はゼロである。
【0034】
図6のケース3は、赤色及び緑色の輝度が100%、青色の輝度が40%である場合の例を示している。この場合、副画素24の輝度を80%にするとともに、不足している赤色と緑色の成分を補うため、副画素21の輝度を20%、副画素22の輝度を36%とする。これにより、RGBデータの色(入力輝度)と同じ色を出力することができる。このとき、青色の成分は、すべて副画素24により表現されているため、青色の副画素23の輝度はゼロである。
【0035】
出力輝度を決定するアルゴリズムは、より一般的には以下のようなものであり得る。入力輝度における赤色の輝度比Y、緑色の輝度比Y、青色の輝度比Yを白色の副画素24から発せられる白色光の赤色成分W、緑色成分W、青色成分Wに換算した場合の各成分を以下の式により算出する。
=Y/1
=Y/0.8
=Y/0.5
【0036】
次に、以下の式により、出力輝度における白色の輝度比Yを決定する。
=min(W,W,W
すなわち、白色の輝度比Yは、赤色成分W、緑色成分W、青色成分Wのうちの最小のものと一致するように決定される。
【0037】
その後、白色以外の色の輝度比を以下の式により補正する。これにより、赤色、緑色及び青色の補正後の輝度比Y’、Y’、Y’が決定される。
’=Y―1Y
’=Y―0.8Y
’=Y―0.5Y
【0038】
上述の赤色、緑色及び青色の補正後の輝度比Y’、Y’、Y’の算出式において、Yは、Y/1、Y/0.8、Y/0.5のうちのいずれかである。したがって、本アルゴリズムでは、補正後の輝度比Y’、Y’Y’のうちの少なくとも1つは必ずゼロになる。
【0039】
このように、入力されたRGBデータのうちの一部を白色光で代替することにより、副画素21、22、23の輝度を小さくする、又はゼロにすることができ、表示装置の消費電力が低減される。このRGBW変換においては、入力されたRGBデータがどのような割合であっても赤色、緑色、青色のうちの少なくとも1つをゼロにすることができる。言い換えると、このアルゴリズムを用いることで、副画素21、22、23のうちの少なくとも1つの輝度をゼロにすることができる。
【0040】
RGBWデータのビット数が10ビットずつである場合、RGBWの4色をそのまま表現すると40ビットが必要となる。しかしながら、本実施形態のRGBW変換では、上述のように赤色、緑色、青色のうちの少なくとも1つの輝度はゼロであるという制約条件がある。そのため、赤色、緑色、青色、白色のうちのいずれか3色分のデータと、赤色、緑色、青色、白色のうちの輝度がゼロである色を示すフラグとして2ビットのデータ、すなわち32ビットのデータで、出力輝度に含まれる情報を完全に表現することができる。したがって、本実施形態のRGBW変換では、赤色、緑色、青色のうちの少なくとも1つの輝度がゼロであることにより、RGBWデータの転送のための情報通信量が低減されている。
【0041】
なお、ステップS103において選択画素と決定された画素20については、ステップS105のRGBW変換処理は行われない。すなわち、入力輝度における赤色の輝度比Y、緑色の輝度比Y、青色の輝度比Yがそのまま後述の処理に用いられる。そのため、赤色の輝度比Y、緑色の輝度比Y、青色の輝度比Yはいずれもゼロではない。しかしながら、この場合には、白色の副画素24の輝度がゼロになる。したがって、すべての画素20について、赤色、緑色、青色、白色のうちの少なくとも1つの輝度はゼロである。言い換えると、本実施形態の表示装置の駆動時には、すべての画素20について、副画素21、22、23、24のうちのいずれか1つは消灯状態である。
【0042】
ステップS106において、電圧生成部15は、RGBデータ又はRGBWデータに基づいて、ソースドライブIC3から副画素21、22、23、24に対応するデータラインDLに出力させるべき電圧を算出する。この電圧の算出は、駆動トランジスタM2及びダイオードDの特性に基づく電圧と輝度の関係をあらかじめ取得しておき、その関係式を用いることにより行われる。副画素21、22、23、24に対応する電圧をそれぞれ、V、V、V、Vとする。これらの電圧値は、例えば、0Vから10V程度の範囲であり得る。
【0043】
ステップS107において、電圧生成部15は、駆動トランジスタM2の移動度及び閾値電圧の変動を補償する処理を行う。具体的には、ステップS106において得られたV、V、V、Vを下式により補償してV’、V’、V’、V’を算出する。
’=μ -1/2+Vth
’=μ -1/2+Vth
’=μ -1/2+Vth
’=μ -1/2+Vth
ここで、μ、μ、μ、μは移動度補償用の変換パラメータであり、Vth、Vth、Vth、Vthは閾値電圧補償用の変換パラメータである。
【0044】
ステップS108において、出力部16は、ステップS107において算出された電圧V’、V’、V’、V’に基づいてソースドライブIC3に画素20への出力電圧を示すRGBWデータを出力する。ソースドライブIC3は、RGBWデータに基づいて、副画素21、22、23、24にデータラインDLを介して駆動トランジスタM2を制御する電圧を出力する。なお、上述のように4つの副画素21、22、23、24のうちの少なくとも1つの輝度はゼロであるが、輝度がゼロになる副画素に接続されるデータラインDLには、駆動トランジスタM2がオンにならないように閾値電圧以下の電圧が供給される。
【0045】
以上のようにして、本実施形態の表示装置は、入力されたRGBデータに対してRGBW変換を行うことにより、RGBWの4色表示に対応した表示を行うことができる。しかしながら、本実施形態では、図5のステップS103からステップS105に示されるように、選択部13により選択された一部の選択画素についてはRGBW変換を行わない処理手順が採用されている。この選択処理の具体的な内容と、この処理を行う理由について詳細に説明する。
【0046】
図7は、本実施形態に係る選択画素及び非選択画素の表示例を示す模式図である。図7には、複数の画素20のうちの2つの画素20aと画素20bの4フレーム分の表示例が示されている。画素20aは第1及び第3フレームにおいて非選択画素であり、第2及び第4フレームにおいて選択画素である。画素20bは第2及び第4フレームにおいて非選択画素であり、第1及び第3フレームにおいて選択画素である。図7のハッチングが付されている箇所は、輝度がゼロであり、消灯状態になっている副画素である。ハッチングが付されていない箇所は、輝度がゼロではなく、点灯状態になっている副画素である。
【0047】
図7の画素20aの欄に示されているように、非選択画素である第1及び第3フレームにおいては、RGBW変換が行われるため、赤色の副画素21の輝度はゼロである。これに対し、選択画素である第2及び第4フレームにおいてはRGBW変換が行われず、白色の副画素24の輝度はゼロであるが、赤色、緑色、青色の副画素21、22、23の輝度はいずれもゼロではない。このように、本実施形態においては、各画素が選択画素になったときに、赤色、緑色、青色の副画素21、22、23の輝度がいずれもゼロにならないような表示が行われる。また、所定の期間(フレーム)ごとに選択・非選択が変化している。
【0048】
また、画素20bについては、非選択画素である第2及び第4フレームにおいて、RGBW変換が行われるため、赤色の副画素21の輝度がゼロである。これに対し、選択画素である第1及び第3フレームにおいてはRGBW変換が行われず、白色の副画素24の輝度がゼロであるが、赤色、緑色、青色の副画素21、22、23の輝度はいずれもゼロではない。このように、本実施形態では、画素ごとに異なるタイミングで選択が行われる。言い換えると、所定の期間(フレーム)ごとに選択される画素が変化している。
【0049】
各画素がRGBW変換を行わないように選択されることの効果を説明する。図5において、仮にステップS103、S104の処理を行わず、常にRGBW変換が行われるとすると、例えば図7に示した画素20a、20bでは、赤色の副画素21が常に消灯状態となる。このとき、赤色の副画素21の駆動トランジスタM2のゲートには、駆動トランジスタM2がオフになるように閾値電圧よりも低い電圧が印加される。これに対し、点灯状態である赤色以外の副画素22、23、24の駆動トランジスタM2のゲートには、駆動トランジスタM2がオンになるように閾値電圧よりも高い電圧が印加される。すなわち、消灯状態の副画素と点灯状態の副画素とでは、駆動トランジスタM2のゲートへの印加電圧が大きく異なっている。
【0050】
駆動トランジスタM2のゲートに電圧が印加され続けると、チャネルへの電荷のトラップに起因して、閾値電圧がシフトする現象が起こる。ステップS107の電圧補償の処理は、この閾値電圧のシフトを補償するものである。閾値電圧のシフトの方向は、印加されている電圧の大きさ、特に、閾値電圧との大小関係に依存する。消灯状態の副画素と点灯状態の副画素との間で印加電圧と閾値電圧の大小関係が逆であるため、閾値電圧のシフトの方向も逆になる。この場合、ステップS107における電圧補償において、消灯状態の副画素には、他の副画素と逆方向の補償を行う必要が生じる。しかしながら、逆方向の閾値電圧のシフトをセンシングすることが難しいこと、補償可能レンジに制限があること等の理由により、そのような逆方向の閾値電圧のシフトの補償は困難である場合がある。
【0051】
そこで、本実施形態では、所定の頻度でRGBW変換を行わないようにすることにより、1つの副画素の消灯状態が長期間続かないようにしている。例えば図7の例では、赤色の副画素21も所定の頻度で時々点灯するように制御されている。これにより、駆動トランジスタM2のゲートの電圧が閾値電圧以下である状態が長時間続かないため、この閾値電圧の逆方向へのシフトが低減され、電圧補償が容易になる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、表示装置の画素20に含まれる駆動トランジスタM2の閾値電圧変動の補償を適切に行い得るタイミングコントローラ1が提供される。
【0053】
なお、各画素が選択画素として選択される頻度は、閾値電圧の逆方向へのシフトが低減できる範囲で適宜設定可能である。例えば、閾値電圧の逆方向へのシフトが低減されるのに必要な最低限の頻度がn秒当たり1回であり、1秒間のフレーム数がm個である場合には、各画素における選択比率は1/mn[回/フレーム]以上であればよい。具体例として、閾値電圧の逆方向へのシフトの低減のために0.5秒当たり1回、駆動トランジスタM2をオンにする必要があり、かつ、1秒間のフレーム数が120個である場合を想定する。この場合の最低限の選択比率は、1/(0.5×120)=1/60[回/フレーム]である。すなわち、ある画素に着目すると、ステップS103では、当該画素は、60回に1回の割合で選択され、60回に59回の割合で選択されない。
【0054】
この選択はランダムに行われるものであってもよく、周期的に行われるものであってもよい。選択がランダムである場合の例としては、乱数に基づいて、画素ごとに1/mnの確率で選択するというアルゴリズムが挙げられる。選択が周期的である場合の例としては、フレーム番号に基づいて、画素ごとにmnフレームに1回の頻度となるように一定のフレーム間隔で選択するというアルゴリズムが挙げられる。
【0055】
[第2実施形態]
本実施形態では、選択部13による画素の選択方法をより具体化した表示装置の例を説明する。表示装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0056】
第1実施形態で述べたように、選択部13による画素の選択頻度は、閾値電圧の逆方向へのシフトが低減できる範囲で適宜設定可能である。しかしながら、選択画素においてはRGBW変換が行われず、白色の副画素24が用いられないため、選択比率を高くすると消費電力が増大する。すなわち、消費電力の低減と閾値電圧のシフトの低減とがトレードオフになる場合がある。そこで、本実施形態では、消費電力の低減と閾値電圧のシフトの低減とを適切なバランスで実現するための選択比率の設定方法について説明する。
【0057】
本実施形態の表示装置においては、選択部13は、RGBデータに含まれる対応する画素の赤色、緑色及び青色の階調に基づくパラメータから選択比率を決定し、その選択比率の割合で各画素の選択を行う。このパラメータは、選択比率の算出に用いられる基準値である。パラメータは、例えば、画素の赤色、緑色及び青色の階調から算出される画素輝度であってもよい。画素輝度は、画素の消費電力との相関が強いため、選択比率の算定基準として適切である。また、このパラメータは、赤色、緑色及び青色の階調の最小値min(L、L、L)であってもよい。階調の最小値は、RGBデータから容易に算出できる。そのため、パラメータに階調の最小値を採用することにより、演算処理が単純化される。以下の説明では上述のパラメータは画素輝度であるものとする。
【0058】
図8は、選択比率と画素輝度との関係を示すグラフである。選択部13は図8に示される関係を用いて、画素輝度から選択比率を決定する。図8の横軸は、画素輝度を示している。横軸の0は黒色に相当し、Maxは最大輝度の白色(最も明るい点灯状態)に相当する。横軸のT1は、第1の閾値であり、T2は第2の閾値である。図8の横軸は、選択比率を示している。100%は、当該画素を必ず選択することを示している。Rm%は、選択比率の下限値であり、0%よりも大きい値である。
【0059】
図8に示されているように、画素輝度が第1の閾値T1以下である場合には、選択比率は100%である。画素輝度が第2の閾値T2以上である場合には、選択比率はRm%である。画素輝度が第1の閾値T1と第2の閾値T2の間である場合には、選択比率は、画素輝度に対して単調に減少する。図8のグラフでは、第1の閾値T1と第2の閾値T2の間は線形であるが、滑らかな曲線であってもよく、階段状であってもよい。
【0060】
図9は、あるフレームにおける選択画素の分布の一例を示す模式図である。図9は、左側から右側に向かうにつれて輝度が0%から100%に単調増加する画像を表示部に表示したときの選択画素の分布を示している。表示部の画素数は、64画素×64画素である。図9の黒色部は選択画素を示しており、白色部は非選択画素を示している。
【0061】
図9の例の作成に用いた選択アルゴリズムについて説明する。本アルゴリズムでは判定関数f(x,y,k)を算出し、判定関数f(x,y,k)と判定基準値との関係によってある画素が選択画素であるか否かを決定する。本例に用いた判定関数f(x,y,k)は以下の通りである。
f(x,y,k)=mod(23・(9y+x+k),64)
ここで、x,yは画素の座標(列番号及び行番号)であり、kはフレーム番号であり、mod(p,q)は、pをqで割ったときの剰余である。
【0062】
そして、「f=0」又は「f+40≧画素の階調数(0~255)」の条件を満たす画素を選択画素とするというアルゴリズムで、64画素×64画素のすべてについて選択画素であるか否かを決定した結果が図9に示されている。左側の輝度が小さい領域では、選択比率が1(100%)になっており、すべての画素が常に選択される。右側の輝度が大きい領域では、選択比率が1/64、すなわち、64画素に1画素の割合で選択される。この領域内では、輝度によらず選択比率は1/64で一定である。その間の領域では、輝度に応じて選択比率が1から1/64の間で変化しており、輝度が大きいほど選択比率が小さい。このようにして図8のグラフに示されているような輝度に応じた選択比率が実現される。また、画素ごとに見ると、判定関数f(x,y,k)の値はフレームごとに値が変化し、選択比率が1/64の場合には64フレームに1回選択される。したがって、各画素は、一定間隔で選択される。
【0063】
このように、本アルゴリズムでは、輝度が高く消費電力が大きい場合には選択比率が小さくなる。これにより、輝度が高い場合には、白色の副画素24が用いられる頻度を高くして消費電力を低減することができる。これに対し、輝度が低く消費電力が小さい場合には選択比率が大きくなる。輝度が低く消費電力が小さい場合には、白色の副画素24を用いて消費電力を低減することよりも選択比率を大きくして閾値電圧のシフトを低減することが優先されるためである。したがって、消費電力の低減と閾値電圧のシフトの低減とをバランスよく実現することができる。
【0064】
なお、図9の選択比率が1/64の領域では、選択画素が垂直方向及び水平方向に連続しないように配列されている。言い換えると、選択画素が垂直方向及び水平方向とは異なる斜め方向に並んでいる。これにより、表示部をユーザが見たときに、選択画素と非選択画素の表示状態の違いが目立ちにくくなる。
【0065】
図10は、図9とは別のフレームにおける選択画素の分布の一例を示す模式図である。本例に用いた判定関数f(x,y,k)は以下の通りである。
f(x,y,k)=mod(23・(29y+x+k),64)
【0066】
これ以外のアルゴリズム及び図の参照方法は同様であるため説明を省略する。図10に示されているように、図9と別のフレームにおいては、図9とは異なる画素が選択されている。
【0067】
なお、図10においても選択比率が1/64の領域では、選択画素が垂直方向及び水平方向に連続しないように配列されている。また、図9は右上がりの斜め方向に選択画素が並んでいるのに対し、図10では右下がりの斜め方向に選択画素が並んでいる。このように、フレームごとに選択画素の配列方向を変えることが望ましい。これによれば、ユーザが動画を見たときに、フレームごとに選択画素が並ぶ方向が変わるので、選択画素と非選択画素の表示状態の違いがより目立ちにくくなる。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態で述べた効果が得られることに加え、消費電力の低減と閾値電圧のシフトの低減とを適切なバランスで実現することができるタイミングコントローラ1が提供される。
【0069】
[第3実施形態]
本実施形態では、選択部13による画素の選択方法を第2実施形態とは別の手法で具体化した表示装置の例を説明する。表示装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、選択方法については第2実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0070】
図11は、あるフレームにおける選択画素の分布の一例を示す模式図である。図11は、第2実施形態の例と同様に、左側から右側に向かうにつれて輝度が0%から100%に単調増加する画像を表示部に表示したときの選択画素の分布を示している。
【0071】
図9の例の作成に用いた選択アルゴリズムについて説明する。本実施形態では、第2実施形態で述べた判定関数f(x,y,k)を0から63までの値の乱数に置き換えている。この乱数を生成する関数又は装置は、フレームごとに新たな値を返すように設定されている。そして、「f=0」又は「f+40≧画素の階調数(0~255)」の条件を満たす画素を選択画素とするというアルゴリズムで、64画素×64画素のすべてについて選択画素であるか否かを決定した結果が図9に示されている。
【0072】
図11に示されるように、左側の輝度が小さい領域では、選択比率が1(100%)になっており、すべての画素が選択されている。右側の輝度が大きい領域では、選択比率が1/64、すなわち、64画素に1画素の割合で選択されている。その間の領域では、輝度に応じて選択比率1から1/64の間で変化している。このように、本実施形態においても図8のグラフに示されているような輝度に応じた選択比率が実現される。
【0073】
図12は、図11とは別のフレームにおける選択画素の分布の一例を示す模式図である。図12に示されているように、図11と別のフレームにおいては、図11とは異なる画素が選択されている。画素ごとに見ると、選択比率が1/64の場合には64フレームに1回の確率で選択される。したがって、各画素は、一定間隔ではないものの統計的には輝度に応じた一定の比率で選択される。
【0074】
本実施形態においても第2実施形態と同様の効果が得られるタイミングコントローラ1が提供される。また、本実施形態では、選択画素がランダムな配置になるため、表示部をユーザが見たときに、選択画素と非選択画素の表示状態の違いがより目立ちにくくなる。
【0075】
[第4実施形態]
本実施形態では、表示装置の製造工程の中の検査工程において、複数の副画素21、22、23、24のいずれかに不良が検出された場合に、不良を修復(リペア)することができる画素構成について説明する。表示装置の基本構成について、リペア配線の以外の部分は第1実施形態と同様であるため、重複する構成についての説明を省略する。また、選択部13による画素の選択方法は、第2実施形態又は第3実施形態のいずれも本実施形態に適用可能である。
【0076】
図13は、第4実施形態に係る副画素21a、21bの構成の概略を示す回路図である。本実施形態のパネル2は、リペア配線RLにより相互に接続可能な副画素21a、21bを含む。リペア配線RLは、副画素21a、21bのダイオードDのアノード同士を接続可能に構成されている。ここで、副画素21a、21bは同じ列の別の行に配された同色の副画素である。
【0077】
配線層の形成時においては、副画素21a、21bの間が非接続状態となるようにリペア配線RLが形成されている。検査工程において、副画素21a、21bのいずれかにトランジスタの形成不良等の不良が検出された場合には、レーザ照射等によりリペア配線RLを溶融させることにより、副画素21a、21bの間を溶接して電気的に接続するリペア工程が行われる。これにより、ある画素のトランジスタ等が動作しない場合であっても、隣の副画素を介してダイオードDに電流が供給されるため、ドット欠け等の表示不良が修復される。
【0078】
本実施形態の画素構成においては、リペア配線RLにより接続可能な2つの副画素21a、21bは、第2実施形態又は第3実施形態の選択画素の決定時において、ともに選択されるか、又はいずれも選択されないかのいずれかであることが望ましい。言い換えると、副画素21a、21bの一方が選択されるが他方は選択されないという状態にはならないように選択が行われることが望ましい。リペア工程により相互に接続された2つのダイオードDには同じタイミングで電流が流れる。したがって、リペア後の副画素21a、21bは、一方が点灯状態になり、他方を消灯状態になるという動作が困難であるため、同時に選択画素又は非選択画素になるように選択が行われることが望ましい。
【0079】
[第5実施形態]
第4実施形態において述べたリペアに対応可能な別の画素構成の例を第5実施形態として説明する。図14は、第5実施形態に係る副画素21c、21dの構成の概略を示す回路図である。本実施形態のパネル2は、リペア配線RLにより相互に接続可能な副画素21c、21dを含む。リペア配線RLは、副画素21c、21dのダイオードDのアノード同士を接続可能に構成されている。ここで、副画素21c、21dは同じ行の別の列に配された同色の副画素である。
【0080】
本実施形態の画素構成においても第4実施形態と同様にしてドット欠け等の不良が修復される効果が得られる。また、第4実施形態と同様の理由により、リペア配線RLにより接続可能な2つの副画素21c、21dは、選択画素の決定時にともに選択されるか、又はいずれも選択されないかのいずれかであることが望ましい。
【0081】
[その他の実施形態]
上述の実施形態は、本発明を適用しうるいくつかの態様を例示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲は、上述の実施形態によって限定的に解釈されてならない。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜修正や変形を行うって様々な態様で実施可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。
【0082】
上述の実施形態において、表示装置、画素20等の装置構成は一例であり、図示したものに限定されるものではない。例えば、タイミングコントローラ1、パネル2、ソースドライブIC3及びゲートドライブICの機能の一部又は全部が1つのユニットとして一体化されていてもよい。
【0083】
上述の実施形態において、表示装置は、HDR(High Dynamic Range)に対応可能であってもよい。HDRでは、赤色、緑色又は青色の輝度が図6に示す最大輝度(100%)を超えることもある。その場合、白色の副画素24を用いて最大輝度を超える出力輝度を得るため、最大輝度を超える画素については、ステップS103における選択画素としないように処理することが望ましい。
【符号の説明】
【0084】
1 タイミングコントローラ
2 パネル
11 入力部
13 選択部
16 出力部
20 画素
21、22、23、24 副画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14