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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】超砥粒工具及び超砥粒工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20240318BHJP
   B24D 3/02 20060101ALI20240318BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20240318BHJP
   B24D 3/10 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B24D3/00 320B
B24D3/00 330D
B24D3/00 340
B24D3/02 310A
B24D3/06 C
B24D3/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019165160
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021041490
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116781
【氏名又は名称】旭ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 誠之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 穣
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-116660(JP,A)
【文献】特開2000-198075(JP,A)
【文献】特開2005-342836(JP,A)
【文献】特開2004-351535(JP,A)
【文献】特開平6-344264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を備える超砥粒工具であって、
前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属に接続されて前記超砥粒と前記骨材との結合を補強する補強部を備える、
超砥粒工具。
【請求項2】
前記補強部は、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属のそれぞれの少なくとも一部を被覆している、
請求項1に記載の超砥粒工具。
【請求項3】
前記補強部は、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属を被覆している、
請求項1に記載の超砥粒工具。
【請求項4】
前記補強部は、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属のそれぞれの一部のみを被覆している、
請求項1に記載の超砥粒工具。
【請求項5】
前記補強部は、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属の間の空隙を埋めている、
請求項1に記載の超砥粒工具。
【請求項6】
前記超砥粒層には、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属の無い空隙が形成されている、
請求項1に記載の超砥粒工具。
【請求項7】
前記超砥粒層における前記空隙の体積割合は、30%以上60%以下である、
請求項6に記載の超砥粒工具。
【請求項8】
前記補強部は、樹脂を含む、
請求項1~の何れか一項に記載の超砥粒工具。
【請求項9】
超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を備える超砥粒工具の製造方法であって、
前記超砥粒と前記骨材とを前記活性金属によりブリッジ状に結合する中間体製造工程と、
前記中間体製造工程の後に、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属に、前記超砥粒と前記骨材との結合を補強する補強部を接続する補強部製造工程と、を備える、
超砥粒工具の製造方法。
【請求項10】
前記補強部製造工程は、
超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された中間体に、硬化されると前記補強部となる補強液を含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程の後、前記補強液を硬化させて前記補強部を形成する硬化工程と、を有する、
請求項に記載の超砥粒工具の製造方法。
【請求項11】
前記含浸工程では、前記超砥粒、前記骨材、及び前記活性金属のそれぞれの一部のみに前記補強液を付着させる、
請求項10に記載の超砥粒工具の製造方法。
【請求項12】
前記補強液は、樹脂を含む、
請求項10又は11に記載の超砥粒工具の製造方法。
【請求項13】
前記補強液は、揮発成分を含み、
前記硬化工程では、前記揮発成分を揮発させる、
請求項10~12の何れか一項に記載の超砥粒工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を備える超砥粒工具及び超砥粒工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超砥粒と骨材とが活性ロウ材により結合されて超砥粒と骨材との間に空隙が形成された超砥粒層を備えた超砥粒工具が記載されている。この超砥粒層の製造では、超砥粒と骨材とを混合攪拌し、流動パラフィンを徐々に滴下しながら更に攪拌を続け、活性ロウ材の粉末を添加混合し、超砥粒及び骨材のそれぞれの表面に活性ロウ材の粉末を満遍なく付着させ、焼成する。すると、超砥粒と骨材とが接触していない部分に付着していた活性ロウ材が、超砥粒と骨材とが接触している部分に流れることで、活性ロウ材がある程度の太さを持ったブリッジ状態となって硬化する。これにより、超砥粒と骨材とが活性ロウ材により結合されて超砥粒と骨材との間に空隙が形成された超砥粒層が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2005-342836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この超砥粒工具では、超砥粒と骨材との間に空隙が形成されるため、冷却性に優れ、目詰まりを抑制でき、切れ味に優れ、長寿命を確保することができる。しかしながら、本発明者らが、この超砥粒工具の寿命について鋭意検討した結果、被削材や研削方式等の加工条件によっては、超砥粒層が早期に崩壊して寿命が短くなるとの知見が得られた。
【0005】
そこで、本発明は、超砥粒層の長寿命化を図ることができる超砥粒工具及び超砥粒工具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、超砥粒層の早期崩壊について更に鋭意検討したところ、超砥粒と骨材との間の空隙に入り込む切粉や研削の圧力によって超砥粒層が早期に崩壊し、この超砥粒層の早期崩壊は、活性金属による超砥粒と骨材との結合を補強することにより抑制できるとの知見を得た。本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明に係る超砥粒工具は、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を備える超砥粒工具であって、超砥粒、骨材、及び活性金属に接続されて超砥粒と骨材との結合を補強する補強部を備える。
【0008】
この超砥粒工具では、超砥粒、骨材、及び活性金属に補強部が接続されて、超砥粒と骨材との結合が補強されているため、切粉や研削の圧力によって超砥粒層が崩壊するのを抑制することができる。
【0009】
補強部は、超砥粒、骨材、及び活性金属のそれぞれの少なくとも一部を被覆していてもよい。この場合、超砥粒と骨材との結合を適切に補強することができる。
【0010】
補強部は、超砥粒、骨材、及び活性金属を被覆していてもよい。この場合、超砥粒と骨材との結合強度を更に高くすることができる。
【0011】
補強部は、超砥粒、骨材、及び活性金属の間の空隙を埋めていてもよい。この場合、超砥粒と骨材との結合強度を更に高くすることができるとともに、当該空隙に切粉が入り込むことによる超砥粒層の崩壊を抑制することができることできる。
【0012】
補強部は、樹脂を含んでもよい。この場合、容易に補強部を形成することができる。
【0013】
本発明に係る超砥粒工具の製造方法は、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を備える超砥粒工具の製造方法であって、超砥粒と骨材とを活性金属によりブリッジ状に結合する中間体製造工程と、中間体製造工程の後に、超砥粒、骨材、及び活性金属に、超砥粒と骨材との結合を補強する補強部を接続する補強部製造工程と、を備える。
【0014】
本発明に係る超砥粒工具の製造方法では、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された中間体を形成した後に、超砥粒、骨材、及び活性金属に補強部を接続するため、活性金属による超砥粒と骨材との結合を適切に行いつつ、容易に補強部を形成することができる。
【0015】
補強部製造工程は、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された中間体に、硬化されると補強部となる補強液を含浸させる含浸工程と、含浸工程の後、補強液を硬化させて補強部を形成する硬化工程と、を有してもよい。この場合、含浸工程により中間体に補強液を含浸させることで、超砥粒、骨材、及び活性金属の表面の少なくとも一部に補強液を付着させることができるため、その後、硬化工程により補強液を硬化させることで、超砥粒、骨材、及び活性金属の表面の少なくとも一部を補強部で覆うことができる。
【0016】
補強液は、樹脂を含んでもよい。この場合、中間体に対する補強液の含浸及び補強液の硬化を容易に行うことができる。
【0017】
補強液は、揮発成分を含み、硬化工程では、揮発成分を揮発させてもよい。この場合、硬化工程で揮発成分を揮発させることで、超砥粒、骨材、及び活性金属の間の空隙を形成することができる。これにより、常に超砥粒を露出させることができるため、被削材に対する法線抵抗を小さくして切れ味を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超砥粒層の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は、本実施形態の超砥粒工具の一例を示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すIb-Ib線における断面図である。
図2図2(a)は、本実施形態の超砥粒工具の他の一例を示す正面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すIIb-IIb線における断面図である。
図3】本実施形態の超砥粒層の構成の一例を示す拡大断図である。
図4】本実施形態の超砥粒層の構成の他の一例を示す拡大断面図である。
図5】本実施形態の超砥粒層の構成の他の一例を示す拡大断面図である。
図6】本実施形態の超砥粒層の構成の他の一例を示す拡大断面図である。
図7】本実施形態の中間体の構成の一例を示す拡大断面図である。
図8】計測結果を示す表である。
図9】計測結果を示すグラフである。
図10】計測結果を示す表である。
図11】計測結果を示すグラフである。
図12】計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施形態に係る超砥粒工具及び超砥粒工具の製造方法を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る超砥粒工具1は、台金2と、超砥粒層3と、を備える。超砥粒工具1の形状、大きさ、用途等は、特に限定されるものではない。例えば、図1に示すように、円筒状の台金2の先端部に円筒状の超砥粒層3が形成されたコアドリルであってもよく、図2に示すように、棒状の台金2の先端部に円柱状の超砥粒層3が形成された軸付砥石であってもよい。
【0022】
図3に示すように、超砥粒層3は、超砥粒4と骨材5とがブリッジ状の活性金属6により結合されるとともに、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に補強部7が接続されて構成されている。ここで、図7に示すように、超砥粒4と骨材5とがブリッジ状の活性金属6により結合されたものであって、補強部7が含まれていないものを、中間体8という。
【0023】
超砥粒4としては、特に限定されないが、例えば、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等を用いることができる。超砥粒4の粒度、形状、素材等は特に限定されるものではなく、超砥粒工具1の用途等に応じて適宜選択される。
【0024】
骨材5としては、特に限定されないが、例えば、超砥粒4よりも強度が低く、超砥粒4よりも脆性が高く砕けやすいもの用いることができる。骨材5としては、例えば、中実体の骨材、中空体の骨材、繊維状の骨材を用いることができ、中実体の骨材としては、例えば、JIS R 6111に規格化されているGC、C等の炭化ケイ素、WA、A等のアルミナ系の砥粒、炭化硼素、酸化セリウム等の砥粒、セラミックス、ガラス、黒鉛、炭化タングステン、タングステン等の粒状物、又は粉末などを用いることができる。中空体の骨材としては、中空セラミック、中空シリカ等を用いることができる。繊維状の骨材としては、例えば、グラスファイバー、カーボンファイバ等を用いることができる。
【0025】
活性金属6は、超砥粒4と骨材5とに接続されることで、超砥粒4と骨材5とを結合する。活性金属6としては、例えば、特に限定されないが、例えば、Cu-Ag-Ti系、Cu-Sn-Ti系、Ni-Cr系の活性金属を用いることができる。なお、活性金属6は、活性ロウ材とも呼ばれる。
【0026】
活性金属6は、超砥粒4と骨材5との間の空隙Aを埋めるのではなく、ブリッジ状に形成されて超砥粒4と骨材5とに接続されている。このため、超砥粒層3には、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の無い空隙Aが形成されている。超砥粒層3における空隙Aの体積割合は、特に限定されないが、例えば、30%以上60%以下とすることができる。
【0027】
活性金属6は、超砥粒4と骨材5とにのみ接続されている必要はなく、超砥粒4と超砥粒4とに接続されていてもよく、骨材5と骨材5とに接続されていてもよい。
【0028】
補強部7は、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に接続されることで、超砥粒4と骨材5との結合を補強する。補強部7としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、液体樹脂等の樹脂、無機材や金属粉を添加したコート材、液体ガラス、めっきなどを用いることができる。
【0029】
補強部7は、超砥粒4と骨材5との結合を補強することができれば、如何なる形態で超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に接続されていてもよい。例えば、図4に示すように、補強部7は、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6を被覆する形態で、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に接続されていてもよい。また、図5に示すように、補強部7は、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6のそれぞれの一部を被覆する形態で、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に接続されていてもよい。また、図6に示すように、補強部7は、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間の空隙Aを埋める形態で、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に接続されていてもよい。補強部7が超砥粒4、骨材5、及び活性金属6のそれぞれの一部を被覆する場合、補強部7は、超砥粒4から骨材5まで、途切れることなく超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に接続されながら延びていることが好ましい。
【0030】
図4及び図5の形態では、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間に空隙Aが形成され、図6の形態では、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間に空隙Aが形成されない。超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間に空隙Aが形成される場合、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6のそれぞれの少なくとも一部を被覆する補強部7の厚さは、特に限定されない。
【0031】
次に、超砥粒工具1の製造方法の一例について説明する。
【0032】
この製造方法では、まず、超砥粒4と骨材5とを活性金属6によりブリッジ状に結合する中間体製造工程を行い、その後、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に、超砥粒4と骨材5との結合を補強する補強部7を接続する補強部製造工程を行う。
【0033】
中間体製造工程では、まず、超砥粒4と骨材5とを所定の割合で容器に入れて、攪拌混合する。
【0034】
次に、容器に所定量のバインダーを滴下し、全ての超砥粒4及び骨材5の外表面がバインダーにより濡れた状態となるように、更に攪拌混合する。バインダーは、超砥粒4及び骨材5に付着して、後工程で容器に入れられる活性金属6の粉末を超砥粒4及び骨材5にさせるものである。また、バインダーは、後工程で中間体8を焼結することにより燃焼又は蒸発して焼失し、焼結された中間体8に実質的に残留しないものである。バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、ポリビニールアルコール、デキストリン、液状レジン等が用いられる。
【0035】
次に、容器に活性金属6の粉末を容器に入れ、活性金属6の粉末が全ての超砥粒4及び骨材5の外表面に満遍なく付着した状態となるように、更に攪拌混合する。すると、隣り合った超砥粒4と骨材5、超砥粒4と超砥粒4、骨材5と骨材5とが、部分的に接触した状態となり、その間に空隙が形成される。
【0036】
次に、この状態で焼成する。すると、隣り合った超砥粒4と骨材5、超砥粒4と超砥粒4、骨材5と骨材5とが接触している部分で、超砥粒4と活性金属6、骨材5と活性金属6との化学反応による結合が生じ、活性金属6により超砥粒4と骨材5、超砥粒4と超砥粒4、骨材5と骨材5とが結合する。その際、これらが接触していない部分に付着していた活性金属6は、これらが接触している部分に流れていき、最終的に、ある程度の太さを有するブリッジ状となって硬化する。これにより、隣り合った超砥粒4と骨材5、超砥粒4と超砥粒4、骨材5と骨材5とが、ブリッジ状の活性金属6により結合された中間体8となる。なお、バインダーは、焼成する段階で燃焼又は蒸発して焼失する。
【0037】
補強部製造工程では、まず、中間体8に補強液を含浸させる含浸工程を行う。補強液は、硬化されると補強部7となる液体である。補強液は、例えば、乾燥、焼成等により硬化される液体である。補強液としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、液体ガラスなどの液状のものを用いることができる。補強液には、例えば、水、アルコールなどの揮発成分を含ませてもよい。含浸工程では、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間の空隙Aに補強液が入り込む。このとき、補強液に含まれる各種素材の含有比率、補強液の粘度、環境温度等を調整することにより、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6のそれぞれの少なくとも一部に補強液を付着させることもでき、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の全表面に補強液を付着させることもでき、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間の空隙Aを補強液で埋めることもできる。
【0038】
補強部製造工程では、次に、補強液を硬化させて補強部7を形成する硬化工程を行う。硬化工程では、例えば、補強液が含浸された中間体8を自然乾燥させること、補強液が含浸された中間体8を加熱等して強制乾燥させること、補強液が含浸された中間体8を焼成すること等により、補強液を硬化させる。これにより、補強部7が形成されて、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に補強部7が接続された状態となる。
【0039】
ここで、補強液に揮発成分が含有されている場合は、補強部製造工程により揮発成分が揮発することで、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間に空隙Aが形成される。この空隙Aの大きさ等は、補強液に含有させる揮発成分の割合により調整することができる。また、この空隙Aの大きさに等により補強部7の層厚が変わることから、補強液に含有させる揮発成分の割合を調整することでも、補強部7の層厚を調整することができる。
【0040】
なお、台金に対する固着は、どの段階で行ってもよい。例えば、中間体製造工程により中間体8を製造した後に台金に中間体8を固着し、その後、台金に固着された中間体8に対して補強部製造工程を行ってもよい。また、補強部製造工程により超砥粒層を製造した後に台金に超砥粒層を固着してもよい。
【0041】
このように、本実施形態に係る超砥粒工具1では、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に補強部7が接続されて、超砥粒4と骨材5との結合が補強されているため、切粉や研削の圧力によって超砥粒層3が崩壊するのを抑制することができる。
【0042】
ここで、補強部7が、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6のそれぞれの少なくとも一部を被覆している場合は、超砥粒4と骨材5との結合を適切に補強することができる。また、補強部7が、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6を被覆している場合は、超砥粒4と骨材5との結合強度を更に高くすることができる。また、補強部7が、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間の空隙Aを埋めている場合は、超砥粒4と骨材5との結合強度を更に高くすることができるとともに、当該空隙Aに切粉が入り込むことによる超砥粒層3の崩壊を抑制することができることできる。
【0043】
また、補強部7が樹脂を含む場合は、容易に補強部7を形成することができる。
【0044】
本実施形態に係る超砥粒工具の製造方法では、超砥粒4と骨材5とがブリッジ状の活性金属6により結合された中間体8を形成した後に、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6に補強部7を接続するため、活性金属6による超砥粒4と骨材5との結合を適切に行いつつ、容易に補強部7を形成することができる。
【0045】
また、含浸工程により中間体8に補強液を含浸させることで、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の表面の少なくとも一部に補強液を付着させることができるため、その後、硬化工程により補強液を硬化させることで、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の表面の少なくとも一部を補強部7で覆うことができる。
【0046】
また、補強液が樹脂を含む場合は、中間体に対する補強液の含浸及び補強液の硬化を容易に行うことができる。
【0047】
また、補強液が揮発成分を含む場合は、硬化工程で揮発成分を揮発させることで、超砥粒4、骨材5、及び活性金属6の間に空隙Aを形成することができる。これにより、常に超砥粒4を露出させることができるため、被削材に対する法線抵抗を小さくして切れ味を向上させることができる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、超砥粒工具の具体的な例について説明したが、本発明に係る超砥粒工具は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な超砥粒工具に適用することができる。
【実施例
【0049】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
実施例1の超砥粒層として、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を中間体とし、この中間体に補強液を含浸させた後に加熱乾燥させて、超砥粒、骨材、及び活性金属に補強部を接続させたものを用いた。補強液としては、液体ガラスを用いた。
【0051】
そして、実施例1の超砥粒層の抗折力(MPa)を計測した。抗折力は、曲げ試験により計測した。曲げ試験では、試験片が破壊に至るまでの最大荷重から算出した応力値を、抗折力とした。
【0052】
[実施例2]
補強部(補強液)をフェノール樹脂とした他は実施例1と同条件として、実施例2の超砥粒層を製造した。そして、実施例2の超砥粒層の抗折力(MPa)を計測した。
【0053】
[実施例3]
補強部(補強液)をエポキシ樹脂とした他は実施例1と同条件として、実施例3の超砥粒層を製造した。そして、実施例3の超砥粒層の抗折力(MPa)を計測した。
【0054】
[比較例1]
比較例1の超砥粒層として、超砥粒と骨材とがブリッジ状の活性金属により結合された超砥粒層を用いた。なお、比較例1の超砥粒層は、実施例1~3の中間体と同条件で製造されたものである。そして、比較例1の超砥粒層の抗折力(MPa)を計測した。
【0055】
[評価1]
実施例1~3及び比較例1の計測結果を図8及び図9に示す。図8及び図9では、抗折力として、比較例1の値を100とした相対値を示している。図8及び図9に示すように、実施例1~3の何れも、比較例1と比べて抗折力が極めて高いものとなった。この結果から、超砥粒、骨材、及び活性金属に補強部を接続させることで、このような補強部が無いものに比べて、超砥粒と骨材との結合が補強されることにより超砥粒層が崩壊するのを抑制でき、長寿命化を図れることが分かった。
【0056】
[実施例4]
補強液のフェノール樹脂の濃度条件を変えた他は実施例2と同条件として、実施例4の超砥粒層を製造した。そして、実施例4の超砥粒層の樹脂濃度(%)、抗折力(MPa)、研削比、及び法線抵抗(N)を計測した。樹脂濃度は、補強液におけるフェノール樹脂の濃度とした。つまり、補強液として、フェノール樹脂に揮発成分であるアルコールを混合したものを用い、この補強液におけるフェノール樹脂の濃度を計測した。研削比は、所定のSiCを研削した際の、超砥粒層の摩耗した体積に対するSiCの研削された体積の比率とした。法線抵抗は、所定のSiCを研削した際の、超砥粒層に作用する法線方向の抵抗とした。
【0057】
[実施例5]
補強液のフェノール樹脂の濃度条件を変えた他は実施例4と同条件として、実施例5の超砥粒層を製造した。そして、実施例5の超砥粒層の樹脂濃度(%)、抗折力(MPa)、研削比、及び法線抵抗(N)を計測した。
【0058】
[実施例1、実施例3、比較例1]
上述した実施例1、実施例3、比較例1の超砥粒層の抗折力(MPa)、研削比、及び法線抵抗(N)を計測した。
【0059】
[評価2]
実施例4,5及び比較例1の計測結果を図10及び図11に示し、実施例1,3~5及び比較例1の計測結果を図12に示す。図10及び図11では、抗折力として、比較例1の値を100とした相対値を示している。図12では、法線抵抗として、比較例1の値を100とした相対値を示している。図10図12に示すように、実施例4及び5の何れも、比較例1と比べて抗折力が極めて高いものとなった。また、実施例1,3,4,5の何れも、比較例1と比べて、法線抵抗が高くなるものの、研削比が極めて高いものとなった。この結果から、超砥粒、骨材、及び活性金属に補強部を接続させることで、このような補強部が無いものに比べて、超砥粒層が崩壊するのを抑制でき、長寿命化を図れることが分かった。
【符号の説明】
【0060】
1…超砥粒工具、2…台金、3…超砥粒層、4…超砥粒、5…骨材、6…活性金属、7…補強部、8…中間体、A…空隙。
図1
図2
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図12