(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】保持装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240318BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2019166051
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018173287
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222233(JP,A)
【文献】特開2017-157855(JP,A)
【文献】特開2011-238682(JP,A)
【文献】特開2017-183329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有するセラミックス部材と、
前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、
前記セラミックス部材の内部における、前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により形成されたヒータ電極と、
第3の表面を有し、前記第3の表面が前記セラミックス部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成されたベース部材と、
前記セラミックス部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記セラミックス部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、
を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、
前記セラミックス部材のうちの前記第1の表面側の一部分になる第1のセラミックス部分と、前記第1のセラミックス部分の内部に配置された前記チャック電極と、を含む第1の構造体を準備する第1の準備工程と、
前記セラミックス部材のうちの前記第2の表面側の一部分になる第2のセラミックス部分と、前記第2のセラミックス部分における前記第2の表面とは反対側に位置する第4の表面に露出するように配置された前記ヒータ電極と、を含む第2の構造体を準備する第2の準備工程と、
前記第2の準備工程の後、前記接合部により、前記第2の構造体を構成する前記第2のセラミックス部分と前記ベース部材とを接合する第1の接合工程と、
前記第1の接合工程の後、前記冷媒流路への冷媒の供給と、前記ヒータ電極への給電と、を行いつつ、前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面の温度分布を測定する測定工程と、
前記温度分布の測定結果に基づき、前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面に露出した前記ヒータ電極の一部分を研削することによって前記ヒータ電極の発熱量を調整する調整工程と、
前記第2の構造体を構成する前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面側に、前記第1の構造体を構成する前記第1のセラミックス部分を接合することにより、前記第2のセラミックス部分と前記第1のセラミックス部分とを含む前記セラミックス部材を作製する第2の接合工程と、
を備える、
ことを特徴とする保持装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置の製造方法において、さらに、
前記調整工程の後、前記第2の接合工程の前に、前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面上に、溶射により、前記ヒータ電極を覆うセラミックス層を形成する溶射工程を備え、
前記第2の接合工程は、前記第2の構造体を構成する前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面上に形成された前記セラミックス層に、前記第1の構造体を構成する前記第1のセラミックス部分を接合することにより、前記第2のセラミックス部分と前記セラミックス層と前記第1のセラミックス部分とを含む前記セラミックス部材を作製する工程である、
ことを特徴とする保持装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の保持装置の製造方法において、さらに、
前記溶射工程の後、前記第2の接合工程の前に、前記セラミックス層における前記第4の表面側に位置する表面とは反対側の表面を研磨する研磨工程を備える、
ことを特徴とする保持装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置の製造方法において、
前記セラミックス部材は、前記第1の方向視で略円形であり、
前記保持装置は、複数の前記ヒータ電極を備え、
前記複数のヒータ電極のそれぞれは、前記セラミックス部材を、前記第1の方向視で、前記セラミックス部材の外周線と同心の少なくとも1つの円形の仮想分割線で複数のセグメントに仮想的に分割したときの各前記セグメント内に配置されている、
ことを特徴とする保持装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、セラミックス部材と、例えば金属製のベース部材と、セラミックス部材とベース部材とを接合する接合部と、セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の表面(以下、「吸着面」という。)にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、セラミックス部材の内部に配置されたヒータ電極による加熱や、ベース部材に形成された冷媒流路への冷媒供給による冷却を行うことにより、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックス部材の内部に配置されるヒータ電極は、例えば、セラミックスグリーンシート上に導電性材料を含むメタライズペースト(メタライズインク)を印刷し、該メタライズペーストをセラミックスグリーンシートと共に焼成することにより形成される。そのため、形成されるヒータ電極に、形状(厚さや幅)のばらつきが発生するおそれがある。ヒータ電極に形状のばらつきが発生すると、ヒータ電極に抵抗のばらつき、すなわち発熱量のばらつきが発生し、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御性)が低下するおそれがある。なお、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御性の低下は、ヒータ電極の形状のばらつきに限らず、セラミックス部材やベース部材、接合部の構成に起因しても生じ得る。
【0006】
また、このような課題は、静電チャックに限らず、セラミックス部材とベース部材と接合部とを備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される保持装置の製造方法は、第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、前記セラミックス部材の内部における、前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により形成されたヒータ電極と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記セラミックス部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成されたベース部材と、前記セラミックス部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記セラミックス部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、前記セラミックス部材のうちの前記第1の表面側の一部分になる第1のセラミックス部分と、前記第1のセラミックス部分の内部に配置された前記チャック電極と、を含む第1の構造体を準備する第1の準備工程と、前記セラミックス部材のうちの前記第2の表面側の一部分になる第2のセラミックス部分と、前記第2のセラミックス部分における前記第2の表面とは反対側に位置する第4の表面に露出するように配置された前記ヒータ電極と、を含む第2の構造体を準備する第2の準備工程と、前記接合部により、前記第2の構造体を構成する前記第2のセラミックス部分と前記ベース部材とを接合する第1の接合工程と、前記冷媒流路への冷媒の供給と、前記ヒータ電極への給電と、を行いつつ、前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面の温度分布を測定する測定工程と、前記温度分布の測定結果に基づき、前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面に露出した前記ヒータ電極の一部分を研削することによって前記ヒータ電極の発熱量を調整する調整工程と、前記第2の構造体を構成する前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面側に、前記第1の構造体を構成する前記第1のセラミックス部分を接合することにより、前記第2のセラミックス部分と前記第1のセラミックス部分とを含む前記セラミックス部材を作製する第2の接合工程と、を備える。
【0010】
本保持装置の製造方法では、セラミックス部材のうちの第2の表面側の一部分になる第2のセラミックス部分と、第2のセラミックス部分における第2の表面とは反対側に位置する第4の表面に露出するように配置されたヒータ電極と、を含む第2の構造体に、ベース部材が接合された状態で、冷媒流路への冷媒の供給とヒータ電極への給電とを行いつつ、第2のセラミックス部分の第4の表面の温度分布が測定される。また、本保持装置の製造方法では、第4の表面の温度分布の測定結果に基づき、第2のセラミックス部分の第4の表面に露出したヒータ電極の一部分を研削することによってヒータ電極の発熱量が調整された後、第2のセラミックス部分の第4の表面側に、セラミックス部材のうちの第1の表面側の一部分になる第1のセラミックス部分と、第1のセラミックス部分の内部に配置されたチャック電極と、を含む第1の構造体が接合される。すなわち、本保持装置の製造方法では、保持装置のうち、ヒータ電極よりベース部材側の部分を作製した後、実際の使用時と同様の条件で第2のセラミックス部分の第4の表面の温度分布の測定を行い、該温度分布の測定結果に基づきヒータ電極の発熱量の調整を行うことができる。従って、本保持装置の製造方法では、例えばヒータ電極の形状のばらつきに起因するヒータ電極の発熱量のばらつきを補正することができ、その結果、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。
【0011】
(2)上記保持装置の製造方法において、さらに、前記調整工程の後、前記第2の接合工程の前に、前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面上に、溶射により、前記ヒータ電極を覆うセラミックス層を形成する溶射工程を備え、前記第2の接合工程は、前記第2の構造体を構成する前記第2のセラミックス部分の前記第4の表面上に形成された前記セラミックス層に、前記第1の構造体を構成する前記第1のセラミックス部分を接合することにより、前記第2のセラミックス部分と前記セラミックス層と前記第1のセラミックス部分とを含む前記セラミックス部材を作製する工程である構成としてもよい。本保持装置の製造方法では、第2のセラミックス部分の第4の表面にセラミックス層を形成せず、第2のセラミックス部分の第4の表面に直接的に第1の構造体を構成する第1のセラミックス部分を接合する形態と比較して、セラミックス部材の熱伝導率のばらつきを抑制することができる。従って、本保持装置の製造方法によれば、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)上記保持装置の製造方法において、さらに、前記溶射工程の後、前記第2の接合工程の前に、前記セラミックス層における前記第4の表面側に位置する表面とは反対側の表面を研磨する研磨工程を備える構成としてもよい。本保持装置の製造方法では、セラミックス層の厚さのばらつきを抑制することができ、その結果、セラミックス部材の厚さのばらつきを効果的に抑制して、セラミックス部材の熱伝導率のばらつきを効果的に抑制することができる。従って、本保持装置の製造方法によれば、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を極めて効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記保持装置の製造方法において、前記セラミックス部材は、前記第1の方向視で略円形であり、前記保持装置は、複数の前記ヒータ電極を備え、前記複数のヒータ電極のそれぞれは、前記セラミックス部材を、前記第1の方向視で、前記セラミックス部材の外周線と同心の少なくとも1つの円形の仮想分割線で複数のセグメントに仮想的に分割したときの各前記セグメント内に配置されている構成としてもよい。すなわち、本保持装置の製造方法では、各セグメントが、さらに、セラミックス部材の外周線の周方向に沿って複数に分割されてはいない。本保持装置の製造方法のようにセラミックス部材を、第1の方向視で、セラミックス部材の外周線と同心の少なくとも1つの円形の仮想分割線で複数のセグメントに仮想的に分割した形態では、各セグメントを、さらに、セラミックス部材の外周線の周方向に沿って複数に分割した形態と比較して、各セグメントに配置されたヒータ電極における発熱量のばらつきを、他のヒータ電極の発熱量を制御することによって補正することが難しく、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性が低下しやすい。本保持装置の製造方法では、そのような、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性が低下しやすいセグメントの形態を採用した場合においても、例えば各ヒータ電極の形状のばらつきに起因する各ヒータ電極の発熱量のばらつきを補正することができ、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を抑制することができる。
【0014】
(5)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、前記セラミックス部材の内部における、前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により形成されたヒータ電極と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記セラミックス部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成されたベース部材と、前記セラミックス部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記セラミックス部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記セラミックス部材は、前記第1の表面側の一部分である第1のセラミックス部分であって、内部に前記チャック電極が配置された第1のセラミックス部分と、前記第2の表面側の一部分である第2のセラミックス部分であって、前記第2のセラミックス部分における前記第2の表面とは反対側の第4の表面に前記ヒータ電極が配置された第2のセラミックス部分と、前記第1のセラミックス部分と前記第2のセラミックス部分とを接合する第2の接合部と、を含み、前記ヒータ電極に給電し、かつ、前記冷媒流路に冷媒を供給し、前記ヒータ電極の温度と前記冷媒の温度との差が50℃以上であるときに、前記第1の表面における温度の最大値と最小値との差は、3.5℃以下である。本保持装置によれば、セラミックス部材の第1の表面の各位置での温度差が極めて小さいため、セラミックス部材の第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0015】
(6)上記保持装置において、さらに、前記チャック電極への給電のための少なくとも1つの給電端子を備え、前記少なくとも1つの給電端子は、(1)前記第1の方向視で、前記第1の表面の中心から、前記第1の表面の直径の5%以内の位置に配置されている、という第1の条件と、(2)前記第1のセラミックス部分における前記第1の表面とは反対側の表面より前記第1の表面に近い側に位置する第1の端子部分と、前記第1の端子部分より前記第1の表面から遠い側に位置し、前記第1の端子部分に着脱可能に取り付けられた第2の端子部分と、を有する、という第2の条件と、の少なくとも一方を満たす構成としてもよい。本保持装置では、第1の方向視での第1の表面の中心近傍部以外の位置にはチャック電極への給電のための給電端子が存在しないため、あるいは、存在していても第1のセラミックス部分における第1の表面とは反対側の表面より第1の表面に近い側に位置する部分を残して、残りの部分を取り外すことができるため、第2の接合部における中心近傍部以外の部分を容易に切断することができ、これにより容易に第1のセラミックス部分を取り外して交換することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図4】第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図5】第1実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における静電チャック100の製造方法の概要を示す説明図である。
【
図7】第1実施形態における静電チャック100の製造方法の概要を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図9】第2実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図11】第3実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、
図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、
図3および
図4は、第1実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図3には、
図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されており、
図4には、
図2のIV-IVの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向という。
【0019】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面S2(
図2参照)とベース部材20の上面S3とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、ベース部材20は、ベース部材20の上面S3がセラミックス部材10の下面S2側に位置するように配置される。ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0020】
セラミックス部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という。)S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2とを有する略円板状部材である。本実施形態では、セラミックス部材10は、外周の全周にわたって面方向に突出する鍔部109を有している。以下、セラミックス部材10のうちの鍔部109を除く部分を、本体部108という。セラミックス部材10の本体部108の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、セラミックス部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態では、セラミックス部材10は、上側セラミックス部分101と、下側セラミックス部分102と、中間部分103とから構成されている。上側セラミックス部分101は、セラミックス部材10のうちの吸着面S1側の一部分、より詳細には吸着面S1を含む一部分である。鍔部109は、上側セラミックス部分101に形成されている。下側セラミックス部分102は、セラミックス部材10のうちの下面S2側の一部分、より詳細には下面S2を含む一部分である。上側セラミックス部分101および下側セラミックス部分102は、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。後述するように、上側セラミックス部分101および下側セラミックス部分102は、焼成を行うことにより形成された焼成体である。上側セラミックス部分101は、特許請求の範囲における第1のセラミックス部分に相当し、下側セラミックス部分102は、特許請求の範囲における第2のセラミックス部分に相当する。
【0022】
また、セラミックス部材10の中間部分103は、上側セラミックス部分101と下側セラミックス部分102との間に配置された部分である。中間部分103は、上側セラミックス部分101側(上側)に位置する中間接合部104と、下側セラミックス部分102側(下側)に位置する中間セラミックス部分105とから構成されている。中間セラミックス部分105は、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。後述するように、中間セラミックス部分105は、セラミックス溶射を行うことにより形成された溶射層である。中間セラミックス部分105は、特許請求の範囲におけるセラミックス層に相当する。また、中間接合部104は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。中間接合部104は、セラミックス粉末等のフィラーを含んでいてもよい。中間接合部104は、上側セラミックス部分101と、中間セラミックス部分105が形成された下側セラミックス部分102とを接合する。中間接合部104は、特許請求の範囲における第2の接合部に相当する。なお、セラミックス部材10は、樹脂接着材を含む中間接合部104を含んでいるが、セラミックス部材10の大部分はセラミックスにより形成されているため、本明細書では便宜上、「セラミックス」部材10と呼ぶものとする。
【0023】
図2に示すように、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の吸着面S1に吸着固定される。本実施形態では、チャック電極40は、セラミックス部材10を構成する上側セラミックス部分101の内部に配置されている。
【0024】
また、セラミックス部材10の内部には、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)のための複数のヒータ電極50と、各ヒータ電極50への給電のための構成(ドライバ電極60等)とが配置されている。これらの構成については、後に詳述する。
【0025】
ベース部材20は、例えばセラミックス部材10の本体部108と同径の、または、セラミックス部材10の本体部108より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0026】
ベース部材20は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、セラミックス部材10に接合されている。接合部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接合部30は、セラミックス粉末等のフィラーを含んでいてもよい。接合部30を構成する材料の少なくとも一部は、中間接合部104を構成する材料の少なくとも一部と同一であることが好ましい。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0027】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20とセラミックス部材10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス部材10が冷却され、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0028】
また、静電チャック100は、中間部分103、下側セラミックス部分102および接合部30の積層体の外周を取り囲むように形成された略円環状のOリング90を備える。Oリング90は、例えばゴム等の絶縁体により形成されている。Oリング90は、上側セラミックス部分101に形成された鍔部109の下面とベース部材20の上面S3とに密着しており、接合部30や中間接合部104がプラズマ等に晒されて劣化することを防止する。
【0029】
A-2.ヒータ電極50等の構成:
次に、ヒータ電極50およびヒータ電極50への給電のための構成について詳述する。上述したように、静電チャック100は、複数のヒータ電極50(より具体的には、3つのヒータ電極50A,50B,50C)を備える(
図3参照)。本実施形態では、複数のヒータ電極50は、セラミックス部材10を構成する下側セラミックス部分102の上面(セラミックス部材10の下面S2とは反対側の表面)S4に配置されている。すなわち、複数のヒータ電極50は、チャック電極40より吸着面S1から離間した位置に配置されている。なお、実際には、下側セラミックス部分102の上面S4上には、中間セラミックス部分105が位置しており、複数のヒータ電極50は、中間セラミックス部分105に覆われている。下側セラミックス部分102の上面S4は、特許請求の範囲における第4の表面に相当する。
【0030】
図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の本体部108が、面方向に並ぶ3つのセグメントZ(Za,Zb,Zc)に仮想的に分割されている。より具体的には、セラミックス部材10の本体部108が、Z軸方向視で、本体部108の外周線と同心の2つの円形の仮想分割線VL(VL1,VL2)によって、3つのセグメントZに仮想的に分割されている。Z軸方向視での各セグメントZの形状は、略円形または略円環形である。
【0031】
複数のヒータ電極50のそれぞれは、セラミックス部材10の本体部108に設定された複数のセグメントZのうちの1つに配置されている。具体的には、3つのヒータ電極50の内、1つのヒータ電極50Aは、3つのセグメントZのうちの最も外周側に位置するセグメントZaに配置されており、他の1つのヒータ電極50Cは、3つのセグメントZのうちの最も中心に近い側に位置するセグメントZcに配置されており、残り1つのヒータ電極50Bは、セグメントZaとセグメントZcとに挟まれたセグメントZbに配置されている。
【0032】
各ヒータ電極50は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部51と、ヒータライン部51の両端部に接続されたヒータパッド部52とを有する。ヒータ電極50を構成するヒータライン部51およびヒータパッド部52は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態では、Z軸方向視でのヒータライン部51の形状は、略円形または略螺旋状とされている。
【0033】
また、静電チャック100は、各ヒータ電極50への給電のための構成を備えている。具体的には、静電チャック100は、複数のドライバ電極60(より具体的には、6つのドライバ電極60)を備える(
図4参照)。各ドライバ電極60は、面方向に平行な所定の形状の導体パターンであり、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。本実施形態では、複数のドライバ電極60は、セラミックス部材10を構成する下側セラミックス部分102の内部に配置されている。また、複数のドライバ電極60は、Z軸方向において互いに同一の位置に配置されている。なお、ドライバ電極60は、下記の(1)および(2)の少なくとも一方を満たすという点で、ヒータ電極50と相違する。
(1)ドライバ電極60の電流が流れる方向に対して垂直方向の断面積は、ヒータ電極50の同様な断面積の5倍以上である。
(2)ヒータ電極50における、ドライバ電極60につながる一方のビアから他方のビアまでの間の抵抗は、ドライバ電極60における、ヒータ電極50につながるビアから給電端子74につながるビアまでの間の抵抗の5倍以上である。
【0034】
図4に示すように、本実施形態では、静電チャック100が備える6つのドライバ電極60が、それぞれ一対のドライバ電極60から構成された3つのドライバ電極対600(600A,600B,600C)を構成している。3つのドライバ電極対600は、3つのヒータ電極50(50A,50B,50C)に対応している。
図2~
図4に示すように、1つのドライバ電極対600(例えば、ドライバ電極対600A)を構成する一対のドライバ電極60の一方は、導電性材料により形成されたヒータ側ビア71を介して、対応するヒータ電極50(例えば、ヒータ電極50A)の一方のヒータパッド部52と電気的に接続されている。また、該ドライバ電極対600(例えば、ドライバ電極対600A)を構成する一対のドライバ電極60の他方は、ヒータ側ビア71を介して、対応するヒータ電極50(例えば、ヒータ電極50A)の他方のヒータパッド部52と電気的に接続されている。
【0035】
また、
図2に示すように、静電チャック100には、ベース部材20の下面S7からセラミックス部材10の内部に至る複数の端子用孔110が形成されている。各端子用孔110は、ベース部材20を上下方向に貫通する貫通孔22と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔32と、セラミックス部材10の下面S2側に形成された凹部13とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。
【0036】
各端子用孔110には、導電性材料により形成された略柱状の部材である給電端子74が収容されている。また、各端子用孔110を構成するセラミックス部材10の凹部13の底面には、導電性材料により形成された給電電極(電極パッド)73が配置されている。給電端子74の上端部分は、例えばろう付け等により給電電極73に接合されている。
【0037】
また、
図2および
図4に示すように、各ドライバ電極対600を構成する一対のドライバ電極60の一方は、該ドライバ電極60からセラミックス部材10の下面S2側に延びる給電側ビア72を介して、1つの給電電極73に電気的に接続されており、該一対のドライバ電極60の他方は、他の給電側ビア72を介して、他の1つの給電電極73に電気的に接続されている。
【0038】
各給電端子74は、電源(図示せず)に接続されている。電源からの電圧は、給電端子74、給電電極73、給電側ビア72、ドライバ電極60およびヒータ側ビア71を介して、各ヒータ電極50に印加される。各ヒータ電極50に電圧が印加されると、各ヒータ電極50が発熱してセラミックス部材10が加熱され、これにより、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。
【0039】
なお、本実施形態の静電チャック100では、各ヒータ電極50に給電し、かつ、冷媒流路21に冷媒を供給し、ヒータ電極50の温度と冷媒の温度との差が50℃以上であるときに、セラミックス部材10の吸着面S1における温度の最大値と最小値との差は、3.5℃以下となっている。すなわち、セラミックス部材10の吸着面S1の各位置での温度差が、極めて小さくなっている。このような構成は、例えば、以下に説明する本実施形態の静電チャック100の製造方法に従い静電チャック100を製造することにより実現することができる。なお、ヒータ電極および吸着面S1の各位置での温度は、例えばIRカメラ等の温度測定装置を用いて測定することができる。
【0040】
A-3.静電チャック100の製造方法:
次に、第1実施形態における静電チャック100の製造方法について説明する。
図5は、第1実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。また、
図6および
図7は、第1実施形態における静電チャック100の製造方法の概要を示す説明図である。
【0041】
はじめに、上側セラミックス部分101aと、上側セラミックス部分101aの内部に配置されたチャック電極40と、を含む上側セラミックス構造体11を作製する(S110、
図6のA欄参照)。ここで、上側セラミックス部分101aは、製造完了後の静電チャック100における上側セラミックス部分101になる構造体である。上側セラミックス部分101aは、上側セラミックス部分101と完全に同一物であってもよいし、上側セラミックス部分101aに対する種々の加工が行われた結果、上側セラミックス部分101になるとしてもよい。S110の工程は、特許請求の範囲における第1の準備工程に相当し、上側セラミックス構造体11は第1の構造体に相当する。
【0042】
上側セラミックス構造体11の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、チャック電極40等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビアの形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、上側セラミックス構造体11を得る。なお、必要により、上側セラミックス構造体11の反り修正や表面の研磨加工等を行ってもよい。
【0043】
また、下側セラミックス部分102aと、下側セラミックス部分102aの上面S4に露出するように配置されたヒータ電極50と、を含む下側セラミックス構造体12を作製する(S120、
図6のB欄参照)。ここで、下側セラミックス部分102aは、製造完了後の静電チャック100における下側セラミックス部分102になる構造体である。下側セラミックス部分102aは、下側セラミックス部分102と完全に同一物であってもよいし、下側セラミックス部分102aに対する種々の加工が行われた結果、下側セラミックス部分102になるとしてもよい。本実施形態では、下側セラミックス構造体12は、さらに、ドライバ電極60、給電電極73および各種ビア71,72を含む。S120の工程は、特許請求の範囲における第2の準備工程に相当し、下側セラミックス構造体12は第2の構造体に相当する。
【0044】
下側セラミックス構造体12の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、ヒータ電極50やドライバ電極60、給電電極73等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビアの形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、下側セラミックス構造体12を得る。なお、必要により、下側セラミックス構造体12の反り修正や表面(ただし、ヒータ電極50が露出した上面S4を除く)の研磨加工等を行ってもよい。
【0045】
次に、下側セラミックス構造体12に形成された給電電極73に、給電端子74を、例えばろう付けにより接合する(S130、
図6のC欄参照)。なお、給電端子74を給電電極73に接合する前に、給電電極73の表面にメッキ処理(例えば、ニッケルメッキ)を行ってもよい。
【0046】
次に、下側セラミックス構造体12を構成する下側セラミックス部分102aとベース部材20とを、接合部30により接合する(S140、
図6のC欄参照)。より詳細には、例えばベース部材20の上面S3に、例えばシリコーン系樹脂を含む接着剤(ペースト状接着剤またはシート状接着剤)を配置し、該接着剤の上に下側セラミックス部分102aを含む下側セラミックス構造体12を配置し、該接着剤を硬化させる硬化処理を行うことにより、下側セラミックス構造体12を構成する下側セラミックス部分102aとベース部材20とを接合する接合部30を形成する。S140の工程は、特許請求の範囲における第1の接合工程に相当する。
【0047】
次に、ベース部材20の冷媒流路21への冷媒の供給と、下側セラミックス部分102aの上面S4に露出するように配置された各ヒータ電極50への給電とを行いつつ、下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布を測定する(S150)。温度分布の測定は、例えば、下側セラミックス部分102aの上面S4における複数の測定点の温度を測定することにより行われる。S150の工程は、特許請求の範囲における測定工程に相当する。
【0048】
次に、S150の温度分布の測定結果に基づき、下側セラミックス部分102aの上面S4に露出するように配置されたヒータ電極50の一部分を研削することによって、ヒータ電極50の発熱量を調整する(S160、
図7のA欄参照)。ヒータ電極50の一部分を研削すると、ヒータ電極50の該部分の断面積が小さくなることによって電気抵抗が大きくなり、ヒータ電極50の該部分の発熱量が増加する。そのため、例えば、ヒータ電極50のうち、S150の温度分布の測定結果において比較的低温であった部分を研削することにより、該部分の温度を高温側に補正することができる。S160の工程は、特許請求の範囲における調整工程に相当する。
【0049】
なお、ヒータ電極50の研削は、例えば、研削する部分以外の部分にマスクMAを配置し、ショットブラスト装置BDにより、下側セラミックス部分102aの上面S4に向けてブラスト材BMを投射することにより行われる。ヒータ電極50の各部分に対して行うショットブラストの回数を異ならせることにより、ヒータ電極50の各部分の研削量を異ならせることができる。また、ヒータ電極50の研削は、例えば、マシニング装置による研磨によっても実現することができる。また、ヒータ電極50の研削によるヒータ電極50の発熱量の調整を行った後、再度、S150の工程と同様に下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布を測定し、ヒータ電極50の発熱量の調整結果の確認や、ヒータ電極50の再度の研削の実行要否の判断等を行ってもよい。また、ヒータ電極50の発熱量の調整の有無は、例えば、ヒータ電極50の抵抗値の変化の有無やIRカメラによる画像の変化の有無により確認することができる。
【0050】
次に、下側セラミックス部分102aの上面S4上に、溶射により、ヒータ電極50を覆う中間セラミックス部分105を形成する(S170、
図7のB欄参照)。なお、S170の工程の際には、ベース部材20の冷媒流路21への冷媒の供給を行ってもよい。S170の工程は、特許請求の範囲における溶射工程に相当する。
【0051】
次に、中間セラミックス部分105の上面S5(中間セラミックス部分105における、下側セラミックス部分102aの上面S4側に位置する表面とは反対側の表面)を研磨する(S180)。S180の工程は、特許請求の範囲における研磨工程に相当する。
【0052】
次に、下側セラミックス部分102aの上面S4側に(より詳細には、下側セラミックス部分102aの上面S4上に形成された中間セラミックス部分105上に)、S110で作製された上側セラミックス構造体11を構成する上側セラミックス部分101aを、中間接合部104によって接合する(S190、
図7のC欄参照)。より詳細には、例えば中間セラミックス部分105の上面S5に、例えばシリコーン系樹脂を含む接着剤(ペースト状接着剤またはシート状接着剤)を配置し、該接着剤の上に上側セラミックス部分101aを配置し、該接着剤を硬化させる硬化処理を行うことにより、中間セラミックス部分105と上側セラミックス部分101aとを接合する中間接合部104を形成する。S190の工程により、下側セラミックス部分102aと中間部分103(中間セラミックス部分105および中間接合部104)と上側セラミックス部分101aとを含むセラミックス部材10が作製される。なお、S190の工程の後に、セラミックス部材10の吸着面S1の研磨等の加工を行ってもよい。S190の工程は、特許請求の範囲における第2の接合工程に相当する。
【0053】
次に、中間部分103(中間セラミックス部分105および中間接合部104)、下側セラミックス部分102aおよび接合部30の積層体の外周を取り囲むように、Oリング90を取り付ける(S200、
図7のC欄参照)。主として以上の工程により、上述した構成の静電チャック100が製造される。
【0054】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、セラミックス部材10と、ベース部材20と、接合部30とを備える。セラミックス部材10は、Z軸方向に略直交する吸着面S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2とを有する。ベース部材20は、上面S3を有し、上面S3がセラミックス部材10の下面S2側に位置するように配置される。ベース部材20の内部には、冷媒流路21が形成されている。接合部30は、セラミックス部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置され、セラミックス部材10とベース部材20とを接合する。セラミックス部材10の内部には、チャック電極40が配置されている。また、セラミックス部材10の内部における、チャック電極40より吸着面S1から離間した位置には、抵抗発熱体により形成されたヒータ電極50が配置されている。
【0055】
また、本実施形態の静電チャック100の製造方法は、セラミックス部材10のうちの吸着面S1側の一部分になる上側セラミックス部分101aと、上側セラミックス部分101aの内部に配置されたチャック電極40と、を含む上側セラミックス構造体11を準備する工程(第1の準備工程、S110)と、セラミックス部材10のうちの下面S2側の一部分になる下側セラミックス部分102aと、下側セラミックス部分102aにおける下面S2とは反対側に位置する上面S4に露出するように配置されたヒータ電極50と、を含む下側セラミックス構造体12を準備する工程(第2の準備工程、S120)と、接合部30により、下側セラミックス構造体12を構成する下側セラミックス部分102aとベース部材20とを接合する工程(第1の接合工程、S140)と、冷媒流路21への冷媒の供給とヒータ電極50への給電とを行いつつ、下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布を測定する工程(測定工程、S150)と、S150の温度分布の測定結果に基づき、下側セラミックス部分102aの上面S4に露出したヒータ電極50の一部分を研削することによってヒータ電極50の発熱量を調整する工程(調整工程、S160)と、下側セラミックス構造体12を構成する下側セラミックス部分102aの上面S4側に、上側セラミックス構造体11を構成する上側セラミックス部分101aを接合することにより、下側セラミックス部分102aと上側セラミックス部分101aとを含むセラミックス部材10を作製する工程(第2の接合工程、S190)とを備える。
【0056】
このように、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、セラミックス部材10のうちの下面S2側の一部分になる下側セラミックス部分102aと、下側セラミックス部分102aにおける下面S2とは反対側に位置する上面S4に露出するように配置されたヒータ電極50と、を含む下側セラミックス構造体12に、ベース部材20が接合された状態で、冷媒流路21への冷媒の供給とヒータ電極50への給電とを行いつつ、下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布が測定される。また、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、S150の温度分布の測定結果に基づき、下側セラミックス部分102aの上面S4に露出したヒータ電極50の一部分を研削することによってヒータ電極50の発熱量が調整された後、下側セラミックス部分102aの上面S4側に、セラミックス部材10のうちの吸着面S1側の一部分になる上側セラミックス部分101aと、上側セラミックス部分101aの内部に配置されたチャック電極40と、を含む上側セラミックス構造体11が接合される。すなわち、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、静電チャック100のうち、ヒータ電極50よりベース部材20側(下側)の部分を作製した後、実際の使用時と同様の条件で下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布の測定を行い、該温度分布の測定結果に基づきヒータ電極50の発熱量の調整を行うことができる。従って、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、例えばヒータ電極50の形状のばらつきに起因するヒータ電極50の発熱量のばらつきを補正することができ、その結果、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。なお、本明細書において、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が高いとは、吸着面S1全体の温度分布が均一に近いことと、セグメントZ毎に吸着面S1の温度分布が均一に近いこととの少なくとも一方の意味を含む。
【0057】
また、本実施形態の静電チャック100の製造方法は、さらに、S160の調整工程の後、S190の第2の接合工程の前に、下側セラミックス部分102aの上面S4上に、溶射により、ヒータ電極50を覆う中間セラミックス部分105を形成する工程(溶射工程、S170)を備え、S190の第2の接合工程は、下側セラミックス構造体12を構成する下側セラミックス部分102aの上面S4上に形成された中間セラミックス部分105に、上側セラミックス構造体11を構成する上側セラミックス部分101aを接合することにより、下側セラミックス部分102aと中間セラミックス部分105と上側セラミックス部分101aとを含むセラミックス部材10を作製する工程である。そのため、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、下側セラミックス部分102aの上面S4に中間セラミックス部分105を形成せず、下側セラミックス部分102aの上面S4に直接的に上側セラミックス構造体11を構成する上側セラミックス部分101aを接合する形態と比較して、セラミックス部材10の熱伝導率のばらつきを抑制することができる。より詳細には、S160の調整工程において、ヒータ電極50の一部分を研削する際には、下側セラミックス部分102aの上面S4自体が研削されることがあり、その結果、下側セラミックス部分102aの厚さのばらつき(すなわち、セラミックス部材10の厚さのばらつき)が発生してセラミックス部材10の熱伝導率のばらつきが発生することがある。しかしながら、S170の溶射工程を行うことにより、下側セラミックス部分102aの厚さのばらつき(すなわち、セラミックス部材10の厚さのばらつき)を抑制することができ、その結果、セラミックス部材10の熱伝導率のばらつきを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態の静電チャック100の製造方法は、さらに、S170の溶射工程の後、S190の第2の接合工程の前に、中間セラミックス部分105の上面S5(下側セラミックス部分102aの上面S4側に位置する表面とは反対側の表面)を研磨する工程(研磨工程、S180)を備える。そのため、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、中間セラミックス部分105の厚さのばらつきを抑制することができ、その結果、セラミックス部材10の厚さのばらつきを効果的に抑制して、セラミックス部材10の熱伝導率のばらつきを効果的に抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性の低下を極めて効果的に抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の静電チャック100の製造方法において、セラミックス部材10の本体部108はZ軸方向視で略円形であり、静電チャック100は複数のヒータ電極50を備え、複数のヒータ電極50のそれぞれは、セラミックス部材10の本体部108を、Z軸方向視で、セラミックス部材10の本体部108の外周線と同心の少なくとも1つの円形の仮想分割線VLで複数のセグメントZに仮想的に分割したときの各セグメントZ内に配置されている。すなわち、本実施形態では、各セグメントZが、さらに、セラミックス部材10の本体部108の外周線の周方向に沿って複数に分割されてはいない。本実施形態のようにセラミックス部材10の本体部108を、Z軸方向視で、セラミックス部材10の本体部108の外周線と同心の少なくとも1つの円形の仮想分割線VLで複数のセグメントZに仮想的に分割した形態では、各セグメントZを、さらに、セラミックス部材10の本体部108の外周線の周方向に沿って複数に分割した形態と比較して、各セグメントZに配置されたヒータ電極50における発熱量のばらつきを、他のヒータ電極50の発熱量を制御することによって補正することが難しく、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が低下しやすい。本実施形態の静電チャック100の製造方法では、そのような、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性が低下しやすいセグメントZの形態を採用した場合においても、例えば各ヒータ電極50の形状のばらつきに起因する各ヒータ電極50の発熱量のばらつきを補正することができ、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性の低下を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態の静電チャック100において、セラミックス部材10は、吸着面S1側の一部分である上側セラミックス部分101であって、内部にチャック電極40が配置された上側セラミックス部分101と、下面S2側の一部分である下側セラミックス部分102であって、下側セラミックス部分102における下面S2とは反対側の上面S4にヒータ電極50が配置された下側セラミックス部分102と、上側セラミックス部分101と下側セラミックス部分102とを接合する中間接合部104と、を含み、ヒータ電極50に給電し、かつ、冷媒流路21に冷媒を供給し、ヒータ電極50の温度と冷媒の温度との差が50℃以上であるときに、吸着面S1における温度の最大値と最小値との差は、3.5℃以下である。本実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の吸着面S1の各位置での温度差が極めて小さいため、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0061】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0062】
図8に示すように、第2実施形態の静電チャック100は、セラミックス部材10の中間部分103の構成が、第1実施形態の静電チャック100の構成と異なる。より詳細には、第2実施形態の静電チャック100では、セラミックス部材10の中間部分103が、中間接合部104により構成されており、第1実施形態の静電チャック100における中間セラミックス部分105を含んでいない。すなわち、第2実施形態の静電チャック100では、下側セラミックス部分102が、中間セラミックス部分105を介さずに、上側セラミックス部分101と直接的に中間接合部104によって接合されている。
【0063】
図9は、第2実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。第2実施形態の静電チャック100の製造方法におけるS110からS160までの工程は、第1実施形態の静電チャック100の製造方法におけるS110からS160までの工程と同一である。第2実施形態の静電チャック100の製造方法では、S160の調整工程の後、下側セラミックス構造体12を構成する下側セラミックス部分102aの上面S4側に、上側セラミックス構造体11を構成する上側セラミックス部分101aを、中間接合部104によって接合する(S192)。より詳細には、例えば下側セラミックス部分102aの上面S4に、ヒータ電極50を覆うように例えばシリコーン系樹脂を含む接着剤(ペースト状接着剤またはシート状接着剤)を配置し、該接着剤の上に上側セラミックス構造体11を構成する上側セラミックス部分101aを配置し、該接着剤を硬化させる硬化処理を行うことにより、下側セラミックス部分102aと上側セラミックス部分101aとを接合する中間接合部104を形成する。S192の工程により、下側セラミックス部分102aと上側セラミックス部分101aとを含むセラミックス部材10が作製される。S192の工程は、特許請求の範囲における第2の接合工程に相当する。その後は、第1実施形態の静電チャック100の製造方法と同様に、S2000の工程が実行される。
【0064】
以上説明したように、第2実施形態の静電チャック100の製造方法では、第1実施形態の静電チャック100の製造方法と同様に、セラミックス部材10のうちの下面S2側の一部分になる下側セラミックス部分102aと、下側セラミックス部分102aにおける下面S2とは反対側に位置する上面S4に露出するように配置されたヒータ電極50と、を含む下側セラミックス構造体12に、ベース部材20が接合された状態で、冷媒流路21への冷媒の供給とヒータ電極50への給電とを行いつつ、下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布が測定される。また、S150の温度分布の測定結果に基づき、下側セラミックス部分102aの上面S4に露出したヒータ電極50の一部分を研削することによってヒータ電極50の発熱量が調整された後、下側セラミックス部分102aの上面S4側に、セラミックス部材10のうちの吸着面S1側の一部分になる上側セラミックス部分101aと、上側セラミックス部分101aの内部に配置されたチャック電極40と、を含む上側セラミックス構造体11が接合される。すなわち、静電チャック100のうち、ヒータ電極50よりベース部材20側(下側)の部分を作製した後、実際の使用時と同様の条件で下側セラミックス部分102aの上面S4の温度分布の測定を行い、該温度分布の測定結果に基づきヒータ電極50の発熱量の調整を行うことができる。従って、第2実施形態の静電チャック100の製造方法では、第1実施形態の静電チャック100の製造方法と同様に、例えばヒータ電極50の形状のばらつきに起因するヒータ電極50の発熱量のばらつきを補正することができ、その結果、セラミックス部材10の吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。
【0065】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。以下では、第3実施形態の静電チャック100の構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0066】
図10に示すように、第3実施形態の静電チャック100は、面方向に並ぶ複数のチャック電極40を備える。また、第3実施形態の静電チャック100は、各チャック電極40への給電のための給電端子(第1の給電端子44および第2の給電端子45)を備える。なお、上述した他の実施形態の静電チャック100も、図示は省略しているが、静電チャック100はチャック電極40への給電のための給電端子を備えている。
【0067】
各給電端子44,45は、端子用孔120に収容されている。端子用孔120は、ベース部材20の下面S7からセラミックス部材10を構成する上側セラミックス部分101の内部に至るようにZ軸方向に略平行に延びる孔である。各端子用孔120の底面(上面)には、ビア42を介してチャック電極40に電気的に接続された給電電極(電極パッド)43が配置されている。各給電端子44,45の上端部分は、例えばろう付け等により給電電極43に接合されている。
【0068】
ここで、第1の給電端子44は、Z軸方向視で、吸着面S1の中心の近傍に配置されている。より詳細には、第1の給電端子44は、Z軸方向視で、吸着面S1の中心から、吸着面S1の直径の5%以内の位置(例えば、Z軸方向視で、吸着面S1の中心を中心とした円であって、吸着面S1の直径の5%以内の長さを有する直径の円の内側領域)に配置されている。この第1の給電端子44は、例えば、金属等により形成された3つの部分(上から順に上側部分44a、中間部分44b、下側部分44c)から構成されている。上側部分44aおよび下側部分44cは、柱状の部分である。上側部分44aの上端は、給電電極43に接合されている。中間部分44bは、例えば撚り線から構成され、上側部分44aおよび下側部分44cを連結している。中間部分44bと上側部分44aおよび下側部分44cとは、それぞれ例えばかしめにより接合されている。
【0069】
また、第2の給電端子45は、Z軸方向視で、吸着面S1の中心の近傍以外(周縁部)に配置されている。より詳細には、第2の給電端子45は、Z軸方向視で、吸着面S1の中心からの距離が、吸着面S1の直径の5%超の位置に配置されている。この第2の給電端子45は、例えば、金属等により形成された3つの部分(上から順に上側部分45a、中間部分45b、下側部分45c)から構成されている。上側部分45aの上端は、給電電極43に接合されている。また、上側部分45aは、その全体が、上側セラミックス部分101における吸着面S1とは反対側の表面(以下、「下面S8」という。)より吸着面S1に近い側(すなわち、上側)に位置している。上側部分45aの下面には、雌ネジが形成された凹部が形成されている。下側部分45cは、柱状の部分であり、下側部分45cの上端には凹部が形成されている。中間部分45bは、上側部分45aおよび下側部分45cを連結する部分である。中間部分45bの上端部は、雄ネジが形成されており、上述した上側部分45aの雌ネジが形成された凹部に螺号している。また、中間部分45bの下端部は、例えば板バネ状になっており、上述した下側部分45cの凹部に嵌合している。
【0070】
このように、第3実施形態の静電チャック100では、各給電端子44,45は、
(1)Z軸方向視で、吸着面S1の中心から、吸着面S1の直径の5%以内の位置に配置されている、という第1の条件(第1の給電端子44はこの条件を満たす)と、
(2)上側セラミックス部分101における吸着面S1とは反対側の表面(下面S8)より吸着面S1に近い側(上側)に位置する第1の端子部分(例えば、第2の給電端子45の上側部分45a)と、該第1の端子部分より吸着面S1から遠い側(下側)に位置し、該第1の端子部分に着脱可能に取り付けられた第2の端子部分(例えば、第2の給電端子45の中間部分45b)と、を有する、という第2の条件(第2の給電端子45はこの条件を満たす)と、
の少なくとも一方を満たしている。
【0071】
次に、第3実施形態の静電チャック100の再生・製造方法について説明する。静電チャック100が繰り返し使用されると、例えば、吸着面S1に、ウェハWの洗浄液残滓等の汚染物質が付着したり、微細な凹凸が形成されたりして、ウェハWを吸着する吸着力が低下したり、吸着面S1とウェハWとの間の密着性が低下して不活性ガスが漏洩したりする場合がある。そのような場合には、例えば吸着面S1の研削等を行って性能を回復させることも可能であるが、これを繰り返すと、吸着面S1とチャック電極40との間の厚さが規定の厚さに満たなくなることがある。例えば、このような場合には、セラミックス部材10における吸着面S1を含む部分、すなわち上側セラミックス部分101を交換することにより、静電チャック100を再生して製造する処理が実行される。
【0072】
図11は、第3実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の流れを示すフローチャートである。また、
図12は、第3実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の概要を示す説明図である。
【0073】
はじめに、チャック電極40への給電のための給電端子44,45のうち、周縁部に配置された第2の給電端子45の一部分、具体的には中間部分45bおよび下側部分45cを取り外す(S310)。上述したように、第2の給電端子45の上側部分45aと中間部分45bとは、螺号により接合されているため、該螺号を緩めて外すことにより、中間部分45bおよび下側部分45cのみを容易に取り外すことができる。また、Oリング90も取り外す。
【0074】
図12のA欄には、静電チャック100からOリング90と、第2の給電端子45の中間部分45bおよび下側部分45cとが取り外された状態が示されている。上述したように、第2の給電端子45の上側部分45aは、その全体が、上側セラミックス部分101の下面S8より上側に位置しているため、第2の給電端子45の中間部分45bおよび下側部分45cが取り外された状態では、第2の給電端子45用の端子用孔120における上側セラミックス部分101の下面S8より下側の部分には何の部材も配置されておらず、空間となっている。
【0075】
次に、中間接合部104を切断する(S320)。より詳細には、静電チャック100を図示しない回転台上に載置して回転させながら、例えば糸鋸Tといった所定の工具を用いて、中間接合部104を切断する。
図12のB欄には、糸鋸Tにより中間接合部104を切断している様子が示されている。このとき、チャック電極40への給電のための給電端子44,45のうち、周縁部に配置された第2の給電端子45については、中間部分45bおよび下側部分45cが取り外されているため、第2の給電端子45が中間接合部104の切断の支障になることはない。一方、中心近傍に配置された第1の給電端子44については、中間接合部104の切断の支障となる。そのため、中間接合部104は、中心近傍を残して容易に切断される。
【0076】
次に、上側セラミックス部分101を取り外す(S330)。上述したS320において、中間接合部104は、中心近傍を残して切断されているため、あとは中心近傍に位置する第1の給電端子44および中心近傍に残された中間接合部104を、所定の工具を用いて切断等することにより、上側セラミックス部分101を容易に取り外すことができる。
【0077】
次に、新たに作製した上側セラミックス部分101を、新たに形成する中間接合部104によって接合する(S340)。次に、上側セラミックス部分101に第1の給電端子44および第2の給電端子45を取り付ける(S350)。なお、第2の給電端子45については、新たに作製した上側セラミックス部分101に上側部分45aが接合済みである場合には、第2の給電端子45の残りの部分、すなわち、中間部分45bおよび下側部分45cを取り付ける。また、新たに作製した上側セラミックス部分101に上側部分45aが接合済みではない場合には、第2の給電端子45の給電電極43への接合(例えば、ろう付け)を行う。
【0078】
最後に、Oリング90を取り付ける(S360)。以上の工程により、静電チャック100が、再生・製造される。
【0079】
以上説明したように、第3実施形態の静電チャック100は、チャック電極40への給電のための給電端子44,45を備える。各給電端子44,45は、
(1)Z軸方向視で、吸着面S1の中心から、吸着面S1の直径の5%以内の位置に配置されている、という第1の条件と、
(2)上側セラミックス部分101における吸着面S1とは反対側の表面(下面S8)より吸着面S1に近い側(上側)に位置する第1の端子部分(例えば、第2の給電端子45の上側部分45a)と、該第1の端子部分より吸着面S1から遠い側(下側)に位置し、該第1の端子部分に着脱可能に取り付けられた第2の端子部分(例えば、第2の給電端子45の中間部分45b)と、を有する、という第2の条件と、
の少なくとも一方を満たしている。そのため、第3実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視での吸着面S1の中心近傍部以外の位置にはチャック電極40への給電のための給電端子が存在しないため、あるいは、存在していても上側セラミックス部分101の下面S8より上側に位置する部分を残して、残りの部分を取り外すことができるため、中間接合部104における中心近傍部以外の部分を容易に切断することができ、これにより容易に上側セラミックス部分101を取り外して交換することができる。
【0080】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0081】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態におけるヒータ電極50の個数や、各ヒータ電極50の形状、セラミックス部材10における各ヒータ電極50の配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の静電チャック100は、3つのヒータ電極50を備えるが、静電チャック100が備えるヒータ電極50の個数は、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。同様に、上記実施形態におけるセグメントZの個数や、各セグメントZの形状、セラミックス部材10における各セグメントZの配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。なお、上記実施形態における静電チャック100の製造方法は、セグメントZの個数が比較的少ない(例えば、セグメントZの個数が10個以下程度の)形態に好適である。また、セラミックス部材10にセグメントZが設定されていなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態におけるドライバ電極60の個数や、各ドライバ電極60の形状、セラミックス部材10における各ドライバ電極60の配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態において、静電チャック100がドライバ電極60を備えないとしてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。また、上記実施形態において、静電チャック100がOリング90を備えないとしてもよい。また、上記実施形態において、セラミックス部材10が鍔部109を有さないとしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、セラミックス部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。また、上記実施形態において、上側セラミックス部分101と下側セラミックス部分102とは、互いに同じ種類のセラミックス材料により形成されていてもよいし、互いに異なる種類のセラミックス材料により形成されていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態における静電チャック100の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1実施形態における静電チャック100の製造方法では、中間セラミックス部分105の研磨工程(S180)が行われるが、この工程を省略してもよい。また、上記実施形態では、セラミックスグリーンの積層体を焼成することにより上側セラミックス部分101aおよび下側セラミックス部分102aが作製されるが、上側セラミックス部分101aおよび下側セラミックス部分102aの少なくとも一方が他の方法(例えば、ホットプレス焼成)により作製されるとしてもよい。
【0085】
また、上記第3実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第3実施形態の静電チャック100は、チャック電極40への給電のための給電端子として、中心近傍に位置する1つの第1の給電端子44と周縁部に位置する1つの第2の給電端子45を備えているが、静電チャック100がこれらのうちの一方を備えていないとしてもよいし、静電チャック100がこれら以外のチャック電極40への給電用の給電端子を備えていてもよい。また、上記第3実施形態における第1の給電端子44や第2の給電端子45の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第3実施形態では、第2の給電端子45が、3つの部分(上側部分45a、中間部分45b、下側部分45c)から構成されているが、第2の給電端子45は、上側セラミックス部分101における吸着面S1とは反対側の表面(下面S8)より吸着面S1に近い側に位置する第1の端子部分と、該第1の端子部分より吸着面S1から遠い側に位置し、該第1の端子部分に着脱可能に取り付けられた第2の端子部分とを有する限りにおいて、2つの部分から構成されていてもよいし、4つ以上の部分から構成されていてもよい。また、例えば、上記第3実施形態において、第1の給電端子44は、3つの部分(上側部分44a、中間部分44b、下側部分44c)から構成されているが、第1の給電端子44は、2つ以下の部分から構成されていてもよいし、4つ以上の部分から構成されていてもよい。また、上記第3実施形態では、第2の給電端子45の上側部分45aと中間部分45bとの接合形態が、螺号であるとしているが、着脱可能な接合形態であれば他の接合形態(例えば、嵌合)であってもよい。
【0086】
また、本発明は、セラミックス部材10とベース部材20とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、セラミックス部材と、ベース部材と、セラミックス部材とベース部材とを接合する接合部と、セラミックス部材の内部に配置されたヒータ電極およびチャック電極とを備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10:セラミックス部材 11:上側セラミックス構造体 12:下側セラミックス構造体 13:凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 30:接合部 32:貫通孔 40:チャック電極 42:ビア 43:給電電極 44:第1の給電端子 44a:上側部分 44b:中間部分 44c:下側部分 45:第2の給電端子 45a:上側部分 45b:中間部分 45c:下側部分 50:ヒータ電極 51:ヒータライン部 52:ヒータパッド部 60:ドライバ電極 71:ヒータ側ビア 72:給電側ビア 73:給電電極 74:給電端子 90:Oリング 100:静電チャック 101,101a:上側セラミックス部分 102,102a:下側セラミックス部分 103:中間部分 104:中間接合部 105:中間セラミックス部分 108:本体部 109:鍔部 110:端子用孔 600:ドライバ電極対 BD:ショットブラスト装置 BM:ブラスト材 MA:マスク S1:吸着面 S2:下面 S3:上面 S4:上面 S5:上面 S7:下面 S8:下面 VL:仮想分割線 W:ウェハ Z:セグメント