(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】流路形成基板の製造方法、及び液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20240318BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B41J2/16 511
B41J2/16 503
B41J2/16 101
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2019170242
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 創太
(72)【発明者】
【氏名】利重 光則
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-322276(JP,A)
【文献】特開2013-121913(JP,A)
【文献】特開2006-36865(JP,A)
【文献】特開平11-993(JP,A)
【文献】特開2017-80894(JP,A)
【文献】特開2009-154502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の平面と第2基板の平面とを互いに接合させることにより、複数の流路が形成された接合基板を形成する接合工程と、
前記接合基板を、前記流路を有する複数のチップ形態の流路形成基板に分割する分割工程と、を備えた流路形成基板の製造方法であって、
前記分割工程は、前記第1基板と前記第2基板のそれぞれを前記接合基板の平面方向における異なる位置で切断する切断工程を含み、
前記接合工程は、前記第1基板と前記第2基板とが接合する接合領域と、前記第1基板と前記第2基板とが接合しない非接合領域とを形成
し、
前記切断工程は、同一の前記非接合領域の範囲内において前記第1基板の切断と前記第2基板の切断を行うことを特徴とする流路形成基板の製造方法。
【請求項2】
前記切断工程は、前記第1基板と前記第2基板とを前記平面方向における異なる位置で切断することにより前記流路形成基板の少なくとも一端部を形成する、請求項1に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項3】
第1基板の平面と第2基板の平面とを互いに接合させることにより、複数の流路が形成された接合基板を形成する接合工程と、
前記接合基板を、前記流路を有する複数のチップ形態の流路形成基板に分割する分割工程と、を備えた流路形成基板の製造方法であって、
前記分割工程は、前記第1基板と前記第2基板のそれぞれを前記接合基板の平面方向における異なる位置で切断する切断工程を含み、
前記接合工程は、前記第1基板と前記第2基板とが接合する接合領域と、前記第1基板と前記第2基板とが接合しない非接合領域とを形成し、
前記切断工程は、同一の前記非接合領域の範囲内における異なる2つの切断位置において前記第2基板を切断し、かつ前記2つの切断位置の間に定めた1つの切断位置において前記第1基板を切断することにより、前記流路形成基板の少なくとも一端部を形成する
ことを特徴とする流路形成基板の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程は、前記第1基板と前記第2基板とが対向する領域の全体を接合させ、
前記分割工程は、前記切断工程による切断位置の間を拡張させることにより複数の流路形成基板に分離させる分離工程を含む、請求項1または2に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項5】
前記分割工程によって分割された前記流路形成基板の端部には、前記平面方向と平行する方向に沿って外方に突出する突出部が形成される、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項6】
前記流路形成基板は、前記第1基板を分割した第1チップ基板と前記第2基板を分割した第2チップ基板とを含み、
前記突出部は、前記第1チップ基板のうち、前記第2チップ基板の端部より外方に突出する部分によって形成される、請求項
5に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項7】
前記流路形成基板は、前記第1基板を分割した第1チップ基板と前記第2基板を分割した第2チップ基板とを含み、
前記突出部は、前記第2チップ基板のうち、前記第1チップ基板の端部より外方に突出する部分によって形成される、請求項
5に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項8】
前記突出部が突出する幅は、200μm以上である、請求項
6または
7に記載の流路形成基板の製造方法。
【請求項9】
第1基板の平面と第2基板の平面とを互いに接合させることにより、複数の流路が形成された接合基板を形成する接合工程と、
前記流路から供給された液体を吐出するための吐出口が形成された吐出口形成部材を前記第1基板に形成する工程と、
前記接合基板における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれを前記接合基板の平面方向における異なる位置で切断し、前記流路を有する複数のチップ形態の流路形成基板に分割する分割工程と、
前記分割工程によって前記流路形成基板の端部に形成された突出部の一面にTABテープの一端部を保持させる工程と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる流路を形成した流路形成基板の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドには、液体を流動させるための流路が形成された流路形成基板が設けられている。特許文献1には、この種の液体吐出ヘッドの製造方法が開示されている。この製造方法では、2枚のウエハ形態の基板のそれぞれに、半導体製造工程を応用して溝状のパターンを形成した後、2枚の基板を接合して流路を完成させるという工程をとる。さらに、ウエハ形態で接合された基板を分割し、チップ形態の流路形成基板を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、流路形成基板には流路に相当する空間が存在するため、同じ基板厚さの一般的なデバイスに対して基板の体積が少なく、基板強度が低くなる傾向がある。しかしながら、特許文献1に開示の製造方法では、TABテープなどの接続部分として、チップ端部に沿った電極取り出し口の上部に、大きな堀込みをエッチングによって追加加工している。このため、基板の強度が低下して精度の低下や破壊の発生が生じ易くなり、これに伴って歩留りの低下も発生する。
【0005】
そこで、本発明は、安価で信頼性の高い流路形成基板を製造することが可能な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1基板の平面と第2基板の平面とを互いに接合させることにより、複数の流路が形成された接合基板を形成する接合工程と、前記接合基板を、前記流路を有する複数のチップ形態の流路形成基板に分割する分割工程と、を備えた流路形成基板の製造方法であって、前記分割工程は、前記第1基板と前記第2基板のそれぞれを前記接合基板の平面方向における異なる位置で切断する切断工程を含み、前記接合工程は、前記第1基板と前記第2基板とが接合する接合領域と、前記第1基板と前記第2基板とが接合しない非接合領域とを形成し、前記切断工程は、同一の前記非接合領域の範囲内において前記第1基板の切断と前記第2基板の切断を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板強度の低下を抑制し、安価で信頼性の高い流路形成基板を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の液体吐出ヘッドを示す平面図及び断面図である。
【
図2】
図1に示す液体吐出ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態の液体吐出ヘッドを示す平面図及び断面図である。
【
図4】
図2に示す液体吐出ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【
図5】第3実施形態の液体吐出ヘッドを示す平面図及び断面図である。
【
図6】
図3に示す液体吐出ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【
図7】第4実施形態の液体吐出ヘッドを示す平面図及び断面図である。
【
図8】
図4に示す液体吐出ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る流路形成基板の製造方法、及びこれを用いた液体吐出ヘッドの製造方法の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態では、一般的な半導体デバイスの製造工程と同様に、円板状のウエハ形態での工程を行い、その後、複数の複数のチップ形態に分割する工程を行う。ウエハ形態では次のような工程が行われる。まず、シリコン基板などの半導体基板からなる円板状の2枚のウエハ(第1基板、第2基板)のそれぞれに対して、流路等を含む構造部分を格子状に複数形成する工程を行う。次に、第1基板の平面と第2基板の平面とを互いに接合する接合工程を行う。その後、互いに接合された第1基板と第2基板(以下、この接合された基板を接合基板と称す)に形成された複数の構造部分を分割する工程を行う。以上によって、
図1に示すチップ形態の流路形成基板20が形成される。
【0011】
ここで、
図1及び
図2を参照しつつ、本実施形態によって製造される流路形成基板20を備えた液体吐出ヘッド用基板100及び液体吐出ヘッドH1の構成を説明する。なお、
図1(a)は平面図、
図1(b)は
図1(a)のIb-Ib線断面図である。また、
図2は
図1に示した液体吐出ヘッドH1の製造方法を示す図である。また、本明細書及び以下に参照する各図面において、X方向を第1方向、第1方向と交差するY方向を第2方向と称す。本実施形態では、第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)とが互いに直交する例を示している。また、後述の各基板の表面及び裏面はX方向及びY方向と平行する平面に沿って配置されているものとする。
【0012】
図1において、液体吐出ヘッド用基板(以下、単にヘッド用基板という)100は、流路形成基板20と、流路形成基板20に設けたオリフィスプレート(吐出口形成部材)30とを含み構成されている。オリフィスプレート30には、液体を吐出するための吐出口(オリフィス)31が第1方向(X方向)に沿って複数配列されている。流路形成基板20とオリフィスプレート30との間には、吐出口21に連通する圧力室32が形成されている。
【0013】
流路形成基板20は、第1チップ基板1と第2チップ基板10とにより構成されている。第1チップ基板1は、前述の分割工程によって第1基板1Aを分割した部分を指し、第2チップ基板10は、分割工程によって第2基板10Aを分割した部分を指す。第1チップ基板1の一方の面(吐出口31と対向する面)には、第2チップ基板10が接合領域13に塗布された接着剤によって接合されている。この接合は、前述のウエハ形態において行われる。第1チップ基板1の一方の面には、複数のエネルギー発生素子(ヒータ)3が、複数の吐出口31と対向する位置にそれぞれ形成されている。また、第1チップ基板1には、フォトリソグラフィを用いた多層配線技術によって、ヒータ3を駆動するための半導体素子からなる不図示の駆動回路と不図示の配線層とが形成されている。なお、このヒータ及び駆動回路の形成は、ウエハ形態の段階で行われる。さらに、第1チップ基板1には、圧力室32に連通する個別流路2が形成されている。また、第2チップ基板10には個別流路2に連通する共通流路11が形成されている。第1チップ基板1の一端部(
図1における右端部)には、第2チップ基板10の一端部から、外方(
図1において右方)に突出する突出部4が形成されている。さらに、第2チップ基板10の他端部(
図1における左端部)には、第2チップ基板10の左端部から外方(
図1において左方)に突出する突出部12が形成されている。以上により、本実施形態における液体吐出ヘッド用基板100が構成されている。
【0014】
ヘッド用基板100には、第1チップ基板1に設けられた駆動回路への信号の入力及びヒータ3への電力の供給などを行うTABテープ40の一端部が保持されている。本実施形態では、第1チップ基板1に形成された突出部4の他方の面(オリフィスプレート30が接合されている面とは反対側の面(
図1において下面))に、TABテープ40の一端部が接着保持されている。さらに、TABテープ40は電気実装ワイヤー41によって第1チップ基板1に電気的に接続されている。これにより、第1チップ基板1に形成されたTABテープ40及び電気実装ワイヤー41を介して外部から第1チップ基板1への電気信号の入力及び電力の供給が可能になる。以上のように、ヘッド用基板100に対してTABテープ40の接続などの電気実装工程を行うことにより液体吐出ヘッドH1が構成される。この液体吐出ヘッドH1は不図示の液体吐出装置本体に搭載される。
【0015】
液体吐出装置本体に液体吐出ヘッドH1が搭載されると、液体吐出ヘッドH1の共通流路5は、液体吐出装置本体に設けられた不図示の液体貯留部に連通する。これにより、液体貯留部に貯留された液体が共通流路11に供給される。共通流路11に供給された液体は、個別流路2を経て圧力室32に流入し、圧力室32に充填される。ここで、液体吐出装置本体からの信号を受けた駆動回路がヒータ3を駆動すると、ヒータ3から発せられた熱エネルギーによって、吐出口31から液体が吐出される。
【0016】
なお、
図1には、オリフィスプレート30が流路形成基板20より上方に位置するような状態でヘッド用基板100が示されている。しかし多くの場合、液体吐出ヘッドH1は、オリフィスプレート30を下方へ向けた状態で、液体吐出装置本体に取り付けられる。従って、吐出口31は下方へ向けて液体(液滴)を吐出する。例えば、液体吐出装置がインクジェット記録装置である場合、インクジェット記録装置に搭載される液体吐出ヘッド(記録ヘッド)の吐出口31からは下方に向けて液体(インク)が吐出される。そして、吐出された液体が、吐出口31の下方に対向する位置に存在する記録媒体に着弾することにより、記録媒体に画像が記録される。
【0017】
次に、流路形成基板20を形成する際に行う各部の加工方法について説明する。ヘッド用基板10内に液体を流入させて、圧力室22に液体を供給するためには、前述の個別流路2及び共通流路11のように、第1チップ基板1と第2チップ基板10のそれぞれに、互いに連通する液体の流路を形成する必要がある。
【0018】
個別流路2及び共通流路11の製造方法は、各流路に要求される形状によって異なる。例えば、第2チップ基板10に形成される共通流路11は、複数の吐出口31からなる吐出口列に対応する大きな貫通溝を形成する必要がある。このような大きな貫通溝の形成に適する加工方法としては、ウエットエッチングによる異方性エッチング法や、レーザー法、及びサンドブラスト法等がある。また、第2チップ基板10に個別流路2を精度よく形成するためには、複数の吐出口のそれぞれに対応する小さな貫通孔を多数形成する必要がある。この個別流路2を精度よく形成するための加工方法としては、Deep-RIEによるドライエッチング法などがある。
【0019】
このように、比較的複雑な流路を形成する場合には、ウエハ形態の2枚の基板に分けて流路の一部を形成し、その後、両基板を接合することによって1つの流路を形成する方法を採ることが有効である。この場合、2枚の基板の接合方法としては、前述のように2枚の基板を接着剤によって接合させる方法や、2枚の基板に酸化膜を形成して接合させるプラズマ活性化接合を行う方法がある。さらに、2枚の基板を全面的に接合させる方法や、2枚の基板を部分的に接合させるパターニング方法等も用いられている。
【0020】
ヘッド用基板10に設けられるオリフィスプレート30は、ヘッド用基板10とは別部材で形成されることが多い。本実施形態では感光性のエポキシ樹脂を用いてオリフィスプレート30を形成している。エポキシ樹脂としては、ドライフィルム30Aを用いている。ドライフィルム30Aを第1基板1Aに貼り合わせた後、露光、現像、硬化ベークなどの処理を行って吐出口31及び圧力室22を形成することにより、オリフィスプレート30を形成する。
【0021】
ウエハ形態での工程の後、ウエハを複数のチップ形態に分割する分割工程には、ブレードダイシング法、レーザーダイシング法、あるいはエッチング法等が用いられる。この切分割工程については、後に詳細に説明する。
【0022】
ところで、液体吐出ヘッドに設けられる流路形成基板には、ウエハ形態からチップ形態へと分割された状態で、棚状に突出する部分(本実施形態における突出部4)を形成することが求められることがある。例えば、特許文献1に示す基板には、電極の取り出し口の上部に大きな堀込みをエッチングで追加加工することにより突出部を形成している。しかし、ウエハ形態の基板に対して大きな堀込などの追加加工を行うと、その後の工程、例えば、吐出口の形成工程などで基板強度が低下し、応力集中などによる基板破壊が発生することが知られている。
【0023】
そこで本実施形態では、ウエハ形態での工程において突出部を形成するための追加加工を行うのではなく、ウエハ形態の基板を、チップ形態の流路形成基板20へと分割する分割工程を改善することによって、突出部4、12を形成することを可能にしている。
【0024】
以下、本実施形態における流路形成基板及び液体吐出ヘッドの製造方法を、
図2を参照しつつより具体的に説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、表面側(図中、上面側)にエネルギー発生素子3や、不図示の駆動回路及び配線層を形成した厚さ600μmのシリコンウエハからなる第1基板1Aを用意する。次に、
図2(b)に示すように、第1基板1Aの表面側からエッチングを行い、50×50μm、深さ250μmの穴2Aを形成する。本例では、エッチングガスとしてSF6(六フッ化硫黄)とC4F8(四フッ化メタン)を用い、Deep-RIE法によって、エッチングと成膜とを交互に行うことにより穴2Aを形成した。
【0026】
次に、
図2(c)に示すように、第1基板1Aを裏面側から研磨し、基板厚さ200μmまで薄化させる。これにより、穴2Aは研磨によって第1基板1Aを貫通する貫通孔2となる。この貫通孔2は、
図1に示す流路形成基板20の個別流路2となる。
【0027】
次に、厚さ400μmのシリコンウエハからなる第2基板10Aを用意する(
図2(d))。この第2基板10Aに対し、
図2(e)に示すように、表面側(
図2(d)の上面側)からエッチングを行い、幅200μmの貫通溝11を形成する。この貫通溝11が
図1に示す流路形成基板20の共通流路11となる。エッチングには、Deep-RIE法を用いた。エッチングガスとしてはSF6とC4F8を用いた。
【0028】
次に、第1基板1Aと第2基板10Aとを接合させるための接合工程を行う。この接合工程では、まず、
図2(f)に示すように、第2基板10Aの表面に接合領域13を形成する。接合領域13は、インクジェット方式によって第2塗基板10Aの表面に接着剤を塗布することにより形成する。本実施形態では、第2基板10Aの表面に接合領域13と非接合領域14とを形成した。非接合領域14はスクライブラインに沿って600μmの幅で形成した。この後、
図2(g)に示すように、第1基板1Aと第2基板10Aとを接合する。両基板の接合は、プレス方式によって両基板をプレスしつつ、接着剤が硬化する温度までキュアすることによって行う。
【0029】
次に、
図2(h)に示すように、第1基板1Aの表面(
図2における上面)に、感光性のエポキシ樹脂を含んだドライフィルム30Aを貼り付ける。その後、
図2(i)に示すように、ドライフィルム30Aを部分的に分けて露光し、現像する。これによって、液体が流れる流路及び吐出口31を形成し、オリフィスプレート30が形成される。
【0030】
次に、
図2(j)に示すように、第1基板1Aと第2基板10Aとを接合したウエハ形態の合成基板20Aを、チップ形態の流路形成基板20に分割する分割工程を行う。本実施形態では、レーザーダイシングによって第1基板1Aと第2基板10Aとを切断した。
【0031】
第1基板1Aの切断は、第1基板1Aの表面(
図2における上面)から第2基板10Aとの接合面に至る深さ(この場合、200μm)までレーザーダイシングでハーフカットすることによって行う。
図2(j)に示す線Laが、この切断工程によって形成される切込みを示している。
【0032】
また、第2基板10Aの切断は、第1基板1Aの表面(図中、下方に位置する面)から第1基板1Aとの接合面に至る深さ(400μm)までレーザーダイシングでハーフカットすることによって行う。
図2(j)に示す線Lbが、この切断工程によって形成される切込みを示している。
【0033】
このレーザーダイシングによる切断は、第1基板1Aと第2基板10Aとが接合されていない非接合領域14内で行う。本実施形態では非接合領域の幅は600μmに設定されており、この600μmの範囲内で第1基板1Aの切断及び第2基板10Aの切断を行った。このようにして第1基板1Aの切断と第2基板10Aの切断を、非接合領域14内の異なる位置で行うことにより、ウエハ形態の基板から複数の独立した流路形成基板20に分割することができる。
【0034】
また、分割工程では、第1基板1Aの切断位置と第2基板10Aの切断位置は、両基板の平面方向と平行する第2方向(Y方向)において異なる位置に設定している。すなわち、同一の非接合領域14において、第2基板10Aの切断位置は非接合領域14の中心より右側に位置し、第2基板10Aの切断位置は非接合領域14の中心より左側に位置している。
【0035】
このように第1基板1Aの切断位置と、第2基板10Aの切断位置とを異ならせる。これにより、第1チップ基板1の一方の側端部(図中、右端部)には、第2チップ基板10の一方の側端部(右端部)から、第1基板1Aの平面方向と平行する第2方向(Y方向)に沿って外方(
図2における右側方)に突出する突出部4が形成される。本実施形態では、突出部4の幅(第2チップ基板10の右端部から第1チップ基板1の右端部に至る距離)を500μm確保した。
【0036】
この後、
図2(k)に示すように、切り分けられた複数の流路形成基板20の間の間隔を拡張させて各流路形成基板20を分離させるエキスパンド(分離工程)を実施する。以上により、
図1に示す流路形成基板20が製造される。
【0037】
次に、製造した流路形成基板20を用いた液体吐出ヘッドH1の製造方法を説明する。
【0038】
図2(l)は上述の分割工程によって製造したチップ形態の流路形成基板20を示す図である。この流路形成基板20の側端部に突出する500μmの幅を有する棚状の突出部4の裏面(ヒータ3が形成されている面とは反対側の面)にTABテープ(Tape Automated Bonding)テープ40の一端部を接着する(
図2(m)参照)。次に、第1チップ基板1の表面に形成されている電気接続端子とTABテープ40の電気接続端子とを電気実装ワイヤー41で接続する(
図2(n))。これにより、
図1に示す液体吐出ヘッドH1が構成される。
【0039】
以上のように、本実施形態では、ウエハ形態の合成基板20Aの分割工程を改善することによって、ウエハ形態の合成基板20Aに対しエッチング等の追加加工を施すことなく、突出部4、12を形成することが可能になる。このため、接合基板20Aの強度を維持しつつ、突出部4、12を有する流路形成基板20を形成することが可能となり、流路形成基板20の精度の低下を抑制することができ、信頼性の高い流路形成基板20を得ることが可能になる。その結果、流路形成基板20の歩留まりの低下も抑制することが可能になる。
【0040】
また、流路形成基板20の突出部4にTABテープ40を保持させることが可能になるため、TABテープ40を接着保持させるための専用の部品が不要となり、液体吐出ヘッドH1を安価に構成することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を
図3及び
図4を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態における流路形成基板20及び液体吐出ヘッドH2の構成を示す図であり、
図3(a)は液体吐出ヘッドの平面図、
図3(b)は
図3(a)のIIIb-IIIb線断面図である。また、
図4は本実施形態における流路形成基板20及び液体吐出ヘッドH2の製造方法を示す図である。なお、
図3及び
図4において、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付す。
【0042】
本実施形態における流路形成基板20の基本的な構成及び製造方法は、第1実施形態と同様であるため、ここでは第1実施形態と相違する部分を中心に説明を行う。本実施形態においても、
図2(a)~
図2(e)と同様の工程を実施する。その後、
図4(f)、
図4(e)において第1基板1Aと第2基板10Aとを接合させる接合工程を行う。本実施形態では、第1実施形態のように、第1基板1Aと第2基板10Aとを接着剤を用いて接合させるのではなく、酸化膜を用いたプラズマ活性化接合を行う。
【0043】
図4(f)に示す工程では、第2基板10Aの一面(第1基板1Aとの対向面(
図4において上面))に、酸化膜を設けた接合領域13と、酸化膜を設けない非接合領域14とを形成する。非接合領域14はスクライブラインに沿って600μmの幅に形成する。
【0044】
次に、
図2(g)に示すように、第1基板1Aと第2基板10Aとの接合を行う。本実施形態では、第1基板1Aと第2基板10Aとの接合には、酸化膜を用いたプラズマ活性化接合を用いた。プラズマ活性化処理の後、第1基板1Aと第2基板10Aを重ね、両基板をプレスしつつキュアを行う。これにより、第1基板1Aと第2基板10Aとが接合される。
【0045】
その後、
図4(h)~
図4(k)の工程を行う。この加工は、第1実施形態で述べた
図2(h)~
図2(k)の工程と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
以上が流路形成基板20の製造方法である。次に液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図4(l)は、
図4(j)及び
図4(k)の分割工程によって製造されたチップ形態の流路形成基板20を示す図である。この流路形成基板20に対し、本実施形態では、2つのTABテープ(第1TABテープ40、第2TABテープ42)を接着保持させる。
【0047】
まず、第1チップ基板1の一端部に形成されている幅500μmの突出部(第1突出部)4の裏面に第1TABテープ40の一端部を接着保持させる。次に、第1チップ基板1の他端部(図中、左端部)より側方へと突出する第2チップ基板10の突出部(第2突出部)12の表面(図中、上面)に、第2TABテープ42を接着保持させる(
図4(m)参照)。この第2突出部12は、第1突出部4と同様に500μmの幅を有しているため、第2TABテープ42も第1TABテープ40と同様に接着保持させることができる。
【0048】
その後、第1チップ基板1の電気接続端子と第1TABテープ40の電気接続端子とを電気実装ワイヤー41で接続する。さらに、第1チップ基板1の他方の電気接続端子とTABテープ42の電気接続端子とを電気実装ワイヤー43で接続する。
【0049】
以上により、2つのTABテープ40、42を接続した液体吐出装置が構成される。2本のTABテープ40、42はいずれも、TABテープ専用の保持部品を用いることなく、流路形成基板20の両端部に形成されている突出部4、12に接着保持されている。このため、2本のTABテープを接続する場合にも、液体吐出ヘッドを少ない部品点数で安価に構成することができる。
【0050】
また、ウエハ形態の基板に対して追加加工を施すことなく、流路形成基板20に突出部4、12を形成することが可能になるため、流路形成基板の精度の低下や歩留りの低下を抑制することが可能になる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を
図5及び
図6を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態における流路形成基板20及び液体吐出ヘッドH3の構成を示す図であり、
図5(a)は液体吐出ヘッドH3の平面図、
図5(b)は
図5(a)のVb-Vb線断面図である。また、
図6は本実施形態における流路形成基板20及び液体吐出ヘッドH3の製造方法を示す図である。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付す。
【0052】
本実施形態では、
図2(a)~
図2(i)と略同様の工程を行った後、
図6(j)~
図6(n)に示す工程を行う。
図6(j)及び
図6(k)は、本実施形態における切断工程を示しており、この分割工程が第1実施形態と相違する。
【0053】
すなわち、前述の第1実施形態では、
図2(j)に示すように、第1基板1Aの切断と第2基板10Aの切断を、600μmの幅を有する非接合領域14の範囲内に定めた2つの異なる位置で行う。これに対し、本実施形態では、同一の非接合領域14内の異なる2つの位置(図中、切断位置A1、A2)で第2基板10Aを切断し、さらに、切断位置A1と切断位置A2の中央に設定した切断位置Bで第1基板1Aの切断を行う。つまり、同一の非接合領域14の範囲内に定めた異なる3つの切断位置で切断を行う。また、流路形成基板20のうち、切断位置Bで切断された端部とは反対側の端部の形成は、接合基板20Aを構成する第1基板1Aと第2基板10Aをフルカットすることにより行う。
【0054】
上記の切断工程によってチップ形態に切断された流路形成基板20は、隣接する流路形成基板20の突出部4が互いに向き合うような配置となる。このような配置で切断を行う場合にも、第1実施形態と同様の幅を有する突出部4を形成するためには、非接合領域の形成位置を第1実施形態とは異ならせることが必要になる。つまり、第1実施形態では、1チップ毎(1つの流路形成基板毎)に600μmの幅を有する非接合領域を設定したが、本実施形態では、2チップ毎(2つの流路形成基板毎)に1200μmの幅を有する非接合領域を設定することが必要になる。
【0055】
以下、本実施形態における分割工程をより具体的に説明する。
図6(j)は、ウエハ形態の接合基板20Aから複数のチップ形態の流路形成基板20に切り分ける切断工程を示す図である。ここでは、前述のように2チップ毎に設定された幅1200μmの非接合領域14の範囲内で接合基板の切断を行う。第1実施形態とは異なり、本実施形態における切断工程では、ブレードダイシングを用いる。
【0056】
ブレードダイシングを実施するに先立ち、まず、接合基板の表面(図中、上面)にダイシングテープを貼る。その後、接合基板の裏面(図中、下面)から、ブレードダイシングによって、厚さ400μmの第2基板10Aのみを切断するハーフカットを行う。このブレードダイシングは、非接合領域14の範囲内に設定した2つの切断位置A1、A2において行う。以下、切断位置A1、A2において行うブレードダイシングを第1のブレードダイシングと称す。
図6(j)に示す線L1、L2が、第1のブレードダイシングによって形成される切込みを示している。
【0057】
次に、ダイシングテープを接合基板の裏面(図中、下面)に貼り換え、接合基板の表面から第2のブレードダイシングを行う。第2のブレードダイシングでは、前述の切断位置A1と切断位置A2の中心位置(矢印Bで示す切断位置)において、厚さ200μmの第1基板1Aのみを切断するハーフカットを行う。
図6(j)に示す線L3が、第2のブレードダイシングによって形成される切込みを示している。
【0058】
この後、接合基板の表面から、矢印C1、C2で示す切断位置において第3のブレードダイシングを行う。第3のブレードダイシングでは、形成すべきチップ形態の流路形成基板20のうち、切断位置Bで切断された端部とは反対側の端部の形成を行う。この第3のブレードダイシングは、接合基板の第1基板1Aと第2基板10Aをフルカットすることにより行う。
図6(j)の線L4、L5が、第3のブレードダイシングによって形成される切込みを示している。
【0059】
上記の切断工程の後、
図6(k)に示すようにエキスパンドを行い、個々の流路形成基板(チップ)20に分離し、ダイシングテープからの取り出を行う。取り出した流路形成基板20は、一端部にのみ突出部4が形成される。本実施形態では、突出部4に500μmの幅を確保した。なお、切断位置A1とA2との間に形成される部分15は、ダイシングテープに残され、流路形成基板20からは除去される。
【0060】
以上が本実施形態における流路形成基板20の製造方法である。製造された流路形成基板に対し、
図6(m)、(n)に示す工程によってTABテープ40の接続と、電気実装ワイヤーの接続を行うことにより、液体吐出ヘッドH3が構成される。なお、
図6(m)、(n)に示す工程は、第1実施形態において述べた工程(m)、(n)と同一であるため、重複説明は省略する。
【0061】
以上のように、本実施形態においても、ウエハ形態の接合基板20Aに対して追加加工を施すことなく、突出部4を形成することができる。このため、流路形成基板20の精度の低下や歩留りの低下を抑制することが可能になる。また、流路形成基板20の突出部4にTABテープ40を接着させることが可能になるため、液体吐出ヘッドH3の部品点数を削減でき、安価に構成することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、流路形成基板20のうち、突出部4が形成される端部とは反対側の端部をフルカットし、第1チップ基板1と第2チップ基板10の端部位置を揃えるようにしたため、流路形成基板20の端面形状を単純化することが可能になる。また、フルカットを行うことにより、切断工程の単純化及び切断時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0063】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を
図7及び
図8を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態における流路形成基板20及び液体吐出ヘッドH4の構成を示す図であり、
図7(a)は液体吐出ヘッドH4の平面図、
図7(b)は
図7(a)のVIIb-VIIb線断面図である。また、
図8は本実施形態における流路形成基板20及び液体吐出ヘッドH4の製造方法を示す図である。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付す。
【0064】
本実施形態では、第1基板1Aと第2基板10Aとの接合工程において、非接合領域を形成しない。すなわち、第1基板1Aと第2基板10Aとが対向する面の全体を接合領域として両基板1A、10Aを接合し、その後、分割工程によって突出部4を有するチップ形態の流路形成基板20を形成する。この点が、第1記実施形態と異なる。なお、本実施形態においても、
図1(a)~
図1(e)に示す工程と同様の工程を行う。さらに、
図8(f)~図(h)に示す工程は、第1基板1Aと第2基板10Aとの間に非接合領域を形成しない点を除き、それ以外は、
図1(a)~
図1(h)と同一である。よって、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明を行う。
【0065】
以下、
図8(j)~
図8(n)の工程について説明する。
図8(j)、(k)は、ウエハ形態の接合基板20Aをチップ形態の流路形成基板20に分割する分割工程を示す図である。
図8(j)の切断工程では、第1基板1Aの切断位置Aと、第2基板10Aの切断位置Bを接合基板20Aの面方向において異なる位置に設定している。
【0066】
具体的には、接合基板の表面からレーザーダイシングによって200μmの深さのハーフカットを切断位置Aで行い、第1基板1Aのみを切断する。
図8(j)に示す線L11が、この切断工程によって形成される切込みを示している。
【0067】
次に、接合基板20の裏面からレーザーダイシングによって400μmの深さのハーフカットを切断位置Bで行い、第2基板10Aのみを切断する。
図8(j)に示す線L12が、この切断工程によって形成される切込みを示している。
【0068】
図8(j)に示す切断工程では、第1基板1Aと第2基板10Aとの接合領域に対してレーザーダイシングが行われるのに対し、
図2(j)に示す第1実施形態における切断工程では、非接合領域14に対してレーザーダイシングが行われる。この点で本実施形態における切断工程と第1実施形態における切断工程とは相違する。
【0069】
さらに、本実施形態では、
図8(j)に示すように、第1基板1Aの切断位置Aと基板2の切断位置Bとの間隔を、第1実施形態における間隔よりも狭めている。具体的には、第1実施形態では、切断位置Aと切断位置Bとの間隔を500μmとしているのに対し、本実施形態では切断位置Aと切断位置Bとの間隔を200μmまで狭めた。これは、後述のエキスパンドによるチップの分離を容易にするとともに、分離に際して生じる基板破壊の影響を軽減するためである。
【0070】
次に、
図8(k)に示すように、エキスパンドを実施し、棚状の突出部4を有するチップ形態の流路形成基板20に分離させた。このエキスパンドを行う前の段階では、切断工程は行われているものの、接合基板20Aは、チップ形態の流路形成基板へと切り離された状態にはなっていない。例えば、隣接する2つの流路形成基板を考えた場合、一方の流路形成基板20の突出部となる部分4Aは、これに隣接する他方の流路形成基板の突出部となる部分12Aに接合された状態にある。これは前述のように第1基板1Aと第2基板10Aの全面を接合領域としたことによる。
【0071】
本実施形態では、エキスパンドによる引っ張り力によって、流路形成基板と流路形成基板との間で意図的に基板破壊を発生させてチップ分離を行う。これにより、
図8(k)に示すように、突出部4、12を有する流路形成基板20が構成される。なお、基板破壊により分離された突出部の接合領域側の面(図中、下面)は完全な平坦面ではなくなる可能性があるが、突出部4、12には、TABテープ40を保持させるために必要とされる所定の吐出幅以上(200μm以上)の吐出幅を確保することができた。
【0072】
以上が本実施形態における流路形成基板の製造方法である。次にインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。
【0073】
図2(l)は上述の分割工程によって製造されたチップ形態の流路形成基板20を示す図である。この流路形成基板20の側端部には、外方に突出する突出幅200μmの棚状の突出部4が形成されている。この突出部4の裏面(ヒータ3が形成されている面とは反対側の面)にTABテープ40の一端部を接着した(
図8(m)参照)。TABテープ40を接着させる突出部4の面(図中、下面)は、チップ分離された際に生じた基板破壊により、完全な平坦面とはなっていない可能性がある。このため、接着工程では、
図8(m)に示すようにTABテープ40の端部の表面を突出部4の一面(図中、下面)に突き当てるようにし、TAB接着剤50を接着界面に充填する要領でTABテープ40を接着保持させる。その後、第1チップ基板1の表面に形成されている電気接続端子とTABテープ40の電気接続端子とを電気実装ワイヤー41で接続する(
図8(n))。以上により、本実施形態における液体吐出ヘッドH4が得られる。
【0074】
以上のように、本実施形態においても、ウエハ形態の基板に対して追加加工を施すことなく、突出部4及び12を形成することができる。このため、ウエハ形態の基板の加工工程において基板の強度を維持しつつ、突出部4を形成することが可能になり、流路形成基板20の精度の低下や歩留りの低下を抑制することが可能になる。また、流路形成基板20の突出部4にTABテープ40を接着させることが可能になるため、液体吐出ヘッドの部品点数を削減でき、安価に構成することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、第1基板1Aと第2基板10Aと接合工程において、第1基板1Aと第2基板10Aとが対向する面の全体を接合領域としている。このため、本実施形態によれば、接合領域と非接合領域とを形成する第1ないし第3実施形態に比し、工程を簡略化することが可能になる。
【0076】
ところで、以上説明した実施形態では、流路形成基板に形成した突出部4を、TABテープ40の保持部分として用いた例を示した。しかし、突出部4はTABテープの保持以外にも使用可能である。例えば、特許文献1に示されるように電極の取り出し口や、デバイスを保護するキャップの取り付け部分としても使用可能である。さらに、また、製造段階において突出部を使用することも可能である。例えば、流路形成基板のハンドリングにおいて、デバイスへの損傷を避けるために、突出部4を把持部として使用したり、流路形成基板を組み付ける際に突出部を突き当てて基板の厚み方向の基準として使用したりすることも可能である。
【0077】
(他の実施形態)
上記実施形態では、両方の側端部(図では左右の側端部)の形状が異なる流路形成基板を製造する例を示した。すなわち、第1、第2、第4第実施形態では、流路形成基板1の一方(右方)の側端部に突出部4を形成し、他方(左方)の側端部には突出部12を形成している。また、第3実施形態では、流路形成基板20の一方の側端部にのみ突出部4を形成し、他方の側端部には均一な端面を形成している。これに対し、流路形成基板の両方の側端部に同一形状(同一の突出量)の突出部を形成するように製造することも可能である。これは、次のような方法で実現可能である。例えば、
図2(j)において、左側のオリフィスプレート30より左側の部分では、第1基板1Aを切断位置Bで切断し、第2基板10Aを切断位置Aで切断する。また、右側のオリフィスプレート30より右側の部分では、第1基板1Aを切断位置Bで切断し、第2基板10Aを切断位置Aで切断する。さらに、左右のオリフィスプレート30の間の切断は、
図2(j)に示す通りに行う。これによれば、各流路形成基板20の左右の側端部には、第1基板1Aからなる同一形状の突出部が形成される。
【0078】
このような方法で接合基板の切断を行った場合、右側の流路形成基板の突出部より、左側の流路形成基板の突出部の方が長くなる。つまり、ウエハ形態の1つの接合基板から、突出部の突出量が異なる2種類の流路形成基板を形成することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、ウエハ形態の接合基板20を第1方向(X方向)に沿って切断する場合に、第1基板と第2基板との切断位置を異ならせる例を示した。しかし、第1方向と交差する第2方向(Y方向)に切断する場合にも、第1基板1Aと第2基板10Aの切断位置を異ならせるようにすることも可能である。これによれば、チップ形態の流路形成基板20の第2方向における切断部分にも上述のような突出部を形成することが可能になる。
【符号の説明】
【0080】
1A 第1基板
2 個別流路(流路)
10A 第2基板
11 共通流路(流路)
20 流路形成基板
20A 接合基板