(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】駆動装置、画像読取装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240318BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/00 567Q
(21)【出願番号】P 2019216148
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祥悟
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-164668(JP,A)
【文献】特開2019-105335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿ったモータ軸を有するモータと、
前記モータ軸に設けられて前記モータによって回転駆動される駆動プーリと、を備えた駆動部と、
被駆動プーリを備えていると共に、前記駆動部を支持する本体部と、
前記駆動プーリ及び被駆動プーリに巻回されたベルト部材と、
前記駆動部に対して、前記本体部に向かう前記水平方向の成分と、重力方向とは反対向きの成分と、を含む付勢力を付与する付勢部材と、を備え
る、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
水平方向に沿ったモータ軸を有するモータと、前記モータ軸に設けられて前記モータによって回転駆動される駆動プーリと、を備えた駆動部と、
被駆動プーリを備えていると共に、前記駆動部を支持する本体部と、
前記駆動プーリ及び被駆動プーリに巻回されたベルト部材と、
前記駆動部に対して、前記本体部に向かう前記水平方向の成分と、重力方向の成分と、を含む付勢力を付与する付勢部材と、を備える、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部と前記本体部とを締結する
複数の締結部材を備え、
前記駆動部は、前記モータが固定されるモータ支持部材を備え、
前記本体部は、前記モータ支持部材が前記
複数の締結部材を介して締結される取付部を備え、
前記モータ支持部材は、前記
複数の締結部材が嵌挿されると共に、重力方向に延設された
複数の長穴を有している、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記複数の締結部材は、対向配置される同一の前記モータ支持部材及び前記取付部の面同士を締結させている、
ことを特徴とする請求項
3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記複数の締結部材のうちの少なくとも1つは、対向配置された前記モータ支持部材と前記取付部との面のうち、他の
締結部材が締結させる対向面同士とは、前記モータの回転軸方向において異なる位置で対向した面同士を締結させている、
ことを特徴とする請求項
3に記載の駆動装置。
【請求項6】
モータと、前記モータによって回転駆動される駆動プーリと、を備えた駆動部と、
被駆動プーリを備えていると共に、前記駆動部を支持する本体部と、
前記駆動プーリ及び被駆動プーリに巻回されたベルト部材と、を備え、
前記駆動部は、前記モータの回転軸方向において前記駆動部が前記本体部に近づくように付勢する付勢部材の第1端部が係合する第1係合部を備え、
前記本体部は、前記付勢部材の第2端部が係合する第2係合部を備えている、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項記載の駆動装置と、
前記駆動装置によって駆動されるローラと、
前記ローラによって搬送されたシートに形成されている画像を読取る読取手段と、を備えた、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項
7記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた画像をシートに形成される画像形成部と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置や、画像形成装置の駆動機構には、離れた2軸間に回転やトルクを伝える巻き掛け伝動がしばしば必要とされる。一般にこのような機構は、モータの駆動プーリと、被駆動プーリと、これらの間に巻き掛けられるタイミングベルトと、を備えて構成されている。
【0003】
上記タイミングベルトを用いた駆動装置ないし駆動方法において、ベルトテンション(ベルトの張り具合)が小さすぎると、プーリとベルトとの間で噛み合わせが飛ぶことがある。また、ベルトテンションが大きすぎると軸の横倒れ方向に力がかかり駆動軸の負荷や振動が大きくなる。このため、タイミングベルトに適切なテンションを与えて駆動する必要があり、従来の駆動機構では、駆動部の重量によって適切なテンションを安定してタイミングベルトに与えることのできる駆動装置が設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
より具体的には、上記特許文献1記載の駆動装置は、
図15に示すように、DCブラシレスモータ700を、従動プーリ800から遠ざかるように双方に高低差を設けて配置している。また、
図16に示すように、上記DCブラシレスモータ700はドライバ基板700bと一体的に構成されている。そして、DCブラシレスモータ700を有する駆動部を遊嵌するための長孔700aが、ドライバ基板700bの四隅に設けられている。
【0005】
また、各長孔700aは、従動プーリ800の支軸800aと、駆動プーリ710の回転中心710aとを結ぶ直線Yに沿うように配置されている。各長孔700aに例えば、段付きネジが挿入されることにより、DCブラシレスモータ700は、装置本体側板上に移動可能に設置される。
【0006】
そして、DCブラシレスモータ側との間にタイミングベルト900が巻き掛けられると、駆動プーリ710とともにDCブラシレスモータ700は、長孔700aにガイドされて上記直線方向Yの下方へ自重により移動する。すると、DCブラシレスモータ700は、長孔700aの下端に達する前にタイミングベルト900で保持される。そして、モータ700および駆動プーリ710からなる駆動部の重量により、タイミングベルト900に所定のテンションを与えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載のような駆動装置の駆動部では、一般的に駆動プーリよりもモータ側に重心が位置する。このため、自重がベルト位置には掛からずプーリが傾き、適正なテンションがかからなくなる虞がある。また傾きを抑制するために段付きネジを用いると、駆動部との接触部に大きな負荷がかかるため、変形等の不具合が生じる虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、ベルト部材に適正にテンションを付与することができる駆動装置、画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、水平方向にモータ軸を有するモータと、前記モータ軸に設けられて前記モータによって回転駆動される駆動プーリと、を備えた駆動部と、被駆動プーリを備えていると共に、前記駆動部を支持する本体部と、前記駆動プーリ及び被駆動プーリに巻回されたベルト部材と、前記駆動部に対して、前記本体部に向かう前記水平方向の成分と、重力方向とは反対向きの成分と、を含む付勢力を付与する付勢部材と、を備える、ことを特徴とする駆動装置である。
本発明の一態様は、水平方向に沿ったモータ軸を有するモータと、前記モータ軸に設けられて前記モータによって回転駆動される駆動プーリと、を備えた駆動部と、被駆動プーリを備えていると共に、前記駆動部を支持する本体部と、前記駆動プーリ及び被駆動プーリに巻回されたベルト部材と、前記駆動部に対して、前記本体部に向かう前記水平方向の成分と、重力方向の成分と、を含む付勢力を付与する付勢部材と、を備える、ことを特徴とする駆動装置である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、モータと、前記モータによって回転駆動される駆動プーリと、を備えた駆動部と、被駆動プーリを備えていると共に、前記駆動部を支持する本体部と、前記駆動プーリ及び被駆動プーリに巻回されたベルト部材と、を備え、前記駆動部は、前記モータの回転軸方向において前記駆動部が前記本体部に近づくように付勢する付勢部材の第1端部が係合する第1係合部を備え、前記本体部は、前記付勢部材の第2端部が係合する第2係合部を備えている、ことを特徴とする駆動装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ベルト部材に適正にテンションを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置を示す模式図。
【
図7】付勢部材を取り付けていない駆動装置の斜視図。
【
図11】第2の実施の形態に係る駆動装置の模式図。
【
図14】第3の実施の形態に係る駆動装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、シートとは、普通紙の他にも、コート紙等の特殊紙、封筒やインデックス紙等の特殊形状からなる記録材、及びオーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルムや布などを含むものである。また、原稿もシートの一例であり、原稿は、白紙でも、片面又は両面に画像が形成されていてもよいものとする。更に、図面の上下左右方向を装置または各構成要素の上下左右方向として説明に用いることとする。
【0015】
<第1の実施の形態>
(画像形成装置の概略構成)
図1は第1の実施の形態に係る画像形成装置としての複写機600の断面概略図である。複写機600は、画像形成装置本体としてのプリンタ部500の上方に原稿の画像を読取る画像読取装置200が設けられて構成されている。画像読取装置200は、画像読取部300と、自動原稿給送装置(以下、単にADFという)400と、を備えている。
【0016】
プリンタ部500は、その内部に、シートを搬送するシート搬送部505と、シート搬送部505から搬送されたシートに対して画像の形成を行う電子写真方式の画像形成部502と、を備えている。また、画像形成部502にて転写された未定着トナー像を加熱及び加圧してシートに対して定着させる定着部503と、プリンタ部500を制御するプリンタ制御部504と、を備えている。
【0017】
画像読取部300は、原稿を載置するための原稿載置手段としての原稿載置台301と、この原稿載置台301の内側に設けられ、原稿載置台301に載置された原稿の画像を読取る画像読取手段302と、を備えている。また、画像読取部300を制御する制御手段としての画像読取装置制御部303を備えている。
【0018】
上記複写機600を使用して原稿のコピーを取る場合、まず、原稿載置台301上に原稿が載置され、ユーザーによってコピーボタン(不図示)が押圧される。そして、このコピーボタンが操作されると、上述した画像読取手段302が副走査方向X(本実施の形態では幅方向)に移動しながら、原稿の画像を読取る。画像読取手段302によって読み取られた画像情報は、画像読取装置制御部303を介してプリンタ制御部504へと通信され、この画像情報に基づいて画像形成部502においてトナー像が形成される。そして、このトナー像がシート搬送部505から搬送されて来たシートに対して転写され、シートに転写された未定着トナー像が定着部503において加熱及び加圧されることによって、シートに対して定着される。定着部503によって画像が定着されたシートは機外へと排出され、これにより原稿のコピーが完了する。
【0019】
また、複数枚の原稿のコピーが取られる場合には、ADF400によって原稿が一枚ずつ搬送され、この搬送されている原稿の画像が所定の読取位置に位置している画像読取手段302によって読み取られる。なお、原稿載置台301に載置された原稿の画像を画像読取手段302が副走査方向に移動しながら読取る方式を固定読みというのに対して、停止した画像読取手段302がADF400によって搬送されている原稿の画像を読取る方式を流し読みという。
【0020】
(ADFの概略構成)
ついで、ADF400の概略構成について
図2乃至4に基づいて説明をする。
図2に示すように、ADF400は、原稿を載置する原稿載置トレイ401を備えている。原稿載置トレイ401上の原稿は、ADF400を用いて流し読みが行われる場合、ピックアップローラ(給送ローラ)402により給送され、分離ローラ対403の分離ニップ部に送り込まれる。
【0021】
分離ローラ対403は、搬送ローラ403aと分離ローラ403bとによって形成されている。分離ローラ403bには、搬送ローラ403aによって搬送されるシートの搬送方向とは逆方向にシートを搬送する方向に分離ローラ403bを回転させる駆動力がトルクリミッタを介して入力されている。分離ローラ403bは、ピックアップローラ402から一枚ずつ原稿が送り込まれた場合には、搬送ローラに従動回転する。また、原稿が重送された場合には、トルクリミッタを介して駆動力が分離ローラ403bに伝達され、分離ローラ403bによって重送した原稿が押し戻される。これにより、一枚ずつ分離して原稿が搬送される。
【0022】
分離ローラ対403によって搬送されたローラは、第1引き抜きローラ対404及び第2引き抜きローラ対405によって流し読みガラス406に向かって原稿搬送路上を搬送される。そして、流し読みガラス406上を原稿が通過することにより、原稿の第1面の画像が画像読取手段302によって読み取られる。
【0023】
また、流し読みガラス406の下流側には、第2画像読取手段407が設けられており、原稿の両面の画像を読取る場合、第2画像読取手段407によって原稿の第2面の画像が読み取られ、原稿排出トレイに原稿が排出される。なお、本実施の形態のADF400のようにADF400単体で画像を読取る読取手段を有している場合、ADF400単体でも画像読取装置を構成している。
【0024】
(駆動装置)
ところで、上述したピックアップローラ402、搬送ローラ403a、分離ローラ403b、第1引き抜き駆動ローラ404b、第2引き抜き駆動ローラ405bは、
図3及び
図4に示すモータ1によって駆動されている。このモータ1は、ADF400奥側の側面に取り付けられており、ベルト伝動式の駆動装置100を構成している。以下、この駆動装置100の構成について、詳しく説明をする。
【0025】
図5に示すように、ベルト伝動式の駆動装置である駆動装置100は、モータ1を備えた駆動部110と、駆動部110を支持する本体部120と、ベルト部材としてのタイミングベルト4と、を備えている。また、駆動部110は、モータ1の他にもモータ支持部材2と、モータ1の回転軸としてのモータ軸1aに設けられた駆動プーリ11と、を備えており、モータ1がモータ支持部材2に対して固定され一体化されている。
【0026】
また、本体部120は、上記モータ支持部材2が取り付けられる取付部としての駆動部支持部材3と、被駆動プーリ6が固定されている駆動軸8と、を備えている。タイミングベルト4は、モータ軸1aに設けられた駆動プーリ11と、駆動軸8に設けられた被駆動プーリ6と、の間で巻回されている。このため、モータ1によって駆動プーリ11が回転駆動されると、タイミングベルト4を介して被駆動プーリ6に動力が伝達されて駆動軸8が回転する。
【0027】
ついで、駆動部110の本体部120に対する取り付け構成について説明をする。上述したように、駆動部110は、モータ支持部材2が駆動部支持部材3に対して複数箇所(本実施の形態では3箇所)にて連結されている。具体的には、
図5及び
図6に示すように、駆動部支持部材3には被締結穴32が複数、設けられている。また、モータ支持部材2には、上記被締結穴32と対応した位置に被締結穴22が設けられている。
【0028】
被締結穴22は、被締結穴32よりも大きな長穴となっている。駆動部110は、締結部材7がモータ支持部材2の被締結穴22とは遊嵌し、駆動部支持部材3の被締結穴32と嵌合もしくは螺合することによって本体部120に取り付けられている。また、締結部材7が嵌挿される被締結穴22は重力方向に延設された長穴である。このため、駆動部110は、上記締結部材7によって複数箇所においてモータ支持部材2と駆動部支持部材3とが完全に締結される前であれば、上記長穴の範囲内で、本体部120に対して重力方向に移動することができるようになっている。
【0029】
このため、駆動部110の重力方向位置は、駆動部110の自重と、連結部材としてのタイミングベルト4と、詳しくは後述する付勢部材5と、により自然に決まる。この際、タイミングベルト4には、駆動部110の自重が作用するため、この駆動部110の自重によりタイミングベルト4にベルトテンションが付与される。この状態で締結部材7が締め付けられることによって、モータ支持部材2と駆動部支持部材3とが締結され、タイミングベルト4に適切なベルトテンションが付与された状態で、駆動部110が本体部120に取り付けられる。なお、モータ支持部材2と駆動部支持部材3とが締結部材7によって締結された状態では、駆動部110は本体部120に対して重力方向に移動不能となる。また、タイミングベルト4が連結部材として作用するため、上記締結部材7による締結を行わないことも可能である。しかしながら、本実施の形態では、駆動装置100に対して外部から衝撃が加わる可能性を考慮して、締結部材7にて駆動部110と本体部120を締結している。
【0030】
ついで、駆動部110の重心の偏りによる傾ぎについて説明をする。
図7は付勢部材5及び締結部材7を取り付けていない状態の駆動装置100を示す斜視図である。駆動プーリ11よりもモータ1の方が重いため、駆動部110の重心は、モータ支持部材2と駆動部支持部材3の接触位置より駆動部側に偏っている。
【0031】
このため、
図7のように、付勢部材5が無い状態で駆動部110を本体部120に取り付けようとすると、駆動部110は自重による回転モーメントで図中A方向に回転し、駆動部支持部材3から離間しようとする。駆動部110が傾くと、モータ軸1aごと駆動プーリ11が傾くため、タイミングベルト4に正常なテンション(張力)が掛からなくなる。また、締結部材7によってモータ支持部材2と駆動部支持部材3とが締結されていた場合、上記傾ぎは小さくなるが、その分、モータ支持部材2と駆動部支持部材3との締結箇所(接触箇所)に大きな負荷が掛かってしまう。
【0032】
そこで、本実施の形態では、モータ支持部材2の上部に被付勢部21を設け、また、駆動部支持部材3の上部に被付勢部31を設けている。そして、これら被付勢部21,31を、弾性体(本実施の形態ではスプリング)である付勢部材5によって連結し、これにより、モータ支持部材2と駆動部支持部材3との接触状態を保持している。
【0033】
即ち、付勢部材5の一端部が上記被付勢部21に取り付けられ、他端部が上記被付勢部31に取り付けられており、この付勢部材5の付勢力によって、駆動部110がモータ軸方向において本体部120側に付勢されている。別の言い方をすれば、上記付勢部材5は、モータ1の回転軸方向において駆動部110が本体部120に近づくように付勢する付勢部材と言える。また、上記駆動部110の被付勢部21は、付勢部材5の第1端部が係合する第1係合部と言え、本体部120の被付勢部31は、付勢部材5の第2端部が係合する第2係合部と言うことができる。なお、付勢部材5の駆動部110及び本体部120への取付箇所である被付勢部21,31は、いずれもモータ1の重心位置G(
図8参照)よりも上方に位置している。
【0034】
ついで、駆動部110が本体部120から離間せず静止するための付勢部材5の条件について説明をする。
図8は駆動部110を詳細化した模式図(側面図)である。駆動部110が本体部120と接触し、静止状態となる条件であるため、駆動部110が本体部120から受ける抗力Nは0以上となる。
【0035】
【0036】
また、モータ1にかかる重力をF、駆動プーリ11がタイミングベルト4に引っ張られる力をFT、駆動部110が付勢部材5に引っ張られる力の大きさをfとする。更に、力の向きをθ、駆動部が本体部から受ける摩擦力をFmとして、水平方向の力のつり合いの式を求めると、以下の式(2)のようになる。
【0037】
【数2】
同様に鉛直方向のつり合いの式を求めると、以下の式(3)のようになる。
【0038】
【0039】
また、静止摩擦係数をμとすると、摩擦力Fmは以下の式(4)の関係を満たす。
【0040】
【0041】
更に、駆動部110と本体部120の接触位置からFTがかかる位置までの水平方向距離をLT、駆動部110と本体部120の接触位置から駆動部110の重心Gまでの水平方向距離をLFとする。また、駆動部110と本体部120の接触位置からfがかかる位置までのfの法線方向距離をLfとして、点P周りのモーメントのつり合いの式を求めると、以下の式(5)のようになる。
【0042】
【0043】
ここで式(1),(2)よりθは、以下の式(6)の条件を満たす。
【0044】
【0045】
更に、式(2),(3),(4)より、式(7)が求められる。
【0046】
【0047】
よって式(6),(7)からfの取りうる値は
図9のグラフの網掛け部となる(μ=0.3)。
【0048】
また、式(5)より、式(8)が求められる。
【0049】
【0050】
よってfが決まるとLfは一義的に決まる。以上から、これらf及びLfを選定し、任意の系で駆動部110が本体部120から離間せずに静止するための付勢部材5を決定することができる。
【0051】
ここで付勢部材5は本実施の形態では付勢部材としてスプリングが用いられており、
図9からfが最小となるスプリングを選ぶことができる。また一般的にスプリングの張力は部品の出来によって±10%の公差域を持っている。このことからfが最小となるスプリングを選ぶことがバラツキ最小のスプリングを選ぶこととなり、精度の高い装置を作ることができる。またfが最小となる場合、駆動部と本体部にスプリングをかける際により少ない負荷で作業することができ、組立性の改善につながる。
【0052】
図10はfが最小となるθとμの関係を図示したグラフである。式(7)より最小のfの値であるf
minは以下の式(9)のようになる。
【0053】
【0054】
よってfが最小となるθとμの関係が一対一対応で決まる。即ちμが決まると、自動的にfを最小にするθが求まる。
【0055】
上述したように、本実施の形態においては、本体部120によって駆動部110を重力方向に移動可能に支持し、駆動部110の自重を用いてタイミングベルト4にテンションを設定している。そして、タイミングベルト4にテンションを設定する際には、これら駆動部110と本体部120との間に付勢部材5を介在させ、この付勢部材5によって、本体部120に向かうモータ1の回転軸1a方向成分を有する付勢力を、駆動部110に付与している。このため、上記付勢部材5の付勢力により、重心Gの偏りによる駆動部110の傾きを抑制することができる。また、これにより、駆動プーリ11が傾ぐことを抑制することができ、駆動部110の自重により適正なベルトテンションをタイミングベルト4に付与することができる。
【0056】
更に、付勢部材5の付勢力によって自重によって駆動部110に生じるモーメントを打ち消す方向に力がかかるため、駆動部110及び本体部120の締結箇所に掛かる負荷を低減することが可能となる。加えて、上述した実施の形態では、付勢部材5が駆動部110に付与する付勢力は、重力方向とは反対向きの成分を有している。このため、所望のベルトテンションを付与するのに必要な重量よりも駆動部110の重量が大きい場合であっても、付勢部材5の付勢力により、ベルト部材に掛かるベルトテンションを調整することができる。
【0057】
<第2の実施の形態>
ついで、第2の実施の形態について説明をする。第1の実施の形態では、モータ1は大きなモータを想定しており、自重をそのままタイミングベルト4にかけると、テンションがかかりすぎるため付勢部材5で抑制していた。ただしタイミングベルト4が硬度の高い部材である場合、モータ1の自重をかけてもベルトテンションが不十分となり、付勢部材5でテンションを増加させる必要がある場合がある。
図11は付勢部材5によりタイミングベルト4にかかるテンションを促成する場合の駆動部110を詳細化した模式図(側面図)である。付勢部材5が駆動部110に付与する付勢力が重力方向の成分を有する場合において、第1の実施の形態と同様に駆動部110が本体部120から離間せず静止する条件を以下において導く。
【0058】
駆動部110は本体部120と接触し、静止状態にあるため、Nは以下の式(10)の関係を満たす。
【0059】
【0060】
また、水平方向の力のつり合いより式(11)が求まる。
【0061】
【0062】
更に、鉛直方向のつり合いより式(12)が求まる。
【0063】
【0064】
また、静止摩擦係数をμとすると、摩擦力Fmは以下の式(13)の関係を満たす。
【0065】
【0066】
更に、点P周りのモーメントのつり合いの式を求めると、以下の式(14)のようになる。
【0067】
【0068】
ここで式(10),(11)よりθは、以下の式(15)の条件を満たす。
【0069】
【0070】
更に、式(11),(12),(13)より、式(16)が求められる。
【0071】
【0072】
よって式(15)、(16)からfの取りうる値は
図12のグラフの網掛け部となる(μ=0.3)。
【0073】
また、式(14)より、式(17)が求められる。
【0074】
【0075】
よって任意の系で駆動部が本体部から離間せずに静止するための付勢部材5を決定することができる(fとLfを決める)。
【0076】
また第1の実施の形態と同様に、fの最小値が求まり、駆動部と本体部にスプリングをかける際により少ない負荷で作業することができ、組立性の改善につながる。
【0077】
図13はfが最小となるθとμの関係を図示したグラフである。式(16)より最小のfの値であるf
minは以下の式(18)のようになる。
【0078】
【0079】
よってfが最小となるθとμが一対一対応で決まる。即ちμが決まると、自動的にfを最小にするθが求まる。
【0080】
<第3の実施の形態>
第1の実施の形態においてモータ支持部材2と駆動部支持部材3の締結箇所は同一平面上にあるが、複数の締結箇所が異なる平面にあってもよい。即ち。第1の実施の形態では、モータ支持部材2は駆動部支持部材3に対して、重力方向に移動可能に複数箇所で締結されており、これら複数の締結箇所は、対向配置される同一のモータ支持部材2及び駆動部支持部材3の面同士を締結させていた。
【0081】
一方で、本実施の形態では、複数の締結箇所のうちの少なくとも1つは、対向配置されたモータ支持部材2と駆動部支持部材3との面のうち、他の締結箇所が締結させる対向面同士とは、モータ1の回転軸1a方向において異なる位置で対向した面同士を締結させている。この場合における、第1の実施の形態と同様に駆動部110が本体部120から離間せず静止する条件を以下において導く。
【0082】
駆動部110は本体部120と接触し、静止状態にあるため、Nは以下の式(19)の関係を満たす。
【0083】
【0084】
モータ1にかかる重力をF、駆動プーリ11が連結部材4に引っ張られる力をFT、駆動部が付勢部材5に引っ張られる力の大きさをfとする。更に、力の向きをθ、駆動部が本体部から受ける摩擦力をFmとして、水平方向の力のつり合いの式を求めると、以下の式(20)のようになる。
【0085】
【0086】
同様に鉛直方向のつり合いの式を求めると、以下の式(21)のようになる。
【0087】
【0088】
また、静止摩擦係数をμとすると、摩擦力Fmは以下の式(22)の関係を満たす。
【0089】
【0090】
更に、駆動部110と本体部120の接触位置からFTがかかる位置までの水平方向距離をLT、駆動部110と本体部120の接触位置から駆動部110の重心までの水平方向距離をLFとする。また、駆動部110と本体部120の接触位置からfがかかる位置までのfの法線方向距離をLfとして、点P周りのモーメントのつり合いの式を求めると、以下の式(23)のようになる。
【0091】
【0092】
ここで、式(19),(20)より、θは、以下の式(24)の条件を満たす。
【0093】
【0094】
更に、式(20),(21),(22)より、式(25)が求められる。
【0095】
【0096】
よって、式(24)及び式(25)からfの取りうる値は
図9のグラフの網掛け部となる(μ=0.3)。また、式(23)より式(26)が求められる。
【0097】
【0098】
よってfが決まるとLfは一義的に決まる。以上から、任意の系で駆動部が本体部から離間せずに静止するための付勢部材5を決定することができる(fとLfを決める)。
【0099】
ここで付勢部材5は本実施の形態ではスプリングが用いられており、
図9からfが最小となるスプリングを選ぶことができる。また一般的にスプリングの張力は部品の出来によって±10%の公差域を持っている。このことからfが最小となるスプリングを選ぶことがバラツキ最小のスプリングを選ぶこととなり、精度の高い装置を作ることができる。またfが最小となる場合、駆動部110と本体部120にスプリングをかける際により少ない負荷で作業することができ、組立性の改善につながる。
【0100】
図10はfが最小となるθとμの関係を図示したグラフである。式(25)より最小のfの値であるf
minは以下の式(27)のようになる
【0101】
【0102】
よってfが最小となるθとμが一対一対応で決まる。即ちμが決まると、自動的にfを最小にするθが求まる。
【0103】
なお、上述した実施の形態においては、付勢部材としてスプリングを例示したが、これに限る必要はなく、例えば、ゴム等の部材によって形成されても良い。また、締結部材7によって駆動部110及び本体部120を3箇所で締結したが、3以上の箇所で駆動部110と本体部120とを締結しても良い。更に、駆動部110は、ベルトテンションを付与するために本体部120に対して重直方向に移動可能に構成されているが、重力方向成分を有していれば、その移動方向はどのような方向であっても良い。
【0104】
また、本実施の形態に係る駆動装置は、プリンタ、複写機、FAX及び複合機などの画像形成装置のみならず、種々の機械に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1:モータ/4:ベルト部材(タイミングベルト)/5:付勢部材(スプリング)/6:被駆動プーリ/11:駆動プーリ/100:駆動装置/110:駆動部/120:本体部