(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】作業機械、計測方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240318BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2019226409
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翔太
(72)【発明者】
【氏名】竹中 唯太
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/098218(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0191245(US,A1)
【文献】特表2011-508187(JP,A)
【文献】特開2019-066310(JP,A)
【文献】特開2019-190074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
走行輪と、
前記走行輪が取り付けられる機械本体と、
前記機械本体に取り付けられるブームと、
前記ブームに取り付けられるバケットと、
前記機械本体に取り付けられ、前記ブームを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの推力と前記作業機械の対地加速度と
前記ブームに関するモーメントのつり合いの式とに基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出するコントローラと、を備えた、作業機械。
【請求項2】
前記アクチュエータは油圧シリンダであり、
前記油圧シリンダのシリンダ圧力を検知する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記圧力センサにより検知されたシリンダ圧力に基づいて前記アクチュエータの推力を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記作業機械の前記対地加速度を検知する加速度センサをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記加速度センサは、前記機械本体に取り付けられている、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記作業機械のピッチング方向の角速度に基づいて前記作業機械の前記対地加速度を算出し、算出された前記作業機械の前記対地加速度に基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出する、請求項1または請求項2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、前記対地加速度として、前記作業機械の前後方向の加速度および前記作業機械の上下方向の加速度に基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
走行輪と、前記走行輪が取り付けられる機械本体と、前記機械本体に取り付けられるブームと、前記ブームに取り付けられるバケットと、前記機械本体に取り付けられ前記ブームを駆動するアクチュエータと、を有する作業機械における前記バケット内の積荷の質量を計測する計測方法であって、
前記アクチュエータの推力に関する情報を取得するステップと、
前記作業機械の対地加速度を取得するステップと、
前記アクチュエータの推力に関する情報と前記作業機械の
前記対地加速度と
前記ブームに関するモーメントのつり合いの式とに基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出するステップと、を備えた、計測方法。
【請求項8】
前記バケット内の積荷の質量を算出するステップは、前記作業機械の走行中における前記バケット内の積荷の質量を算出する、請求項7に記載の計測方法。
【請求項9】
作業機械を制御するシステムであって、
走行輪と、
前記走行輪が取り付けられる機械本体と、
前記機械本体に取り付けられるブームと、
前記ブームに取り付けられるバケットと、
前記機械本体に取り付けられ、前記ブームを駆動するアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータの推力と前記作業機械の対地加速度と
前記ブームに関するモーメントのつり合いの式とに基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、計測方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダなどの作業機械において、バケット内の積載重量を推定する方法が、たとえば特開2017-8633号公報(特許文献1参照)に開示されている。特許文献1では、バケット内の積載重量を推定するために、ブーム角度とボトム圧との関係を定義したリストが用いられる。このリストには、バケットが空荷の状態と、定格重量積載の状態と、定格重量の所定割合の荷が積載された状態との各々におけるブーム角度とボトム圧との関係が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における積載重量の推定方法では、上記リストに示された状態以外の重量の積荷がバケット内に積載されていると、積載重量を精度良く推定することができない。
【0005】
また特許文献1では、測定された積荷重量が作業機械の走行時における車体全体の振動の影響を受ける。このため作業機械の走行中にバケット内の積載量を精度良く推定することができない。
【0006】
本開示の目的は、作業機械の走行時にバケット内の積荷質量を精度良く推定できる作業機械、計測方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業機械は、走行輪と、機械本体と、ブームと、バケットと、アクチュエータと、コントローラとを備えている。機械本体には、走行輪が取り付けられる。ブームは、機械本体に取り付けられる。バケットは、ブームに取り付けられる。アクチュエータは、機械本体に取り付けられ、ブームを駆動する。コントローラは、アクチュエータの推力と作業機械の対地加速度とに基づいてバケット内の積荷の質量を算出する。
【0008】
本開示の計測方法は、作業機械におけるバケット内の積荷の質量を計測する計測方法である。作業機械は、走行輪と、走行輪が取り付けられる機械本体と、機械本体に取り付けられるブームと、ブームに取り付けられるバケットと、機械本体に取り付けられブームを駆動するアクチュエータとを有している。この計測方法は、以下のステップを備えている。
【0009】
アクチュエータの推力に関する情報が取得される。作業機械の対地加速度が取得される。アクチュエータの推力に関する情報と作業機械の対地加速度とに基づいてバケット内の積荷の質量が算出される。
【0010】
本開示のシステムは、作業機械を制御するシステムであって、走行輪と、機械本体と、ブームと、バケットと、アクチュエータとを備えている。機械本体には、走行輪が取り付けられる。ブームは、機械本体に取り付けられる。バケットは、ブームに取り付けられる。アクチュエータは、機械本体に取り付けられ、ブームを駆動する。アクチュエータの推力と作業機械の対地加速度とに基づいてバケット内の積荷の質量が算出される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、作業機械の走行時にバケット内の積荷質量を精度良く推定できる作業機械、計測方法およびシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
【
図2】実施の形態1に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
【
図4】実施の形態2に係る作業機械において積荷質量を算出するために必要な作業機械の各点を説明するための図である。
【
図5】実施の形態2に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。
【
図6】実施の形態2に係る作業機械のピッチ振動による角速度に基づいて積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
【
図7】ピッチング方向の回転振動中心の座標を計算により取得して積荷質量の計測に用いる計測方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0014】
(実施の形態1)
<作業機械の構成>
実施の形態1に係る作業機械の一例としてホイールローダの構成について
図1を用いて説明する。なお本実施の形態における作業機械はホイールローダに限定されるものではない。本実施の形態の作業機械は、走行しながら掘削する車輪を有する作業機械であればよく、バックホーローダ、スキッドステアローダなどであってもよい。
【0015】
図1は、実施の形態1に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを有している。
【0016】
車体フレーム2およびキャブ5からホイールローダ1の機械本体が構成されている。キャブ5内には、オペレータが着座するシートおよび操作装置などが配置されている。ホイールローダ1の機械本体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。作業機3は機械本体の前方に配置されており、機械本体の最後端にはカウンタウエイト6が設けられている。
【0017】
車体フレーム2は、前フレーム11と後フレーム12とを含んでいる。前フレーム11と後フレーム12とには、ステアリングシリンダ13が取り付けられている。ステアリングシリンダ13は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ13はステアリングポンプ(図示せず)からの作動油で伸縮する。ステアリングシリンダ13の伸縮により、前フレーム11と後フレーム12とは互いに左右方向に揺動可能である。これにより、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更可能である。
【0018】
走行装置4は、走行輪4a、4bを含んでいる。走行輪4a、4bの各々は車輪であり、ゴムよりなるタイヤを有している。走行輪(前輪)4aは、前フレーム11に回転可能に取り付けられている。走行輪(後輪)4bは、後フレーム12に回転可能に取り付けられている。ホイールローダ1は、走行輪4a、4bが回転駆動されることにより自走可能である。
【0019】
作業機3は、掘削などの作業を行うためのものである。作業機3は、前フレーム11に取り付けられている。作業機3は、バケット14と、ブーム15と、ベルクランク16と、チルトロッド17、ブームシリンダ18(アクチュエータ)と、バケットシリンダ19とを含んでいる。
【0020】
ブーム15の基端部は、ブームピン21によって前フレーム11に回転自在に取付けられている。これによりブーム15は機械本体に回転可能に取り付けられている。バケット14は、バケットピン22によってブーム15の先端に回転自在に取付けられている。
【0021】
ブームシリンダ18はブーム15を駆動する。ブームシリンダ18の一端は、前フレーム11にピン23によって回転可能に取り付けられている。これによりブームシリンダ18は、機械本体に回転可能に取り付けられている。ブームシリンダ18の他端は、ブーム15にピン24によって回転可能に取り付けられている。
【0022】
ブームシリンダ18はたとえば油圧シリンダである。ブームシリンダ18は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりブーム15が駆動し、ブーム15の先端に取り付けられたバケット14が昇降する。
【0023】
ベルクランク16は、支持ピン29によってブーム15に回転自在に支持されている。ベルクランク16は、支持ピン29の一方側に位置する第1端部と、支持ピン29の他方側に位置する第2端部とを有している。ベルクランク16の第1端部はチルトロッド17を介在してバケット14に接続されている。ベルクランク16の第2端部はバケットシリンダ19を介在して機械本体の前フレーム11に接続されている。
【0024】
チルトロッド17の一端はベルクランク16の第1端部にピン27によって回転可能に取り付けられている。チルトロッド17の他端はバケット14にピン28によって回転可能に取り付けられている。バケット14は、ブーム15に対して回転可能である。
【0025】
バケットシリンダ19の一端は機械本体の前フレーム11にピン25によって回転可能に取り付けられている。バケットシリンダ19の他端はベルクランク16の第2端部にピン26によって回転可能に取り付けられている。
【0026】
バケットシリンダ19はたとえば油圧シリンダである。バケットシリンダ19は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりバケット14が駆動し、バケット14がブーム15に対して上下に回動する。
【0027】
ホイールローダ1は、ブームシリンダ18の推力Fboom(ブームシリンダ力)に関する情報を検知するセンサをさらに有している。
【0028】
ブームシリンダ18の推力Fboomに関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ31b、31hである。圧力センサ31b、31hの各々は、ブームシリンダ18のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ31bは、ブームシリンダ18のボトム圧を検知する。圧力センサ31hは、ブームシリンダ18のヘッド圧を検知する。
【0029】
ヘッド圧とは油圧シリンダのピストンに対してシリンダーロッド側の圧力を意味し、ボトム圧とはピストンに対してチューブ側の圧力を意味する。
【0030】
ホイールローダ1は、作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサをさらに有している。作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサは、たとえばブーム角度に関する情報を検知するセンサと、バケット角度に関する情報を検知するセンサとを含む。
【0031】
作業機3の姿勢に関する情報とは、寸法L1である。寸法L1は、ブームピン21とピン23との間の寸法であって、ブームシリンダ18の延びる方向に直交する方向の寸法である。
【0032】
ブーム角度は、機械本体の前フレーム11に対するブーム15の角度である。バケット角度は、ブーム15に対するバケット14の角度である。
【0033】
ブーム角度に関する情報を検知するセンサは、たとえばポテンショメータ33である。ポテンショメータ33は、ブームピン21と同心となるように取り付けられている。ブーム角度に関する情報を検知するセンサとして、ポテンショメータ33に代えて、ブームシリンダ18のストロークセンサ35が用いられてもよい。
【0034】
またブーム角度に関する情報を検知するセンサとして、IMU(Inertial Measurement Unit)37、または撮像デバイス(たとえばカメラ)39が用いられてもよい。IMU37は、たとえばブーム15に取り付けられている。撮像デバイス39は、機械本体(たとえばキャブ5)に取り付けられている。
【0035】
バケット角度に関する情報を検知するセンサは、たとえばポテンショメータ34である。ポテンショメータ34は、支持ピン29と同心となるように取り付けられている。バケット角度に関する情報を検知するセンサとして、ポテンショメータ34に代えて、バケットシリンダ19のストロークセンサ36が用いられてもよい。
【0036】
またバケット角度に関する情報を検知するセンサとして、IMU38、または撮像デバイス39が用いられてもよい。IMU38は、たとえばチルトロッド17に取り付けられている。
【0037】
上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、作業機3の重心GC1の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。作業機3の重心GC1の位置に関する情報とは、寸法L2xおよび寸法L2yである。
【0038】
寸法L2xは、重心GC1とブームピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法L2yは、重心GC1とブームピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の上下方向に沿う寸法である。
【0039】
本明細書中において、ホイールローダ1の前後方向とは、ホイールローダ1が直進走行する方向をいう。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側が前方向であり、前方向と反対側が後方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、ホイールローダ1が載置されている地表面に直交する方向である。ホイールローダ1を基準にして地表面のある側が下側であり、空のある側が上側である。
【0040】
寸法L2xは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、重心GC1とブームピン21との間の水平方向に沿う寸法である。また寸法L2yは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、重心GC1とブームピン21との間の鉛直方向に沿う寸法である。
【0041】
また上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報は、寸法L3xおよび寸法L3yである。
【0042】
寸法L3xは、重心GC2とブームピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法L3yは、重心GC2とブームピン21との間の寸法であって、ホイールローダ1の上下方向に沿う寸法である。
【0043】
寸法L3xは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、重心GC2とブームピン21との間の水平方向に沿う寸法である。また寸法L3yは、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC2とブームピン21との間の鉛直方向に沿う寸法である。
【0044】
ホイールローダ1は、ホイールローダ1(作業機械)の対地加速度を検知する加速度センサ40をさらに有していている。この加速度センサ40として、たとえばIMUが用いられてもよい。加速度センサ40は、作業機3(ブーム15、ベルクランク16、バケット14)および機械本体のいずれかに取り付けられている。加速度センサ40が機械本体に取り付けられる場合、前フレーム11および後フレーム12のいずれかに取り付けられている。
【0045】
対地加速度とは、地表面に対するホイールローダ1の加速度である。対地加速度は、地表面に対して、前後方向の加速度axと、上下方向の加速度ayとを含む。また加速度センサ40は、ホイールローダ1のピッチング方向における回転角速度ωも測定可能である。
【0046】
前後方向の加速度axは、ホイールローダ1が直進走行する方向の加速度である。前後方向の加速度axは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、水平方向の加速度である。上下方向の加速度ayは、地表面に直交する方向の加速度である。上下方向の加速度ayは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、鉛直方向の加速度である。
【0047】
またホイールローダ1におけるホイールローダ1の対地加速度を検知する加速度センサとして、ジャイロセンサ(角速度センサ)、車速センサ、GPS(Global Positioning System)、撮像デバイス39が用いられてもよい。
【0048】
<コントローラの機能ブロック>
次に、
図1に示すホイールローダ1のバケット14内の積荷質量を計測するコントローラ50の機能ブロックについて
図2を用いて説明する。
【0049】
図2は、
図1に示す作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。
図2に示されるように、コントローラ50は、ブームシリンダ力算出部50aと、対地加速度算出部50bと、作業機姿勢算出部50cと、重心位置算出部50dと、ブームに関するモーメントのつり合い式生成部50eと、積荷質量算出部50fと、記憶部50gとを有している。
【0050】
ブームシリンダ力算出部50aは、ブームシリンダ18のボトム圧を圧力センサ31bから取得する。ブームシリンダ力算出部50aは、ブームシリンダ18のヘッド圧を圧力センサ31hから取得する。
【0051】
ブームシリンダ力算出部50aは、圧力センサ31b、31hにより検知されたシリンダ圧力に基づいてブームシリンダ力Fboomを算出する。具体的には、ブームシリンダ力算出部50aは、圧力センサ31bから取得したブームシリンダ18のボトム圧と、圧力センサ31hから取得したからヘッド圧とに基づいてブームシリンダ力Fboomを算出する。ブームシリンダ力算出部50aは、取得したブームシリンダ18のボトム圧のみからブームシリンダ力Fboomを算出してもよい。ブームシリンダ力算出部50aは、算出したブームシリンダ力Fboomを、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0052】
対地加速度算出部50bは、ホイールローダ1の対地加速度を加速度センサ40から取得する。対地加速度算出部50bは、加速度センサ40から取得した対地加速度から、ホイールローダ1の地表面に対する前後方向の加速度axと、上下方向の加速度ayとを算出する。対地加速度算出部50bは、算出した対地加速度ax、ayを、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0053】
なお前後方向の加速度axおよび上下方向の加速度ayは、コントローラ50が算出するのではなく、加速度センサ40が計測してコントローラ50に出力されてもよい。
【0054】
作業機姿勢算出部50cは、ブーム角度に関する情報をポテンショメータ33、ストロークセンサ35、IMU37、撮像デバイス39などから取得する。作業機姿勢算出部50cは、バケット角度に関する情報をポテンショメータ34、ストロークセンサ36、IMU38、撮像デバイス39などから取得する。
【0055】
作業機姿勢算出部50cは、ブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて寸法L1を算出する。作業機姿勢算出部50cは、算出した寸法L1を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0056】
重心位置算出部50dは、ブーム角度に関する情報をポテンショメータ33、ストロークセンサ35、IMU37、撮像デバイス39などから取得する。作業機姿勢算出部50cは、バケット角度に関する情報をポテンショメータ34、ストロークセンサ36、IMU38、撮像デバイス39などから取得する。
【0057】
重心位置算出部50dは、ブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、寸法L2x、L2y、L3x、L3yを算出する。重心位置算出部50dは、算出した寸法L2x、L2y、L3x、L3yを、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0058】
記憶部50gは、作業機3全体の質量M1、重力加速度gなどを記憶している。記憶部50gには、コントローラ50外部の入力部51から質量M1、重力加速度gなどの情報が入力されてもよい。記憶部50gは、コントローラ50に含まれておらず、コントローラ50の外部に配置されていてもよい。
【0059】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、記憶部50gから作業機3全体の質量M1と重力加速度gとを取得する。
【0060】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、取得したブームシリンダ力Fboomと、対地加速度ax、ayと、寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yと、質量M1、M2と、重力加速度gとから、ブームに関するモーメントのつり合いの式(1)を生成する。式(1)におけるM2は、バケット14内の積荷の質量である。
【0061】
【0062】
式(1)におけるブームシリンダ力Fboomの単位はNであり、対地加速度ax、ayおよび重力加速度gの単位はm/s2である。また寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yの単位はmであり、質量M1、M2の単位はkgである。
【0063】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、式(1)を積荷質量算出部50fへ出力する。
【0064】
積荷質量算出部50fは、式(1)を以下の式(2)のように質量M2について解く。これにより積荷質量算出部50fは、バケット14内の積荷の質量M2を算出することができる。
【0065】
【0066】
上式(2)に示されるように、コントローラ50は、ブームシリンダ力Fboomと、対地加速度ax、ayと、寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yと、質量M1と、重力加速度gとに基づいて、質量M2を算出する。
【0067】
積荷質量算出部50fは、算出した質量M2をコントローラ50外の表示部52に出力する。表示部52は、たとえばキャブ5(
図1)内に配置されていてもよく、またホイールローダ1から離れた遠隔地に配置されていてもよい。表示部52は、算出した質量M2または重量M2×gを画面に表示する。これによりキャブ5内でホイールローダ1を操作するオペレータ、遠隔地でホイールローダ1の動作を監視する監視者などがバケット14内の積荷質量M2または積荷重量M2×gを認識することができる。
【0068】
なお入力部51および表示部52の各々は、コントローラ50と有線で接続されていてもよく、また無線で接続されていてもよい。
【0069】
<積荷質量M2の計測方法>
次に、本実施の形態に係る積荷質量M2の計測方法について
図1~
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態1に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
【0070】
ホイールローダ1の走行中に、ホイールローダ1におけるホイールローダ1の対地加速度が、
図1に示される加速度センサ40により計測される。計測された対地加速度は、
図2で示されるコントローラ50により取得される(ステップS1a:
図3)。
【0071】
また対地加速度の計測時に、ブーム角度に関する情報が計測される。ブーム角度に関する情報は、たとえば
図1に示されるポテンショメータ33により計測される。ポテンショメータ33は、機械本体の前フレーム11に対するブーム15の回転角度を計測する。
【0072】
ブーム角度に関する情報は、ストロークセンサ35により計測されるブームシリンダ18のストローク長さであってもよい。またブーム角度に関する情報は、IMU37により計測されるブーム15の3軸の角度(または角速度)および加速度であってもよく、また撮像デバイス39により撮像される画像であってもよい。
【0073】
上記のように計測されたブーム角度に関する情報は、
図2に示されるコントローラ50により取得される(ステップS1b:
図3)。
【0074】
また対地加速度の計測時に、バケット角度に関する情報が計測される。バケット角度に関する情報は、たとえば
図1に示されるポテンショメータ34により計測される。ポテンショメータ34は、ブーム15に対するベルクランク16の回転角度を計測する。
【0075】
バケット角度に関する情報は、ストロークセンサ36により計測されるバケットシリンダ19のストローク長さであってもよい。またバケット角度に関する情報は、IMU38により計測されるチルトロッド17の3軸の角度(または角速度)および加速度であってもよく、また撮像デバイス39により撮像される画像であってもよい。
【0076】
上記のように計測されたバケット角度に関する情報は、
図2に示されるコントローラ50により取得される(ステップS1c:
図3)。
【0077】
また対地加速度の計測時に、ブーム15を駆動するアクチュエータの推力に関する情報が計測される。ブーム15を駆動するアクチュエータの推力に関する情報は、たとえば
図1に示されるブームシリンダ18のシリンダ圧力である。ブームシリンダ18のボトム圧は圧力センサ31bにより計測され、ヘッド圧は圧力センサ31hにより計測される。なおブームシリンダ18のボトム圧のみがアクチュエータの推力に関する情報として計測されてもよい。
【0078】
上記のように計測されたブーム15を駆動するアクチュエータの推力に関する情報(ブームシリンダ18のシリンダ圧力)は、
図2に示されるコントローラ50により取得される(ステップS1d:
図3)。コントローラ50が取得するアクチュエータの推力に関する情報は、ブームシリンダ18のボトム圧とヘッド圧との双方であってもよく、ボトム圧のみであってもよい。
【0079】
この後、コントローラ50は、取得したブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、作業機3の姿勢に関する寸法L1と、作業機3の重心GC1の位置を表す寸法L2x、L2yと、積荷重心GC2の位置を表す寸法L3x、L3yとを算出する(ステップS2:
図3)。
【0080】
寸法L1は、
図2における作業機姿勢算出部50cにより算出される。寸法L2x、L2y、L3x、L3yは、
図2における重心位置算出部50dにより算出される。
【0081】
またコントローラ50は、取得したシリンダ圧力に基づいて、ブームシリンダ力F
boom(アクチュエータの推力)を算出する(ステップS3:
図3)。ブームシリンダ力F
boomは、
図2におけるブームシリンダ力算出部50aにより算出される。
【0082】
またコントローラ50は、取得した対地加速度に基づいて、ホイールローダ1の前後方向の対地加速度axと上下方向の対地加速度ayとを算出する(ステップS4:
図3)。対地加速度ax、ayは、
図2における対地加速度算出部50bにより算出される。
【0083】
この後、コントローラ50は、バケット4内の積荷の質量M2を算出する(ステップS5:
図3)。積荷質量M2の算出は、上記により算出された対地加速度ax、ayと、寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yと、ブームシリンダ力F
boomと、
図2の記憶部に記憶された作業機3全体の質量M1および重力加速度gとを、上式(2)に代入することにより行なわれる。積荷質量M2の算出は、
図2における積荷質量算出部50fにより行われる。
【0084】
以上によりホイールローダ1の走行中におけるバケット14内の積荷の質量M2がコントローラ50により算出される。
【0085】
なお寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yの算出(ステップS2)と、ブームシリンダ力F
boomの算出(ステップS3)と、対地加速度ax、ayの算出(ステップS4)との順序は
図3に示された順序に限定されるものではなく、任意に設定されてもよい。また寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yの算出(ステップS2)と、ブームシリンダ力F
boomの算出(ステップS3)と、対地加速度ax、ayの算出(ステップS4)とは同時に行なわれてもよい。
【0086】
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0087】
ホイールローダ1の走行時にはホイールローダ1全体に振動が生じる。特にタイヤを有するホイールローダのような作業機械1では、走行時におけるタイヤのたわみによって作業機械1の全体に前後方向および上下方向の振動が生じる。このような走行時における振動により、作業機械1の積荷質量M2の計測は影響を受ける。
【0088】
本実施の形態においては、上式(2)に示されるように、ブームシリンダ力Fboomだけでなく、作業機械1の対地加速度ax、ayに基づいてバケット14内の積荷の質量M2が算出される。このためホイールローダ1の走行時における振動の影響を考慮してバケット14内の積荷の質量M2を算出することが可能となる。これにより作業機械1が走行中においても、バケット14内の積荷質量M2を精度良く算出することが可能となる。
【0089】
また本実施の形態においては、上式(2)に示されるようにモーメントのつり合いの式にシリンダ力Fboomだけでなく対地加速度ax、ayも含まれている。このためバケット14内の積荷質量を一旦算出した後に走行時の振動の影響を補正するための較正が不要となる。これにより作業機械1が走行中において、バケット14内の積荷質量M2を簡易に算出することが可能となる。
【0090】
以上により本実施の形態によれば、作業機械1の走行時にバケット14内の積荷質量M2を簡易かつ精度良く推定することができる。
【0091】
また本実施の形態においては、ブームシリンダ18のシリンダ圧力が圧力センサ31b、31hにより計測される。これにより、計測されたブームシリンダ18のシリンダ圧力に基づいてブームシリンダ力Fboomを算出することができ、ブームシリンダ力Fboomに基づいてバケット14内の積荷質量M2を算出することができる。
【0092】
また本実施の形態においては、作業機械の対地加速度が加速度センサ40により検知される。これにより作業機械の対地加速度ax、ayに基づいてバケット14内の積荷質量M2が算出可能となる。
【0093】
また本実施の形態においては、加速度センサ40は、作業機械の対地加速度として、作業機械の前後方向の加速度axおよび作業機械の上下方向の加速度ayを検知する。これにより前後方向の対地加速度axおよび上下方向の対地加速度ayを考慮してバケット14内の積荷の質量M2を算出することが可能となる。
【0094】
また本実施の形態においては、作業機械1の走行中におけるバケット14内の積荷質量M2が算出される。これによりホイールローダ1の走行時における振動の影響を考慮してバケット14内の積荷質量M2を算出することが可能となる。
【0095】
(実施の形態2)
作業機械1のピッチング方向の回転角速度ωの影響を考慮してバケット14内の積荷質量M2が算出されてもよい。以下、そのことについて説明する。
【0096】
<作業機械における各点の説明>
まず本実施の形態に係る積荷質量M2を算出するために必要な作業機械1の各点について説明する。
【0097】
図4は、実施の形態2に係る作業機械において積荷質量を算出するために必要な作業機械の各点を説明するための図である。
図4に示されるように、点SPは加速度センサ40の搭載位置を示している。点GC4は作業機械1全体のピッチング方向の振動中心を示している。点GC1は作業機3の重心位置を示している。点GC2はバケット14内の積荷の重心位置を示している。
【0098】
加速度センサ40の搭載位置SPの座標は(xs,ys)であり、ピッチングの振動中心GC4の座標は(x4,y4)である。作業機3の重心GC1の座標は(x1,y1)であり、バケット14内の積荷の重心GC2の座標は(x2,y2)である。本変形例における計算では、ピッチングの振動中心GC4の座標(x4,y4)が原点とされる。
【0099】
<コントローラの機能ブロック>
次に、
図1、
図4に示す作業機械1のバケット14内の積荷質量M2を計測するコントローラ50の機能ブロックについて
図5を用いて説明する。
【0100】
図5は、実施の形態2に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。
図5に示されるように、本実施の形態のコントローラ50は、作業機械1のピッチング方向の角速度ω(
図4)に基づいて作業機械1の対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yを算出し、算出された対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yに基づいてバケット14内の積荷の質量M2を算出する。
【0101】
コントローラ50は、実施の形態1と同様、ブームシリンダ力算出部50aと、対地加速度算出部50bと、作業機姿勢算出部50cと、重心位置算出部50dと、ブームに関するモーメントのつり合い式生成部50eと、積荷質量算出部50fと、記憶部50gとを有している。
【0102】
実施の形態1と同様、ブームシリンダ力算出部50aはブームシリンダ力Fboomを算出し、作業機姿勢算出部50cは寸法L1を算出し、重心位置算出部50dは寸法L2x、L2y、L3x、L3yを算出する。算出されたブームシリンダ力Fboom、寸法L1、および寸法L2x、L2y、L3x、L3yは、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力される。
【0103】
また重心位置算出部50dは、ブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、作業機3の重心GC1の座標(x1,y1)と、バケット14内の積荷の重心GC2の座標(x2,y2)とを算出する。重心位置算出部50dは、算出した座標(x1,y1)および座標(x2,y2)を対地加速度算出部50bへ出力する。
【0104】
対地加速度算出部50bは、作業機械1の対地加速度asx、asyと対地角速度ωとを加速度センサ40から取得する。対地加速度asx、asyと対地角速度ωとは、それぞれ加速度センサ40の搭載位置SP(
図4)における前後方向の加速度asx、上下方向の加速度asy、および対地角速度ωである。
【0105】
対地加速度算出部50bは、座標(x1,y1)および座標(x2,y2)を重心位置算出部50dから取得する。また対地加速度算出部50bは、記憶部50gから加速度センサ40の搭載位置SPにおける座標(xs,ys)を取得する。
【0106】
対地加速度算出部50bは、取得した対地角速度ωを時間微分することにより対地角加速度αを算出する。
【0107】
対地加速度算出部50bは、取得した対地加速度asx、asy、対地角速度ωおよび座標(xs,ys)と、算出した対地角加速度αとから、以下の式(3)に基づいて加速度a4x、a4yを算出する。
【0108】
【0109】
図4に示されるように、式(3)における加速度a4xはピッチングの振動中心GC4における前後方向の加速度である。また加速度a4yはピッチングの振動中心GC4における上下方向の加速度である。
【0110】
なお以下の計算においては、作業機械1の全体を剛体と考えているため、角速度ωは全ての点において同じに作用する。
【0111】
図5に示されるように、対地加速度算出部50bは、式(3)で算出した加速度a4x、a4yと、対地角速度ωと、対地角加速度αと、座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とから、以下の式(4)に基づいて重心GC1、GC2における対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yを算出する。
【0112】
【0113】
図4に示されるように、式(4)における作業機械1の対地加速度a1xは重心GC1における前後方向の加速度であり、作業機械1の対地加速度a1yは重心GC1の上下方向の加速度a1yである。また作業機械1の対地加速度a2xは重心GC2における前後方向の加速度であり、作業機械1の対地加速度a2yは重心GC2における上下方向の加速度a2yである。
【0114】
なお前後方向の加速度a1x、a2x、a4xは、ホイールローダ1が直進走行する方向の加速度である。前後方向の加速度a1x、a2x、a4xは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、水平方向の加速度である。上下方向の加速度a1y、a2y、a4yは、地表面に直交する方向の加速度である。上下方向の加速度a1y、a2y、a4yは、ホイールローダ1が水平な地表面に載置されている状態においては、鉛直方向の加速度である。
【0115】
図5に示されるように、対地加速度算出部50bは、算出した対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yを、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0116】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、記憶部50gから作業機3全体の質量M1と重力加速度gとを取得する。
【0117】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、ブームシリンダ力Fboomと、対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yと、寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yと、質量M1、M2と、重力加速度gとから、ブームに関するモーメントのつり合いの式(5)を生成する。
【0118】
【0119】
式(5)におけるブームシリンダ力Fboomの単位はNであり、対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yおよび重力加速度gの単位はm/s2である。また寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yの単位はmであり、質量M1、M2の単位はkgである。
【0120】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、式(5)を積荷質量算出部50fへ出力する。
【0121】
積荷質量算出部50fは、式(5)を以下の式(6)のように質量M2について解く。これにより積荷質量算出部50fは、バケット14内の積荷の質量M2を算出することができる。
【0122】
【0123】
上式(6)に示されるように、コントローラ50は、ブームシリンダ力Fboomと、対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yと、寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yと、質量M1と、重力加速度gとに基づいて、質量M2を算出する。
【0124】
なお上記以外の本実施の形態に係る機能ブロックの構成は、
図2に示す実施の形態1に係る機能ブロックの構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を繰り返さない。
【0125】
<積荷質量M2の計測方法>
次に、本実施の形態に係る積荷質量M2の計測方法について
図4~
図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態2に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
【0126】
図4に示されるように、作業機械1の走行時などには、作業機械1にピッチング方向の振動が生じる。加速度センサ40は、この振動による対地角速度ωを計測する。計測される対地角速度ωは、
図5で示されるコントローラ50により取得される(ステップS1e:
図6)。具体的にはコントローラ50の対地加速度算出部50bが対地角速度ωを取得する。
【0127】
また実施の形態1と同様に、対地加速度と、ブーム角度に関する情報と、バケット角度に関する情報と、ブーム15を駆動するアクチュエータの推力に関する情報(たとえばシリンダ圧力)とは、
図5で示されるコントローラ50により取得される(ステップS1a~S1d:
図6)。
【0128】
この後、コントローラ50は、取得したブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、作業機3の姿勢に関する寸法L1と、作業機3の重心GC1の位置を表す寸法L2x、L2yと、積荷重心GC2の位置を表す寸法L3x、L3yと、座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とを算出する(ステップS2:
図6)。
【0129】
寸法L1は、
図5における作業機姿勢算出部50cにより算出される。寸法L2x、L2y、L3x、L3yと、座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とは、
図5における重心位置算出部50dにより算出される。
【0130】
またコントローラ50は、取得したシリンダ圧力に基づいて、ブームシリンダ力F
boom(アクチュエータの推力)を算出する(ステップS3:
図6)。ブームシリンダ力F
boomは、
図5におけるブームシリンダ力算出部50aにより算出される。
【0131】
またコントローラ50は、取得した対地角速度ωを時間微分することにより対地角加速度αを算出する。コントローラ50は、取得した対地加速度asx、asy、対地角速度ωおよび座標(xs,ys)と、算出した対地角加速度αとに基づいて、ピッチングの振動中心GC4における前後方向の加速度a4xおよび上下方向の加速度a4yを算出する。加速度a4x、a4yの算出は、上式(3)に基づいて行なわれる。
【0132】
コントローラ50は、加速度a4x、a4yと、対地角速度ωと、対地角加速度αと、座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とから、重心GC1、GC2における対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yを算出する(ステップS4a:
図6)。対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yは、
図5における対地加速度算出部50bにより算出される。対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yの算出は、上式(4)に基づいて行なわれる。
【0133】
この後、コントローラ50は、バケット4内の積荷の質量M2を算出する(ステップS5:
図6)。積荷質量M2の算出は、上記により算出された対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yと、寸法L1、L2x、L2y、L3x、L3yと、ブームシリンダ力F
boomと、
図5の記憶部50gに記憶された作業機3全体の質量M1および重力加速度gとを、上式(6)に代入することにより行なわれる。積荷質量M2の算出は、
図5における積荷質量算出部50fにより行われる。
【0134】
以上によりホイールローダ1の走行中におけるバケット14内の積荷の質量M2がコントローラ50により算出される。
【0135】
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0136】
作業機械1の走行時には作業機械1全体にピッチング方向の振動が生じる。このような走行時におけるピッチング方向の振動によっても、作業機械1の積荷質量M2の計測は影響を受ける。
【0137】
本実施の形態においては、上式(3)~(6)に示されるように、作業機械1のピッチング方向の角速度ωに基づいて作業機械1の対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yが算出され、算出された対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yに基づいてバケット14内の積荷の質量M2が算出される。このためホイールローダ1の走行時におけるピッチング方向の振動の影響を考慮してバケット14内の積荷の質量M2を算出することが可能となる。これにより作業機械1が走行中においても、バケット14内の積荷質量M2を精度良く算出することが可能となる。
【0138】
また本実施の形態においては、上式(6)に示されるようにモーメントのつり合いの式にシリンダ力Fboomだけでなく対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yも含まれている。このためバケット14内の積荷質量を一旦算出した後に走行時におけるピッチング方向の振動の影響を補正するための較正が不要となる。これにより作業機械1が走行中において、バケット14内の積荷質量M2を簡易に算出することが可能となる。
【0139】
以上により本実施の形態によれば、作業機械1の走行時にバケット14内の積荷質量M2を簡易かつ精度良く推定することができる。
【0140】
(変形例)
実施の形態2においては、ピッチングの振動中心GC4の座標(x4,y4)が予め記憶された値である場合について説明したが、振動中心GC4の座標として計算により求められた値が用いられてもよい。
【0141】
図7は、ピッチング方向の回転振動中心の座標を計算により取得して積荷質量の計測に用いる計測方法を示すフロー図である。
図7に示されるように、本変形例のフローは、
図6に示す実施の形態2のフローにおけるステップS1a~S1e、S2およびS3と同じステップを経る。
【0142】
この後、本変形例のフローにおいては、対地角速度ωを考慮せずに対地加速度ax、ayが算出される(ステップS11)。この後、モーメントのつり合いの式に基づいて対地加速度を考慮せずに積荷質量M2の仮り値が算出される(ステップS12)。
【0143】
この後、作業機械1全体のピッチング方向の振動における振動中心GC4の座標(x4,y4)が算出される(ステップS13)。この座標(x4,y4)は、予め記憶している作業機械1の重量と、作業機械1の重心位置と、作業機械1の慣性モーメントと、作業機3の重量と、計測した作業機3の姿勢と、バケット14内の積荷の重心位置と、ステップS12で算出された積荷質量M2の仮り値とから、作業機械1の全体を剛体、タイヤをばね要素ととらえて、振動工学の知識を用いることにより算出される。
【0144】
この後、対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yが算出される(ステップS4a)。この対地加速度a1x、a1y、a2x、a2yは、ステップS13で算出された振動中心GC4の座標(x4,y4)と、計測した搭載位置SPにおける加速度asx、asyおよび対地角速度ωとから算出される。
【0145】
この後、実施の形態2のフローと同様にモーメントのつり合いの式に基づいてバケット14内の積荷の質量M2が算出される(ステップS5)。
【0146】
図2に示されるコントローラ50は、作業機械1に搭載されていてもよく、作業機械1の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ50が作業機械1の外部に離れて配置されている場合、コントローラ50は、センサ31b、31h、33~40などと無線により接続されていてもよい。コントローラ50は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。コントローラ50の機能により作業機械1を制御する制御システムが構成されている。
【0147】
上記においてはブームシリンダ18(アクチュエータ)として油圧シリンダについて説明したが、ブーム15を駆動するアクチュエータ18は油圧シリンダに限定されるものではなく、ブーム15を駆動する推力を生じるものであればよく、たとえば電動シリンダなどであってもよい。
【0148】
またバケットシリンダ19として油圧シリンダについて説明したが、バケット14を駆動するアクチュエータ19は油圧シリンダに限定されるものではなく、バケット14を駆動する推力を生じるものであればよく、たとえば電動シリンダなどであってもよい。
【0149】
またブームを駆動するアクチュエータ18の推力に関する情報を検知するセンサとして圧力センサ31b、31hについて説明したが、これらの推力に関する情報を検知するセンサは電動シリンダなどの推力に関する情報を検知するものであってもよい。
【0150】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0151】
1 作業機械(ホイールローダ)、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a,4b 走行輪、5 キャブ、6 カウンタウエイト、11 前フレーム、12 後フレーム、13 ステアリングシリンダ、14 バケット、15 ブーム、16 ベルクランク、17 チルトロッド、18 ブームシリンダ、19 バケットシリンダ、21 ブームピン、22 バケットピン、29 支持ピン、31b,31h 圧力センサ、33,34 ポテンショメータ、35,36 ストロークセンサ、39 撮像デバイス、40 加速度センサ、50 コントローラ、50a ブームシリンダ力算出部、50b 対地加速度算出部、50c 作業機姿勢算出部、50d 重心位置算出部、50e ブームに関するモーメントつり合い式生成部、50f 積荷質量算出部、50g 記憶部、51 入力部、52 表示部、GC1,GC2 重心、GC4 振動中心、SP 加速度センサの搭載位置、ax,ay,a1x,a1y,a2x,a2y,a4x,a4y,asx,asy 対地加速度、α 対地角加速度、ω 対地角速度。