(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】テラヘルツ波用レンズ及びテラヘルツ波用レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20240318BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240318BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G02B3/00 B
G02B5/18
G02B3/08
(21)【出願番号】P 2019230452
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】林 昌平
(72)【発明者】
【氏名】下村 哲志
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘康
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-328096(JP,A)
【文献】特開2008-112036(JP,A)
【文献】国際公開第2006/009176(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/052863(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030127(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110221447(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0246262(US,A1)
【文献】国際公開第2016/171962(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0251704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
G02B 5/18
G02B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波を集光又はコリメートするテラヘルツ波用レンズであって、
テラヘルツ波の位相を変化させる凹凸構造が形成された表面を有する基板を備え、
前記凹凸構造は、周期的に配置された凸部又は周期的に配置された凹部からなる複数の凹凸構成部を有し、
前記凹凸構造は、周期的に配置された複数の前記凹凸構成部をそれぞれ含む複数の領域を有し、
前記凹凸構成部の前記基板の厚さ方向の高さ及び前記厚さ方向に直交する方向の幅は、前記領域毎に異なっており、
互いに隣接する前記凹凸構成部の中心間の距離は一定であり、
前記厚さ方向における前記凹凸構造の外側端部は、同一平面上に位置しており、
前記複数の領域は、所定方向に沿って配列された第1領域~第N領域のN個(Nは2以上の整数)の領域からなり、
前記複数の領域の各々の実効屈折率は、前記第1領域から前記第N領域に向かうにつれて段階的に小さくなっており、
前記凹凸
構造は、それぞれ前記複数の領域を1セット含む複数の繰り返し単位を有し、
前記複数の繰り返し単位は、前記所定方向に沿って配列されており、
前記複数の繰り返し単位のうち少なくとも一つは、
前記所定方向に沿って2πよりも大きい
位相差をつけることが可能な位相分布となるように構成されて
おり、
前記複数の領域は、互いに隣接する前記領域間の位相差が第1位相差となるように設定された第1位相差領域と、互いに隣接する前記領域間の位相差が前記第1位相差よりも小さい第2位相差となるように設定された第2位相差領域と、を有し、
前記凹凸構成部が前記凸部である場合には、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が予め定められた第1閾値以上である前記領域が、前記第2位相差領域とされており、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が前記第1閾値未満である前記領域が、前記第1位相差領域とされており、
前記凹凸構成部が前記凹部である場合には、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が予め定められた第2閾値以下である前記領域が、前記第2位相差領域とされており、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が前記第2閾値より大きい前記領域が、前記第1位相差領域とされている、テラヘルツ波用レンズ。
【請求項2】
前記凹凸構成部は前記凸部であり、
前記凹凸構成部の前記幅が大きいほど、前記凹凸構成部の前記高さが低い、請求項1に記載のテラヘルツ波用レンズ。
【請求項3】
前記凹凸構成部は前記凹部であり、
前記凹凸構成部の前記幅が大きいほど、前記凹凸構成部の前記高さが高い、請求項1に記載のテラヘルツ波用レンズ。
【請求項4】
前記第1領域から前記第N領域に向かうにつれて、各前記領域に属する前記凹凸構成部の高さが高くなっている、請求項1~3のいずれか一項に記載のテラヘルツ波用レンズ。
【請求項5】
前記凹凸構成部は前記凸部であり、
第n領域(nは1からN-1までの任意の整数)と第n+1領域との境界近傍には、前記第n領域に対応する前記凹凸構成部の高さと前記第n+1領域に対応する前記凹凸構成部の高さとの間の高さを有する前記凹凸構成部が形成されている、請求項4に記載のテラヘルツ波用レンズ。
【請求項6】
少なくとも前記第1領域が前記第2位相差領域を構成している、請求項
1~5のいずれか一項に記載のテラヘルツ波用レンズ。
【請求項7】
前記複数の領域の各々に対応する前記凹凸構成部の前記高さ及び前記幅は、前記凹凸構造と空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制可能な寸法とされている、請求項1~
6のいずれか一項に記載のテラヘルツ波用レンズ。
【請求項8】
テラヘルツ波を集光又はコリメートするテラヘルツ波用レンズの製造方法であって、
テラヘルツ波の位相を変化させる凹凸構造のパターンを決定する第1工程と、
平坦な基板の表面に、前記パターンに応じたエッチングマスクを形成する第2工程と、
前記基板の表面に前記エッチングマスクが形成された状態で、前記基板に対する異方性エッチングを行うことにより、周期的に配置された凸部又は周期的に配置された凹部からなる複数の凹凸構成部を有する前記凹凸構造を前記基板の前記表面に形成する第3工程と、
前記エッチングマスクを前記基板の表面から除去する第4工程と、を含み、
前記凹凸構造は、周期的に配置された複数の前記凹凸構成部をそれぞれ含む複数の領域を有し、
前記凹凸構成部の前記基板の厚さ方向の高さ及び前記厚さ方向に直交する方向の幅は、前記領域毎に異なっており、
互いに隣接する前記凹凸構成部の中心間の距離は一定であり、
前記第1工程において、前記凹凸構造のパターンを、
前記複数の領域が、所定方向に沿って配列された第1領域~第N領域のN個(Nは2以上の整数)の領域からなり、
前記複数の領域の各々の単位領域当たりのエッチング量が、前記第1領域から前記第N領域に向かうにつれて段階的に大きくなるように、決定し、
前記第1工程において、
前記凹凸
構造が、それぞれ前記複数の領域を1セット含む複数の繰り返し単位を有し、
前記複数の繰り返し単位が、前記所定方向に沿って配列され、
前記複数の繰り返し単位のうち少なくとも一つが、
前記所定方向に沿って2πよりも大きい
位相差をつけることが可能な位相分布となるように、
各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定
し、
前記第1工程は、
前記凹凸構成部の前記幅とエッチング深さとの関係を示す情報を取得する工程と、
前記関係を示す情報と予め定められた位相分布の設計値とに基づいて、各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定する工程と、を含み、
前記第1工程において、前記複数の領域が第1位相差領域と第2位相差領域とを有するように、各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定し、
前記第1位相差領域は、互いに隣接する前記領域間の位相差が第1位相差となるように設定された領域であり、
前記第2位相差領域は、互いに隣接する前記領域間の位相差が前記第1位相差よりも小さい第2位相差となるように設定された領域であり、
前記凹凸構成部が前記凸部である場合には、前記第1工程において、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が予め定められた第1閾値以上である前記領域が前記第2位相差領域となり、且つ、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が前記第1閾値未満である前記領域が前記第1位相差領域となるように、各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定し、
前記凹凸構成部が前記凹部である場合には、前記第1工程において、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が予め定められた第2閾値以下である前記領域が前記第2位相差領域となり、且つ、前記凹凸構造のうち前記凹凸構成部の前記幅が前記第2閾値より大きい前記領域が前記第1位相差領域となるように、各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定する、テラヘルツ波用レンズの製造方法。
【請求項9】
前記第1工程において、少なくとも前記第1領域が前記第2位相差領域を構成するように、各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定する、請求項
8に記載のテラヘルツ波用レンズの製造方法。
【請求項10】
前記第1工程において、前記複数の領域の各々に対応する前記凹凸構成部の前記高さ及び前記幅が前記凹凸構造と空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制可能な寸法となるように、各前記領域に配置される前記凹凸構成部の前記幅を決定する、請求項
8又は9に記載のテラヘルツ波用レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テラヘルツ波用レンズ及びテラヘルツ波用レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全かつ高精度な分析が可能であるテラヘルツ帯の電磁波(テラヘルツ波)を利用する技術が注目されている。テラヘルツ波を利用するためには、テラヘルツ波をコリメート又は集光するための集光光学系(レンズ等)が必要となる。集光光学系の大型化を回避するためには、なるべく小型のレンズを用いることが好ましい。従来、一般的に用いられる球面レンズよりも小型であって比較的高いNAを実現できるレンズとして、基板表面に微細な凹凸構造(誘電体凹凸構造配列)を形成した平板状のフラットレンズ(メタレンズ)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Si基板上にSiO2からなるエッチングストッパ層とSiからなるシリコン層とが順に形成されたSOI基板を用意し、SOI基板のシリコン層の表面に凹凸構造パターンに対応するマスクを形成し、マスクに覆われていないシリコン層の部分をエッチングによって除去することにより、上述したような凹凸構造を形成する手法が開示されている。また、特許文献2には、レーザ干渉とレーザ加工とを組み合わせた方法を用いることにより、空間的に構造の高さが変調された凹凸構造を基板上に形成する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6356557号公報
【文献】特開2007-57622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の手法によれば、エッチングストッパ層が露出した段階でエッチングが停止するため、凹凸構造の高さ(すなわち、エッチング深さ)を均一にすることができる。しかし、エッチングストッパ層として用いられるSiO2は、テラヘルツ領域の光を吸収する特性を有するため、テラヘルツ波用の光学素子に不向きである。また、上記特許文献2に記載の手法には、高輝度の加工用レーザ及び干渉用のマスク等が必要となると共に、凹凸構造を形成するための工程が煩雑になってしまうという問題がある。また、凹凸構造の高さ(最外面の位置)が不揃いとなるため、収差が生じ易いという問題もある。
【0006】
本開示の一側面は、小型化を図りつつ収差の発生を抑制することができるテラヘルツ波用レンズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るテラヘルツ波用レンズは、テラヘルツ波を集光又はコリメートするテラヘルツ波用レンズであって、テラヘルツ波の位相を変化させる凹凸構造が形成された表面を有する基板を備え、凹凸構造は、周期的に配置された凸部又は凹部からなる複数の凹凸構成部を有し、凹凸構造は、それぞれ凹凸構成部が複数配置された複数の領域を有し、凹凸構成部の基板の厚さ方向の高さ及び厚さ方向に直交する方向の幅は、領域毎に異なっており、互いに隣接する凹凸構成部の中心間の距離は一定であり、厚さ方向における凹凸構造の外側端部は、同一平面上に位置している。
【0008】
上記テラヘルツ波用レンズでは、凹凸構造を構成する凹凸構成部の高さ及び幅が領域毎に異なっている。これにより、透過するテラヘルツ波に対して領域毎に異なる位相差をつけることができる。また、表面に凹凸構造が形成された基板を用いることにより、球面レンズ等と比較してレンズの厚みを低減できるため、レンズの小型化を図ることができる。さらに、厚さ方向における凹凸構造の外側端部の高さ位置が揃っていることにより、収差の発生を抑制することができる。また、上記テラヘルツ波用レンズでは、互いに隣接する凹凸構成部の中心間の距離(すなわち、各凹凸構成部の配置間隔(周期))が一定であることにより、凹凸構成部の配置設計が容易となる。
【0009】
凹凸構成部は凸部であってもよく、凹凸構成部の幅が大きいほど、凹凸構成部の高さが低くてもよい。上記構成によれば、エッチングにおけるマイクロローディング効果を利用することにより、領域毎に凹凸構成部の高さ及び幅が異なる凹凸構造を容易に形成することができる。
【0010】
凹凸構成部は凹部であってもよく、凹凸構成部の幅が大きいほど、凹凸構成部の高さが高くてもよい。上記構成によれば、エッチングにおけるマイクロローディング効果を利用することにより、領域毎に凹凸構成部の高さ及び幅が異なる凹凸構造を容易に形成することができる。
【0011】
複数の領域は、所定方向に沿って配列された第1領域~第N領域のN個(Nは2以上の整数)の領域からなっていてもよく、複数の領域の各々の実効屈折率は、第1領域から第N領域に向かうにつれて段階的に小さくなっていてもよい。上記構成によれば、第1領域から第N領域に向かうにつれて段階的に実効屈折率が小さくなるように複数の領域を配列することにより、テラヘルツ波用レンズを屈折率分布型レンズとして機能させることができる。
【0012】
第1領域から第N領域に向かうにつれて、各領域に属する凹凸構成部の高さが高くなっていてもよい。上記構成によれば、凹凸構成部の幅のみを領域毎に異ならせる場合と比較して、領域間で位相差を効率良く生じさせることができる。
【0013】
凹凸構成部は凸部であってもよく、第n領域(nは1からN-1までの任意の整数)と第n+1領域との境界近傍には、第n領域に対応する凹凸構成部の高さと第n+1領域に対応する凹凸構成部の高さとの間の高さを有する凹凸構成部が形成されていてもよい。上記構成によれば、互いに隣接する第n領域と第n+1領域との境界において、中間的な高さを有する凹凸構成部(凸部)が形成されることにより、凹凸構成部の高さの変化を緩やかにすることができる。これにより、領域が切り替わる境界において、位相差の変化を緩やかにすることができる。その結果、精度の良いレンズを得ることができる。
【0014】
複数の領域は、互いに隣接する領域間の位相差が第1位相差となるように設定された第1位相差領域と、互いに隣接する領域間の位相差が第1位相差よりも小さい第2位相差となるように設定された第2位相差領域と、を有してもよい。上記構成によれば、領域間の位相差を均等にする場合と比較して、位相分布設計を柔軟に行うことができる。
【0015】
凹凸構成部は凸部であり、凹凸構造のうち凹凸構成部の幅が予め定められた閾値以上である少なくとも一つの領域が、第2位相差領域とされていてもよい。また、凹凸構成部は凹部であり、凹凸構造のうち凹凸構成部の幅が予め定められた閾値以下である少なくとも一つの領域が、第2位相差領域とされていてもよい。また、少なくとも第1領域が第2位相差領域を構成していてもよい。上記構成によれば、例えば凹凸構造をエッチングによって形成する場合において、マイクロローディング効果が比較的顕著であり、予め設計された位相分布に応じた幅及び高さを有する凹凸構成部を精度良く作製することが難しい部分について、領域間の位相差の刻み幅を細かくすることにより、位相分布の設計値からのずれ(作製誤差)を補償することができる。
【0016】
凹凸構成部は、それぞれ複数の領域を1セット含む複数の繰り返し単位を有してもよく、複数の繰り返し単位は、所定方向に沿って配列されていてもよく、複数の繰り返し単位のうち少なくとも一つは、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように構成されていてもよい。レンズ効果を適切に得るためには、繰り返し単位が2π以上の幅を有する位相分布を有することが好ましい。一方、上述したマイクロローディング効果による作製誤差によって、繰り返し単位の位相分布の幅が2πより小さくなるおそれがある。上記構成によれば、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように構成された繰り返し単位において、実際の位相分布の幅が2πより小さくなる可能性を低減することができる。
【0017】
複数の領域の各々に対応する凹凸構成部の高さ及び幅は、凹凸構造と空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制可能な寸法とされていてもよい。上記構成によれば、凹凸構成部とは別に反射防止層を設ける必要がないため、テラヘルツ波用レンズの大型化を防ぎつつ、凹凸構造と空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制することができる。
【0018】
本開示の一側面に係るテラヘルツ波用レンズの製造方法は、テラヘルツ波を集光又はコリメートするテラヘルツ波用レンズの製造方法であって、テラヘルツ波の位相を変化させる凹凸構造のパターンを決定する第1工程と、平坦な基板の表面に、上記パターンに応じたエッチングマスクを形成する第2工程と、基板の表面にエッチングマスクが形成された状態で、基板に対する異方性エッチングを行うことにより、周期的に配置された凸部又は凹部からなる複数の凹凸構成部を有する凹凸構造を基板の表面に形成する第3工程と、エッチングマスクを基板の表面から除去する第4工程と、を含み、凹凸構造は、それぞれ凹凸構成部が複数配置された複数の領域を有し、凹凸構成部の基板の厚さ方向の高さ及び厚さ方向に直交する方向の幅は、領域毎に異なっており、互いに隣接する凹凸構成部の中心間の距離は一定である。
【0019】
上記製造方法によれば、上述した効果を奏するテラヘルツ波用レンズを製造することができる。また、エッチングマスクを用いて基板の表面をエッチングすることにより、エッチングマスクで覆われた部分(すなわち、エッチングにより削られない部分)の高さ位置を一定に揃えることができる。また、エッチングにおけるマイクロローディング効果を利用することにより、凹凸構成部の高さ及び幅の両方を領域毎に異ならせた構造を容易に製造することができる。
【0020】
第1工程において、凹凸構造のパターンを、複数の領域が、所定方向に沿って配列された第1領域~第N領域のN個(Nは2以上の整数)の領域からなり、複数の領域の各々の単位領域当たりのエッチング量が、第1領域から第N領域に向かうにつれて段階的に大きくなるように、決定してもよい。上記構成によれば、第1領域から第N領域に向かうにつれて段階的に実効屈折率が小さくなる複数の領域を形成することができ、屈折率分布型レンズとして機能するテラヘルツ波用レンズを得ることができる。
【0021】
第1工程は、凹凸構成部の幅とエッチング深さとの関係を示す情報を取得する工程と、関係を示す情報と予め定められた位相分布の設計値とに基づいて、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定する工程と、を含んでもよい。上記構成によれば、凹凸構成部の幅とエッチング深さとの関係(すなわち、マイクロローディング効果の影響の大きさ)を考慮して各領域の凹凸構成部の幅を決定することにより、マイクロローディング効果による作製誤差(設計値からのずれ)の発生を抑制することができる。
【0022】
第1工程において、複数の領域が第1位相差領域と第2位相差領域とを有するように、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定してもよい。第1位相差領域は、互いに隣接する領域間の位相差が第1位相差となるように設定された領域であり、第2位相差領域は、互いに隣接する領域間の位相差が第1位相差よりも小さい第2位相差となるように設定された領域である。上記構成によれば、領域間の位相差を均等にする場合と比較して、位相分布設計を柔軟に行うことができる。
【0023】
凹凸構成部は凸部であり、第1工程において、凹凸構造のうち凹凸構成部の幅が予め定められた閾値以上である少なくとも一つの領域が第2位相差領域となるように、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定してもよい。また、凹凸構成部は凹部であり、第1工程において、凹凸構造のうち凹凸構成部の幅が予め定められた閾値以下である少なくとも一つの領域が第2位相差領域となるように、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定してもよい。また、第1工程において、少なくとも第1領域及び第2領域が第2位相差領域を構成するように、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定してもよい。上記構成によれば、マイクロローディング効果が比較的顕著であり、予め設計された位相分布に応じた幅及び高さを有する凹凸構成部を精度良く作製することが難しい部分について、領域間の位相差の刻み幅を細かくすることにより、位相分布の設計値からのずれ(作製誤差)を補償することができる。
【0024】
第1工程において、凹凸構成部が、それぞれ複数の領域を1セット含む複数の繰り返し単位を有し、複数の繰り返し単位が、所定方向に沿って配列され、複数の繰り返し単位のうち少なくとも一つが、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定してもよい。上記構成によれば、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように構成された繰り返し単位において、実際の位相分布の幅が2πより小さくなる可能性が低減されたテラヘルツ波用レンズを得ることができる。
【0025】
第1工程において、複数の領域の各々に対応する凹凸構成部の高さ及び幅が凹凸構造と空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制可能な寸法となるように、各領域に配置される凹凸構成部の幅を決定してもよい。上記構成によれば、凹凸構成部とは別に反射防止層を設ける必要がないため、テラヘルツ波用レンズの大型化を防ぎつつ、凹凸構造と空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制することが可能なテラヘルツ波用レンズを得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一側面によれば、小型化を図りつつ収差の発生を抑制することができるテラヘルツ波用レンズ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、一実施形態のテラヘルツ波用レンズの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるテラヘルツ波用レンズの平面図である。
【
図3】
図3(A)はテラヘルツ波用レンズの凹凸構造の一部を示す平面図であり、
図3(B)は当該凹凸構造の一部の側断面図である。
【
図4】
図4は、凹凸構造の各領域に含まれるピラーの高さ及び直径を示す図である。
【
図5】
図5は、テラヘルツ波用レンズの製造工程を示す図である。
【
図6】
図6は、マイクロローディング効果によるピラー半径(ピラー間の間隙)とピラー高さとの関係の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、ピラー高さの不均一性から生じる位相ずれ(設計値からのずれ)を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の位相分布設計、通常の位相分布設計、及び理想的な位相分布を示す図である。
【
図9】
図9は、位相分布設計に対応する凹凸構造の一部を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、互いに隣接する領域の境界近傍における凹凸構造の一部を示す平面図である。
【
図11】
図11は、互いに隣接する領域の境界近傍における凹凸構造の一部のSEM画像である。
【
図12】
図12(A)は変形例に係る凹凸構造の一部を示す平面図であり、
図12(B)は当該変形例に係る凹凸構造の一部の側断面図である。
【
図13】
図13は、変形例に係る凹凸構造の各領域に含まれるホールの高さ及び幅を示す図である。
【
図14】
図14は、互いに隣接する領域の境界近傍における変形例に係る凹凸構造の一部を示す平面図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る凹凸構造の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0029】
[テラヘルツ波用レンズ]
図1、
図2、及び
図3に示されるように、一実施形態のテラヘルツ波用レンズ1は、テラヘルツ帯の電磁波(以下「テラヘルツ波」)に対して利用可能なテラヘルツ波用光学素子である。具体的には、テラヘルツ波用レンズ1は、所定周波数のテラヘルツ波を偏光方向に依存することなく透過させて、集光又はコリメートするレンズである。テラヘルツ波用レンズ1は、微細な誘電体凹凸構造配列を利用した平坦な光学素子(いわゆるメタレンズ)として構成されている。本実施形態では一例として、上記所定周波数は2.4THz(波長125μm)であり、テラヘルツ波用レンズ1の焦点距離は40mmである。
【0030】
テラヘルツ波用レンズ1は、円板状の基板2を備えている。基板2は、テラヘルツ領域において透明な材料(例えばシリコン等)によって形成されている。本実施形態では、基板2は、高抵抗シリコンによって形成されている。本実施形態では一例として、基板2の直径は45mmである。基板2の厚さは、例えば0.5mm~1mm程度である。基板2の厚さ方向Dに交差する基板2の一方の主面(表面)には、微細な凹凸構造3が形成されている。凹凸構造3は、凹凸構造3を透過するテラヘルツ波の位相を変化させる位相変調層として機能する。
【0031】
凹凸構造3は、周期的に配置された複数のピラー31(凹凸構成部)を有している。
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、本実施形態では一例として、ピラー31は、基板2の表面(後述する底部3b)に立設された円柱状の凸部として構成されている。
図3(A)に示されるように、複数のピラー31は、周期的に配置される。具体的には、複数のピラー31は、凹凸構造3の全体に亘って、互いに隣接するピラー31の中心間の距離(周期p)が一定となるように配置されている。本実施形態では、複数のピラー31は、格子状に配列されている。周期pは、動作対象のテラヘルツ波の波長(本実施形態では125μm)よりも小さい周期(サブ波長周期)となるように設定される。本実施形態では一例として、周期pは30μmである。以上のように、凹凸構造3は、面積が等しい周期構造(本実施形態では1つのピラー31を中央部に含む正方形の領域(
図3(A)の破線で囲まれた領域))によって構成される。
【0032】
複数のピラー31の上面によって、厚さ方向Dにおける凹凸構造3の外側端部3aが構成されている。凹凸構造3の外側端部3a(すなわち、複数のピラー31の上面)は、同一平面上に位置している。凹凸構造3は、複数のピラー31間(つまり、ピラー31が形成されていない部分)において、外側端部3aよりも内側に位置する底部3bを有している。ピラー31の上面(外側端部3a)と厚さ方向Dから見て当該ピラー31を取り囲む底部3bの部分との間の厚さ方向Dの長さのことを、ピラー31の高さh(
図3(B)参照)と定義する。
【0033】
図2に示されるように、凹凸構造3は、2π(単位はラジアン(rad)。以下の説明においては、位相差の単位(rad)の記載を適宜省略する。)以上の位相差をつけることが可能な繰り返し単位RUを面内に繰り返し配置した構造を有している。本実施形態では、凹凸構造3は、厚さ方向Dから見た基板2の中心Pから基板2の外縁に向かって径方向(所定方向)に沿って配列された複数の繰り返し単位RU
1~RU
Kを有している。ここで、Kは繰り返し回数(すなわち、凹凸構造3に含まれる繰り返し単位RUの個数)であり、2以上の整数である。中心Pを含む1つ目の繰り返し単位RU
1は、中心Pを中心とする円形状の領域である。2つ目以降の繰り返し単位RU
2~RU
Kは、中心Pを中心とする円環状の領域である。複数の繰り返し単位RUの幅(径方向の長さ)は、中心Pから離れるにつれて徐々に小さくなっている。このような繰り返し構造により、フレネルレンズと同様に、基板2の中心Pから径方向に沿って「2π×K」分の位相差をつけることができる。すなわち、微細な凹凸構造3を有する平坦な表面を備える基板2によって、球面レンズ及びフレネルレンズよりもレンズの厚みを抑えて小型化を図ることができる。また、高NAを有するレンズを実現することができる。
【0034】
各繰り返し単位RUは、基板2の中心P側から外縁側へと向かって径方向に沿って配列された複数の領域(第1領域~第N領域)を有している。ここで、Nは1つの繰り返し単位RUに含まれる領域の個数であり、2以上の整数である。本実施形態では一例として、Nは9である。すなわち、各繰り返し単位RUは、9つの領域A1~A9を有している。
図3(A)に示したように、各領域A1~A9には、複数のピラー31が周期的に配置されている。
【0035】
同一領域内に配置された複数のピラー31の厚さ方向Dの高さh及び厚さ方向Dに直交する方向の幅(本実施形態では、直径d(
図3(A)参照))は、設計上一致している。つまり、同一領域内においては、高さh及び直径dが均一化された複数のピラー31が周期的に配置されている。一方、同一の繰り返し単位RUの異なる領域間においては、ピラー31の高さh及び直径dは、互いに異なっている。すなわち、ピラー31の高さh及び直径dは、領域毎に異なっている。
【0036】
図4に示されるように、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9における基板2の材料(本実施形態では高抵抗シリコン)の充填率(すなわち、単位面積あたりのピラー31が占める面積)が小さくなるように、各領域A1~A9に属するピラー31の直径dが調整されている。すなわち、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9に属するピラー31の直径dは小さくなっている。このようなピラー31が形成された領域では、テラヘルツ波は、ピラー31部分(基板2の材料である高抵抗シリコンによって形成された部分)とピラー31の周囲の空気層(基板2の材料よりも低屈折率の層)との平均化された屈折率(実効屈折率)を感じることになる。上記のように各領域A1~A9に属するピラー31の直径d(すなわち、各領域A1~A9におけるシリコンの充填率)が調整されることにより、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9の実効屈折率が、段階的に小さくなっている。領域毎に実効屈折率を異ならせることにより、領域間で位相差をつけることができる。
【0037】
また、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9に属するピラー31の高さhは高くなっている。上述したように、複数のピラー31の上面(外側端部3a)の高さ位置(厚さ方向Dにおける位置)は揃っている。従って、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9の底部3bの高さ位置が、基板2の内側へと移動している。上記のようにピラー31の直径dを領域毎に異ならせることで各領域A1~A9の実効屈折率を異ならせつつ、さらに凹凸構造3の厚み(すなわち、ピラー31の高さh)を領域毎に異ならせることにより、領域間の位相差をより大きくすることができる。
【0038】
ピラー31の高さhは、例えば、動作対象のテラヘルツ波の1波長分(125μm)程度となるように設定される。ただし、後述するエッチング加工時に生じるマイクロローディング効果により、ピラー31の高さhは、領域A1~A9毎に異なっている。本実施形態では一例として、各繰り返し単位RUにおいて、ピラー31の高さhの最大値(すなわち、領域A9に属するピラー31の高さh)は、約120μmであり、ピラー31の高さhの最小値(すなわち、領域A1に属するピラー31の高さh)は、約95μmである。また、ピラー31の直径dの最大値(すなわち、領域A1に属するピラー31の直径d)は、約25μmであり、ピラー31の直径dの最小値(すなわち、領域A9に属するピラー31の直径d)は、約13μmである。
【0039】
図5に示されるように、上述した凹凸構造3は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて作製され得る。まず、凹凸構造3が形成される前のフラットな表面を有する基板2を用意する(S1)。続いて、基板2の表面にフォトレジストRを塗布する(S2)。続いて、予め設計された直径d及び分布を有する複数の円形パターン(すなわち、複数のピラー31が占める領域に対応するパターン)に応じたパターンが形成されたフォトマスクMを用いて、基板2上のフォトレジストRを露光する(S3)。これにより、フォトレジストRがネガ型である場合には、フォトレジストRの露光された部分が残り、フォトレジストRがポジ型である場合には、フォトレジストRの露光された部分が除去される。フォトレジストRがネガ型である場合には、上記複数の円形パターンに対応する位置のみ光を通すパターンが形成されたフォトマスクMを用いればよい。一方、フォトレジストRがポジ型である場合には、上記複数の円形パターンに対応する位置のみ遮光するパターンが形成されたフォトマスクMを用いればよい。以上の処理により、基板2上に残ったフォトレジストRによって、エッチングマスクが形成される。
【0040】
続いて、基板2上に残ったフォトレジストRをエッチングマスクとして用いて、異方性エッチング(異方性ドライエッチング)を行う(S5)。これにより、フォトレジストRで覆われていない基板2の部分(シリコン領域)が削られる。なお、
図5は、凹凸構造3の作製手順を模式的に示した図であり、エッチング深さをピラー31の直径に関わらず一定のものとして図示している。しかし、実際には、互いに隣接するピラー31間の間隙が狭い部分ほど、エッチング深さが浅くなる。この現象は、一般にマイクロローディング効果として知られている。本実施形態では、上述したように、凹凸構造3は、領域A1~A9毎に直径dだけでなく深さ(高さh)も異なるように構成されたピラー31群を有している。このように構成されたピラー31群は、マイクロローディング効果を利用することによって形成される。すなわち、各領域A1~A9に属するピラー31の直径dは、マイクロローディング効果による影響を予め考慮した上で決定されている。これにより、領域A1~A9毎に所望の位相差(すなわち、ピラー31の直径d及び高さhの組み合わせにより定まる位相差)を設定することができる。つまり、各領域A1~A9において、所望の位相差を得るために必要なピラー31の直径d及び高さhの組み合わせが得られるように、各領域A1~A9に属するピラー31の直径dが決定される。
【0041】
続いて、基板2上に残ったフォトレジストRを除去する(S6)。以上の処理により、基板2の表面に上述した凹凸構造3が形成され、テラヘルツ波用レンズ1が得られる。
【0042】
図6及び
図7を参照して、上述したマイクロローディング効果を考慮した設計(各領域A1~A9に属するピラー31の直径dの設計)について、より詳細に説明する。
図6は、本発明者が所定のエッチング条件を用いた実験によって得たピラー31の半径とエッチング深さ(高さ)との関係を示している。より具体的には、
図6は、ピラー31の半径が5μmである場合(すなわち、隣り合うピラー31間の間隙が20μmである場合)にエッチング深さが125μmとなるようなエッチング条件を用いて、5μm~12.5μmの範囲に含まれるピラー半径の複数のバリエーションに対してエッチングを行った結果(エッチング深さ)を示している。本実験に用いられたエッチング条件下では、ピラー31の半径が9μm以上(ピラー31間の間隙が12μm以下)の範囲において、マイクロローディング効果(すなわち、ピラー半径の変化量に対するピラー高さの変化量の割合)が顕著となることがわかった。
【0043】
予め上記製造工程(S5)で実施する予定のエッチングと同一のエッチング条件を用いて同一の加工対象(基板2)に対してエッチング(実験)を行うことにより、
図6に示されるようなピラー31の直径d(すなわち、ピラー31間の間隙)とマイクロローディング効果との関係を予め把握することができる。なお、このような関係は、本実施形態のように凹凸構造3におけるピラー31の周期pを一定にしていることによって一意に把握される。具体的には、上述したように、マイクロローディング効果の度合いは、互いに隣接するピラー31間の間隙に依存している。一方、本実施形態では、凹凸構造3におけるピラー31の周期pは一定とされているため、「隣り合うピラー31間の間隙=周期p-直径d」の関係が成り立っている。これにより、マイクロローディング効果の度合いとピラー31の直径dとを一対一に対応付けることができる。
【0044】
図7の破線は、ピラー31の半径に依らずに高さh(すなわちエッチング深さ)が一定(125μm)であると仮定して算出された位相差を示している。つまり、
図7の破線は、マイクロローディング効果の影響を考慮せずに算出された位相差を示している。なお、
図7における位相差は、半径5mm及び高さ125μmを有するピラー31が周期的に配置された領域の位相を基準(0rad)とした場合の位相差である。
【0045】
一方、
図7の実線は、マイクロローディング効果の影響を考慮して算出された位相差を示している。すなわち、
図6に示される関係とピラー31の半径とから得られるピラー31の高さhを用いて算出された位相差を示している。
【0046】
例えば、凹凸構造の材料(すなわち、エッチングにより削られる領域)と下地となる基板の材料とが異なる場合には、基板の表面でエッチングが停止することにより、凹凸構造を構成する各ピラーの高さは一定となる。このような場合には、マイクロローディング効果を考慮する必要はない。しかし、本実施形態のように、基板自体の表面に凹凸構造を形成する場合であって、マイクロローディング効果が顕著となる領域(
図6の例では、間隙が12μm以下となる領域)とマイクロローディング効果が顕著にならない領域(
図6の例では、間隙が12μm以上となる領域)とが混在する場合には、領域A1~A9間でピラー31の高さh(エッチング深さ)の差が生じる。すなわち、
図7に示されるように、マイクロローディング効果を無視して(すなわち、
図7の破線に基づいて)各領域A1~A9の位相差が所望の値となるように各領域A1~A9に属するピラー31の直径dを設定してしまうと、実際に得られる各領域A1~A9の位相差(すなわち、
図7の実線が示す位相差)が、所望の値からずれてしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、
図6に示されるようなピラー31の半径(或いは直径d)とエッチングにより得られるピラー31の高さhとの関係を示す情報を予め取得しておく。そして、上記関係を示す情報と予め定められた位相分布の設計値(すなわち、各領域A1~A9に割り当てる位相差)とに基づいて、各領域A1~A9に属するピラー31の直径dを決定する。すなわち、各領域A1~A9に属するピラー31の高さh及び直径dの組み合わせによって定まる各領域A1~A9の位相差が所望の値(設計値)となるように、各領域A1~A9に属するピラー31の直径dを決定する。そして、上述した製造工程において、このように決定された各領域A1~A9に属するピラー31の直径dが反映されたフォトマスクMを用いてエッチングマスク(基板2の表面に残るフォトレジストR)を形成し(
図5のS3及びS4)、異方性ドライエッチング(
図5のS5)を実行し、最後にエッチングマスクを除去する(
図5のS6)。これにより、設計通りの位相分布を有するテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。すなわち、各繰り返し単位RUにおいて、設計通りの位相分布を有する領域A1~A9を形成することができる。
【0048】
図8は、本実施形態の位相分布設計、通常の位相分布設計、及び理想的な位相分布を示す図である。
図8において一点鎖線で示される理想的な位相分布は、動作対象のテラヘルツ波の波長λ(本実施形態では125μm)、レンズの焦点距離f(本実施形態では40mm)、レンズの中心(中心P)からの距離r、及び下記式(1)に基づいて決定される。下記式(1)により決定される理想的な位相分布は、2π(≒6.28rad)毎に位相をラッピングしたものとなる。なお、
図8に示される位相差は、2π毎の繰り返し単位同士の境界に対応する位相差を基準(=0)とした場合の値である。
【数1】
【0049】
図8において破線で示される通常の位相分布設計では、理想的な位相分布を近似するように、2πが8個程度に分割され、それぞれに適したサブ波長構造が割り当てられる。すなわち、2π毎の繰り返し単位において、π/4刻みで8つの異なる位相差を有する領域が形成される。
【0050】
図8において実線で示される本実施形態の位相分布設計では、上述したように、9つの異なる位相差を有する領域A1~A9が形成されている。具体的には、繰り返し単位RU(複数の領域A1~A9の1セット分)は、互いに隣接する領域間の位相差がπ/4(第1位相差)となるように設定された第1位相差領域と、互いに隣接する領域間の位相差がπ/4よりも小さい位相差(第2位相差)となるように設定された第2位相差領域と、を有している。本実施形態では一例として、マイクロローディング効果が顕著ではない領域(本実施形態では一例として、領域A3~A9)が第1位相差領域として構成され、マイクロローディング効果が顕著である領域(本実施形態では一例として、領域A1,A2)が第2位相差領域として構成されている。
【0051】
マイクロローディング効果が顕著である領域とは、例えば、ピラー31の直径dが予め定められた閾値Δd以上となる領域(すなわち、ピラー31間の間隙が一定以下である領域)である。例えば、
図6の例では、上述したように、ピラー31の半径が9μm以上(すなわち、直径dが18μm以上)となる領域において、マイクロローディング効果が顕著となっている。このような場合、閾値Δdは、例えば18μmに設定され得る。
【0052】
上記のように、通常の位相分布設計では等分に位相分割が行われるのに対し、本実施形態の位相分布設計では、マイクロローディング効果が顕著となる領域において、マイクロローディング効果が顕著でない領域よりも位相分割数を増やしている。マイクロローディング効果が比較的顕著であり、予め設計された位相分布に応じた直径d及び高さhを有するピラー31を精度良く作製することが難しい部分について、領域間の位相差の刻み幅を細かくすることにより、位相分布の設計値からのずれ(作製誤差)を補償することができる。
【0053】
なお、上述したように、複数の繰り返し単位RUの幅(径方向の長さ)は、中心Pから離れるにつれて徐々に小さくなっている。すなわち、繰り返し単位RUに含まれる複数の領域の各々の幅は、中心Pから離れるにつれて徐々に小さくなっている。このため、例えば基板2の外縁近傍に存在し、幅が非常に小さい繰り返し単位RUにおいては、ピラー31の直径dが閾値Δd以上の領域であっても、位相分割数を増やすことが困難な場合がある。そのような繰り返し単位RUについては、必ずしもピラー31の直径dが所定値以上の領域で位相分割数を増やす必要はない。例えば、基板2の外縁近傍の繰り返し単位RUは、通常の位相分布設計通りに設計されたπ/4毎の位相差を有する8つの領域によって構成されてもよい。
【0054】
また、本実施形態の位相分布設計では、繰り返し単位RUは、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように構成されている。具体的には、通常の位相分布設計では、2π毎にラッピングされた理想的な位相分布(すなわち、2πの幅を有する位相分布)を近似するように、最大の位相差を有する領域(本実施形態の位相分布設計における領域A1,A2に対応する領域)の位相差は、2πに一致している。これに対して、本実施形態の位相分布設計では、最大の位相差を有する領域A1の位相差は、2πよりも大きくなるように、領域A1に属するピラー31の高さh及び直径dが調整されている。レンズ効果を適切に得るためには、繰り返し単位RUが2π以上の幅を有する位相分布を有することが好ましい。一方、上述したマイクロローディング効果による作製誤差によって、繰り返し単位RUの位相分布の幅が2πより小さくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、繰り返し単位RUが2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように構成されている。これにより、繰り返し単位RUの実際の位相分布の幅が2πより小さくなる可能性を低減することができる。
【0055】
本実施形態では一例として、領域A2は領域A3に対してπ/8の位相差が設定されており、領域A1は領域A2に対してπ/8とπ/4との間の大きさの位相差が設定されている。これにより、繰り返し単位RUは、領域A1~A9全体として、2πよりも大きい幅を有する位相分布を有している。
【0056】
図9は、上述したような位相分布設計に基づいて形成された凹凸構造3と位相差(位相分布)との対応関係を模式的に示す図である。
図9においては、ピラー31の直径dを実際よりも大きく図示している。このため、
図9に示される各領域A1~A9に属するピラー31の数(基板2の径方向に沿った本数)は、実際の数とは異なる。実際には、各領域A1~A9には、
図9に示される数よりも多くのピラー31が含まれている。
図9に示されるように、1つの繰り返し単位RUは、中心Pからの距離に応じて理想的な位相分布を近似するように、それぞれ異なる直径及び高さを有する複数のピラー31によって構成された複数の領域A1~A9を有している。
【0057】
図10は、1つの繰り返し単位RUにおいて、互いに隣接する領域A
n(第n領域)と領域A
n+1(第n+1領域)との境界近傍における凹凸構造3の一部を示す平面図である。ここで、nは1からN-1までの任意の整数である。ここで、領域A
nに対応するピラー31の直径をd
nとし、領域A
n+1に対応するピラー31の直径をd
n+1とし、領域A
n内において互いに隣接するピラー31間の間隙をG
nとし、領域A
n+1内において互いに隣接するピラー31間の間隙をG
n+1とし、領域A
n内のピラー31と領域A
n+1内のピラー31との間の間隙をG
mとすると、以下の式(2)~(4)が成り立つ。
G
n=p-d
n …(2)
G
n+1=p-d
n+1 …(3)
G
m=p-(d
n/2+d
n+1/2) …(4)
【0058】
ここで、直径d
nは直径d
n+1よりも大きい。よって、間隙G
n、G
n+1、G
mの大小関係は、「G
n<G
m<G
n+1」となる。すなわち、複数のピラー31の周期pが凹凸構造3の全体に亘って一定であるため、領域A
nと領域A
n+1との間には、領域A
nにおける間隙G
nと領域A
n+1における間隙G
n+1との間の中間的な大きさの間隙G
mが形成される。これにより、領域A
nと領域A
n+1との境界近傍で生じるマイクロローディング効果の大きさは、領域A
n内部で生じるマイクロローディング効果と領域A
n+1の内部で生じるマイクロローディング効果との間の大きさになる。その結果、互いに隣接する領域A
nと領域A
n+1との境界近傍には、領域A
nに対応するピラー31の高さと領域A
n+1に対応するピラー31の高さとの間の高さを有するピラー31が形成される。言い換えれば、領域A
nと領域A
n+1との境界近傍には、領域A
nの内部における底部3bの高さ位置と領域A
n+1の内部における底部3bの高さ位置との間の高さ位置を有する底部3bが形成される。
図11は、互いに隣接する領域の境界近傍における凹凸構造の一部のSEM画像である。当該SEM画像から把握されるように、ピラーの直径が変化する部分(すなわち、互いに隣接する領域の境界)付近において、底部の高さ位置は、段差状に急激に変化するのではなく、緩やかに変化している。上記構成によれば、互いに隣接する領域A
nと領域
n+1との境界において、ピラー31の高さの変化を緩やかにすることができる。これにより、領域が切り替わる境界において、位相差の変化を緩やか(連続的)にすることができる。その結果、精度の良いレンズを得ることができる。
【0059】
[凹凸構造の変形例]
次に、
図12~
図16を参照して、凹凸構造の変形例(凹凸構造3A)について説明する。凹凸構造3Aは、複数のピラー31の代わりに、複数のホール32(凹凸構成部)を有している点で、凹凸構造3と相違している。凹凸構造3Aの上記以外の構成は、凹凸構造3と同様である。すなわち、凹凸構造3Aは、凹凸構造3と同様に、複数の繰り返し単位RUと、各繰り返し単位RUに含まれる複数の領域A1~A9と、を有している。また、凹凸構造3Aにおける各領域A1~A9の位相分布設計は、上述した凹凸構造3の位相分布設計と同様である。すなわち、凹凸構造3Aは、基板2の表面にピラー(凸部)の代わりにホール(凹部)を設けることで、上述した凹凸構造3と同様の位相分布を実現するものである。
【0060】
本実施形態では一例として、ホール32は、基板2の表面に設けられた円柱状の凹部(有底孔)として構成されている。
図12(A)に示されるように、複数のホール32は、周期的に配置される。具体的には、複数のホール32は、凹凸構造3Aの全体に亘って、互いに隣接するホール32の中心間の距離(周期p)が一定となるように配置されている。周期pは、動作対象のテラヘルツ波の波長(本実施形態では125μm)よりも小さい周期(サブ波長周期)となるように設定される。凹凸構造3Aは、面積が等しい周期構造(本実施形態では1つのホール32を中央部に含む正方形の領域(
図12(A)の破線で囲まれた領域))によって構成される。
【0061】
凹凸構造3Aでは、基板2の表面のうちホール32が設けられていない部分によって、厚さ方向Dにおける凹凸構造3Aの外側端部3aが構成されている。凹凸構造3Aの外側端部3aは、同一平面上に位置している。具体的には、凹凸構造3Aの外側端部3aは、同一平面に沿って連続的に形成されている。凹凸構造3Aでは、各ホール32の底部によって、凹凸構造3Aの底部3bが構成されている。外側端部3aとホール32の底部(底部3b)との間の厚さ方向Dの長さのことを、ホール32の高さh(
図12(B)参照)と定義する。
【0062】
同一領域内に配置された複数のホール32の厚さ方向Dの高さh及び厚さ方向Dに直交する方向の幅(本実施形態では、直径d(
図12(A)参照))は、設計上一致している。つまり、同一領域内においては、高さh及び直径dが均一化された複数のホール32が周期的に配置されている。一方、同一の繰り返し単位RUの異なる領域間においては、ホール32の高さh及び直径dは、互いに異なっている。すなわち、ホール32の高さh及び直径dは、領域毎に異なっている。
【0063】
図13に示されるように、凹凸構造3Aでは、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9における基板2の材料(本実施形態では高抵抗シリコン)の充填率(すなわち、単位面積あたりのホール32以外の部分が占める面積)が小さくなるように、各領域A1~A9に属するホール32の直径dが調整されている。すなわち、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9に属するホール32の直径dは大きくなっている。このようなホール32が形成された領域では、テラヘルツ波は、ホール32が形成されていない部分(基板2の材料である高抵抗シリコンによって形成された部分)とホール32内の空気層(基板2の材料よりも低屈折率の層)との平均化された屈折率(実効屈折率)を感じることになる。上記のように各領域A1~A9に属するホール32の直径d(すなわち、各領域A1~A9におけるシリコンの充填率)が調整されることにより、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9の実効屈折率が、段階的に小さくなっている。
【0064】
また、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9に属するホール32の高さhは高くなっている。すなわち、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9の底部3bの高さ位置が、基板2の内側へと移動している。上記のようにホール32の直径dを領域毎に異ならせることで各領域A1~A9の実効屈折率を異ならせつつ、さらに凹凸構造3Aの厚み(すなわち、ホール32の高さh)を領域毎に異ならせることにより、領域間の位相差をより大きくすることができる。
【0065】
ホール32の高さhは、例えば、動作対象のテラヘルツ波の1波長分(125μm)程度に設定される。ただし、後述するエッチング加工時に生じるマイクロローディング効果により、ホール32の高さhは、領域A1~A9毎に異なっている。本実施形態では一例として、各繰り返し単位RUにおいて、ホール32の高さhの最大値(すなわち、領域A9に属するホール32の高さh)は、約125μmであり、ホール32の高さhの最小値(すなわち、領域A1に属するホール32の高さh)は、約95μmである。また、ホール32の直径dの最大値(すなわち、領域A9に属するホール32の直径d)は、約25μmであり、ホール32の直径dの最小値(すなわち、領域A1に属するホール32の直径d)は、約11μmである。
【0066】
凹凸構造3Aは、凹凸構造3と同様に、上述したフォトリソグラフィ技術を用いて作製され得る。すなわち、凹凸構造3Aは、凹凸構造3と同様に、
図5に示した手順によって作製され得る。凹凸構造3では、ピラー31に対応する部分以外の部分がエッチングによって削られるのに対して、凹凸構造3Aでは、ホール32に対応する部分がエッチングによって削られる。
【0067】
凹凸構造3Aを用いる場合についても、凹凸構造3を用いる場合と同様に、マイクロローディング効果を考慮した設計(各領域A1~A9に属するホール32の直径dの設計)を行うことができる。具体的には、
図6に示されるピラー31の半径とエッチング深さ(エッチングにより得られるピラー31の高さ)との関係を示す情報の代わりに、ホール32の半径(或いは直径d)とエッチング深さ(エッチングにより得られるホール32の高さ)との関係を示す情報を、実験等によって予め取得すればよい。そして、上記関係を示す情報と予め定められた位相分布の設計値(すなわち、各領域A1~A9に割り当てる位相差)とに基づいて、各領域A1~A9に属するホール32の直径dを決定する。すなわち、各領域A1~A9に属するホール32の高さh及び直径dの組み合わせによって定まる各領域A1~A9の位相差が所望の値(設計値)となるように、各領域A1~A9に属するホール32の直径dを決定する。そして、上述した製造工程において、このように決定された各領域A1~A9に属するホール32の直径dが反映されたフォトマスクMを用いてエッチングマスク(基板2の表面に残るフォトレジストR)を形成し(
図5のS3及びS4)、異方性ドライエッチング(
図5のS5)を実行し、最後にエッチングマスクを除去する(
図5のS6)。これにより、設計通りの位相分布を有するテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。すなわち、各繰り返し単位RUにおいて、設計通りの位相分布を有する領域A1~A9を形成することができる。
【0068】
図14は、1つの繰り返し単位RUにおいて、互いに隣接する領域A
n(第n領域)と領域A
n+1(第n+1領域)との境界近傍における凹凸構造3Aの一部を示す平面図である。ここで、nは1からN-1までの任意の整数である。凹凸構造3Aでは、エッチングにより削られる領域(すなわち、各ホール32の内部)が、空間的に分離されている。つまり、ピラー構造の凹凸構造3では、エッチングにより削られる領域が連続していたのに対して、ホール構造の凹凸構造3Aでは、エッチングにより削られる領域が互いに分離されている。このため、上述した凹凸構造3(
図10参照)とは異なり、互いに隣接する領域A
nと領域A
n+1との近傍において、中間的な高さを有するホール32は形成されない。このため、凹凸構造3Aは、上述した凹凸構造3のように1つの繰り返し単位RU内で互いに隣接する領域間の位相差の変化を緩やかにする効果を奏さない。
【0069】
一方で、互いに隣接する繰り返し単位RU同士の境界(すなわち、繰り返し単位RUが切り替わる境界)においては、
図8に示される理想的な位相分布の繰り返し単位RU間の境界部分のように、位相差を段差状に急激に変化させることが好ましい。従って、凹凸構造3Aによれば、互いに隣接する繰り返し単位RU同士の境界において、より好ましい位相差の変化(すなわち、段差状の変化)を実現することができる。
【0070】
図15は、上述したような位相分布設計に基づいて形成された凹凸構造3Aを模式的に示す図である。
図15においては、ホール32の直径dを実際よりも大きく図示している。このため、
図15に示される各領域A1~A9に属するホール32の数(基板2の径方向に沿った本数)は、実際の数とは異なる。実際には、各領域A1~A9には、
図15に示される数よりも多くのホール32が含まれている。
【0071】
次に、凹凸構造3,3Aと空気との界面(すなわち、外側端部3aが沿った面)におけるテラヘルツ波の反射を抑制する機能(以下「無反射機能」という。)を実現するための構成について説明する。このような構成は、凹凸構造3,3Aにおいて領域A1~A9毎に凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の直径dだけでなく高さhも変化させることができる点を利用することにより実現される。以下の説明では、
図15に示される凹凸構造3Aを用いる場合について説明する。
【0072】
以下の説明において、各パラメータの意味は以下の通りである。
・λ:動作対象のテラヘルツ波の波長
・p:ホール32の周期(隣り合うホール32の中心間の距離)
・r1:領域A1のホール半径(ホール32の半径)
・ri:領域Ai(i≧2)のホール半径
・h1:領域A1の高さ(領域A1に含まれるホール32の高さ)
・hi:領域Aiの高さ(領域Aiに含まれるホール32の高さ)
・nAir:空気層の屈折率
・nsub:基板2の材料(高抵抗シリコン)で充填された部分(すなわち、基板2において凹凸構造3A(ホール32)が形成されていない部分)の屈折率
・neff1:領域A1の実効屈折率
・neffi:領域Aiの実効屈折率
【0073】
ホール半径r
1をある任意の値に定めた場合において、下記式(5)に基づいて高さh
1を設定することにより、領域A1において無反射機能を実現することができる。
【数2】
【0074】
ここで、領域A1の実効屈折率n
eff1は、領域A1のホール半径r
1によって、下記式(6)に基づいて定められる。
【数3】
【0075】
つまり、領域A1が無反射機能を実現するための高さh1は、ホール半径r1により決定される。上記を前提として、任意の領域Aiにおいて領域A1に対して所望の位相差φiを有し、且つ、無反射機能を実現できるホール半径riを、以下のようにして求めることができる。
【0076】
まず、領域A1で生じる位相変調量は、下記式(7)により表される。また、領域Aiで生じる位相変調量は、下記式(8)により表される。
【数4】
【0077】
上記式(7)及び(8)から、所望の位相差φ
iは、下記式(9)により表される。
【数5】
【0078】
上記式(9)を変形することにより、下記式(10)が得られる。
【数6】
【0079】
ここで、n
effiは上記式(6)で表されることから、ホール半径r
iの関数「n
eff(r
i)」として表すことができる。さらに、領域Aiにおけるマイクロローディング効果(ここでは、マイクロローディング効果によって生じる領域Aiの高さと領域A1の高さとの差)についても、領域Aiのホール半径r
iの関数「M.l(r
i)」として表すことができる。すなわち、下記式(11)のように表すことができる。
【数7】
【0080】
よって、上記式(10)及び(11)により、下記式(12)が得られる。
【数8】
【0081】
ここで、h
1及びn
subは定数であるため、上記式(12)の左辺は、ホール半径r
iによって値が定まる関数「G(r
i)」として表すことができる。すなわち、上記式(12)は、下記式(13)のように表される。
【数9】
【0082】
従って、領域Aiのホール半径r
iを上記式(13)を満たすように設定することにより、領域Aiにおいて、領域A1に対して所望の位相差φ
iを有し、且つ、無反射機能を実現することができる。すなわち、上記例では、まず領域A1のホール半径r
1と高さh
1との組み合わせが、上記式(5)を満たすように決定される。上記の組み合わせを得るためのホール半径r
1は、マイクロローディング効果を考慮して決定される。具体的には、予め取得されたホール半径とエッチング深さとの関係を示す情報(
図6に示した情報に対応する情報)に基づいて、ホール半径r
1を決定することができる。続いて、各領域A2~A9のホール半径r
iが、上記式(13)を満たすように決定される。そして、このようにして決定されたホール半径r
iが反映されたフォトマスクMを用いて上述した処理(
図5のS3~S6)を実施することにより、各領域A1~A9において無反射機能を有するテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。
【0083】
なお、ここでは、凹凸構造3Aを用いる場合について説明したが、凹凸構造3を用いる場合についても、上記と同様の考え方に基づいて、各領域A1~A9において、無反射機能を実現することができる。具体的には、凹凸構造3を用いる場合においては、領域A
iのピラー31の半径の関数を左辺とする、上記式(13)に類似する式を導出することができる。そして、当該式を満たすようなピラー31の半径を領域毎に算出し、算出されたピラー31の半径が反映されたフォトマスクMを用いて上述した処理(
図5のS3~S6)を実施することにより、各領域A1~A9において無反射機能を有するテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。
【0084】
[作用効果]
以上説明したテラヘルツ波用レンズ1では、凹凸構造3,3Aを構成する凹凸構成部(凹凸構造3の場合にはピラー31、凹凸構造3Aの場合にはホール32)の高さh及び直径dが領域A1~A9毎に異なっている。これにより、基板2を透過するテラヘルツ波に対して領域A1~A9毎に異なる位相差をつけることができる。また、表面に凹凸構造3,3Aが形成された基板2を用いることにより、球面レンズ等と比較してレンズの厚みを低減できるため、レンズの小型化を図ることができる。さらに、厚さ方向Dにおける凹凸構造3,3Aの外側端部3aの高さ位置が揃っていることにより、収差の発生を抑制することができる。
【0085】
また、テラヘルツ波用レンズ1では、互いに隣接する凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の中心間の距離(周期p)が一定であることにより、凹凸構成部の配置設計が容易となる。具体的には、凹凸構成部の周期pを一定とした場合、上述したような面積が一定の周期構造(本実施形態では、1つの凹凸構成部を中央部に含む正方形の領域)を規則的に(本実施形態では格子状に)平面上に配置すればよいため、凹凸構成部のレイアウトを容易に設計することができる。一方、凹凸構成部の周期pが一定ではない場合(例えば、凹凸構成部の直径dに応じて周期pを異ならせた場合)、領域A1~A9毎に上述した周期構造の大きさが異なってしまう。この場合、領域が切り替わる境界付近において隙間(異なる大きさの周期構造間の隙間)が生じてしまい、当該隙間の部分において実効屈折率(位相差)が設計値からずれてしまうおそれがある。また、領域A1~A9毎に異なる大きさの周期構造が混在する状況において、このような隙間が生じない(或いは隙間が極力少ない)周期構造の最適配置を見つけることは困難である。周期pを一定にすることにより、このような問題を回避することができる。
【0086】
また、凹凸構成部がピラー31である場合(すなわち、テラヘルツ波用レンズ1が凹凸構造3を備える場合)、ピラー31の直径dが大きいほど、ピラー31の高さhが低くなっている(
図4参照)。上記構成によれば、エッチングにおけるマイクロローディング効果を利用することにより、領域A1~A9毎にピラー31の高さh及び直径dが異なる凹凸構造3を容易に形成することができる。
【0087】
また、凹凸構成部がホール32である場合(すなわち、テラヘルツ波用レンズ1が凹凸構造3Aを備える場合)、ホール32の直径dが大きいほど、ホール32の高さhが高くなっている(
図13参照)。上記構成によれば、エッチングにおけるマイクロローディング効果を利用することにより、領域A1~A9毎にホール32の高さh及び直径dが異なる凹凸構造3Aを容易に形成することができる。
【0088】
また、1つの繰り返し単位RUに含まれる複数の領域は、所定方向(本実施形態では、円板状の基板2の径方向)に沿って配列された領域A1から領域A9の9個の領域からなる。そして、複数の領域A1~A9の各々の実効屈折率は、領域A1から領域A9に向かうにつれて段階的に小さくなっている。上記構成によれば、領域A1から領域A9に向かうにつれて段階的に実効屈折率が小さくなるように複数の領域を配列することにより、テラヘルツ波用レンズ1を屈折率分布型レンズとして機能させることができる。
【0089】
また、領域A1から領域A9に向かうにつれて、各領域A1~A9に属する凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の高さhが高くなっている。上記構成によれば、凹凸構成部の直径dのみを領域A1~A9毎に異ならせる場合と比較して、領域A1~A9間で位相差を効率良く生じさせることができる。
【0090】
また、複数の領域A1~A9は、互いに隣接する領域間の位相差が第1位相差となるように設定された第1位相差領域(本実施形態では領域A3~A9)と、互いに隣接する領域間の位相差が第1位相差よりも小さい第2位相差となるように設定された第2位相差領域(本実施形態では領域A1,A2)と、を有する。上記構成によれば、領域間の位相差を均等にする場合(
図8に示される通常の位相分布設計)と比較して、位相分布設計を柔軟に行うことができる。
【0091】
また、凹凸構成部がピラー31である場合(すなわち、テラヘルツ波用レンズ1が凹凸構造3を備える場合)、凹凸構造3のうちピラー31の直径dが予め定められた閾値Δd以上である少なくとも一つの領域(本実施形態では、領域A1,A2)が、第2位相差領域とされてもよい。同様の考え方によって、凹凸構成部がホール32である場合(すなわち、テラヘルツ波用レンズ1が凹凸構造3Aを備える場合)、凹凸構造3Aのうちホール32の直径dが予め定められた閾値以下である少なくとも一つの領域が、第2位相差領域とされてもよい。上記構成によれば、マイクロローディング効果が比較的顕著であり、予め設計された位相分布に応じた直径d及び高さhを有する凹凸構成部(ピラー31又はホール32)を精度良く作製することが難しい部分において、領域間の位相差の刻み幅を細かくすることにより、位相分布の設計値からのずれ(作製誤差)を補償することができる。
【0092】
また、複数の領域A1~A9の各々に対応する凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の高さh及び直径dは、凹凸構造3,3Aと空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制可能な寸法とされている。上記構成によれば、凹凸構成部とは別に反射防止層を設ける必要がないため、テラヘルツ波用レンズ1の大型化を防ぎつつ、凹凸構造3,3Aと空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制することができる。
【0093】
また、上述したように、本実施形態に係るテラヘルツ波用レンズ1の製造方法は、凹凸構造3,3Aのパターンを決定する第1工程(
図6及び
図7等を用いて説明したマイクロローディング効果を考慮した設計)と、平坦な基板2の表面に、上記パターンに応じたエッチングマスク(フォトレジストR)を形成する第2工程(
図5のS2~S4参照)と、基板2の表面にエッチングマスクが形成された状態で、基板2に対する異方性エッチングを行うことにより、凹凸構造3,3Aを基板2の表面に形成する第3工程(
図5のS5参照)と、エッチングマスクを基板2の表面から除去する第4工程(
図5のS6参照)と、を含んでいる。上記製造方法によれば、上述した効果を奏するテラヘルツ波用レンズ1を製造することができる。また、エッチングマスクを用いて基板2の表面をエッチングすることにより、エッチングマスクで覆われた部分(すなわち、エッチングにより削られない部分)の高さ位置(外側端部3a)を一定に揃えることができる。また、エッチングにおけるマイクロローディング効果を利用することにより、凹凸構成部の高さh及び直径dの両方を領域毎に異ならせた構造を容易に製造することができる。
【0094】
また、上記第1工程において、凹凸構造3,3Aのパターンは、複数の領域A1~A9の各々の単位領域当たりのエッチング量が、領域A1から領域A9に向かうにつれて段階的に大きくなるように、決定される。すなわち、凹凸構造3が用いられる場合には、凹凸構造3のパターンは、領域A1から領域A9に向かうにつれて、ピラー31の直径dが小さくなるように決定される(
図4参照)。また、凹凸構造3Aが用いられる場合には、凹凸構造3Aのパターンは、領域A1から領域A9に向かうにつれて、ホール32の直径dが大きくなるように決定される。上記構成によれば、領域A1から領域A9に向かうにつれて段階的に実効屈折率が小さくなる複数の領域A1~A9を形成することができ、屈折率分布型レンズとして機能するテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。
【0095】
また、上記第1工程は、凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の直径dとエッチング深さとの関係を示す情報(
図6参照)を取得する工程と、上記関係を示す情報と予め定められた位相分布の設計値(
図8における実施形態の位相分布設計)とに基づいて、各領域A1~A9に配置される凹凸構成部の直径dを決定する工程と、を含む。上記構成によれば、凹凸構成部の直径dとエッチング深さとの関係(すなわち、マイクロローディング効果の影響の大きさ)を考慮して各領域A1~A9の凹凸構成部の直径dを決定することにより、マイクロローディング効果による作製誤差(設計値からのずれ)の発生を抑制することができる。
【0096】
また、上記第1工程において、複数の領域A1~A9が第1位相差領域(本実施形態ではπ/4刻みで位相差が設定された領域)と第2位相差領域(π/4よりも細かい位相差が設定された領域)とを有するように、各領域A1~A9に配置される凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の直径dが決定される。上記構成によれば、領域A1~A9間の位相差を均等にする場合と比較して、位相分布設計を柔軟に行うことができる。
【0097】
また、凹凸構造3が用いられる場合、上記第1工程において、凹凸構造3のうちピラー31の直径dが予め定められた閾値Δd以上である少なくとも一つの領域(本実施形態では、領域A1,A2)が第2位相差領域となるように、各領域A1~A9に配置されるピラー31の直径dが決定されてもよい。また、凹凸構造3Aが用いられる場合、上記第1工程において、凹凸構造3Aのうちホール32の直径dが予め定められた閾値以下である少なくとも一つの領域が第2位相差領域となるように、各領域A1~A9に配置されるホール32の直径dが決定されてもよい。また、上記第1工程において、少なくとも領域A1が第2位相差領域を構成するように、各領域A1~A9に配置される凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の直径dが決定されてもよい。上記構成によれば、マイクロローディング効果が比較的顕著であり、予め設計された位相分布に応じた直径d及び高さhを有する凹凸構成部を精度良く作製することが難しい部分について、領域A1~A9間の位相差の刻み幅を細かくすることにより、位相分布の設計値からのずれ(作製誤差)を補償することができる。
【0098】
また、上記第1工程において、複数の繰り返し単位RUのうち少なくとも一つが、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように、各領域A1~A9に配置される凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の直径dが決定される。上記構成によれば、2πよりも大きい幅を有する位相分布となるように構成された繰り返し単位RUにおいて、実際の位相分布の幅が2πより小さくなる可能性が低減されたテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。
【0099】
また、上記第1工程において、複数の領域A1~A9の各々に対応する凹凸構成部(ピラー31又はホール32)の高さh及び直径dが凹凸構造3,3Aと空気との界面におけるテラヘルツ波の反射を抑制可能な寸法となるように、各領域A1~A9に配置される凹凸構成部の直径dが決定される。上記構成によれば、各領域A1~A9において上述した無反射機能が奏されるテラヘルツ波用レンズ1を得ることができる。
【0100】
[変形例]
以上、本開示の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。例えば、各構成の材料及び形状は、上述した例に限られない。
【0101】
また、凹凸構造3において、ピラー31は、円柱状でなくてもよい。例えば、凹凸構造3は、角柱状(例えば四角柱状)のピラーを備えてもよい。この場合、直径dの代わりにピラーの一辺の長さをピラーの幅として用いればよい。同様に、凹凸構造3Aにおいて、ホール32は、円柱状でなくてもよい。例えば、凹凸構造3Aは、角柱状(例えば四角柱状)のホールを備えてもよい。この場合、直径dの代わりにホールの一辺の長さをホールの幅として用いればよい。
【0102】
また、複数の凹凸構成部(ピラー31又はホール32)によって構成される面積が等しい周期構造は、必ずしも正方形の領域でなくてもよい。例えば、複数の凹凸構成部は、三角格子状に配置されてもよい。この場合、面積が等しい周期構造は、正六角形状の領域となる。
【0103】
また、互いに隣り合う凹凸構成部の中心間の距離(周期p)は、必ずしも一定でなくてもよい。ただし、凹凸構成部の中心間の距離を一定にすることにより、上述したように、凹凸構成部の配置設計が容易になるという利点がある。
【0104】
また、凹凸構造3は、ピラー31の代わりに
図16に示されるピラー31Aを備えてもよい。ピラー31Aは、ピラー31と同様の円柱状の部分31bを有すると共に、基板2のうち凹凸構造3を除いた部分(以下、単に「基板2」という。)と部分31bとの間に配置される部分31aと、部分31bの外側(部分31a側とは反対側)に配置される部分31cと、を有している。部分31bは、ピラー31と同様に位相変調層R2として機能する部分である。一方、部分31a及び部分31cは、モスアイ構造を有することにより、反射防止層R1,R3として機能する部分である。具体的には、部分31aは、基板2側から部分31b側に向かって先細りとなる円錐台状に形成されている。部分31cは、部分31b側から外側(空気層側)に向かって先細りとなる円錐状に形成されている。部分31aにより、基板2と位相変調層R2との境界におけるテラヘルツ波の反射を抑制することができる。部分31cにより、位相変調層R2と空気層との境界におけるテラヘルツ波の反射を抑制することができる。なお、部分31bは、角柱状(例えば四角柱状)に形成されてもよい。この場合、部分31aは角錐台状に形成され、部分31cは角錐状に形成されてもよい。
【0105】
また、凹凸構造3Aは、ホール32の代わりに
図17に示されるホール32Aを備えてもよい。ホール32Aは、ホール32と同様の円柱状の部分32bを有すると共に、基板2のうち凹凸構造3Aを除いた部分(以下、単に「基板2」という。)と部分32bとの間に配置される部分32aと、部分32bの外側(部分32a側とは反対側)に配置される部分32cと、を有している。部分32bは、ホール32と同様に位相変調層R2として機能する部分である。一方、部分32a及び部分32cは、モスアイ構造を有することにより、反射防止層R1,R3として機能する部分である。具体的には、部分32aは、部分32b側から基板2側に向かって先細りとなる円錐状に形成されている。部分32cは、外側(空気層側)から部分32b側に向かって先細りとなる円錐台状に形成されている。部分32aにより、基板2と位相変調層R2との境界におけるテラヘルツ波の反射を抑制することができる。部分32cにより、位相変調層R2と空気層との境界におけるテラヘルツ波の反射を抑制することができる。なお、部分32bは、角柱状(例えば四角柱状)に形成されてもよい。この場合、部分32aは角錐台状に形成され、部分32cは角錐状に形成されてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、レンズ中心(中心P)に対して同心円状に複数の繰り返し単位RUが配列されるテラヘルツ波用レンズ1を例示したが、本開示に係るテラヘルツ波用レンズの形態は上記形態に限られない。例えば、本開示に係るテラヘルツ波用レンズは、シリンドリカルレンズのように一軸方向にのみレンズ機能を発揮するものであってもよい。例えば、繰り返し単位RU及び繰り返し単位RUに含まれる複数の領域A1~A9は、それぞれ矩形状に形成され、一軸方向に沿って配列されてもよい。
【0107】
また、上記実施形態ではテラヘルツ波用光学素子の一例として、凸レンズとして機能するテラヘルツ波用レンズを例示したが、上述した基板及び凹凸構造を備えるテラヘルツ波用レンズは、当該凹凸構造における実効屈折率の分布(すなわち、複数の凹凸構成部の形状及び配置)が調整されることにより、凹レンズとして機能してもよい。また、上述した基板及び凹凸構造を備えるテラヘルツ波用光学素子は、テラヘルツ波用レンズに限られない。例えば、本開示に係るテラヘルツ波用光学素子は、偏光板、波長板、回折格子等のレンズ以外の光学素子であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…テラヘルツ波用レンズ(テラヘルツ波用光学素子)、2…基板、3,3A…凹凸構造、3a…外側端部、31,31A…ピラー(凹凸構成部、凸部)、32,32A…ホール(凹凸構成部、凹部)、A1~A9…領域、D…厚さ方向、RU…繰り返し単位。