(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】信号処理装置、光電変換装置、光電変換システム、撮像装置、および、移動体
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20240318BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20240318BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H04N25/78
H03M1/08 A
H03M1/12 C
(21)【出願番号】P 2019233226
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】島田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】識名 紀之
(72)【発明者】
【氏名】竹中 真太郎
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146849(JP,A)
【文献】特開2017-005392(JP,A)
【文献】特開2015-076786(JP,A)
【文献】特開2010-252267(JP,A)
【文献】特開2011-024109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/78
H03M 1/08
H03M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのアナログ信号に対して複数のアナログデジタル変換を行い、少なくとも、第1のデジタル信号および第2のデジタル信号を含む複数のデジタル信号、第1のノイズデジタル信号、および第2のノイズデジタル信号を生成するアナログデジタル変換部と、
前記複数のデジタル信号の少なくとも1つに対して判定を行い、前記判定の対象となるデジタル信号と閾値とを比較する比較器を備える判定部と、
前記第1のデジタル信号および前記第2のデジタル信号を用いて演算を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、前記第1のデジタル信号
と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく信号および前記第2のデジタル信号
と前記第2のノイズデジタル信号との差分に基づく信号を平均化する処理または加算する処理を含む演算を行って第1の演算結果を生成し、
前記演算部は、前記第1のデジタル信号と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく第2の演算結果を生成し、
前記演算部は、前記比較器による比較の結果に応じて、前記第1の演算結果を出力するか、前記第2の演算結果を出力するかを切り換える、
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記判定の対象となるデジタル信号の信号値が飽和レベルに達していることを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記判定の対象となるデジタル信号がエラーを含むか否か、あるいは、前記判定の対象となるデジタル信号がエラーを含む確率を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、機械学習またはディープラーニングによって生成された学習モデルを用いて前記判定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記複数のデジタル信号の一部に対して前記判定を行い、前記複数のデジタル信号の他の一部に対しては前記判定を行わない、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記1つのアナログ信号は前記アナログデジタル変換部の有する複数のアナログデジタル変換回路に入力される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記1つのアナログ信号に対してオフセットを付加するオフセット付加部を備え、
前記オフセット付加部は、互いに異なる値のオフセットの付加された2つのアナログ信号を出力し、
前記アナログデジタル変換部は、前記2つのアナログ信号のそれぞれに対してアナログデジタル変換を行うことで、前記複数のアナログデジタル変換を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記第2のデジタル信号は、前記第1のデジタル信号の信号値より大きい信号値を持ち、
前記判定部は、第2のデジタル信号と前記閾値との比較を行い、前記第1のデジタル信号に対しては前記判定を行わない、
ことを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記1つのアナログ信号に対してオフセットを付加するオフセット付加部を備え、
前記オフセット付加部は、第1の値のオフセットの付加された第1のオフセット信号と、前記第1の値より大きい第2の値のオフセットの付加された第2のオフセット信号と、を出力し、
前記アナログデジタル変換部は、前記第1のオフセット信号に対してアナログデジタル変換を行うことで、前記第1のデジタル信号を生成し、
前記アナログデジタル変換部は、前記第2のオフセット信号に対してアナログデジタル変換を行うことで、前記第2のデジタル信号を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記判定部による前記判定の結果に基づいて、前記複数のデジタル信号に対して平均化処理を行った結果を出力するか、前記複数のデジタル信号のうちの一部だけを用いた演算の結果を出力するかを変更する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項11】
光電変換素子と、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の信号処理装置と、を備え、
前記光電変換素子で生じた電荷に基づくアナログ信号が、前記アナログデジタル変換部に入力される、
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号を処理する信号処理装置と、を備える、
ことを特徴とする光電変換システム。
【請求項13】
移動体であって、
請求項12に記載の光電変換システムと、
前記光電変換システムによって取得された画像信号に基づいて前記移動体を制御する制御手段と、を有する、
ことを特徴とする移動体。
【請求項14】
複数の行および複数の列を含む行列を構成するように配置された複数の画素を含む画素部と、
前記画素部の第1の画素が生成する入射光に基づく1つの信号に対して複数のアナログデジタル変換を行い、少なくとも第1のデジタル信号および第2のデジタル信号を生成するとともに、前記第1の画素の生成する1つのノイズ信号に対して複数のアナログデジタル変換を行い、少なくとも第1のノイズデジタル信号および第2のノイズデジタル信号を生成するアナログデジタル変換部と、
少なくとも前記第2のデジタル信号を閾値と比較する比較器と、
前記第1のデジタル信号および前記第2のデジタル信号を用いて演算を行う演算部と、を備え、
前記演算部は、前記第1のデジタル信号
と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく信号および前記第2のデジタル信号
と前記第2のノイズデジタル信号との差分に基づく信号を平均化する処理または加算する処理を含む演算を行って第1の演算結果を生成し、
前記演算部は、前記第1のデジタル信号と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく第2の演算結果を生成し、
前記演算部は、前記比較器による比較の結果に応じて、前記第1の演算結果を出力するか、前記第2の演算結果を出力するかを切り換える、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
前記演算部は、前記第1のデジタル信号および前記第2のデジタル信号を平均化する処理または加算する処理を含む演算を行う
ことを特徴とする請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記第1のデジタル信号に第1の値のオフセットを付加し、前記第2のデジタル信号に前記第1の値より大きい第2の値のオフセットを付加するオフセット付加部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項14または15に記載の撮像装置。
【請求項17】
第1の信号線および第2の信号線を含む複数の信号線と、
前記複数の信号線の信号から1つまたは複数の信号を選択して、前記アナログデジタル変換部に出力する選択部と、を備え、
前記複数の列の1つの列が、前記第1の画素と前記第1の画素とは別の第2の画素とを含み、
前記アナログデジタル変換部は、第1のアナログデジタル変換回路と第2のアナログデジタル変換回路とを含み、
前記選択部は、第1のモードにおいて、前記第1の画素から前記第1の信号線に出力された信号を前記第1のアナログデジタル変換回路へ出力し、かつ、前記第2の画素から前記第2の信号線に出力された信号を並行して前記第2のアナログデジタル変換回路へ出力し、
前記選択部は、第2のモードにおいて、前記第1の画素から出力された信号を、前記第1のアナログデジタル変換回路および前記第2のアナログデジタル変換回路の両方に出力する、
ことを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記複数の信号線は、さらに第3の信号線および第4の信号線を含み、
前記複数の列の前記1つの列が、さらに第3の画素および第4の画素を含み、
前記アナログデジタル変換部は、さらに第3のアナログデジタル変換回路および第4のアナログデジタル変換回路を含み、
前記選択部は、前記第1のモードにおいて、前記第1の画素から前記第1の信号線に出力された信号、前記第2の画素から前記第2の信号線に出力された信号、前記第3の画素から前記第3の信号線に出力された信号、および、前記第4の画素から前記第4の信号線に出力された信号を、それぞれ、前記第1乃至前記第4のアナログデジタル変換回路へ個別に出力し、
前記選択部は、前記第2のモードにおいて、
第1の期間に、前記第1の画素の信号を、前記第1のアナログデジタル変換回路および前記第2のアナログデジタル変換回路の両方に出力し、かつ、前記第2の画素の信号を、前記第3のアナログデジタル変換回路および前記第4のアナログデジタル変換回路の両方に並行して出力し、
前記第1の期間に続く第2の期間に、前記第3の画素の信号を、前記第1のアナログデジタル変換回路および前記第2のアナログデジタル変換回路の両方に出力し、かつ、前記第4の画素の信号を、前記第3のアナログデジタル変換回路および前記第4のアナログデジタル変換回路の両方に並行して出力する、
ことを特徴とする請求項17に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号処理装置、光電変換装置、光電変換システム、撮像装置、および、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
単一のアナログ信号に対して複数のデジタル信号を得るアナログデジタル変換(AD変換)を行う信号処理装置が知られている。特許文献1は、複数の画素とアナログデジタル変換回路(AD変換回路)を備えたCMOSイメージセンサを開示している。CMOSイメージセンサは、光電変換装置の一つの形態であり、また、その内部でAD変換などの信号処理を行う信号処理装置の一つの形態である。特許文献1の光電変換装置では、1つの画素列に複数のAD変換回路が接続されている。複数のAD変換回路のそれぞれが、1つの画素から出力された共通のアナログ信号をデジタル信号に変換している。このように、1つの画素信号に対して複数のAD変換を行う処理は、マルチサンプリングAD変換、あるいは、単にマルチサンプリングと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された信号処理装置には性能向上の余地がある。本発明の一つの側面では、信号処理装置の性能を向上させることを目的とする。
【0005】
例えば、特許文献1に開示された信号処理では、AD変換の結果に応じて信号処理の方法を選択することや、AD変換の結果に応じて信号補正の有無を選択することが困難である。
【0006】
また、本発明の一つの形態である光電変換装置や撮像装置では、必ずしも、信号処理の性能の向上が課題ではない。本発明に係る光電変換装置や撮像装置では、ノイズの低減、あるいは、画質の向上を目的としていてもよい。
【0007】
例えば、特許文献1のCMOSイメージセンサでは、複数のAD変換回路に異なる複数のランプ信号が供給される。複数のランプ信号は、同一時刻において任意の電圧だけオフセットされている。そのため、オフセットの量によっては、AD変換によって得られる複数のデジタル信号(デジタルデータ)の一部のみが飽和してしまうことがある。その場合、マルチサンプリングしたデジタルデータに対し加算平均処理のようなデータ演算を行った結果は、正確な平均結果にならない。結果として、画質が低下する可能性がある。
【0008】
AD変換後のデータが飽和する以外にも、一部のAD変換回路に対してノイズやサージが発生することで、正確にAD変換を行うことができない可能性がある。結果として、AD変換後のデジタルデータに対するデータ演算の結果が、正確さを欠く可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施例の信号処理装置は、1つのアナログ信号に対して複数のアナログデジタル変換を行い、少なくとも、第1のデジタル信号および第2のデジタル信号を含む複数のデジタル信号、第1のノイズデジタル信号、および第2のノイズデジタル信号を生成するアナログデジタル変換部と、前記複数のデジタル信号の少なくとも1つに対して判定を行い、前記判定の対象となるデジタル信号と閾値とを比較する比較器を備える判定部と、前記第1のデジタル信号および前記第2のデジタル信号を用いて演算を行う演算部と、を備え、前記演算部は、前記第1のデジタル信号と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく信号および前記第2のデジタル信号と前記第2のノイズデジタル信号との差分に基づく信号を平均化する処理または加算する処理を含む演算を行って第1の演算結果を生成し、前記演算部は、前記第1のデジタル信号と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく第2の演算結果を生成し、前記演算部は、前記比較器による比較の結果に応じて、前記第1の演算結果を出力するか、前記第2の演算結果を出力するかを切り換える。
【0010】
1つの実施例の撮像装置は、複数の行および複数の列を含む行列を構成するように配置された複数の画素を含む画素部と、前記画素部の第1の画素が生成する入射光に基づく1つの信号に対して複数のアナログデジタル変換を行い、少なくとも第1のデジタル信号および第2のデジタル信号を生成するとともに、前記第1の画素の生成する1つのノイズ信号に対して複数のアナログデジタル変換を行い、少なくとも第1のノイズデジタル信号および第2のノイズデジタル信号を生成するアナログデジタル変換部と、少なくとも前記第2のデジタル信号を閾値と比較する比較器と、前記第1のデジタル信号および前記第2のデジタル信号を用いて演算を行う演算部と、を備え、前記演算部は、前記第1のデジタル信号と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく信号および前記第2のデジタル信号と前記第2のノイズデジタル信号との差分に基づく信号を平均化する処理または加算する処理を含む演算を行って第1の演算結果を生成し、前記演算部は、前記第1のデジタル信号と前記第1のノイズデジタル信号との差分に基づく第2の演算結果を生成し、前記演算部は、前記比較器による比較の結果に応じて、前記第1の演算結果を出力するか、前記第2の演算結果を出力するかを切り換える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号処理装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】撮像装置の画素部と周辺回路の構成を模式的に示す図。
【
図6】データ処理部の構成を模式的に示すブロック図。
【
図7】データ演算部の構成を模式的に示すブロック図。
【
図8】撮像装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【
図9】撮像装置の画素部と周辺回路の構成を模式的に示す図。
【
図11】データ処理部の構成を模式的に示すブロック図。
【
図12】Nデータ用記憶部の構成を模式的に示すブロック図。
【
図13】データ演算部の構成を模式的に示すブロック図。
【
図14】撮像装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【
図15】撮像装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。本発明は以下に説明される実施例のみに限定されない。本発明の趣旨を超えない範囲で以下に説明される実施例の一部の構成が変更された変形例も、本発明の実施例である。また、以下のいずれかの実施例の一部の構成を、他の実施例に追加した例、あるいは他の実施例の一部の構成と置換した例も本発明の実施例である。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る信号処理装置を説明する。
図1は、本実施例の信号処理装置1の構成を模式的に示している。
図1(a)に示された信号処理装置1は、アナログデジタル変換部3(以下、AD変換部3と呼ぶ)と、判定部5を備える。
【0015】
AD変換部3は、ノードINから入力された1つのアナログ信号(アナログデータ)に対して、複数のアナログデジタル変換(以下、AD変換)を行う。その結果、AD変換部3は、1つのアナログ信号の入力を受けて、入力された信号の数より多い数のデジタル信号(デジタルデータ)を出力する。
図1(a)に示された信号処理装置1では、AD変換部3は、1つのアナログ信号を受けて、それぞれが当該1つのアナログ信号が変換された結果である2つ以上のデジタル信号を順次出力する。
【0016】
判定部5は、AD変換部3から出力された複数のデジタル信号の少なくとも一部に対して、判定処理を行う。判定処理は、複数のデジタル信号の一部のみに対して行われうる。例えば、2つのデジタル信号の一方に対して判定処理が行われ、他方に対しては判定処理が行われない。あるいは、判定処理は、複数のデジタル信号の全部に対して行われうる。また、典型的には、1つのデジタル信号は複数のビット信号を含む。判定処理は、1つのデジタル信号に含まれる複数のビット信号のうちの一部のみ(例えば、最上位ビットのみ)に対して行われてもよい。あるいは、判定処理は、複数のデジタル信号のそれぞれにおいて、その一部のビット信号のみに対して行われてもよい。
【0017】
以上の構成により、信号処理装置はAD変換によって得られたデジタル信号に対して、任意の判定処理を行うことができる。結果として、信号処理の性能を向上させることが可能である。
【0018】
判定処理として、例えば、判定部5はデジタル信号が奇数か偶数かを判定する。これによって、奇数と偶数の一方だけに信号処理を行うことが可能になるなど、信号処理の性能が向上する。奇数か偶数かの判定には、様々な方法が用いられる。例えば、最下位のビット信号で判定してもよい。
【0019】
判定処理として、例えば、判定部5はデジタル信号がエラーを含むか否か、あるいは、エラーを含む確率を判定する。これによって、信号処理の結果の信頼性について、装置あるいは装置のユーザが判断することができる。あるいは、信号処理装置1は、エラーの有無またはその確率に応じて、その後の信号処理を変更することができる。したがって、このような信号処理は、エラーに関する情報を出力しない信号処理に比較して、性能の高い信号処理である。すなわち、判定部5により、信号処理の性能が向上する。
【0020】
エラーの判定には、様々な方法が用いられる。例えば、得られたデジタル信号を、近傍の信号値を持つ可能性が高いと想定される他のデジタル信号と比較することで、エラーの判定を行うことができる。本実施例のAD変換部3は、同じアナログ信号に対して、複数のデジタル信号を出力する。そのため、これらの複数のデジタル信号を相互に比較することで、高い精度でエラーの判定を行うことができる。他の方法として、判定部5は、得られたデジタル信号に対して逆変換を行う。すなわち、デジタル信号をアナログ信号に変換する。そして、判定部5は、AD変換部3に入力されるアナログ信号と逆変換で得られたアナログ信号とを比較することで、エラーの判定を行う。また、判定部5は、機械学習やディープラーニングによって生成された学習モデルを備えていてもよい。当該学習モデルにはデジタル信号が入力され、当該学習モデルはエラーの有無または確率を表す信号を出力する。
【0021】
判定処理として、例えば、判定部5はデジタル信号に対して誤り訂正用の符号の計算を行う。これによって、信号処理装置は誤り訂正用の符号とともに信号処理の結果を出力することができる。すなわち、判定部5により、信号処理の性能が向上する。誤り訂正用の符号の計算には、公知の様々な手法が用いられる。
【0022】
判定処理として、例えば、判定部5はデジタル信号を所定の閾値と比較する。信号処理装置1は、比較の結果に応じて、その後の信号処理を変更することができる。すなわち、より高性能な信号処理が可能となる。例えば、信号処理装置1は、複数のデジタル信号を加算する処理を行いうる。このとき、デジタル信号が所定の閾値より大きいと判断した場合に、加算後のオーバーフローを避けるため一部のデジタル信号が加算処理から除かれる。別の例では、デジタル信号が所定の閾値より大きい場合に、アナログ信号の信号値が飽和レベルに達している、すなわち、正しい情報を反映していないと判断することができる。そして、その後の処理(例えば上述の加算処理)の対象から外したり、あるいは、補正したり、置換したりする処理を行うことができる。
【0023】
判定部5による判定結果がどのように用いられるかについては、上記の形態には限定されない。信号処理装置1は、判定結果に基づいて、その後の信号処理のフローを変更しうる。これは性能の向上した信号処理の一例である。あるいは、信号処理装置1は、判定結果をユーザに対して表示または通知する。ユーザは、信号処理についての信頼性に係る情報やその他の付加情報が得られるため、これは性能の向上した信号処理の一例である。あるいは、信号処理装置1は、判定結果を示すデータを、内部または外部のメモリに保持しておくだけでも、信号処理の性能の向上が可能である。例えば、判定部5がエラーを判定する場合には、判定結果を示すデータを解析することで信頼度(AD変換回数に対するエラー発生の頻度)に関する評価を行うことができる。定量的な評価が可能な信号処理は、性能の向上された信号処理である。このように、判定結果の用途には多数の形態が適用されるため、判定部5が判定処理を行うことで、信号処理の性能を向上させることができる。
【0024】
本実施例で、AD変換部3に入力されるアナログ信号は特に限定されない。例えば、センサによって生成されたアナログ信号が入力される。センサには、音声センサ、振動センサ、温度センサ、圧力センサ、光センサ、加速度センサ、脳波センサ、生体センサなどが適用される。これらのセンサは、物理量を電気信号に変換する。光センサとして、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、ToFセンサ、赤外線センサがある。
【0025】
AD変換部3は、スロープ型のAD変換、逐次比較型のAD変換、パイプライン型のAD変換、巡回型のAD変換などのAD変換を行う。典型的には、AD変換部3は比較器を含む。AD変換部3は、比較器の他に、AD変換の形式に応じて用いられる構成要素を備えうる。
【0026】
続いて、本実施例において、複数のデジタル信号の出力する構成のバリエーションを説明する。
図1(b)に示された信号処理装置1は、AD変換部3と判定部5とに加えて、AD変換部3に接続された複数のメモリ部7を備える。
図1(b)は、2つのメモリ部7aとメモリ部7bの2つを示しているが、メモリ部7の数は3つ以上でもよい。複数のメモリ部7のそれぞれは、AD変換部3から出力された少なくとも1つのデジタル信号を保持する。1つのデジタル信号を複数のメモリ部7に同時に入力することによって、複数のメモリ部7のそれぞれがデジタル信号を保持することができる。あるいは、AD変換部3は、
図1(a)で説明したように、1つのアナログ信号に対して順に複数回のAD変換を行いうる。順に出力される複数のデジタル信号が、複数のメモリ部7に順次保持されてもよい。この場合、AD変換部3とメモリ部7の間に、マルチプレクサやスイッチ回路が挿入されうる。
【0027】
便宜的に、メモリ部7はAD変換部3とは別のブロックとして示されている。しかし、AD変換の形式によっては、メモリ部7はAD変換部3の一部の構成として配される。
【0028】
判定部5は、少なくとも一部のメモリ部7に保持されたデジタル信号に対して、判定処理を行う。
図1(a)の説明で挙げられたいずれの判定処理も、
図1(b)の判定部5に適用される。
図1(b)では、判定部5がメモリ部7aにのみ接続されている。しかし、1つの判定部5が、メモリ部7aおよびメモリ部7bの両方に接続されてもよい。あるいは、別の不図示の判定部が追加され、メモリ部7bに接続されてもよい。
【0029】
図1(c)に示された信号処理装置1は、1つの入力ノードに接続された複数のAD変換部3を備えている。このような形態によっても、信号処理装置1ないしは信号処理装置1に含まれるAD変換部3は、1つのアナログ信号に対して、複数のAD変換を行いうる。
図1(c)の信号処理装置1は、AD変換部3aに接続された判定部5aと、AD変換部3bに接続された判定部5bとを備えている。AD変換部3aおよびAD変換部3bは、それぞれ、
図1(a)や
図1(b)で説明したAD変換部3と同じ機能を有する。また、判定部5aおよび判定部5bは、
図1(a)や
図1(b)で説明した判定部5と同じ機能を有する。
【0030】
なお、
図1(c)において、AD変換部3aおよびAD変換部3bのそれぞれの前段に信号処理回路が挿入されてもよい。例えば、信号を増幅するアンプや、オフセットを付与するオフセット付加部等が配されうる。これらの回路は、1つの信号に対して異なる信号処理を行いうる。例えば、アンプは、AD変換部3aに入力されるアナログ信号と、AD変換部3bに入力されるアナログ信号とに、異なるゲインを与える。あるいは、オフセット付加部は、AD変換部3aに入力されるアナログ信号と、AD変換部3bに入力されるアナログ信号とに、異なる量のオフセットを与える。しかしながら、これらの処理がなされても、元は1つのアナログ信号であるため、AD変換部3aおよびAD変換部3bによって1つのアナログ信号に対する複数回のAD変換が行われる。
【0031】
上記の説明では、便宜的に、2つのAD変換部3があることを説明した。しかし、同じ構成について、1つのAD変換部3が、複数のアナログデジタル変換回路(AD変換回路)または、複数のアナログデジタル変換器(AD変換器)を含むと解釈してもよい。つまり、それぞれがAD変換を行う複数の回路が、集合的に1つのAD変換部3を構成してもよい。なお、本明細書ではAD変換器とAD変換回路を同義で用いている。
【0032】
以上に説明した通り、
図1(a)~
図1(c)に示された信号処理装置1は、1つのアナログ信号に対して複数のAD変換を行う。そして、信号処理装置1は、得られた複数のデジタル信号の少なくとも一部に対して判定処理を行う判定部を備える。このような構成により、信号処理の性能を向上させることが可能である。
【0033】
なお、1つのアナログ信号から変換された複数のデジタル信号を取得する手段を備えていれば、信号処理装置1はAD変換部3を必ずしも含まなくてよい。例えば別の装置が複数のデジタル信号を生成し、本実施例の信号処理装置1はそれらのデジタル信号を受け取るだけでもよい。また、本実施例の効果は、上述の各処理を行う主体に依存しない。すなわち、1つのアナログ信号から変換された複数のデジタル信号を取得するステップ、ならびに、得られた複数のデジタル信号の少なくとも一部に対して判定処理を行うステップを含む方法によって、信号処理の性能を向上させることが可能である。
【実施例2】
【0034】
[全体構成]
実施例2に係る撮像装置を説明する。本実施例の撮像装置は、信号処理装置の1つの形態である。
図2は、本実施例に係る撮像装置100の構成を模式的に示すブロック図である。撮像装置100は、例えば、実施例1で説明したCMOSイメージセンサ、ToFセンサ、赤外線センサとして使用される。
【0035】
撮像装置100は、CPU101によって制御される。撮像装置100は、CPU101からの同期信号、通信を受けて動作する制御部102を含む。撮像装置100は、制御部102の制御信号を受けて動作する垂直走査部103と、複数の画素Pがn行・m列の行列を構成するように配置された画素部104とを含む。垂直走査部103が、画素部104の動作を制御する。撮像装置100は、さらに、画素部104からの信号を処理する列AD変換部105と、水平転送部106と、データ処理部107と、信号出力部108とを含む。列AD変換部105と水平転送部106は制御部102の制御信号を受けて動作する。
【0036】
図3は本実施例に係る画素部104及び列AD変換部105の構成例を示した概略図である。画素部104は、各列に画素201を有する。また、各列の画素に接続された垂直信号線202を有する。垂直信号線202は定電流源(不図示)に接続される。また、垂直信号線202は、オフセット付加部203に接続される。オフセット付加部203の出力は、列ADコンバータ204に接続される。列ADコンバータ204の出力は、保持部205に接続される。すなわち、列AD変換部105は、複数の列ADコンバータ204を含む。なお、1つの列ADコンバータ204は、実施例1で説明したAD変換部3と同様の機能を有する。すなわち、実施例1のAD変換部3についての説明は、すべて本実施例に援用される。本実施例においては、各列に対して、垂直信号線202は1本ずつ配置される。同様に、各列に対して、オフセット付加部は1個ずつ配置される。また、各列に対して、列ADコンバータ204と保持部205は2個ずつ配置される。
【0037】
複数の垂直信号線202を区別するために、
図3では、1列目の画素に接続する垂直信号線202はc1、m列目の画素に接続する垂直信号線202はcmと表現している。例えば、垂直信号線c1に接続する画素からのアナログ信号(画素信号)は、オフセット付加部203に入力される。これに対して、オフセット付加部203は複数の信号c1_ofst_#(#:1~2)を出力する。オフセット付加部によってオフセットが付加された信号を、オフセット信号とも呼ぶ。なお、オフセット付加部203の構成は、例えば列アンプなどの増幅回路やアッテネータ回路によって構成してもよいし、または、アナログ信号の信号値の加算あるいは減算ができる構成が用いられうる。
【0038】
また、オフセット付加部203の出力信号c1_ofst_#は、それぞれ、列ADコンバータ204に入力される。なお、列ADコンバータ204は、アナログデータをデジタルデータへ変換するブロックである。本実施例の列ADコンバータ204は、比較器とランプ波生成器とカウンタによって構成される。なお、ランプ波生成器とカウンタは、複数の列ADコンバータ204に共有されるように設けられてもよい。
【0039】
また、列ADコンバータ204の出力は、保持部205の入力に接続する。保持部205は、実施例1のメモリ部7と同じ機能を有する。なお、保持部205は省略されてもよい。保持部205は、信号adout_c1_#(#:1~2)を出力する。なお、adout_c1_#は、それぞれ、デジタル信号(デジタルデータ)であり、複数のビット信号を含む。
【0040】
[画素回路]
図4は、本実施例に係る画素201の等価回路を示す図である。画素201は、光電変換素子(PD)311と、電荷転送手段312と、フローティングディフュージョン部FDと、リセット手段313と、信号増幅手段314と、行選択手段315を有する。光電変換素子(PD)311は、光電変換に入射した光量に応じた電荷を生成する、フォトダイオード等の素子を有する。
【0041】
電荷転送手段312は、光電変換素子(PD)311とFDとの間に接続している。電荷転送手段312は、光電変換素子(PD)311に蓄積された電荷を読み出すための転送用トランジスタであり、画素転送信号PTX(1)により、導通/非導通(オン/オフ)が制御される。
【0042】
リセット手段313は、電源電圧VDDとFDとの間に接続される。リセット手段313は、FDに電源電圧VDDを供給して回路をリセットするためのリセット用トランジスタであり、画素部リセット信号PRES(1)により、導通/非導通(オン/オフ)が制御される。
【0043】
信号増幅手段314のゲート端子にはFDが接続され、ドレインおよびソースの各端子には電源電圧VDDおよび行選択手段315が接続される。信号増幅手段314は、FDに蓄積された電荷を電圧に変換して増幅し、電圧信号として垂直信号線202に出力するソースフォロア用トランジスタである。
【0044】
行選択手段315は、信号増幅手段314の出力と垂直信号線202との間に接続される。行選択手段315は、画素信号を出力する行を選択するためのトランジスタであり、行選択信号PSEL(1)により、導通/非導通(オン/オフ)が制御される。
【0045】
[水平転送部]
図5は、本実施例に係る水平転送部106の構成例を示す図である。水平転送部106は、複数のスリーステートバッファ401と、水平転送線402と、水平走査部403を有する。
【0046】
列AD変換部105の各出力adout_cM_#(M:1~m)(#:1~2)は、各スリーステートバッファ401の入力に接続し、その出力は水平転送線402に接続される。各スリーステートバッファ401の出力は、水平走査部403によって制御される。なお、スリーステートバッファ401は、「入力信号をそのまま出力する」、もしくは「信号を出力しない(ハイインピーダンス状態)」を選択することができる。
【0047】
本実施例においては、各列に対して、水平転送線402は2ch配置される。入力adout_cM_1は、スリーステートバッファを介してch_1に接続し、入力adout_cM_2は、スリーステートバッファを介してch_2に接続する。
【0048】
[データ処理部]
図6は、本実施例に係るデータ処理部107の構成例を示す図である。データ処理部107は、Sデータ用記憶部501、503と、Nデータ用記憶部502、504と、データ演算部505を有する。NデータおよびSデータは、イメージセンサにおいて相関二重サンプリング(CDS:Correlated Double Sampling)を行うために取得される2つの信号である。画素202から出力された2つのアナログデータが、それぞれAD変換されて、NデータとSデータが得られる。Sデータは、後述する入射光の基づく信号(光信号)に対してAD変換を行うことで得られるデジタルデータを意味する。また、Nデータは、後述するノイズ信号に対してAD変換を行うことで得られるノイズデジタルデータを意味する。
【0049】
データ処理部107への入力ch_1は、Sデータ用記憶部501およびNデータ用記憶部502の両方に接続する。Sデータ用記憶部501は、出力ポートS1を備える。S1はデータ演算部505に接続する。Nデータ用記憶部502は、出力ポートN1を備える。N1はデータ演算部505に接続する。
【0050】
同様に、データ処理部107への入力ch_2は、Sデータ用記憶部503およびNデータ用記憶部504の両方に接続する。Sデータ用記憶部503は、出力ポートS2を備える。S2はデータ演算部505に接続する。Nデータ用記憶部504は、出力ポートN2を備える。N2はデータ演算部505に接続する。
【0051】
データ演算部505は、入力データSin1、Nin1、Sin2、Nin2を元に演算を行う。データ演算部505は、演算結果をSNに出力する。
【0052】
Sデータ用記憶部501、503、Nデータ用記憶部502、504は、それぞれ、SRAMで構成されうる。回路規模が許容されるのであれば、各記憶部501~504は、フリップフロップで構成してもかまわない。また、各記憶部501~504は、その他の記憶素子でもかまわない。
【0053】
データ演算部505は、AD変換後の入力データSin1、Sin2、Nin1、Nin2に対して、データ値の異常やエラーを検知する検知部611を有する。検知部611は入力されるデータの値からエラーの有無あるいはエラーが生じている確率を判定する。すなわち、検知部611は実施例1の判定部5の一例である。データ演算部505は、検知部611がエラーを検知した場合に、当該エラーを含むデータを使わないようにする手段(後述のセレクタ608)を有する。それによって、例えば、AD変換後のデータがサージなどの原因によって異常な値になってしまったときにも、適切なデータ演算結果を提供する。
【0054】
図7(a)に、データ演算部505の回路構成を示す。データ演算部505は、入力データSin1、Sin2、Nin1、Nin2のデータ値から異常やエラーを検知する検知部611と、入力データSin1、Sin2、Nin1、Nin2に対して各種データ演算を行うデータ演算器610とを備える。さらに、データ演算部505は、検知部611の判定結果からデータ演算器610の二つの出力結果を切り替えるセレクタ608を有する。
【0055】
図7(b)にデータ演算器610と、検知部611の処理の一例を示す。
図7(b)の例では、データ演算器610がSデータとNデータの平均化を行う。また、検知部611は、入力データSin2、Nin2を閾値と比較することで判定を行う。
【0056】
データ演算部505は、まず、入力データSin1と入力データNin2との差分(Sin1-Nin1)を得る。入力データSin2が閾値thresh_Sより大きいか、または、入力データNin2が閾値thresh_2より大きい場合には、データ演算部505は、入力データSin1と入力データNin2との差分を出力する。このとき、出力SNoutは式1で表される。
SNout=Sin1-Nin1 (式1)
※Sin2>thresh_SまたはNin2>thresh_2のとき
【0057】
また、データ演算部505は、入力データSin2と入力データNin2との差分(Sin2-Nin2)を得る。そして、入力データSin2が閾値thresh_S以下であり、かつ、入力データNin2が閾値thresh_2以下である場合には、(Sin1-Nin1)と(Sin2-Nin2)の平均値を出力する。このとき、出力SNoutは式2で表される。
SNout=((Sin1-Nin1)+(Sin2-Nin2))÷2 (式2)
※Sin2≦thresh_SかつNin2≦thresh_2のとき
【0058】
上記の演算を行うための回路構成を詳細に説明する。データ演算部505は、減算器601、602と、比較器603、604と、加算器605と、平均化処理回路606と、OR回路607と、セレクタ608を有する。
【0059】
減算器601は、Sin1、Nin1を入力とし、Sin1からNin1を減算した結果を出力する。減算器602は、Sin2、Nin2を入力とし、Sin2からNin2を減算した結果を出力する。加算器605は、減算器601と602の出力を加算し出力する。平均化処理回路606は、加算器605の出力を2で割った結果を出力する。なお、平均化処理回路606は、入力するデータ数に応じて平均値をとる回路である。上述のように除算器で構成してもよいし、入力するデータ数が2のべき乗であればシフタ回路で構成してもよい。また、平均化処理回路606を省略し、加算器605の結果を出力してもよい。比較器603は、Sin2とthresh_Sを比較し、Sin2>thresh_SのときHighを出力し、それ以外のときLowを出力する。比較器604は、Nin2とthresh_Nを比較し、Nin2>thresh_NのときHighを出力し、それ以外のときLowを出力する。OR回路607は、比較器603の出力と比較器604の出力を入力し、その論理和を出力する。セレクタ608は、減算器601の出力と平均化処理回路606の出力を、OR回路607の出力レベルに応じて選択し、SNoutとして出力する。
【0060】
このように本実施例では、比較器603を含む検知部611が、判定部として機能を担っている。また、検知部611の出力に基づいて、セレクタ608が出力するデータを切り替えている。このように、判定部の出力する結果に基づいて、信号処理の方法を変更している。変形例として、セレクタ608を省略して、エラーの有無を別途外部に出力する形態としてもよい。
【0061】
[駆動方法]
続いて、本実施例にかかる撮像装置100の駆動方法について説明する。
図8は、列AD変換部105、水平転送部106、データ処理部107の動作の一例を示すタイミングチャートである。本実施例の撮像装置100は、1行ずつAD変換し、1画素ずつのデータを順次出力する。その動作について説明する。全体的な流れとして、(1)デジタルデータを取得して、メモリ(Sデータ用記憶部503、Nデータ用記憶部504)へ保持する動作、(2)メモリからデジタルデータを読み出す動作、(3)メモリから読み出したデータに対する演算動作の順に説明する。
【0062】
まず、1行目の画素201の出力信号をAD変換し、そのデータをデータ処理部107のSデータ用記憶部501、503と、Nデータ用記憶部502、504に書き込む動作について述べる。
【0063】
時刻T1において、CPU101は、制御部102に対して、水平同期信号HDを出力する。制御部102は、水平同期信号HDを受け、垂直走査部103を制御することで画素部104からN(ノイズ)信号を全列同時に垂直信号線cM(M:1~m)に出力させる。なお、N信号は、FDのリセットを解除した後に、FDの電荷を、信号増幅手段314を介して読み出した信号である。そして、オフセット付加部203は、垂直信号線cM(M:1~m)の信号に対してオフセットを付加する。1つのオフセット付加部203は、互いに異なる値のオフセットが付与された信号cM_ofst_1と信号cM_ofst_2を出力する。付加するオフセットの値は、
図8に示すように、cM_ofst_1<cM_ofst_2となるようにする。
【0064】
このオフセットを付加することにより1つのN信号が異なるオフセット値を含んだ2つの信号となる。しかしながら、付加されたオフセットは最終的には除去される。そのため、実施例1の
図1(c)で説明した例と同様に、本実施例の撮像装置100は、1つのアナログ信号(画素信号)に対して複数のAD変換を行うことになる。換言すると、実施例1(c)において、入力ノードINと各AD変換部3a、3bとの間に、互いに異なる処理を行う処理回路が挿入された構成を、本実施例の撮像装置100は含む。
【0065】
時刻T1から時刻T1w1で、列ADコンバータ204は、オフセット付加部203の出力cM_ofst_#(M:1~m)(#:1~2)を全列同時にAD変換する。
図8では、N信号に対してオフセットを付加した信号に対するAD変換期間をN-ADと記載している。具体的には、時刻T1において、ADコンバータ204で生成するランプ波とカウンタの動作を開始する。時刻T1n1にて信号cM_ofst_1とランプ波の電圧が交差し、その時点でのカウンタ値N1_M_t1(M:1~m)がデジタルデータとして列ADコンバータ204から出力される。そして、時刻T1n3にて信号cM_ofst_2とランプ波の電圧が交差し、その時点でのカウンタ値N2_M_t1(M:1~m)がデジタルデータとして列ADコンバータ204から出力される。
【0066】
なお、本実施例においては、オフセット付加後のデータ(オフセット信号)がcM_ofst_1<cM_ofst_2の関係となるようにオフセットが付加される。そのため、N-AD期間中にcM_ofst_1をAD変換した結果N1_M_t1と、cM_ofst_2をAD変換した結果N2_t1は、N1_M_t1<N2_M_t1の関係が成り立つ。
【0067】
時刻T1w1に、全データが保持部205に一括転送される。ここで生成されるデータは、cM_ofst_1をAD変換したデータ群をN_ch1(h1)、cM_ofst_2をAD変換したデータ群をN_ch2(h1)とする。そして、時刻T1w1から時刻T1w2にかけて、保持部205のデータ群N_ch#(h1)(#:1~2)は、水平転送部106を介して、1画素ずつデータ処理部107に転送される。データ群N_ch1(h1)はNデータ用記憶部502に順次書き込まれ、データ群N_ch2(h1)はNデータ記憶部504に順次書き込まれる。
図8では、データ群N_ch#(h1)(#:1~2)が時刻T1w1から時刻T1w2かけて、Nデータ記憶部504に書き込まれる期間を示している。
【0068】
次に、時刻T1w2で、N信号を出力するときと同様に、画素201からS信号(光信号)を全列同時に垂直信号線202cM(M:1~m)に出力させる。なお、S信号は、電荷転送手段312で光電変換素子(PD)311の電荷をFDに転送し、その時のFDの電荷を、信号増幅手段314を介して読み出した信号である。すなわち、S信号は、入射光に基づく信号である。オフセット付加部203にて、列ごとの垂直信号線202cM(M:1~m)に対してオフセットを同時に付加する。なお、付加するオフセットの値は、
図8に示すように、cM_ofst_1<cM_ofst_2となるようにする。
【0069】
時刻T1w2から時刻T1w3で、列ADコンバータ204は、オフセット付加部203の出力cM_ofst_#(M:1~m)(#:1~2)を全列同時にAD変換する。
図8では、S信号に対してオフセットを付加した信号に対するAD変換期間をS-ADと記載する。具体的には、時刻T1w2において、ADコンバータ204で生成するランプ波とカウンタの動作を開始する。時刻T1s1にて信号cM_ofst_1とランプ波の電圧が交差し、その時点でのカウンタ値S1_M_t1(M:1~m)がデジタルデータとして列ADコンバータ204から出力される。そして、時刻T1s3にて信号cM_ofst_2とランプ波の電圧が交差し、その時点でのカウンタ値S2_M_t1(M:1~m)がデジタルデータとして列ADコンバータ204から出力される。
【0070】
なお、本実施例においては、オフセット付加後のデータ(オフセット信号)が、cM_ofst_1<cM_ofst_2の関係となるようにオフセットが付加される。そのため、S-AD期間中にcM_ofst_1をAD変換した結果S1_M_t1と、cM_ofst_2をAD変換した結果S2_t1は、S1_M_t1<S2_M_t1の関係が成り立つ。
【0071】
そして時刻T1w3に、全データが保持部205に一括転送される。ここで生成されるデータは、cM_ofst_1をAD変換したデータ群をS_ch1(h1)、cM_ofst_2をAD変換したデータ群をS_ch2(h1)とする。そして、時刻T1w3から時刻T1w4にかけて、保持部205のデータ群S_ch#(h1)(#:1~2)は、水平転送部106を介して、1画素ずつデータ処理部107に転送される。データ群S_ch1(h1)はSデータ用記憶部501に順次書き込まれ、データ群S_ch2(h1)はSデータ記憶部503に順次書き込まれる。
図8では、データ群S_ch#(h1)(#:1~2)が時刻T1w3から時刻T1w4かけて、Nデータ記憶部504に書き込まれる期間を示している。
【0072】
次に、1行目の画素201の信号を、データ処理部107内のSデータ用記憶部501、503と、Nデータ用記憶部502、504から読み出す動作について述べる。
【0073】
時刻T2において、CPU101は、制御部102に対して、水平同期信号HDを出力する。時刻T2r1から時刻T2r2にかけて、Nデータ用記憶部502からは、データ群N_ch1(h1)が1画素ずつ読み出される。同様に、Nデータ用記憶部504からは、データ群N_ch2(h1)が、1画素ずつ読み出される。また、それと同期して、Sデータ用記憶部501からは、データ群S_ch1(h1)が1画素ずつ読み出される。同様に、Sデータ用記憶部503からは、データ群S_ch2(h1)が1画素ずつ読み出される。そして時刻T2r1から時刻T2r2にかけて、データ群S_ch#(h1)、N_ch#(h1)(#:1~2)のデータが1画素ずつデータ演算部505にてデータ処理されて、信号出力部108から出力される。
【0074】
以上、1行目の動作を説明したが、2行目以降の処理も1行目と同様の処理を順次行う。
【0075】
続いて、データ記憶部から読み出されたデータに対して、データ演算部505にてNデータとSデータに対して演算処理を行う動作について説明する。以下の説明では、M列目の列ADコンバータ204のAD変換結果に対する演算処理と、L列目の列ADコンバータ204のAD変換結果に対する演算処理とについて、それぞれ説明する。M列目の列ADコンバータ204は、信号N1_M_t1、N2_M_t1、S1_M_t1、S2_M_t1を出力する。L列目の列ADコンバータ204は、信号N1_L_t1、N2_L_t1、S1_L_t1、S2_L_t1(L:1~m、L≠M)を出力する。
【0076】
図8の時刻T2r1から時刻T2r2までの期間におけるデータ演算部の動作を説明する。
【0077】
[1]M列目データ:N1_M_t1とN2_M_t1とS1_M_t1とS2_M_t1に対する演算。
【0078】
上記で述べたようにM列目のNデータ、Sデータのデータ値は、N1_M_t1<N2_M_t1、S1_M_t1<S2_M_t1の関係が成り立つ。また、
図8の例では、データ演算部の入力thresh_S、thresh_Nは、N2_M_t1<thresh_NかつS2_M_t1<thresh_Sが成り立つ。そのため、M列目のAD変換後のデータの大小関係は、N2_t1≦thresh_N、かつ、S2_t1≦thresh_Sの関係が成り立つ。したがって、式2より、データ演算部505による演算結果は、下記式3で表される。
SNout={(S1_M_t1+S2_M_t1)-(N1_M_t1+N2_M_t1)}÷2 (式3)
【0079】
[2]L列目データ:N1_L_t1とN2_L_t1とS1_L_t1とS2_L_t1に対する演算。
【0080】
M列目のデータと同様に、L列目のNデータ、Sデータのデータ値は、N1_L_t1<N2_L_t1、S1_L_t1<S2_L_t1の関係が成り立つ。また、
図8の例では、データ演算部の入力thresh_Sは、thresh_S<S2_L_t2が成り立つ。そのため、L列目のAD変換後のデータの大小関係は、N2_t2>thresh_N、または、S2_t2>thresh_Sの関係が成り立つため、式1により、データ演算部505による演算結果は、下記式4で表される。
SNout=S1_L_t2-N1_L_t2 (式4)
【0081】
以上に説明した通り、本実施例では、同一の垂直出力線に対して2つの列ADコンバータ204が接続される。2つの列ADコンバータ204によってマルチサンプリングされた複数のデジタルデータに対して、検知部611がエラーの有無を判定している。その結果、適切な信号処理を行うことができる撮像装置を提供することができる。また、本実施例では、エラーを含むデジタルデータが画像形成には用いられない。その結果、撮像装置の画質を向上させることができる。
【0082】
本実施例の
図7(b)の例では、検知部611が一部のデジタル信号(N#_M_t1、S#_M_t1)のみを判定の対象としている。一方で、検知部611は、他のデジタル信号に対しては判定を行わない。このような構成により、回路規模の削減、あるいは、消費電力の低減の効果を得ることができる。さらに、オフセット付加部203の動作に合わせて、判定の対象を選択することで、追加の効果を得ることができる。具体的に、本実施例では、付加されるオフセットの値が相対的に大きい信号(S2_M_t1>S1_M_t1)に対して、判定を行っている。判定の目的が飽和の検知であるため、付加されるオフセットの値が大きい信号の信号値が先に飽和レベルに達するためである。したがって、このような構成によれば、小さい回路規模または低消費電力で、画質の向上が可能となる。もちろん、判定の目的に応じて、判定の対象とするデジタル信号は変わる。また、すべてのデジタル信号に対して判定を行ってもよい。
【0083】
この実施例での判定については、デジタル信号と閾値との比較を行うことを説明した。しかし、実施例1に記載したすべての判定処理が、本実施例の撮像装置に適用されうる。これらの判定を用いるための構成と、その効果については実施例1の説明を援用する。
【実施例3】
【0084】
実施例2に係る撮像装置を説明する。本実施例の撮像装置は、信号処理装置の1つの形態である。実施例1では、各列に対して垂直信号線202は1本ずつ配置され、そして、1行毎にデータ処理を行う例を示した。これに対して、本実施例の撮像装置は、1つの画素列に対して複数の垂直信号線202が配される。具体的には、1列に6本の垂直信号線202が配される。本実施例の撮像装置は、6行に渡って配された画素からのアナログ信号(画素信号)に対して同時にAD変換を行い、そして、2行に配された2画素ずつ順次デジタルデータを出力する第1のモードを備える。さらに、本実施例の撮像装置は、2行に渡って配された画素からの画素信号に対して同時にAD変換を行い、当該2画素のデジタルデータを順次出力する第2のモードを備えている。
【0085】
2行同時にAD変換して出力する第2のモードにおいては、1画素に対し2個のAD変換器を接続することによって、複数のAD変換(マルチサンプリング)を行う。すなわち、1列2行の2画素に対して、4個のAD変換器を用いて並列にAD変換を行う。本実施例の撮像装置では、第1のモードを兼ね備えるため、1列に対して6個のAD変換器が配される。したがって、2行同時にAD変換する第2のモードでマルチサンプリングする際に、実施例1のように、1つの垂直信号線202に対し2つずつのAD変換器を用意する必要はない。このように、6行同時にAD変換するモードで使用する列AD変換器を使用することで、回路の追加をすることなく、マルチサンプリングデータに対して適切なデータ処理演算を行うことができる。
【0086】
このような動作を実行するため、本実施例の撮像装置の実施例1との回路構成上の違いは、まず、1列に対応する複数の垂直信号線202が選択部901を介してオフセット付加部203や列ADコンバータ204に接続されることである。また、データ演算部1003が、読み出しモードに応じて、データ演算器の複数の演算のうちどの信号を選択して出力するかを選択する機構(セレクタ1209)を含むことである。
【0087】
以下、実施例2と相違する点を中心に説明する。説明を省略した部分は、すべて実施例2と同様である。また、実施例1の信号処理装置1の構成は、すべて本実施例に適用される。
【0088】
[全体構成と画素構成]
本実施例の撮像装置100の構成、ならびに、画素201の構成は実施例2と同様である。すなわち、
図2は、本実施例に係る撮像装置100の構成を模式的に示すブロック図である。また、
図4は、本実施例に係る画素201の等価回路を示す図である。
【0089】
図9は本実施例に係る画素部104及び列AD変換部105の構成例を示した概略図である。画素部104は、各列に画素201を有する。また、各列の画素に接続された垂直信号線202を有する。垂直信号線202は定電流源(不図示)に接続される。また、垂直信号線202は、オフセット付加部203に接続される。列オフセット付加部203の出力は、列ADコンバータ204に接続される。列ADコンバータ204の出力は、保持部205に接続される。すなわち、列AD変換部105は、複数の列ADコンバータ204を含む。なお、1つの列ADコンバータ204は、実施例1で説明したAD変換部3と同様の機能を有する。すなわち、実施例1のAD変換部3についての説明は、すべて本実施例に援用される。
【0090】
本実施例においては、各列に対して、垂直信号線202は6本ずつ配置される。同様に、各列に対して、オフセット付加部203と列ADコンバータ204と保持部205は6個ずつ配置される。
【0091】
複数の垂直信号線202を区別するために、
図9では、1列目の画素に接続する6本の垂直信号線はc1_VL#(#:1~6)、m列目の画素に接続する6本の垂直信号線はcm_VL#(#:1~6)と表現している。1列目の1行目の画素は垂直信号線c1_VL1に接続される。また、1列の2行目の画素は垂直信号線c1_VL2に接続される。同様にして6行周期で、1列目の各画素は対応する垂直信号線c1_VL#(#:1~6)に接続する。
【0092】
本実施例では、1列に対応する複数の垂直信号線202が選択部901を介してオフセット付加部203や列ADコンバータ204に接続される。選択部901は、任意の垂直信号線202の信号を、1つ、または、複数のオフセット付加部203に伝達する。例えば、垂直信号線c1_VL#に出力された画素信号は選択部901に入力される。選択部901では接続する6本の垂直線c1_VL#(#:1~6)をどのセレクタの出力信号c1_VL#_selに接続するかを切り替えて出力する。選択部901には、マルチプレクサやスイッチ回路が用いられる。
【0093】
選択部901の出力c1_VL#_selはオフセット付加部203に入力される。オフセット付加部203はオフセットが付与された信号c1_VL#_ofstを出力する。なお、オフセット付加部203の構成は、例えば列アンプになどの増幅回路やアッテネータ回路よって構成してもよいし、または、アナログ信号の信号値の加算あるいは減算ができる構成が用いられうる。
【0094】
また、オフセット付加部203の出力信号c1_VL#_ofstは、列ADコンバータ204に入力される。なお、列ADコンバータ204は、アナログデータをデジタルデータへ変換するブロックである。本実施例の列ADコンバータ204は、比較器とランプ波生成器とカウンタによって構成される。なお、ランプ波生成器とカウンタは、複数の列ADコンバータ204に共有されるように設けられてもよい。
【0095】
また、列ADコンバータ204の出力は、保持部205の入力に接続する。保持部205は、実施例1のメモリ部7と同じ機能を有する。なお、保持部205は省略されてもよい。保持部205は、信号adout_c1_#(#:1~6)を出力する。なお、adout_c1_#は、それぞれ、デジタル信号(デジタルデータ)であり、複数のビット信号を含む。
【0096】
[水平転送部]
図10は、本実施例に係る水平転送部106の構成例を示す図である。水平転送部106は、複数のスリーステートバッファ401と、水平転送線402と、水平走査部403を有する。本実施例においては、各列に対して、6チャンネルの水平転送線402が配置される。
【0097】
列AD変換部105の出力adout_cM_VL1は、スリーステートバッファ401を介して水平転送線ch_VL1に出力される。列AD変換部105の出力adout_cM_VL2は、スリーステートバッファ401を介して水平転送線ch_VL2に出力される。以降、各出力adout_cM_VL3、adout_cM_VL4、adout_cM_VL5、adout_cM_VL6も同様である。
【0098】
[データ処理部]
図11は、本実施例に係るデータ処理部107の構成例を示す図である。データ処理部107は、Sデータ用記憶部1001と、Nデータ用記憶部1002と、データ演算部1003、1004を有する。NデータおよびSデータは、イメージセンサにおいて相関二重サンプリング(CDS)を行うために取得される2つの信号である。画素202から出力された2つのアナログデータが、それぞれAD変換されて、NデータとSデータが得られる。
【0099】
データ処理部107への入力ch_VL#(#:1~6)は、Sデータ用記憶部1001およびNデータ用記憶部1002の両方に接続する。Sデータ記憶部1001は、出力ポートS135_1、S135_2、S246_1、S246_2を備える。出力ポートS135_1と出力ポートS135_2は、それぞれ、データ演算部1003に接続される。出力ポートS246_1と出力ポートS246_2は、それぞれ、データ演算部1004に接続される。Nデータ記憶部1002は、出力ポートN135_1、N135_2、N246_1、N246_2を備える。出力ポートN135_1と出力ポートN135_2は、それぞれ、データ演算部1003に接続される。出力ポートN246_1と出力ポートN246_2はそれぞれデータ演算部1004に接続される。
【0100】
データ演算部1003は、入力S135_1とS135_2とN135_1とN135_2を元に演算を行う。データ演算部1003は、演算結果をSN135に出力する。データ演算部1004は、入力S246_1とS246_2とN246_1とN246_2を元に演算を行う。データ演算部1004は、演算結果をSN246に出力する。
【0101】
Sデータ用記憶部1001、Nデータ用記憶部1002は、それぞれ、SRAMで構成されうる。回路規模が許容されるのであれば、Sデータ用記憶部1001、Nデータ用記憶部1002は、それぞれ、フリップフロップで構成してもかまわない。また、Sデータ用記憶部1001、Nデータ用記憶部1002は、その他の記憶素子でもかまわない。
【0102】
[記憶部]
Sデータ用記憶部1001の出力S135_1、S135_2、および、Nデータ用記憶部1002の出力N135_1、N135_2は、それぞれ、記憶部に保存された水平転送線ch_VL1のデータ、水平転送線ch_VL3のデータ、および、水平転送線ch_VL5のデータのいずれかを選択して生成される。同様に、Sデータ用記憶部1001の出力S246_1、S246_2、および、Nデータ用記憶部1002の出力N246_1、N246_2は、それぞれ、記憶部に保存された水平転送線ch_VL2のデータ、水平転送線ch_VL4のデータ、および、水平転送線ch_VL6のデータのいずれかを選択して生成される。
【0103】
以上に述べたデータの出力を行うための記憶部の構成例を説明する。
図12は、
図11に示すNデータ用記憶部1002の構成を模式的に示す図である。なお、Sデータ用記憶部1001は、Nデータ用記憶部1002と同様の構成である。
【0104】
Nデータ用記憶部1002は、記憶部A1101と、記憶部B1102と、記憶部C1103と、記憶部D1104と、記憶部E1105と、記憶部F1106と、セレクタ1107~1110を有する。上述の通り、記憶部A1101~F1106は、それぞれ、SRAMで構成してもよいし、フリップフロップで構成してもよい。
【0105】
Nデータ用記憶部1002への入力ch_VL1は記憶部A1101へ接続される。入力ch_VL2は記憶部B1102へ接続される。入力ch_VL3は記憶部C1103へ接続される。入力ch_VL4は記憶部D1104へ接続される。入力ch_VL5は記憶部E1105へ接続される。入力ch_VL6は記憶部F1106へ接続される。Nデータ用記憶部1002への入力ch_VL1~ch_VL6はそれぞれ記憶部A1101~記憶部F1106に接続され、それぞれのデータが記憶される。
【0106】
セレクタ1107は、記憶部Aの出力N1、記憶部Cの出力N3、および、記憶部Eの出力N5からデータを選択し、選択されたデータを出力ポートN135_1へ出力する。同様に、セレクタ1108は、記憶部Aの出力N1、記憶部Cの出力N3、および、記憶部Eの出力N5からデータを選択し、選択されたデータを出力ポートN135_2へ出力する。セレクタ1109は、記憶部Bの出力N2、記憶部Dの出力N4、および、記憶部Fの出力N6からデータを選択し、選択されたデータを出力ポートN246_1へ出力する。セレクタ1110は、記憶部Bの出力N2、記憶部Dの出力N4、記憶部Fの出力N6からデータを選択し、選択されたデータを出力ポートN246_2へ出力する。
【0107】
[データ演算部]
データ演算部1003、1004は、それぞれ、AD変換後の入力データSin1、Sin2、Nin1、Nin2に対して、データ値の異常やエラーを検知する検知部611を有する。検知部611は入力されるデータの値からエラーの有無あるいはエラーが生じている確率を判定する。すなわち、検知部611は実施例1の判定部5の一例である。データ演算部1003、1004は、それぞれ、検知部611がエラーを検知した場合に、当該エラーを含むデータを使わないようにする手段(後述のセレクタ1208)を有する。それによって、例えば、AD変換後のデータがサージなどの原因によって異常な値になってしまったときにも、適切なデータ演算結果を提供する。
【0108】
図13(a)に、データ演算部1003の回路構成を示す。データ演算部1004の構成はデータ演算部1003と同じであるため、移行、データ演算部1004についての説明を省略する。データ演算部1003は、入力データSin1、Sin2、Nin1、Nin2のデータ値から異常やエラーを検知する検知部611と、入力データSin1、Sin2、Nin1、Nin2に対して各種データ演算を行うデータ演算器610とを備える。さらに、データ演算部1003は、検知部611の判定結果からデータ演算器610の二つの出力結果を切り替えるセレクタ1208を有する。
【0109】
図13(b)にデータ演算器610と、検知部611の処理の一例を示す。
図7(b)の例では、データ演算器610がSデータの平均化とNデータの平均化を行う。また、検知部611は、入力データSin2、Nin2を閾値と比較することで判定を行う。
【0110】
データ演算部1003は、まず、入力データSin1と入力データNin2との差分(Sin1-Nin1)を得る。そして、次のケース1~ケース3のいずれかの場合に、データ演算部1003は、入力データSin1と入力データNin2との差分をそのまま出力する。ケース1は、入力データSin2が閾値thresh_Sより大きい場合である。ケース2は、入力データNin2が閾値thresh_2より大きい場合である。そして、ケース3は、信号mult_smpl_enがマルチサンプリングを行わない状態を示す場合である。本実施例では、信号mult_smpl_enが「0」のときに、マルチサンプリングを行わない。これらのケース1~ケース3のとき、出力SNoutは式5で表される。
SNout=Sin1-Nin1 (式5)
【0111】
また、データ演算部1003は、入力データSin2と入力データNin2との差分(Sin2-Nin2)を得る。そして、以下の条件1~条件3のすべてが満たされた場合、データ演算部1003は、(Sin1-Nin1)と(Sin2-Nin2)の平均値を出力する。まず、条件1は、入力データSin2が閾値thresh_S以下であること。次に、条件2は、入力データNin2が閾値thresh_2以下であること。そして、条件3は、信号mult_smpl_enがマルチサンプリングを行う状態を示す場合である。本実施例では、信号mult_smpl_enが「1」のときに、マルチサンプリングを行う。このとき、出力SNoutは式6で表される。
SNout=((Sin1-Nin1)+(Sin2-Nin2))÷2 (式6)
【0112】
実施例2との違いは、信号mult_smpl_enに応じて、出力するSNoutの値を切り換えるセレクタ1209を追加した点である。セレクタ1209は、減算器1201の出力とセレクタ1208の出力を入力とし、信号mult_smpl_enの値に応じて、出力する値を切り換える。この機構によれば、例えば読み出しモードに応じて、信号mult_smpl_enの値を設定することで、SNoutの出力値を検知部611の動作によらない結果にするのかどうかを切り換えることができる。
【0113】
データ演算部1003のその他の構成は、実施例1のデータ演算部505と同じである。すなわち、減算器1201、減算器1202、加算器1205、平均化処理回路1206、それぞれ、減算器601、減算器602、加算器605、平均化処理回路606と同じである。また、比較器1203、比較器1204、OR回路1207、セレクタ1208は、それぞれ、比較器603、比較器604、OR回路607、セレクタ608と同じである。ここに実施例1の説明を援用し、繰り返しの説明は省略する。
【0114】
このように本実施例では、比較器603を含む検知部611が、判定部として機能を担っている。また、検知部611の出力に基づいて、セレクタ608が出力するデータを切り替えている。このように、判定部の出力する結果に基づいて、信号処理の方法を変更している。変形例として、セレクタ608を省略して、エラーの有無を別途外部に出力する形態としてもよい。
【0115】
[駆動方法]
続いて、本実施例にかかる撮像装置100の駆動方法について説明する。
図14、
図15は、列AD変換部105、水平転送部106、データ処理部107の動作の一例を示すタイミングチャートである。本実施例の撮像装置100は、第1のモード(
図14)と第2のモード(
図15)とを備える。第1のモードでは、撮像装置100は、6行の画素からの信号に対して並列にAD変換を行う。その後、撮像装置100は2行に配された2画素ずつのデータを順次出力する。第2のモードでは、撮像装置100は、2行の画素からの信号に対して並列にAD変換を行う。それから、撮像装置100は、2行分の画素からの信号を列ごとに順次出力する。なお、2行同時にAD変換して出力する第2のモードにおいては、1画素(1つの垂直信号線202)に対して2個のAD変換器を並列に接続し、かつ、動作させることによって、1つの信号に対する複数のAD変換を並行して行う。2行の画素の信号を並列に読み出すため、2つの垂直信号線202と、合計で4個のAD変換器が用いられる。
【0116】
[第1のモードの駆動方法]
図14を用いて第1のモードの動作について説明する。全体的な流れとして、(1)デジタルデータを取得して、メモリ(Sデータ用記憶部1001、Nデータ用記憶部1002)へ保持する動作、(2)メモリからデジタルデータを読み出す動作、(3)メモリから読み出したデータに対する演算動作の順に説明する。
【0117】
書き込みとしては、まず、1行目から6行目の画素201の出力信号に対してAD変換が行われる。得られたデジタルデータは、データ処理部107の記憶部A1101、記憶部B1102、記憶部C1103、記憶部D1104、記憶部E1105、記憶部F1106に書き込まれる。
【0118】
時刻T1において、CPU101は、制御部102に対して、水平同期信号HDを出力する。制御部102は、水平同期信号HDを受け、垂直走査部103を制御することで画素部104からN信号(ノイズ信号)を全列同時に垂直信号線cM_VL#(M:1~m)(#:1~6)に出力させる。なお、N信号は、FDのリセットを解除した後に、FDの電荷を、信号増幅手段314を介して読み出した信号である。すなわち、N信号にはリセット時に生じたノイズ成分が含まれうる。
【0119】
選択部901が、垂直信号線cM_VL#のそれぞれを、選択部901の出力cM_VL#_SEL(M:1~m)(#:1~6)のいずれと接続するのかを選択する。本読み出しモードでは、垂直信号線cM_VL1~cM_VL6は、それぞれ、出力cM_VL1_SEL~cM_VL6_SELに接続される。例えば、垂直信号線c1_VL1は出力c1_VL1_SELに接続され、垂直信号線c1_VL2は出力c1_VL2_SELに接続される。垂直信号線c1_VL3~c1_VL6と出力c1_VL3_SEL~c1_VL6_SELも同様である。また、第2列の垂直信号線202については、垂直信号線c2_VL1は出力c2_VL1_SELに接続され、垂直信号線c2_VL2は出力c2_VL2_SELに接続される。以降も同様である。
【0120】
オフセット付加部203は、選択部901の出力cM_VL#_SELの信号に対してオフセットを同時に付加する。付加するオフセットの値は、すべての列に対して同じである。なお、オフセットの値は、1列の6つの出力cM_VL#_SEL(#:1~6)に対して異なる値であってもよい。それらの6つの異なる値のオフセットが、各列に適用されうる。あるいは、1列の6つの出力cM_VL#_SEL(#:1~6)に対して同じ値が用いられ、一方、第1列のオフセット値と第2列のオフセット値が異なるようにしてもよい。
【0121】
時刻T1から時刻T1w1で、列ADコンバータ204は、オフセット付加部203の出力cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:1~6)に対して、全列同時にAD変換を行う。AD変換時の動作は、実施例2と同様である。このときオフセット付加部203の出力する信号cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:1~6)から変換されたデジタルデータは、N#_M_t1(M:1~m)(#:1~6)として列ADコンバータ204から出力される。
【0122】
そして時刻T1w1に、全データが保持部205に一括転送される。ここで生成されるデータ群、つまり、信号cM_VL#_ofstをAD変換したデータ群を、N_VL#(h1)とする。「h1」における数字は、並列に読み出される複数行のグループを示している。たとえば、h1は最初に読み出される6行を表す。また、h2はh1の次に読み出される6行を表す。h3以降も同様である。
【0123】
時刻T1w1から時刻T1w2にかけて、保持部205のデータ群N_VL#(h1)(#:1~6)は、水平転送部106を介して、1画素ずつの単位で、データ処理部107に転送される。データ群N_VL#(h1)はNデータ用記憶部1002に順次書き込まれる。
図14では、データ群N_VL#(h1)(#:1~6)が時刻T1w1から時刻T1w2にかけて、Nデータ記憶部1002に書き込まれる期間を示している。書き込まれる際に、データ群N_VL1(h1)~N_VL6(h1)はそれぞれ、Nデータ用記憶部1002の記憶部A1101~記憶部F1106に記憶される。
【0124】
次に、時刻T1w2で、N信号を出力するときと同様に、6行分の画素201がS信号を全列同時に垂直信号線cM_VL#(M:1~m)(#:1~6)に出力する。なお、S信号は、電荷転送手段312で光電変換素子(PD)311の電荷をFDに転送し、その時のFDの電荷を、信号増幅手段314を介して読み出した信号である。
【0125】
選択部901が垂直信号線cM_VL#のそれぞれを、選択部901の出力cM_VL#_SEL(M:1~m)(#:1~6)のいずれと接続するのかを選択する。選択部901は、基本的には、N信号の読み出し時と同じ接続関係を選択する。つまり、垂直信号線cM_VL1~cM_VL6は、それぞれ、出力cM_VL1_SEL~cM_VL6_SELに接続される。
【0126】
オフセット付加部203は、選択部901の出力cM_VL#_SELの信号に対してオフセットを同時に付加する。このとき、付加するオフセットの値は、N信号に対して付加したオフセットの値と同じである。したがって、付加するオフセットの値は、すべての列に対して同じでもよいし、あるいは、1列の中で異なっていてもよいし、異なる列で異なっていてもよい。
【0127】
時刻T1w2から時刻T1w3で、列ADコンバータ204は、オフセット付加部203の出力cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:1~6)に対して、全列同時にAD変換を行う。AD変換時の動作は、実施例2と同様である。このときオフセット付加部203の出力する信号cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:1~6)から変換されたデジタルデータは、S#_M_t1(M:1~m)(#:1~6)として列ADコンバータ204から出力される。
【0128】
そして時刻T1w3に、全データが保持部205に一括転送される。ここで生成されるデータ群、つまり、信号cM_VL#_ofstをAD変換したデータ群を、S_VL#(h1)とする。「h1」、「h2」などが表す意味は、N_VL#(h1)などと同じである。
【0129】
時刻T1w3から時刻T1w4にかけて、保持部205のデータ群S_VL#(h1)(#:1~6)は、水平転送部106を介して、1画素ずつの単位で、データ処理部107に転送される。データ群S_VL#(h1)はSデータ用記憶部1001に順次書き込まれる。
図14では、データ群S_VL#(h1)(#:1~6)が時刻T1w3から時刻T1w4かけて、Sデータ記憶部1001に書き込まれる期間を示している。書き込まれる際に、データ群S_VL1(h1)~S_VL6(h1)はそれぞれ、Sデータ用記憶部1001の記憶部A~記憶部Fに記憶される。上述の通り、Sデータ用記憶部1001の構成は、Nデータ記憶部1001と同じである。
【0130】
次に、1行目から6行目の画素201の信号を、データ処理部107内のSデータ用記憶部1001と、Nデータ用記憶部1002から読み出す動作について述べる。あるHD期間に書き込まれたデジタルデータは、次のHD期間に読み出される。
【0131】
時刻T2において、CPU101は、制御部102に対して、水平同期信号HDを出力する。時刻T2r1から時刻T2r2にかけて、Nデータ用記憶部1002からは、1行目のデータ群N_VL1(h1)と2行目のデータ群N_VL2(h1)が、1画素ずつ読み出される。また、それと同期して、Sデータ用記憶部1001からは、1行目のデータ群S_VL1(h1)と2行目のデータ群S_VL2(h1)が1画素ずつ読み出される。そして時刻T2r1から時刻T2r2にかけて、データ群S_VL1(h1)とN_VL1(h1)(#:1~6)は1画素ずつデータ演算部1003にてデータ処理され、データ群S_VL2(h1)とN_VL2(h1)(#:1~6)は1画素ずつデータ演算部1004にてデータ処理され、信号出力部108から出力される。
【0132】
同様にして、時刻T2r2から時刻T2r3にかけては、3行目と4行目のデータが、1列2行の2画素ずつの単位でデータ処理されて、信号出力部108から出力される。同様にして、時刻T2r3から時刻T2r4にかけては、5行目と6行目のデータが、1列2行の2画素ずつの単位でデータ処理されて、信号出力部108から出力される。
【0133】
以上のようにして、まず、6行に渡って配された複数画素からの画素信号に対して同時に行われるAD変換によって、1行目から6行目のデータが得られる。その後、まず1行目と2行目の2行分のデータが列ごとに順次撮像装置から出力される。同様にして3行目と4行目の画素のデータがすべて読み出される。最後に、5行目と6行目の画素のデータが読み出される。
【0134】
続いて、データ演算部の動作について説明する。データ記憶部(Sデータ用記憶部1001とNデータ用記憶部1002)から読み出されたデータに対して、データ演算部1003およびデータ演算部1004が信号処理を行う。
【0135】
本読み出しモードでは、
図13(b)に示す回路の信号mult_smpl_enがLowである。つまり、信号mult_smpl_enは、マルチサンプリングを行わない状態を示す。そのため、データ演算部1003、1004は、それぞれ、入力Sin1と入力Nin1との差分を出力する。すなわち、データ演算部1003による信号処理の結果(出力SN135)、および、データ演算部1004による信号処理の結果(出力SN246)は、それぞれ、式5を基に下記の式7、式8で表される。
SN135=S#_M_t1-N1_L_t1(#:1、3、5) (式7)
SN246=S#_M_t1-N1_L_t1(#:2、4、6) (式8)
【0136】
[第2のモードの駆動方法]
図15を用いて第2のモードについて説明する。第2のモードでは、2行に配された画素からの信号に対して同時にAD変換を行う。そして、得られたデジタルデータに対して信号処理を行い、1列2行の2画素ずつ順次出力する。水平同期信号HD毎に、選択部901が、各列6本の垂直信号線202のうち2本の垂直信号線を選択し、後段の回路に接続する。選択部901が選択する2本を切り替えながら、2行ずつの単位で、書き込み動作と読み出し動作を行う。これを3HD周期で繰り返すことで、すべての画素から信号を読み出す。各HD期間での全体的な流れとして、(1)デジタルデータを取得して、メモリ(Sデータ用記憶部1001、Nデータ用記憶部1002)へ保持する動作、(2)メモリからデジタルデータを読み出す動作、(3)メモリから読み出したデータに対する演算動作の順に説明する。
【0137】
最初に、書き込み動作について説明する。本モードの書き込み動作は、Sデータ用記憶部1001およびNデータ用記憶部1002のそれぞれについて、4つの記憶部(例えば、記憶部C1103、記憶部D1104、記憶部E1105、記憶部F1106)を使用し、一方、他の2つの記憶部(記憶部A1101、記憶部B1102)を使用しない。
【0138】
まず、1行目から2行目の画素201の出力信号に対してAD変換が行われる。得られたデジタルデータは、データ処理部107の記憶部C1103、記憶部D1104、記憶部E1105、記憶部F1106に書き込まれる。
【0139】
時刻T1において、CPU101は、制御部102に対して、水平同期信号HDを出力する。制御部102は、水平同期信号HDを受け、垂直走査部103を制御することで画素部104からN(ノイズ)信号を全列同時に垂直信号線cM_VL#(M:1~m)(#:1~2)に出力させる。なお、N信号は、FDのリセットを解除した後に、FDの電荷を、信号増幅手段314を介して読み出した信号である。
【0140】
選択部901が、垂直信号線cM_VL#のそれぞれを、選択部901の出力cM_VL#_sel(M:1~m)(#:1~6)のいずれと接続するのかを選択する。本読み出しモードでは、時刻T1からT2において、垂直信号線cM_VL1が、選択部901の出力cM_VL3_selおよび出力cM_VL5_selの両方に接続される。同じく時刻T1からT2において、垂直信号線cM_VL2は、選択部901の出力cM_VL4_selと出力cM_VL6_selとの両方に接続される。
【0141】
同様にして、時刻T2からT3においては、垂直信号線cM_v13の信号が、出力cM_VL3_selと出力cM_VL5_selとの両方に出力され、そして、垂直信号線cM_VL4の信号が、出力cM_VL4_selおよび出力cM_VL6_selの両方に出力される。同様にして、時刻T3からT3w4においては、垂直信号線cM_v15が、出力cM_VL3_selと出力cM_VL5_selとに接続される。同じ期間に、垂直信号線cM_VL6の信号が、出力cM_VL4_selと出力cM_VL6_selとの両方に出力される。以降、3HD単位で上記と同様に接続する垂直信号線202を切り換える制御を行う。
【0142】
このような選択部901の選択動作によって、1つのアナログ信号(画素信号)に対して、複数のAD変換を行うことができる。なお、1つの垂直信号線202を2つの出力に接続する例を説明するが、1つの垂直信号線202を3つの出力に接続してもよい。この場合、各記憶部の6つのメモリの全部を使用することになる。本実施例のように、セレクタの一部の出力を使用しない場合は、使用されない出力ノード(出力cM_VL1_selと出力cM_VL2_sel)の信号レベルを固定しておくとよい。
【0143】
オフセット付加部203は、選択部901の出力cM_VL#_selに対してオフセットを付加する。1つの選択部901に接続された少なくとも2つのオフセット付加部203は、互いに異なる値のオフセットを付与する。例えば、
図15に示した例では、信号cM_VL3の信号値と信号cM_VL5の信号値が同じ値である。これに対して、信号cM_VL3にオフセットを付加することで得られた信号cM_VL3_ofstの信号値より、信号cM_VL5にオフセットを付加することで得られた信号cM_VL5_ofstの信号値が大きい。すなわち、cM_VL3_ofst<cM_VL5_ofstの関係が満たされるように、オフセットの値が設定される。同様に、オフセット付加部203は、cM_VL4_ofst<cM_VL6_ofstとなるようにオフセットを付加する。以降の説明では、信号cM_VL3_ofstと信号cM_VL5_ofstに関して説明を行う。信号cM_VL4_ofstと信号cM_VL6_ofstの処理に関しても同様である。
【0144】
選択部901による選択動作およびオフセット付加部203によるオフセット付加により、1つのN信号が異なるオフセット値を含んだ2つの信号となる。しかしながら、付加されたオフセットは最終的には除去される。そのため、実施例1の
図1(c)で説明した例と同様に、本実施例の撮像装置100は、1つのアナログ信号(画素からのN信号)に対して複数のAD変換を行うことになる。換言すると、実施例1(c)において、入力ノードINと各AD変換部3a、3bとの間に、互いに異なる処理を行う処理回路が挿入された構成を、本実施例の撮像装置100は含む。
【0145】
時刻T1から時刻T1w1で、列ADコンバータ204は、オフセット付加部203の出力cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:3~6)に対して、全列同時にAD変換を行う。AD変換時の動作は、第1のモードあるいは実施例2と同様である。このときオフセット付加部203の出力する信号cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:3~6)から変換されたデジタルデータは、N#_M_t1(M:1~m)(#:3~6)として列ADコンバータ204から出力される。
【0146】
そして時刻T1w1に、全データが保持部205に一括転送される。ここで生成されるデータ群、つまり、信号cM_VL#_ofstをAD変換したデータ群を、N_VL#(h1)とする。ただし、N_VL#(h1)(#:1~2)は使用しないため、転送しなくてもよい。「h1」における数字が、並列に読み出される複数行のグループを示している点は、第1のモードで説明した通りである。たとえば、h1は最初に読み出される2行を表す。また、h2はh1の次に読み出される2行を表す。h3以降も同様である。
【0147】
時刻T1w1から時刻T1w2にかけて、保持部205のデータ群N_VL#(h1)(#:3~6)は、水平転送部106を介して、データ処理部107に転送される。データ群N_VL#(h1)(#:3~6)はNデータ用記憶部1002に順次書き込まれる。
図15では、データ群N_VL#(h1)(#:3~6)が時刻T1w1から時刻T1w2にかけて、Nデータ記憶部1002に書き込まれる期間を示している。書き込まれる際に、データ群N_VL3(h1)~N_VL6(h1)はそれぞれ、Nデータ用記憶部1002の記憶部C1103~記憶部F1106に記憶される。
【0148】
次に、時刻T1w2で、N信号を出力するときと同様に、2行分の画素201がS信号を全列同時に垂直信号線cM_VL#(M:1~m)(#:1~2)に出力する。なお、S信号は、電荷転送手段312で光電変換素子(PD)311の電荷をFDに転送し、その時のFDの電荷を、信号増幅手段314を介して読み出した信号である。
【0149】
選択部901が垂直信号線cM_VL#のそれぞれを、選択部901の出力cM_VL#_sel(M:1~m)(#:1~6)のいずれと接続するのかを選択する。選択部901は、基本的には、N信号の読み出し時と同じ接続関係を選択する。つまり、時刻T1からT2においては、垂直信号線cM_VL1は、信号cM_VL3_selおよび信号cM_VL5_selとして出力される。また、垂直信号線cM_VL2の信号は、信号cM_VL4_selと信号cM_VL6_selとして出力される。
【0150】
なお、本読み出しモードでは、出力cM_VL1_selと出力cM_VL2_selは使用しないため、信号レベルを固定しておくとよい。
【0151】
オフセット付加部203は、選択部901の出力cM_VL#_selの信号に対してオフセットを同時に付加する。このとき、付加するオフセットの値は、N信号に対して付加したオフセットの値と同じである。したがって、cM_VL3_ofst<cM_VL5_ofst、cM_VL4_ofst<cM_VL6_ofstとなるようにオフセットを付加する。
【0152】
以降の説明では、信号cM_VL3_ofstと信号cM_VL5_ofstに関して説明を行う。信号cM_VL4_ofstと信号cM_VL6_ofstの処理に関しても同様である。
【0153】
選択部901による選択動作およびオフセット付加部203によるオフセット付加により、1つのS信号が異なるオフセット値を含んだ2つの信号となる。しかしながら、付加されたオフセットは最終的には除去される。そのため、実施例1の
図1(c)で説明した例と同様に、本実施例の撮像装置100は、1つのアナログ信号(画素からのS信号)に対して複数のAD変換を行うことになる。
【0154】
時刻T1w2から時刻T1w3で、列ADコンバータ204は、オフセット付加部203の出力cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:3~6)に対して、全列同時にAD変換を行う。AD変換時の動作は、第1のモードあるいは実施例2と同様である。このときオフセット付加部203の出力する信号cM_VL#_ofst(M:1~m)(#:3~6)から変換されたデジタルデータは、S#_M_t1(M:1~m)(#:3~6)として列ADコンバータ204から出力される。
【0155】
そして時刻T1w3に、全データが保持部205に一括転送される。ここで生成されるデータ群、つまり、信号cM_VL#_ofstをAD変換したデータ群を、S_VL#(h1)とする。ただし、S_VL#(h1)(#:1~2)は使用しないため、転送しなくてもよい。
【0156】
時刻T1w3から時刻T1w4にかけて、保持部205のデータ群S_VL#(h1)(#:3~6)は、水平転送部106を介して、データ処理部107に転送される。データ群S_VL#(h1)(#:3~6)はSデータ用記憶部1001に順次書き込まれる。
図15では、データ群S_VL#(h1)(#:3~6)が時刻T1w3から時刻T1w4にかけて、Sデータ記憶部1001に書き込まれる期間を示している。書き込まれる際に、データ群S_VL3(h1)~S_VL6(h1)はそれぞれ、Sデータ用記憶部1001の記憶部C~Fに記憶される。
【0157】
このように、1HD期間に、1行目および2行目の画素から得られるデータ群S_VL#(h1)(#:3~6)ならびにデータ群N_VL#(h1)(#:3~6)が、Sデータ記憶部1001ならびにNデータ記憶部1002に書き込まれる。以降、HD期間ごとに選択部901が選択する垂直信号線を切り替えることで、3行目および4行目の画素から得られるデータ群S_VL#(h2)(#:3~6)ならびにデータ群N_VL#(h2)(#:3~6)がSデータ記憶部1001ならびにNデータ記憶部1002に書き込まれる。次いで、5行目および6行目の画素から得られるデータ群S_VL#(h3)(#:3~6)ならびにデータ群N_VL#(h3)(#:3~6)がSデータ記憶部1001ならびにNデータ記憶部1002に書き込まれる。この書き込み動作は、3HD期間を1つの単位として、繰り返される。
【0158】
具体的に、次のHD期間(T2~T3)で、撮像装置100は、垂直信号線cM_VL#(M:1~m)(#:3~4)からN信号を読み出し、それらをデジタルデータに変換し、そして、変換されたデジタルデータをNデータ記憶部1002に書き込む。さらに次のHD期間(T3~T4)で、撮像装置100は、垂直信号線cM_VL#(M:1~m)(#:5~6)からN信号を読み出し、それらをデジタルデータに変換し、そして、変換されたデジタルデータをNデータ記憶部1002に書き込む。S信号に対しても、同様の読み出し動作ならびに書き込み動作を行う。
【0159】
選択部901は、時刻T2からT3において、垂直信号線cM_v13の信号を、信号cM_VL3_selと信号cM_VL5_selとして、2つの出力から出力する。また、選択部901は、垂直信号線cM_VL4の信号を、信号cM_VL4_selと信号cM_VL6_selとして、2つの出力から出力する。時刻T3からT3w4においては、選択部901は、垂直信号線cM_VL5を、セレクタの出力cM_VL3_selと出力cM_VL5_selに接続し、一方、垂直信号線cM_VL6を、セレクタの出力cM_VL4_selと出力cM_VL6_selに接続する。
【0160】
以上の動作によって、2行ごとの単位で、画素からの信号に対して一括してAD変換を行う。さらに、各画素から出力された1つの信号(N信号またはS信号)に対しては、複数のAD変換が行われる。
【0161】
次に、1行目から2行目の画素201の信号を、データ処理部107のSデータ用記憶部1001と、Nデータ用記憶部1002から読み出す動作について述べる。あるHD期間(例えばT1~T2)に書き込まれたデジタルデータは、次のHD期間(例えばT2~T3)に読み出される。
【0162】
時刻T2において、CPU101は、制御部102に対して、水平同期信号HDを出力する。時刻T2r1から時刻T2r2にかけて、Nデータ用記憶部1002からは、1行目のデータ群N_VL3(h1)とN_VL5(h1)、2行目のデータ群N_VL4(h1)とN_VL6(h1)が、読み出される。また、それと同期して、Sデータ用記憶部1001からは、1行目のデータ群S_VL3(h1)とS_VL5(h1)、2行目のデータ群S_VL4(h1)とS_VL6(h1)が読み出される。そして時刻T2r1から時刻T2r2にかけて、データ群S_VL3(h1)とS_VL5(h1)とN_VL3(h1)とN_VL5(h1)は、1画素ずつの単位で、データ演算部1003にてデータ処理される。また、データ群S_VL4(h1)とS_VL6(h1)とN_VL4(h1)とN_VL6(h1)は、1画素ずつの単位で、データ演算部1004にてデータ処理される。本実施例の信号出力部108は、2つのデータ演算部1003、1004を備えている。そのため、2画素のデータを並列に処理することができる。データ演算部1003、1004による信号処理の結果が、信号出力部108から出力される。
【0163】
以上のようにして、1行目と2行目のデータは、1列2行に配された2画素ずつの単位で、撮像装置から出力される。同じ動作を、3行目と4行目のデータ、5行目と6行目のデータ・・・に対して繰り返すことで、すべての画素のデータを出力することができる。
【0164】
続いて、データ演算部の動作について説明する。データ記憶部(Sデータ用記憶部1001とNデータ用記憶部1002)から読み出されたデータに対して、データ演算部1003、1004が信号処理を行う。例えば1列目の画素について、データ演算部1003は、データN3_1_t1、データN5_1_t1、データS3_1_t1、および、データS5_1_t1に対して信号処理を行う。データ演算部1004は、データN4_1_t1、データN6_1_t1、データS4_1_t1、および、データS6_1_t1に対して信号処理を行う。
【0165】
本読み出しモードでは、
図13(b)に示す回路の信号mult_smpl_enがHighである。つまり、信号mult_smpl_enは、マルチサンプリングを行う状態を示す。
【0166】
データ演算部1003は、得られたデジタルデータが異常値であるかの判定を行い、その結果に応じて信号処理を変更する。具体的には、データS5_M_t1を、飽和レベルを表す閾値と比較し、そして、飽和している信号をマルチサンプリング処理の対象から除外する。
【0167】
ここでは、S信号の信号値が異なる2つの場合に分けて説明する。例えば、M列目の画素のS信号は比較的低いレベル(低輝度)であり、M列目とは別のL列目のS信号は比較的高いレベル(高輝度)である。簡単のため、以下の説明では、データ演算部1003が、M列目の列ADコンバータ204によるAD変換で得られたデータN3_M_t1、データN5_M_t1、データS3_M_t1、データS5_M_t1を処理することとする。同様に、データ演算部1003が、L列目の列ADコンバータ204によるAD変換で得られたデータN3_L_t1、データN5_L_t1、データS3_L_t1、および、データS5_L_t1(L:1~m、L≠M)に対して演算を行うこととする。なお、データが奇数行の画素に基づくものか、偶数行の画素に基づくものかに応じて、データ演算部1003とデータ演算部1004のいずれによって処理が実行されるかは変わる。データ演算部1004が信号処理を行う場合でも、その動作はデータ演算部1003の動作と同じである。
【0168】
M列目に対する信号処理の結果では、データ演算部1003がマルチサンプリング処理を行った信号を出力する。上記で述べたようにM列目のSデータのデータ値は比較的小さい。また、Nデータは典型的にはダークレベルに相当するため、小さな値である。したがって、M列目のSデータやNデータは、対応する閾値thresh_S、thresh_Nより小さい。すなわち、N5_M_t1<thresh_Nの関係、および、S5_M_t1<thresh_Sの関係の両方が成り立つ。したがって、OR回路1208の出力はLowであり、セレクタ1208は、平均化処理部1206からの信号を出力する。また、信号mult_smpl_enがHighであるため、セレクタ1209はセレクタ1208からの信号を選択し、出力する。結果として、データ演算部1003の出力は、式6に基づいて次の式9で表される。
SNout={(S3_M_t1+S5_M_t1)-(N3_M_t1+N5_M_t1)}÷2 (式9)
【0169】
つまり、M列の画素に対しては、信号値に異常がないと判断し、マルチサンプリングによって得られた信号を出力する。なお、上述の通り、オフセット付加部203のオフセット量の違いにより、N3_M_t1<N5_M_t1の関係、および、S3_M_t1<S5_M_t1の関係が成り立つ。したがって、回路飽和の検知のためには、少なくともS5_M_t1に対して判定を行えばよい。
【0170】
L列目に対する信号処理の結果では、マルチサンプリング処理を行っていない信号を、データ演算部1003が出力する。上記で述べたようにL列目のSデータのデータ値は比較的大きい。そのため、オフセット付加部203によってオフセットが付加されたことで、一部の信号の信号値が回路飽和のレベルに達している。具体的には、S3_L_t1<S5_L_t1の関係が成り立つため、S5_L_t1の信号値が回路飽和レベルに達していて、一方、S3_L_t1は飽和レベルに達していない。その結果、S5_L_t1>thresh_Sの関係が成り立つ。
【0171】
したがって、OR回路1208の出力はHighであり、セレクタ1208は、減算器1201からの信号を出力する。また、信号mult_smpl_enがHighであるため、セレクタ1209はセレクタ1208からの信号を選択し、出力する。結果として、データ演算部1003の出力は、式5に基づいて次の式10で表される。
SNout=S1_L_t2-N1_L_t2 (式10)
【0172】
このように、本実施例によれば、マルチサンプリング処理を行ってノイズの低減された画素信号を出力することができる。一方、マルチサンプリング処理に使われるデータに異常値が含まれる場合は、マルチサンプリングの行われていないデータを出力する。したがって、マルチサンプリング処理を行うことによる画質の低下を防止することができる。結果として、撮像装置の画質を向上させることが可能である。
【0173】
本実施例の
図7(b)の例では、検知部611が一部のデジタル信号(N#_M_t1、S#_M_t1)のみを判定の対象としている。一方で、検知部611は、他のデジタル信号に対しては判定を行わない。このような構成により、回路規模の削減、あるいは、消費電力の低減の効果を得ることができる。さらに、オフセット付加部203の動作に合わせて、判定の対象を選択することで、追加の効果を得ることができる。具体的に、本実施例では、付加されるオフセットの値が相対的に大きい信号(S2_M_t1>S1_M_t1)に対して、判定を行っている。判定の目的が飽和の検知であるため、付加されるオフセットの値が大きい信号の信号値が先に飽和レベルに達するためである。したがって、このような構成によれば、小さい回路規模または低消費電力で、画質の向上が可能となる。もちろん、判定の目的に応じて、判定の対象とするデジタル信号は変わる。また、すべてのデジタル信号に対して判定を行ってもよい。
【0174】
この実施例での判定については、デジタル信号と閾値との比較を行うことを説明した。しかし、実施例1に記載したすべての判定処理が、本実施例の撮像装置に適用されうる。これらの判定を用いるための構成と、その効果については実施例1の説明を援用する。
【実施例4】
【0175】
光電変換システムの実施例について説明する。光電変換システムとして、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、カメラヘッド、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などがあげられる。
【0176】
図10に、光電変換システムは、上述の各実施例で説明した撮像装置100と、撮像装置100から出力された画素信号に対して、補正やデータ圧縮などの処理を行い、画像信号を取得する信号処理部を備える。
【0177】
また、必要に応じて、光電変換システムは、交換可能なレンズなどの光学部を備える。そのほかに、光電変換システムは、各種タイミング信号を出力するタイミング発生部、システム全体を制御する全体制御部、画像データを一時的に記憶する為のフレームメモリ部を備えうる。また、光電変換システムは記録媒体に記録または読み出しを行うためのインターフェース部や、撮像データの記録または読み出しを行う為の半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体を備える。
【実施例5】
【0178】
移動体の実施例について説明する。本実施例の移動体は、車載カメラを備えた自動車である。
図16(a)は、自動車2100の外観と主な内部構造を模式的に示している。自動車2100は、撮像装置2102、撮像システム用集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)2103、警報装置2112、主制御部2113を備える。
【0179】
撮像装置2102は、上述の実施例で説明したいずれかの光電変換装置が用いられる。警報装置2112は、撮像システム、車両センサ、制御ユニットなどから異常を示す信号を受けたときに、運転手へ向けて警告を行う。主制御部2113は、撮像システム、車両センサ、制御ユニットなどの動作を統括的に制御する。なお、自動車2100が主制御部2113を備えていなくてもよい。この場合、撮像システム、車両センサ、制御ユニットが個別に通信インターフェースを有して、それぞれが通信ネットワークを介して制御信号の送受を行う(例えばCAN規格)。
【0180】
図16(b)は、自動車2100のシステム構成を示すブロック図である。自動車2100は、第1の撮像装置2102と第2の撮像装置2102を含む。つまり、本実施例の車載カメラはステレオカメラである。撮像装置2102には、光学部2114により被写体像が結像される。撮像装置2102から出力された画素信号は、画像前処理部2115によって処理され、そして、撮像システム用集積回路2103に伝達される。画像前処理部2115は、S-N演算や、同期信号付加などの処理を行う。
【0181】
撮像システム用集積回路2103は、画像処理部2104、メモリ2105、光学測距部2106、視差演算部2107、物体認知部2108、異常検出部2109、および、外部インターフェース(I/F)部2116を備える。画像処理部2104は、画素信号を処理して画像信号を生成する。また、画像処理部2104は、画像信号の補正や異常画素の補完を行う。メモリ2105は、画像信号を一時的に保持する。また、メモリ2105は、既知の撮像装置2102の異常画素の位置を記憶していてもよい。光学測距部2106は、画像信号を用いて被写体の合焦または測距を行う。視差演算部2107は、視差画像の被写体照合(ステレオマッチング)を行う。物体認知部2108は、画像信号を解析して、自動車、人物、標識、道路などの被写体の認知を行う。異常検出部2109は、撮像装置2102の故障、あるいは、誤動作を検知する。異常検出部2109は、故障や誤動作を検知した場合には、主制御部2113へ異常を検知したことを示す信号を送る。外部I/F部2116は、撮像システム用集積回路2103の各部と、主制御部2113あるいは種々の制御ユニット等との間での情報の授受を仲介する。
【0182】
自動車2100は、車両情報取得部2110および運転支援部2111を含む。車両情報取得部2110は、速度・加速度センサ、角速度センサ、舵角センサ、測距レーダ、圧力センサなどの車両センサを含む。
【0183】
運転支援部2111は、衝突判定部を含む。衝突判定部は、光学測距部2106、視差演算部2107、物体認知部2108からの情報に基づいて、物体との衝突可能性があるか否かを判定する。光学測距部2106や視差演算部2107は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。
【0184】
運転支援部2111が他の物体と衝突しないように自動車2100を制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。
【0185】
自動車2100は、さらに、エアバッグ、アクセル、ブレーキ、ステアリング、トランスミッション等の走行に用いられる駆動部を具備する。また、自動車2100は、それらの制御ユニットを含む。制御ユニットは、主制御部2113の制御信号に基づいて、対応する駆動部を制御する。
【0186】
以上に説明した通り、自動車の実施例において、撮像装置2102には、上述の実施例の信号処理装置または撮像装置が用いられる。このような構成によれば、信号処理の性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0187】
1 信号処理装置
3 アナログデジタル変換部
5 判定部