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特許7455582ナノ及び/又はマイクロ構造化プリント電極
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ナノ及び/又はマイクロ構造化プリント電極
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/06 20060101AFI20240318BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20240318BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N27/06 A
G01N27/30 B
G01N27/30 Z
G01N27/416 302G
G01N27/416 316Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019559331
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061383
(87)【国際公開番号】W WO2018202793
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】102017000046831
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519383728
【氏名又は名称】テクノセンス エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】アルデュイーニ,ファビアナ
(72)【発明者】
【氏名】ネアグ,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】トメイ,マリナ リタ
(72)【発明者】
【氏名】ボッチェラ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】モスコーネ,ダニラ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0321278(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04319002(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第107202823(CN,A)
【文献】特開2016-212095(JP,A)
【文献】特開2012-083314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0083864(US,A1)
【文献】国際公開第2017/030934(WO,A1)
【文献】特開2004-264315(JP,A)
【文献】特開2013-238398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ及び/又はマイクロ構造化電気化学センサを作製する方法であって、
前記ナノ及び/又はマイクロ構造化電気化学センサは、少なくとも1つのプリント電極群を含み、
前記プリント電極群は、炭素系材料を含有するインク、及び/又は金、銀、白金、銅ならびにこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属のナノ若しくはマイクロ粒子を使用して支持体(5)上にプリントされた少なくとも1つの作用電極、少なくとも1つの参照電極、及び少なくとも1つの補助電極、及び
少なくとも1つのリザーバ(12)、少なくとも1つの疎水性又は親水性の膜(11)、及び少なくとも1つの電解溶液又は電解ゲルを含むのであって、
前記方法は、参照電極、作用電極、及び補助電極を支持体上にプリントすることを含み
前記方法は、さらに、前記支持体(5)が、前記リザーバ(12)内に含まれる前記電解ゲル又は電解溶液を通過させ、接触電解質として作用できる少なくとも1つの孔(21)を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記作用電極はカーボンブラックのナノ若しくはマイクロ粒子及び/又は金、銀、白金、銅ならびにこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属のナノ若しくはマイクロ粒子を含有する液体の液滴を前記作用電極の表面に堆積されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素系材料は黒鉛又はカーボンブラックを含む群から選択される、請求項1~に記載の方法。
【請求項4】
前記金属ナノ又はマイクロ粒子は、20μm~0.05μmの平均直径を有する、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ナノ又はマイクロ粒子は、10μm~0.3μm、又は1μmの平均直径を有する、請求項1~4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離塩素、二酸化塩素、全塩素及び過酢酸からなる群から選択される分析物の流体中での測定に有用な新規電気化学センサ及び当該センサを1つ以上含むプローブに関し、上記センサは、カーボンブラックのナノ又はマイクロ粒子及び/又は金、銀、白金、銅及びこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属のナノ又はマイクロ粒子からなる群から選択されるナノ又はマイクロ材料で構造化されたプリント電極を少なくとも1つ含むことを特徴とし、水質汚染のモニタリング及び/又は家庭用水若しくは工業用水、又は水泳プール用水の消毒に有用な化合物のモニタリングに有用である。
【0002】
本発明は、本発明のセンサを管理するための総合システムのキット、及び水質汚染のモニタリングならびに/又は家庭用水、工業用水、若しくは水泳プール用水の消毒に有用な化合物のモニタリングのための、かかる総合システム又はキットの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
飲料水の生物学的汚染物質は、現在もなお、急性感染症の主な原因化合物である。
【0004】
したがって、ヒトが消費することになる水の消毒処理を実行する必要がある。
【0005】
二酸化塩素は、当初は製紙産業で漂白剤として使用され、1950年代以降は、消毒剤及び殺藻剤としても用いられてきた。二酸化塩素は、広いpH範囲でその消毒特性が変わらず、二酸化塩素が添加された水の感覚刺激特性を有意に改変しない。
【0006】
「遊離塩素」は、次亜塩素酸イオンの濃度と次亜塩素酸の濃度の合計として定義され、次亜塩素酸イオン及び次亜塩素酸はいずれも、次亜塩素酸ナトリウム、ガス状塩素、次亜塩素酸カルシウム及びイソシアヌル酸誘導体(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びトリクロロイソシアヌル酸)の加水分解の反応によって発生する。
【0007】
「全塩素」は、無機遊離塩素と有機/無機結合塩素の合計として定義される。有機起源の硝酸塩及び/又はアンモニア化合物が水中に存在するとき、無機塩素は反応してクロラミンを形成し、その存在は結合塩素をもたらす。複合塩素は、アンモニアとの反応から誘導される結合無機塩素、及び塩素とアミノ酸などの窒素化合物との間の反応から得られる結合有機塩素に分類できる。
【0008】
過酢酸は、特徴的な刺激臭を有する液体有機化合物で、主に食品、化粧品及び製薬産業で消毒剤として用いられる。
【0009】
大型プラント表面の処理への過酢酸の使用は、室温で短時間での細菌低減、及び人体に有害な副生成物がないことなど、いくつかの管理上の問題を容易に解決できることから、確実にかなりの利益を生んでいる。
【0010】
しかし、過酢酸は、依然として工業スケールで最も使用されている消毒製品の1つであることは確かであるが、その安定性に関してマイナスの側面を呈する。実際には、過酢酸溶液は、各種濃度で市販されており、5%及び15%w/wのものが最も使用されている。
【0011】
消毒剤の濃度が、十分な消毒を保証するのに十分となり得るか、かつ同時に、処理後の水中に人体に有害な副生成物を生じるほど過度に高くなり得ないかを評価するため、かかる消毒剤の濃度をモニタリングしなければならない。
【0012】
現在まで、比色分析又は電気化学的検出を使用した、遊離塩素の測定のための多数の計器が市販されている。
【0013】
特に、市場にある電気化学プローブは、Ag/AgX参照電極、X=ハライド、と対になった伝統的な金電極から構成される(非特許文献1、非特許文献2)。これらのセンサは、いくつかの欠点を呈する。第1に、作用電極を実現するために大量の金を使用することから、非常に高額である。さらに、数回測定した後に作用電極の表面を清浄にする必要がある。
【0014】
文献では、遊離塩素を測定するための電気化学センサの開発を目的とした様々な研究が報告されている。例えば、非特許文献3では、白金、金及びガラス状炭素電極の性能を比較し、白金電極を使用することで、1ppmの検出限界(LOD)を達成している。上記の種類の電極は、高濃度の遊離塩素が存在すると、電極表面の不動態化プロセスが起こるという欠点がある。さらに、そのセンサ構造により、容易な小型化は不可能である(非特許文献3)。小型化電極を開発するため、非特許文献4では、スクリーンプリント炭素電極が記載されており、これはプルシャンブルーの電着を必要とすることから、センサ自体を容易に大量生産することは困難である。
【0015】
遊離塩素に関連して、イタリア保健院(Italian Institute of Health)は、分光光度法による検出が遊離塩素測定の基準方法であると定めている。塩素は、実際には、N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD)の溶液を酸化して、Wurster化合物の生成をもたらし、Wurster化合物の510nmにおける吸光度は、試料中の遊離塩素の濃度と関係する。
【0016】
しかし、高濃度の分析物は無色で不安定なイミン生成をもたらし、これは1ppmを超えるオキシダントの検量線の線形性喪失を引き起こす。さらに、この方法は、0.05~4ppmの範囲の分析物の測定を可能にする(非特許文献5、非特許文献6)。
【0017】
非特許文献7は、カーボンブラック及びプルシャンブルーのナノ粒子でプリント電極が機能化された、過酸化水素測定用電極を記載している。
【0018】
特許文献1は、カーボンブラック及びプルシャンブルーのナノ粒子でプリント電極が機能化された、グルコース測定用電極に言及している。
【0019】
非特許文献8は、プリント電極上に銀ナノ粒子が存在し、上記電極が、還元されたグラフェン及びセリウムIVを用いて機能化された、過酸化水素測定用電極を報告している。
【0020】
特許文献2は、プリント電極が導電性金属粒子を含有するインクで被覆されている、特に塩素又は過酢酸の測定に有用なセンサを記載している。この特許出願では、電極の特性を改善すると考えられるナノ又はマイクロ構造化金属性粒子の使用についての記載又は示唆はまったくない。
【0021】
特許文献3は、プリント電極上に白金マイクロ粒子が存在し得る、過酢酸測定用センサを記載している。
【0022】
近年、センサの分野での研究は、ナノ及び/又はマイクロ材料で修飾されたスクリーンプリント電極(ナノ及びマイクロセンサ)の製造に焦点が当てられてきた。スクリーンプリント品の製造に使用される技術のなかでも特に、スクリーンプリント技術は、スクリーンプリント電極を低コストで大量生産するのに最も適した技術である。
【0023】
多数の科学出版物において、種々の分析物の種々の測定基準法での測定のため、スクリーンプリント技術を使用し、さらにナノ材料で修飾されたスクリーンプリント電極の使用に基づくセンサが記載されている(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。
【0024】
「センサ」作製のために、カーボンナノチューブの安定な分散体を製造するには、硝酸などの強酸及び過マンガン酸塩などの強酸化性物質の使用が必要であり、これは適切な処理を必要とする生成物を生じることは、最新技術において既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】米国登録特許第6,627,058号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/083864号明細書
【文献】独国特許出願公開第4319002号明細書
【非特許文献】
【0026】
【文献】[online]、[令和元年11月24日検索]、インターネット<URL:http://www.etatronds.it>
【文献】[online]、[令和元年11月24日検索]、インターネット<URL:https://www.prominent.it/it>
【文献】Analytica Chimica Acta(蘭)(2005),537:p.293-298
【文献】Talanta(蘭)(2016),146:p.410-416
【文献】Current Technology of Chlorine Analysis for Water and Wastewater(米)(2002)17:p.2-11
【文献】Ottaviani M,Bonadonna L.(Ed.). Metodi analitici di riferimento per le acque destinate al consumo umano ai sensi del DL.Vo 31/2001.Metodi chimici. Roma:Istituto Superiore di Sanita(伊);2007.(Rapporti ISTISAN 07/31)
【文献】Electrochemistry Communications(蘭)47(2014)p.63-66
【文献】Microchim Acta(独)(2016);Vol 183; #10;p.2799-2806
【文献】Microchimica Acta(独)(2015)182: p.643-651
【文献】Electroanalysis(独)(2014)26:p.931-939
【文献】Electroanalysis(独)(2015)27:p.2230-2238
【文献】Microchemistry Acta(豪)(2016)183:p.2063-2083
【文献】Analytica Chimica Acta(蘭)707(2011)p.171-177
【文献】Electroanalysis(独)24(2012)p.743-751
【文献】Sensors and Actuators B(蘭)(2015)212:p.536-543
【文献】[online]、[令和元年11月24日検索]、インターネット<URL:http://www.etatronds.it/dettaglio_prodotto.php?id=187&super=18&cat=ESELECT>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
現在まで、水質管理の分野では、遊離塩素、全塩素、二酸化塩素、及び過酢酸のモニタリングに利用できるシステムであって、
-小型化システムに統合されており、
-低コストであり、
-その場(in situ)での適用に好適であり、
-非熟練者でも使用が容易であり、
-製造プロセスの間に、適切に廃棄しなければならない高汚染生成物を発生する強酸及び/又は強酸化剤の使用を必要としない、
システムを有することの必要性がなおも強く認識されている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本発明の目的は、二酸化塩素、遊離塩素、全塩素及び過酢酸からなる群から選択される分析物を流体中で測定するための、ナノ及び/又はマイクロ構造化プリント電極であって、カーボンブラックのナノ若しくはマイクロ粒子、及び/又は金、銀、白金、銅ならびにこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属のナノ若しくはマイクロ粒子を使用して作製されることを特徴とする、プリント電極である。
【0029】
本発明の更なる目的は、上記定義によるプリント電極を少なくとも1つ含む電気化学センサである。具体的には、かかるセンサは、
-少なくとも1つの「プリント電極群」を含み、ここで、上記「プリント電極群」は少なくとも1つの作用電極と、少なくとも1つの参照電極と、及び少なくとも1つの補助電極とを含み
かつ、
-作用電極が、カーボンブラックのナノ若しくはマイクロ粒子、及び/又は金、銀、白金、銅ならびにこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属のナノ若しくはマイクロ粒子、好ましくは1μmの平均直径を有する金を使用して、機能化/活性化/作製され、作用電極上に付着したカーボンブラックのナノ若しくはマイクロ粒子、及び/又は金属性粒子の量は、0.1~50μL、好ましくは1~20μL、より好ましくは2~10μLであり、上記付着(作用電極上への)は、2μLごとの連続的適用によって実施されることを特徴とする。
【0030】
本発明によると、参照電極及び対電極は、プリント電極の他方側に位置してもよく、すなわち、リザーバに暴露されていてもよい(換言すれば、プリント電極の異なる側に異なる電極がある)。
【0031】
本発明の更なる目的は、ナノ及び/又はマイクロ構造化電気化学センサであって、
少なくとも1つの作用電極、少なくとも1つの参照電極、及び少なくとも1つの補助電極を含有する「プリント電極群」を少なくとも1つ含み、好ましくは上記プリント電極群は、少なくとも1つの孔(21)を含み、リザーバ(12)内に収容されているゲルがこの孔を通過し、接触電解質として作用できる(図1d参照)ことを特徴とする、センサである。
【0032】
好ましくは、作用電極は、20~0.05μm、好ましくは10~0.3μm、より好ましくは(約)1μm、の平均直径を有する金、銀、白金、銅及びこれらの組み合わせ又は合金からなる群から選択される金属マイクロ粒子で活性化/作製され、
かつ
-補助電極は、炭素系材料、好ましくは黒鉛を含有するインクを使用したプリントのプロセスの間に作製され、
又は、
-作用電極(「プリント電極群」に属する)は、例えば、非特許文献13に記載のように、プリントプロセスの終了時に、例えば、非特許文献14に記載のように、「ドロップキャスティング」によって機能化され、
これは、
-カーボンブラック又は金、銀、白金、銅及びこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属性ナノ材料からなる群から選択されるナノ材料を使用することによって実施され、好ましいのは、例えば、非特許文献15に記載のように得られる金のナノ粒子であり、
ここで、作用電極上に付着されるカーボンブラックのナノ若しくはマイクロ粒子、又は金属性粒子の量は、0.1~50μL、好ましくは1~20μL、より好ましくは2~14μLであり、
かつ、上記付着は、2μLごとの連続的適用によって実施される。
【0033】
上記のプロセスで、ドロップキャスティングによって得られるプリント電極は、更に、
-遊離塩素の測定は、電極に、-0.2~+0.4V、好ましくは-0.2~+0.1V、最も好ましくは-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されること、
-二酸化塩素の測定は、電極に、-0.02~+1V、好ましくは+0.01~+0.5V、最も好ましくは+0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されること、
-全塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.3~+0.6V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-過酢酸の測定は、電極に、-0.3~0V、好ましくは-0.1~0V、最も好ましくは-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されること、を特徴とし、
一方で、上記のプロセスに従って金属マイクロ粒子を含有するインクを使用することによって得られるプローブは、
-遊離塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.5V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-二酸化塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.3~+0.5V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-全塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.3~+0.6V vs エラー! リンクが正しくありません。の電位をかけることによって実施されること、
-過酢酸の測定は、電極に、-0.5~0V、好ましくは-0.3~0V、最も好ましくは-0.2V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されることを特徴とする。
【0034】
本発明の更なる目的は、上記の電気化学センサを1つ以上備えるプローブである。
【0035】
本発明の更なる目的は、
少なくとも1つの作用電極、少なくとも1つの参照電極、及び少なくとも1つの補助電極を含有する「プリント電極群」を少なくとも1つ含み、好ましくは上記プリント電極群は1つの孔(21)を含み、リザーバ(12)内に収容されているゲルがこの孔を通過し、接触電解質として作用できる(図1d参照)、
ナノ及び/又はマイクロ構造化電気化学センサの作製方法である。
【0036】
好ましくは、作用電極及び参照電極は、20~0.05μm、好ましくは10~0.3μm、より好ましくは(約)1μmの平均直径を有する、金、銀、白金、銅及びこれらの組み合わせ又は合金からなる群から選択される金属マイクロ粒子を含有するインクを使用して、プリントのプロセスの間に作製され、
かつ
-補助電極は、炭素系材料を含有するインクを使用したプリントのプロセスの間に作製され、好ましくは黒鉛であり、
又は(あるいは)、
-作用電極(「プリント電極群」に属する)は、プリントプロセスの終了時に「ドロップキャスティング」によって機能化され、これは、
-カーボンブラック又は金、銀、白金、銅及びこれらの組み合わせ若しくは合金からなる群から選択される金属性ナノ材料からなる群から選択されるナノ材料を使用することによって実施され、好ましくは、例えば、非特許文献15に記載のように得られる金のナノ粒子であり、
ここで、作用電極上に付着されるカーボンブラックのナノ若しくはマイクロ粒子、又は金属性粒子の量は、0.1~50μL、好ましくは1~20μL、より好ましくは2~14μLであり、
上記付着は、2μLごとの連続的適用によって実施される。
【0037】
上記のプロセスで、ドロップキャスティングによって得られたプリント電極は、更に、
-遊離塩素の測定は、電極に、-0.2~+0.4V、好ましくは-0.2~+0.1V、最も好ましくは-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されること、
-二酸化塩素の測定は、電極に、-0.02~+1V、好ましくは+0.01~+0.5V、最も好ましくは+0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されること、
-全塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.3~+0.6V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-過酢酸の測定は、電極に、-0.3~0V、好ましくは-0.1~0V、最も好ましくは-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されることを特徴とし、
一方で、上記のプロセスに従って金属マイクロ粒子を含有するインクを使用することによって得られるプローブは、
-遊離塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.5V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-二酸化塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.3~+0.5V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-全塩素の測定は、電極に、0~+1V、好ましくは+0.2~+0.8V、最も好ましくは+0.3~+0.6V vs Ag/AgXの電位をかけることによって実施されること、
-過酢酸の測定は、電極に、-0.5~0V、好ましくは-0.3~0V、最も好ましくは-0.2V vs Ag/AgClの電位をかけることによって実施されることを特徴とする。
【0038】
本発明の別の目的は、上記の少なくとも1つの電気化学プローブを含み、かつ、
-少なくとも1つのプローブホルダー、
-少なくとも1つのカプセル、
-少なくとも1つの電解溶液又は電解ゲル、
-少なくとも1つの疎水性及び/又は親水性の膜、及び
-少なくとも1つの電子制御、実装及び/又はデータ転送
を更に含む、キットである。
【0039】
かかるキットは、当業者が周知の方法での連続測定用とするのに有用である。
【0040】
本発明によると、センサは、上記のようにプリント電極を含み、好ましくは作用電極と、参照電極と、対電極と、及び電極群を設定し、電極群から来る電流信号を取得及びデコードするというタスクを有する電子デバイスとで構成され、ここで出力信号は、電圧及び/又は電流及び/又はデジタル及び/又はLAN及び/又は無線接続における信号であることができる。
【0041】
本発明によるセンサは、単回分析物測定に好適であり(図1a参照)又は分析物の連 続モニタリング用に順次挿入される(図1b及び図1c参照)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a】分析物の単回検出に有用な、本発明によるプローブを示す。
図1b】検査中の分析物を連続検出するための、本発明によるプローブを示す。
図1c】検査中の分析物を連続検出するための、本発明によるプローブの断面詳細図である。
図1d】プリントセンサ(作用電極/参照電極/補助電極)(10)を示す。
図1e】本発明の少なくとも1つのプローブ物体を収容するのに有用なプローブホルダーの例を示す。
図2a】プリント電極群(1)の分解図である。
図2b】プリント電極群(1)の組立図である。
図3a】ドロップキャスティングによる修飾の前の、カーボンブラック(CB)の分散を有するプリント電極の電子顕微鏡写真である。
図3b】ドロップキャスティングによる修飾の前の、カーボンブラック(CB)の分散を有するプリント電極の電子顕微鏡写真である。
図3c】ドロップキャスティングによる修飾の後の、カーボンブラック(CB)の分散を有するプリント電極の電子顕微鏡写真である。
図3d】ドロップキャスティングによる修飾の後の、カーボンブラック(CB)の分散を有するプリント電極の電子顕微鏡写真である。
図4】制御及び/又は作動ユニットを示す。
図5a】-0.25V vs Ag/AgClの固定電位において、0.1~1060ppmの範囲の次亜塩素酸ナトリウム(遊離塩素)濃度で、2、4、6、8及び10μLのCB(2μLをn回)で修飾された電極の電流応答の傾向を示す。
図5b】電位の範囲を-0.2V~0.4V vs Ag/AgClで変えることによる、電流応答の傾向を示す。
図5c】pHを2~12の範囲で変えることによる電流応答の傾向を示す。
図5d】イオン強度変更後の電流応答の傾向を示す。
図6a】電極間再現性に関するデータを示す。
図6b】電極内再現性に関するデータを示す。
図7】妨害試験で、考えられる妨害イオン種を評価することによって得られた結果を示す。
図8a】二酸化塩素センサに関して得られた結果を示す。
図8b】0V vs AgClの電位をかけ、様々な量のCBで修飾したセンサを使用して実施した電流滴定研究の結果を示す。
図9a】緩衝液B.R0.02M+KCl0.02M中の二酸化塩素濃度を、pHの関数として、分光光度分析によって測定したデータを示す。
図9b】B.R.0.02M+KCl0.02M中で、分析物不在時(破線)及び存在時(実線)に、pH4(灰色線)及びpH=2(黒色線)において得られた分光分析データを確認するためのサイクリック・ボルタンメトリ試験を示す。
図10】二酸化塩素の測定に関する電極間電流滴定試験を示す。
図11a】過酢酸の測定用センサによる電流滴定試験で得られた結果。0.1M酢酸緩衝液中、pH=5.4及びE=-0.1Vにおいて、作用面に付着した金ナノ粒子の量の最適化を示す。
図11b】過酢酸の測定用センサによる電流滴定試験で得られた結果。0.1M酢酸緩衝液中及びpH=5.4において、6μLの金ナノ粒子の場合の電位の最適化を示す。
図11c】過酢酸の測定用センサによる電流滴定試験で得られた結果。0.1M酢酸緩衝液中及びE=-0.1Vにおいて、6μLの金ナノ粒子の場合のpH最適化を示す。
図11d】過酢酸の測定用センサによる電流滴定試験で得られた結果。0.1M酢酸緩衝液中、pH=5.4及びE=-0.1において、6μLの金ナノ粒子の場合の作用溶液のイオン強度の最適化を示す。
図12】遊離塩素の自動測定ができるように開発された、センサが最適化され、ポテンシオスタットと統合されたシステムのブロック線図を示す。
図13】センサと演算増幅器との間の通信システムを示す。
図14】マイクロコントローラと演算増幅器図との間の通信システムを示す。
図15】技術的当業者によって容易に書かれるプログラムの操作アルゴリズムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1aは、
-プリント電極群(1)、
-測定ディスプレイ(2)、
-デバイスの中央ボディ(3)、
-分析しようとする液体の容器(4)
を含む、分析物の単回検出に有用な本発明によるプローブを示す。
【0044】
図1bは、検査中の分析物を連続検出するための、本発明によるプローブを示す。
【0045】
図1cは、
-カプセル支持構造(9)、
-プリントセンサ(作用電極又は参照電極又は補助電極)(10)、
-疎水性又は親水性の膜(11)、
-電解ゲル溶液(12)、
-センサの電子的管理又はシステムを含む、センサボディ(13)、
-カプセルへの接続用のコンタクト(14)、
-センサボディ(13)への接続用のコンタクト(15)、
-スクリーンプリント電極(16)の接続ケーブル(接続ケーブルは各電極に1つずつで、合計3つである)、
-分離隔膜(20)
を含む、検査中の分析物を連続検出するための、本発明によるプローブの断面詳細図である。
【0046】
図1dは、プリントセンサ(作用電極/参照電極/補助電極)(10)を示し、その中に数個の孔(21)が存在し、リザーバ(12)内に収容されているゲルがこの孔を通過し、接触電解質として作用できる。
【0047】
図1eは、本発明の少なくとも1つのプローブ物体を収容するのに有用なプローブホルダーの例を示し、図中、
(17)は流量計(流量パラメータの制御用)を表し、
(18)は当該技術分野において既知のpHプローブ又は電極を表し、
(19)は本発明によるプローブ又は電極を表す。
【0048】
プローブホルダーは、流量パラメータの制御が上流で行われる場合には単一モジュール(19)からなり得、そうでなければ、モジュール(17)及び(19)から、又はモジュール(17)、(19)及び、分析物の更なる測定のための1つ以上のプローブを挿入するための少なくとも1つの更なるモジュールからなり得ることは、当業者には明白である。
【0049】
図2a及び図2bは、プリント電極群(1)の分解図(図2a)及び組立図(図2b)を示し、
-その上に電極がプリントされた、可撓性基材又は支持体(5)、
-3本の金属導電性トラック(6)、そのうちの1つはその端部で参照電極(6a)を構成し、
-3本の黒鉛トラック(7)(及び/又は当該技術分野において既知のその他の材料)、そのうち1つはその端部で本発明によるナノ又はマイクロ構造化されており、作用電極(7a)を構成し、別の1つはその端部で補助電極(7b)を構成し、及び
-絶縁層(8)
を含む。
【0050】
ドロップキャスティングによる修飾の前(図3a及び図3b)及び後(図3c及び図3d)の、カーボンブラック(CB)の分散を有するプリント電極の電子顕微鏡で得られた図を示す。図3c及び図3dでは、作用電極表面を完全に覆うCBナノ粒子の付着が明らかである。
【0051】
図4は、種々の周側プローブによって検出されたデータを収集し、このデータを修飾する(該当する場合)ための注入ポンプ(dosing pump)を作動する機能を有する制御及び/又は作動ユニット(当該技術分野において既知)を示す。これらのパラメータ(遊離塩素、二酸化塩素、全塩素、過酢酸及び/又はpH)の制御は、手動で又は自動的に、パラメータの現地制御又は遠隔制御により行うことができる。
【0052】
現地又は遠隔において、ディスプレイ、任意にタッチスクリーンの存在は、「システム」の管理を改善し、制御及び/又は実施ユニットに関する更なる情報については、非特許文献16が有用となり得る。
【0053】
図5a、図5b、図5c及び図5dは以下を報告する。
-0.25V vs Ag/AgClの固定電位において、0.1~1060ppmの範囲の次亜塩素酸ナトリウム(遊離塩素)濃度で、2、4、6、8及び10μLのCB(2μLをn回)で修飾された電極の電流応答の傾向(図5a)。図5aには、感度(黒色棒)及びRSD%(灰色棒)が報告されている。作用電極上に付着したCBナノ粒子の量が増えると、電流応答の増大が観察されている。再現性、信号安定性及び感度に関して最善の結果が得られたことから、CB体積は10μLを選択した。
-電位の範囲を-0.2V~0.4V vs Ag/AgClで変えることによる、電流応答の傾向(図5b)。感度に関して最善の結果は、電極間RSD%が6%に等しいときに-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけることによって得られた。
-pHを2~12の範囲で変えることによる電流応答の傾向(図5c)。pH値5で、高感度かつ正確な測定を得ることができた。
-イオン強度変更後の電流応答の傾向(図5d)。Britton-Robinsonの緩衝液0.02M+KCl0.02Mで、使用に最善の溶液が得られた。
【0054】
図6a及び図6bは、電極間(図6a)及び電極内(図6b)再現性に関して得られたデータ(電流曲線及び関係式、検量線-挿入図)を示す。
【0055】
具体的には、同じ電極又は異なる電極を用いて実施した測定は、類似の応答を与え、システムの再現性を実証した。
【0056】
検量線は、電流滴定試験中に-0.1Vの電位をかけ、Britton Robinson緩衝液0.02M+KCl0.02M pH=5中の次亜塩素酸塩濃度に対して電流の平均値(n=3)を記録することによって得た。
【0057】
得られた結果から、卓越した電極間及び電極内再現性が観察され、同じセンサで、0.05~200ppmの塩素濃度範囲を検出することができた。
【0058】
図7は、妨害研究で、考えられる妨害イオン種(NO 、SO 2-、CO 2-、HCO 及びClイオン)を評価することによって得られた結果を示す。これらのイオンは、メンテナンス処理中の水泳プールに存在し得る。得られた結果は、イオンの存在は分析物と比較してセンサ応答を変更しなかったこと、とりわけ、センサはそれらのイオンに対して電気化学的応答を示さなかったことを示す。
【0059】
図8a及び図8bに、二酸化塩素センサに関して得られた結果を示す。詳しくは、B.R.0.02M+KCl0.02M,pH=2中で、分析物不在時(破線)及び存在時(連続線)に、非修飾センサ(黒色線)及びCB修飾センサ(灰色線)を用いたボルタンメトリー研究の結果を示し(図8a)、この場合、二酸化塩素の標準溶液を、試薬hを使用して調製した。
【0060】
図8bは、0V vs AgClの電位をかけ、様々な量のCBで修飾したセンサを使用して実施した電流滴定研究から得られた結果を示す(図8b)。
【0061】
図9a及び/又は図9bは、緩衝液B.R0.02M+KCl0.02M中の二酸化塩素濃度をpHの、関数として、分光光度分析によって調べて得たデータを示す(黒色棒、即時濃度、灰色棒、24時間後)(図9a)。
【0062】
図9bは、B.R.0.02M+KCl0.02M中で、分析物不在時(破線)及び存在時(実線)に、pH4(灰色線)及びpH=2(黒色線)において得られた分光分析データを確認するためのサイクリック・ボルタンメトリ試験を示す。
【0063】
図10は、3種類の電極について、0.1V vs Ag/AgClの電位を、Britton-Robinson緩衝液0.02M+KCl0.02M、pH=2にかけることによる、二酸化塩素の測定に関する電極間電流滴定試験を示す(薄灰色、濃灰色及び黒色の電流図は、各種電極の応答を示す)。挿入図:分析物の濃度(0.1~10ppm)に対する、3種類の電極から得られた電流の平均として得られた検量線。二酸化塩素の標準溶液の調製には「試薬h」を使用。
【0064】
図11a、図11b、図11c及び図11dは、操作パラメータの選択のために実施した、過酢酸の測定用センサによる電流滴定試験で得られた結果を示す。
・0.1M酢酸緩衝液中、pH=5.4及びE=-0.1Vにおいて、作用面に付着した金ナノ粒子の量の最適化。
・0.1M酢酸緩衝液中及びpH=5.4において、6μLの金ナノ粒子の場合の電位の最適化。
・0.1M酢酸緩衝液中及びE=-0.1Vにおいて、6μLの金ナノ粒子の場合のpH最適化。
・0.1M酢酸緩衝液中、pH=5.4及びE=-0.1において、6μLの金ナノ粒子の場合の作用溶液のイオン強度の最適化。
【0065】
図12は、遊離塩素の自動測定ができるように開発された、センサが最適化され、ポテンシオスタットと統合されたシステムのブロック線図を示す。プローブの内側に、電気回路図及び当該技術分野において周知のソフトウェアを使用して電極からのデータを調整、処理、及び伝達するために設けられたブロックが存在する。
【0066】
図13は、センサと演算増幅器との間の通信システムを示す。実際に、信号処理システムは、電圧を一定に保つため、及び電流を測定するための演算増幅器の使用をもたらした。
【0067】
演算増幅器は、マイクロコントローラの制御システムを測定システムから分離することができる。
【0068】
図14は、マイクロコントローラと演算増幅器図との間の通信システムを示す。処理システムは、マイクロコントローラと演算増幅器との間にADC及び12ビットDACによる連続データ交換をもたらす。マイクロコントローラは、DACを使用して、電極にかける作用電圧を連続的に提供する。演算増幅器は、電極からの電流を変換するために使用される。この電流は、電圧に変換され、マイクロコントローラ上に存在するADCにより測定される。
【0069】
電子システムの出力時に信号が発生し、これが次に制御ユニット及び実装制御ユニットへと送られる。この信号は、測定された分析物濃度に比例する。
【0070】
ポテンシオスタット回路、及び電極アセンブリからの電流を取得するマイクロコントローラ(当該技術分野において周知であり、センサ専門家が容易に複製できる)は、特定の分析物濃度の測定を可能にするシステムを構成し、システムロジックを管理するデバイスは、当該技術分野において周知のマイクロコントローラである。
【0071】
図15は、技術的当業者によって容易に書かれるプログラムの操作アルゴリズムを記載している。メインプログラム(図12も参照)は、ピン割り当て後に、その中で使用される変数宣言を、電極にかかる作用電圧変数を含めて、提供する。作用電圧変数の設定後に、プログラムは、マイクロコントローラに入力電圧をもたらす電極間の電流の測定を開始する。プログラムは、出力信号の種類の選択も可能にする。
【0072】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、例示する。
【0073】
材料及び方法
機器
マグネチックスターラー、Hanna instruments
デジタルpH計334-B、Amel Instrument
化学天秤、Sartorius
高性能汎用精密スクリーン印刷機、DEK 245,DEK,Weymouth,UK
超音波発生装置 Falc
携帯型ポテンショスタット/ガルバノスタット、PalmSens Instrument,Eco Chemie,Utrecht,Olanda con software PSTrace 4.4
【0074】
試薬
a)黒鉛インク、Electrodag 423 SS
b)銀インク、Electrodag 477 SS
c)金インク、Dupont BQ331
d)絶縁インク、Gwent Group D2070423P5
e)絶縁インク、Electrodag PF 455B
f)ポリエステル基材、Autostat HT5
g)金ナノ粒子、Stream Chemicals Ref.79-0180
h)二酸化塩素放出混合物、Aldrich chemical Company,[7758-19-2]
【実施例1】
【0075】
ドロップキャスティング法を使用した、遊離塩素測定に有用な機能化センサの作製手順
遊離塩素測定用の機能化センサの作製には、「出発製品」として、非機能化センサ又は電極を使用し、機能化は、作用電極表面上に10μL(毎回2μLで5回の付着)のCB分散体(Cabot Ravenna Italy社のカーボンブラック N220)を付着することによって実施し、分散体は、1mgのCBを1mLの水/ジメチルホルムアミド溶液(1:1)に加えることによって調製し、使用前にこの分散体を59KHzで1時間超音波処理し、遊離塩素検出用の機能化電極を得た。
【0076】
分析しようとする液体(遊離塩素の検出のため)を、読み取り前に、Britton-Robinson緩衝液+KClからなる作用溶液に、pH5で添加した。イオン強度は、Britton-Robinsonが0.02M及びKClが0.02M であった。測定には、-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけた。
【0077】
本発明による遊離塩素電極を、分析的観点から特性評価し、線形範囲、感度及び電極間ならびに電極内再現性を測定した。検量線は、電流滴定試験中に-0.1Vの電位をかけ、Britton Robinson緩衝液0.02M+KCl0.02M、pH=5中の遊離塩素の関数として、電流の平均値(n=3)を記録することによって得、感度0.32±0.02μΑ/ppm及びRSD%=6%を得た。得られた結果は、卓越した電極間再現性(図6a)及び電極内再現性(図6b)を示し、本発明によるセンサは、0.05~200ppmの範囲の遊離塩素濃度を検出することができた。
【0078】
トリクロロイソシアヌル酸を標準として使用しても、類似の応答、0.36±0.01μΑ/ppm及びRSD%=3%、が観察された。
【0079】
本発明によるセンサの検出限界(LOD)は、S/N=3として計算して0.01ppmに等しく、S/N=10からはLOQ=0.03ppmが得られた。
【実施例2】
【0080】
作用電極及び参照電極が、プリントのプロセス中に金属含有インクを用いて作製される場合の、遊離塩素測定に有用な機能化センサの作製手順(補助電極は、当該技術分野において既知の方法で、黒鉛含有インクを用いて作製される)。
遊離塩素測定用機能化センサの作製では、非機能化センサ又は電極を「出発製品」として使用し、金マイクロ粒子をベースとするインクを作用電極に使用した。
【0081】
測定には、センサの適用分野に基づいて、緩衝系、好ましくはホスフェート、ボレート、アセテート、シトラート、又はこれらの混合物からなる電解質溶液を使用し、より好ましくはpH値を2~12の範囲に維持する緩衝液を使用し、センサの参照電極の種類及び測定する分析物に関連して、支持電解質、好ましくはハロゲン化塩を可変濃度、より好ましくは1%~15%で、必要であれば使用する。
【0082】
測定では、電極に+0.5V vs Ag/AgXの電位をかけた。
【0083】
この電極を使用して、範囲/線形性インターバル及び電極間再現性を決定するための分析的特性評価へと移動し、それぞれ0~20ppm及び2%であった。さらに、感度は400nA/ppmであることが判明した。
【実施例3】
【0084】
ドロップキャスティング法を使用した、二酸化塩素の測定に有用な機能化センサの作製手順
機能化センサを作製するため、「出発製品」として、非機能化センサを使用し、機能化は、2μLのカーボンブラックナノ粒子を用いて実施した(実施例1に記載のように作製)(図8)。
【0085】
測定のため、Britton-Robinson緩衝液+KClを、pH2(図9)で、Britton-Robinson及びKClの両方についてイオン強度0.02M(図9)で用い、電極に+0.1V vs Ag/AgClの電位をかけた。
【0086】
二酸化塩素標準溶液を、試薬h、二酸化塩素放出混合物を用いて調製した。
【0087】
上記の操作パラメータを使用して、機能化電極を得た。
【0088】
本発明による二酸化塩素電極を、分析的観点から特性評価し、線形範囲、感度及び電極間ならびに電極内再現性を測定した。検量線は、電流滴定試験中に+0.1Vの電位をかけ、Britton Robinson緩衝液0.02M+KCl0.02M、pH=2中の二酸化塩素の濃度の関数として、電流の平均値(n=3)を記録することによって得、感度は13.4±0.3nA/ppmであった(図10)。
【0089】
得られたデータから、卓越した電極間(RSD%=2.2)電極内(RSD%=2.7)再現性が観察され、本発明によるセンサは、0.1~10ppmの二酸化塩素濃度範囲を検出することができた。
【0090】
本発明によるセンサの検出限界(LOD)は、0.03ppmに等しく、LOQ=0.1ppmであった。
【0091】
最後に、本発明によるセンサは、プール水での妥当性も証明された。プール水は複合マトリックスであるため、試料を希釈する必要があり、希釈倍率は、感度と低マトリックス効果との間の妥協点として、緩衝液中で1:5v/vであった。得られた感度は5.4±0.4nA/ppmであった。回収法を用いてセンサの精度を評価し、78±8%の回収率を得た。
【0092】
あるいは、亜塩素酸ナトリウム及び塩酸を用いて二酸化塩素の標準溶液を合成すことができ、二酸化塩素の測定に有用な機能化電極は、278±65nA/ppmに等しい改善された感度を示した。
【実施例4】
【0093】
作用電極及び参照電極が、プリントのプロセス中に、金属含有インクを用いて作製される場合の、二酸化塩素測定用機能化センサの作製手順
二酸化塩素測定用機能化センサの作製のため、非機能化センサ又は電極を「出発製品」として使用し、金マイクロ粒子をベースとするインクをその作用電極に使用した。
【0094】
測定には、センサの適用分野に基づいて、緩衝系、好ましくはホスフェート、ボレート、アセテート、シトラート、又はこれらの混合物からなる電解質溶液を使用し、より好ましくはpH値を2~12の範囲に維持する緩衝液を使用し、センサの参照電極の種類及び測定する分析物に関連して、支持電解質、好ましくはハロゲン化塩を可変濃度、より好ましくは1%~15%で、必要であれば使用する。
【0095】
測定には、+0.3~+0.5V vs Ag/AgXの電位をかけた。
【0096】
本発明による二酸化塩素電極を、分析的観点から特性評価し、線形範囲、及び電極間ならびに電極内再現性を測定し、10ppmまでの線形範囲を良好な電極間再現性(SD%=5%)で得た。
【実施例5】
【0097】
ドロップキャスティング法を使用した、全塩素測定に有用な機能化センサの作製手順
全塩素測定用機能化センサを作製するため、「出発製品」として、非機能化センサを使用した。機能化は、6μLの金ナノ粒子(試薬g)を用いて実施した。
【0098】
測定には、緩衝系、好ましくはホスフェート、ボレート、アセテート、シトラート、又はこれらの混合物からなる電解質溶液を使用し、センサの適用分野に基づいて、より好ましくはpH値を2~8の範囲に維持する緩衝液を使用し、センサの参照電極の種類及び測定する分析物に関連して、支持電解質、好ましくはハロゲン化塩を可変濃度、より好ましくは1%~15%で、必要であれば使用する。
【0099】
測定には、+0.3~+0.6V vs Ag/AgXの電位をかけた。
【0100】
本発明による全塩素電極を、分析的観点から特性評価し、線形範囲、及び電極間ならびに電極内再現性を測定し、良好な電極間再現性(SD%=5%)で20ppmまでの線形範囲を得た。
【実施例6】
【0101】
作用電極及び参照電極が、プリントのプロセス中に、金属含有インクを用いて作製される場合の、全塩素測定用機能化センサの作製手順
全塩素の測定に有用なセンサ用のスクリーンプリント電極を、平均直径が1μm(試薬c)の金マイクロ粒子をベースとするインクを用いたプリントプロセスにより機能化した。
【0102】
読み取りには、センサの適用範囲に従って選択された緩衝系、好ましくはホスフェート、ボレート、アセテート、シトラート、又はこれらの混合物からなる電解溶液又は電解ゲルを使用し、より好ましくはpH値を2~12の範囲に維持する緩衝液を使用し、センサの参照電極の種類及び測定する分析物に関連して、支持電解質、好ましくはハロゲン化塩は、可変濃度、より好ましくは1%~15%で使用され、必要であれば、使用する膜の種類に応じて、天然起源の有機化合物の族から選択された、水に混和可能なゲル化剤が85%~100%の範囲の比率で使用される。
【0103】
読み取りには、0.3~0.6V vs Ag/AgXの電位を電極にかけた。
【0104】
本発明による全塩素電極を、分析的観点から特性評価し、線形範囲、感度及び電極間ならびに電極内再現性を測定し、良好な電極間再現性(RSD%=6%)で20ppmまでの線形範囲を得た。
【実施例7】
【0105】
ドロップキャスティング法を使用した、過酢酸測定に有用な機能化センサの作製手順
過酢酸測定用機能化センサを作製するため、「出発製品」として、非機能化センサを使用した。機能化は、Strem Chemicals,カタログ番号79-0180より購入した、市販の直径5nm(試薬g)金ナノ粒子の分散体6μLを用いて(図11a)、-0.1V vs Ag/AgClの電位をかけて実施した(図11b)。
【0106】
測定には、酢酸緩衝液0.1MをpH5.4(図11c)、及びイオン強度0.1M(図11d)で使用し、電極に0.1V vs Ag/AgClの電位をかけた。
【0107】
上記の操作パラメータを使用して、機能化電極を得た。
【0108】
本発明による過酢酸電極を、分析的観点から特性評価し、線形範囲、感度及び電極間ならびに電極内再現性を測定した。検量線は、電流滴定試験中に-0.1Vの電位をかけ、酢酸緩衝液0.1M pH=5.4中の過酢酸の濃度の関数として、電流の平均値(n=3)を記録することによって得て、感度4.21±0.09nΑ/μΜ及びSD%=2%を達成した。
【0109】
得られたデータから、卓越した電極間及び電極内再現性が観察され(図12)、本発明によるセンサは、20~1000μM(1.5~76ppm)の過酢酸濃度範囲を検出することができた。
【0110】
本発明によるセンサの検出限界(LOD)及びLOQを計算し、それぞれ1及び3μΜが得られた。
【0111】
最後に、本発明によるセンサは、プール水での適合性も証明された。プール水は複合マトリックスであるため、試料を希釈する必要があり、希釈倍率は、感度と低マトリックス効果との間の妥協点として、緩衝液中で1:4v/vであった。
【0112】
得られた感度は6.06±0.03nΑ/μΜ~1000μΜであった。
【0113】
回収法を用いてセンサの精度を評価し、96.4±0.6%の回収率が得られ、試験した本発明に従いセンサの精度が実証された。
【実施例8】
【0114】
作用電極及び参照電極が、プリントのプロセス中に、金属含有インクを用いて作製される場合の、過酢酸測定に有用な機能化センサの作製手順
過酢酸測定用機能化センサの作製では、非機能化センサ又は電極を「出発製品」として使用し、金マイクロ粒子をベースとするインクをその作用電極に使用した。
【0115】
測定には、0.05M酢酸緩衝液又はBritton-Robinson緩衝液からなる作用溶液を、pH5.4及びイオン強度0.05Mで使用し、電極に-0.2V vs Ag/AgClの電位をかけた。
【0116】
この電極を使用して、線形範囲及び電極間再現性を計算し、それぞれ5~2000μΜ(0.4~150ppm)及び10%であった。
【0117】
さらに、LOD及びLOQを計算し、それぞれ0.8及び2.5μΜが得られた。
【実施例9】
【0118】
実施例1の電極又はセンサを用いた、分析する液体中に存在するイオンによる妨害の評価
当該技術分野の専門家は、ヒトによる消費を意図する水には、以下のようなイオン、NO 、SO 2-、CO 2-、HCO 及びClが存在することを知っている。これはセンサ応答を妨害する可能性があり、これらのイオンは、メンテナンス処理中の水泳プールの水中に存在し得る。
【0119】
上記イオンの存在又は不在が測定を妨害し得るか否かを評価するため、実施例1のセンサを用いた試験を実施した。
【0120】
図7に報告した結果は、これらのイオンの存在が、分析物に対するセンサ応答を変更しなかったことを示し、特に、センサは、試験濃度で分析物に対する電気化学的応答を示さなかったことを示す。
【実施例10】
【0121】
インライン流体(プール水)中の化学種の連続分析のためのプリント電気化学センサ及びプローブ
図1b~図1eに示す、得られたプローブを、電子部品に接続してインライン測定を実施した。読み取りの精度及び再現性をより高くするため、プローブを、流量計を備えた適切なプローブホルダーに挿入し、当該流量計により、圧力、流量、温度等の液体の流れのパラメータをチェックすることができた。図1b、図1c、及び図1dを参照されたい。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5a-d】
図6ae6b
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11a-d】
図11d
図12
図13
図14
図15