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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
A61M25/092 510
A61M25/092 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020011322
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115283
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑太
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0012929(US,A1)
【文献】特表2002-508675(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端部に接続された操作部と、
複数の操作ワイヤであって、各前記操作ワイヤの先端部は前記カテーテルシャフトの先端部に固定され、各前記操作ワイヤの基端部は前記操作部または前記カテーテルシャフトの前記基端部に固定された、複数の操作ワイヤと、
を備え、
前記操作部は、前記カテーテルシャフトの前記基端部の延伸方向に平行な軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記操作ワイヤの張力を変化させ、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲度合いを変化させる第1の回転部材を有し、
前記複数の操作ワイヤのそれぞれの前記先端部は、前記カテーテルシャフトの前記先端部における周方向に互いに異なる位置に固定されており、
前記操作部は、さらに、前記軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記複数の操作ワイヤの中から最大の張力が生じる前記操作ワイヤを選択し、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲方向を変化させる第2の回転部材を有し、
前記第2の回転部材は、前記第1の回転部材よりも先端側に位置する、カテーテル。
【請求項2】
請求項に記載のカテーテルであって、
前記複数の操作ワイヤは、前記先端部が、前記カテーテルシャフトの前記先端部における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの前記操作ワイヤの組を、少なくとも1つ含む、カテーテル。
【請求項3】
請求項または請求項に記載のカテーテルであって、
前記操作部は、さらに、前記カテーテルシャフトの前記基端部に、前記軸に対する傾きが変化可能に取り付けられ、前記操作ワイヤの前記基端部が固定された揺動部材を有し、
前記第1の回転部材は、前記相対回転することにより、前記揺動部材の傾き度合いを変化させて、前記操作ワイヤの張力を変化させる、カテーテル。
【請求項4】
請求項に記載のカテーテルであって、
前記第2の回転部材は、前記揺動部材より基端側に配置され、かつ、前記カテーテルシャフトに対して前記軸に沿って相対移動可能に取り付けられており、
前記第2の回転部材における前記揺動部材に対向する側の表面には、前記軸からずれた位置に凸部が形成されており、
前記第1の回転部材は、前記相対回転することにより、前記軸方向に沿った前記第2の回転部材の位置を変化させて、これにより前記揺動部材の傾き度合いを変化させる、カテーテル。
【請求項5】
カテーテルであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端部に接続された操作部と、
複数の操作ワイヤであって、各前記操作ワイヤの先端部は前記カテーテルシャフトの先端部に固定され、各前記操作ワイヤの基端部は前記操作部または前記カテーテルシャフトの前記基端部に固定された、複数の操作ワイヤと、
を備え、
前記操作部は、前記カテーテルシャフトの前記基端部の延伸方向に平行な軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記操作ワイヤの張力を変化させ、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲度合いを変化させる第1の回転部材を有し、
前記複数の操作ワイヤのそれぞれの前記先端部は、前記カテーテルシャフトの前記先端部における周方向に互いに異なる位置に固定されており、
前記操作部は、さらに、前記軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記複数の操作ワイヤの中から最大の張力が生じる前記操作ワイヤを選択し、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲方向を変化させる第2の回転部材を有し、
前記第2の回転部材は、前記カテーテルシャフトの先端側から見た形状が、前記軸からの距離が互いに異なる少なくとも2つの点を含む外周線を有する形状であり、かつ、前記外周線に各前記操作ワイヤが接しており、
前記操作部は、さらに、前記第2の回転部材より基端側に配置され、かつ、前記カテーテルシャフトに対して前記軸に沿って相対移動可能に取り付けられ、前記操作ワイヤの前記基端部が固定された固定用部材を有し、
前記第1の回転部材は、前記相対回転することにより、前記軸方向に沿った前記固定用部材の位置を変化させ、これにより前記操作ワイヤの張力を変化させる、カテーテル。
【請求項6】
カテーテルであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端部に接続された操作部と、
複数の操作ワイヤであって、各前記操作ワイヤの先端部は前記カテーテルシャフトの先端部に固定され、各前記操作ワイヤの基端部は前記操作部または前記カテーテルシャフトの前記基端部に固定された、複数の操作ワイヤと、
を備え、
前記操作部は、前記カテーテルシャフトの前記基端部の延伸方向に平行な軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記操作ワイヤの張力を変化させ、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲度合いを変化させる第1の回転部材を有し、
前記複数の操作ワイヤのそれぞれの前記先端部は、前記カテーテルシャフトの前記先端部における周方向に互いに異なる位置に固定されており、
前記操作部は、さらに、前記軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記複数の操作ワイヤの中から最大の張力が生じる前記操作ワイヤを選択し、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲方向を変化させる第2の回転部材を有し、
前記カテーテルは、さらに、前記複数の操作ワイヤのそれぞれを個別に収容する複数の貫通孔が形成されたチューブ部材を備え、
前記第1の回転部材には、前記軸方向に貫通する第1の貫通孔であって、前記軸方向視で、前記カテーテルシャフトの周方向に沿って前記軸からの距離が漸減する形状である第1の貫通孔が形成されており、
前記第2の回転部材には、前記軸方向に貫通する第2の貫通孔であって、前記軸方向視で、前記カテーテルシャフトの径方向に延びる形状である第2の貫通孔が形成されており、
前記チューブ部材は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とに挿通されている、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば心臓や消化器官等の検査や治療のために、生体管腔内に挿入可能なカテーテルが用いられる。従来、カテーテルシャフトの基端側に設けられた操作部を操作することにより、カテーテルシャフトの先端部を屈曲させることができるカテーテルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このカテーテルでは、操作部から側方に突出した摘まみを操作することにより、カテーテルシャフトの先端部を屈曲させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-213173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、検査や治療を行うための室は必要以上に広くないため、カテーテルを用いた検査や治療の際には、カテーテルの操作部が患者の体(例えば、太もも付近)に近接した位置に配置されることが多い。上記従来のカテーテルでは、例えばカテーテルシャフトの先端部を屈曲させるために操作部を操作したり、カテーテル全体を回転させたりする際に、患者の体に近接した位置に配置された操作部の一部(例えば、摘まみ)が患者の体に接触してしまい、操作性が良くない、という課題がある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示されるカテーテルは、カテーテルであって、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトの基端部に接続された操作部と、少なくとも1本の操作ワイヤであって、各前記操作ワイヤの先端部は前記カテーテルシャフトの先端部に固定され、各前記操作ワイヤの基端部は前記操作部または前記カテーテルシャフトの前記基端部に固定された、少なくとも1本の操作ワイヤと、を備え、前記操作部は、前記カテーテルシャフトの前記基端部の延伸方向に平行な軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記操作ワイヤの張力を変化させ、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲度合いを変化させる第1の回転部材を有する。本カテーテルでは、第1の回転部材をカテーテルシャフトに対して相対回転することにより、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いを自在に変化させることができる。本カテーテルでは、操作部が、例えば操作部から側方に突出した摘まみのような部分を有さず、かつ、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いを変化させる操作(第1の回転部材の相対回転操作)に伴い、何らかの部分が操作部から側方に突出したりすることもない。そのため、本カテーテルでは、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いを変化させる操作を行ったり、カテーテル全体を回転させたりしても、操作部の一部が患者の体に接触することが抑制される。従って、本カテーテルによれば、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いを操作可能としつつ、それに伴うカテーテルの操作性の低下を抑制することができる。
【0008】
(2)上記カテーテルにおいて、複数の前記操作ワイヤを備え、前記複数の操作ワイヤのそれぞれの前記先端部は、前記カテーテルシャフトの前記先端部における周方向に互いに異なる位置に固定されており、前記操作部は、さらに、前記軸を中心として前記カテーテルシャフトに対して相対回転することにより、前記複数の操作ワイヤの中から最大の張力が生じる前記操作ワイヤを選択し、これにより前記カテーテルシャフトの前記先端部の屈曲方向を変化させる第2の回転部材を有する構成としてもよい。本カテーテルでは、第2の回転部材をカテーテルシャフトに対して相対回転することにより、カテーテルシャフトの先端部の屈曲方向を自在に変化させることができる。本カテーテルでは、カテーテルシャフトの先端部の屈曲方向を変化させる操作(第2の回転部材の相対回転操作)に伴い、何らかの部分が操作部から側方に突出したりすることがない。そのため、本カテーテルでは、カテーテルシャフトの先端部の屈曲方向を変化させる操作を行っても、操作部の一部が患者の体に接触することが抑制される。従って、本カテーテルによれば、カテーテルシャフトの先端部の屈曲方向を操作可能としつつ、それに伴うカテーテルの操作性の低下を抑制することができる。また、本カテーテルによれば、第1の回転部材の相対回転によりカテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いを操作することができ、かつ、第2の回転部材の相対回転によりカテーテルシャフトの先端部の屈曲方向を操作することができるため、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いと屈曲方向とを2つの回転部材で分けて操作することができ、屈曲度合いと屈曲方向とを1つの共通操作部材で操作する構成と比較して、各操作の遊びを少なくすることができ、カテーテルの操作性をさらに向上させることができる。
【0009】
(3)上記カテーテルにおいて、前記複数の操作ワイヤは、前記先端部が、前記カテーテルシャフトの前記先端部における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの前記操作ワイヤの組を、少なくとも1つ含む構成としてもよい。本カテーテルによれば、カテーテルシャフトの先端部の屈曲方向を、一方向および該一方向とは180°反対の方向へと変化させることを実現することができ、カテーテルの操作性をさらに向上させることができる。
【0010】
(4)上記カテーテルにおいて、前記操作部は、さらに、前記カテーテルシャフトの前記基端部に、前記軸に対する傾きが変化可能に取り付けられ、前記操作ワイヤの前記基端部が固定された揺動部材を有し、前記第1の回転部材は、前記相対回転することにより、前記揺動部材の傾き度合いを変化させて、前記操作ワイヤの張力を変化させる構成としてもよい。本カテーテルによれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材の相対回転によるカテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いの高精度な操作を実現することができる。また、本カテーテルによれば、揺動部材の傾き度合いの変化に伴い、一の操作ワイヤの張力の増加(緊張)と他の操作ワイヤの張力の減少(弛緩)とが同時に起こるため、より少ない操作量(より少ない第1の回転部材の回転量)でカテーテルシャフトの先端部の屈曲を実現することができ、カテーテルの操作性をさらに向上させることができる。
【0011】
(5)上記カテーテルにおいて、前記第2の回転部材は、前記揺動部材より基端側に配置され、かつ、前記カテーテルシャフトに対して前記軸に沿って相対移動可能に取り付けられており、前記第2の回転部材における前記揺動部材に対向する側の表面には、前記軸からずれた位置に凸部が形成されており、前記第1の回転部材は、前記相対回転することにより、前記軸方向に沿った前記第2の回転部材の位置を変化させて、これにより前記揺動部材の傾き度合いを変化させる構成としてもよい。本カテーテルによれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材および第2の回転部材の相対回転によるカテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いおよび屈曲方向の高精度な操作を実現することができる。
【0012】
(6)上記カテーテルにおいて、前記第2の回転部材は、前記カテーテルシャフトの先端側から見た形状が、前記軸からの距離が互いに異なる少なくとも2つの点を含む外周線を有する形状であり、かつ、前記外周線に各前記操作ワイヤが接しており、前記操作部は、さらに、前記第2の回転部材より基端側に配置され、かつ、前記カテーテルシャフトに対して前記軸に沿って相対移動可能に取り付けられ、前記操作ワイヤの前記基端部が固定された固定用部材を有し、前記第1の回転部材は、前記相対回転することにより、前記軸方向に沿った前記固定用部材の位置を変化させ、これにより前記操作ワイヤの張力を変化させる構成としてもよい。本カテーテルによれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材および第2の回転部材の相対回転によるカテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いおよび屈曲方向の高精度な操作を実現することができる。
【0013】
(7)上記カテーテルにおいて、さらに、前記複数の操作ワイヤのそれぞれを個別に収容する複数の貫通孔が形成されたチューブ部材を備え、前記第1の回転部材には、前記軸方向に貫通する第1の貫通孔であって、前記軸方向視で、前記カテーテルシャフトの周方向に沿って前記軸からの距離が漸減する形状である第1の貫通孔が形成されており、前記第2の回転部材には、前記軸方向に貫通する第2の貫通孔であって、前記軸方向視で、前記カテーテルシャフトの径方向に延びる形状である第2の貫通孔が形成されており、前記チューブ部材は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とに挿通されている構成としてもよい。本カテーテルによれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材および第2の回転部材の相対回転によるカテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いおよび屈曲方向の高精度な操作を実現することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、カテーテルやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態におけるカテーテル100の構成を概略的に示す説明図
図2】第1実施形態におけるカテーテル100の構成を概略的に示す説明図
図3】カテーテルシャフト110の横断面構成を示す説明図
図4】カテーテルシャフト110の横断面構成を示す説明図
図5】第1実施形態におけるカテーテル100の動作を示す説明図
図6】第1実施形態におけるカテーテル100の動作を示す説明図
図7】第2実施形態のカテーテル200の構成を概略的に示す説明図
図8】第2実施形態のカテーテル200の構成を概略的に示す説明図
図9】第2実施形態のカテーテル200の構成を概略的に示す説明図
図10】第3実施形態のカテーテル300の構成を概略的に示す説明図
図11】第3実施形態のカテーテル300の構成を概略的に示す説明図
図12】チューブ部材370の横断面構成を示す説明図
図13】第3実施形態におけるカテーテル300の動作を示す説明図
図14】第3実施形態におけるカテーテル300の動作を示す説明図
図15】第3実施形態におけるカテーテル300の動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
A-1.カテーテル100の基本構成:
図1および図2は、第1実施形態におけるカテーテル100の構成を概略的に示す説明図である。図1および図2には、カテーテル100の外観構成が、互いに直交するXYZ軸と共に示されている。図1および図2において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。この点は、他の図においても同様である。本明細書では、カテーテルおよびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0017】
カテーテル100は、生体管腔内に挿入され、例えば心臓や消化器官等の検査や治療のために用いられる装置である。ここで、生体管腔は、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった種々の管腔を含む。
【0018】
図1および図2に示すように、カテーテル100は、カテーテルシャフト110と、操作部102と、4本の操作ワイヤ160とを備える。なお、図1および図2では、カテーテルシャフト110の一部分の図示が省略されている。
【0019】
カテーテルシャフト110は、患者の生体管腔内に挿入される管状の部材である。カテーテルシャフト110の横断面(XY断面)の外形状は、任意の形状を取り得るが、例えば円形である。カテーテルシャフト110の外径は、例えば0.3mm~2.0mm程度である。図1および図2では、カテーテルシャフト110がZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテルシャフト110は湾曲させることができる程度の可撓性を有している。
【0020】
カテーテルシャフト110は、例えば、樹脂材料や金属材料により形成されている。カテーテルシャフト110を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用することができる。また、カテーテルシャフト110を形成するための金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等を採用することができる。なお、カテーテルシャフト110の全体が同一の材料により形成されていてもよいし、カテーテルシャフト110の一部が他の一部とは異なる材料により形成されていてもよい。
【0021】
図3および図4は、カテーテルシャフト110の横断面構成を示す説明図である。図3には、図2のIII-IIIの位置(基端部112の位置)におけるカテーテルシャフト110の横断面(XY断面)の構成が示されており、図4には、図2のIV-IVの位置(先端部111の位置)におけるカテーテルシャフト110の横断面(XY断面)の構成が示されている。図3および図4に示すように、カテーテルシャフト110には、先端から基端まで軸方向に延びる貫通孔113が形成されている。貫通孔113により構成される空間は、例えば、ガイドワイヤを挿入したり薬液を流通させたりするためのルーメンとして機能する。本実施形態では、カテーテルシャフト110の横断面において、貫通孔113は、カテーテルシャフト110の中心と同心の円形である。
【0022】
また、カテーテルシャフト110には、先端から基端まで軸方向に延びる貫通孔114が形成されている。貫通孔114により構成される空間は、各操作ワイヤ160を収容するためのルーメンとして機能する。図3に示すように、カテーテルシャフト110の横断面において、貫通孔114は、カテーテルシャフト110の中心と同心であり、かつ、貫通孔113を取り囲むような円環形状である。ただし、図4に示すように、カテーテルシャフト110の先端部111においては、貫通孔114は、互いに独立した4つの貫通孔116に分岐している。カテーテルシャフト110の先端部111の横断面において、各貫通孔116は、円形であり、かつ、カテーテルシャフト110の周方向に沿って90°ずつずれた位置に形成されている。
【0023】
また、図1および図2に示すように、カテーテルシャフト110の基端部112の側面には、貫通孔114と外部空間とを連通する4つのワイヤ取出孔115が形成されている。4つのワイヤ取出孔115は、カテーテルシャフト110の先端部111に形成された4つの貫通孔116に対応するように、カテーテルシャフト110の周方向に沿って90°ずつずれた位置に形成されている。
【0024】
各操作ワイヤ160は、カテーテルシャフト110の先端部111を屈曲させるために設けられた部材である。各操作ワイヤ160は、例えば、金属材料により形成されている。各操作ワイヤ160を形成するための金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等を採用することができる。
【0025】
各操作ワイヤ160は、カテーテルシャフト110に形成された貫通孔114内に収容されている。上述したように、カテーテルシャフト110の先端部111においては、貫通孔114は、互いに独立した4つの貫通孔116に分岐しているため、4つの操作ワイヤ160のそれぞれは、4つの貫通孔116の内の対応する1つの貫通孔116内に収容されている(図4参照)。各操作ワイヤ160の先端部は、対応する貫通孔116に収容された状態で、カテーテルシャフト110の先端部111に固定されている。すなわち、本実施形態のカテーテル100は、操作ワイヤ160の先端部が、カテーテルシャフト110の先端部111における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの操作ワイヤ160の組を、2組(図4に示す操作ワイヤ160Aと160Bとの組、および、操作ワイヤ160Cと160Dとの組)備えている。
【0026】
また、各操作ワイヤ160は、カテーテルシャフト110の先端部111以外の部分においては、1つの貫通孔114内に収容されている(図3参照)。また、図1および図2に示すように、カテーテルシャフト110の基端部112において、各操作ワイヤ160の基端部は、カテーテルシャフト110の側面に形成された4つのワイヤ取出孔115の内の対応する1つのワイヤ取出孔115を介して外部空間に取り出され、操作部102(より具体的には、操作部102を構成する後述の揺動部材130)に固定されている。
【0027】
操作部102は、カテーテルシャフト110の先端部111を屈曲させる操作を行うための部分であり、カテーテルシャフト110の基端部112に接続されている。操作部102は、揺動部材130と、第1の回転部材150と、第2の回転部材140とを有する。操作部102を構成する各部は、例えば、樹脂材料や金属材料により形成されている。操作部102を構成する各部を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用することができる。また、操作部102を構成する各部を形成するための金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等を採用することができる。なお、操作部102を構成する各部の全体が同一の材料により形成されていてもよいし、操作部102を構成する各部の一部が他の一部とは異なる材料により形成されていてもよい。
【0028】
揺動部材130は、略円板状の部材であり、カテーテルシャフト110の基端部112に、基端部112の延伸方向に平行な軸(以下、単に「軸Ax」という。)に対する傾きが変化可能に取り付けられている。より具体的には、揺動部材130には、カテーテルシャフト110が挿通される貫通孔であるシャフト挿通孔134(図2おいて破線で示す)が形成されている。シャフト挿通孔134の内径は、カテーテルシャフト110の外径より、揺動部材130の傾きの変化を妨げない程度に大きくされている。また、揺動部材130は、揺動部材130より先端側に配置され、カテーテルシャフト110の周囲に巻き回されたバネ部材137の基端部に固定されている。バネ部材137の先端部は、固定部材138によってカテーテルシャフト110に固定されている。そのため、揺動部材130は、バネ部材137の弾性力によって固定部材138の位置を支点として揺動することができ、これにより揺動部材130の軸Axに対する傾きが変化する(後述する図5および図6参照)。なお、図2に示す揺動部材130の基本状態(揺動部材130に後述する第2の回転部材140からの力が作用していない状態)では、揺動部材130の先端側および基端側の表面は、軸Axに略直交している。
【0029】
揺動部材130には、各操作ワイヤ160の基端部が固定されている。より具体的には、揺動部材130には、操作ワイヤ160が挿通される貫通孔である4つのワイヤ挿通孔131が形成されている。4つのワイヤ挿通孔131は、カテーテルシャフト110の側面に形成された4つのワイヤ取出孔115に対応するように、カテーテルシャフト110の周方向に沿って90°ずつずれた位置に形成されている。各操作ワイヤ160の基端部は、揺動部材130に形成された4つのワイヤ挿通孔131の内の対応する1つのワイヤ挿通孔131に挿通された後に折り返され、揺動部材130に形成された図示しない別のワイヤ挿通孔に挿通され、初期張力が調整された状態で、固定具132によって揺動部材130に固定されている。
【0030】
第2の回転部材140は、略円板状の部材であり、カテーテルシャフト110の基端部112における揺動部材130より基端側に配置されている。第2の回転部材140は、軸Axを中心としてカテーテルシャフト110および第1の回転部材150に対して相対回転可能に、かつ、カテーテルシャフト110に対して軸Axに沿って相対移動可能に取り付けられている。
【0031】
第2の回転部材140における揺動部材130に対向する側の表面には、軸Axからカテーテルシャフト110の径方向にずれた位置に凸部143が形成されている。より具体的には、第2の回転部材140における揺動部材130に対向する側の表面には、先端側に突出すると共に揺動部材130に対向する表面に凹部が形成された受け部141が形成されており、受け部141の凹部には、球状のボール142が収容されている。また、受け部141の凹部にボール142が収容された状態で、受け部141の先端にカバー部材144が取り付けられている。カバー部材144には貫通孔が形成されており、ボール142の内、カバー部材144に形成された貫通孔から外部に突出した部分が、凸部143を構成している。なお、軸Ax方向視で、凸部143の先端は、揺動部材130と重なるような位置に形成されている。
【0032】
第1の回転部材150は、カテーテルシャフト110の基端部112における第2の回転部材140より基端側に配置されている。第1の回転部材150は、略円板状の円板部151と、円板部151の先端側に設けられた略円筒状の円筒部152とを有している。円筒部152の先端部は、第2の回転部材140に形成された貫通孔に挿入されており、第1の回転部材150は、第2の回転部材140に対して相対回転可能となるように、第2の回転部材140に接続されている。ただし、第1の回転部材150と第2の回転部材140とは接続されていなくてもよい。第1の回転部材150には貫通孔が形成されており、該貫通孔の内周面には、螺旋状凸部または凹部が形成されている。また、カテーテルシャフト110の外周面には、第1の回転部材150の上記貫通孔の内周面の凸部または凹部と螺合する凹部または凸部が形成されている。第1の回転部材150およびカテーテルシャフト110がこのような構成であるため、第1の回転部材150は、カテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、カテーテルシャフト110に対して軸Axに沿って相対移動する。なお、このような構成により、第1の回転部材150は軸Axに沿って相対移動した状態を維持することができる。第1の回転部材150がカテーテルシャフト110に対して相対回転しながら軸Axに沿って相対移動すると、それに伴い、第2の回転部材140は、カテーテルシャフト110に対して相対回転することなく軸Axに沿って相対移動する。
【0033】
A-2.カテーテル100の動作:
図5および図6は、第1実施形態におけるカテーテル100の動作を示す説明図である。本実施形態のカテーテル100では、操作部102の第2の回転部材140および第1の回転部材150を操作することにより、カテーテルシャフト110の先端部111を自在に屈曲させることができる。
【0034】
図2には、カテーテル100の基本状態が示されている。図2に示す状態では、軸Ax方向視で、第2の回転部材140の凸部143のカテーテルシャフト110の周方向に沿った位置(以下、単に「周方向位置」という。)と、4本の操作ワイヤ160の内の1本(操作ワイヤ160A)の揺動部材130上での固定位置の周方向位置とが、略一致している(いずれも軸Axから見てY軸正方向の位置である)。上述したように、図2に示す基本状態では、揺動部材130に第2の回転部材140からの力が作用しておらず、揺動部材130における先端側および基端側の表面は、軸Axに略直交している。この状態では、4本の操作ワイヤ160のいずれにも所定値以上の張力が作用しておらず、カテーテルシャフト110の先端部111は屈曲していない。
【0035】
例えば図5に示すように、基本状態から、第1の回転部材150をカテーテルシャフト110に対して相対回転させることにより、第1の回転部材150をカテーテルシャフト110に対して先端側に相対移動させると、これに伴い、第2の回転部材140もカテーテルシャフト110に対して先端側に相対移動する。この第2の回転部材140の移動により、第2の回転部材140の凸部143が、揺動部材130における第2の回転部材140に対向する側の表面に当接し、揺動部材130を先端側に押圧する。ここで、第2の回転部材140の凸部143は、軸Axからずれた位置に形成されている。また、揺動部材130は、カテーテルシャフト110の基端部112に、軸Axに対する傾きが変化可能に取り付けられている。そのため、第2の回転部材140の凸部143により押圧された揺動部材130は、第2の回転部材140の凸部143に当接する部分(以下、「当接部分」という。)が先端側に変位し、かつ、当接部分に対してカテーテルシャフト110の周方向に180°ずれた部分(以下、「反対側部分」という。)が基端側に変位するように、軸Axに対して傾く。すると、4本の操作ワイヤ160の内、揺動部材130における当接部分の最も近くに固定された操作ワイヤ160(図5の例では操作ワイヤ160Aであり、以下、「弛緩操作ワイヤ」という。)の張力が減少する一方、揺動部材130における反対側部分の最も近くに固定された操作ワイヤ160(図5の例では操作ワイヤ160Bであり、以下、「緊張操作ワイヤ」という。)の張力が増加する。その結果、緊張操作ワイヤ(操作ワイヤ160B)の張力が所定値以上となって、カテーテルシャフト110の先端部111における緊張操作ワイヤ(操作ワイヤ160B)に固定された箇所が基端側に引っ張られ、図5に示すようにカテーテルシャフト110の先端部111が屈曲する。このように、本実施形態では、第2の回転部材140における凸部143からカテーテルシャフト110の周方向に180°ずれた部分に最も近い操作ワイヤ160が、緊張操作ワイヤとして選択される。
【0036】
なお、その状態からさらに、第1の回転部材150を回転させて、第1の回転部材150をさらに先端側に移動させると、第2の回転部材140がさらに先端側に移動し、揺動部材130の軸Axに対する傾き度合い(傾きの程度)が大きくなり、その結果、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合い(屈曲の程度)が大きくなる。反対に、第1の回転部材150を反対向きに回転させることにより、第1の回転部材150を基端側に移動させると、第2の回転部材140が基端側に移動し、揺動部材130の傾き度合いが小さくなり、その結果、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いが小さくなる。このように、本実施形態のカテーテル100では、カテーテルシャフト110に対して第1の回転部材150を相対回転させることにより、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを自在に変化させることができる。
【0037】
また、例えば図6に示すように、図5に示した状態から、第2の回転部材140をカテーテルシャフト110に対して180°相対回転させると、揺動部材130における当接部分と反対側部分とが逆転する。これに伴い、緊張操作ワイヤと弛緩操作ワイヤとの関係も逆転する。すなわち、図6の例では、操作ワイヤ160Aが緊張操作ワイヤとなり、操作ワイヤ160Bが弛緩操作ワイヤとなる。従って、緊張操作ワイヤ(操作ワイヤ160A)の張力が所定値以上となって、カテーテルシャフト110の先端部111における緊張操作ワイヤ(操作ワイヤ160A)に固定された箇所が基端側に引っ張られ、カテーテルシャフト110の先端部111が図5に示す方向とは反対方向に屈曲する。このように、本実施形態のカテーテル100では、カテーテルシャフト110に対して第2の回転部材140を相対回転させることにより、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を自在に変化させることができる。すなわち、カテーテルシャフト110に対して第2の回転部材140を相対回転させることにより、揺動部材130における当接部分(第2の回転部材140の凸部143に当接する部分)および反対側部分(当接部分に対してカテーテルシャフト110の周方向に180°ずれた部分)の位置が変化し、揺動部材130における反対側部分の最も近くに固定された操作ワイヤ160が緊張操作ワイヤとして選択され、カテーテルシャフト110の先端部111における緊張操作ワイヤに固定された箇所が基端側に引っ張られるように、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向が変化する。
【0038】
なお、軸Ax方向視で、第2の回転部材140の凸部143の周方向位置が、4本の操作ワイヤ160のいずれの固定位置の周方向位置とも一致しない状態においても、4本の操作ワイヤ160の内、揺動部材130における当接部分の最も近くに固定された1本または複数本の操作ワイヤ160が弛緩操作ワイヤとなり、揺動部材130における反対側部分の最も近くに固定された1本または複数本の操作ワイヤ160が緊張操作ワイヤとなることで、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲が実現される。すなわち、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向は、4本の操作ワイヤ160の固定位置に対応する4つの方向に限定されるものではなく、任意の方向に設定することができる。
【0039】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態のカテーテル100は、カテーテルシャフト110と、カテーテルシャフト110の基端部112に接続された操作部102と、少なくとも1本の操作ワイヤ160とを備える。各操作ワイヤ160の先端部は、カテーテルシャフト110の先端部111に固定され、各操作ワイヤ160の基端部は、操作部102に固定されている。また、操作部102は、第1の回転部材150を有する。第1の回転部材150は、カテーテルシャフト110の基端部112の延伸方向に平行な軸Axを中心としてカテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、操作ワイヤ160の張力を変化させ、これによりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを変化させる。
【0040】
このように、第1実施形態のカテーテル100では、第1の回転部材150をカテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを自在に変化させることができる。第1実施形態のカテーテル100では、操作部102が、例えば操作部102から側方に突出した摘まみのような部分を有さず、かつ、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを変化させる操作(第1の回転部材150の相対回転操作)に伴い、何らかの部分が操作部102から側方に突出したりすることもない。そのため、第1実施形態のカテーテル100では、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを変化させる操作を行ったり、カテーテル100全体を回転させたりしても、操作部102の一部が患者の体に接触することが抑制される。従って、第1実施形態のカテーテル100によれば、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを操作可能としつつ、それに伴うカテーテル100の操作性の低下を抑制することができる。
【0041】
また、第1実施形態のカテーテル100は、複数の操作ワイヤ160を備える。複数の操作ワイヤ160のそれぞれの先端部は、カテーテルシャフト110の先端部111における周方向に互いに異なる位置に固定されている。また、操作部102は、さらに、第2の回転部材140を有する。第2の回転部材140は、軸Axを中心としてカテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、複数の操作ワイヤ160の中から最大の張力が生じる操作ワイヤ160を選択し、これによりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を変化させる。すなわち、第2の回転部材140における凸部143からカテーテルシャフト110の周方向に180°ずれた部分に最も近い操作ワイヤ160が緊張操作ワイヤとして選択され、カテーテルシャフト110の先端部111における緊張操作ワイヤに固定された箇所が基端側に引っ張られるように、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向が変化する。このように、第1実施形態のカテーテル100では、第2の回転部材140をカテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を自在に変化させることができる。第1実施形態のカテーテル100では、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を変化させる操作(第2の回転部材140の相対回転操作)に伴い、何らかの部分が操作部102から側方に突出したりすることがない。そのため、第1実施形態のカテーテル100では、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を変化させる操作を行っても、操作部102の一部が患者の体に接触することが抑制される。従って、第1実施形態のカテーテル100によれば、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を操作可能としつつ、それに伴うカテーテル100の操作性の低下を抑制することができる。また、第1実施形態のカテーテル100によれば、第1の回転部材150の相対回転によりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを操作することができ、かつ、第2の回転部材140の相対回転によりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を操作することができるため、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いと屈曲方向とを2つの回転部材で分けて操作することができ、屈曲度合いと屈曲方向とを1つの共通操作部材で操作する構成と比較して、各操作の遊びを少なくすることができ、カテーテル100の操作性をさらに向上させることができる。
【0042】
また、第1実施形態のカテーテル100では、複数の操作ワイヤ160が、先端部が、カテーテルシャフト110の先端部111における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの操作ワイヤ160の組を、少なくとも1つ含む。そのため、第1実施形態のカテーテル100によれば、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を、一方向および該一方向とは180°反対の方向へと変化させることを実現することができ、カテーテル100の操作性をさらに向上させることができる。
【0043】
また、第1実施形態のカテーテル100では、操作部102は、さらに揺動部材130を有する。揺動部材130は、カテーテルシャフト110の基端部112に、軸Axに対する傾きが変化可能に取り付けられている。また、揺動部材130には、操作ワイヤ160の基端部が固定されている。また、第1の回転部材150は、相対回転することにより、揺動部材130の傾き度合いを変化させて、操作ワイヤ160の張力を変化させる。そのため、第1実施形態のカテーテル100によれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材150の相対回転によるカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いの高精度な操作を実現することができる。また、第1実施形態のカテーテル100によれば、揺動部材130の傾き度合いの変化に伴い、一の操作ワイヤ160の張力の増加(緊張)と他の操作ワイヤ160の張力の減少(弛緩)とが同時に起こるため、より少ない操作量(より少ない第1の回転部材150の回転量)でカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲を実現することができ、カテーテル100の操作性をさらに向上させることができる。
【0044】
また、第1実施形態のカテーテル100では、第2の回転部材140は、揺動部材130より基端側に配置され、かつ、カテーテルシャフト110に対して軸Axに沿って相対移動可能に取り付けられている。また、第2の回転部材140における揺動部材130に対向する側の表面には、軸Axからずれた位置に凸部143が形成されている。また、第1の回転部材150は、相対回転することにより、軸Ax方向に沿った第2の回転部材140の位置を変化させて、これにより揺動部材130の傾き度合いを変化させる。そのため、第1実施形態のカテーテル100によれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材150および第2の回転部材140の相対回転によるカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いおよび屈曲方向の高精度な操作を実現することができる。
【0045】
また、第1実施形態のカテーテル100では、上述したように、第1の回転部材150をカテーテルシャフト110に対して相対回転することによりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを変化させることができるため、第1の回転部材150に対するさらなる操作を行わなければ、カテーテルシャフト110の先端部111が屈曲した状態を維持することができ、その結果、術者は他の併用デバイスを取扱う等のために操作部102から手を放すことが可能となり、また、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いの変化と屈曲状態の維持とを同一操作で実現することができ、カテーテル100の操作性をさらに向上させることができる。また、第1実施形態のカテーテル100では、上述したように、第2の回転部材140をカテーテルシャフト110に対して相対回転させることによりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を変化させることができるため、第1の回転部材150に対する操作を行うことなく、第2の回転部材140に対する操作を行うことにより、カテーテルシャフト110の先端部111が所望の屈曲度合いで屈曲した状態を維持しつつ、先端部111の屈曲方向を変えることができ、カテーテル100の操作性をさらに向上させることができる。
【0046】
B.第2実施形態:
図7から図9は、第2実施形態のカテーテル200の構成を概略的に示す説明図である。図7には、カテーテル200全体の外観構成が示されている。また、図8および図9には、カテーテル200の先端側から見たカテーテル200の外観構成(一部の構成の図示を省略)が示されている。以下では、第2実施形態のカテーテル200の構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0047】
第2実施形態のカテーテル200は、カテーテルシャフト110と、操作部202と、4本の操作ワイヤ160とを備える。なお、図7では、カテーテルシャフト110の一部分の図示が省略されている。カテーテルシャフト110および操作ワイヤ160の構成は、上述した第1実施形態と同一である。
【0048】
操作部202は、カテーテルシャフト110の先端部111を屈曲させる操作を行うための部分であり、カテーテルシャフト110の基端部112に接続されている。操作部202は、第1の回転部材250と、第2の回転部材240と、固定用部材230とを有する。操作部202を構成する各部の形成材料は、上述した第1実施形態における操作部102を構成する各部の形成材料と同様である。
【0049】
固定用部材230は、略円板状の部材であり、カテーテルシャフト110の基端部112に、カテーテルシャフト110に対して軸Axに沿って相対移動可能に取り付けられている。固定用部材230には、各操作ワイヤ160の基端部が固定されている。より具体的には、固定用部材230には、操作ワイヤ160が挿通される貫通孔である4つのワイヤ挿通孔231が形成されている。4つのワイヤ挿通孔231は、カテーテルシャフト110の側面に形成された4つのワイヤ取出孔115に対応するように、カテーテルシャフト110周方向に沿って90°ずつずれた位置に形成されている。各操作ワイヤ160の基端部は、固定用部材230に形成された4つのワイヤ挿通孔231の内の対応する1つのワイヤ挿通孔231に挿通された後に折り返され、固定用部材230に形成された図示しない別のワイヤ挿通孔に挿通され、初期張力が調整された状態で、固定具232によって固定用部材230に固定されている。なお、固定用部材230の先端側の表面は、軸Axに略直交している。
【0050】
第2の回転部材240は、板状の部材であり、カテーテルシャフト110の基端部112における固定用部材230より先端側に配置されている。第2の回転部材240は、軸Axを中心としてカテーテルシャフト110に対して相対回転可能に取り付けられている。
【0051】
図8および図9に示すように、第2の回転部材240は、カテーテルシャフト110の先端側から見た形状が、軸Axからの距離が互いに異なる少なくとも2つの点を含む外周線241を有する形状である。例えば、図8および図9において、第2の回転部材240の外周線241上の各点と軸Axとの間の距離は、P1(以下、「最遠点P1」という。)において最大であり、P2(以下、「最近点P2」という。)において最小であり、P3,P4(以下、「中間点P3」および「中間点P4」という。)において両者の中間の距離である。なお、本実施形態では、カテーテルシャフト110の先端側から見た第2の回転部材240の外周線241の形状は、最遠点P1と最近点P2とを結ぶ直線に対して対称形状であり、外周線241に沿って最遠点P1から最近点P2に近付くにつれて、軸Axとの間の距離が短くなるような形状である。
【0052】
また、第2の回転部材240の上記外周線241には、各操作ワイヤ160が接している。なお、本実施形態では、第2の回転部材240は、板状部材であるため、各操作ワイヤ160は、第2の回転部材240の外周線241を含む側面に接している。
【0053】
第1の回転部材250は、カテーテルシャフト110の基端部112における固定用部材230より基端側に配置されている。第1の回転部材250は、略円板状の円板部251と、円板部251の先端側に設けられた略円筒状の円筒部252とを有している。第1の回転部材250には貫通孔が形成されており、該貫通孔の内周面には、螺旋状凸部または凹部が形成されている。また、カテーテルシャフト110の外周面には、第1の回転部材250の上記貫通孔の内周面の凸部または凹部と螺合する凹部または凸部が形成されている。第1の回転部材250およびカテーテルシャフト110がこのような構成であるため、第1の回転部材250は、カテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、カテーテルシャフト110に対して軸Axに沿って相対移動する。なお、このような構成により、第1の回転部材250は軸Axに沿って相対移動した状態を維持することができる。第1の回転部材250がカテーテルシャフト110に対して相対回転しながら軸Axに沿って相対移動すると、それに伴い、固定用部材230は、カテーテルシャフト110に対して相対回転することなく軸Axに沿って相対移動する。なお、第1の回転部材250は、固定用部材230に対して相対回転可能となるように、固定用部材230に接続されていてもよい。
【0054】
このような構成の第2実施形態のカテーテル200では、操作部202の第2の回転部材240および第1の回転部材250を操作することにより、カテーテルシャフト110の先端部111を自在に屈曲させることができる。
【0055】
図7および図8には、カテーテル200の基本状態が示されている。図7および図8に示す状態では、4本の操作ワイヤ160の内の1本(操作ワイヤ160A)は第2の回転部材240の外周線241上の最遠点P1に接しており、他の1本(操作ワイヤ160B)は第2の回転部材240の外周線241上の最近点P2に接しており、他の1本(操作ワイヤ160C)は第2の回転部材240の外周線241上の中間点P3に接しており、他の1本(操作ワイヤ160D)は第2の回転部材240の外周線241上の中間点P4に接している。そのため、4本の操作ワイヤ160の内、最遠点P1に接している操作ワイヤ160Aの張力が最も大きく、最近点P2に接している操作ワイヤ160Bの張力が最も小さい。ただし、図7に示す基本状態では、固定用部材230が比較的先端側に位置しており、4本の操作ワイヤ160のいずれにも所定値以上の張力が作用しておらず、カテーテルシャフト110の先端部111は屈曲していない。
【0056】
基本状態から、第1の回転部材250をカテーテルシャフト110に対して相対回転させることにより、第1の回転部材250をカテーテルシャフト110に対して基端側に相対移動させると、これに伴い、固定用部材230もカテーテルシャフト110に対して基端側に相対移動する。ここで、各操作ワイヤ160の基端部は、固定用部材230に固定されている。そのため、固定用部材230の基端側への相対移動により、4本の操作ワイヤ160の張力が増加する。上述したように、4本の操作ワイヤ160の内、最遠点P1に接している操作ワイヤ160Aの張力が最も大きいため、4本の操作ワイヤ160の張力が増加すると、最初に該操作ワイヤ160Aの張力が所定値以上となり、カテーテルシャフト110の先端部111における該操作ワイヤ160Aに固定された箇所が基端側に引っ張られ、カテーテルシャフト110の先端部111が屈曲する。
【0057】
なお、その状態からさらに、第1の回転部材250を回転させて、第1の回転部材250をさらに基端側に移動させると、固定用部材230がさらに基端側に移動し、操作ワイヤ160の張力がさらに大きくなり、その結果、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合い(屈曲の程度)が大きくなる。反対に、第1の回転部材250を反対向きに回転させることにより、第1の回転部材250を先端側に移動させると、固定用部材230が先端側に移動し、操作ワイヤ160の張力が小さくなり、その結果、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いが小さくなる。このように、本実施形態のカテーテル200では、カテーテルシャフト110に対して第1の回転部材250を相対回転させることにより、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを自在に変化させることができる。
【0058】
また、例えば図9に示すように、図8に示した状態から、第2の回転部材240をカテーテルシャフト110に対して180°相対回転させると、4本の操作ワイヤ160の内、最遠点P1に接している操作ワイヤ160が、操作ワイヤ160Aから操作ワイヤ160Bに切り替わる。従って、操作ワイヤ160Bの張力が所定値以上となって、カテーテルシャフト110の先端部111における操作ワイヤ160Bに固定された箇所が基端側に引っ張られ、カテーテルシャフト110の先端部111が反対方向に屈曲する。このように、本実施形態のカテーテル200では、カテーテルシャフト110に対して第2の回転部材240を相対回転させることにより、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を自在に変化させることができる。
【0059】
なお、軸Ax方向視で、第2の回転部材240の外周線241の最遠点P1の周方向位置が、4本の操作ワイヤ160のいずれの接触位置とも一致しない状態においても、4本の操作ワイヤ160の内、最遠点P1の最も近くに接する1本または複数本の操作ワイヤ160の張力が大きくなることで、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲が実現される。すなわち、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向は、4本の操作ワイヤ160の固定位置に対応する4つの方向に限定されるものではなく、任意の方向に設定することができる。
【0060】
以上説明したように、第2実施形態のカテーテル200は、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト110と、カテーテルシャフト110の基端部112に接続された操作部202と、少なくとも1本の操作ワイヤ160とを備える。各操作ワイヤ160の先端部は、カテーテルシャフト110の先端部111に固定され、各操作ワイヤ160の基端部は、操作部202に固定されている。また、操作部202は、第1の回転部材250を有する。第1の回転部材250は、カテーテルシャフト110の基端部112の延伸方向に平行な軸Axを中心としてカテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、操作ワイヤ160の張力を変化させ、これによりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを変化させる。そのため、第2実施形態のカテーテル200によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いを操作可能としつつ、それに伴うカテーテル200の操作性の低下を抑制することができる。
【0061】
また、第2実施形態のカテーテル200は、第1実施形態のカテーテル100と同様に、複数の操作ワイヤ160を備える。複数の操作ワイヤ160のそれぞれの先端部は、カテーテルシャフト110の先端部111における周方向に互いに異なる位置に固定されている。また、操作部202は、さらに、第2の回転部材240を有する。第2の回転部材240は、軸Axを中心としてカテーテルシャフト110に対して相対回転することにより、複数の操作ワイヤ160の中から最大の張力が生じる操作ワイヤ160を選択し、これによりカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を変化させる。そのため、第2実施形態のカテーテル200によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を操作可能としつつ、それに伴うカテーテル200の操作性の低下を抑制することができる。また、第2実施形態のカテーテル200によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いと屈曲方向とを2つの回転部材で分けて操作することができ、屈曲度合いと屈曲方向とを1つの共通操作部材で操作する構成と比較して、各操作の遊びを少なくすることができ、カテーテル200の操作性をさらに向上させることができる。
【0062】
また、第2実施形態のカテーテル200では、第1実施形態のカテーテル100と同様に、複数の操作ワイヤ160が、先端部が、カテーテルシャフト110の先端部111における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの操作ワイヤ160の組を、少なくとも1つ含む。そのため、第2実施形態のカテーテル200によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト110の先端部111の屈曲方向を、一方向および該一方向とは180°反対の方向へと変化させることを実現することができ、カテーテル200の操作性をさらに向上させることができる。
【0063】
また、第2実施形態のカテーテル100では、第2の回転部材240は、カテーテルシャフト110の先端側から見た形状が、軸Axからの距離が互いに異なる少なくとも2つの点を含む外周線241を有する形状であり、かつ、外周線241に各操作ワイヤ160が接している。また、操作部202は、さらに、固定用部材230を備える。固定用部材230は、第2の回転部材240より基端側に配置され、かつ、カテーテルシャフト110に対して軸Axに沿って相対移動可能に取り付けられている。固定用部材230には、操作ワイヤ160の基端部が固定されている。また、第1の回転部材250、相対回転することにより、軸Ax方向に沿った固定用部材230の位置を変化させ、これにより操作ワイヤ160の張力を変化させる。そのため、第2実施形態のカテーテル200によれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材250および第2の回転部材240の相対回転によるカテーテルシャフト110の先端部111の屈曲度合いおよび屈曲方向の高精度な操作を実現することができる。
【0064】
C.第3実施形態:
図10および図11は、第3実施形態のカテーテル300の構成を概略的に示す説明図である。図10には、カテーテル300全体の外観構成が示されている。また、図11には、後述する第2の回転部材340の図示を省略したカテーテル300全体の外観構成が示されている。以下では、第3実施形態のカテーテル300の構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0065】
第3実施形態のカテーテル300は、カテーテルシャフト310と、操作部302と、4本の操作ワイヤ160と、チューブ部材370とを備える。なお、図10および図11では、カテーテルシャフト310の一部分の図示が省略されている。
【0066】
操作ワイヤ160の構成は、第1実施形態の操作ワイヤ160の構成と同様である。ただし、第3実施形態では、4本の操作ワイヤ160は、チューブ部材370に収容されている。チューブ部材370は、可撓性を有する管状の部材である。チューブ部材370は、例えば、樹脂材料により形成されている。チューブ部材370を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用することができる。
【0067】
図12は、チューブ部材370の横断面構成を示す説明図である。図12に示すように、チューブ部材370には、軸方向に延びる4つの貫通孔376が形成されている。チューブ部材370の横断面において、各貫通孔376は、円形であり、かつ、チューブ部材370の周方向に沿って90°ずつずれた位置に形成されている。各貫通孔376は、複数の操作ワイヤ160のそれぞれを個別に収容するルーメンを構成している。
【0068】
カテーテルシャフト310の構成は、第1実施形態のカテーテルシャフト110の構成と同様である。ただし、第3実施形態では、カテーテルシャフト310に形成された貫通孔314内にチューブ部材370が収容されている。また、カテーテルシャフト310の基端部312における側面には、第1のケーブル挿通孔315および第2のケーブル挿通孔316が形成されている。貫通孔314内に収容されたチューブ部材370は、第1のケーブル挿通孔315を介してカテーテルシャフト310の外部に取り出され、第2のケーブル挿通孔316を介してカテーテルシャフト310の内部に収容されてカテーテルシャフト310に固定されている。
【0069】
操作部302は、カテーテルシャフト310の先端部311を屈曲させる操作を行うための部分であり、カテーテルシャフト310の基端部312に接続されている。操作部302は、第1の回転部材350と、第2の回転部材340とを有する。操作部302を構成する各部の形成材料は、上述した第1実施形態における操作部102を構成する各部の形成材料と同様である。
【0070】
第1の回転部材350は、略円板状の部材であり、カテーテルシャフト310の基端部312の延伸方向に平行な軸Axを中心としてカテーテルシャフト310および第2の回転部材340に対して相対回転可能に取り付けられている。第1の回転部材350には、第1の貫通孔354が形成されている。図11に示すように、第1の回転部材350の第1の貫通孔354は、軸Ax方向視で、第1の貫通孔354の一方の端部(以下、「外周側端部356」という。)から他方の端部(以下、「中心側端部355」という。)にかけて、カテーテルシャフト310の周方向に沿って軸Axからの距離が漸減する形状(いわゆる螺旋形状)である。なお、第1の貫通孔354は、カテーテルシャフト310の周方向の全体(360°)にわたって延伸している。
【0071】
第2の回転部材340は、略円板状の部材であり、軸Axを中心としてカテーテルシャフト310および第1の回転部材350に対して相対回転可能に取り付けられている。第2の回転部材340は、第1の回転部材350より先端側に配置されている。第2の回転部材340には、第2の貫通孔344が形成されている。図10に示すように、第2の回転部材340の第2の貫通孔344は、軸Ax方向視で、第2の貫通孔344の一方の端部(以下、「外周側端部346」という。)から他方の端部(以下、「中心側端部345」という。)にかけて、カテーテルシャフト310の径方向に延びる形状(直線形状)である。なお、本実施形態では、第2の回転部材340は第1の回転部材350より先端側に配置されているが、反対に、第2の回転部材340は第1の回転部材350より基端側に配置されていてもよい。
【0072】
チューブ部材370の内、カテーテルシャフト310の第1のケーブル挿通孔315から外部に取り出された部分は、第2の回転部材340に形成された第2の貫通孔344、および、第1の回転部材350に形成された第1の貫通孔354に挿通されている。
【0073】
このような構成の第3実施形態のカテーテル300では、操作部302の第2の回転部材340および第1の回転部材350を操作することにより、カテーテルシャフト310の先端部311を自在に屈曲させることができる。図13から図15は、カテーテル300の先端側から見たカテーテル300の外観構成(一部の構成の図示を省略)を示す図であり、第3実施形態におけるカテーテル300の動作を示す説明図である。
【0074】
図13には、カテーテル300の基本状態が示されている。この状態では、第1の回転部材350と第2の回転部材340との関係が、第1の回転部材350に形成された第1の貫通孔354の中心側端部355付近が、第2の回転部材340に形成された第2の貫通孔344と、軸Ax方向視で重なるような関係となっている。そのため、チューブ部材370における第1の貫通孔354および第2の貫通孔344に挿通された部分は、カテーテルシャフト310に比較的近い位置に位置している。この状態では、4本の操作ワイヤ160のいずれにも所定値以上の張力が作用しておらず、カテーテルシャフト310の先端部311は屈曲していない。
【0075】
例えば図14に示すように、図13に示す基本状態から、第1の回転部材350をカテーテルシャフト310および第2の回転部材340に対して相対回転させると、第1の回転部材350に形成された第1の貫通孔354と、第2の回転部材340に形成された第2の貫通孔344との位置関係が変化する。図14の例では、軸Ax方向視で、第1の貫通孔354の外周側端部356に近い部分が、第2の貫通孔344と重なるような関係になっている。このような位置関係の変化に伴い、チューブ部材370における第1の貫通孔354および第2の貫通孔344に挿通された部分は、カテーテルシャフト310から径方向に比較的離れた位置に移動する。これにより、チューブ部材370の各貫通孔376(図12参照)に収容された各操作ワイヤ160では、軸Axからの距離の差に起因して張力が変化する。具体的には、チューブ部材370における第1の貫通孔354および第2の貫通孔344に挿通された部分における最も外周側に近い位置に形成された貫通孔376に収容された操作ワイヤ160の張力が増加し、該操作ワイヤ160の張力が所定値以上となる。その結果、カテーテルシャフト310の先端部311における該操作ワイヤ160に固定された箇所が基端側に引っ張られ、カテーテルシャフト310の先端部311が屈曲する。
【0076】
なお、図14に示す状態からさらに第1の回転部材350を回転させて、軸Ax方向視で、第1の貫通孔354の外周側端部356が、第2の貫通孔344と重なるような関係にすると、上記操作ワイヤ160の張力がさらに大きくなり、その結果、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合い(屈曲の程度)が大きくなる。反対に、第1の回転部材350を反対向きに回転させることにより、軸Ax方向視で、第1の貫通孔354における外周側端部356と中心側端部355との中間位置付近が、第2の貫通孔344と重なるような関係にすると、上記操作ワイヤ160の張力が小さくなり、その結果、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合いが小さくなる。このように、本実施形態のカテーテル300では、カテーテルシャフト310に対して第1の回転部材350を相対回転させることにより、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合いを自在に変化させることができる。
【0077】
また、例えば図15に示すように、図14に示した状態から、第1の回転部材350および第2の回転部材340を共に、カテーテルシャフト310に対して180°相対回転させると、第1の回転部材350に形成された第1の貫通孔354と、第2の回転部材340に形成された第2の貫通孔344との位置関係は固定されたまま、2つの貫通孔354,344とチューブ部材370との位置関係が変化する。これに伴い、チューブ部材370に収容された4つの操作ワイヤ160の内、最大の張力が生じる操作ワイヤ160が切り替わる。そのため、切り替え後の操作ワイヤ160の張力が所定値以上となって、カテーテルシャフト310の先端部311における該操作ワイヤ160に固定された箇所が基端側に引っ張られ、カテーテルシャフト310の先端部311が反対方向に屈曲する。このように、本実施形態のカテーテル300では、カテーテルシャフト310に対して第1の回転部材350および第2の回転部材340を共に相対回転させることにより、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲方向を自在に変化させることができる。なお、カテーテルシャフト310および第1の回転部材350に対して第2の回転部材340を相対回転させることにより、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲方向および屈曲度合を自在に変化させることができる。
【0078】
以上説明したように、第3実施形態のカテーテル300は、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト310と、カテーテルシャフト310の基端部312に接続された操作部302と、少なくとも1本の操作ワイヤ160とを備える。各操作ワイヤ160の先端部は、カテーテルシャフト310の先端部に固定され、各操作ワイヤ160の基端部は、カテーテルシャフト310の基端部312に固定されている。また、操作部302は、第1の回転部材350を有する。第1の回転部材350は、カテーテルシャフト310の基端部312の延伸方向に平行な軸Axを中心としてカテーテルシャフト310に対して相対回転することにより、操作ワイヤ160の張力を変化させ、これによりカテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合いを変化させる。従って、第3実施形態のカテーテル300によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合いを操作可能としつつ、それに伴うカテーテル300の操作性の低下を抑制することができる。
【0079】
また、第3実施形態のカテーテル300は、第1実施形態のカテーテル100と同様に、複数の操作ワイヤ160を備える。複数の操作ワイヤ160のそれぞれの先端部は、カテーテルシャフト310の先端部311における周方向に互いに異なる位置に固定されている。また、操作部302は、さらに、第2の回転部材340を有する。第2の回転部材340は、軸Axを中心としてカテーテルシャフト310に対して相対回転することにより、複数の操作ワイヤ160の中から最大の張力が生じる操作ワイヤ160を選択し、これによりカテーテルシャフト310の先端部311の屈曲方向を変化させる。従って、第3実施形態のカテーテル300によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲方向を操作可能としつつ、それに伴うカテーテル300の操作性の低下を抑制することができる。また、第3実施形態のカテーテル300によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合いと屈曲方向とを2つの回転部材で分けて操作することができ、屈曲度合いと屈曲方向とを1つの共通操作部材で操作する構成と比較して、各操作の遊びを少なくすることができ、カテーテル300の操作性をさらに向上させることができる。
【0080】
また、第3実施形態のカテーテル300では、第1実施形態のカテーテル100と同様に、複数の操作ワイヤ160が、先端部が、カテーテルシャフト310の先端部311における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの操作ワイヤ160の組を、少なくとも1つ含む。従って、第3実施形態のカテーテル300によれば、第1実施形態のカテーテル100と同様に、カテーテルシャフト310の先端部311の屈曲方向を、一方向および該一方向とは180°反対の方向へと変化させることを実現することができ、カテーテル300の操作性をさらに向上させることができる。
【0081】
また、第3実施形態のカテーテル300は、さらに、チューブ部材370を備える。チューブ部材370には、複数の操作ワイヤ160のそれぞれを個別に収容する複数の貫通孔376が形成されている。また、第1の回転部材350には、軸Ax方向に貫通する第1の貫通孔354が形成されている。第1の貫通孔354は、軸Ax方向視で、カテーテルシャフト310の周方向に沿って軸Axからの距離が漸減する形状である。また、第2の回転部材340には、軸方向Axに貫通する第2の貫通孔344が形成されている。第2の貫通孔344は、軸Ax方向視で、カテーテルシャフト310の径方向に延びる形状である。チューブ部材370は、第1の貫通孔354と第2の貫通孔344とに挿通されている。そのため、第3実施形態のカテーテル300によれば、比較的簡単な構成で、第1の回転部材350および第2の回転部材340の相対回転によるカテーテルシャフト310の先端部311の屈曲度合いおよび屈曲方向の高精度な操作を実現することができる。
【0082】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0083】
上記各実施形態におけるカテーテルの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態のカテーテルは、カテーテルシャフトの先端部における周方向に互いに180°異なる位置に固定された2つの操作ワイヤの組を2組備えているが、カテーテルが該組を1組のみ備えていてもよいし、3組以上備えていてもよいし、カテーテルが該組を備えていなくてもよい。また、上記各実施形態のカテーテルは、4本の操作ワイヤ160を備えているが、カテーテルが備える操作ワイヤ160の本数は、任意に変更可能である。例えば、上記各実施形態のカテーテルは、操作ワイヤ160を1本のみ備えるものであってもよい。また、上記各実施形態における各操作ワイヤ160の、カテーテルシャフトの先端部への固定位置は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。
【0084】
また、上記実施形態のカテーテルでは、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いおよび屈曲方向の操作が可能であるが、カテーテルシャフトの先端部の屈曲度合いの操作は可能であるが、屈曲方向の操作は可能ではない構成としてもよい。
【0085】
また、上記各実施形態における各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0086】
また、上記第1実施形態では、揺動部材130の傾きを変更可能にするために、バネ部材137および固定部材138が用いられているが、他の構成により揺動部材130の傾きを変更可能にしてもよい。また、上記第1実施形態では、ボール142によって第2の回転部材140の凸部143が構成されているが、他の部材により凸部143が構成されてもよい。例えば、凸部143を有する形状の一体部材としての第2の回転部材140が用いられてもよい。また、上記第1実施形態における操作部102を構成する各部材の軸Ax方向の並び順は、上述した並び順に限定されない。
【0087】
また、上記第2実施形態における第2の回転部材240の形状は、あくまで一例であり、軸Axからの距離が互いに異なる少なくとも2つの点を含む外周線241を有する形状である限りにおいて、任意の形状を採用することができる。
【0088】
また、上記第3実施形態における第1の回転部材350の第1の貫通孔354の形状は、あくまで一例であり、カテーテルシャフトの周方向に沿って軸Axからの距離が漸減する形状である限りにおいて、任意の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0089】
100:カテーテル 102:操作部 110:カテーテルシャフト 111:先端部 112:基端部 113:貫通孔 114:貫通孔 115:ワイヤ取出孔 116:貫通孔 130:揺動部材 131:ワイヤ挿通孔 132:固定具 134:シャフト挿通孔 137:バネ部材 138:固定部材 140:第2の回転部材 141:受け部 142:ボール 143:凸部 144:カバー部材 150:第1の回転部材 151:円板部 152:円筒部 160:操作ワイヤ 200:カテーテル 202:操作部 230:固定用部材 231:ワイヤ挿通孔 232:固定具 240:第2の回転部材 241:外周線 250:第1の回転部材 251:円板部 252:円筒部 300:カテーテル 302:操作部 310:カテーテルシャフト 311:先端部 312:基端部 314:貫通孔 315:第1のケーブル挿通孔 316:第2のケーブル挿通孔 340:第2の回転部材 344:第2の貫通孔 345:中心側端部 346:外周側端部 350:第1の回転部材 354:第1の貫通孔 355:中心側端部 356:外周側端部 370:チューブ部材 376:貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15