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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/108 20060101AFI20240318BHJP
   H02K 5/167 20060101ALI20240318BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20240318BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240318BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H02K7/108
H02K5/167 B
F16C19/54
F16C19/06
F16C27/06 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020023971
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021129463
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】513262470
【氏名又は名称】シチズンマイクロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】里見 泰章
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-048607(JP,U)
【文献】実開昭52-002207(JP,U)
【文献】特開2017-118777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
H02K 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端が開口したステータ部と、前記ステータ部の前記軸方向の他端から突出した回転軸を有する、前記ステータ部の内部に配置されたロータ部と、前記ステータ部の前記一端を塞ぐキャップ部と、を備え、
前記ステータ部と前記キャップ部とで囲まれた空間の外部に、前記回転軸の停止状態を保持する保持トルクを付与する、ばね部材を有する保持トルク付与部を備え、
前記保持トルク付与部は、前記回転軸の、前記ステータ部と前記キャップ部とで囲まれた空間の外部に対応した部分に配置され、
前記保持トルク付与部は、前記回転軸を前記ステータ部又は前記キャップ部に対して前記軸方向に付勢することにより、前記回転軸と前記ステータ部又は前記キャップ部との間の前記付勢する方向に押圧された摺動部の摩擦力を増大させて前記保持トルクを付与する電動機。
【請求項2】
前記保持トルク付与部は、
前記軸方向に延びた筒部と、前記筒部の一端に形成され、前記回転軸を緩く貫通させる孔が形成され、前記ステータ部又は前記キャップ部に接して配置された底板とを有するカラーと、
前記筒部の他端に近接した状態で前記回転軸に固定された固定部材と、
一端が前記底板に接し、他端が前記固定部材に接して、前記筒部の内側に前記軸方向に沿って配置された、圧縮前の自然長が前記筒部の長さよりも長い前記ばね部材と、を備え、
前記固定部材は、前記筒部の前記他端における開口を完全に覆うことにより、前記カラーと前記固定部材と前記回転軸とで囲まれた空間を形成し、
前記ばね部材は、前記カラーと前記固定部材と前記回転軸とで囲まれた空間に収容されている、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記ばね部材の前記軸方向の一端に接した状態で前記回転軸に固定された固定部材を備え、
前記固定部材の少なくとも一部は、前記回転軸の回転を他の装置へ伝達する回転伝達部材で構成されている、請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記保持トルク付与部は、前記ステータ部又は前記キャップ部の外面に設けられた凹部に配置されている、請求項1に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機(モータ)には、軸の回転が停止しているとき、ある程度の保持トルクによって軸の停止状態を維持する構造を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-118777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電動機は、ロータやステータが組み込まれるケース(フレーム組立体)の内部に圧縮ばねを設けた構造である。そして、この圧縮ばねの弾性力により、ロータを軸受け部に押し付けることで、ロータと軸受け部の間に生じる摩擦力により、停止時の保持トルクを発生させている。
【0005】
しかし、この構造は、ロータやステータをケース内に組み込みを、圧縮ばねを圧縮した状態を維持して行う必要がある。このため、圧縮ばねを指等で押さえながら、組み込み作業を行わなければならず、組み立て治具を使ったり、特別な指使い等の技能が必要であったりする。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、ロータをステータ内に組み込む際に、ばね部材の反力を受けずに行うことができる電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸方向の一端が開口したステータ部と、前記ステータ部の前記軸方向の他端から突出した回転軸を有する、前記ステータ部の内部に配置されたロータ部と、前記ステータ部の前記一端を塞ぐキャップ部と、を備え、前記ステータ部と前記キャップ部とで囲まれた空間の外部に、前記回転軸の停止状態を保持する保持トルクを付与する、ばね部材を有する保持トルク付与部を備えた電動機である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電動機によれば、ロータをステータ内に組み込む際に、ばね部材の反力を受けずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る電動機の一実施形態であるインナーロータ型のモータを示す、回転軸を含む面による縦断面図である。
図2図1に示したモータのうち、ステータ部、ロータ部及びキャップ部を組み立てる途中の状態を示す分解断面図である。
図3】ステータ部、ロータ部及びキャップ部が組み立てられた状態を示す断面図である。
図4図3に示した、ロータ部とステータ部とキャップ部とが組み立てられた状態で、保持トルク付与部のカラーが組み込まれた状態を示す断面図である。
図5図4に示した状態から、保持トルク付与部のコイルばねが組み込まれた状態を示す断面図である。
図6図5に示した状態から、保持トルク付与部の止めワッシャが組み込まれた状態を示す断面図である。
図7】止めワッシャと併せて、回転軸にピニオンギヤを適用したモータを示す図1相当の断面図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電動機の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
<構成>
図1は本発明に係る電動機の一実施形態であるインナーロータ型のモータ100を示す、回転軸11を含む面による縦断面図、図2は、図1に示したモータ100のうち、ステータ部30、ロータ部10及びキャップ部50を組み立てる途中の状態を示す分解断面図、図3は、ステータ部30、ロータ部10及びキャップ部50が組み立てられた状態を示す断面図である。
【0012】
本発明の一実施形態に係るモータ100は、図1に示すように、ステータ部30の内部にロータ部10が配置され、ステータ部30の一端30a側の開口30cをキャップ部50で塞ぎ、ステータ部30の他端30b側と回転軸11の他端11b側との間に、ロータ部10の回転軸11の停止状態を保持する保持トルクを付与する保持トルク付与部70と、を備えている。
【0013】
ロータ部10は、図2に示すように、回転軸11と、カップコイル12と、モールド13と、ブッシュ14と、整流子15と、摺動ワッシャ16と、を備えている。
【0014】
回転軸11は直線状に延びた棒状に形成されている。カップコイル12は円筒状に形成されている。カップコイル12の円筒部分は、回転軸11の直径よりも大きく形成されている。
【0015】
モールド13は、回転軸11とカップコイル12とを連結する円板状に形成されている。モールド13の円板の中心部に回転軸11が貫通して固定され、円板の外周縁にカップコイル12の円筒部分が固定されて、円筒部分の軸方向が回転軸11の軸C方向に一致して、回転軸11、モールド13及びカップコイル12が一体化されている。
【0016】
なお、モールド13は、回転軸11の一端11a側及びカップコイル12の軸方向の一端12a側に固定され、回転軸11は、その固定された側の一端11aはモールド13を貫通して突出している。モールド13の、回転軸11の一端11aが突出した面側からその突出した回転軸11の一端11aに亘って、整流子15が設けられている。整流子15は後述するキャップ部50の金属ブラシ52と接して設けられている。
【0017】
ブッシュ14は、回転軸11の軸C方向に沿って、モールド13の中心部に隣接して設けられている。ブッシュ14は、モールド13を挟んで回転軸11の一端11aとは反対側に設けられていて、モールド13と同様に、回転軸11が貫通している。ブッシュ14も回転軸11と一体に固定されている。なお、モールド13とブッシュ14は絶縁体であるが、ブッシュ14は導体(金属等)であってもよい。
【0018】
摺動ワッシャ16は、ブッシュ14よりも、回転軸11の他端11b側に配置されている。摺動ワッシャ16の内径は回転軸11の外径よりも大きく形成されていて、回転軸11に緩く嵌められている。したがって、摺動ワッシャ16は回転軸11に対して回転自在である。
【0019】
摺動ワッシャ16は、例えば、樹脂によって形成されている。なお、摺動ワッシャ16の材質は樹脂に限定されるものではなく、樹脂以外の材料(例えば、金属)であってもよい。
【0020】
ステータ部30は、ハウジング31と、マグネット支持部33と、マグネット32と、滑り軸受け34と、ラジアルベアリング(転がり軸受け)35と、を備えている。
【0021】
ハウジング31は、ロータ部10を内側に収容するモータ100の外装(ケース)を兼ねていて、カップコイル12よりも外径の大きい円筒状に形成されている。マグネット支持部33は、内側に回転軸11が通され、外周面に後述するマグネット32が固定された、概略略円筒状に形成された部分33c(以下、円筒部分33cという。)と、この円筒部分33cの他端33bにおいて、ハウジング31の他端31bに結合された大径の部分33d(以下、大径部33dという。)と、を有している。
【0022】
したがって、ステータ部30は、一端30aが開口し、他端30bが大径部33dによって塞がれている。
【0023】
滑り軸受け34は、円筒部分33cの一端33a側に固定されていて、回転軸11が貫通した状態で、回転軸11を回転自在に支持する。ラジアルベアリング35は、大径部33dの内側に形成された凹部33eに設けられている。ラジアルベアリング35の外輪35aは大径部33dに固定されていて、ラジアルベアリング35の内輪35bは、回転軸11を回転自在に支持する。
【0024】
これにより、回転軸11は、軸C方向の一端11a側が滑り軸受け34に支持され、軸C方向の他端11b側がラジアルベアリング35に支持されて、回転自在となっている。
【0025】
マグネット支持部33の外周面に固定されたマグネット32は、外径がカップコイル12よりも小さく形成されている。これにより、マグネット32とハウジング31との間には、回転軸11を中心とする半径方向において、円筒状の空間が形成される。この円筒状の空間には、カップコイル12が配置される。
【0026】
そして、ロータ部10の回転軸11を、他端11b側から、ステータ部30の滑り軸受け34、ラジアルベアリング35の順に通して、図3に示すように、滑り軸受け34に摺動ワッシャ16を突き当て、さらに、摺動ワッシャ16にブッシュ14を突き当てて、摺動ワッシャ16を滑り軸受け34とブッシュ14とで軸C方向に挟んだ状態とする。
【0027】
このとき、カップコイル12は、他端12b側から、マグネット32とハウジング31との間に形成された空間に配置され、ロータ部10が、ステータ部30とキャップ部50とで囲まれた内部空間に収容された組み立て状態となる。
【0028】
なお、回転軸11の他端11bは、ラジアルベアリング35を通して、ステータ部30とキャップ部50とで囲まれた内部空間の外側(外部)に対応した部分に配置されている。回転軸11は滑り軸受け34とラジアルベアリング35とに支持されて、回転自在となっている。
【0029】
そして、滑り軸受け34とラジアルベアリング35とにより回転自在に支持された回転軸11を軸C回りに回転させたとき、カップコイル12は、マグネット32にもハウジング31にも接触しない状態で、ステータ部30に対して回転する。
【0030】
なお、滑り軸受け34とブッシュ14とで摺動ワッシャ16を挟んだ状態では、回転軸11の他端11bは、ラジアルベアリング35から突出した状態となる。
【0031】
キャップ部50は、短円筒状のブラシ台51と、ブラシ台に設けられた金属ブラシ52と、ブラシ台51に固定されて外部に延びた電気配線53,54と、を備えている。電気配線53,54は、金属ブラシ52と電気的に接続されている。
【0032】
ブラシ台51の中心部には、回転軸11のモールド13から突出した一端11aを通す空間が形成されている。ブラシ台51は、外周部分がハウジング31の一端31aに嵌め込まれてステータ部30に固定される。
【0033】
この状態で、回転軸11の一端11aの外周に配置された整流子15が、ブラシ台51の中心部に形成された空間に突出した金属ブラシ52に接した状態となる。これにより、外部から電気配線53,54に供給された電流が、金属ブラシ52、整流子15を通じてカップコイル12に00流れて、カップコイル12は回転軸11と一体に、軸C回りに回転する。
【0034】
図4は、図3に示した、ロータ部10とステータ部30とキャップ部50とが組み立てられた状態で、保持トルク付与部70のカラー71が組み込まれた状態を示す断面図、図5は、図4に示した状態から、保持トルク付与部70のコイルばね72が組み込まれた状態を示す断面図、図6は、図5に示した状態から、保持トルク付与部70の止めワッシャ73が組み込まれた状態を示す断面図である。
【0035】
保持トルク付与部70は、図4~6に示すように、回転軸11の、ステータ部30とキャップ部50とで囲まれた空間の外部に対応した部分に配置されている。保持トルク付与部70は、図4~6に示すように、カラー71と、コイルばね72(ばね部材の一例)と、止めワッシャ73(固定部材の一例)と、を備えている。
【0036】
カラー71は、図4に示すように、円筒部71a(筒部の一例)の軸方向の一端に底板71bが形成された部材であり、例えば金属の材料で形成されている。
【0037】
カラー71の円筒部71aは、マグネット支持部33に形成された凹部33eの直径よりもわずかに小さい外径で形成されている。カラー71の底板71bは、外側の面が、ラジアルベアリング35の外輪35aよりも小さい直径で形成されていて、中心部には、回転軸11を通す孔が形成されている。
【0038】
そして、カラー71は、底板71bを回転軸11の一端11a側として、円筒部71aの軸を回転軸11の軸C方向に沿わせた姿勢で、回転軸11の他端11b側から、底板71bの孔に回転軸11に通して、凹部33eに配置される。そして、底板71bの外側の面がラジアルベアリング35の内輪35bに突き当てられた状態となっている。
【0039】
コイルばね72は、図5に示すように、カラー71の円筒部71aの内側空間に、コイルばね72の一端が底板71bの内側の面に接した状態で配置されている。コイルばね72は、軸方向に圧縮荷重の作用していない状態(弾性力が発生していない状態)での自然長が、カラー71の円筒部71aの軸C方向の長さよりも長く形成されている。
【0040】
止めワッシャ73は、図6に示すように、丸平ワッシャと同様の形状であり、例えば樹脂材料で形成されている。止めワッシャ73を形成している樹脂材料は、摺動ワッシャ16を形成している樹脂材料とは異なる材料であるが、同じ材料であってもよい。
【0041】
止めワッシャ73の中心部に形成された孔は、回転軸11の外径とほぼ同じか、又は回転軸11の外径よりもわずかに小さく形成されていて、回転軸11を通したとき、軽い圧入(軽圧入)となる。
【0042】
ここで、軽圧入とは、円筒部71aの長さまで縮めたときに発生するコイルばね72の弾性力を受けても、回転軸11に固定された状態を維持することができる摩擦力に抗して、組み立て作業者の人力だけで、止めワッシャ73を回転軸11に圧入することができる程度の圧入を意味する。
【0043】
回転軸11にカラー71及びコイルばね72が配置されている状態で、止めワッシャ73の孔に、回転軸11の他端11b側から回転軸11を通すように、止めワッシャ73が回転軸11に軽圧入される。
【0044】
そして、止めワッシャ73は、図1に示すように、カラー71の円筒部71aの端面(底板71bを有する側の端面とは反対側の端面(回転軸11の他端11bに近い側の端面))に突き当てられた状態とされている。
【0045】
この状態において、カラー71の、底板71bを有する側の端面とは反対側の端面及び開口は、止めワッシャ73により完全に覆われている。これにより、コイルばね72は、止めワッシャ73とカラー71の円筒部71a及び底板71bと回転軸11とで囲まれて閉鎖された空間に収容された状態とされている。この閉鎖された空間は、外部から内部へ細かいゴミ等の異物が侵入しない程度に密閉されている。
【0046】
なお、止めワッシャ73が回転軸11に軽圧入される際には、止めワッシャ73と回転軸11との間に作用する摩擦力によって、回転軸11が、キャップ部50側の方向に動く。回転軸11がキャップ部50側に動くと、止めワッシャ73が回転軸11の所定の位置まで圧入することができなくなる。
【0047】
このような事態を防ぐために、止めワッシャ73が回転軸11に軽圧入される際には、ブラシ台51の中心部に形成された孔を通して回転軸11の一端11aを他端11b側に押圧して、回転軸11が動かないようにする。
【0048】
このとき、コイルばね72は、カラー71の円筒部71aの内部において、底板71bと止めワッシャ73とに挟まれて、底板71bと止めワッシャ73との間の長さに押し縮められた状態になっている。したがって、コイルばね72は、自然長よりも押し縮められた長さに対応した、軸C方向の両外側に向けた弾性力を発生している。
【0049】
これにより、コイルばね72は、底板71bをラジアルベアリング35に向けて押圧し、止めワッシャ73を他端11b側に押圧している。ラジアルベアリング35はマグネット支持部33に固定されているのに対して、止めワッシャ73は回転軸11に軽圧入で固定されている。
【0050】
したがって、上述したコイルばね72に発生している弾性力は、相対的に、回転軸11をマグネット支持部33に対してキャップ部50から遠ざける向き(図1の軸C方向に沿った矢印方向)に、作用している。
【0051】
ロータ部10のブッシュ14とステータ部30の滑り軸受け34とにそれぞれ接している摺動ワッシャ16は、これら両者から押圧力を受けるため、この押圧力が、コイルばね72に発生している弾性力に応じて増大する。
【0052】
この増大した押圧力は、ブッシュ14と滑り軸受け34との相対的な回転の際の、摺動ワッシャ16に生じる摩擦力の増大となり、ステータ部30に対するロータ部10の回転を妨げる保持トルクとなる。
【0053】
したがって、カラー71、コイルばね72及び止めワッシャ73は、ステータ部30に対するロータ部10の回転を妨げる保持トルクを付与する保持トルク付与部70として機能する。
【0054】
このように、本実施形態のモータ100は、保持トルク付与部70によって、ステータ部30に対するロータ部10の回転を妨げる保持トルクを付与することができ、ステータ部30に対してロータ部10が停止している状態で、ロータ部10が容易に回転するのを防止又は抑制する。
【0055】
そして、保持トルク付与部70は、ステータ部30とキャップ部50とで囲まれたモータ100の内部空間ではなく、この内部空間の外部に設けられている。したがって、ロータ部10、ステータ部30及びキャップ部50が組み立てられた後に、組み付けることができる。
【0056】
つまり、モータ100は、ロータ部10とステータ部30とが互いに組み付けられる際や、キャップ部50がステータ部30及びロータ部10に組み付けられる際に、コイルばね72の反力を受けない。
【0057】
したがって、モータ100は、コイルばね72の弾性力の反力を受けた状態で、ロータ部10、ステータ部30及びキャップ部50の組み立て作業を行う必要がない。よって、反力を受けた状態で、ロータ部10、ステータ部30及びキャップ部50の組み立て作業を行う場合に比べて、組み立て作業を容易化することができる。
【0058】
また、保持トルク付与部70は、モータ100の内部空間の外部に設けられているため、モータ100の内部空間に、保持トルク付与部70を配置するためのスペースを確保することがなく、モータ100の外形を小さくすることができる。
【0059】
また、本実施形態のモータ100は、保持トルク付与部70が付与する保持トルクが、予め設定された長さ(自然長)のコイルばね72を、カラー71の円筒部71aの長さまで縮めたときの差の長さに応じたものとすることができるため、自然長が同じコイルばね72及び円筒部71aの長さが同じカラー71を用いたモータ100は、常に一定の保持トルクを発生することができる。したがって、モータ100は、保持トルクの個体差によるばらつきを低減することができる。
【0060】
本実施形態のモータ100は、回転軸11の出力側となる他端11bに軽圧入された止めワッシャ73によって、ロータ部10側に作用するコイルばね72の弾性力を受けているが、止めワッシャ73は、軽圧入よりも強い摩擦力で回転軸11に固定されていてもよい。
【0061】
また、モータ100は、回転軸11に固定されて、コイルばね72の上述した弾性力を回転軸11側で受けるものであれば、止めワッシャ73以外の形態の固定部材であってもよい。そのような固定部材としては、例えば、ピニオンギヤやプーリ等を適用することができる。これらのピニオンギヤやプーリ等の固定部材は、止めワッシャ73とともに用いてもよい。
【0062】
図7は、止めワッシャ73と併せて、回転軸11にピニオンギヤ210を適用したモータ100を示す図1相当の断面図である。軽圧入の止めワッシャ73は、圧入に比べて、回転軸11との摩擦力が小さいため、コイルばね72の弾性力を受けることで、経時的に他端11b側に移動する恐れがある。
【0063】
しかし、図7に示すように、回転軸11の他端11b側に、止めワッシャ73の位置までピニオンギヤ210が圧入されたモータ100は、ピニオンギヤ210が、軽圧入の止めワッシャ73よりも強い摩擦力で回転軸11に固定されているため、コイルばね72の弾性力を受けても止めワッシャ73が他端11b側に移動するのを防ぐことができる。
【0064】
なお、ピニオンギヤ210は、回転軸11に、圧入ではなく、接着、溶接又はねじ等により固定されていてもよい。
【0065】
しかも、モータ100は、回転軸11にピニオンギヤ210が固定されているため、回転軸11の回転を他の装置(例えば、減速装置)に伝達する場合に、他の装置に設けられた歯車に、ピニオンギヤ210を噛み合わせるだけで、回転軸の回転を伝達することができる。
【0066】
本実施形態のモータ100は、保持トルク付与部70を、モータ100の内部空間から外部に突出した回転軸11の他端11b側に配置したものであるが、回転軸11の一端11aがモータ100の内部空間から外部に突出したものでは、保持トルク付与部70を、回転軸11の一端11a側に配置してもよい。
【0067】
この場合、例えば、キャップ部50の中心部を通って外部に突出した回転軸11の一端11a側に保持トルク付与部70を配置し、回転軸11を、キャップ部50に対して軸C方向(図1の軸C方向に沿った矢印方向とは反対方向)に付勢してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 ロータ部
11 回転軸
12 カップコイル
30 ステータ部
31 ハウジング
32 マグネット
33 マグネット支持部
50 キャップ部
70 保持トルク付与部
71 カラー
72 コイルばね(ばね部材)
73 止めワッシャ(固定部材)
100 モータ(電動機)
C 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7