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特許7455626ホイール、駆動ユニット、及び、移動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ホイール、駆動ユニット、及び、移動装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20240318BHJP
   B60B 19/12 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B60B19/00 H
B60B19/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020047945
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146850
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】大石 一真
(72)【発明者】
【氏名】富安 健也
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196146(JP,A)
【文献】特開2019-137390(JP,A)
【文献】特開平03-178801(JP,A)
【文献】特開2018-203041(JP,A)
【文献】特開平06-054941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0046888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00 - 19/14
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるバレルホルダーと、
前記バレルホルダーに支持される複数のバレル支持軸と、
各前記バレル支持軸に支持されるバレルと、
前記バレルを前記バレル支持軸に回転自在に支持させる軸受と、
前記バレルの軸方向の端面に対向する前記バレルホルダーの対向壁と前記軸受との間で、前記対向壁と前記軸受の間の隙間を埋める隙間埋め部材と、
を備え
前記隙間埋め部材は、
前記バレル支持軸の外周に配置される環状のベースブロックと、
前記ベースブロックに支持され、前記軸受を前記バレル支持軸の軸方向内側に付勢する弾性部材と、
を備えているホイール。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの径方向に沿う径方向幅の略中間位置に配置されている請求項に記載のホイール。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの内周側の端部に配置されて、前記バレル支持軸に当接している請求項に記載のホイール。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの径方向に沿う径方向幅の中間位置よりも外側に配置されている請求項に記載のホイール。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの軸方向の一端側と他端側とに配置されている請求項1~4いずれか1項に記載のホイール。
【請求項6】
前記ベースブロックの軸方向の一端側に配置される前記弾性部材と、軸方向の他端側に配置される前記弾性部材とは、径方向にオフセットした位置に配置されている請求項に記載のホイール。
【請求項7】
前記弾性部材は、円環状に形成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のホイール。
【請求項8】
前記弾性部材は、前記ベースブロックに一体に接合されている請求項1~7のいずれか1項に記載のホイール。
【請求項9】
回転駆動されるバレルホルダーと、
前記バレルホルダーに支持される複数のバレル支持軸と、
各前記バレル支持軸に支持されるバレルと、
前記バレルを前記バレル支持軸に回転自在に支持させる軸受と、
前記バレルの軸方向の端面に対向する前記バレルホルダーの対向壁と前記軸受との間で、前記対向壁と前記軸受の間の隙間を埋める隙間埋め部材と、
を備え
前記隙間埋め部材は、伸縮可能な袋体の内部に流体が充填されているホイール。
【請求項10】
前記流体は、常温よりも高い温度で液化する樹脂である請求項9に記載のホイール。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のホイールと、
当該ホイールを回転駆動する駆動装置と、
を備えている駆動ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の駆動ユニットと、
複数の前記駆動ユニットが支持される車体と、
を備えている移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置の車輪に用いられるホイール、駆動ユニット、及び、移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動装置の車輪としてメカナムホイールが知られている。このホイールは、樽形形状の接地回転体(床面や路面に接地する回転体)である複数のバレルと、複数のバレルを外周上に回転可能に支持するバレルホルダーと、を備え、バレルホルダーがモータ等の駆動装置によって回転駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数のバレルは、バレルホルダーのホルダー回転軸線に対して傾斜した状態でバレルホルダーの外周上に保持されている。ホイールは、移動装置のほぼ四隅に配置され、四隅に配置された各ホイールが駆動装置によって独立して制御される。即ち、移動装置は、各ホイールの回転方向とトルクを個別に制御することにより、様々な方向に自由に移動することができる。なお、移動装置の左右に配置されるホイールは、バレルホルダーの外周上に保持されるバレルの傾斜方向が逆向きに設定されている。
【0004】
また、バレルホルダーの軸方向外側の両端部には、径方向外側に張り出す一対の支持フランジが設けられ、一対の支持フランジに跨るように複数のバレル支持軸が固定されている。各バレルは対応するバレル支持軸に軸受を介して回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/016917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のホイールは、一対の支持フランジに架設されたバレル支持軸に対し、対応するバレルが軸受を介して回転自在に支持されている。しかし、この種のホイールは、移動装置の走行中(ホイールの回転中)に、路面からの大きな反力がバレルの軸方向の一端側と他端側とに交互に作用する。このため、車両の走行中に軸受がバレルとともに軸方向に変動し、軸受周りの部材が軸方向の荷重を受けて当接音を発することが懸念される。
【0007】
本発明は、バレルの軸方向の変動を抑制できるようにして、静粛性を高めることができるホイール、駆動ユニット、及び、移動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るホイールは、回転駆動されるバレルホルダーと、前記バレルホルダーに支持される複数のバレル支持軸と、各前記バレル支持軸に支持されるバレルと、前記バレルを前記バレル支持軸に回転自在に支持させる軸受と、前記バレルの軸方向の端面に対向する前記バレルホルダーの対向壁と前記軸受との間で、前記対向壁と前記軸受の間の隙間を埋める隙間埋め部材と、を備え、前記隙間埋め部材は、前記バレル支持軸の外周に配置される環状のベースブロックと、前記ベースブロックに支持され、前記軸受を前記バレル支持軸の軸方向内側に付勢する弾性部材と、を備えている。
【0009】
本態様のホイールは、バレルホルダーの対向壁と軸受の間の隙間が隙間埋め部材によって埋められる。このため、ホイールの回転に伴うバレルの軸方向の変動は、軸受を介して隙間埋め部材によって抑制される。
【0011】
この場合、バレルには、軸方向内側に向かう弾性部材の付勢力が作用するため、バレルの軸方向の若干の変位を許容しつつも、入力荷重による衝撃を緩和し、軸受周りの部材の当接音の発生を抑制することができる。また、隙間埋め部材は、弾性部材を備えているため、隙間埋め部材を弾性部材の付勢力に抗するように押し縮め、その状態でバレルホルダーの対向壁と軸受の間に組み付けることができる。したがって、本構成を採用した場合には、バレルホルダーに対するバレルの組み付け性が良好になる。
【0013】
この場合、製造の容易な簡単な構成でありながら、バレルホルダーの対向壁と軸受の間の隙間を埋めることができる。
【0014】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの径方向に沿う径方向幅の略中間位置に配置されるようにしても良い。
【0015】
この場合、弾性部材がベースブロックの径方向幅の略中間位置に配置されるため、弾性部材の弾発力を軸受の径方向幅の略中心位置に作用させることができる。したがって、本構成を採用した場合には、軸受の性能を良好に維持することができる。
【0016】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの内周側の端部に配置されて、前記バレル支持軸に当接するようにしても良い。
【0017】
この場合、圧縮された弾性部材がベースブロックとバレル支持軸とに当接するため、バレル支持軸に対するベースブロックの回転を弾性部材によって規制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ベースブロックの回転に伴うベースブロックとバレル支持軸の摺動摩耗を抑制することができる。
【0018】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの径方向に沿う径方向幅の中間位置よりも外側に配置されるようにしても良い。
【0019】
この場合、走行面からの反力を受けてバレルが傾斜したときに、弾性部材の弾発力を軸受の径方向外側位置に作用させることができる。このため、本構成を採用した場合には、弾性部材の弾発力によってバレルの傾斜を速やかに復元させることができる。
【0020】
前記弾性部材は、前記ベースブロックの軸方向の一端側と他端側とに配置されるようにしても良い。
【0021】
この場合、ベースブロックの軸方向の一端側と他端側の弾性部材によって充分な伸縮ストロークを確保することができる。このため、本構成を採用した場合には、走行時における静粛性をより高めることができるうえ、バレルホルダーに対するバレルの組み付け性もより高めることができる。
【0022】
前記ベースブロックの軸方向の一端側に配置される前記弾性部材と、軸方向の他端側に配置される前記弾性部材とは、径方向にオフセットした位置に配置されるようにしても良い。
【0023】
この場合、弾性部材の弾発力を軸受の径方向の広い範囲に安定して作用させることができる。したがって、本構成を採用した場合には、軸受の性能を良好に維持することができる。
【0024】
前記弾性部材は、円環状に形成されるようにしても良い。
【0025】
この場合、弾性部材から軸受に作用する弾発力がバレル支持軸の周域においてほぼ均一になる。したがって、本構成を採用した場合には、軸受の性能を良好に維持することができる。
【0026】
前記弾性部材は、前記ベースブロックに一体に接合されるようにしても良い。
【0027】
この場合、弾性部材がベースブロックと一体化されるため、組付け時における部品の取り扱いが容易になる。したがって、本構成を採用した場合には、バレルの組み付け作業性が良好になる。
【0028】
また、本発明の一態様に係るホイールは、回転駆動されるバレルホルダーと、前記バレルホルダーに支持される複数のバレル支持軸と、各前記バレル支持軸に支持されるバレルと、前記バレルを前記バレル支持軸に回転自在に支持させる軸受と、前記バレルの軸方向の端面に対向する前記バレルホルダーの対向壁と前記軸受との間で、前記対向壁と前記軸受の間の隙間を埋める隙間埋め部材と、を備え、前記隙間埋め部材は、伸縮可能な袋体の内部に流体が充填されている。
【0029】
前記流体は、常温よりも高い温度で液化する樹脂であっても良い。
【0030】
本発明の一態様に係る駆動ユニットは、上記いずれかのホイールと、当該ホイールを回転駆動する駆動装置と、を備えている。
【0031】
本発明の一態様に係る移動装置は、前記駆動ユニットと、複数の前記駆動ユニットが支持される車体と、を備えている。
【発明の効果】
【0032】
上述のホイールは、バレルホルダーの対向壁と軸受の間の隙間が隙間埋め部材によって埋められるため、使用時におけるバレルの軸方向の変動を抑制することができる。したがって、上述のホイールを採用した場合には、静粛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態の移動装置の平面図。
図2】第1実施形態のホイールの斜視図。
図3】第1実施形態のホイールの図2のIII-III線に沿う断面図。
図4】第1実施形態のホイールの図2のIV-IV線に沿う断面図。
図5】第1実施形態の隙間埋め部材の正面図。
図6】第1実施形態の移動装置の走行時におけるホイールの状態を示す断面図。
図7】第2実施形態の隙間埋め部材の正面図。
図8】第3実施形態のホイールの図4の一部に対応する断面図。
図9】第4実施形態のホイールの図4の一部に対応する断面図。
図10】第5実施形態のホイールの図4の一部に対応する断面図。
図11】第6実施形態のホイールの図4の一部に対応する断面図。
図12】第7実施形態のホイールの図4の一部に対応する断面図。
図13】第8実施形態のホイールの図4の一部に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、共通部分に同一符号を付して、重複する説明を省略するものとする。
各実施形態のホイール10は、例えば、図1に示すような移動装置1に用いられる。図1は、移動装置1を上方から見た状態を示す図である。
各実施形態のホイール10は、移動装置1の車体2の前側の左右両側部と、車体2の後側の左右両側部にそれぞれ配置されている。各ホイール10は、車体2に支持された駆動装置3によってそれぞれ独立して駆動される。駆動装置3は、モータ4と、モータ4の回転を減速してホイール10に伝達する減速機5と、を備えている。本実施形態では、ホイール10と、そのホイール10を回転駆動する駆動装置3が駆動ユニットを構成している。
なお、移動装置1の左右に配置されるホイール10は、後述するバレルホルダー11の外周上に保持されるバレル13の傾斜方向が逆向きに設定されている。
【0035】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態のホイール10の斜視図であり、図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。また、図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
これらの図に示すように、ホイール10は、駆動装置3(図1参照)によって回転駆動される略円筒状のバレルホルダー11と、バレルホルダー11の外周に支持される複数のバレル支持軸12と、各バレル支持軸12に支持される樽形形状の接地回転体であるバレル13と、を備えている。なお、図2では、バレル支持軸12とバレル13は各一つのみが図示され、他のバレル支持軸12とバレル13は、中心軸線L2のみが示されている。
【0036】
バレルホルダー11は、軸方向(車体2の幅方向)に離間して配置される一対の支持フランジ14と、一対の支持フランジ14を連結する連結筒15と、を備えている。一対の支持フランジ14は、孔あき円板状に形成され、連結筒15とともに連続した略円筒形状を形成している。略円筒形状のバレルホルダー11の内部には、図1に示す駆動装置3(減速機5とモータ4の一部)が配置される。減速機5の出力部は、例えば、支持フランジ14に連結されて、減速されたモータ4の回転をバレルホルダー11に伝達する。なお、バレルホルダー11がモータ4の回転を受けて回転する際のバレルホルダー11の回転軸線をホルダー回転軸線L1と呼ぶものとする。
【0037】
連結筒15の外径は、支持フランジ14の外径よりも小径に形成されている。各バレル13を支持するバレル支持軸12の軸方向の両端部は、各支持フランジ14の外周面に形成された固定溝16内に、例えば、ボルト17によって固定されている。バレル支持軸12は、ホルダー回転軸線L1に対して一方向に所定角度傾斜するように、一対の支持フランジ14に固定されている。また、各支持フランジ14の連結筒15側の側縁部には、バレル支持軸12に支持されたバレル13の軸方向の端部が収容されるバレル受容凹部18が形成されている。各バレル受容凹部18には、バレル13の軸方向の端面と対向する対向壁19が設けられている。対向壁19は、バレル受容凹部18に収容されるバレル13の中心軸線L2と直交するように形成されている。
【0038】
各バレル支持軸12に支持されるバレル13は、軸方向の中央領域が樽形状に膨出した金属製のバレル基材20と、バレル基材20の外周面に接着等によって固定されたウレタン製の表皮材21と、を備えている。バレル基材20の軸心位置は、軸方向に沿って延びる軸孔22が形成されている。軸孔22には、バレル支持軸12が挿通されている。バレル基材20の軸孔22とバレル支持軸12の間には、バレル13をバレル支持軸12に回転自在に支持されるためのラジアル軸受23とスラスト軸受24とが介装されている。ラジアル軸受23とスラスト軸受24は、軸孔22内の軸方向の両側の端部にそれぞれ配置されている。スラスト軸受24は、軸孔22内において、ラジアル軸受23の軸方向外側位置に隣接して配置されている。
【0039】
バレル基材20の軸孔22の軸方向外側の端部には、段差状に内径が拡大する拡径部22aが設けられ、その拡径部22a内にスラスト軸受24が配置されている。スラスト軸受24は、例えば、一対の軌道板24a,24bと、その一対の軌道板24a,24bの間に介装された転動体24cを備えた構成とされている。本実施形態の場合、一方の軌道板24aは、バレル基材20の拡径部22a内の軸方向内側の端面25に当接している。
【0040】
バレル13の軸方向の端部は、バレルホルダー11のバレル受容凹部18内において、バレルホルダー11の対向壁19に対向している。また、バレル基材20の拡径部22a内に配置されたスラスト軸受24の外側の軌道板24bは、同様にバレルホルダー11のバレル受容凹部18内において、バレルホルダー11の対向壁19に対向している。バレルホルダー11の対向壁19とスラスト軸受24の軌道板24bの間には所定の隙間(スペース)があり、その隙間には、隙間埋め部材であるスペーサユニット26が介装されている。
【0041】
図5は、スペーサユニット26をスラスト軸受24の配置される側から見た正面図である。
スペーサユニット26は、図4図5に示すように、金属製の短軸円筒状のベースブロック27と、ベースブロック27のスラスト軸受24側の端部に保持された円環状の弾性部材28と、を備えている。ベースブロック27のスラスト軸受24側の端面には、環状の保持溝29が形成されている。弾性部材28は、ベースブロック27の保持溝29に保持されている。保持溝29は、円環状のベースブロック27の端面の径方向幅の略中央位置に形成されている。したがって、弾性部材28は、ベースブロック27の径方向幅の略中間位置に配置されている。
【0042】
弾性部材28は、ゴムや軟質樹脂等により、例えば、円形状の断面形状に形成されている。弾性部材28は、保持溝29内からその一部が外側に膨出し得る外径に形成されている。なお、弾性部材28は、必ずしも円形状の断面形状である必要はなく、少なくとも外力が作用しない状態で、その一部が保持溝29の外側に膨出する形状であればよい。
【0043】
ベースブロック27は、保持溝29に弾性部材28を保持した状態において、バレル支持軸12の外周部に装着される。スペーサユニット26は、バレル13が組み付けられたバレル支持軸12をバレルホルダー11の支持フランジ14に組み付ける際に、スラスト軸受24の軌道板24bと、支持フランジ14の対向壁19の介装される。このとき、ベースブロック27に保持された弾性部材28がスラスト軸受24の軌道板24bの端面に当接して圧縮される。これにより、対向壁19とスラスト軸受24(軌道板24b)の間の軸方向の隙間がベースブロック27と弾性部材28によって埋められるとともに、弾性部材28の弾発力がスラスト軸受24の軌道板24bに作用する。弾性部材28のこの弾発力は、スラスト軸受24を通して、バレル13に軸方向内側に付勢する付勢力として作用する。
【0044】
図6は、移動装置1の走行時におけるホイール10の状態を示す図である。図6中の(A)は、ホイール10のバレル13が軸方向の一端側に傾斜して走行面50に接地した状態を示し、図6中の(B)は、ホイール10のバレル13が軸方向の他端側に傾斜して走行面50に接地した状態を示している。
移動装置1の走行時には、ホイール10の回転に伴って図6の(A),(B)に示すように、バレル13が軸方向の一端側と他端側に交互に傾斜して走行面50上に接地することがある。このとき、走行面50からの反力F1がバレル13に軸方向に沿う分力F2として作用する。この分力F2の向きは、バレル13の軸方向の一端側に向かう向きと他端側に向かう向きとに交互に変化する。このため、各ホイール10のバレル13には、移動装置1の走行中に、軸方向の一端側に向かう荷重と他端側に向かう荷重が交互に作用する。
【0045】
本実施形態のホイール10は、バレルホルダー11の各支持フランジ14の対向壁19とスラスト軸受24の軌道板24bの間にスペーサユニット26が介装され、スペーサユニット26の弾性部材28の弾発力が軸方向内側に向かう付勢力としてバレル13に作用する。このため、移動装置1の走行時におけるバレル13の急激な軸方向変動はスペーサユニット26の弾性部材28の機能によって抑制される。
【0046】
以上のように、本実施形態のホイール10は、バレルホルダー11の各対向壁19とスラスト軸受24の間の隙間に、隙間埋め部材であるスペーサユニット26が介装されている。このため、移動装置1の走行時におけるバレル13の軸方向の変動を抑制し、スラスト軸受24の周りの部材が当接音を発生するのを抑制することができる。したがって、本実施形態のホイール10を採用した場合には、移動装置1の走行時における静粛性を高めることができる。
なお、本実施形態のホイール10は、バレルホルダー11の各対向壁19とスラスト軸受24の間に隙間が設けられているため、各対向壁19とスラスト軸受24の間に隙間を設けずにバレル13をスラスト軸受24とともにバレルホルダー11に組み付ける場合に比較して組み付け作業性が良好になる。
【0047】
また、本実施形態のホイール10は、スペーサユニット26が付勢部材の一形態である弾性部材28を備えているため、移動装置1の走行時にバレル13の軸方向の若干の変位を許容しつつも、入力荷重による衝撃を緩和し、当接音の発生を抑制することができる。また、スペーサユニット26をバレルホルダー11の対向壁19とスラスト軸受24の間の隙間に配置する場合には、スペーサユニット26の弾性部材28を押し縮め、その状態でスペーサユニット26を対向壁19とスラスト軸受24の間に介装することができる。したがって、本実施形態のホイール10の構造を採用した場合には、バレルホルダー11に対するバレル13の組み付け作業性を高めることができる。
【0048】
なお、バレルホルダー11の対向壁19とスラスト軸受24の間に介装する隙間埋め部材の付勢部材は、弾性部材28に限らず、皿ばねや、スプリングワッシャ、空気ばね等であっても良い。ただし、本実施形態のように、弾性部材28を用いた場合には、製造の容易な簡単な構成により、バレルホルダー11の対向壁19とスラスト軸受24の間の隙間を埋めることができる。
【0049】
また、本実施形態のホイール10の場合、スペーサユニット26の弾性部材28がベースブロック27の径方向幅の略中央位置に配置されているため、弾性部材28の弾発力をスラスト軸受24の径方向幅の略中心位置に作用させることができる。したがって、本実施形態の構造を採用した場合には、スラスト軸受24の性能を良好に維持することができる。
【0050】
さらに、本実施形態のホイール10は、円環形状の弾性部材28がベースブロック27に保持されているため、弾性部材28からスラスト軸受24に作用する弾発力がバレル支持軸12の周域においてほぼ均一になり、スラスト軸受24の性能を良好に維持することができる、という利点がある。
【0051】
<第2実施形態>
図7は、本実施形態の隙間埋め部材の正面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット126の構成が第1実施形態のものと異なっている。
【0052】
スペーサユニット126は、円環状のベースブロック127の端面の軸心o1を中心とした同心円cの円周上の三位置に半球状、若しくは、円形状の保持溝129が形成されている。各保持溝129には、球状、若しくは、円柱状の弾性部材128が保持されている。三つの弾性部材128は、ベースブロック127の端面の同心円cの円周上に等間隔に配置されている。また、各弾性部材128は、ベースブロック127の端面の径方向幅の略中央位置に配置されている。
【0053】
本実施形態のホイールでは、コンパクトな弾性部材128を用いつつも、弾性部材128の弾発力をスラスト軸受の径方向幅の略中心位置に作用させることができ、しかも、弾発力をバレル支持軸の周域において略均等に作用させることができる。
【0054】
<第3実施形態>
図8は、本実施形態のスラスト軸受24の取付部の図4の一部に対応する断面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット226の構成が第1,第2実施形態のものと異なっている。
【0055】
スペーサユニット226は、円環状のベースブロック227のスラスト軸受24側の端面に隣接する内周縁部に円環状の切欠き部31が形成されている。切欠き部31には、円環状の弾性部材28が保持されている。弾性部材28は、例えば、円形状の断面形状に形成されている。切欠き部31に保持された弾性部材28は、スラスト軸受24の外側の軌道板24bと、バレル支持軸12の外周面とに当接している。
【0056】
本実施形態のホイールは、スペーサユニット226の圧縮された弾性部材28が、ベースブロック227の内周縁部とバレル支持軸12の外周面とに当接する。このため、バレル支持軸12に対するベースブロック227の回転を弾性部材28によって規制することができる。したがって、本実施形態のホイールを採用した場合には、ベースブロック227の回転に伴うベースブロック227とバレル支持軸12の摺動摩耗を抑制することができる。
【0057】
<第4実施形態>
図9は、本実施形態のスラスト軸受24の取付部の図4の一部に対応する断面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット326の構成が第1~第3実施形態のものと異なっている。
【0058】
スペーサユニット326は、円環状のベースブロック327のスラスト軸受24側の端面に隣接する外周縁部に円環状の切欠き部31が形成されている。切欠き部31には、円環状の弾性部材28が保持されている。弾性部材28は、例えば、円形状の断面形状に形成されている。なお、図9に示す例では、弾性部材28がベースブロック327の外周縁部に保持されているが、弾性部材28は、ベースブロック327の径方向幅の中間位置p1よりも外側位置であれば、ベースブロック327の外周縁部以外の部位に保持されるようにしても良い。
【0059】
本実施形態のホイールは、移動装置1の走行時に走行面からの反力を受けてバレルが傾斜したときに、弾性部材28の弾発力をスラスト軸受24の径方向外側位置に作用させることができる。したがって、本実施形態のホイールを採用した場合には、バレルの傾斜(倒れ込み)に抗する大きなモーメントを弾性部材28からスラスト軸受24に作用させることができ、弾性部材28の弾発力によってバレルの傾斜を速やかに復元させることができる。
【0060】
<第5実施形態>
図10は、本実施形態のスラスト軸受24の取付部の図4の一部に対応する断面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット426の構成が第1~第4実施形態のものと異なっている。
【0061】
スペーサユニット426は、円環状のベースブロック427のスラスト軸受24側の端面と対向壁19側の端面に円環状の保持溝429a,429bが形成されている。保持溝429a,429bは、ベースブロック427の径方向幅の略中央位置に形成されている。各保持溝429a,429bには円環状の弾性部材28が保持されている。一方の保持溝429aに保持された弾性部材28は、スラスト軸受24の外側の軌道板24bに当接し、他方の保持溝429bに保持された弾性部材28は、バレルホルダー11の対向壁19に当接している。
【0062】
本実施形態のホイールのスペーサユニット426は、ベースブロック427の軸方向の一端側と他端側に弾性部材28が保持されている。このため、ベースブロック427の軸方向両側の弾性部材28によって充分な伸縮ストロークを確保することができる。したがって、本実施形態のホイールを採用した場合には、移動装置の走行時における静粛性をより高めることができるうえ、バレルホルダー11に対するバレルの組み付け性もより高めることができる。
【0063】
<第6実施形態>
図11は、本実施形態のスラスト軸受24の取付部の図4の一部に対応する断面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット526の構成が第1~第5実施形態のものと異なっている。
【0064】
スペーサユニット526は、第5実施形態のものと同様に、円環状のベースブロック527のスラスト軸受24側の端面と対向壁19側の端面に円環状の保持溝529a,529bが形成され、各保持溝529a,529bに弾性部材28が保持されている。しかし、本実施形態のスペーサユニット526では、ベースブロック527の一方の端面に形成される保持溝529aの径方向位置と、他方の端面に形成される保持溝529bの径方向位置が異なっている。したがって、ベースブロック527の軸方向の一端側に配置される弾性部材28と、軸方向の他端側に配置される弾性部材とは、径方向にオフセットした位置に配置されている。本実施形態の場合、ベースブロック527の軸方向の一端側に配置される弾性部材28は、ベースブロック部材527の径方向幅の中心位置p1よりも径方向内側に配置され、ベースブロック527の軸方向の他端側に配置される弾性部材28は、ベースブロック部材527の径方向幅の中心位置p1よりも径方向外側に配置されている。
【0065】
本実施形態のスペーサユニット526は、ベースブロック527の軸方向の一端側に配置される弾性部材28と他端側に配置される弾性部材28が径方向にオフセットして配置されているため、二つの弾性部材28の弾発力をスラスト軸受24の径方向の広い範囲に安定して作用させることができる。したがって、本実施形態のホイールを採用した場合には、第5実施形態と同様の基本的な効果を奏するうえ、スラスト軸受24の性能を良好に維持できる、という利点がある。
【0066】
<第7実施形態>
図12は、本実施形態のスラスト軸受24の取付部の図4の一部に対応する断面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット626の構成が第1~第6実施形態のものと異なっている。
【0067】
本実施形態のスペーサユニット626は、円環状のベースブロック627のスラスト軸受24側の端面と対向壁19側の端面に円環状の弾性部材628のシートが加硫接着等によって一体に接合されている。ベースブロック627の一方の面に接合された弾性部材628は、スラスト軸受24の外側の軌道板24bに当接し、他方の面に接合された弾性部材628は、バレルホルダー11の対向壁19に当接している。
【0068】
本実施形態のスペーサユニット626は、弾性部材28が加硫接着等によってベースブロック627と一体化されるため、組付け時における部品の取り扱いが容易になる。したがって、本実施形態のホイールを採用した場合には、バレルの組み付け作業性が良好になる。
なお、図12に示す例では、ベースブロック627の軸方向の両面に弾性部材628のシートが接合されているが、弾性部材628はベースブロック627の軸方向の一端側と他端側のいずれか一方の面にのみ接合するようにしても良い。
【0069】
<第8実施形態>
図13は、本実施形態のスラスト軸受24の取付部の図4の一部に対応する断面図である。
本実施形態のホイールは、隙間埋め部材であるスペーサユニット726の構成が第1~第6実施形態のものと異なっている。
【0070】
本実施形態のスペーサユニット726は、硬質材料から成るベースブロックをもたず、伸縮可能な袋体40の内部に気体や液体等の流体41が充填された構造とされている。
袋体40の内部に気体を充填した場合には、気体の弾発力によってスラスト軸受24の外側の軌道板24bに付勢力を作用させることができるとともに、袋体40と内部の気体の作用によってスラスト軸受24と対向壁19の間の隙間を埋めることができる。
【0071】
また、袋体40の内部に液体を充填する場合には、バレルをバレルホルダーに組み付ける際に袋体40の内部に充填する液体の充填量を調整することにより、スラスト軸受24と対向壁19の間の隙間を埋め、かつ、スラスト軸受24に軸方向の適切な押し付け力を作用させることができる。
なお、袋体40の内部に充填する液体は、常温よりも高い温度で液化する熱可塑性樹脂等であっても良い。この場合、バレルホルターにバレルを組み付けるときに、熱可塑性樹脂を液化した状態で袋体に充填し、熱可塑性樹脂が冷却されて硬化した時点でスラスト軸受24と対向壁19の間の隙間がスペーサユニット726によって埋められるようにしても良い。
【0072】
本実施形態のスペーサユニット726は、バレルの回転軸線と直交する平面に対し、バレルホルダー11の対向壁19やスラスト軸受24の軌道板24bが傾斜している場合にも、袋体40とその内部に充填する流体41によって対向壁19とスラスト軸受24の間の隙間を確実に埋めることができる。
【0073】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では樽形形状のバレルが用いられるが、バレルは軸方向の中央領域が径方向外側に膨出する回転体であれば良く、必ずしも樽形形状である必要はない。
【符号の説明】
【0074】
1…移動装置
2…車体
3…駆動装置(駆動ユニット)
10…ホイール(駆動ユニット)
11…バレルホルダー
12…バレル支持軸
13…バレル
19…対向壁
24…スラスト軸受(軸受)
26,126,226,326,426,526,626,726…スペーサユニット(隙間埋め部材)
27,127,227,327,427,527,627…ベースブロック
28,128,628…弾性部材(付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13