(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2020055559
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019076800
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019169513
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】立川 寛人
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229021(JP,A)
【文献】実開昭60-118132(JP,U)
【文献】特開平01-277535(JP,A)
【文献】実開平05-065302(JP,U)
【文献】特開2016-198306(JP,A)
【文献】特開2017-023410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を測定する光学系が設けられる光学ヘッド部と、
基部に対して前記光学ヘッド部を水平方向に移動可能な可動部と、
前記基部及び前記可動部の間に付勢力を印加する付勢部を含み、前記可動部に傾倒可能に配置される操作桿と、
前記操作桿の下端部に設けられる摩擦部と、
前記摩擦部の下側の位置において前記基部に配置される摩擦板と、
前記操作桿が所定の角度以上傾倒されると、前記付勢力を低減する付勢低減機構と、を備える眼科装置。
【請求項2】
前記付勢部は、前記摩擦部を前記摩擦板に向けて付勢し、
前記付勢低減機構は、前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると前記摩擦部の前記摩擦板に対する付勢力を低減することで、前記可動部及び前記基部の間の付勢力を低減する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記付勢低減機構は、前記操作桿に設けられた環状部材を含み、
前記環状部材は、前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると前記可動部に接触し、
前記環状部材が前記可動部に接触することにより前記可動部から前記操作桿に印加される、前記操作桿に印加されている操作力に対する反力に基づいて、前記摩擦部の前記摩擦板に対する付勢力が低減される、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記環状部材は、前記操作桿の軸方向において、前記操作桿に設けられる位置を調整可能である、請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記付勢低減機構は、前記可動部に設けられた摩擦部受け部材を含み、
前記摩擦部は、前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると前記摩擦部受け部材に接触し、
前記摩擦部が前記摩擦部受け部材に接触することにより、前記可動部から前記操作桿に印加される、前記操作桿に印加されている操作力に対する反力に基づいて、前記摩擦部の前記摩擦板に対する付勢力が低減される、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記摩擦部受け部材は、前記操作桿の対称軸と略等しい対称軸を有する傾斜面を含み、
前記摩擦部は、前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると前記傾斜面に接触する、請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記付勢低減機構は、前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると、前記操作桿に印加されている操作力に対する前記可動部における反力に基づいて、前記付勢力を低減する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記付勢低減機構は、前記摩擦部に設けられた球面部の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する、前記球面部の周縁部に設けられた外面部を含み、
前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒され、前記外面部が前記摩擦板に当接すると、前記摩擦部が前記可動部から遠ざかることで、前記付勢部による前記基部及び前記可動部の間の付勢力が低減される、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記付勢部は、前記操作桿に設けられた中球と前記摩擦部とを前記操作桿の長手方向に付勢する付勢部材を含み、
前記可動部は、前記中球を収容する中球収容部を含み、
前記摩擦部の前記球面部の曲率半径は、前記中球の中心から前記摩擦板までの距離に略等しい、請求項8に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記操作桿は、前記中球に対する前記操作桿の長手方向の移動を規制する規制部材を含み、
前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると、前記規制部材が前記中球に対する前記操作桿の長手方向の移動を規制することにより、前記摩擦部と前記中球が前記付勢部材によって引き離される距離が規制され、前記操作桿の傾倒に応じて前記中球が前記中球収容部から離れるとともに前記摩擦部が前記可動部から遠ざかることで、前記付勢部による前記基部及び前記可動部の間の付勢力が低減される、請求項9に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記付勢低減機構は、前記可動部に設けられた支持部を含み、
前記支持部は、前記操作桿が前記所定の角度以上傾倒されると前記操作桿に当接して前記操作桿を支持し、
前記操作桿が前記支持部によって支持されることで、前記摩擦部が前記摩擦板と接触しなくなることで、前記摩擦部の前記摩擦板に対する付勢力が低減される、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記可動部は、前記操作桿の傾倒角度が0度から所定の角度までの間、前記操作桿の傾倒と、前記付勢力に対する前記摩擦部及び前記摩擦板の間の摩擦力とにより、前記基部に対して前記光学ヘッド部を水平方向に移動可能に構成される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置には、被検眼の測定を行う光学ヘッド部を被検眼に対して位置合わせするための操作桿を有するものがある。検者等の使用者は、光学ヘッド部を前後左右に精密に位置合わせする微動位置合わせの際には、可動部に設けられる操作桿の傾倒操作を行う。操作桿が傾倒操作されると、操作桿下部に設けられる摩擦部がその下側に配置される摩擦板の表面を転動し、光学ヘッド部を支持する可動台が操作桿の傾倒方向に移動する。
【0003】
一方、光学ヘッド部を水平方向に大きな移動量で素早く移動させる粗動位置合わせの際には、使用者は、操作桿及び必要に応じて可動台の一部を把持して可動台を水平方向に移動させる。これにより、操作桿下端部に設けられる摩擦部が摩擦板の表面を摺動し、可動部が基部に対して水平方向に移動する。
【0004】
操作桿の下端部の摩擦部と摩擦板との摩擦力が小さいと、微動位置合わせの際に、操作桿下部と摩擦板との間にすべりが発生し、微小な位置合わせが困難になる。一方、この摩擦力が大きいと、粗動位置合わせの際に、可動部の移動に要する力が大きくなり、使用者の労力が大きくなる。このように、微動位置合わせと粗動位置合わせにおいて、操作桿下端部と摩擦板の摩擦力への要求は相反する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、特許文献1には、粗動位置合わせの際に、可動部の移動に要する力を小さくするため、摩擦部と摩擦板とが接触した状態と離れた状態とを切替える切替手段を有する構成が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、検者等の使用者が切替手段を動作させるために、操作桿を保持していない手で行う作業、例えば、光学系のフォーカス調整等の光学ヘッド部に対する操作又は被検者の瞼上げ等の作業が中断される。そのため、被検眼の測定操作における自由度が損なわれる。結果として、粗動位置合わせにおける操作感が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、粗動位置合わせ及び微動位置合わせの際に、一貫して操作桿を片手で保持したまま位置合わせの操作をすることができるとともに、粗動位置合わせの際に、可動部の移動に要する力を小さくすることができる眼科装置を提供する。
【0008】
本発明の一実施態様に係る眼科装置は、被検眼を測定する光学系が設けられる光学ヘッド部と、基部に対して前記光学ヘッド部を水平方向に移動可能な可動部と、前記基部及び前記可動部の間に付勢力を印加する付勢部を含み、前記可動部に傾倒可能に配置される操作桿と、前記操作桿の下端部に設けられる摩擦部と、前記摩擦部の下側の位置において前記基部に配置される摩擦板と、前記操作桿が所定の角度以上傾倒されると、前記付勢力を低減する付勢低減機構とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粗動位置合わせ及び微動位置合わせの際に、一貫して操作桿を片手で保持したまま位置合わせの操作をすることができるとともに、粗動位置合わせの際に、可動部の移動に要する力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る眼科装置の概略的な構成例を示す。
【
図2A】第1実施形態に係る眼科装置の操作桿周辺の断面を示す。
【
図2B】第1実施形態に係る眼科装置の操作桿周辺の断面を示す。
【
図3】第1実施形態に係る操作桿が傾倒された状態を示す。
【
図4】第1実施形態に係る操作桿が傾倒角度の限界に達した状態を示す。
【
図5】第2実施形態に係る眼科装置の操作桿周辺の断面を示す。
【
図6】第2実施形態に係る粗動位置合わせ時の摩擦部の状態を示す。
【
図7】第3実施形態に係る眼科装置の操作桿周辺の断面を示す。
【
図8】第3実施形態に係る摩擦部を説明するための図である。
【
図9】第3実施形態に係る操作桿が傾倒された状態を示す。
【
図10A】変形例1に係る操作桿周辺の断面を示す。
【
図10B】変形例1に係る操作桿の別例の拡大断面図である。
【
図12】水平移動機構の構成の一例を示す図である。
【
図13】第4実施形態の中球の構成の一例を示す図である。
【
図14】操作桿が傾倒された状態の一例を示す図である。
【
図15】第5実施形態の中球の構成の一例を示す図である。
【
図16】変形例2の眼科装置の構成の一例を示す図である。
【
図17A】第1実施形態に係る操作桿の動作を説明するための模式図である。
【
図17B】第1実施形態に係る操作桿の動作を説明するための模式図である。
【
図17C】第1実施形態に係る操作桿の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。
【0012】
なお、説明の便宜上、本発明の各実施形態に係る眼科装置について、被検者側から見た場合の左右方向をX軸方向とし、上下方向をY軸方向とし、前後方向をZ軸方向とする。なお、上下方向については、上向きを+Y軸方向とし、下向きを-Y軸方向とする。また、「粗動位置合わせ」は、光学ヘッドを水平方向に大きな移動量で素早く移動させる位置合わせをいい、「微動位置合わせ」は、粗動位置合わせに比較して光学ヘッドを水平方向に小さな移動量で精密に行われる位置合わせをいう。
【0013】
(第1実施形態)
以下、
図1(a)乃至
図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る眼科装置、特に、被検眼に対して位置合わせするための操作桿を有する眼科装置について説明する。まず、
図1(a)乃至(c)を参照して、本実施形態に係る眼科装置の全体構成について説明する。
【0014】
<眼科装置の構成>
図1(a)乃至(c)は、第1実施形態に係る眼科装置100の全体構成の例を模式的に示す。
図1(a)は眼科装置100を-Z方向から見た図であり、
図1(b)は眼科装置100を-X方向から見た図であり、
図1(c)は眼科装置100を+Y方向から見た図である。
【0015】
図1(a)乃至(c)に示されるように、本実施形態に係る眼科装置100には、基部104と、可動部102と、光学ヘッド部101とが設けられている。基部104は、眼科装置100の土台となる部分である。基部104には、被検者が顎を載せる顎受け台105が設けられる。
【0016】
可動部102は、光学ヘッド部101をY軸方向に昇降可能に支持する。また、可動部102は、後述する水平移動機構を介して、水平方向であるX-Z軸方向において移動可能なように基部104に配置される。そして、可動部102が基部104に対してX-Z軸方向に移動することにより、光学ヘッド部101も可動部102と一体となって基部104に対してX-Z軸方向に移動する。なお、可動部102が基部104に対してX-Z軸方向に移動可能なように、可動部102と基部104とは、Y軸方向に所定の値のクリアランスを有する状態に保持されている。
【0017】
また、眼科装置100には、光学ヘッド部101をY軸方向に昇降させる昇降機構が設けられている。この昇降機構には、例えば、送りねじ機構が適用される。例えば、可動部102には、ねじ軸が、その軸線がY軸方向に平行な向きで回転可能に取り付けられ、光学ヘッド部101には、このねじ軸に螺合するナットが取付けられる。そして、ねじ軸が回転することにより、光学ヘッド部101は、ナットとともに可動部102に対してY軸方向に昇降する。なお、ねじ軸を回転させるための構成については後述する。
【0018】
光学ヘッド部101は、被検眼を測定する部分であり、被検眼の測定のための各種の光学系が配置される。例えば、光学ヘッド部101には、対物レンズ部103と、図略のOCTユニットと、図略のSLOユニットと、図略の前眼観察ユニットと、図略の固視灯ユニットとが配置される。ここで、OCTユニットは、光干渉断層撮像法(OCT:Optical Coherence Tomography)に係る光学系を含む。また、SLOユニットは、走査型検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)に係る光学系を含む。
【0019】
対物レンズ部103は、図略の被検眼にレーザを出射し、被検眼から戻ってきた散乱光を取得する部位である。OCTユニットとSLOユニットは、対物レンズ部103から出射されたレーザの散乱光情報で被検眼の断層像や眼底像を取得するユニットである。前眼観察ユニットは、被検眼の前眼部を撮影して図略のモニター等の表示部に映し出す。検者等の使用者は、表示部に映し出された前眼部像を見て、光学ヘッド部101を被検眼に対して位置合わせする。固視灯ユニットは、不図示の×や○等の指標を表示することにより、被検眼の固視方向を誘導する。
【0020】
なお、光学ヘッド部101は、被検眼を測定する光学系が設けられる構成であればよく、具体的な構成は限定されない。光学ヘッド部101には、従来公知の構成が適用できる。また、光学ヘッド部101に設けられる光学系の構成や、測定の対象となる項目も特に限定されない。
【0021】
可動部102には、操作桿108と操作パネル107とが配置される。操作桿108は可動部102に対して任意の方向に傾倒可能に配置される。操作桿108の上部には、電気的なスイッチである撮影ボタン109が設けられる。基部104に接続される不図示の制御部(情報処理装置)は、撮影ボタン109の操作を検出すると、光学ヘッド部101による被検眼の測定(撮影など)を開始する。
【0022】
また、可動部102には、ロックボタン110が設けられている。ロックボタン110は、可動部102のX-Z軸方向の移動をロックするロック機構を操作するための操作部材である。ロック機構は、可動部102を基部104に対して移動できないように固定する固定手段の例である。ロックボタン110が押し込まれると、可動部102はロック機構により基部104にロックされ、基部104に対してX-Z軸方向に動かなくなる。この状態で再びロックボタン110が押し込まれると、可動部102のロックが解除され、可動部102は基部104に対してX-Z軸方向に移動可能になる。このように、ロックボタン110は、いわゆるノック式の機構になっている。なお、可動部102を基部104にロックするためのロック機構は、従来公知の構成が適用できる。
【0023】
次に、
図2A及び
図2Bを参照して、眼科装置100の可動部102、基部104、及び操作桿108について説明する。
図2A及び
図2Bは、眼科装置100の可動部102、基部104、及び操作桿108の内部構造の断面構成の例を模式的に示す。
図2Aは操作桿108の撮影ボタン109の中心に沿ったX軸に直交する面の断面図、
図2Bは操作桿108の撮影ボタン109の中心に沿ったZ軸に直交する面の断面図である。
【0024】
眼科装置100には、可動部102を水平方向に移動させるための水平移動機構が設けられている。例えば、可動部102は、水平方向のうち第1の方向に移動させるための第1の複数のガイドと、水平方向のうち第1の方向に交差する第2の方向に移動させるための第2の複数のガイドとを含むことができる。本実施形態では、水平移動機構の例として、
図2Aに示されるように、可動部102をX軸方向へ移動させる直動型クロスローラーガイド219と、可動部102をZ軸方向へ移動させる直動型クロスローラーガイド220とが適用される。直動型クロスローラーガイド219,220は、不図示のV字形状の2平面を軌道溝とした2本の軌道台の間に保持器付き円筒ころを組み込んだ直動案内機構である。そして、これらの直動型クロスローラーガイド219,220が直交して設けられており、基部104と可動部102とは、これらの直動型クロスローラーガイド219,220により連結される。なお、直動型クロスローラーガイド219,220は互いに交差する方向に設けられればよい。また、案内機構はクロスローラーガイドに限られず、任意のガイドであってよい。
【0025】
このような構成により、可動部102は、水平方向であるX-Z軸方向に自在に移動可能である。このため、光学ヘッド部101を、被検眼に対してX-Z軸方向に位置合わせできる。また、直動型クロスローラーガイド等の、水平方向における互いに交差する方向の各々において複数のガイドが設けられる水平移動機構により、光学ヘッド部101や可動部102の重さを支えることができる。このため、下記の操作桿108の下端部(摩擦部223)と基部104(摩擦板222)との間に印加される付勢力に、これらの重さが含まれないようにすることができる。なお、眼科装置100は、光学ヘッド部101をX-Z軸方向に移動可能にする水平移動機構を有しているため、基部104と可動部102とは、Y軸方向に所定の値のクリアランスを有する状態に保持されている。また、可動部102は、基部104に対してX-Z軸方向(水平方向)に移動可能な構成であればよく、水平移動機構の具体的な構成は上記構成に限定されない。水平移動機構には、公知の2次元直動ステージなどが適用できる。
【0026】
可動部ベース201は、可動部102のベースとなる部分である。操作桿支持部202は、操作桿108を傾倒可能に支持する部材であり、可動部ベース201に図略のねじなどにより固定されている。操作桿支持部202には、例えば板金部材が適用される。
【0027】
中球ベース203(中球収容部)は、操作桿支持部202に取り付けられる中空状の部材であり、その内側には中球205が収容される。中球205は球形状を有する部材である。中球205の中心には、操作桿108の中心軸206を通すための貫通孔が形成され、中球205の外周面には、
図2Bに示されるように回り止めピン204が嵌合するスリット溝235が形成される。そして、操作桿108の傾倒操作時には、中球205の外周面と中球ベース203の内周面との間で滑り抵抗が発生する構造になっている。
【0028】
操作桿108の中心軸206は、中空軸である。中心軸206は、中球205に形成される貫通孔に挿通されており、中心軸206の軸方向に往復動可能である。中心軸206の下端部には、逆U字形の切欠部227が形成される。この切欠部227は、撮影ボタン109に接続される電気ハーネス299を通すために形成される。
【0029】
中心軸206の長手方向の中間部には、
図2Bに示されるように長穴207が形成される。長穴207は、中心軸206の内周側と外周側とを連通する貫通穴であり、中心軸206の長手方向に長く延在する長穴である。そして、操作桿108には、
図2Aに示されるように中球205のねじ穴210(穴部)と中心軸206の長穴207(穴部)とを貫く規制ピン208(規制部材)が設けられている。規制ピン208は、例えば先端がピンになっているねじである。この規制ピン208と長穴207とにより、中球205に対する中心軸206の軸方向の往復動の範囲が規制される。
【0030】
操作桿108の中心軸206の下端部には、摩擦部223が、不図示のねじにより固定されている。摩擦部223の下側面は、下側(すなわち、基部104に設けられた摩擦板222の側)に向かって膨出する球面状の形状を有する。球面半径は、中球205の中心と摩擦板222の上面との距離と略等しく、この球面半径によって、後述する微動位置合わせの移動分解能(操作桿108の傾斜角度に対する光学ヘッド部101の移動量)が決まる。
【0031】
なお、摩擦部223の上面側には、
図2Bに示すように、中心軸206との嵌め合いのための円筒状の立壁236が設けられ、この立壁236には略U字形状の切欠部237が形成される。そして、中心軸206の切欠部227と、摩擦部223の立壁236の切欠部237とは、中心軸206及び摩擦部223の円周方向位置が合わせられている。このため、撮影ボタン109の電気ハーネス299は、これらの切欠部227,237を通って、中心軸206から外側に引出されることができる。
【0032】
摩擦部223と中球205の間には、コイルバネ224(付勢部材)が配置される。コイルバネ224の付勢力によって、中球205は中球ベース203の内周面に付勢されて接触し、摩擦部223(特に、摩擦部223の下側の面であって球面状に形成される部分)は摩擦板222へ付勢されて接触する。これにより、基部104と可動部102との間に付勢力が印加される。このことから、コイルバネ224は、基部104及び可動部102の間に付勢力を印加する付勢部の一例として機能する。なお、中球205は操作桿108の一部を構成し、中球ベース203は可動部の一部を構成する。
【0033】
微動位置合わせでは、操作者は操作桿108を傾倒させ、操作桿108の傾倒に応じた可動部102の移動により、光学ヘッド部101を移動させる。この際、基部104と可動部102との間の付勢力に対する摩擦部223及び摩擦板222の間の摩擦力により、摩擦部223と摩擦板222との間にすべりが発生することを防止し、微小な位置合わせを行いやすくすることができる。これに関し、可動部102は、操作桿108の傾倒角度が0度(直立状態)から所定の角度までの間、操作桿108の傾倒と、基部104と可動部102との間に付勢力に対する摩擦部223及び摩擦板222の間の摩擦力とにより、水平方向に移動する。光学ヘッド部101は、可動部102が移動することで、基部104に対して水平方向に移動することができる。
【0034】
このように、基部104と可動部102との間の付勢力ひいては摩擦板222と摩擦部223の転がり摩擦力は、微動位置合わせにおいて可動部102を動かすために利用される。その一方で、摩擦板222と摩擦部223との間の摩擦力は、粗動位置合わせの際の操作の抵抗になる。また、使用者が操作桿108から手を離した場合などにおいても、中球205と中球ベース203との間の摩擦力により、基部104から可動部102へ配線された電気ハーネス299の束の反力で可動部102が動かないように保持されることができる。
【0035】
図2Bに示される回り止めピン204は、先端がピンになっているねじである。回り止めピン204は、中球ベース203にねじ止めされており、中球205の中心に向かって突出し、中球205のスリット溝235に嵌まり込んでいる。このため、中心軸206は、可動部102に対して回転が規制されて傾倒のみ行うことができる。中心軸206の回転が規制されることにより、撮影ボタン109の電気ハーネスなど、中心軸206の内部に配策される電気ハーネス299の損傷が防止されることができる。
【0036】
中継部材209は、撮影ボタン109を中心軸206に固定するための部材であり、中心軸206の上部に不図示のねじによって固定されている。操作桿108の外装カバー212~214は、操作桿108の中心軸206及び中継部材209を覆うように配置され、操作桿108の中心軸206に対して同軸で回転可能である。
【0037】
具体的には、次のとおりである。中心軸206と外装カバー214との間には、深溝玉軸受228,229が配置される。深溝玉軸受228,229の内輪は中心軸206と嵌合し、深溝玉軸受228,229の外輪は外装カバー214と嵌合している。一方の深溝玉軸受228の内輪は、中心軸206に設けられる凸部231に突き当てられ、深溝玉軸受228の外輪は、外装カバー214の突当部232に突き当てられている。また、他方の深溝玉軸受229の内輪は、中継部材209の突当部298に突き当てられ、深溝玉軸受229の外輪は、外装カバー214の突当部232に突き当てられている。これにより、外装カバー214は、中心軸206に、軸方向に位置決めされる。そして、他の外装カバー212,213は、外装カバー214に接着又は図略のねじなどで固定されている。
【0038】
このような構成により、外装カバー212~214は、中心軸206に対して回転可能である。なお、外装カバー212~214は、中心軸206に対して軸方向に位置決めされた状態において同軸で回転可能であればよく、外装カバー214と中心軸206との連結構造は、前述の構成に限定されない。
【0039】
環状部材238は、中心軸206に不図示のねじで固定される。後述する粗動位置合わせの操作において、操作桿108が所定の角度だけ傾倒されたときに、環状部材238が中球ベース203の上面239に突き当たるように、環状部材238は凸部231の下部かつ中球205の上部に配置される。なお、環状部材238は必ずしも中心軸206と別部材である必要はない。例えば、中心軸206に設けられる凸部231が環状部材238の役割を兼ねてもよい。
【0040】
ここで、
図2Aを参照して光学ヘッド部101をY軸方向に昇降させる昇降機構の構成について説明する。前述のとおり、操作桿108の外装カバー212~214は、中心軸206に対して同軸で回転可能に配置される。そして、眼科装置100には、外装カバー212~214とともに回転するプーリーギア216が配置され、このプーリーギア216と光学ヘッド部101をY軸方向に昇降させる送りねじ機構のねじ軸とに、プーリーベルト218が巻き掛けられている。このため、操作桿108の外装カバー212~214が、使用者によって回転させると、その回転が、プーリーギア216及びプーリーベルト218を介してねじ軸に伝達され、光学ヘッド部101がY軸方向に昇降する。
【0041】
具体的には、プーリーギア216は中球ベース203に同軸に配置されており、プーリーギア216と中球ベース203との間には深溝玉軸受215が配置される。そして、深溝玉軸受215の外輪はプーリーギア216に嵌合しており、内輪は中球ベース203に嵌合している。このため、プーリーギア216は中球ベース203に対して回転可能である。
【0042】
さらに、プーリーギア216には、ピンねじ217が固定されている。ピンねじ217は、先端部がピン状に形成されるねじであり、その軸線が中球205の中心と交差するように、外装カバー214に向かって突出する。そして、外装カバー214の外周面にはスリット溝234が形成されており、ピンねじ217の先端部はこのスリット溝234に嵌合している。なお、ピンねじ217の先端部の外径は、スリット溝234の幅と嵌合する関係になっている。プーリーベルト218は、プーリーギア216と、光学ヘッド部101をY軸方向に昇降させるための図略の送りねじ機構のねじ軸とに巻き掛けられている。
【0043】
このような構成により、操作桿108の外装カバー212~214が、使用者によって回転させると、その回転は、プーリーギア216とプーリーベルト218とを介して前述のねじ軸に伝達される。そして、ねじ軸が回転すると、このねじ軸に螺合するナットが昇降し、光学ヘッド部101はこのナットとともにY軸方向に昇降する。このように、操作桿108の外装カバー212~214が、使用者によって回転させることによって、光学ヘッド部101を、Y軸方向に昇降させ、被検眼に対して位置合わせすることができる。
【0044】
なお、昇降機構の構成は上述の構成に限られない。昇降機構は、操作桿108に対する回転操作等の任意の操作に応じて、光学ヘッド部101をY軸方向に昇降させることができる公知の任意の機構とすることができる。
【0045】
<微動位置合わせの操作>
ここで、光学ヘッド部101をX-Z方向(水平方向)に微動位置合わせする操作について説明する。操作桿108は、検者等の使用者によって、光学ヘッド部101を移動させる方向に傾倒される。操作桿108が傾倒されると、摩擦部223は摩擦板222の表面を滑ることなく転動する。光学ヘッド部101は、後述の
図3の状態に達するまで、操作桿108の傾倒角度に略比例して移動する。
【0046】
<粗動位置合わせの操作>
次に、
図3及び4を参照して、光学ヘッド部101をX-Z方向(水平方向)に粗動位置合わせする操作について説明する。
図3は、粗動位置合わせの際に、操作桿108が使用者によって傾倒された状態を示す。
【0047】
光学ヘッド部101を粗動位置合わせする場合には、操作桿108の外装カバー212が検者等の使用者によって保持された状態で、操作桿108が光学ヘッド部101を移動させる方向に傾倒される。このとき、外装カバー212は、操作桿108を傾倒させるための使用者の操作力301を受ける。操作桿108が傾倒されると、環状部材238の角部は、
図3に示されるように中球ベース203の上面239の接触点302に接触する。接触点302において、環状部材238は中球ベース203から略+Y方向(上向き)の反力303を受ける。
【0048】
前述のとおり、環状部材238及び中心軸206、中心軸206及び摩擦部223は不図示のねじによって固定されているため、摩擦部223は反力303によって中心軸206の軸方向304の力を受ける。これにより、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力が低減され、摩擦部223と摩擦板222との間の摩擦力が低減される。このため、環状部材238は、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力を低減し、基部104と可動部102との間の付勢力を低減する付勢低減機構の一例として機能する。
【0049】
ここで、付勢低減機構は、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると、操作桿108に印加されている操作力301に対する可動部102における反力303に基づいて、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができる。より具体的には、付勢低減機構は、当該反力303により生じる操作桿108の軸方向304の力により、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができる。
【0050】
基部104と可動部102との間の付勢力が低減され、摩擦部223と摩擦板222との間の摩擦力が低減されると、粗動位置合わせ時の操作力が、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力が低減されていない状態に比べて低減される。結果として、光学ヘッド部101の移動に要する力を小さくすることができ、使用者は小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0051】
ここで、操作桿108が所定の角度よりも大きい角度に傾倒される場合には、環状部材238が中球ベース203の上面239を摺動しながら、当該環状部材238と上面239の接触点を中心(支点)として操作桿108が傾倒する。この際、当該環状部材238と上面239の接触点を中心とした操作桿108の傾倒により、操作桿108の中心軸206は、可動部102の中球ベース203に収容された中球205に対して、軸方向において摩擦板222から離れる方向に移動する。言い換えると、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると、操作桿108の軸方向における操作桿108の下部(摩擦部223)と可動部102との距離が、操作桿108の傾倒角度が0度から所定の角度までの間における当該距離よりも短くなるように、可動部102に対して操作桿108の軸部(中心軸206)が軸方向に移動する。これにより、付勢低減機構は、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができる。
【0052】
さらに、
図4は、操作桿108が傾倒角度の限界(上限)に達した状態を示す。
図3の状態から操作桿108が使用者によって更に傾倒されることで、中心軸206の突当部401は中球ベース203の角度規制面403に突き当てられる。この状態が操作桿108の傾倒角度の限界となる。ここで、傾倒角度の限界となる角度は、操作桿108の傾倒方向において操作力と反対方向の力が作用する角度である。より具体的には、傾倒角度の限界となる角度は、中心軸206の突当部401が中球ベース203の角度規制面403に突き当てられることにより、操作桿108の傾倒が規制される角度である。
【0053】
操作桿108が、このような傾倒限界角度まで倒されると、
図4に示されるように摩擦部223が摩擦板222と接触しない。これにより、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力、ひいては摩擦力がなくなるため、光学ヘッド部101の移動に要する力を更に小さくすることができ、使用者は更に小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、操作桿108が傾倒限界角度まで倒されることで、操作桿108の中心軸206が中球ベース203の角度規制面403(支持部)によって支持され、摩擦部223が摩擦板222と接触しなくなるように構成した。しかしながら、中心軸206が中球ベース203の支持部によって支持され、摩擦部223が摩擦板222と接触しなくなる際の操作桿108の傾倒角度はこれに限られず、傾倒限界角度よりも小さい傾倒角度であってもよい。摩擦部223が摩擦板222と接触しなくなる際の操作桿108の傾倒角度は、所望の構成に応じて任意に設定されてよい。
【0055】
次に、
図17A乃至
図17Cを参照して、本実施形態に係る操作桿108の動作について説明する。
図17A乃至
図17Cは、本実施形態に係る操作桿108の動作を説明するための模式図である。
図17Aは、操作桿108が傾倒されていない状態を示し、
図17Bは微動位置合わせ時に所定の角度まで操作桿108が傾倒された状態を示し、
図17Cは粗動位置合わせ時に操作桿108が所定の角度より大きい角度に傾倒された状態を示す。
図17Aに示すように、操作桿108が傾倒されていない状態では、操作桿108は軸方向に移動することができ、回転中心1701を中心として回転することができる。また、上述したように、操作桿108は、コイルバネ224(付勢部材)によって、摩擦板222に向かうように付勢力1711を受けている。
【0056】
微動位置合わせ時には、
図17Bに示すように、操作者によって操作力1721が印加されると、付勢力1711によって付勢されている摩擦部223が摩擦板222と接触している点1722を支点として操作桿108が傾倒される。このとき、操作桿108の傾倒に応じて、可動部102が水平方向に移動し、可動部102によって支持されている光学ヘッド部101が移動する。その後、操作桿108が所定の角度まで傾倒されると、操作桿108の環状部材238が可動部102の中球ベース203に接触点1723で接触する。
【0057】
操作桿108の環状部材238と可動部102の中球ベース203が接触した状態で、操作桿108が所定の角度以上に傾倒されると、
図17Cに示すように、操作桿108は接触点1723を支点1733として回転する。ここで、操作力1731は操作桿108を傾倒させる方向の力であり、付勢力1732は操作桿108を直立させる方向の力であるため、操作力1731のモーメントと付勢力1732のモーメントはそれぞれ逆方向のモーメントになると考えることができる。そのため、操作力1731により、操作桿108には、付勢力1732とは逆方向の操作桿108の軸方向の力が印加される。このことから、環状部材238を含む付勢低減機構は、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると、操作桿108に印加されている操作力と可動部102とにより生じる操作桿108の軸方向の力により、付勢力を低減することができる。なお、ここでは、操作力1731のモーメントと付勢力1732のモーメントはそれぞれ逆方向のモーメントになる状態について考えた。ただ、操作者により操作桿108に印加される操作力としては、実際には、操作力1731だけではなく、例えば、操作桿108の傾倒時において、中心軸206が中球205から受ける反力のモーメントとつり合う力(中球205の外周面と中球ベース203との間の摩擦力に起因する力)や、直動型クロスローラーガイド219,220における摩擦力とつり合う力等が含まれる場合もある。
【0058】
なお、操作力1731のモーメントが付勢力1732のモーメントよりも大きいと、操作桿108が所定の角度よりも大きい角度に傾倒される。この場合、環状部材238が中球ベース203の上面を摺動しながら、当該環状部材238と上面239の接触点を支点1733として操作桿108が傾倒する。
図17Cに示すように、支点1733を中心とした操作桿108の傾倒(回転)により、操作桿108は、可動部102の中球ベース203に収容された中球205に対して、軸方向において摩擦板222から離れる方向に移動する。
【0059】
より具体的には、微動位置合わせ時のコイルバネ224(付勢部材)による付勢力1711よりも、操作力1731によるモーメントにより生じる操作桿108の軸方向の力が大きくなることで、軸方向においてコイルバネ224の長さが短くなる方向に操作桿108が移動する。操作桿108では、微動位置合わせ時には、中球205と摩擦部223間のコイルバネ224による付勢力1711によって、摩擦部223が摩擦板222に向けて付勢され、摩擦部223と摩擦板222が接触する。これに対し、コイルバネ224の長さが微動位置合わせ時のコイルバネ224の長さよりも短くなる方向に操作桿108が移動することで、操作桿108は摩擦部223が摩擦板222から離れた状態となる。
【0060】
言い換えると、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると、操作桿108の軸方向における操作桿108の下部(摩擦部223)と可動部102との距離が、操作桿108の傾倒角度が0度から所定の角度までの間における距離よりも短くなるように、可動部102に対して操作桿108の軸部(中心軸206)が軸方向に移動する。これにより、摩擦部223が摩擦板222から離れて、摩擦板222と接触しなくなるため、付勢低減機構は、基部104と可動部102との間の付勢力をより低減することができる。
【0061】
なお、コイルバネ224の長さが、微動位置合わせ時のコイルバネ224の長さよりも短くなる方向に操作桿108が移動する際には、コイルバネ224による付勢力もより大きくなる。これに対し、上述のような構成では、操作力1731が印加される作用点と支点1733との距離d1を、付勢力1732が印加される作用点と支点1733との距離d2よりも十分に長くすることができる(d1>>d2)。このため、付勢力1732(F2)のモーメント(F2×d2)よりも大きい操作力1731(F1)のモーメント(F1×d1)を達成するための操作力1731をより小さい力とすることができる。したがって、操作者は、操作桿108を軸方向に移動させるための力よりも小さい操作力1731で、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができ、粗動位置合わせを行うことができる。
【0062】
また、操作者が操作力1731のモーメントが付勢力1732のモーメントとつり合うように操作力1731を操作桿108に印加し続けることで、付勢力が低減された状態を維持することができる。このため、粗動位置合わせ時に光学ヘッド部101の移動に要する力が低減された状態を維持することができる。ここで、上述のように、距離d1は距離d2よりも十分に長くすることができる。このため、付勢力1732(F2)のモーメント(F2×d2)とつり合う操作力1731(F1)のモーメント(F1×d1)を達成するための操作力をより小さい力とすることができ、操作者はより小さい操作力で粗動位置合わせを行うことができる。
【0063】
上記のように、本実施形態に係る眼科装置100は、被検眼を測定する光学系が設けられる光学ヘッド部101と、基部104に対して光学ヘッド部101を水平方向に移動可能な可動部102と、可動部102に傾倒可能に配置される操作桿108とを備える。ここで、操作桿108は、基部104及び可動部102の間に付勢力を印加する付勢部を含む。また、眼科装置100は、操作桿108の下端部に設けられる摩擦部223と、摩擦部223の下側の位置において基部104に配置される摩擦板222を備える。さらに、眼科装置100は、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると、付勢部による可動部102及び基部104の間の付勢力を低減する付勢低減機構を備える。
【0064】
付勢部は、摩擦部223を摩擦板222に向けて付勢する。なお、付勢部は、操作桿108に設けられた中球205と摩擦部223とを操作桿108の長手方向に付勢するコイルバネ224(付勢部材)を含む。また、可動部102は、中球205を収容する中球ベース203を含む。
【0065】
付勢低減機構は、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると摩擦部223の摩擦板222に対する付勢を低減することで、可動部102及び基部104の間の付勢力を低減する。より具体的には、付勢低減機構は、操作桿108に設けられた環状部材238を含み、環状部材238は、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると可動部102の中球ベース203に接触する。環状部材238が可動部102の中球ベース203に接触することにより、操作桿108に印加されている操作力に対する反力が可動部102から操作桿108に印加される。そして、当該反力に基づいて、摩擦部223の摩擦板222に対する付勢力が低減される。なお、所定の角度とは、操作桿108が可動部102と突き当たる(1点で接触する)角度であり、当該所定の角度以上において、可動部102及び基部104の間の付勢力が低減される。
【0066】
これにより、可動部102及び基部104の間の付勢力が低減され、摩擦部223及び摩擦板222の間の摩擦力が低減される。このため、粗動位置合わせ時の操作力が、可動部102及び基部104の間の付勢力が低減されていない状態に比べて低減される。結果として、光学ヘッド部101の移動に要する力を小さくすることができ、使用者は小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0067】
上記のように、本実施形態に係る眼科装置100では、粗動位置合わせ及び微動位置合わせの際に、一貫して操作桿108を片手で保持したまま位置合わせの操作をすることができる。また、粗動位置合わせ時には、操作桿108を傾倒することで、基部104と可動部102との間の付勢力を低減し、可動部102の移動に要する力を小さくすることができる。これにより、本実施形態に係る眼科装置100では、操作感が低下することなく、粗動位置合わせすることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る付勢低減機構は、可動部102に設けられた角度規制面403を含み、角度規制面403は、操作桿108が所定の角度以上傾倒されると操作桿108に当接して操作桿108を支持する。操作桿108が角度規制面403によって支持されることで、摩擦部223が摩擦板222と接触しなくなり、摩擦部223の摩擦板222に対する付勢力が低減される。これにより、摩擦部223と摩擦板222との間の摩擦力が低減されるため、光学ヘッド部101の移動に要する力を更に小さくすることができ、使用者は更に小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる構成で、粗動位置合わせのときに、基部104と可動部102との間の付勢力を低減する。なお、第2実施形態に係る構成に関し、第1実施形態と共通の構成には、同じ符号を付し、説明を省略する。以下、
図5及び6を参照し、第1実施形態との違いを中心として、第2実施形態に係る眼科装置について説明する。
【0070】
図5は、眼科装置100の可動部102、基部104、及び操作桿508の内部構造の断面構成の例を模式的に示す図であって、操作桿508の撮影ボタン109の中心に沿ったX軸に直交する面の断面図である。
図2A及び
図2Bで示される第1実施形態に係る構成と
図5で示される本実施形態に係る構成との差異は、環状部材238及び摩擦部受け部材501の有無である。
【0071】
本実施形態に係る操作桿508では環状部材238が設けられていない。一方、可動部ベース201の下面には、摩擦部受け部材501が不図示のねじで固定されている。摩擦部受け部材501には軸対称形状の傾斜面502が設けられており、摩擦部受け部材501は、中心軸206の軸と傾斜面502の対称軸とが略等しくなるように配置されている。
【0072】
<粗動位置合わせの操作>
ここで、本実施形態に係る、光学ヘッド部101をX-Z方向(水平方向)に粗動位置合わせする操作について説明する。
図6は、操作桿508の傾倒時の摩擦部223及び摩擦部受け部材501の位置関係を概略的に示す。なお、
図6では、説明の簡略化のため電気ハーネス299を省略している。また、本実施形態に係る微動位置合わせの操作は、第1実施形態に係る微動位置合わせの操作と同様であるため説明を省略する。
【0073】
光学ヘッド部101を粗動位置合わせする場合には、操作桿508の外装カバー212が検者等の使用者によって保持された状態で、操作桿508が光学ヘッド部101を移動させる方向に傾倒される。操作桿508が傾倒させると、
図6に示されるように、摩擦部223の球面部が、摩擦部受け部材501の傾斜面502の接触点601に接触する。接触点601において、摩擦部223は摩擦部受け部材501から不図示の反力を受ける。
【0074】
摩擦部223が摩擦部受け部材501から反力を受けることで、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力が低減され、摩擦部223と摩擦板222との間の摩擦力が低減される。このため、摩擦部受け部材501は、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力を低減し、基部104と可動部102との間の付勢力を低減する付勢低減機構の一例として機能する。
【0075】
ここで、付勢低減機構は、操作桿508が所定の角度以上傾倒されると、操作桿508に印加されている操作力に対する可動部102における反力に基づいて、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができる。より具体的には、付勢低減機構は、当該反力により生じる操作桿508の軸方向の力により、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができる。
【0076】
基部104と可動部102との間の付勢力が低減され、摩擦部223と摩擦板222との間の摩擦力が低減されると、粗動位置合わせ時の操作力が、摩擦部223と摩擦板222との間の付勢力が低減されていない状態に比べて低減される。結果として、光学ヘッド部101の移動に要する力を小さくすることができ、使用者は小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0077】
ここで、操作桿508が所定の角度よりも大きい角度に傾倒される場合には、摩擦部223が摩擦部受け部材501の傾斜面502を摺動しながら、中球205を中心として操作桿508が傾倒する。この際、摩擦部223が摩擦部受け部材501の傾斜面502を摺動しながら傾斜面502に乗り上げることで、操作桿508の中心軸206は、可動部102の中球ベース203に収容された中球205に対して、軸方向において摩擦板222から離れる方向に移動する。
【0078】
より具体的には、微動位置合わせ時のコイルバネ224(付勢部材)による付勢力よりも、操作力によるモーメント及び傾斜面502から受ける反力により生じる操作桿108の軸方向の力が大きくなることで、軸方向においてコイルバネ224の長さが短くなる方向に操作桿508が移動する。操作桿508では、微動位置合わせ時には、中球205と摩擦部223間のコイルバネ224による付勢力によって、摩擦部223が摩擦板222に向けて付勢され、摩擦部223と摩擦板222が接触する。これに対し、コイルバネ224の長さが微動位置合わせ時のコイルバネ224の長さよりも短くなる方向に操作桿508が移動することで、操作桿508は摩擦部223が摩擦板222から離れた状態となる。
【0079】
言い換えると、操作桿508が所定の角度以上傾倒されると、操作桿508の軸方向における操作桿508の下部(摩擦部223)と可動部102との距離が、操作桿508の傾倒角度が0度から所定の角度までの間における距離よりも短くなるように、可動部102に対して操作桿508の軸部(中心軸206)が軸方向に移動する。これにより、付勢低減機構は、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができる。
【0080】
なお、コイルバネ224の長さが、微動位置合わせ時のコイルバネ224の長さよりも短くなる方向に操作桿508が移動する際には、コイルバネ224による付勢力もより大きくなる。これに対し、上述のような構成では、操作力が印加される作用点と中球205との距離を、付勢力が印加される作用点と中球205との距離よりも十分に長くすることができる。また、摩擦部223が傾斜面502に乗り上げることで、操作桿508は、傾斜面502から受ける反力により、軸方向において摩擦部223が摩擦板222から離れる方向の力を受ける。このため、付勢力のモーメントよりも大きい操作力のモーメントを達成するための操作力をより小さい力とすることができる。したがって、操作者は、操作桿508を軸方向に移動させるための力よりも小さい操作力で、基部104と可動部102との間の付勢力を低減することができ、粗動位置合わせを行うことができる。
【0081】
また、中球205を回転中心とした操作力のモーメントが付勢力のモーメントとつり合うように、操作者が操作力を操作桿508に印加し続けることで、付勢力が低減された状態を維持することができる。このため、粗動位置合わせ時に光学ヘッド部101の移動に要する力が低減された状態を維持することができる。ここで、上述のような構成では、操作力が印加される作用点と中球205との距離を、付勢力が印加される作用点と中球205との距離よりも十分に長くすることができる。また、摩擦部223が傾斜面502に乗り上げることで、操作桿508は、傾斜面502から受ける反力により、軸方向において摩擦部223が摩擦板222から離れる方向の力を受ける。このため、付勢力のモーメントとつり合う操作力のモーメントを達成するための、操作力をより小さい力とすることができ、操作者はより小さい操作力で粗動位置合わせを行うことができる。
【0082】
上記のように本実施形態に係る付勢低減機構は、可動部102に設けられた摩擦部受け部材501を含む。摩擦部223は、操作桿508が所定の角度以上傾倒されると摩擦部受け部材501に接触する。摩擦部223が摩擦部受け部材501に接触することにより、操作桿508に印加されている操作力に対する反力が可動部102から操作桿508に印加される。そして、当該反力に基づいて、摩擦部223の摩擦板222に対する付勢力が低減される。
【0083】
特に、摩擦部受け部材501は、操作桿508が倒されていないときの操作桿508の中心軸対称軸と略等しい対称軸を有する傾斜面502を含む。また、摩擦部223は、操作桿508が所定の角度以上傾倒されると傾斜面502に接触する。
【0084】
これによって、可動部102及び基部104の間の付勢力が低減され、摩擦部223及び摩擦板222の間の摩擦力が低減される。このため、粗動位置合わせ時の操作力が、可動部102及び基部104の間の付勢力が低減されていない状態に比べて低減される。結果として、光学ヘッド部101の移動に要する力を小さくすることができ、使用者は小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0085】
上記のように、本実施形態に係る眼科装置でも、粗動位置合わせ及び微動位置合わせの際に、一貫して操作桿508を片手で保持したまま位置合わせの操作をすることができる。また、粗動位置合わせ時には、操作桿508を傾倒することで、基部104と可動部102との間の付勢力を低減し、可動部102の移動に要する力を小さくすることができる。これにより、本実施形態に係る眼科装置でも、操作感が低下することなく、粗動位置合わせすることができる。
【0086】
なお、摩擦部223が摩擦部受け部材501に接触することにより、摩擦部223が摩擦板222に接触しなくなるように構成してもよい。この場合には、摩擦部受け部材501は、操作桿508が所定の角度以上傾倒された場合に操作桿508に当接して操作桿508を支持する支持部として機能することができる。操作桿508が摩擦部受け部材501によって支持されることで、摩擦部223が摩擦板222と接触しなくなり、摩擦部223の摩擦板222に対する付勢力が低減される。このため、可動部102の移動に要する力を更に小さくすることができ、使用者は更に小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0087】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1及び第2実施形態とは異なる構成で、粗動位置合わせのときに、可動部102及び基部104との間の付勢力を低減する。なお、第1及び第2実施形態と共通の構成には、同じ符号を付し、説明を省略する。以下、
図7乃至9を参照し、第1実施形態との違いを中心として、第3実施形態に係る眼科装置について説明する。
【0088】
図7は、眼科装置100の可動部102、基部104、及び操作桿708の内部構造の断面構成の例を模式的に示す図であり、操作桿708の撮影ボタン109の中心に沿ったX軸に直交する面の断面図である。
図2A及び
図2Bで示される第1実施形態に係る構成と
図7で示される本実施形態に係る構成との差異は、環状部材238の有無、並びに摩擦部223及び摩擦部701の構成の違いである。
【0089】
図8は、本実施形態に係る操作桿708に設けられた摩擦部701の形状を示す。摩擦部701は、第1及び第2実施形態に係る摩擦部223と同様に、操作桿708の中心軸206の下端部に不図示のねじにより固定されている。第1及び第2実施形態に係る摩擦部223は、摩擦板222の表面を転動する球面部が、一様な球面半径の形状であった。一方、摩擦部701には、
図8に示されるように第1の球面半径(第1の曲率半径)を有する球面部801と第2の球面半径(第2の曲率半径)を有する球面部802(外面部)が設けられている。
【0090】
第1の球面半径は中球205の中心から摩擦板222の上面までの距離と略等しく、第1の球面半径によって、微動位置合わせの移動分解能(操作桿708の傾斜角度に対する光学ヘッド部101の移動量)が決まる。第2の球面半径は、第1の球面半径よりも小さい。ただし、球面部802は必ずしも球面である必要はなく、
図8において破線で描かれる、球面部801の球面半径を有する球面803よりも凹な形状、言い換えると中球205側に近づくような形状になっていればよい。
【0091】
<粗動位置合わせの操作>
ここで、本実施形態に係る、光学ヘッド部101をX-Z方向(水平方向)に粗動位置合わせする操作について説明する。
図9は、粗動位置合わせの際に、操作桿708が使用者によって傾倒された状態を示す。なお、本実施形態に係る微動位置合わせの操作は、第1実施形態に係る微動位置合わせの操作と同様であるため説明を省略する。
【0092】
光学ヘッド部101を粗動位置合わせする場合には、操作桿708が検者等の使用者によって傾倒される。操作桿708が傾倒されると、摩擦部701の球面部802が球面部801よりも凹な形状であるため、操作桿708が軸方向において-Y方向側に移動し、摩擦部701が可動部102から遠ざかる。この際、中心軸206の長穴207の上側突当部901が、規制ピン208に突き当たる。これにより、摩擦部701と中球205がコイルバネ224によって引き離される距離が規制され、中球205がコイルバネ224によって中球ベース203の内周面に付勢されることがなくなる。このため、中球205及び中球ベース203の内周面の間の摩擦力が低減される。なお、
図9に示すように、長穴207が規制ピン208に突き当たり中球205の移動が制限されることで、中球205が中球ベース203の内周面と接触しなくなるようにしてもよい。
【0093】
同様に、長穴207が規制ピン208に突き当たり中球205の移動が制限されることで、摩擦部701(特に、球面部802等の摩擦部701の下側の面であり球面状に形成される部分)がコイルバネ224によって摩擦板222へ付勢されることがなくなる。その結果、摩擦部701と摩擦板222との間の摩擦力が低減される。このため、球面部802は、摩擦部701と摩擦板222との間の付勢力を低減し、基部104と可動部102との間の付勢力を低減する付勢低減機構の一例として機能する。
【0094】
上記のように、本実施形態に係る付勢低減機構は、摩擦部701に設けられた球面部801の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する、球面部801の周縁部に設けられた球面部802(外面部)を含む。操作桿708が所定の角度以上傾倒され、球面部802が摩擦板222に当接すると、摩擦部701が可動部102から遠ざかることで、付勢部による基部104及び可動部102の間の付勢力が低減される。
【0095】
より具体的には、付勢部は、操作桿708に設けられた中球205と摩擦部701とを操作桿708の長手方向に付勢するコイルバネ224を含み、可動部102は、中球205を収容する中球ベース203を含む。また、摩擦部701の球面部801の曲率半径は、中球205の中心から摩擦板222までの距離と略等しい。
【0096】
さらに、操作桿708は、中球205に対する操作桿708の長手方向の移動を規制する規制ピン208(規制部材)を含む。操作桿708が所定の角度以上傾倒されると、規制ピン208が中球205に対する操作桿708の長手方向の移動を規制する。これにより、摩擦部701と中球205がコイルバネ224によって引き離される距離が規制され、操作桿708の傾倒・移動に応じて中球205が中球ベース203から離れるとともに摩擦部701が可動部102から遠ざかる。このため、付勢部による基部104及び可動部102の間の付勢力が低減される。特に、規制ピン208は、中球205に設けられたねじ穴210(穴部)と操作桿708に設けられた操作桿708の長手方向に延在する長穴207(穴部)とに挿入される。
【0097】
これらの結果、中球205と摩擦部701との間の付勢力が低減され、中球205と可動部ベース201の中球ベース203の内周面との摩擦力及び摩擦部701と基部104の摩擦板222との摩擦力が低減される。これにより、基部104及び可動部102の間の付勢力が低減され、摩擦部701と摩擦板222との間の摩擦力が低減される。このため、光学ヘッド部101の移動に要する力を小さくすることができ、使用者は小さい操作力で光学ヘッド部101を移動させることができる。
【0098】
上記のように、本実施形態に係る眼科装置でも、粗動位置合わせ及び微動位置合わせの際に、一貫して操作桿708を片手で保持したまま位置合わせの操作をすることができる。また、粗動位置合わせ時には、操作桿708を傾倒することで、基部104と可動部102との間の付勢力を低減し、可動部102の移動に要する力を小さくすることができる。これにより、本実施形態に係る眼科装置でも、操作感が低下することなく、粗動位置合わせすることができる。
【0099】
(変形例1)
第1実施形態では、環状部材238は中心軸206に不図示のねじで固定され、凸部231の下部かつ中球205の上部に配置される。ここで、環状部材238が中心軸206と別部材である場合、微動位置合わせの可動範囲を変えるために、環状部材238について、操作桿108の中心軸206の軸方向において、操作桿108に設けられる位置を調整可能な構造とすることも可能である。これにより、操作桿108の傾倒角度として所定の角度を何度にするのかを調整することができる。以下、
図10Aを参照して、このような構造を有する眼科装置の一例について説明する。
【0100】
図10Aは、眼科装置100の可動部102、基部104、及び操作桿1008の内部構造の断面構成の例を模式的に示す図であって、操作桿1008の撮影ボタン109の中心に沿ったZ軸に直交する面の断面図である。本変形例に係る操作桿1008には、中心軸206に代えて中心軸1001が、環状部材238に代えて環状部材1010が設けられている。なお、その他の構成に関しては第1実施形態に係る構成と同様であるため説明を省略する。
【0101】
中心軸1001は、中心軸206と同様に中空軸であり、中球205に形成される貫通孔に挿通され、中心軸206の軸方向に往復動可能である。また、中心軸1001には、中心軸206と同様に長穴207及び切欠部227が設けられ、中心軸1001の下端部には摩擦部223が不図示のねじにより固定される。また、中心軸1001の上部には中心軸1001の内周側と外周側とを連通する貫通穴であるねじ穴1002が設けられている。なお、ねじ穴1002は貫通穴でなくてもよい。
【0102】
環状部材1010は、中心軸1001と同軸方向に延在する中空軸である。環状部材1010の上部には、中継部材209が不図示のねじによって固定されている。また、操作桿708の外装カバー212~214は、環状部材1010及び中継部材209を覆うように配置され、操作桿708の環状部材1010及び中心軸1001に対して同軸で回転可能である。ここで、外装カバー212~214及び深溝玉軸受228,229の構成は、第1実施形態に係る構成と同様であってよいが、深溝玉軸受228,229の内輪は環状部材1010と嵌合するように構成されている。
【0103】
環状部材1010の下部では、環状部材1010は、環状部材1010の内周面が中心軸1001の外周面に向かい合うように中心軸1001を覆う(収容する)ことができるように形成されている。また、環状部材1010の中心軸1001を覆う部分には、環状部材1010の長手方向(軸方向)に延在する長穴1011が形成されている。長穴1011は、環状部材1010の内周側と外周側とを連通する貫通穴である。
【0104】
ここで、環状部材1010は、操作桿1008の軸方向において、操作桿1008に設けられる位置を調整可能であるように構成されている。具体的には、環状部材1010は、ねじ穴1002と長穴1011の周方向の位置が一致するように、中心軸1001を覆い、ねじ穴1002と長穴1011を通るねじ1020によって、環状部材1010と中心軸1001が締結される。ここで、ねじ1020によって、ねじ穴1002と締結される長穴1011の長手方向、即ち、環状部材1010及び中心軸1001の軸方向の位置を変更することで、環状部材1010を操作桿1008の中心軸1001の軸方向に位置調整することができる。
【0105】
このような構成によれば、ねじ穴1002と締結される長穴1011の長手方向の位置を変更することで、中球ベース203に対する環状部材1010の底部(角部)の軸方向の位置を変更できる。そのため、粗動位置合わせの操作において操作桿1008を傾倒させた場合に中球ベース203の上面239に突き当たる環状部材1010の角部1012の軸方向の位置を調整することができ、微動位置合わせの可動範囲を変えることができる。なお、環状部材1010の調整は、例えば、眼科装置の出荷時や組み立て時に工場等において行われてよい。また、環状部材1010の長穴1011及び中心軸1001のねじ穴1002は、一つずつ設けられる構成に限らない。例えば、長穴1011を環状部材1010の円周上に複数設けてもよい。これにより、より細かい位置調整を可能とすることができる。また、ねじ穴1002を中心軸1001の円周上に複数設けてもよい。また、長穴1011及びねじ穴1002の両方を複数設けてもよい。例えば、長穴1011及びねじ穴1002の両方を、120度毎に1つずつ設けて、合計3つずつ設けてもよい。このような場合には、複数のねじ1020を用いて、環状部材1010と中心軸1001を締結することができる。
【0106】
本変形例では、ねじ1020によってねじ穴1002と長穴1011を締結する位置を変更することで、中球ベース203に対する環状部材1010の底部(角部)の軸方向の位置を変更した。これに対して、
図10Bに示すように、中心軸1031の先端部にねじ山1033を設けるとともに、環状部材1040の下部の内壁にねじ山1033に対応するねじ溝1043を設け、中心軸1031と環状部材1040を螺合させる構成としてもよい。なお、中心軸1031及び環状部材1040は中心軸1001及び環状部材1010と同様の機能を果たす部材である。ねじ山1033及びねじ溝1043は送りねじ機構を構成する。この場合には、環状部材1040又は中心軸1031を回転させることで、環状部材1040に対する中心軸1031の長手方向の位置を変更することができ、中球ベース203に対する環状部材1040の底部(角部)の軸方向の位置を変更できる。なお、中心軸1031の先端部にねじ溝を設けるとともに、環状部材1040の下部の内壁にねじ溝に対応するねじ山を設けてもよい。
【0107】
また、環状部材1040において長手方向(軸方向)に延在する長穴1041を設けるとともに、中心軸1031においてねじ穴1032を設けてもよい。この場合、ねじ1020によってねじ穴1032と長穴1041を締結することで、環状部材1040に対する中心軸1031の長手方向の位置を固定することができる。なお、長穴1041は環状部材1040の内周側と外周側とを連通する貫通穴である。一方、ねじ穴1032は中心軸1031の内周側と外周側とを連通する貫通穴であってもよいし、貫通穴でなくてもよい。また、この場合も、長穴1041及びねじ穴1032の両方を複数設けてもよい。このような場合には、複数のねじ1020を用いて、環状部材1040と中心軸1031を締結することができる。また、長穴1041及びねじ穴1032の一方のみを周方向において複数設けてもよい。このような場合には、環状部材1040に対する中心軸1031の長手方向の位置をより細かく調整して固定することができる。
【0108】
(第4実施形態)
<眼科装置の構成>
図11は、第4実施形態の眼科装置1100の構成の一例を示す図である。眼科装置1100は、光学ヘッド部1101、可動部1102、基部1104、操作桿1105等を備える。
【0109】
光学ヘッド部1101は、被検眼を測定する各種の光学系を有する。光学ヘッド部1101は、例えば、対物レンズ部1103、OCTユニット、SLOユニット、前眼観察ユニット、固視灯ユニット等が配置される。
【0110】
対物レンズ部1103は、被検眼にレーザを出射し、被検眼から戻ってきた散乱光を取得する。OCTユニットとSLOユニットは、対物レンズ部1103から出射されたレーザの散乱光情報で被検眼の断層像や眼底像を取得するユニットである。OCTユニットは、光干渉断層撮像法(OCT)に係る光学系を含む。SLOユニットは、走査型検眼鏡(SLO)に係る光学系を含む。前眼観察ユニットは、被検眼の前眼部を撮影してモニター等の表示部に映し出す。検者は、表示部に映し出された前眼部像を見て、光学ヘッド部1101を被検眼に対して位置合わせをする。固視灯ユニットは、指標を表示することにより、被検眼の固視方向を誘導する。
【0111】
なお、光学ヘッド部1101は、被検眼を測定する光学系が設けられる構成であればよく、具体的な構成は限定されない。光学ヘッド部1101には、従来公知の構成が適用できる。また、光学ヘッド部1101に設けられる光学系の構成や、測定の対象となる項目も特に限定されない。
【0112】
可動部1102は、基部1104に配置され、光学ヘッド部1101をY軸方向に昇降可能に支持する。また、可動部1102は、後述する水平移動機構を介して、基部1104に対して水平方向であるX-Z平面に沿って移動可能である。可動部1102が基部1104に対して水平方向に移動することにより、光学ヘッド部1101も可動部1102と一体となって基部1104に対して水平方向に移動する。なお、可動部1102は基部1104に対して水平方向に移動できるように、可動部1102と基部1104とはY軸方向にクリアランスを有する状態に保持される。
【0113】
また、眼科装置1100は、光学ヘッド部1101をY軸方向に昇降させる昇降機構を備える。昇降機構には、例えば、送りねじ機構が適用される。可動部1102には、ねじ軸が軸線をY軸方向に沿った状態で回転可能に取り付けられる。一方、光学ヘッド部1101には、ねじ軸に螺合するナットが取り付けられる。ねじ軸が回転することにより、光学ヘッド部1101はナットとともに可動部1102に対してY軸方向に昇降する。可動部1102には、ねじ軸を回転させるためのモータが設けられる。モータの出力軸は軸線がY軸方向に対して直交しており、モータ及びねじ軸に設けられたウォームギアを介して、モータの回転がねじ軸に伝達される。なお、昇降機構は、光学ヘッド部1101をY軸方向に昇降可能な機構であればよく、具体的な構成は限定されない。昇降機構には、従来公知の構成が適用できる。
【0114】
また、可動部1102には、操作桿1105と操作パネルとが配置される。操作桿1105は、可動部1102に対してX-Z平面内で360°任意の方向に傾倒可能に配置される。操作桿1105の上端部には、電気的なスイッチである撮影ボタン1106が設けられる。基部1104に接続される制御部(情報処理装置)は、撮影ボタン1106の操作を検出すると、光学ヘッド部1101による被検眼の測定(撮影等)を開始する。
【0115】
また、可動部1102には、ロックボタンが設けられる。ロックボタンは、可動部1102による水平方向への移動をロックするロック機構を操作するための操作部材である。ロック機構は、可動部1102を基部1104に対して移動できないように固定する。ロックボタンが押し込まれると、可動部1102はロック機構により基部1104にロックされ、基部1104に対して水平方向に移動できなくなる。この状態で再びロックボタンが押し込まれると、可動部1102のロックが解除され、可動部1102は基部1104に対して水平方向に移動可能となる。このように、ロックボタンは、いわゆるノック式の機構である。なお、可動部1102を基部1104にロックするためのロック機構には、従来公知の構成が適用できる。基部1104は、眼科装置1100の設置面と接地する。基部1104は、可動部1102を水平方向に移動可能に支持する。
【0116】
<水平移動機構>
次に、可動部1102を水平方向に移動させる水平移動機構について説明する。
図12は、可動部1102、基部1104、操作桿1105の構成の一例を示す図であり、操作桿1105の中心軸線Cに沿って切断した断面図である。
【0117】
眼科装置1100には、可動部1102を水平方向に移動させる水平移動機構を備える。水平移動機構の一部として、例えば、可動部1102をX軸方向へ移動させるガイドシャフト1219及びロータリスライドブッシュ1220と、可動部1102をZ軸方向へ移動させるラックギア1221及びピニオンギア1222とが適用される。
【0118】
ロータリスライドブッシュ1220は、基部1104に軸線がX軸方向に沿って保持されている。ガイドシャフト1219はロータリスライドブッシュ1220に対してX軸方向に直動可能に、かつX軸回りに回転可能に嵌合されている。ガイドシャフト1219の両端にはピニオンギア1222が1つずつ固定され、可動部1102にZ軸方向に沿って設けられた2つのラックギア1221にそれぞれ噛み合っている。
【0119】
また、水平移動機能の一部として、例えば、基部1104に設けられた摩擦板1204と、操作桿1105の下端部に設けられた中球1205とが適用される。中球1205は、摩擦板1204の上面と接する。可動部1102が基部1104に対して水平方向に移動するときに、中球1205は摩擦板1204に対して転動又は摺動する。中球1205は、光学ヘッド部1101及び可動部1102の重量の一部を支持する。
【0120】
このように水平移動機構により、可動部1102が水平方向に移動することで、光学ヘッド部1101を被検眼に対して水平方向に位置合わせをすることができる。なお、可動部1102は、基部1104に対して水平方向に移動可能な構成であり、かつ、可動部1102の重量の一部又は全てが中球1205で支持される構成であればよく、水平移動機構の具体的な構成は限定されない。水平移動機構には、公知の2次元直動ステージ等が適用できる。
【0121】
<操作桿の構造>
操作桿1105は、中球1205、連結軸1206、桿部材1209、外装カバー1210等を有する。
【0122】
中球1205は球形状の部材であり、操作桿1105の下端部に設けられる。中球1205は摩擦部の一例に対応する。中球1205は、可動部1102のベース部1201に取り付けられ、可動部1102の一部材を構成する中球ベース1203に収容される。中球ベース1203は、中空状の部材であり、内部に中球1205を収容可能である。また、中球ベース1203には、上部に貫通孔1203aを形成される。貫通孔1203aは、操作桿1105の連結軸1206が貫通し、操作桿1105が一定の角度以上に傾倒したときに連結軸1206と当接する。貫通孔1203aは、当接部の一例に対応する。
【0123】
また、中球1205は、上部から連結軸1206を嵌合させて固定するための嵌合孔1205aが形成される。嵌合孔1205aは、中球1205の側面に連通しており、X軸方向から見て略L字状の孔である。嵌合孔1205aには、電気ハーネス1208を挿通させることができる。電気ハーネス1208は、基部1104から可動部1102へ配線される。また、中球1205の外周面にはスリット1205bが形成される。中球ベース1203には回り止めピン1207が固定され、回り止めピン1207の先端が中球1205のスリット1205bに挿入される。したがって、操作桿1105は可動部1102に対して回転が規制され傾倒のみが可能である。操作桿1105の回転が規制されることにより電気ハーネス1208の損傷を防止することができる。なお、検者が操作桿1105から手を離した場合には、中球1205と中球ベース1203との間の静止摩擦により、電気ハーネス1208の束の反力で可動部1102が動かないように保持される。
【0124】
連結軸1206は、中空の軸状の部材であり、中球1205の嵌合孔1205aに固定される。連結軸1206は、内部に電気ハーネス1208が軸方向に沿って挿通している。桿部材1209は、連結軸1206よりも大径な中空の軸状の部材であり、連結軸1206の上部に同軸上に固定される。また、桿部材1209は、上端部に撮影ボタン1106が取り付けられる。
【0125】
外装カバー1210は、略筒状の部材であり、桿部材1209の外周に取り付けられる。外装カバー1210は、桿部材1209の軸線回りに回転可能である。外装カバー1210の内周部には、円盤状のチョッパが桿部材1209と同軸上に取り付けられる。したがって、外装カバー1210とチョッパとは連動して回転する。桿部材1209にはチョッパの回転を検出するためのセンサが設けられる。センサに接続された図示しない電気ハーネスは、電気ハーネス1208とともにベース部1201に設けられた電気基板に接続される。したがって、外装カバー1210の回転角度がセンサにより測定可能である。センサにより測定された外装カバー1210の回転角度の情報は、上述した光学ヘッド部1101を昇降させるモータを駆動するときに用いられる。すなわち、検者が操作桿1105の外装カバー1210を回転させることによって、光学ヘッド部1101が昇降して被検眼に対してY軸方向に位置合わせをすることができる。なお、昇降機構は、操作桿1105に対する回転操作等の任意の操作に応じて、光学ヘッド部1101をY軸方向に昇降させることができる公知の機構が適用できる。また、駆動源もモータ等の電動方式に限定されない。
【0126】
<摩擦低減機構>
眼科装置1100は、操作桿1105が所定の角度以上に傾倒されることで中球1205及び摩擦板1204の間の摩擦係数が低減される摩擦低減機構を備える。本実施形態の摩擦低減機構は、中球1205に設けられた球面部の周縁部に配置された摩擦低減部を含んで構成される。
【0127】
以下、本実施形態の摩擦低減機構について説明する。
図13(a)は、中球1205の下部の構成の一例を示す図である。
図13(a)は操作桿1105の中心軸線Cに対して直交する方向から見た中球1205の構成の一例を示す図であり、
図13(b)は中心軸線Cの軸線方向に沿って下側から見た中球1205の構成の一例を示す図である。
【0128】
中球1205は、球面部1301と、外面部1302とを有する。球面部1301は、中球1205の表面により構成される。
図13(a)に示すように、球面部1301は中球1205の最下端点Pを含み、最下端点Pから中球1205の表面に沿って上側に向かって広がる面である。また、
図13(b)に示すように、球面部1301は中心軸線Cを通る領域を含み、中心軸線Cを中心にして半径r1の円領域の面である。
【0129】
外面部1302は、中球1205の表面により構成され、球面部1301の周縁部に配置される。球面部1301と外面部1302とは、それぞれ同じ球形状の一部であって、当該球形状の異なる領域に配置される。
図13(a)に示すように、外面部1302は球面部1301から中球1205の表面に沿って上側に向かって広がる面である。また、
図13(b)に示すように、外面部1302は中心軸線Cを中心とした円環状の面である。
【0130】
また、
図13(a)に示すように、球面部1301と外面部1302との境界線1303は、中心軸線Cに対して直交する。また、
図13(b)に示すように、球面部1301と外面部1302との境界線1303は、中心軸線Cを中心にした半径r1の円形である。
【0131】
本実施形態の摩擦低減機構は、外面部1302を含んで構成される。外面部1302は摩擦低減部の一例に対応する。ここで、外面部1302は、球面部1301の表面粗さよりも小さい表面粗さを有する。なお、中球1205の下部において表面粗さを変えるには、例えば、中球1205が切削材の場合には切削工具の送り速度の差で表面粗さを変えることができる。また、バフ研磨等の機械的な研磨処理を行うことで表面粗さを小さくしてもよく、電解研磨や化学研磨等で表面粗さを変えてもよい。
【0132】
ここで、操作桿1105を傾倒したときにY軸と操作桿1105の中心軸線Cとの間でなす傾倒角度をθとし、球面部1301と外面部1302の境界線の半径をr1、中球1205の半径をr2とする。なお、傾斜角度θは、所定の角度の一例に対応する。
【0133】
この場合、操作桿1105の傾倒角度θがsin-1(r1/r2)よりも小さければ、中球1205のうち表面粗さが大きい球面部1301と摩擦板1204とが接する。一方、操作桿1105の傾斜角度θがsin-1(r1/r2)以上であれば、中球1205のうち表面粗さが小さい外面部1302と摩擦板1204とが接する。
【0134】
<水平方向の微動位置合わせ・粗動位置合わせの操作>
次に、光学ヘッド部1101を水平方向に移動させるときの摩擦低減機構の作用について
図14を参照して説明する。
図14は、操作桿1105が傾倒した状態を示す図である。まず、光学ヘッド部1101を水平方向に微動位置合わせをする操作について説明する。操作桿1105が、検者によって光学ヘッド部1101の移動方向に傾倒されると、中球1205は摩擦板1204の表面を滑ることなく転動する。このとき、中球1205のうち球面部1301が摩擦板1204と接している。なお、微動位置合わせの移動分解能(操作桿1105の傾斜角度に対する光学ヘッド部1101の移動量)は、中球1205の半径r2によって決まる。
【0135】
次に、光学ヘッド部1101を水平方向に粗動位置合わせをする操作について説明する。微動位置合わせ操作から、更に操作桿1105が所定の角度以上に傾倒されると、連結軸1206が中球ベース1203の上部に設けられた貫通孔1203aの内周面に当接する。更に操作桿1105に水平方向の荷重が加わると、中球1205が摩擦板1204に対して摺動する。このとき、中球1205の外面部1302が摩擦板1204と接しており、中球1205と摩擦板1204の接触面における摩擦係数は、中球1205の球面部1301が摩擦板1204と接している場合に比べて小さい。
【0136】
したがって、粗動位置合わせの場合には、中球1205と摩擦板1204との接触面における摩擦係数は、微動位置合わせの場合よりも小さくなる。ここで、光学ヘッド部1101を移動させるために必要な水平方向の荷重は、中球1205と摩擦板1204の接触面で生じる水平方向の摺動抵抗(すなわち摩擦係数と接触面における垂直抗力の積)が支配的である。このように、中球1205と摩擦板1204との接触面における摩擦係数が小さくなることで、中球1205と摩擦板1204との接触面で生じる水平方向の摺動抵抗が小さくなり、結果として光学ヘッド部1101を移動させるときに要する力を小さくすることができる。また、検者は、粗動位置合わせ及び微動位置合わせをする場合に、一貫して操作桿1105を片手で保持したまま操作をすることができる。
【0137】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の眼科装置について説明する。本実施形態の眼科装置は中球1501の構成が第4実施形態の中球1205の構成と異なる。なお、本実施形態の中球1501のうち第4の実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略する。
【0138】
図15A及び
図15Bは、本実施形態の中球1501の構成の一例を示す図である。
図15Aは中心軸線Cの軸線方向に沿って下側から見た中球1501の構成の一例を示す図であり、
図15Bは
図15Aに示すI-I線に沿って切断した中球1501の断面図である。中球1501は、球面部1301と、転動体1502とを有する。球面部1301は、第4の実施形態と同様の構成である。
【0139】
転動体1502は、球面部1301の周縁部に転動可能に保持される。具体的には、転動体1502には、球面部1301の周縁部に沿って間隔を空けて複数配置される。転動体1502は、一般的な玉軸受の球が適用できる。本実施形態の摩擦低減機構は、転動体1502を含んで構成される。転動体1502は摩擦低減部の一例に対応する。
【0140】
次に、光学ヘッド部1101を水平方向に移動させるときの摩擦低減機構の作用について説明する。光学ヘッド部1101を水平方向に微動位置合わせをする操作は、第4実施形態と同様である。
【0141】
次に、光学ヘッド部1101を水平方向に粗動位置合わせをする操作について説明する。微動位置合わせ操作から、更に操作桿1105が所定の角度以上に傾倒されると、連結軸1206が中球ベース1203の上部に設けられた貫通孔1203aの内周面に当接する。このとき、中球1501に保持された転動体1502が摩擦板1204と接する状態となる。更に操作桿1105に水平方向の荷重が加わると、光学ヘッド部1101が水平方向に移動することで、転動体1502は摩擦板1204に対して転動する。
【0142】
したがって、粗動位置合わせの場合には、転動体1502と摩擦板1204の間に生じる水平方向の抵抗は転がり摩擦によるものであり、垂直抗力が変わらなければ滑り抵抗による摩擦よりも小さくなる。このように、粗動位置合わせの場合には、中球1501と摩擦板1204との接触面における水平方向の抵抗が小さくなることから、結果として光学ヘッド部1101を移動させるときに要する力を小さくすることができる。
【0143】
上述した実施形態4及び5では、眼科装置1100は操作桿1105が所定の角度以上に傾倒されることで中球1205、1501及び摩擦板1204の間の摩擦係数が低減される摩擦低減機構を備える。したがって、検者が操作桿1105を所定の角度以上に傾倒されて粗動位置合わせをする場合に、可動部1102の移動に要する力を小さくすることができる。
【0144】
また、上述した実施形態4及び5では、摩擦低減機構は、中球1205、1501に設けられた球面部1301の周縁部に配置された摩擦低減部を含むように構成されるので、操作桿1105が360°任意の方向に傾倒された場合でも摩擦低減部が摩擦板1204に接する。したがって、検者が操作桿1105を何れの方向に傾倒させて粗動位置合わせをする場合でも、可動部1102の移動に要する力を小さくすることができる。
【0145】
(変形例2)
上述した実施形態4及び5の眼科装置100は、操作桿1105の下端部に中球1205、1501を設け、中球1205,1501と摩擦板1204とが接触する構成について説明したが、この場合に限られない。
図16は、変形例に係る眼科装置の構成の一例を示す図である。なお、上述した各実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0146】
本変形例の操作桿1601は、中球1205、連結軸1206、桿部材1209、外装カバー1210に加えて、球状部材1602を有する。球状部材1602は、操作桿1601の下端部に設けられる。球状部材1602は摩擦部の一例に対応する。球状部材1602は、中球1205を貫通した連結軸1206の下端に結合される。球状部材1602は、基部1104に設けられた摩擦板1204の上面と接する。ここで、球状部材1602のうち摩擦板1204と接触する部位を、実施形態4及び5の中球1205、1501の下部と同様に構成することで、上述した実施形態4及び5と同様の効果を得ることができる。
【0147】
なお、第1乃至第5実施形態並びに変形例1及び2では、眼科装置として光学ヘッド部101,1101には、対物レンズ部103,1103と、OCTユニットと、SLOユニットと、前眼観察ユニットと、固視灯ユニットを備える装置について説明した。しかしながら、眼科装置の構成はこれに限られない。眼科装置としては、例えば、任意のOCT装置、任意のSLO装置、又は眼底カメラ装置等の眼科分野で被検眼の測定に用いられる装置であればよい。
【0148】
上述の第1乃至第5実施形態並びに変形例1及び2によれば、粗動位置合わせ及び微動位置合わせの際に、一貫して操作桿を片手で保持したまま位置合わせの操作をすることができるとともに、粗動位置合わせの際に、可動部の移動に要する力を小さくすることができる。
【0149】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記特定の実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0150】
100:眼科装置、101:光学ヘッド部、102:可動部、104:基部、108:操作桿、222:摩擦板、223:摩擦部、238:環状部材(付勢低減機構)