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特許7455637光硬化型インクジェット印刷用インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240318BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240318BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020063782
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161224
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 光紀
(72)【発明者】
【氏名】川本 健司
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02561984(GB,A)
【文献】特開2021-042321(JP,A)
【文献】特開2021-042322(JP,A)
【文献】米国特許第04639472(US,A)
【文献】国際公開第2020/179155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11
B41J2/01
B41M5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルメチルオキサゾリジノンを、インク組成物全体に対して15~50質量%と、
ガラス転移温度が10℃以下の単官能の光重合性モノマーを、インク組成物全体に対して15~50質量%と、
分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物であるアミン変性オリゴマーと、
光重合性化合物全体に対して0~40質量%の多官能モノマーと、
色材と、
及び、光重合開始剤と
を含有し、
インク組成物全体に対して10質量%以下のイソボルニルアクリレートを含有するか、イソボルニルアクリレートを含有せず、
インク組成物全体に対して30質量%未満のN-ビニルカプロラクタムを更に含有するか、N-ビニルカプロラクタムを含有しない、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
ビニルメチルオキサゾリジノンを、インク組成物全体に対して25~50質量%と、
ガラス転移温度が10℃以下の単官能の光重合性モノマーを、インク組成物全体に対して20~50質量%と、
分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物であるアミン変性オリゴマーと、
光重合性化合物全体に対して10~40質量%の多官能モノマーと、
色材と、
及び、光重合開始剤と
を含有し、
インク組成物全体に対して10質量%以下のイソボルニルアクリレートを含有するか、イソボルニルアクリレートを含有しない、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
25質量%以下の多官能の光重合性化合物を含有するか、多官能の光重合性化合物を含有しない、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷面が、紙類、塩化ビニル系重合体やエチレン-酢酸ビニル系共重合体からなるシート等に対して印刷するのに適した光硬化型インクジェット印刷用インク組成物、及びそれを用いて得られる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性のインクジェット用インク組成物として、ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルフォリン、N,N-ジメチルアミド、イソボルニルアクリレートを含有するものが知られていた。
そして、これらのインクジェット用インク組成物を用いて、紙等や上記のような樹脂のシートに印刷をして、鮮やかで洗練されたデザインのロゴや模様の他に、商品の外観や人物の顔といった写真調のものが増加している。さらに看板のサイズとしたときに、見る者により強いインパクトを与えるために、大判のものが非常に多く見受けられるようになっている。従来、看板広告を製作する方法として、ロゴの場合には着色シートを文字の形に切り抜いて貼り付けたり、写真調とする場合には各種印刷機を利用することが一般的であった。そのために、製作に多くの時間と手間を要し、また、印刷機等の大掛かりな設備が必要になる問題があった。
そこで、鮮明な画像の看板をより簡単に製作するために、パーソナルコンピュータ上で創作したデザインを直接基材に印刷できるインクジェット方式を利用する試みが行なわれている。
【0003】
インクジェット方式は、印刷用基材として利用できる材料の幅が広く、紙、ポリマー、金属、その他の硬質・軟質いずれの材料のシートにも手軽に印刷可能であるという特徴がある。とりわけ、屋外に設置される看板広告では、軽量で強度や耐久性に優れ、雨にも強く、さらに安価といった性能が要求されることから、それらの特性を有するポリマーシートに簡単に印刷できることは、非常に大きな利点となる。
それに加えて、最近では、印刷幅が2,000mm以上の超ワイドフォーマットのインクジェットプリンターも登場し、これまで貼り合わせで対応してきた大判の印刷物が、一挙に印刷可能となるなど、ますます簡単に看板の製作ができるようになっている。
一般に、看板広告に用いられるポリマーシートとしてはターポリンがよく利用される。なお、ターポリンはポリエステルやポリアミドを芯材として、表裏にポリ塩化ビニルやエチレン-酢酸ビニル系共重合体等のビニル系重合体を積層した複合シートである。
【0004】
そして特許文献1に示すように、N-ビニルオキサゾリジノンを含有する紫外線硬化性インクジェット用インキが知られている。ところが、近年、印刷時の作業性等を考慮して、低臭気性、高硬化性、低タック性、耐擦過性及び高耐水性について高度に要求されている。
そして、上記の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物によっては、これらの高度な要求を満足することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-529360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する課題は、印刷面が、紙類や、ポリエステルや、ポリ塩化ビニルやエチレン-酢酸ビニル系共重合体等のビニル系重合体等のシートからなる被印刷物に対して、硬化性、密着性を有し、さらに保存安定性を有し、硬化塗膜は、低臭気性、低タック性、耐擦過性、高耐水性、高耐エタノール性、延伸性及び優れた折り曲げ耐性を有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
1.ビニルメチルオキサゾリジノンを、インク組成物全体に対して5~50質量%、
及び
ガラス転移温度が10℃以下の単官能の光重合性モノマーを、インク組成物全体に対して10~50質量%、
さらに、
色材、
及び、光重合開始剤
を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
2.アミン変性オリゴマーを含有する1.に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、保存安定性に優れ、印刷面が、紙類や、ポリエステルや、ポリ塩化ビニルやエチレン-酢酸ビニル系共重合体等のビニル系重合体等のシートからなる被印刷物に対して、低臭気性、高硬化性、低タック性、耐擦過性、高耐水性、高耐エタノール性、高延伸性及び折り曲げ耐性を満たして印刷できる効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ビニルメチルオキサゾリジノン)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、ビニルメチルオキサゾリジノン(5-メチル-3-ビニルオキサゾリジン-2-オン)(以下「VMOX」と記載することがある。)を含有する。
ビニルメチルオキサゾリジノン自体は常温で比較的低粘度の液体であり、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中のその他の成分を、溶解又は分散させることができる。さらに、ビニルメチルオキサゾリジノンは、N-ビニルカプロラクタムよりも低粘度であるため、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に比較的多量に含有させても、適切な粘度であり、優れたインクジェット印刷適性を示す。また、人体への安全性に優れるので、取り扱い性が良好となる。
またビニルメチルオキサゾリジノンを含有させることにより、硬化後の塗膜は低臭気性、高硬化性及び高耐水性を示す。
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中のビニルメチルオキサゾリジノンの含有割合は、5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、20.0質量%以上がさらに好ましく、25.0質量%以上が最も好ましい。また、50.0質量%以下が好ましく、45.0質量%以下がより好ましく、43.0質量%以下がさらに好ましく、38.0質量%以下が最も好ましい。
5.0質量%未満ではビニルメチルオキサゾリジノンを含有させた効果、特に硬化塗膜がタックを有することの防止を十分に発揮できない可能性があり、50.0質量%を超えると、硬化後の基材と塗膜全体の延伸性と折り曲げ耐性が劣ることになり、よって可撓性や伸び性を有する被印刷基材に印刷した際の物性に劣ることになる。
なおタック性及び耐水性に関しては、ビニルメチルオキサゾリジノンと同程度のガラス転移温度を有するN-ビニルカプロラクタム等に代替したのでは不十分であり、本発明においてビニルメチルオキサゾリジノンを採用することはこれらの点からも重要である。
【0010】
(光重合性モノマー)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が含有する光重合性モノマーは、硬化前、及び光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に配合して印刷し硬化した後においても、無臭又は微香であることが必要である。
加えて、紫外線や電子線等のエネルギー線を照射することにより十分な硬化性を有すること、硬化後においてタック性を有しないこと、硬化後において耐擦過性、耐水性、延伸性及び折り曲げ耐性を有することが必要である。
そのような光重合性モノマーの中でも、単官能の光重合性モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2 -エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート等単官能の(メタ)アクリレートを挙げられ、中でもベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
その他単官能の光重合性モノマーとしては、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸、が挙げられる。
このような単官能の光重合性モノマーの含有量は、光重合性化合物中に20.0~70.0質量%であり、好ましくは、25.0~60.0質量%、より好ましくは35.0~50.0質量%である。
中でも、ガラス転移温度が10℃以下の単官能モノマーを、インク組成物全体に対して10~50質量%となるように含有させることが必要である。中でも、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、また、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
このように単官能モノマーを含有させることにより、硬化塗膜の延伸性と折り曲げ性を向上させることができる。中でもガラス転移温度が-10℃以下の単官能モノマーを、インク組成物全体に対して10~40質量%となるように含有させることが好ましい。中でも15質量%以上がより好ましく、30質量%以下がより好ましい。
但し、仮にイソボルニルアクリレートを使用する場合にも、硬化後の塗膜が低臭気であることが必要であり、そのため光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中にイソボルニルアクリレートの含有量を10質量%以下とすること、さらに5質量%以下とすることが必要である。
【0011】
多官能の光重合性モノマーとしては、分子中に炭素-炭素不飽和結合を複数有する化合物であり、例えば以下の化合物を採用できる。
ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
このような多官能の光重合性化合物の含有量は、光重合性化合物中に0~40質量%であり、好ましくは、10~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。
【0012】
(アミノ基及び/又はアミド基を有するオリゴマー)
アミノ基及び/又はアミド基を有するオリゴマーとしては、分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物のオリゴマーであるCN371、CN373、CN383、CN386(サートマー社製)等のアクリル化アミン化合物である。
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物のアミノ基及び/又はアミド基を有するオリゴマーの含有割合は任意に決定できる。しかしながら、0.5質量%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、また、20.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。含有量が0.5質量%未満であると添加した効果を十分に発揮できない可能性があり、20.0質量%を超えると光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の性質のバランスを毀損する可能性がある。
【0013】
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物にアクリル系樹脂を含有させることができる。そのようなアクリル系樹脂としては、有機溶剤に可溶な(メタ)アクリレートからなる重合体及びその共重合体などが挙げられる。その(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル、プロピル、またはブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
一例として、三菱ケミカル社製のBR-60(Tg:75℃)、BR-64(Tg:55℃)、BR-75(Tg:90℃)、BR-77(Tg:80℃)、BR-83(Tg:105℃)、BR-87(Tg:105℃)、BR-88(Tg:105℃)、BR-90(Tg:65℃)、BR-93(Tg:50℃)、BR-95(Tg:80℃)、BR-105(Tg:50℃)、BR-106(Tg:50℃)、BR-107(Tg:50℃)、BR-108(Tg:90℃)、BR-113(Tg:75℃)、BR-115(Tg:50℃)及びBR-116(Tg:50℃)等が挙げられる。
【0014】
アクリル系樹脂を含有させなくても良いが、アクリル系樹脂を含有させる場合において、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物全量に対するアクリル系樹脂の含有量は、好ましくは1.0~15.0質量%で、より好ましくは2.0~12.0質量%、さらに好ましくは5.0~10.0質量%である。
アクリル系樹脂の合計使用量が1.0質量%未満では基材との定着性が充分でなく、一方15.0質量%を超えると固形分が増え過ぎるため、吐出安定性が低下する。
なお、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物性能が低下しない範囲内で、上記アクリル系樹脂以外の樹脂、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂及びエチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等を併用することも可能である。
【0015】
(色材)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に含有される色材としては、従来から光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に使用されている公知の有機着色顔料及び無機着色顔料から、選択して使用することが好ましい。
有機着色顔料の具体例としては、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系等の有機顔料が挙げられ、具体的な例をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、60、ピグメントグリーン7、36、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、149、168、177、178、179、206、207、209、242、254、255、ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74等が挙げられる。
本発明のインク組成物中の有機着色顔料の含有量としては、1.0~10.0質量%が好ましい。
【0016】
(カーボンブラック)
無機着色顔料として、従来からインクジェットで使用されているカーボンブラックを使用できるが、平均一次粒子径が小さいほど得られる着色画像の耐擦過性および光沢性は向上する傾向にあり、平均一次粒子径で15~40nmが好ましく、20~30nmがより好ましい。
カーボンブラックの平均一次粒子径は次のように求めた値を意味する。まず、透過型電子顕微鏡(TEM)でカーボンブラックの凝集体の画像を写真撮影したときに、写真上の凝集体の画像同士が重なり合わない程度の濃度とした、カーボンブラックをクロロホルム中に十分に希釈分散させた分散液を調製する。次いで、コロジオン膜付メッシュ上に展開して乾燥し、その状態で写真撮影してTEM写真(引き延ばし後の倍率3万倍)を得る。そして、TEM写真をスキャナーで読み取り、画像信号をデジタル化した後、コンピューターに入力し、画像解析によって各凝集体の面積を求める。さらに、各凝集体の面積と凝集した一次粒子の個数から、一次粒子の平均面積を求め、それと同面積を有する円の直径を算術的に一次粒子の平均粒子径とする。最終的に凝集体の全部あるいは特定の個数における一次粒子の平均粒子径を算術平均して平均一次粒子径とする。
【0017】
本発明においてカーボンブラックを含有させる際の含有量は光硬化型インクジェット印刷用インク組成物全体に対して1~12質量%であり、好ましくは2~6質量%である。その含有量が1質量%未満であると、得られた画像の濃度が低くなり、6質量%を超えるとインクジェット用インク組成物の吐出安定性が低下することが懸念される。
また、使用するカーボンブラックとしては、比表面積が80~150m/gが好ましく、100~130m/gがより好ましい。この範囲であると着色画像の耐擦過性およびベタ埋まり、モタリング発生防止性等の点で特に好ましい。
また、使用するカーボンブラックとしては、酸性カーボンブラックが好ましく、pHが2.5~4がより好ましい。
上記したカーボンブラックの比表面積はJIS K6217に準拠して測定した窒素吸着比表面積を、pHはJIS K6221に準拠して測定したpH値を指す。
そのようなカーボンブラックとしては、三菱カーボンブラックMA7、MA77、MA8、MA11、MA100、MA220等が挙げられる。
【0018】
(その他の無機着色顔料)
その他の無機着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が例示できる。
これら顔料は、本発明による効果を毀損しない範囲において、1種もしくは2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物全量に対して0.5~10.0質量%であり、より好ましくは2.0~7.0質量%である。顔料の使用量が0.5質量%より少ないと着色力が充分でない傾向があり、一方10.0質量%より多くなると粘度が上昇し、インクの流動性が低下する傾向がある。
【0019】
(顔料分散剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が顔料を有する際に含有しても良い顔料分散剤としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物等である。
中でも高分子化合物であるものが好ましく、例えば、特開2004-083872号公報、国際公開WO2003/076527号公報、国際公開WO2004/000950号公報に記載されているカルボジイミド系化合物、塩基性官能基含有共重合物であるアジスパーPB821、822(味の素ファインテクノ社製)(酸価及びアミン価が共に10~20mgKOH/g)、ソルスパース56000(ルーブリゾール社製)、ソルスパース39000(ルーブリゾール社製)、DISPERBYK(ビックケミー・ジャパン社製)等が好ましい。これら顔料分散剤は1種または2種以上を混合して使用できる。
中でもアミン価が10~40mgKOH/gの塩基性官能基含有共重合物が好ましい。
なお、上記顔料分散剤は、顔料の種類、使用する有機溶剤の種類に応じて適宜選択して使用する。
【0020】
(有機溶剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、全ての液体成分が硬化反応されて固化するいわゆる無溶剤型でも良く、印刷後の塗膜を乾燥して溶媒を除去したのちに硬化させる溶剤型でも良い。但し、溶媒として水を使用しない。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に含有しても良い有機溶剤は、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル及びジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等である。
さらに、ジエチレングリコールジアルキルエーテルは、プロピレンカーボネートの含有量に対してジエチレングリコールジアルキルエーテル/プロピレンカーボネート=1.0~15.0となるように使用されることが好ましく、2.0~13.0がより好ましく、さらに好ましくは4.0~10.0、最も好ましくは5.0~8.0である。
ジエチレングリコールジアルキルエーテル及びプロピレンカーボネートをこの範囲で使用することにより、高速印字を行った場合においても、濡れ性、定着性、ベタ埋まりに優れ、且つ吐出安定性にも優れたものになる。
また、好ましくは、ジエチレングリコールジアルキルエーテルを光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に40.0~80.0質量%、及びプロピレンカーボネートを光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に1.0~20.0質量%、印刷画質をより向上させる点においてさらに好ましくは3.0~18.0質量%、特に好ましくは、5.0~15.0質量%を使用できる。
また、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中にジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートを含有することが必要であり、その含有量としては5.0~20.0質量%、好ましくは8.0~15.0質量%、より好ましくは8.0~13.0質量%、さらに好ましくは9.0~12.0質量%である。
【0021】
ジエチレングリコールジアルキルエーテルとしてはジエチレングリコールエチルメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールジエチルエーテルを使用することが好ましく、さらに別のジエチレングリコールジアルキルエーテルを併用することができる。
ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとしては、好ましくは炭素数6以下のアルキル基であるもの、更に好ましくは炭素数3以下のアルキル基であるもの、より好ましくは炭素数2以下のアルキル基であるものを採用できる。
【0022】
また、乾燥性の調整及びモタリング発生防止性をさらに向上させるために、ジエチレングリコールジアルキルエーテル以外に、引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体を併用することができる。
このような引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体としては、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等の(ポリ)エチレングリコールジエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノエーテルモノエステル等が例示できる。
引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体の内で、まず、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の含有量は、好ましくは、45.0~78.0質量%、特に好ましくは、50.0~75.0質量%である。
また、溶媒全体の引火点を大きく変更しない範囲において、引火点が50~150℃の範囲内ではない、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を併用しても良い。
また、有機溶剤の総量は、全インク組成物中において80.0~98.0質量%を占める量であることが好ましい。上記総量が98.0質量%を超える場合には、得られるインクの印字適性が低下し、一方、総量が80.0質量%未満の場合にはインクの粘度上昇を誘引し、ノズルからのインクの吐出性が低下する傾向があるので好ましくない。また有機溶剤としては無臭又は微香のものが好ましい。
また、沸点が180℃以上の有機溶剤を含有しても良く、含有しなくても良い。さらに溶媒として水を含有しないことが好ましい。
【0023】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(商品名:TPO、Lambson社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸エチルビス(商品名:TPOL、Lambson社製)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:IRGACURE819、BASF社製)等を使用できる。
光重合開始剤の含有量は、好ましくは光重合性成分の総質量に対して3~25質量%の範囲であり、より好ましくは5~15質量%の範囲である。
この範囲とすることは、インク組成物の吐出性、硬化性及び保存安定性をバランス良く維持する点において重要である。
【0024】
(増感剤)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、さらに、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性を促進するために、主に400nm以上の紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する光増感剤(化合物)を、重合開始剤と共に併用することができる。
そのような増感剤としては、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等で、好ましくは、チオキサントン系増感剤である。これらは単独又は2種以上を併用できる。
具体的には、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。市販品の代表例としては、アントラセン系増感剤では、DBA、DEA(川崎化成工業社製)、チオキサントン系増感剤では、DETX、ITX(Lambson社製)等が例示できる。
増感剤の含有量は、好ましくは光重合性成分の総質量に対して0~8.0質量%である。8.0質量%を超えても効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を使用した場合は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を黄色に変色させる傾向があるため、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるので、色毎に、チオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。
具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物及びクリアーインク組成物では、増感剤として、チオキサントン化合物は含まないようにすることが好ましい。また、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物では、色相の変化が問題となるので、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物、及びイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しないこと、光重合性が他の色相より乏しいことから、増感剤として、チオキサントン系化合物を併用することが好ましい。
【0025】
(その他成分)
さらに、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0026】
(光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、25℃における粘度が好ましくは30mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下である。30mPa・sを超えるとインクジェット印刷用ノズルからのインク組成物の吐出が困難になる可能性がある。
なお、その粘度は、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定した粘度である。
【0027】
(光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の製造)
次に、これらの材料を用いて本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を製造する方法について説明する。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合し、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度が2~10mPa・sとなるように調整することによって得ることができる。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中における全有機溶剤の含有量は、インク組成物全量から、各固形分、必要により使用するその他の添加剤の合計量を差し引いた量であるが、インク粘度が前記範囲内になるように適宜変更するのが好ましい。
このようにして得られた本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、少なくとも表面層が紙や塩化ビニル系重合体やエチレン-酢酸ビニル系共重合体等の樹脂からなる基材に、インクジェット用プリンターを用いて使用できる。
【0028】
(用途)
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、紙基材を含む周知の用途に使用することができるが、中でも特に耐擦過性が要求され、かつ非吸収性材料からなる基材の表面層に対して使用する場合に適している。非吸収性材料としては金属、樹脂、セラミック等の材質を問わないが、中でも樹脂を基材とする表面層に対して使用すること、さらに、該樹脂として塩化ビニル系重合体またはエチレン-酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる表面層を対象にして使用することが、耐水性等の点において好ましい。また、該樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート、ターポリン、アクリル系樹脂等からなる表面層を対象にして使用することが、密着性等の点において好ましい。
【0029】
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を印字、硬化する方法として、具体的には、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明のインク組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をインクジェット記録用プリンターの低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンタヘッドから吐出することにより行うことができる。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の塗膜に光を照射することにより行うことができる。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を印字するインクジェット記録方式用プリンター装置としては、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置が利用できる。なお、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式用プリンター装置を用いる場合は、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物にさらに導電性付与剤を加え電導度の調節をする。
上記塗膜の硬化における光源としては、紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができ、環境面から好ましくは発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)である。
発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線とは、「発光ピーク波長が350~420nmの範囲である紫外線を発生する、発光ダイオードから照射される光」とする。
【実施例
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。溶剤以外の成分は全て固形分含量である。
表中の顔料、分散剤、樹脂、溶剤及び合計に関する欄の数値の単位は「質量%」であり、Tgの値はオリゴマー又はそのモノマーのホモポリマーが有する値である。
【0031】
(アミン変性オリゴマー)
CN371(Sartomer社製)
(光重合開始剤)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Lambson社製)
(増感剤)
DETX:ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
(重合禁止剤)
UV-5:マレイン酸ジオクチル(クロマケム社製)
(表面調整剤)
BYK-315N:ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン界面活性剤、固形分25質量%、溶剤成分:メトキシプロピルアセテートとフェノキシエタノールの質量比1/1の混合物(ビックケミー社製)
(顔料)
PB15:4 ピグメントブルー15:4
(顔料分散剤)
solsperse32000(ルーブリゾール社製)
【0032】
(実施例1~4及び比較例1~5)
<光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の製造>
表1の配合(各材料の配合比率は質量%である)に従い、各材料を撹拌混合して実施例及び比較例の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得た。
【0033】
<評価方法及び評価基準>
表1に記載の評価基材は以下の通りである。
PET:ルミラー、東レ社製
PVC:PVC80、リンテック社製
(インク組成物の粘度)
実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をE型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で、粘度を測定した。
【0034】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をガラス瓶に採り、密栓して70℃で7日間保存した後、下記評価基準に従って評価した。
〇:増粘、沈降物が共に認められない
×:強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる
【0035】
(塗膜臭気)
PETフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた硬化塗膜を8cm×12cmに切断し、24cm×34cmのチャック袋に入れ、25℃で1時間放置したのち開口して、開口部での臭気を以下の5段階で評価した。
5:臭気を感じない
4:わずかに臭気を感じる
3:中程度の臭気を感じる
2:強い臭気を感じる
1:非常に強い臭気を感じる
同様の評価を10人が行い、評価結果の算術平均値を得た。
【0036】
(硬化性)
PETフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.4を用いて塗布し、各塗工物を得た。ついでコンベア式光照射装置(ヘレウス社製STM-250E-16、ランプ:Z-8ランプ(メタルハライドタイプ))を用いて、120W×50m/min、UV積算光量75mJ/cm〔UV積算光量は、測定器としてEIT社製UVIMAP(UM 365H-S)を用い、測定レンジ:250-260nm、280-320nm、320-390nm、395-445nmでの照射量を測定して求めた〕の照射条件で、表面タックがなくなるまでの装置を通過させた回数(パス回数)にて評価した。
【0037】
(密着性)
各種基材(PET、PVC)の表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.4を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜に対し、セロテープ(登録商標)密着性を下記評価基準に従って評価した。
〇:剥がれなし
×:剥がれあり
【0038】
(タック性)
2枚のPETフィルムの各表面に、実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.4を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた2枚のPETフィルム表面の硬化塗膜同士を一旦重ね合わせ、30秒後に手で剥がしたときの貼り付きの程度を下記評価基準に従って評価した。
〇:タックが認められない
×:タックが認められる
【0039】
(耐擦過性)
PVCフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜に対し、学振堅牢度試験機にて荷重500g、速度60rpmにて展色塗膜と白さらし布を100回擦った際の、塗膜の剥がれ具合及び白さらし布への色移り具合を下記評価基準に従って評価した。
〇:色移りが発生しなかったか、または布面積の5%未満の色移りが発生した
△:布面積の5%以上70%未満の色移りが発生した
×:布面積の70%以上の色移りが発生した
【0040】
(耐水性)
PVCフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜に対し、学振堅牢度試験機にて荷重500g、速度30rpmにて展色塗膜と水5滴を含む白さらし布を100回擦った際の、塗膜の剥がれ具合及び白さらし布への色移り具合を下記評価基準に従って評価した。
〇:色移りが発生しなかったか、または布面積の5%未満の色移りが発生した
△:布面積の5%以上70%未満の色移りが発生した
×:布面積の70%以上の色移りが発生した
【0041】
(耐エタノール性)
PVCフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜に対し、学振堅牢度試験機にて荷重200g、速度30rpmにて展色塗膜と70%エタノール水溶液5滴を含む白さらし布を10回擦った際の、塗膜の剥がれ具合及び白さらし布への色移り具合を下記評価基準に従って評価した。
〇:色移りが発生しなかったか、または布面積の30%未満の色移りが発生した
△:布面積の30%以上70%未満の色移りが発生した
×:布面積の70%以上の色移りが発生した
【0042】
(延伸性)
PVCフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜を2cm×10cmのサイズに切り出して測定試料片を作製した。引張試験機により、25℃の環境下で測定試料片の長辺軸を引張速度50mm/minで延伸し、硬化塗膜がひび割れずに延伸できる長さを測定(Xcm)し、下記計算式によって延伸率を計算し、下記評価基準に従って評価した。
延伸率=(X/10)×100[%]
〇:延伸率が140%以上
×:延伸率が140%未満
【0043】
(折り曲げ耐性)
PVCフィルムの表面に実施例及び比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.12を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜を180度折り曲げた時の塗膜状態を目視により下記評価基準に従って評価した。
〇:塗膜の割れなし
×:塗膜の割れあり
【0044】
【表1】
【0045】
本発明に沿った例である実施例1、3及び4によれば、保存安定性に優れ、硬化後の塗膜の臭気がなく、硬化性、各種基材への密着性、タック性、耐擦過性、耐水性、耐エタノール性、延伸性、及び折り曲げ耐性に優れた効果を奏する。
また、VMOXが若干少量である実施例2によっても、塗膜にタックが認められない他は良好であった。
VMOXに代えて、ビニルカプロラクタムを採用した比較例1によれば、保存安定性に劣り、硬化後の塗膜の臭気が強く、タックが強く、耐水性及び耐エタノール性に若干劣っていた。
VMOXの含有量が少なく、かつガラス転移温度が10℃以下の単官能モノマーを過剰に含有した比較例2によれば、特に硬化後の塗膜に、わずかに臭気を感じ、かつタックがあり、耐擦過性に劣っていた。逆にVMOXの含有量が多すぎ、かつガラス転移温度が10℃以下の単官能モノマーの含有量が不足した比較例3によれば、塗膜の臭気が強く、硬化性、延伸性、及び折り曲げ耐性に劣っていた。
ガラス転移温度が10℃以下の単官能モノマーを過剰に含有した比較例4によれば、塗膜に臭気があり、硬化性に劣り、硬化後の塗膜がタックを有し、かつ耐擦過性に劣り、耐エタノール性に劣っていた。ガラス転移温度が10℃以下の単官能モノマーの含有量が不足した比較例5によれば、延伸性と折り曲げ耐性に劣っていた。