(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】消防用ホース
(51)【国際特許分類】
A62C 33/00 20060101AFI20240318BHJP
F16L 11/12 20060101ALI20240318BHJP
F16L 11/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A62C33/00 C
F16L11/12 J
F16L11/02
(21)【出願番号】P 2020063816
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157932(JP,A)
【文献】特開2014-163427(JP,A)
【文献】特開2004-132443(JP,A)
【文献】特開2019-150276(JP,A)
【文献】特開2017-185042(JP,A)
【文献】登録実用新案第3091291(JP,U)
【文献】登録実用新案第3091293(JP,U)
【文献】登録実用新案第3080507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
F16L 11/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部と、前記第1端部の反対側の第2端部と、前記第1端部から前記第2端部に亘って長尺に延びる筒状のジャケットと、前記ジャケットの内面に設けられたライニング層とを含むホース本体と、
前記ジャケットの表面に設けられ、前記ホース本体の長手方向に並ぶ複数の第1輝光部材と、
前記ジャケットの表面に設けられ、前記複数の第1輝光部材に接続されるとともに前記長手方向に延びる直線状の第2輝光部材と、を備え、
前記ジャケットの表面に、それぞれ2つ以上の前記第1輝光部材で構成される複数のグループが前記長手方向に間隔を空けて配置され、
隣り合う前記グループの間隔は、前記複数のグループの各々の前記長手方向における幅よりも大きく、
前記複数の第1輝光部材の各々は、前記第1端部側の先端と、前記先端よりも前記第2端部側において前記ホース本体の周方向に離れた一対の後端と、前記周方向において前記一対の後端の間に位置する後中央部と、を有する矢印形状であり、
前記第2輝光部材は、前記複数のグループに亘って直線状に延びており、
前記複数の第1輝光部材の各々の前記先端および前記後中央部は、前記第2輝光部材と重なっている、
消防用ホース。
【請求項2】
前記長手方向において、前記後中央部が前記一対の後端よりも前記先端側に位置
し、
前記長手方向における前記後中央部と前記一対の後端との間の距離は、前記ジャケットの表面に現れるたて糸の模様の前記長手方向における幅の3倍以上である、
請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項3】
前記第1輝光部材は、前記一対の後端の間において前記先端に向けて窪む円弧状の後辺を有している、
請求項2に記載の消防用ホース。
【請求項4】
前記ホース本体は、扁平に潰された状態において屈曲する一対の耳部と、前記一対の耳部の間に位置する一対の腹部と、前記ジャケットに設けられ前記耳部と前記腹部の境界を示す一対の境界線とを有し、
前記複数の第1輝光部材および前記第2輝光部材は、前記一対の腹部の少なくとも一方において、前記一対の境界線の間に配置されている、
請求項1乃至
3のうちいずれか1項に記載の消防用ホース。
【請求項5】
前記第1輝光部材と前記第2輝光部材とが重なる位置において、前記第1輝光部材と前記ジャケットの間に前記第2輝光部材が位置している、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の消防用ホース。
【請求項6】
前記ホース本体は、扁平に潰された状態において屈曲する一対の耳部と、前記一対の耳部の間に位置する一対の腹部とを有し、
前記複数のグループは、前記一対の腹部の一方に設けられた第1グループと、前記一対の腹部の他方に設けられた第2グループとを有している、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の消防用ホース。
【請求項7】
前記第1グループと前記第2グループは、前記長手方向において前記ホース本体の同じ位置に設けられている、
請求項6に記載の消防用ホース。
【請求項8】
前記第1グループと前記第2グループは、前記長手方向において前記ホース本体の異なる位置に設けられている、
請求項6に記載の消防用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建物で火災が発生した場合、建物の外から放水するだけでなく、建屋内に消防用ホースを引き込んで消防隊員が消火作業を行う。このような消火作業中に建物外へ避難する必要が生じた場合、消防用ホースが消防隊員や避難者の退路を示す手段として利用されることがある。
【0003】
例えば特許文献1に記載された消防用ホースにおいては、反射材や蓄光材で形成された避難方向を示す矢印形状のマークがホース本体の表面に貼り付けられている。また、特許文献2に記載された消防用ホースにおいては、ポンプ吐出口に連結されるメス金具側を指し示す形状の反射材や蓄光材で形成されたマークがホース本体の表面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3091291号公報
【文献】特開2004-132443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消防用ホースは使用時に水圧で膨らむし、捻じれた状態で配置されることもある。そのため、上述のマークを見る角度や消防用ホースの姿勢によっては、マークがどちらを指すのか明確に判別できない可能性がある。
【0006】
そこで、本開示は、消防用ホースの使用時において当該ホースに沿った特定の方向を容易に判別可能とすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る消防用ホースは、ホース本体と、複数の第1輝光部材と、第2輝光部材と、を備えている。前記ホース本体は、第1端部と、前記第1端部の反対側の第2端部と、前記第1端部から前記第2端部に亘って長尺に延びる筒状のジャケットと、前記ジャケットの内面に設けられたライニング層とを含む。前記複数の第1輝光部材は、前記ジャケットの表面に設けられ、前記ホース本体の長手方向に並ぶ。前記第2輝光部材は、前記ジャケットの表面に設けられ、前記複数の第1輝光部材に接続されるとともに前記長手方向において直線状に延びる。さらに、前記複数の第1輝光部材の各々は、前記ホース本体の前記第1端部を指す形状である。
【0008】
前記第1輝光部材は、前記第1端部側の先端と、前記先端よりも前記第2端部側において前記ホース本体の周方向に離れた一対の後端と、前記周方向において前記一対の後端の間に位置する後中央部と、を有する矢印形状であってもよい。
【0009】
前記長手方向において、前記後中央部が前記一対の後端よりも前記先端側に位置してもよい。さらに、前記第1輝光部材は、前記一対の後端の間において前記先端に向けて窪む円弧状の後辺を有してもよい。
【0010】
前記複数の第1輝光部材の各々の前記先端および前記後中央部は、前記第2輝光部材と重なっていてもよい。
【0011】
前記ジャケットの表面に、それぞれ前記複数の第1輝光部材で構成される複数のグループが間隔を空けて配置されてもよい。この場合において、前記第2輝光部材は、前記複数のグループに亘って直線状に延びてもよい。
【0012】
前記ホース本体は、扁平に潰された状態において屈曲する一対の耳部と、前記一対の耳部の間に位置する一対の腹部と、前記ジャケットに設けられ前記耳部と前記腹部の境界を示す一対の境界線とを有してもよい。この場合において、前記複数の第1輝光部材および前記第2輝光部材は、前記一対の腹部の少なくとも一方において前記一対の境界線の間に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、消防用ホースの使用時において当該ホースに沿った特定の方向が容易に判別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る消防用ホースの使用状態の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、消防用ホースが備えるホース本体の端部の近傍を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、消防用ホースの概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、ホース本体に設けられるマークの形状の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4におけるV-V線に沿うホース本体の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る消防用ホースを示す図であり、暗所においてホース本体をライトで照らした状態を表している。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る消防用ホースを示す図であり、暗所においてホース本体をライトで照らした状態を表している。
【
図8】
図8は、水圧が加わったホース本体を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るマークの形状の一例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、
図4に示した形状のマークを有するホース本体を斜め方向から見た図である。
【
図11】
図11は、
図9に示した形状のマークを有するホース本体を斜め方向から見た図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係るマークの形状の他の例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るホース本体の一例を示す概略的な平面図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係るホース本体の他の例を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
消防用ホースに関する実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る消防用ホース1の使用状態の一例を示す図である。消防用ホース1は、消火時において、消火剤の一例である水を供給する供給部2(消火栓、可搬ポンプ、ポンプ車等)に接続される。供給部2は、消防用ホース1と接続するための口金6を備えている。
【0016】
消防用ホース1は、筒状のホース本体11と、第1接続具12と、第2接続具13と、第1保護カバー23と、第2保護カバー24とを備えている。ホース本体11は、第1端部E1と、第1端部E1の反対側の第2端部E2とを有し、第1端部E1から第2端部E2に亘って長尺に延びる形状である。
【0017】
第1接続具12は、例えば筒状の金具であり、第1端部E1に設けられている。第1接続具12は、供給部2の口金6に接続可能である。第2接続具13は、例えば筒状の金具であり、第2端部E2に設けられている。
図1の例においては、水を放出するためのノズル14が第2接続具13に接続されている。但し、第2接続具13には、他の部材を接続することもできる。例えば、第2接続具13に他の消防用ホース1の第1接続具12または第2接続具13を接続すれば、消防用ホースを延長することが可能である。この場合において、第1接続具12および第2接続具13は、雌雄の区別なく相手方の金具と接続可能な構成を有してもよい。
【0018】
第1保護カバー23は、ホース本体11の第1端部E1に設けられている。第2保護カバー24は、ホース本体11の第2端部E2に設けられている。各保護カバー23,24は、例えば筒状であり、内部にホース本体11が通されている。第1保護カバー23の一端は、例えば第1接続具12とともにホース本体11に固定されている。第2保護カバー24の一端は、例えば第2接続具13とともにホース本体11に固定されている。
【0019】
図2は、ホース本体11の第1端部E1の近傍を概略的に示す図である。ホース本体11は、たて糸およびよこ糸を含む糸材で織られた筒状のジャケット30と、このジャケット30の内面に設けられたライニング層31とを備えている。ライニング層31は、例えばゴムまたは合成樹脂などの樹脂材料で形成され、液密性を有している。
【0020】
ホース本体11は、図示したように扁平に潰された状態にも円筒形に膨らんだ状態にもなり得る柔軟性を有している。ホース本体11は、扁平に潰された状態で屈曲する一対の耳部40a,40bと、各耳部40a,40bの間の一対の腹部41a,41bとを有している。各耳部40a,40bは、糸材(例えばたて糸)の密度や太ささを腹部41a,41bの糸材(例えばたて糸)の密度や太ささよりも密または太くして強度が高められるとともに、折れ癖が付与されている。したがって、ホース本体11は、内側に圧力が加わっていない状態においては、各耳部40a,40bが積極的に自ら屈曲して各腹部41a,41bが扁平面となるように潰れる。
【0021】
図2の例においては、耳部40aと腹部41aの境界および耳部40bと腹部41aの境界に沿って、ジャケット30の外面に破線状の一対の境界線32が設けられている。さらに、これら境界線32の間において、ジャケット30の外面に中心線50が設けられている。中心線50は、ホース本体11の周方向CDにおいて腹部41aの中央に位置し、ホース本体11の長手方向LDに直線状に延びている。
【0022】
境界線32は、例えばジャケット30の素地(境界線32以外の部分)と異なる色の糸材を織り込むことで形成することができる。一例として、ジャケット30の素地は白色であり、境界線32は緑色である。
図2には表れていないが、境界線32は、耳部40aと腹部41bの境界および耳部40bと腹部41bの境界にも設けられている。
【0023】
図3は、消防用ホース1の概略的な平面図である。ホース本体11は、上述の境界線32および中心線50に加え、複数のマーク60(60A,60B,60C)を備えている。
図3の例においては、各マーク60が中心線50により接続されている。本実施形態において、マーク60は第1輝光部材の一例であり、中心線50は第2輝光部材の一例である。
【0024】
本実施形態においては、中心線50およびマーク60がジャケット30の素地部分に比べ良好に光を反射する場合を想定する。このような反射性を有した中心線50およびマーク60は、例えばシート状またはフィルム状の反射材をジャケット30に貼り付けることにより形成できる。中心線50およびマーク60は、反射材を含む塗料をジャケット30の表面に塗布することにより形成されてもよい。また、中心線50およびマーク60は、ジャケット30に織成される前の糸材(例えばたて糸)の所定位置に反射材を含む塗料を塗布し、この糸材を用いてジャケット30を織成することにより形成されてもよい。中心線50およびマーク60の材料や反射率は同じであってもよいし、異なってもよい。
【0025】
図3の例においては、長手方向LDに沿って配置された3つのマーク60A,60B,60Cで構成されたグループGがホース本体11の各所に分散配置されている。ただし、グループGを構成するマーク60の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、各グループGに含まれるマーク60の数は同じである必要はなく、異なる数のマーク60を含むグループGが存在してもよい。
【0026】
各グループGのマーク60A,60B,60Cは、第1端部E1から第2端部E2に向けてこの順で並び、いずれも第1端部E1を指し示す形状を有している。中心線50は、第1端部E1と第2端部E2の間で途切れることなく長手方向LDに沿って直線状に延びている。ただし、中心線50は、長手方向LDにおいて断続的に設けられてもよい。
【0027】
ここで、グループGの長手方向LDに沿う幅をW1、隣り合うグループGの間隔をT1と定義する。例えば、幅W1は、マーク60Aの第1端部E1側の端から、当該マーク60Aと同じグループGに含まれるマーク60Cの第2端部E2側の端までの距離に相当する。また、間隔T1は、マーク60Cの第2端部E2側の端から、当該マーク60Cを含むグループGよりも第2端部E2側に位置するグループGに含まれるマーク60Aの第1端部E1側の端までの距離に相当する。
【0028】
図3の例においては、隣り合うグループGの間隔T1がグループGの幅W1よりも大きい(T1>W1)。一例として、幅W1は30cm以上かつ1m未満であり、間隔T1は1m以上かつ5m以下である。好適には、間隔T1は2m以上かつ3m以下である。
【0029】
図3の例においては2つのグループGを示しているが、実際にはより多くのグループGがホース本体11に設けられる。この場合において、隣り合うグループGの間隔T1は全て同じであってもよいし、少なくとも一部において異なってもよい。同様に、幅W1は全てのグループGで同じであってもよいし、少なくとも一部において異なってもよい。
【0030】
図4は、マーク60Bの形状の一例を示す平面図である。この図の例において、マーク60Bは、第1端部E1側(図中左側)の先端61と、先端61よりも第2端部E2側(図中右側)において周方向CDに離れた一対の後端62,63とを有する矢印形状(正三角形または二等辺三角形)である。マーク60A,60Cもマーク60Bと同様の形状を有している。
【0031】
先端61は、中心線50と重なっている。また、マーク60Bの後中央部64も中心線50と重なっている。後中央部64は後端62,63の間に位置する部分であり、マーク60Bの第2端部E2側の辺のうち周方向CDにおける中心を含む。
【0032】
図4の例においては、マーク60A,60B,60Cが一対の境界線32の間に位置している。マーク60A,60B,60Cを極力大きくする観点から、後端62と図中上方の境界線32の間の距離は、後端62と中心線50の間の距離よりも小さいことが好ましい。同様に、後端63と図中下方の境界線32の間の距離は、後端63と中心線50の間の距離よりも小さいことが好ましい。マーク60A,60B,60Cは、一対の境界線32の少なくとも一方と重なってもよい。
【0033】
ここで、マーク60A,60Bの長手方向LDにおける間隔をT2と定義し、マーク60Bの長手方向LDにおける幅をW2と定義する。一例として、マーク60B,60Cの長手方向LDにおける間隔もT2であり、マーク60A,60Cの長手方向LDにおける幅もW2である。ただし、マーク60A,60Bの間隔とマーク60B,60Cの間隔が異なってもよい。また、マーク60A,60B,60Cの長手方向LDにおける幅が異なってもよい。
【0034】
図4の例においては、間隔T2が幅W2よりも小さい(T2<W2)。ただし、間隔T2は、幅W2以上であってもよい。いずれの場合であっても、間隔T2および幅W2は、上述のグループGの間隔T1よりも十分に小さい(T2,W2<T1)。
【0035】
図5は、
図4におけるV-V線に沿うホース本体11の概略的な断面図である。ホース本体11の製造に際しては、先ず中心線50がジャケット30に形成され、その後にマーク60A,60B,60Cがジャケット30に形成される。
【0036】
この場合においては、
図5に示すようにマーク60Bとジャケット30の間に中心線50の一部が位置する。中心線50と重なる位置において、マーク60Bは中心線50の上面に貼り付いている。また、中心線50と重なる位置において、マーク60Bは僅かに隆起する。マーク60A,60Cと中心線50の関係も同様である。
【0037】
他の例として、先ずマーク60A,60B,60Cが形成された後に中心線50が形成されてもよい。この場合においては、マーク60A,60B,60Cの一部が中心線50とジャケット30の間に位置する。
【0038】
さらに他の例として、中心線50とマーク60A,60B,60Cが同じ材料で単一の層として形成されてもよい。この場合においては、例えば
図4における先端61付近や後中央部64付近において、中心線50とマーク60A,60B,60Cの境界が視認できない程度に両者が一体化される。
【0039】
続いて、本実施形態に係る消防用ホース1が奏する効果について説明する。
図6は、比較例に係る消防用ホース100を示す図であり、暗所において当該消防用ホース100のホース本体110をライトで照らした状態を表している。
図7は、本実施形態に係る消防用ホース1を示す図であり、
図6と同じく暗所においてホース本体11をライトで照らした状態を表している。
【0040】
図6に示すように、比較例に係るホース本体110は、マーク60を有しているが、中心線50を有していない。また、マーク60の近傍には他のマーク60が配置されていない。マーク60はライトの光を良好に反射するために、暗所においても目立つ。しかしながら、三角形であるマーク60を見たのみでは、ホース本体110の輪郭が明確に認識できない限り、当該マーク60がどの方向を指し示すのかが分かり難い。
【0041】
一方、
図7に示すように、本実施形態に係るホース本体11においては、マーク60A,60B,60Cがホース本体11の長手方向に連続しているために、これらマーク60A,60B,60Cが示す方向を判別し易い。
【0042】
さらに、中心線50もマーク60A,60B,60Cと同様に光を反射するため、マーク60A,60B,60Cと同様に目立つ。この中心線50を見ればホース本体11の長手方向が極めて容易に判別できるし、マーク60A,60B,60Cがホース本体11の第1端部E1を示すものであることが分かり易くなる。
【0043】
さらに、中心線50は、暗所におけるホース本体11の姿勢の判別にも役立つ。
図8は、水圧が加わったホース本体11を示す図である。図示した例においては、ホース本体11が捻じれている。ホース本体11がこの状態で暗所に配置され、さらにライトで照らされると、中心線50が螺旋状に見える。これにより、消防隊員等はホース本体11が捻じれていることを把握できる。
【0044】
さらに、消防隊員等は、ライトに照らされたマーク60A,60B,60Cが螺旋状の中心線50に沿って並んでいる様子を把握できる。仮に中心線50が反射性を有していない場合や中心線50が無い場合には、ホース本体11に対して捻じれて並ぶマーク60A,60B,60Cが指す方向を判別し難い。これに対し、反射性を有する中心線50によりホース本体11の捻じれを確認できる状態であれば、マーク60A,60B,60Cが指す方向を判別し易くなる。
【0045】
また、
図4および
図5に示したように中心線50とマーク60A,60B,60Cが重なっていれば、当該重なった部分でマーク60A,60B,60Cが擦り切れたとしても、その部分に下方の中心線50が現れる。これにより、暗所で光を反射した際のマーク60A,60B,60Cの矢印形状が良好に維持される、特に、方向を示すうえで重要となるマーク60A,60B,60Cの中央(先端61および後中央部64を含む部分)と中心線50が重なることで当該効果が高まる。
【0046】
また、
図3に示したようにマーク60A,60B,60Cを含むグループGが間隔を空けて配置されていれば、消防隊員等はホース本体11の各所において第1端部E1の方向を把握できる。仮にホース本体11の全長に亘ってマーク60を設ける場合には、これらマーク60を形成する製造工程に時間を要するし、これらマーク60を形成するための反射材が多く必要となり消防用ホース1の製造コストが上昇する。これに対し、本実施形態におけるマーク60の配置態様であれば製造に要する時間の短縮と製造コストの削減が可能である。
【0047】
また、
図4等に示したようにマーク60A,60B,60Cが一対の境界線32の間、すなわち水圧が加わっていない状態において扁平な腹部41aに形成されていれば、製造時においてマーク60A,60B,60Cを形成し易い。
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態においては、マーク60の形状において第1実施形態と相違する。特に言及しない構成および効果については第1実施形態と同様である。
【0049】
図9は、本実施形態に係るマーク60(60A,60B,60C)の形状の一例を示す平面図である。この図の例では、長手方向LDにおいてマーク60Bの後中央部64が後端62,63よりも先端61側に位置している。より具体的には、マーク60Bの後辺65(後端62,63の間の辺)が先端61に向けて窪んだ円弧状である。
【0050】
後辺65の曲率は適宜に定め得る。一例では、後中央部64と後端62,63の長手方向LDにおける距離Dが、ジャケット30の表面に現れるたて糸Mの模様の長手方向LDにおける幅W以上である(W≦D)。距離Dが幅Wの3倍以上であればより好適である。マーク60A,60Cもマーク60Bと同様の形状を有している。
【0051】
続いて、本実施形態の効果について説明する。
図10は、
図4に示した形状のマーク60(60A,60B)を有するホース本体11を斜め方向から見た図である。
図11は、
図9に示した形状のマーク60(60A,60B)を有するホース本体11を斜め方向から見た図である。いずれの図においても、ホース本体11は水圧により円筒状に膨らんでいる。
【0052】
図10の例においては、ホース本体11が円筒状に膨らんだことにより、平面視においては直線状となる後端62,63の間の後辺65が、中心線50との交差部を頂点に突出した円弧状に見える。これにより、マーク60A,60Bが三角形ではなく扇型に近い形となり、これらが指し示す方向を判別し難い。
【0053】
一方、
図11の例においては、後辺65が元から
図9に示した円弧状であるために、中心線50との交差部に向けて窪んだ円弧状に見える。これにより、
図10の例に比べてマーク60A,60Bが指し示す方向を判別し易い。
【0054】
なお、ホース本体11を見る角度によっては、
図11に示す後辺65が直線状または中心線50との交差部を頂点に突出した円弧状に見えることがある。ただし、いずれの場合も後辺65が
図4のように平面視において直線状である例と比べて後辺65の曲率が小さくなるので、マーク60A,60Bが指し示す方向を判別し易くなる。
【0055】
このように、本実施形態のマーク60の形状であれば、ホース本体11を斜めに見た場合であってもマーク60が指し示す方向を容易に判別することが可能となる。
【0056】
このような効果を発揮するマーク60の形状は、
図9に示したものに限られない。
図12は、本実施形態に係るマーク60(60A,60B,60C)の形状の他の例を示す平面図である。この図の例においてはマーク60A,60B,60CがV字型であり、後中央部64が先端61の近傍に位置している。この場合であっても、ホース本体11を斜めに見たときにマーク60が指し示す方向を容易に判別できる。
【0057】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。上述の各実施形態においては、ホース本体11の一方の腹部41aに中心線50およびマーク60が設けられる場合を例示した。本実施形態においては、ホース本体11の腹部41a,41bの双方に中心線50およびマーク60が設けられる構成を例示する。特に言及しない構成および効果については上述の各実施形態と同様である。
【0058】
図13は、本実施形態に係るホース本体11の一例を示す概略的な平面図である。この図においては、上段に腹部41aの構成を示し、下段に腹部41bの構成を示している。
【0059】
腹部41aは、一対の境界線32と、中心線50と、第2実施形態と同様の形状のマーク60(60A,60B,60C)とを有している。腹部41aのマーク60A,60B,60Cによって第1グループG1が構成されている。第1グループG1は、
図3の例と同様に間隔を空けてホース本体11に複数設けられている。
【0060】
同様に、腹部41bは、一対の境界線32と、中心線50と、第2実施形態と同様の形状のマーク60(60A,60B,60C)とを有している。腹部41bのマーク60A,60B,60Cによって第2グループG2が構成されている。第2グループG2は、
図3の例と同様に間隔を空けてホース本体11に複数設けられている。第2グループG2のマーク60A,60B,60Cは、第1グループG1のマーク60A,60B,60Cと同様に第1端部E1の方向(図中左方)を指し示している。
【0061】
第1グループG1と第2グループG2は、長手方向LDにおいてホース本体11の同じ位置に設けられている。このような構成であれば、腹部41aおよび腹部41bの一方が地面に向かい合う状態であっても、他方に設けられたマーク60によって第1端部E1の方向を判別できる。
【0062】
図14は、本実施形態に係るホース本体11の他の例を示す概略的な平面図であり、
図13と同じく上段に腹部41aの構成を示し、下段に腹部41bの構成を示している。この図の例においても、腹部41aに第1グループが設けられ、腹部41bに第2グループG2が設けられている。
【0063】
図14の例においては、長手方向LDにおいて第2グループG2が第1グループG1と異なる位置に設けられている。このような構成であれば、ホース本体11において短い間隔で第1グループG1または第2グループG2が現れるため、ホース本体11のどの位置であってもマーク60を視認し易くなる。
【0064】
なお、
図13および
図14の例においては
図9に示した形状のマーク60がホース本体11に設けられる場合を例示したが、マーク60は
図4や
図12に示した形状あるいはさらに他の形状を有してもよい。また、第1グループG1のマーク60の形状と第2グループG2のマーク60の形状とが異なってもよいし、第1グループG1に含まれるマーク60の数と第2グループG2に含まれるマーク60の数が異なってもよい。
【0065】
以上の第1乃至第3実施形態は、本発明の範囲を各実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を消防用ホースに適用できる。
【0066】
例えば、各実施形態においては第1輝光部材が第1端部E1を指し示す矢印形状のマーク60であり、第2輝光部材が腹部41a等の中央に位置する中心線50である場合を例示した。しかしながら、第1輝光部材は他の形状やパターンにより特定の方向を指し示すものであってもよい。また、第2輝光部材は腹部41a等の中央からずれた位置に設けられてもよい。
【0067】
上述の各実施形態においては、第1輝光部材(マーク60)および第2輝光部材(中心線50)が反射性を有する場合を例示した。しかしながら、第1輝光部材および第2輝光部材には反射性以外の性質を与えてもよい。
【0068】
例えば、第1輝光部材および第2輝光部材は、暗所において光を放つ蓄光性を有してもよい。このような第1輝光部材および第2輝光部材は、蓄光材を含む塗料をジャケット30の表面に塗布することにより形成されてもよいし、シート状またはフィルム状の蓄光材をジャケット30に貼り付けることにより形成されてもよい。また、第1輝光部材および第2輝光部材は、ジャケット30に織成される前の糸材(例えばたて糸)の所定位置に蓄光材を含む塗料を塗布し、この糸材を用いてジャケット30を織成することにより形成されてもよい。
【0069】
他の例として、第1輝光部材および第2輝光部材は、昼間のような明るい環境下でも高い視認性を発揮する蛍光性を有してもよい。このような第1輝光部材および第2輝光部材は、蛍光体を含む塗料をジャケット30の表面に塗布することにより形成されてもよいし、シート状またはフィルム状の蛍光体をジャケット30に貼り付けることにより形成されてもよい。また、第1輝光部材および第2輝光部材は、ジャケット30に織成される前の糸材(例えばたて糸)の所定位置に蛍光体を含む塗料を塗布し、この糸材を用いてジャケット30を織成することにより形成されてもよい。
【0070】
第1輝光部材および第2輝光部材は、反射性、蓄光性および蛍光性のいずれか2つあるいは全てを有してもよい。また、例えば第1輝光部材および第2輝光部材の一方が反射性を有し他方が蓄光性を有する場合のように、第1輝光部材が有する性質と第2輝光部材が有する性質とが異なってもよい。
【0071】
すなわち、本開示において「輝光部材」との用語は、光を反射したり発光したりすることによって特定の条件下においてジャケット30の素地部分に比べ目立つ部材を意味する。
【符号の説明】
【0072】
1…消防用ホース、11…ホース本体、30…ジャケット、31…ライニング層、40a,40b…耳部、41a,41b…腹部、32…境界線、50…中心線、60(60A,60B,60C)…マーク、61…先端、62,63…後端、64…後中央部、65…後辺、E1…第1端部、E2…第2端部、G(G1,G2)…グループ。