(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】画像寸法測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/14 20060101AFI20240318BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01B11/14 H
G01B21/00 H
(21)【出願番号】P 2020094233
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】宮木 悠二
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-162247(JP,A)
【文献】特開2020-046282(JP,A)
【文献】特開2008-018779(JP,A)
【文献】特開2013-050451(JP,A)
【文献】国際公開第2006/030664(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/14
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の寸法を測定する画像寸法測定装置において、
測定対象物を載置するためのステージと、
前記ステージに載置された測定対象物を撮像し、測定対象物画像を生成するための撮像部と、
前記ステージの端部に取り付けられ、モータを内蔵する筐体と、前記モータにより前記撮像部の光軸と交差する回転軸周りに回転される回転体とを有する回転ユニットと、
前記回転体に締結部材により締結固定され、前記モータにより前記回転体とともに前記回転軸周りに回転されるチャック本体と、前記チャック本体に、径方向に延びるとともに周方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の溝部に沿ってそれぞれ摺動可能に配設され
、測定対象物を掴むための複数のチャック爪と、前記チャック本体に対して前記回転軸周りに手動で回転させることにより、前記複数のチャック爪を前記溝部に沿って径方向に移動させるための調整部材とを有するチャック機構と、
前記回転体の回転を前記筐体に対して機械的に禁止しつつ、前記調整部材の回転は許容するロック状態と、前記回転体の回転及び前記調整部材の回転を許容する非ロック状態とに切り替えられるロック機構とを備えている画像寸法測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像寸法測定装置において、
前記チャック機構には、軸物を掴む3つ以上の前記チャック爪を有する第1チャック機構と、箱物を掴む2つの前記チャック爪を有する第2チャック機構とが存在し、
前記第1チャック機構の前記チャック本体と、前記第2チャック機構の前記チャック本体は、前記回転体に締結される共通の被締結部を備えている画像寸法測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像寸法測定装置において、
前記チャック機構は、前記チャック爪の取付向きを変更可能に構成されている画像寸法測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の画像寸法測定装置において、
前記調整部材の外径は、前記締結部材の外径よりも大きくなっている画像寸法測定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の画像寸法測定装置において、
前記回転体には、外周面に開口するロック孔が形成され、
前記ロック機構は、前記ロック孔に挿入されるロック部材と、前記ロック部材を前記回転軸の径方向に往復移動可能に前記筐体に対して支持する支持部材とを備えている画像寸法測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の画像寸法測定装置において、
前記回転ユニットは、手動調整ノブと、前記手動調整ノブの回転量を検知し、該回転量に応じた検出信号を出力する回転量検知部と、前記回転量検知部から出力される検出信号を受け取って前記モータの回転量に変換し、変換された回転量だけ当該モータを回転させる処理回路とを有している画像寸法測定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の画像寸法測定装置において、
前記チャック機構に装着された測定対象物を前記モータにより回転させながら前記撮像部により撮像して生成された測定対象物画像に基づいて、測定対象物の振れによって生じる寸法誤差を補正する振れ補正部を備えている画像寸法測定装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の画像寸法測定装置において、
前記ロック機構がロック状態にあることを検出するロック状態検出部と、
前記ロック状態検出部により前記ロック機構がロック状態にあることが検出され、かつ、ユーザが前記モータを回転させようとした場合に前記ロック機構がロック状態にあることをユーザに報知する報知部とを備えている画像寸法測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物を回転させる回転ユニットを備えた画像寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転可能に保持された測定対象物を撮像した画像に基づいて、測定対象物の各部の寸法を取得する寸法測定装置が知られている。例えば特許文献1には、マシニングセンタの主軸に固定された加工工具をカメラで側方から撮像し、カメラによって撮像された画像に対して画像処理を行って輪郭線画像を抽出し、輪郭線画像から加工工具の寸法を演算する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなマシニングセンタでは、加工工具の着脱時に主軸をブレーキによって固定しておくことができるので、加工工具の着脱作業時に主軸が回転することはないが、マシニングセンタ以外の寸法測定装置に測定対象物を回転させる回転ユニットを設ける場合があり、この場合には次のような問題が発生し得る。
【0005】
すなわち、回転ユニットには、測定対象物を回転させるためのモータが必要になり、このモータの出力軸によって回転駆動される回転体に対して、測定対象物を掴むためのチャック機構を締結する構成が考えられる。チャック機構を回転体に締結する構成を前提としたとき、例えばチャック機構の着脱時の締結力によって回転体が回転してしまうと、着脱作業が難しくなるとともに、着脱作業自体が不完全なものになるおそれがある。このことに対しては、回転体を固定しておけばよいのであるが、そもそも、回転ユニットにはそのような構造が設けられていないとともに、測定対象物の着脱時の締結力が強いので、如何にして回転体を固定しておくかが問題となる。
【0006】
また、チャック機構は、測定対象物の被チャック部分を掴む複数のチャック爪を備えており、これらチャック爪を径方向に移動させることによって被チャック部分を掴んだチャック状態と、被チャック部分から離れた非チャック状態とに切り替えることが可能になっている。チャック爪を径方向に移動させる場合には、回転操作が可能な調整部材が用いられる場合が多く、測定対象物の着脱時には調整部材の回転を阻害しないようにしておきたい。
【0007】
つまり、チャック機構の着脱時には、モータ側の回転体が回転しないように止めておく必要がある一方、調整部材については、測定対象物の着脱時にチャック爪を径方向に容易に移動可能にするべく、回転を阻害しないようにしておかなければならず、これらの両立が困難であった。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チャック機構の着脱時にはモータ側の回転体が回転しないようにしてチャック機構の着脱作業性を良好にしながら、チャック爪の調整部材は回転可能にして測定対象物の着脱作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の開示では、測定対象物の寸法を測定する画像寸法測定装置を前提とすることができる。画像寸法測定装置は、測定対象物を載置するためのステージと、前記ステージに載置された測定対象物を撮像し、測定対象物画像を生成するための撮像部と、前記ステージの端部に取り付けられ、モータを内蔵する筐体と、前記モータにより前記撮像部の光軸と交差する回転軸周りに回転される回転体とを有する回転ユニットと、前記回転体に締結部材により締結固定され、前記モータにより前記回転体とともに前記回転軸周りに回転されるチャック本体と、前記チャック本体に、径方向に延びるとともに周方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の溝部に沿ってそれぞれ摺動可能に配設された複数のチャック爪と、前記チャック本体に対して前記回転軸周りに手動で回転させることにより、前記複数のチャック爪を前記溝部に沿って径方向に移動させるための調整部材とを有するチャック機構と、前記回転体の回転を前記筐体に対して機械的に禁止しつつ、前記調整部材の回転は許容するロック状態と、前記回転体の回転及び前記調整部材の回転を許容する非ロック状態とに切り替えられるロック機構とを備えている構成とすることができる。
【0010】
この構成によれば、ロック機構をロック状態にすることで、回転体の回転が筐体に対して機械的に禁止されるので、チャック機構のチャック本体を回転体に対して締結部材により締結する際に、回転体が締結部材と連れ周りすることはなく、強く締結することが可能になる。また、締結部材を緩める際も回転体が連れ周りすることはない。これにより、チャック機構の着脱作業性が良好になる。
【0011】
ロック機構をロック状態にしていても、チャック機構の調整部材の回転は許容されているので、調整部材を回転させることによってチャック爪を径方向に移動させることが可能である。これにより、測定対象物を掴んだり、測定対象物を外したりすることができるので、測定対象物の着脱作業性も良好である。
【0012】
一方、ロック機構を非ロック状態にすることで、回転体の回転が許容されるので、モータによって回転体を回転させることができる。これにより、チャック機構で掴んだ測定対象物を撮像部の光軸と交差する回転軸周りに回転させ、測定対象物を所望の姿勢にして撮像部で撮像できる。撮像部で生成された測定対象物画像に基づいて各部の寸法が得られる。
【0013】
第2の開示では、前記チャック機構には、軸物を掴む3つ以上の前記チャック爪を有する第1チャック機構と、箱物を掴む2つの前記チャック爪を有する第2チャック機構とが存在している。前記第1チャック機構の前記チャック本体と、前記第2チャック機構の前記チャック本体は、前記回転体に締結される共通の被締結部を備えていてもよい。
【0014】
軸物の測定を行う場合には軸物専用の第1チャック機構によって軸物をしっかりと掴んでおくことができ、また、箱物の測定を行う場合には箱物専用の第2チャック機構によって箱物をしっかりと掴んでおくことができる。よって、測定可能な測定対象物の範囲を拡大できる。この場合、第1チャック機構の被締結部と、第2チャック機構の被締結部が共通であるため、回転体を変更することなく、第1チャック機構と第2チャック機構との付け替えができる。第1チャック機構のチャック爪は例えば4つであってもよい。
【0015】
第3の開示では、前記チャック機構は、前記チャック爪の取付向きを変更可能に構成されている。例えば、複数のチャック爪を互いに接近させることによって中実の測定対象物を外側から掴むことが可能となるように、チャック爪の取付向きを設定しておくことができる。このチャック爪の取付向きを変更することで、複数のチャック爪を互いに離間させることによって中空の測定対象物を内側から掴むことが可能になる。
【0016】
第4の開示では、前記調整部材の外径は、前記締結部材の外径よりも大きくなっていてもよい。
【0017】
すなわち、一般的な使用状況で、測定対象物の着脱頻度と、チャック機構の着脱頻度とを比較すると、測定対象物の着脱頻度の方が高い。測定対象物の着脱時に使用される調整部材の方を大きくすることで、作業者による測定対象物の着脱時の操作性が向上する。
【0018】
第5の開示では、前記回転体には、外周面に開口するロック孔が形成され、前記ロック機構は、前記ロック孔に挿入されるロック部材と、前記ロック部材を前記回転軸の径方向に往復移動可能に前記筐体に対して支持する支持部材とを備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、ロック部材を回転軸の径方向に進出させることにより、回転体のロック孔に挿入することができ、これにより、回転体の回転が禁止される。一方、ロック部材を後退させることにより、ロック部材を回転体のロック孔から離脱させることができ、これにより、回転体の回転が許容される。つまり、ロック部材を往復動させるという簡単な操作で所望の動作を実現できる。ロック部材により回転体をロックした時、ロック部材が筐体に対して支持されているので、回転体に対して回転力が作用したときにロック部材が連れ回りすることはなく、回転体を確実にロックできる。
【0020】
第6の開示では、前記回転ユニットは、手動調整ノブと、前記手動調整ノブの回転量を検知し、該回転量に応じた検出信号を出力する回転量検知部と、前記回転量検知部から出力される検出信号を受け取って前記モータの回転量に変換し、変換された回転量だけ当該モータを回転させる処理回路とを有していてもよい。
【0021】
この構成によれば、ユーザが測定対象物を回転させる場合に、手動調整ノブを回転させると、手動調整ノブの回転量が回転量検知部によって検知され、回転量に応じた検出信号が回転量検知部から処理回路に出力される。処理回路は、回転量検知部から出力される検出信号をモータの回転量に変換する。このとき、手動調整ノブの回転方向と、モータによる回転体の回転方向とを一致させることができる。また、手動調整ノブの回転量と、モータによる回転体の回転量、即ち測定対象物の回転量とが対応するように、モータの回転量を設定することもでき、例えば手動調整ノブの回転量よりも測定対象物の回転量が少なくなるように、処理回路がモータの回転量を設定してもよい。処理回路は、設定された回転量だけモータを回転させるので、ユーザが望むように測定対象物を回転させることができる。これにより、ユーザが測定対象物を手動で位置決めできる。
【0022】
第7の開示では、前記チャック機構に装着された測定対象物を前記モータにより回転させながら前記撮像部により撮像して生成された測定対象物画像に基づいて、測定対象物の振れによって生じる寸法誤差を補正する振れ補正部を備えていてもよい。
【0023】
すなわち、チャック機構の装着された測定対象物を回転させたとき、回転軸に対して振れている場合が考えられる。この場合には、測定対象物を回転させながら撮像部によって撮像することで、測定対象物の回転軸に対する振れ量を取得することができる。この取得された振れ量に基づいて、振れが無くなる方向に補正することで、寸法の精度を向上させることができる。
【0024】
第8の開示は、前記ロック機構がロック状態にあることを検出するロック状態検出部と、前記ロック状態検出部により前記ロック機構がロック状態にあることが検出され、かつ、ユーザが前記モータを回転させようとした場合に前記ロック機構がロック状態にあることをユーザに報知する報知部とを備えていてもよい。
【0025】
この構成によれば、ロック機構がロック状態になると、ロック状態検出部によって検出される。この状態で、ユーザがロック状態であることを知らずに、あるいは忘れて、もしくは気付かずに測定対象物を回転させようとすること、即ちモータを回転させようとすることが考えられる。このような場合に、本構成では、ロック機構がロック状態にあることがユーザに報知されるので、ユーザは測定対象物を回転させる前にロック機構を非ロック状態にすることができる。
【0026】
報知部は、例えばディスプレイ装置であってもよい。ディスプレイ装置の場合、ロック機構がロック状態にあることをポップアップ表示してユーザに報知することができる。また、報知部は、例えばスピーカ等であってもよい。スピーカ等の場合、ロック機構がロック状態にあることを音声出力によってユーザに報知することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、回転ユニットの回転体の回転を筐体に対して機械的に禁止しつつ、チャック機構の調整部材の回転を許容できるので、チャック機構の着脱時に回転ユニットの回転体が回転しないようにしてチャック機構の着脱作業性を良好にしながら、チャック爪の調整部材を回転可能にして測定対象物の着脱作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る画像寸法測定装置の正面図である。
【
図4】回転ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】モータ、ロック機構及び回転体の分解斜視図である。
【
図9】回転体とロック機構との位置関係を示す斜視図である。
【
図10】チャック機構を回転体に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図11】チャック機構及び回転体を左側から見た分解斜視図である。
【
図12】チャック機構を右側から見た分解斜視図である。
【
図14】チャック機構の別形態を示す斜視図である。
【
図15】チャック機構の別形態の変形例を示す
図14相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る画像寸法測定装置1の正面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る画像寸法測定装置1の斜視図である。また、
図3は、本発明の実施形態に係る画像寸法測定装置1の構成を模式的に示すブロック図である。画像寸法測定装置1は、各種ワーク等の測定対象物W(
図1及び
図2に示す)の寸法を測定するものであり、
図3に示すように、装置本体2と、制御ユニット3と、記憶部4と、回転ユニット5とを備えている。制御ユニット3は、装置本体2と別体とされて通信線等によって通信可能に接続されていてもよいし、装置本体2の内部に組み込まれて一体化されていてもよい。記憶部4も同様に、装置本体2と別体とされていてもよいし、装置本体2の内部に組み込まれて一体化されていてもよい。本例では制御ユニット3と記憶部4とを別体としているが、これらが一体化されていてもよい。
【0031】
なお、本実施形態の説明では、画像寸法測定装置1をユーザから見たときに正面に位置する側を正面側といい、背面に位置する側を背面側といい、また、左に位置する側を左側といい、右に位置する側を右側というものとする。正面側を手前側と呼ぶことができ、また、背面側を奥側と呼ぶこともできる。これは説明の便宜を図るために定義するだけである。
【0032】
(装置本体2及び制御ユニット3の構成)
図1及び
図2に示すように、装置本体2は、ベース部10と、ベース部10の背面側から上方へ延びるアーム部11とを備えている。ベース部10の上部には、測定対象物Wを載置するためのステージ12が設けられている。ステージ12は略水平に延びている。ステージ12の中央部近傍には光を透過させる透過部12aが設けられている。ステージ12は、
図3に示すステージ駆動部12cによって駆動可能になっている。
【0033】
図3に示すように、装置本体2には、照明部13が設けられている。照明部13は、アーム部11に内蔵された落射照明部13aと、ベース部10に内蔵された透過照明部13bとを含んでいる。落射照明部13aは、ステージ12に載置(静置)された測定対象物Wまたは回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wを上方から照明する照明装置であり、後述する撮像部15の光軸A(
図1に示す)を囲むリング状に形成することができる。透過照明部13bは、ステージ12の透過部12aに載置された測定対象物Wまたは回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wを下方から照明する照明装置である。
図1及び
図2では、回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wのみ示している。
【0034】
ベース部10の正面側には、操作部14が設けられている。操作部14は、ユーザによって操作される各種ボタンやスイッチ、ダイヤル等を含んでいる。操作部14は、制御ユニット3に接続されており、当該制御ユニット3は、操作部14の操作状態を検出し、操作部14の操作状態に応じて各部を制御する。操作部14は、ユーザのタッチ操作を検出可能なタッチパネル等で構成されていてもよく、この場合、後述する表示部16に操作部14を組み込むことができる。また、操作部14は、制御ユニット3に接続可能なキーボードやマウス等で構成されていてもよい。
【0035】
落射照明部13a及び透過照明部13bは、制御ユニット3に接続されて当該制御ユニット3によって制御される。例えば操作部14によって測定対象物Wの測定開始操作がなされたことを制御ユニット3が検出すると、落射照明部13aまたは透過照明部13bをONにして光を照射させることができる。
【0036】
アーム部11には、撮像部15(
図3に示す)が設けられている。撮像部15は、ステージ12に載置された測定対象物Wまたは回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wを撮像し、測定対象物画像を生成するための部分である。撮像部15の例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するカメラを挙げることができる。
図1に示すように、撮像部15の光軸Aは鉛直下向きに設定されており、図示しないが、受光レンズや結像レンズを含む光学系が撮像部15の光軸Aと同軸上に設けられている。撮像部15は光学系を含む撮像ユニットであってもよいし、光学系を含まないものであってもよい。撮像部15には、落射照明部13aから照射されて測定対象物Wで反射した光、透過照明部13bから照射されてステージ12の透過部12aを透過した光等が入射するようになっている。光学系によるピント調整の手法は従来から用いられている手法を適用できる。
【0037】
撮像部15では、受光量に基づいて画像を生成する。撮像部15は制御ユニット3に接続されており、撮像部15が生成した画像は、画像データとされて制御ユニット3に送信される。また、制御ユニット3は、撮像部15を制御することができる。例えば操作部14によって測定対象物Wの測定開始操作がなされたことを制御ユニット3が検出すると、落射照明部13aまたは透過照明部13bをONにして光を照射させた状態で、撮像部15に撮像処理を実行させる。これにより、撮像部15で測定対象物画像が生成され、生成された測定対象物画像は制御ユニット3に送信される。
【0038】
制御ユニット3では撮像部15から送信された測定対象物画像をユーザインターフェース画面に組み込んで表示部16に表示させる。すなわち、アーム部11の上部には、表示部16が正面に向くように設けられている。表示部16は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されており、制御ユニット3に接続されている。制御ユニット3は、表示部16を制御して各種ユーザインターフェース画面を当該表示部16に表示させる。
【0039】
制御ユニット3には記憶部4が接続されている。記憶部4は、例えばSSD(Solid State Drive)やハードディスク等で構成されている。制御ユニット3は、上述したような各ハードウェアと接続されており、各ハードウェアの動作を制御するとともに、記憶部4に記憶されているコンピュータプログラムに従って、ソフトウェア的機能を実行する部分である。制御ユニット3には、図示しないがRAM等が設けられており、コンピュータプログラムの実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0040】
制御ユニット3には、エッジ抽出部30及び計測部31が設けられている。エッジ抽出部30は、撮像部15から送信された測定対象物画像に対して画像処理を実行することにより、測定対象物Wのエッジ(輪郭)を抽出する部分である。測定対象物のエッジの抽出手法は従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。エッジ抽出部30からは、測定対象物のエッジを示すエッジ画像が出力される。
【0041】
エッジ抽出部30から出力されたエッジ画像は、計測部31に入力される。計測部31は、エッジ画像を利用して測定対象物Wの各部の寸法を計測する。寸法の計測部位は、ユーザによって予め指定しておくことができる。例えば、ユーザは、表示部16に表示された測定対象物画像を見ながら、操作部14を操作して測定対象物画像上の任意の2点を指定すると、その指定点の位置座標に基づいて測定対象物Wの測定部位を特定することができる。計測部31は、ユーザによって特定された測定部位に対応するエッジ間距離やエッジ長さ等を算出することで、所定部位の寸法を取得することができる。取得された寸法は、表示部16に表示させることができる。このとき、寸法を示す値と寸法線とを測定対象物画像に重畳表示させることができる。
【0042】
(測定対象物Wを回転させる構成)
本実施形態では、測定対象物Wをステージ12に載置して測定するだけでなく、測定対象物Wを回転させて測定することもできる。具体的には、画像寸法測定装置1は、測定対象物Wを回転させる構成及びそれに付随する構成として、回転力を生成して出力する回転ユニット5、測定対象物Wを掴むチャック機構6、回転ユニット5の回転を一時的に停止させておくためのロック機構7を備えている。詳細は後述するが、チャック機構6は、回転ユニット5に対して着脱可能に構成されており、チャック機構6が回転ユニット5に装着されると、回転ユニット5から出力される回転力が、チャック機構6を介して測定対象物Wに伝達されて測定対象物Wを回転させる。回転ユニット5は、測定対象物Wを所定角度だけ回転させた状態で停止させておくことができる。
【0043】
(回転ユニット5の構成)
図1に示すように、回転ユニット5は、測定対象物Wをステージ12の透過部12aの上方に配置した状態で所定の回転軸B周りに回転可能にし、任意の回転位置で停止させてその姿勢を保持するためのステージである。この実施形態では、回転ユニット5がステージ12とは別体とされていて、ステージ12に対して着脱可能に構成されているが、回転ユニット5とステージ12とは一体で構成されていてもよい。着脱可能な回転ユニット5の場合、回転ユニット5が必要な時だけ、回転ユニット5をステージ12に取り付けておき、不要時にはステージ12から取り外しておくことができる。
【0044】
回転ユニット5は、モータ50(
図8に示す)と、モータ50を内蔵する筐体51と、モータ50により回転される回転体52とを備えている。モータ50は筐体51に固定されている。筐体51は、ステージ12の左端部に取り付けられている。すなわち、
図4~
図6に示すように、筐体51の下部には、取付板53が設けられている。取付板53は、ステージ12の正面側から背面側に亘って水平に延びている。取付板53の正面側と背面側とがそれぞれボルト53aによってステージ12に締結される。例えば、ステージ12にボルト53aが螺合するねじ孔(図示せず)を形成しておき、取付板53を置いてからボルト53aをねじ孔に螺合させることで筐体51をステージ12の左端部に取り付けることができる。ボルト53aを緩めることで筐体51を容易に取り外すことができる。筐体51は、ステージ12の右端部に取り付けてもよく、この場合、
図1等に示すステージ12を左右対称にすればよい。
【0045】
筐体51をステージ12に取り付けた状態で、モータ50の出力軸50aが右側へ向けて水平に延びるように配置される。この出力軸50aに回転体52が固定されており、従って、回転体52は左右方向に水平に延びる回転軸B周りに回転される。撮像部15の光軸Aは鉛直方向であることから、回転軸Bは撮像部15の光軸Aと交差する関係となる。この実施形態では、回転軸Bは撮像部15の光軸Aと直交しているが、直交させなくてもよい。
【0046】
図1や
図2に示すように、回転体52には、チャック機構6が取り付けられるようになっている。
図8に示すように、回転体52は、モータ50の出力軸50aに連結される連結部52aを備えている。連結部52aと出力軸50aとが相対回転しないように、連結部52aは出力軸50aに対して回り止めされている。尚、本実施形態では、回転体52をモータ50の出力軸50aに直接連結しているが、これに限らず、例えばモータ50と回転体52との間に減速歯車機構(図示せず)を設けてもよい。この場合、減速歯車機構の出力軸に回転体52が連結されることになるが、減速歯車機構の出力軸もモータ50の出力によって回転される出力軸であることから、本発明の範囲に含まれる。
【0047】
図9に示すように、回転体52は、連結部52aから回転軸B方向(右側)に突出し、当該回転軸Bの周方向に延びる円環状の周壁部52bを有している。連結部52aと周壁部52bとは一体化されている。周壁部52bの軸芯は、回転軸B上に位置している。周壁部52bの外周面にはねじ山が形成されている。
【0048】
回転体52は、当該回転体52をロック機構7によってロックするための複数のロック孔52dを有している。複数のロック孔52dは、周壁部52bの左側において当該周壁部52bの周方向に互いに間隔をあけて形成されている。ロック孔52dは、周壁部52bに形成された凹状の部分で構成することができ、周壁部52bを貫通していない。ロック孔52dは、周壁部52bの外周面に開口するとともに、周壁部52bの左端面にも開口している。ロック孔52dは、周壁部52bの周方向に等間隔に形成することができる。また、ロック孔52dは、周壁部52bを貫通していてもよい。
【0049】
図4等に示すように、回転ユニット5は、手動調整ノブ55と、手動調整ノブ55の回転量を検知するエンコーダ56(
図3に示す)と、処理回路57(
図3に示す)とを備えている。手動調整ノブ55は、回転軸Bと平行な軸周りに回転可能に筐体51に支持されている。手動調整ノブ55の配設位置は、筐体51の正面側かつ左側であり、筐体51から左側へ向けて突出している。これにより、ユーザは画像寸法測定装置1の前に座った状態で、左手で手動調整ノブ55を回転させることができる。尚、手動調整ノブ55の配設位置は特に限定されるものではなく、筐体51の背面側であってもよいし、左側であってもよい。
【0050】
エンコーダ56は、筐体51に内蔵されており、従来から周知のロータリエンコーダ等で構成することができる。例えば、ユーザが手動調整ノブ55を回転させると、その回転量をエンコーダ56で検出することができ、エンコーダ56で検出された結果は、当該エンコーダ56から処理回路57に対して回転量に関する信号として出力される。
【0051】
処理回路57は、モータ50を制御する部分であり、制御ユニット3に内蔵されていてもよいし、装置本体2に内蔵されていてもよい。処理回路57は、エンコーダ56から出力される回転量に関する信号を受け取ってモータ50の回転量に変換し、変換された回転量だけ当該モータ50を回転させる。手動調整ノブ55の回転量と、モータ50の出力軸50aの回転量とは、一致していなくてもよく、対応していればよい。例えば、ユーザが手動調整ノブ55を10゜だけ回転させた場合、手動調整ノブ55が10゜回転したことをエンコーダ56が検出し、回転量に応じた検出信号を処理回路57に出力する。手動調整ノブ55が10゜回転した情報を処理回路57で取得すると、処理回路57は、手動調整ノブ55の回転量を所定の比率で変換してモータ50に対して制御信号を出力する。制御信号は、モータ50の出力軸50aを10゜よりも少なく回転させる信号とすることができる。
【0052】
処理回路57によるモータ50の制御は、ほぼリアルタイムで実行されるので、手動調整ノブ55が回転し始めると、ほぼ同期してモータ50も回転し、手動調整ノブ55が停止すると、ほぼ同期してモータ50も停止する。これにより測定対象物Wをユーザが任意の角度だけ回転させることができる。
【0053】
本例では、モータ5によって回転体52を直接駆動しているので、処理回路57は、手動調整ノブ55の回転量だけモータ50の出力軸50aが回転するように当該モータ50を制御すればよい。モータ50の出力軸50aと回転体52との間に減速歯車機構が設けられている場合には、処理回路57は、その減速比を考慮し、手動調整ノブ55の回転量よりも多くモータ50の出力軸50aを回転させればよい。
【0054】
回転ユニット5には、制御ユニット3または装置本体2に接続される接続線5aが設けられている。接続線5aを介してモータ50への電力が供給される。また、接続線5aを介して回転ユニット5と制御ユニット3との通信、または回転ユニット5と装置本体2との通信が行われるようになっている。
【0055】
(ロック機構7の構成)
ロック機構7は、回転ユニット5の回転体52の回転を筐体50に対して機械的に禁止するための機構である。
図7及び
図8に示すように、ロック機構7は、ロック部材70と、ロック部材70を往復動可能に支持する支持部材71と、ロック検出センサ72とを備えている。支持部材71は、厚肉板状に形成されてモータ50の右側に配置されており、筐体51に固定されている。支持部材71の中央部には、モータ50の出力軸50aが挿入可能な挿入孔71aが左右方向に貫通するように形成されている。この挿入孔71aには、回転体52の連結部52aも挿入可能になっている。したがって、回転体52とモータ50の出力軸50aとは、挿入孔71a内で連結されることになる。
【0056】
支持部材71は、ロック部材70が挿入される支持孔71bを有している。支持孔71bは、支持部材71の挿入孔71aよりも正面側に形成されており、画像寸法測定装置1の奥行き方向に略水平に延びている。
【0057】
ロック部材70は、棒状部70aと、ロック片70bと、被検出部70cとを備えている。棒状部70aは、支持部材71の支持孔71bに挿入される部分であり、支持孔71bに挿入された状態で画像寸法測定装置1の奥行き方向に往復動可能に支持される。棒状部70aの基端側には、ユーザが操作する操作ノブ70eとなる部分が設けられている。操作ノブ70eは、支持部材71よりも正面側へ突出している。また、棒状部70aが支持孔71bに挿入された状態でロック部材70は支持部材71を介して筐体50と一体化されるので、回転軸B周りの回転は阻止される。
【0058】
ロック片70bは、棒状部70aにおける奥側の端部から右側へ突出するピン状に形成されている。ロック片70bは、回転体52のロック孔52dに挿入可能となっている。具体的には、ロック片70bの右端部はロック孔52dの内面と干渉しないようにロック片70bの左右方向の寸法や位置が設定されており、また、ロック片70bの上下がロック孔52dの内面と干渉しないようにロック片70bの上下方向の寸法や位置が設定されている。
【0059】
ロック部材70は、支持孔71bによって往復動可能に支持されているので、進出位置(
図7に仮想線、
図9に実線で示す)と、後退位置(
図7に実線、
図9に仮想線で示す)とに切り替えることができる。ロック部材70を進出位置にすると、ロック片70bが回転体52のロック孔52dに挿入される。ロック部材70は筐体51と一体化されているので、ロック片70bが回転体52のロック孔52dに挿入された状態で、回転体52の回転が筐体51に対して機械的に禁止される。この状態がロック状態である。「機械的に禁止」とは、ロック片70bのような剛性のある部材が回転体52の係合部に対して係合し、両者の機械的な強度を利用して物理的に回転を阻止することであり、例えば、一方に設けた凹部や孔部と、他方に設けた凸部とを嵌合させるような構造であってもよい。
【0060】
一方、ロック部材70を後退位置にすると、ロック片70bが回転体52のロック孔52dから抜け出る。これにより、ロック部材70と回転体52との機械的な結合は解除されるので、回転体52の回転が許容される。この状態が非ロック状態である。つまり、ロック部材70を往復動させるだけで、ロック機構7をロック状態と非ロック状態とに容易に切り替えることができる。
【0061】
被検出部70cは、棒状部70aから画像寸法測定装置1の奥側へ向けて延びている。被検出部70cの先端は、支持部材71の挿入孔71aよりも奥側に達している。支持部材71には、挿入孔71aよりも奥側にロック検出センサ72が配設されている。ロック検出センサ72は、ロック機構7がロック状態にあることを検出するロック状態検出部であり、例えば光電センサ等で構成することができる。
【0062】
ロック部材70が進出位置になると、被検出部70cの先端がロック検出センサ72の検出領域に達し、ロック検出センサ72がON信号を出力する。これにより、ロック機構7がロック状態にあることの検出が可能になっている。一方、ロック部材70が後退位置になると、被検出部70cの先端がロック検出センサ72の検出領域から出て、ロック検出センサ72がOFF信号を出力する。これにより、ロック機構7が非ロック状態にあることの検出が可能になっている。ロック検出センサ72は、非接触のセンサであってもよいし、リミットスイッチのような接触型のセンサであってもよい。
【0063】
ロック検出センサ72の信号は、制御ユニット3に出力される。制御ユニット3は、ロック検出センサ72から出力される信号がON信号である場合には、ロック機構7がロック状態にあることが検出されたとし、ロック機構7がロック状態にあることをユーザに報知する。具体的には、ロック機構7がロック状態にあることを示す文字や記号、マーク等を表示部(報知部)16にポップアップ表示してユーザに報知することができる。また、ロック機構7がロック状態にあることを音声出力によってユーザに報知することもでき、この場合、スピーカ等を報知部とすることができる。
【0064】
尚、この実施形態では、ロック部材70の動作方向を奥行き方向としているが、これに限らず、左右方向であってもよいし、上下方向であってもよい。
【0065】
(チャック機構6の構成)
図10は、チャック機構6を右側、即ち測定対象物Wを掴む側から見た斜視図である。
図11及び
図12は、チャック機構6の分解斜視図であり、
図11は回転体52を含み、左側からの斜視図であり、
図12は回転体52を含まない、右側からの斜視図である。
【0066】
チャック機構6は、回転体52に着脱されるチャック本体60と、測定対象物Wを3方向から掴むように配置される第1~第3チャック爪61~63と、第1~第3チャック爪61~63の位置を変えるための調整部材64と、チャック本体60を回転体52に締結固定する締結部材80とを備えている。チャック本体60は回転体52に締結固定された状態で、モータ50により回転体52とともに回転軸B周りに回転される。また、チャック本体60は、第1~第3チャック爪61~63を保持する保持部材65と、被締結部を構成している被締結部材69とを備えている。本開示に係るチャック本体60は、モータ50により回転体52とともに回転軸周りに回転されるものであればよく、その構造は問わない。例えば、チャック本体60が複数の部材で構成されたものであってもよいし、1つの部材で構成されたものであってもよく、また、回転体52とチャック本体60との間に別の部材が介在していてもよい。
【0067】
保持部材65は、第1~第3チャック爪61~63を径方向に案内する案内板部65aと、被締結部材69が固定されるボス部65bとを有しており、これらは一体化されている。ボス部65bは、被締結部材69の左側の側面から左側へ向けて突出している。ボス部65bの軸芯と、案内板部65aの軸芯とは、回転軸B(
図1に示す)上に位置している。案内板部65aには、第1溝部65c、第2溝部65d、第3溝部65eが設けられている。これら第1~第3溝部65c、65d、65eは、径方向に放射状に延びるとともに、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。第1~第3溝部65c、65d、65eの端部は、案内板部65aの外周面で開放されている。
【0068】
第1~第3チャック爪61~63は、それぞれ第1~第3スライダ66~68を有している。第1~第3スライダ66~68は、それぞれ、案内板部65aの第1~第3溝部65c、65d、65eに挿入され、当該第1~第3溝部65c、65d、65e内を長手方向に摺動する部材である。第1~第3チャック爪61~63は、第1~第3スライダ66~68の右側の面に固定されており、案内板部65aから右側へ突出している。
【0069】
第1~第3スライダ66~68の左側の面には、それぞれ、第1~第3凸部66a、67a、68aが左側へ向けて突出するように設けられている。第1~第3凸部66a、67a、68aは、案内板部65aの左側面よりも左側へ突出している。
【0070】
調整部材64を、チャック本体60に対して回転軸B周りにユーザが手動で回転させることにより、第1~第3チャック爪61~63を第1~第3溝部65c、65d、65eに沿って径方向に移動させるための部材である。すなわち、調整部材64は全体として円盤状に形成されており、その軸芯は回転軸B上に配置されている。調整部材64の中心部にはボス部65bが挿入されるボス挿入孔64aが形成されている。ボス挿入孔64aにボス部65bが挿入された状態で、調整部材64がボス部65bに対して回転軸B周りに回転可能に支持される。
図12に示すように、調整部材64の右側面には、螺旋条64bが右側へ向けて突出するように形成されている。螺旋条64bは、回転軸Bを中心とした螺旋状に延びている。
【0071】
調整部材64のボス挿入孔64aにボス部65bを挿入すると、螺旋条64bと、第1~第3スライダ66~68の第1~第3凸部66a、67a、68aとが係合するようになっている。この状態で調整部材64を回転軸B周りに回転させると、螺旋条64bによって第1~第3スライダ66~68に対して径方向の力が作用し、これにより、第1~第3スライダ66~68が第1~第3溝部65c、65d、65e内を長手方向に摺動する。つまり、第1~第3チャック爪61~63を径方向に移動させることができる。尚、螺旋条64bの代わりに螺旋溝を設けてもよく、回転軸B周りの回転運動を径方向の直線運動に変換できる機構であればよい。
【0072】
調整部材64の回転方向を変えることで、第1~第3チャック爪61~63の移動方向を変えることができる。第1~第3チャック爪61~63によって測定対象物Wを掴む場合には、第1~第3チャック爪61~63が互いに接近する方向に移動するように調整部材64を回転させればよく、これにより、例えば軸物の測定対象物Wを第1~第3チャック爪61~63によって掴むことができる。一方、第1~第3チャック爪61~63によって掴んだ測定対象物Wを外す場合には、調整部材64を反対方向に回転させて第1~第3チャック爪61~63を互いに離れる方向に移動させればよい。
【0073】
被締結部材69は、円盤状の部材であり、例えば止め輪81等によって保持部材65のボス部65bに取り付けることができる。被締結部材69がボス部65bに取り付けられた状態で、両者が一体化されて相対的な回転が阻止されている。被締結部材69の軸芯は、回転軸B上に位置している。被締結部材69は、回転ユニット5の回転体52の周壁部52bに挿入可能となるように、その外径が設定されている。
【0074】
図11及び
図12に示すように、締結部材80は、いわゆるナットであり、この実施形態では円環状の部材で構成されている。締結部材80の軸芯は回転軸B上に位置しており、締結部材80の中心部には、ボス部65bが挿入可能な中心孔80aが形成されている。
図11に示すように、締結部材80の左側には、円形の凹部80bが形成されている。凹部80bの内周面には、回転体53の周壁部52bのねじ山に螺合するねじ溝80cが形成されている。
【0075】
図10等に示すように、調整部材64の外径は、締結部材80の外径よりも大きくなっている。すなわち、一般的な使用状況で、測定対象物Wの着脱頻度と、チャック機構6の着脱頻度とを比較すると、測定対象物Wの着脱頻度の方が高い。測定対象物Wの着脱時に使用される調整部材64の方を大きくすることで、作業者による測定対象物Wの着脱時の操作性が向上する。言い換えると、使用頻度の低い締結部材80の外径を小さくしておくことで、測定対象物Wの着脱作業時に締結部材80が邪魔になり難い。
【0076】
尚、調整部材64の外径と締結部材80の外径とは同じであってもよいし、締結部材80の外径の方が大きくてもよい。
【0077】
(チャック機構の別形態)
チャック機構の構造は、測定対象物Wの形状や大きさ、構造に合わせて変更することができる。「構造」には、測定対象物Wが中空であるか、中実であるかが含まれる。
図13は、チャック機構の変形例を示す図である。この変形例のチャック機構600は中空の測定対象物Wを掴むチャック機構であり、チャック機構600を構成する部材は、
図10に示すチャック機構6と同じであるが、第1~第3チャック爪61~63の取付向きを径方向ついて反対にしている。これにより、第1~第3チャック爪61~63の先端を測定対象物Wの内側に入れた状態で、調整部材64によって第1~第3チャック爪61~63を互いに離間させる方向に移動させて中空の測定対象物Wを内側から掴むことができる。
図10に示すチャック機構6が中実の測定対象物Wを掴むチャック機構であり、
図13に示すチャック機構600が中空の測定対象物Wを掴む第2チャック機構である。図示しないが、中実の測定対象物Wを掴むチャック機構のチャック爪の数は4つ以上であってもよい。
【0078】
また、
図14に示すチャック機構700は、第1、第2チャック爪601、602を有しており、箱物の測定対象物Wを掴むチャック機構である。すなわち、保持部材65の案内板部65aには、径方向に延びる第1、第2溝部65f、65gが形成されている。第1、第2溝部65f、65gは、共に、回転軸Bを通り、かつ、回転軸Bに直交する同一直線上に位置するように形成されている。第1チャック爪601の第1スライダ606が第1溝部65fに挿入され、また、第2チャック爪602の第2スライダ607が第2溝部65gに挿入されている。第1、第2スライダ606、607は、調整部材64の螺旋条64b(
図12に示す)に係合する凸部(図示せず)を有しており、調整部材64を回転させることによって径方向に移動させることができる。
【0079】
第1、第2チャック爪601、602を互いに離間させることによって中空の測定対象物Wを掴むことができる。また、チャック機構700の第1、第2チャック爪601、602を互いに接近させることによって中実の測定対象物Wを掴むことができる。
【0080】
第1、第2チャック爪601、602は金属材で構成することができる。第1チャック爪601には、測定対象物Wとの接触面にゴム601aが固定され、また、第2チャック爪602には、測定対象物Wとの接触面にゴム602aが固定されている。ゴム601a、602aは、測定対象物Wの滑り止めとして機能するとともに、測定対象物Wに対する傷付き防止としても機能する。特に、第1、第2チャック爪601、602によって測定対象物Wを水平方向に掴む場合には、重力方向の支えがなくなってしまうが、ゴム601a、602aを設けておくことで測定対象物Wの脱落を抑制できる。また、ダイカスト製品や樹脂成型品などのように、型の抜き勾配が設定されている測定対象物Wを掴む場合に、ゴム601a、602aを設けておくことで、測定対象物Wを安定させることができる。
【0081】
第1チャック爪601に対するゴム601aの固定方法は、特に限定されるものではないが、例えば焼き付け(加硫接着)工法を挙げることができる。この工法を使用することで、ゴム601aが第1チャック爪601から剥がれにくくなる。第2チャック爪602に対するゴム602aの固定方法も同様にすることができる。
【0082】
図15に示すチャック機構800は、
図14に示すチャック機構700の第1、第2チャック爪601、602の取付向きを径方向について反対にしたものである。測定対象物Wの外径が小さい場合に、
図15に示すチャック機構800を使用することができる。
【0083】
(チャック機構の共通部)
図11に示すように、回転体52は筐体50側の部材である一方、チャック機構6については、チャック共通部と、チャック変更部とに分けることができる。チャック共通部とは、
図11に示すチャック機構6、
図13に示すチャック機構600、
図14に示すチャック機構700、
図15に示すチャック機構800の全てで共通な部分である。チャック共通部は回転体52に締結される部分を含んでおり、回転体52に締結される部分が共通であるということは、チャック機構6、600、700、800の全てを回転ユニット5側に変更を加えることなく、簡単に着脱できるということであり、利便性が向上する。
【0084】
一方、チャック変更部は、
図11に示すチャック機構6と、
図14に示すチャック機構700とで相違する部分である。チャック機構6とチャック機構700とでは、チャック爪の数が異なるとともに、案内板部65aの溝部の数も異なっている。
【0085】
(測定精度向上のためのソフトウェア処理)
回転ユニット5によって測定対象物Wを時計回りに回転させてある姿勢としたときの測定対象物Wの位置と、反時計回りに回転させて同じ姿勢としたときの測定対象物Wの位置とがずれることがあり、このずれをバックラッシュという。
【0086】
連続測定時には、測定対象物Wを決まった方向に回転させて測定するのでバックラッシュによる測定精度への影響は生じないが、測定設定時には、測定対象物Wを時計回り及び反時計回りに回転させることがあり、このように反対方向に回転させると、同じ回転角度ポジションでも測定対象物Wの位置がずれてしまい、バックラッシュが測定精度に悪影響を与えることがある。
【0087】
本実施形態では、ユーザが操作部14を操作して測定を開始させると、測定対象物Wを予め決定されている一方向に回転させて全要素を測定する。これにより、バックラッシュの影響が排除されて測定精度が向上する。一方向に回転させる角度は、例えば90゜程度に設定することができる。
【0088】
また、
図3に示す振れ補正部32は、チャック機構6に装着された測定対象物Wをモータ50により回転させながら撮像部15により撮像して生成された測定対象物画像に基づいて、測定対象物Wの振れによって生じる寸法誤差を補正する部分である。つまり、測定結果をソフト的に補正することができるので、芯出しを行わなくても、測定精度が向上する。
【0089】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、測定対象物Wを着脱する際には、ロック機構7のロック部材70をユーザが進出動作させてロック状態にすることで、ロック片70bが回転体52のロック孔52dに挿入され、回転体52の回転が筐体51に対して機械的に禁止される。このとき、チャック機構6の調整部材64は、回転体52よりも右側に位置していてロック機構7による回転規制がなされないので、調整部材64の回転は許容される。これにより、調整部材64を回転させて第1~第3チャック爪61~63を径方向に移動させることができるので、測定対象物Wを着脱することができる。
【0090】
ロック機構7がロック状態にあるときには、そのことが表示部16を介してユーザに報知されるので、ユーザが測定対象物Wを回転させる前にロック機構7を非ロック状態にすることができる。これにより、ユーザがロック状態であることを知らずに、あるいは忘れて、もしくは気付かずに測定対象物Wを回転させようとするのを防止できる。
【0091】
ロック機構7のロック部材70を後退させてロック機構7を非ロック状態にすると、ロック片70bが回転体52のロック孔52dから出て回転体52の回転が許容される。このときもチャック機構6の調整部材64の回転は許容される。これにより、
図1に示すように、チャック機構6で掴んだ測定対象物Wを撮像部15の光軸Aと交差する回転軸B周りに回転させ、測定対象物Wを所望の姿勢にして撮像部15で撮像できる。撮像部15で生成された測定対象物画像に基づいて各部の寸法が得られる。
【0092】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明に係る画像寸法測定装置は、測定対象物を回転させて測定する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 画像寸法測定装置
5 回転ユニット
6 チャック機構
7 ロック機構
12 ステージ
15 撮像部
16 表示部(報知部)
32 振れ補正部
51 筐体
50 モータ
50a 出力軸
52 回転体
52b 周壁部
52d ロック孔
55 手動調整ノブ
56 エンコーダ(回転量検知部)
57 処理回路
60 チャック本体
61~63 第1~第3チャック爪
64 調整部材
65c、65d、65e 第1~第3溝部
69 被締結部材(被締結部)
70 ロック部材
71 支持部材
72 ロック検出センサ(ロック状態検出部)
80 締結部材
A 撮像部の光軸
B 回転軸
W 測定対象物