(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】キットおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/44 20060101AFI20240318BHJP
C12Q 1/28 20060101ALI20240318BHJP
C12Q 1/60 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C12Q1/44
C12Q1/28
C12Q1/60
(21)【出願番号】P 2020096095
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康樹
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/44
C12Q 1/28
C12Q 1/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のsmall dense LDL以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)の分別に用いられるキットであって、
測定対象の前記リポタンパクCが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、HDL3コレステロール、レムナントコレステロールまたはapoE containing HDLコレステロールであり、
コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する
1または2以上の酵素、ならびに、測定対象の前記リポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む第1試薬組成物と、
測定対象の前記リポタンパクCを定量するための第2試薬組成物
であって、測定対象の前記リポタンパク質に作用する界面活性剤を第2試薬組成物の全組成に対して0.05%(w/v)以上8.0%(w/v)以下の濃度で含む前記第2試薬組成物と、
を含み、
前記第1試薬組成物において、
前記第1試薬組成物が前記コレステロールエステラーゼ活性を有する酵素を含むとき、前記第1試薬組成物の前記コレステロールエステラーゼ活性が10U/L以上10000U/L以下であり、
前記第1試薬組成物が前記コレステロールオキシダーゼ活性を有する酵素を含むとき、前記第1試薬組成物の前記コレステロールオキシダーゼ活性が100U/L以上3500U/L以下であり、
測定対象のリポタンパク質がHDLまたはHDL3であるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物およびポリオキシエチレンステアリルアミンからなる群から選択されるノニオン界面活性剤;アミドエーテルサルフェートおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムからなる群から選択されるニオン界面活性剤;ヤシ油脂肪酸-アミドプロピルジメチル-アミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチル-アミノ酢酸ベタインおよびラウリルベタインからなる群から選択される両性界面活性剤;ならびに、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択されるカチオン界面活性剤の1種または2種以上であり、
測定対象のリポタンパク質がLDLまたはapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン誘導体であり、
測定対象のリポタンパク質がレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、HLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体であり、
測定対象のリポタンパク質がHDL、LDLまたはレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤の濃度が、第1試薬組成物の全組成に対して0.2%(w/v)以上5%(w/v)以下であり、
測定対象のリポタンパク質がHDL3であるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤の濃度が、第1試薬組成物の全組成に対して0.05%(w/v)または0.2%(w/v)以上5%(w/v)以下であり、
測定対象のリポタンパク質がapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤の濃度が、第1試薬組成物の全組成に対して0.03(w/v)以上1.2%(w/v)以下であり、
前記第2試薬組成物において、
測定対象のリポタンパク質がHDLまたはapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコール(炭素数4~35)エーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレン多環フェニルエーテルからなる群から選択される1種または2種以上であり、
測定対象のリポタンパク質がLDLまたはレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン誘導体を含み、
測定対象のリポタンパク質がHDL3であるとき、測定対象のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルであり、
前記第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上3.50以下であり、
前記第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下であ
り、
前記第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、
前記第2試薬組成物が、前記条件1~3のうち、前記1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たす、キット。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む
【請求項2】
第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上3.00以下である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第1試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する
1または2以上の酵素を含む、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上2.50以下である、請求項1乃至
3いずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記第1試薬組成物が前記条件1を満たすとき、前記第1試薬組成物中の前記カップラーの濃度が0.5mM以上4mM以下であり、
前記第2試薬組成物が前記条件1を満たすとき、前記第2試薬組成物中の前記カップラーの濃度が1mM以上8mM以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
前記第1試薬組成物が前記条件2を満たすとき、前記第1試薬組成物中の前記鉄錯体の濃度が0.001~0.05mmol/Lであり、
前記第2試薬組成物が前記条件2を満たすとき、前記第2試薬組成物中の前記鉄錯体の濃度が0.0015mmol/L以上0.3mmol/L以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記第1試薬組成物が前記条件3を満たすとき、前記第1試薬組成物の前記コレステロールオキシダーゼ活性が400U/L以上3000U/L以下であり、
前記第2試薬組成物が前記条件3を満たすとき、前記第2試薬組成物の前記コレステロールオキシダーゼ活性が500U/L以上20000U/L以下である、請求項1乃至6いずれか1項に記載のキット。
【請求項8】
試料中のsmall dense LDL以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)を定量する方法であって、
測定対象の前記リポタンパクCが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、HDL3コレステロール、レムナントコレステロールまたはapoE containing HDLコレステロールであり、
コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する
1または2以上の酵素、ならびに、測定対象の前記リポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む第1試薬組成物を前記試料に作用させる工程と、
第1試薬組成物を前記試料に作用させる前記工程の後、測定対象の前記リポタンパクCを定量するための第2試薬組成物
であって、測定対象の前記リポタンパク質に作用する界面活性剤を第2試薬組成物の全組成に対して0.05%(w/v)以上8.0%(w/v)以下の濃度で含む前記第2試薬組成物を作用させることにより、残存するリポタンパク質中のコレステロールを定量する工程と、
を含み、
前記第1試薬組成物において、
前記第1試薬組成物が前記コレステロールエステラーゼ活性を有する酵素を含むとき、前記第1試薬組成物の前記コレステロールエステラーゼ活性が10U/L以上10000U/L以下であり、
前記第1試薬組成物が前記コレステロールオキシダーゼ活性を有する酵素を含むとき、前記第1試薬組成物の前記コレステロールオキシダーゼ活性が100U/L以上3500U/L以下であり、
測定対象のリポタンパク質がHDLまたはHDL3であるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物およびポリオキシエチレンステアリルアミンからなる群から選択されるノニオン界面活性剤;アミドエーテルサルフェートおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムからなる群から選択されるニオン界面活性剤;ヤシ油脂肪酸-アミドプロピルジメチル-アミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチル-アミノ酢酸ベタインおよびラウリルベタインからなる群から選択される両性界面活性剤;ならびに、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択されるカチオン界面活性剤の1種または2種以上であり、
測定対象のリポタンパク質がLDLまたはapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン誘導体であり、
測定対象のリポタンパク質がレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、HLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体であり、
測定対象のリポタンパク質がHDL、LDLまたはレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤の濃度が、第1試薬組成物の全組成に対して0.2%(w/v)以上5%(w/v)以下であり、
測定対象のリポタンパク質がHDL3であるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤の濃度が、第1試薬組成物の全組成に対して0.05%(w/v)または0.2%(w/v)以上5%(w/v)以下であり、
測定対象のリポタンパク質がapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤の濃度が、第1試薬組成物の全組成に対して0.03(w/v)以上1.2%(w/v)以下であり、
前記第2試薬組成物において、
測定対象のリポタンパク質がHDLまたはapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコール(炭素数4~35)エーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレン多環フェニルエーテルからなる群から選択される1種または2種以上であり、
測定対象のリポタンパク質がLDLまたはレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン誘導体を含み、
測定対象のリポタンパク質がHDL3であるとき、測定対象のリポタンパク質に作用する前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルであり、
前記第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上3.50以下であり、
前記第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下であ
り、
前記第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、
前記第2試薬組成物が、前記条件1~3のうち、前記1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たす、方法。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含む
【請求項9】
第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上3.00以下である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性
を有する
1または2以上の酵素を含む、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上2.50以下である、請求項
8乃至
10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1試薬組成物が前記条件1を満たすとき、前記第1試薬組成物中の前記カップラーの濃度が0.5mM以上4mM以下であり、
前記第2試薬組成物が前記条件1を満たすとき、前記第2試薬組成物中の前記カップラーの濃度が1mM以上8mM以下である、請求項8乃至11いずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1試薬組成物が前記条件2を満たすとき、前記第1試薬組成物中の前記鉄錯体の濃度が0.001~0.05mmol/Lであり、
前記第2試薬組成物が前記条件2を満たすとき、前記第2試薬組成物中の前記鉄錯体の濃度が0.0015mmol/L以上0.3mmol/L以下である、請求項8乃至12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1試薬組成物が前記条件3を満たすとき、前記第1試薬組成物の前記コレステロールオキシダーゼ活性が400U/L以上3000U/L以下であり、
前記第2試薬組成物が前記条件3を満たすとき、前記第2試薬組成物の前記コレステロールオキシダーゼ活性が500U/L以上20000U/L以下である、請求項8乃至13いずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは細胞の主要な構成成分の1つである。過剰なコレステロールは血管の内皮細胞下でマクロファージに取り込まれることにより泡沫細胞が形成され、動脈硬化の初期病変を呈することから臨床的に重要な成分である。コレステロールはリポタンパク質の形で血液中に運搬される。リポタンパク質には異なる機能を持ったVLDL(Very Low Density Lipoprotein)、HDL(High Density Lipoprotein)、LDL(Low Density Lipoprotein)などが存在する。また各種リポタンパク質はさらに亜分画に分類される。リポタンパク質亜分画として、HDLは粒子サイズが小さくより高密度なHDL3と粒子サイズが大きく低密度なHDL2に分類される。またHDLはアポリポタンパク質E(apoE)の含有率の違いからapoE containing HDLとapoE deficient HDLに分けることができる。VLDLには、通常のサイズに対し、リポプロテインリパーゼにより分解され、小型化したレムナントが存在する。
【0003】
これらの亜分画を含めたリポタンパク質中コレステロールは汎用の自動分析装置を用いて測定することができる。
具体的には、リポタンパク質中のコレステロールの測定技術として、特許文献1~5に記載のものがある。これらにおいては、リポタンパク質中のコレステロールの定量に際し、波長600~700nm程度の長波長側での吸光度測定が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第98/026090号
【文献】特開平10-038888号公報
【文献】国際公開第2012/011554号
【文献】特開2012-100581号公報
【文献】特開2013-215169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のリポタンパク質中のコレステロールの定量技術について本発明者らが検討したところ、高水準の測定精度を安定的に得るという点で、なお改善の余地があることがあきらかになった。
【0006】
本発明は、リポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)を高い精度で安定的に定量する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、波長600~700nm程度の領域における吸光度測定を用いるリポタンパクCの定量について、より微量の試料についても高い測定精度を得ることをめざして検討した。すると、定量に用いる試薬を保存した場合に試薬が劣化し、リポタンパクCの定量における波長域よりも短波長側にピークを有する吸収が生じて、かかる吸収の影響が高波長側にわたって観測される場合があることが新たな課題として見出された。そして、こうした吸収が生じると、リポタンパクCの定量時の吸光度に影響を及ぼすため、測定精度が低下する場合があることが明らかになった。また、短波長側の吸収ピークの出現の仕方は、たとえば測定に用いる試薬の成分や保存条件、保存日数により変化しうることがあわせて見出された。
【0008】
そこで、短波長領域で生じる吸収の影響を極力排除すべくさらに検討したところ、リポタンパクCの分別に用いる試薬組成物について、リポタンパクCの測定波長領域外の特定の波長において、加速試験後の吸光度の比を特定の範囲とすることにより、長波長側への吸収の影響を効果的に抑制し、高精度でのリポタンパクCの定量が可能となることを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明によれば、以下のキットおよび方法が提供される。
[1] 試料中のsmall dense LDL以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)の分別に用いられるキットであって、
コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する第1試薬組成物と、
測定対象の前記リポタンパクCを定量するための第2試薬組成物と、
を含み、
前記第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上3.50以下であり、
前記第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下である、キット。
[2] 第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上3.00以下である、[1]に記載のキット。
[3] 前記第1試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する、[1]または[2]に記載のキット。
[4] 前記第1試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、[1]乃至[3]いずれか1項に記載のキット。
[5] 第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上2.50以下である、[1]乃至[4]いずれか1項に記載のキット。
[6] 前記第2試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、[1]乃至[5]いずれか1項に記載のキット。
[7] 前記第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、
前記第2試薬組成物が、前記条件1~3のうち、前記1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たす、[1]乃至[6]いずれか1項に記載のキット。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する
[8] 測定対象の前記リポタンパクCが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、HDL3コレステロール、レムナントコレステロールまたはapoE containing HDLコレステロールである、[1]乃至[7]いずれか1項に記載のキット。
[9] 試料中のsmall dense LDL以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)を定量する方法であって、
コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する第1試薬組成物を前記試料に作用させる工程と、
第1試薬組成物を前記試料に作用させる前記工程の後、測定対象の前記リポタンパクCを定量するための第2試薬組成物を作用させることにより、残存するリポタンパク質中のコレステロールを定量する工程と、
を含み、
前記第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上3.50以下であり、
前記第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下である、方法。
[10] 第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上3.00以下である、[9]に記載の方法。
[11] 前記第1試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性をさらに有する、[9]または[10]に記載の方法。
[12] 前記第1試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、[9]乃至[11]いずれか1項に記載の方法。
[13] 第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上2.50以下である、[9]乃至[12]いずれか1項に記載の方法。
[14] 前記第2試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、[9]乃至[13]いずれか1項に記載の方法。
[15] 前記第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、
前記第2試薬組成物が、前記条件1~3のうち、前記1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たす、[9]乃至[14]いずれか1項に記載の方法。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する
[16]
測定対象の前記リポタンパクCが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、HDL3コレステロール、レムナントコレステロールまたはapoE containing HDLコレステロールである、[9]乃至[15]いずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リポタンパク質中のコレステロールを高い精度で安定的に定量する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図2】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図3】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図4】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図5】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図6】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図7】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図8】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図9】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図10】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【
図11】第1および第2試薬組成物の吸光度測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について説明する。本実施形態において、測定試薬等の組成物は、各成分を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。また、本明細書において、数値範囲の「x~y」は「x以上y以下」を表し、下限値xおよび上限値yをいずれも含む。
【0013】
はじめに、リポタンパク質およびリポタンパクCについて説明する。
リポタンパク質は大きくカイロミクロン(CM)、VLDL、LDLおよびHDLに分けられ、各リポタンパク質はさらに亜分画に分けられる。これらの分画および亜分画のいくつかは、粒子サイズまたは比重により区別できる。その粒子サイズの直径は、報告者により異なるがVLDLが30nm~80nm(30nm~75nm)であり、IDL(intermediate density lipoprotein)を含めたLDLが22nm~28nm(19nm~30nm)、HDLが直径7~12nm、HDL亜分画であるHDL3は直径7~8.5nm、HDL2の直径が8.5~10nmである。比重についてはVLDLが1.006以下であり、IDLが1.006~1.019、LDLが1.019~1.063、HDLが1.063~1.21、HDL2が1.063~1.125、HDL3が1.125-1.210である。粒子直径は、たとえばグラジエントゲル電気泳動(GGE)(JAMA, 260, p.1917-21, 1988)、NMR(HANDBOOK OF LIPOPROTEIN TESTING 2ndEdition、 Nader Rifai他編、AACC PRESS:The Fats of Life Summer 2002、LVDD 15 YEAR ANNIVERSARY ISSUE、Volume AVI No.3、p.15-16)により測定でき、比重はたとえば超遠心分離による分析(Atherosclerosis, 106, p.241-253, 1994: Atherosclerosis, 83, p.59, 1990)に基づいて決定できる。
HDLコレステロール(HDL-C)およびLDLコレステロール(LDL-C)は、たとえば自動分析装置にて測定できる。
【0014】
また、HDLはApoEの含量比率の違いからapoE containing HDLとapoE deficient HDLの亜分画に分類することができる。通常、apoE containing HDLはHDL中にApoEを含有したものを示し、apoE deficient HDLはApoEを含有しないものを示す。ApoEが存在するか又は含有量が多いHDLをapoE rich HDLと呼ぶことがあるが、これもApoE containing HDLに含まれる。HDL内部に存在するApoE含有量の分布は連続しているので、リポタンパク質中のApoE含有比により、明確にapoE containing HDLとapoE deficient HDLを区別できるものではないが、たとえば、apoE containing HDL-C を含めた総HDL-Cを測定できる13%PEG法(J Lipid Research 38, 1204-16: 1997)からapoE containing HDL-Cを測定せずにapoE deficient HDL-Cのみを測定できるリンタングステン酸-デキストラン硫酸-マグネシウム沈殿法(PT-DS-Mg法)(BIOCHEMICAL MEDICINE AND METABOLIC BIOLOGY 46, 329-343 (1991))を差し引くことによりapoE containing HDL-Cを定量することができる。また界面活性剤の濃度による反応性の違いを利用してapoE containing HDL-Cを自動分析装置にて測定できる(Ann Clin Biochem 56, 123-132 (2019))。
レムナントはメタボリックシンドロームなどで脂質代謝が滞った場合に発生する特殊リポタンパク質であり、CMやVLDLがリポプロテインリパーゼの働きにより分解された代謝産物である。レムナントは特定のサイズや比重により定義されないが、リポタンパク質中の構成アポタンパク質に対する抗体の固定化ゲルや、リン脂質分解酵素または界面活性剤等を用いて定量することができる。またコレステロールエステラーゼの分子量による反応性の違いを利用してレムナント-コレステロール(レムナント-C)を自動分析装置にて測定できる(J Applied Laboratory Medicine 3,26-36 , (2018))。
【0015】
本実施形態は、具体的には、small dense LDL(sdLDL-C)以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)の分別または測定に関する。sdLDLは、一般的にはLDL画分のうち直径が約22.0~約25.5nmの亜分画、または、比重1.040~1.063の亜分画を指す。sdLDLの比重をどの範囲にするかは、報告者により若干の違いがあり、別の報告では1.044~1.060に分画される(Atherosclerosis:106 241-253 1994)。
【0016】
本明細書において、sdLDLという場合、具体的には、LDLのうち比重が大きいものであって、臨床的に動脈硬化惹起性がそれ以外のLDLよりも大きいものをいう。また、sdLDLは、好ましくはLDLの比重範囲のうち中央点より高い比重範囲に属するもの、より好ましくは比重1.044~1.063の範囲に属するLDLをいう。
また、sdLDL以外のリポタンパク質という場合、具体的にはカイロミクロン、VLDL、IDL、比重1.044~1.063の範囲外に属するLDL、HDL、およびこれらの亜分画を指す。
【0017】
本実施形態において、測定対象のリポタンパクCは、たとえばLDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、HDL3コレステロール(HDL3-C)、レムナントコレステロール(レムナント-C)またはapoE containing HDLコレステロール(apoE containing HDL-C)である。
【0018】
(キット)
本実施形態において、キットは、試料中のsmall dense LDL(sdLDL-C)以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)の分別に用いられるものであり、以下の第1試薬組成物および第2試薬組成物を含む。
(第1試薬組成物)
第1試薬組成物は、コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する試薬組成物である。第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.9以上3.50以下である。
(第2試薬組成物)
第2試薬組成物は、測定対象のリポタンパクCを定量するための試薬組成物である。第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下である。
【0019】
本発明者らは、リポタンパクCの測定波長領域外の特定の波長において、第1および第2試薬組成物の加速試験後の吸光度の比を特定の範囲とすることにより、リポタンパクCの高精度での定量が可能となることを新たに見出した。具体的には、短波長側の吸収の存在の有無や程度の指標として、ABS400/ABS450の比R1が好適であることを見出した。R1を上限値以下とすることにより、リポタンパクCの測定波長域、たとえば波長600~700nmの領域よりも低波長側にピークを有する吸収の波長600~700nmの領域への緩衝を効果的に抑制することができるため、高精度でのリポタンパクCの定量が可能となる。
ここで、リポタンパクCの測定波長域自体において、緩衝の有無を判定するのは困難であったが、観測領域外の400nmmおよび450nmの吸光度を用いるとともに、第1および第2試薬組成物の加速試験後の吸光度比を指標とすることにより、低波長側にピークを有する吸収の存在や緩衝の影響を把握することができる。そして、R1が特定の範囲にある試薬組成物を用いることにより、測定精度を向上することができる。
【0020】
第1試薬組成物については、37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、リポタンパクCの測定精度を向上する観点から、3.50以下であり、好ましくは3.25以下、より好ましくは3.00以下、さらに好ましくは2.80以下、さらにより好ましくは2.60以下、よりいっそう好ましくは2.50以下である。
また、リポタンパクCを安定的に定量する観点から、第1試薬組成物のR1は、0.90以上であり、また、たとえば0.95以上、または1.00以上であってもよい。
【0021】
また、第2試薬組成物については、37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、リポタンパクCの測定精度を向上する観点から、9.00以下であり、好ましくは8.00以下、より好ましくは6.00以下、さらに好ましくは4.00以下、さらにより好ましくは3.00以下、よりいっそう好ましくは2.50以下、さらにまた好ましくは2.00以下である。
また、リポタンパクCを安定的に定量する観点から、第2試薬組成物のR1は、0.90以上であり、また、たとえば0.95以上、または1.00以上であってもよい。
【0022】
本実施形態においては、キットに含まれる第1および第2試薬組成物がいずれもR1について上述の条件を満たすため、リポタンパクCを精度良く測定することができる。
【0023】
第1試薬組成物について、37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、リポタンパクCの測定精度をより安定的に向上する観点から、ABS360/ABS400で表される比R2は、たとえば3.00以下であり、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.20以下、さらに好ましくは2.00以下、さらにより好ましくは1.68以下、よりいっそう好ましくは1.60以下である。
また、リポタンパクCをさらに安定的に定量する観点から、第1試薬組成物のR2は、たとえば0.90以上であってもよく、また、たとえば0.95以上、または1.00以上であってもよい。
【0024】
また、第2試薬組成物について、37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、リポタンパクCの測定精度をより安定的に向上する観点から、ABS360/ABS400で表される比R2は、たとえば3.00以下であり、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.70以下、さらにより好ましくは1.50以下である。
また、リポタンパクCをさらに安定的に定量する観点から、第2試薬組成物のR2は、たとえば0.90以上であってもよく、また、たとえば0.95以上、または1.00以上であってもよい。
【0025】
リポタンパクCの測定精度をさらに向上する観点から、より好ましくは第1および第2試薬組成物がいずれもR2について上述の条件を満たす。
【0026】
本実施形態において、キットは、リポタンパクCの分別または定量に用いられ、好ましくはリポタンパクCの分別および定量に用いられる。
また、キットは、具体的には2以上の工程を含むリポタンパクCの定量方法に用いられる。このとき、第1および第2試薬組成物は、それぞれ異なる工程に用いられ、好ましくは第1および第2試薬組成物の順に用いられる。
以下、各試薬組成物の構成をさらに具体的に説明する。
【0027】
(第1試薬組成物)
第1試薬組成物は、コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有し、好ましくはコレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性を有する。
第1試薬組成物は、上記1または2以上の活性を有する組成物であるため、試料に第1試薬組成物を添加したときに、たとえば、試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質を消去することができる。また、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールを反応系外に導くことができる。
【0028】
ここで、「界面活性剤が作用(反応)する」とは、界面活性剤がリポタンパク質を分解し、リポタンパク質中のコレステロールが遊離することをいう。たとえば、「測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用(反応)する界面活性剤」という場合、界面活性剤が測定対象のリポタンパク質に全く作用しないことは要求されず、主に測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用すればよい。「消去」とは、被検体試料中の物質を分解し、その分解物が次の工程において検出されないようにすることを意味する。すなわち、「測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールを消去する」とは、被検体試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質を分解し、その分解産物であるこれらリポタンパク質中のコレステロールがその後の工程で検出されないようにすることをいう。
【0029】
「反応系外に導く」とは、測定対象外のリポタンパク質に含まれるコレステロールが、測定対象のリポタンパクCの定量に影響を及ぼさないように、測定対象外のリポタンパク質に含まれるコレステロールを消去、凝集させたり、後の工程で反応しないよう阻害したりすることをいう。
【0030】
また、「コレステロールエステラーゼ活性を有する」とは、具体的には、コレステロールエステラーゼが存在し、ペルオキシダーゼコレステロールエステラーゼが触媒する反応が起こり得ることをいう。コレステロールオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性、カタラーゼ活性、ペルオキシダーゼ活性等の他の酵素活性についても同様である。
【0031】
次に、第1試薬組成物に含まれる成分をさらに具体的に説明する。
第1試薬組成物に含まれる成分の具体例として、酵素、酵素作用を有しないタンパク質、界面活性剤、緩衝液、塩、水素供与体、カップラー、鉄錯体が挙げられる。
【0032】
(酵素)
第1試薬組成物は、たとえばコレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する1または2以上の酵素を含む組成物であり、好ましくはコレステロールエステラーゼ活性を有する酵素およびコレステロールオキシダーゼ活性を有する酵素を含む。
また、第1試薬組成物は、たとえばコレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素を含む組成物であり、好ましくはコレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼを含む。
コレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼとして、たとえば細菌や菌類由来のものを用いることができる。
【0033】
第1試薬組成物のコレステロールエステラーゼ活性は、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールを安定的に反応系外に導く観点から、好ましくは10U/L以上であり、より好ましくは300U/L以上、さらに好ましくは600U/L以上であり、また、好ましくは10000U/L以下であり、より好ましくは2500U/mL以下、さらに好ましくは2000U/L以下である。
【0034】
同様の観点から、第1試薬組成物のコレステロールオキシダーゼ活性は、好ましくは100U/L以上であり、より好ましくは200U/L以上、さらに好ましくは300U/m以上であり、また、好ましくは3500U/L以下であり、より好ましくは3000U/L以下、さらに好ましくは2500U/L以下である。
【0035】
第1試薬組成物は、上記活性以外の活性を有してもよく、試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールをより安定的に反応系外に導く観点から、たとえば、カタラーゼ活性、ペルオキシダーゼ活性およびスフィンゴミエリナーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有し、好ましくはペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する。
【0036】
さらに具体的には、第1試薬組成物は、上記活性以外の活性を有する酵素を含んでもよい。たとえば、第1試薬組成物は、上記活性以外の活性を有する酵素をさらに含み、好ましくはカタラーゼ活性、ペルオキシダーゼ活性およびスフィンゴミエリナーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する酵素を含み、より好ましくはカタラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する酵素を含む。
また、第1試薬組成物は、たとえば、カタラーゼ、ペルオキシダーゼおよびスフィンゴミエリナーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素を含み、好ましくはカタラーゼおよびペルオキシダーゼの少なくとも1つを含む。
【0037】
第1試薬組成物のカタラーゼ活性は、試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールをより安定的に反応系外に導く観点から、好ましくは40U/mL以上であり、より好ましくは100U/mL以上であり、また、好ましくは2500U/mL以下であり、より好ましくは2000U/mL以下である。
第1試薬組成物がカタラーゼ活性を有するとき、測定対象のリポタンパクCがHDL-C、LDL-C、HDL3-C、レムナント-CまたはapoE containing HDL-Cであることも好ましい。
【0038】
第1試薬組成物のペルオキシダーゼ活性は、試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールをより安定的に反応系外に導く観点から、好ましくは400U/L以上であり、より好ましくは600U/L以上であり、また、好ましくは3000U/L以下であり、より好ましくは2000U/L以下である。
【0039】
第1試薬組成物のスフィンゴミエリナーゼ活性は、試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールをより安定的に反応系外に導く観点から、好ましくは100U/L以上であり、より好ましくは200U/L以上であり、また、好ましくは100000U/L以下であり、より好ましくは20000U/L以下である。
第1試薬組成物がスフィンゴミエリナーゼ活性を有するとき、測定対象のリポタンパクCがHDL3-Cまたはレムナント-Cであることも好ましい。
一方、測定対象のリポタンパク質がsdLDL以外のLDLであるとき、第1試薬組成物は好ましくはスフィンゴミエリナーゼ活性を有さない。
スフィンゴミエリナーゼの具体例として、SPC(旭化成社製)、Sphingomyelinase from bacillus cereus、Sphingomyelinase from staphylococcus aureus(SIGMA社製)が挙げられる。
【0040】
また、第1試薬組成物は、各種リポタンパク質に対する作用を好ましく調整する観点から、好ましくはリポタンパク質分解酵素を含んでもよい。
リポタンパク質分解酵素としては、たとえばリポプロテインリパーゼを用いることができる。リポプロテインリパーゼはリポタンパク質を分解する能力を有する酵素であれば限定されず、たとえば動物または微生物由来のリポプロテインリパーゼを用いることができる。
【0041】
第1試薬組成物がリポプロテインリパーゼを含むとき、第1試薬組成物のリポプロテインリパーゼ活性は、各種リポタンパク質に対する作用を好ましく調整する観点から、好ましくは100U/L以上であり、また、好ましくは10000U/L以下であり、より好ましくは5000U/L以下、さらに好ましくは1000U/L以下である。
【0042】
ここで、第1試薬組成物および後述の第2試薬組成物の酵素活性の測定方法を説明する。
本実施形態において、試薬組成物のコレステロールエステラーゼ活性、コレステロールオキシダーゼ活性、カタラーゼ活性、ペルオキシダーゼ活性、スフィンゴミエリナーゼ活性、リポプロテインリパーゼ活性は、それぞれ、たとえば以下の方法にて測定できる。
【0043】
コレステロールエステラーゼ活性の測定では、基質(0.04%リノレン酸コレステロール、1%TritonX100、0.6%コール酸ナトリウム溶液)、300U/mLコレステロールオキシダーゼ溶液、酵素希釈液(20mMリン酸緩衝液、0.5mM EDTA・2Na、2mM MgCl2、0.2% 牛血清アルブミン(BSA)、pH7.5)、反応液(0.06% 4-アミノアンチピリン、0.4% フェノール、7.5KU/L ペルオキシダーゼ)を用いる。反応液1.75mLと基質液1.0mLを混合後、37℃で5分加温し、0.1mLコレステロールオキシダーゼ溶液を加える。37℃、2分加温後に希釈液で希釈した測定対象0.1mLを加え、混合液を37℃で反応させ、波長500nmの吸光度変化量を測定する。37℃反応後、0分から3.5分までの吸光度変化量を測定し、コレステロールエステラーゼ活性を算出する。たとえば、吸光度変化量が8U/L以上あれば、測定対象はコレステロールエステラーゼ活性が存在するといえ、さらに具体的には、コレステロールエステラーゼが含まれているといえる。
【0044】
コレステロールオキシダーゼ活性の測定では、基質液として6mMコレステロール溶液(イソプロパノールに溶解)を用いる。測定対象を2~4U/mLとなるように希釈液(0.1M リン酸緩衝液、TritonX100、pH7.0)を加え、希釈後の溶液3mLを37℃5分加温後に基質液0.05mLを加える。その後、混合液を37℃で反応させ波長240nm吸光度変化量を測定する。37℃にて反応後、2分から7分までの吸光度変化量を測定し、コレステロールオキシダーゼ活性を算出する。たとえば、吸光度変化量が3U/L以上あれば、測定対象はコレステロールオキシダーゼ活性が存在するといえ、さらに具体的には、コレステロールオキシダーゼが含まれているといえる。
【0045】
カタラーゼ活性の測定では、基質(0.06% 過酸化水素、50mM リン酸緩衝液、pH7.0)を用いる。基質溶液2.9mLを25℃で予備加温後、測定対象0.1mLと混合し、240nmにおける吸光度変化量を測定する。25℃反応後、0分から3分までの吸光度変化量を測定しカタラーゼ活性を算出する。たとえば、吸光度変化量が100U/L以上あれば、測定対象はカタラーゼ活性が存在するといえ、さらに具体的には、カタラーゼが含まれているといえる。
【0046】
ペルオキシダーゼ活性の測定では、反応液1(1.5mM HDAOS、0.05% TritonX100、50mM リン酸緩衝液、pH7.0)、および、反応液2(5mM 4-アミノアンチピリン、0.05% TritonX100、1% 過酸化水素、50mMリン酸緩衝液、pH7.0)、希釈液(50mM リン酸緩衝液、pH7.0)を用いる。0.3mLの反応液1と希釈液で希釈した測定対象0.08mLを混合し、37℃で5分加温する。その後0.1mLの反応液2を加え、37℃で反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度変化量を測定する。37℃反応後、2分から5分までの吸光度変化量を測定しペルオキシダーゼ活性を算出する。たとえば、吸光度変化量が10U/L以上あれば、測定対象はペルオキシダーゼ活性が存在するといえ、さらに具体的には、ペルオキシダーゼが含まれているといえる。
【0047】
スフィンゴミエリナーゼ活性の測定では、反応液(0.008% スフィンゴミエリン、0.05% TritonX100溶液、10U/mL アルカリ性フォスファターゼ、10U/mL コレステロールオキシダーゼ、2U/mL ペルオキシダーゼ、0.02% 4-アミノアンチピリン、0.02% TODB混合液)、反応停止液(1% ドデシル硫酸ナトリウム溶液)、希釈液(10mM トリス緩衝液、0.1% TritonX100、pH8.0)を用いる。反応液0.08mLと希釈液で希釈した測定対象0.003mLを混合し37℃で5分加温後に反応停止液0.16mLを加える。反応停止後に主波長546nm、副波長700nmの吸光度変化量を測定し、スフィンゴミエリナーゼ活性を算出する。たとえば、吸光度変化量が2U/L以上あれば、測定対象はスフィンゴミエリナーゼ活性が存在するといえ、さらに具体的には、スフィンゴミエリナーゼが含まれているといえる。
【0048】
第1試薬組成物のリポプロテインリパーゼ活性は、たとえば以下の方法で測定される。すなわち、リポプロテインリパーゼ活性の測定では、基質液としてオリーブ油エマルジョン溶液(オリーブ油5g、エタノール2mLに5.0%TritonX100 5mLを加え20分間超音波処理し、その後4%BSA 25mL、0.1M リン酸緩衝液pH7.0 15mLを加え室温で1~2時間攪拌したもの)を用いる。37℃、5分間予備加温した基質液に、0.9~1.6U/mLとなるように希釈液(20mMリン酸緩衝液、2mM MgCl2、0.5mM EDTA-2Na、pH7.5)を加え、希釈した検体0.2mLを加え、37℃15分加温後に反応停止液(0.2Mトリクロル酢酸)2.0mLを加える。その後、濾過(東洋濾紙No. 131またはWhatman No. 42)を行い、濾液を回収する。濾液0.05mLに発色試薬(50mM MES-NaOH緩衝液200mL、5%TritonX100 4mL、N,N-dimethyl-m-toluidine 40μL、4アミノアンチピリン4mg、ATP・2Na・3H2O 24.2mg、MgCl2・6H2O 40.7mg、グリセロールキナーゼ 200U、Lαグリセロリン酸オキシダーゼ 500U、ペルオキシダーゼ 300U)3.0mLを加え、混合液を37℃で15分間反応させて、波長545nm吸光度を測定し、リポプロテインリパーゼ活性を算出する。たとえば、吸光度変化量が3U/L以上あれば、測定対象はリポプロテインリパーゼ活性が存在するといえ、さらに具体的には、リポプロテインリパーゼが含まれているといえる。
【0049】
また、第1および第2試薬組成物中の酵素は以下の方法でも同定できる。すなわち、まず、標的酵素を含む試料をトリプシンで分解することにより得られた断片ペプチドをハイブリッド型質量分析計で検出する。質量分析計により得られたペプチドの質量、および質量分析計内でアルゴンガスと衝突させることにより得られたフラグメントイオンのスペクトル(MS/MSデータ)をデータベース検索(たとえば、Mascotサーチ)することによりタンパク質を同定することができる。試薬組成物中のアミノ酸配列由来の断片ペプチドの配列がデータベースに登録されているアミノ酸配列とユニークな配列として一致する場合、対象酵素を含んでいるとみなせる。
【0050】
また、第1および第2試薬組成物中の酵素はたとえば以下の定量でも同定できる。すなわち、標的酵素をトリプシンで分解することにより得られる断片ペプチドのうち標的酵素に特異的で、かつ質量分析において強いシグナルが得られるペプチドを定量対象ペプチドとして選択する。定量対象ペプチドについて、非標識のペプチドおよび内部標準としての安定同位体で標識したペプチドを化学合成によって作製する。標的酵素を含む試料をトリプシンによって完全に消化し、既知量の安定同位体標識ペプチドを添加して、HPLCに接続した三連四重極型質量分析計(LC-MS/MS)によりMRMモード(多重反応モニタリングモード)で測定する。定量対象ペプチドの非標識ペプチドと既知量の安定同位体標識ペプチドの混合液を同様に測定して内部標準の濃度比とピーク面積比の検量線を作成し、試料中の定量対象ペプチドの絶対量を計算することにより標的酵素を定量することができる。
【0051】
(酵素作用を有しないタンパク質)
酵素作用を有しないタンパク質の具体例として、BSA等のアルブミンが挙げられる。
第1試薬組成物中のBSA濃度は、第1試薬組成物中の酵素を安定化させる観点、および、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中コレステロールを反応系外に導く観点から、第1試薬組成物の全組成に対して、好ましくは1g/L以上であり、より好ましくは2g/L以上であり、また、好ましくは20g/L以下であり、より好ましくは10g/L以下である。
第1試薬組成物がBSAを含むとき、測定対象のリポタンパクCがLDL-C、HDL3-C、レムナント-CまたはapoE containing HDL-Cであることも好ましい。
【0052】
(界面活性剤)
第1試薬組成物は、試料中の測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールをより安定的に反応系外に導く観点から、好ましくは界面活性剤を含む。界面活性剤は、具体的には、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上であり、好ましくはノニオン界面活性剤であり、より好ましくはポリオキシエチレン誘導体である。
【0053】
界面活性剤として、たとえば測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤が挙げられ、より好ましくは測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用するとともに測定対象のリポタンパク質に作用しない界面活性剤が挙げられる。また、第1試薬組成物は、測定対象のリポタンパク質を安定的に分別する観点から、好ましくは測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含み、より好ましくは測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用するとともに測定対象のリポタンパク質に作用しない界面活性剤を含む。
【0054】
たとえば、測定対象のリポタンパク質がHDLまたはHDL3であるとき、第1試薬組成物中の界面活性剤は、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のノニオン界面活性剤;アミドエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;ヤシ油脂肪酸-アミドプロピルジメチル-アミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチル-アミノ酢酸ベタイン、ラウリルベタイン等の両性界面活性剤;ならびに、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上とすることができる。
【0055】
測定対象のリポタンパク質がHDLまたはHDL3であるとき、第1試薬組成物中の界面活性剤の市販品の具体例として、ノニオン界面活性剤については、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートであるノニオンOT-221(日油社製)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物であるプルロニックF68(アデカ社製)、プルロニックF88(アデカ社製)、プルロニックF127(アデカ社製)、プルロニックP103(アデカ社製)、プルロニックP123(アデカ社製)、ポリオキシエチレンステアリルアミンであるナイミーンS210(日油社製)、エマルゲンA500(花王社製)が挙げられ;
アニオン界面活性剤の具体例として、アミドエーテルサルフェートであるサンアミドCF-10(日油社製)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムであるレベノールWX(花王社製)が挙げられ;
両性界面活性剤の具体例として、ヤシ油脂肪酸-アミドプロピルジメチル-アミノ酢酸ベタインであるニッサンアノン(登録商標)BDF-SF(日油社製)、アルキルジメチル-アミノ酢酸ベタインであるニッサンアノン(登録商標)BF(日油社製)、ラウリルベタインであるアンヒトール24B(花王社製)が挙げられ;
カチオン界面活性剤の具体例として、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドであるコータミン24P(花王社製)が挙げられる。
【0056】
測定対象のリポタンパク質がLDLまたはapoE containing HDLであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤として、ノニオン界面活性剤が挙げられ、さらに具体的には、ポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。ポリオキシエチレン誘導体の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレン多環フェニルエーテルからなる群から選択される1または2以上のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0057】
このうち、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルの好ましい例として、ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体やポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル誘導体、特殊フェノールエトキシレートが挙げられる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルの具体例として、エマルゲンA-60、エマルゲンA-500、エマルゲンB-66、エマルゲンA-90(以上、花王社製)、ニューコール703、ニューコール704、ニューコール706、ニューコール707、ニューコール708、ニューコール709、ニューコール710、ニューコール711、ニューコール712、ニューコール714、ニューコール719、ニューコール723、ニューコール729、ニューコール733、ニューコール740、ニューコール747、ニューコール780、ニューコール610、ニューコール2604、ニューコール2607、ニューコール2609、ニューコール2614(以上、日本乳化剤社製)、ノイゲンEA-87、ノイゲンEA-137、ノイゲンEA-157、ノイゲンEA-167、ノイゲンEA-177、ノイゲンEA-197D、ノイゲンEA-207D(以上、第一工業製薬社製)、ブラウノンDSP-9、ブラウノンDSP-12.5、ブラウノンTSP-7.5、ブラウノンTSP-16、ブラウノンTSP-50(以上、青木油脂社製)等が挙げられる。
【0058】
また、測定対象のリポタンパク質がレムナントであるとき、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤として、HLB値が11以上13以下のポリオキシエチレン誘導体が挙げられ、さらに具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレン多環フェニルエーテルからなる群から選択される界面活性剤のうち、所望のHLB値を有するものが挙げられる。かかる界面活性剤の市販品の例として、エマルゲンA-60、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲン909(以上、花王社製)、ブラウノンDSP-9、ブラウノンDSP-12.5(以上、青木油脂社製)が挙げられる。
【0059】
第1試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、第1試薬組成物の全組成に対して、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に安定的に作用させる観点から、好ましくは0.2%(w/v)以上であり、より好ましくは0.3%(w/v)以上、さらに好ましくは0.5%(w/v)以上であり、また、好ましくは5%(w/v)以下であり、より好ましくは3%(w/v)以下である。
【0060】
また、測定対象のリポタンパク質がapoE containing HDLであるとき、同様の観点から、第1試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、第1試薬組成物の全組成に対して好ましくは0.03%(w/v)以上であり、より好ましくは0.05%(w/v)以上であり、また、好ましくは1.2%(w/v)以下であり、より好ましくは1.0%(w/v)以下である。
【0061】
なお、第1および第2試薬組成物に含まれる界面活性剤は、IR、NMR、LC-MS等を組み合わせて解析する方法によって同定できる。界面活性剤のイオン性(非イオン性、陰イオン性、陽イオン性)を確認する方法としては、酸性またはアルカリ性条件での有機溶媒による抽出法、固相抽出法が挙げられる。界面活性剤の構造を決定する方法としてはLC-MSMS、NMRを用いて解析する方法が挙げられる。
【0062】
(緩衝液、塩)
緩衝液の種類は、たとえば第1試薬組成物に含まれる酵素の種類によって適宜選択することができる。緩衝液の具体例として、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、PIPES(ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸))緩衝液、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)緩衝液が挙げられる。
【0063】
第1試薬組成物における緩衝液の濃度は、組成物中の酵素活性を保持する観点、および、試薬の保存安定性向上の観点から、好ましくは1mM以上であり、より好ましくは5mM以上、さらに好ましくは10mM以上であり、また、好ましくは300mM以下であり、好ましくは200mM以下、さらに好ましくは150mM以下、さらにより好ましくは100mM以下である。
【0064】
塩は、具体的には、pH調整剤、または、イオン強度調整剤として配合される。塩の具体例として、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム塩;水酸化カリウム等のカリウム塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩等の塩基性物質が挙げられる。また、第1試薬組成物が1価の陽イオンおよび2価の陽イオンの少なくとも1つまたはそれらの塩を含むことにより、sdLDL以外のLDLの測定におけるLDLの分別、たとえばsdLDLとL LDLの分別がさらに容易となる。
第1試薬組成物中の塩濃度は、pH調整剤、または、イオン強度調整剤としてより安定的に作用させる観点から、第1試薬組成物の全組成に対して、好ましくは0.2g/L以上であり、より好ましくは0.5g/L以上であり、また、好ましくは5g/L以下であり、より好ましくは3g/L以下である。
【0065】
また、第1試薬組成物がスフィンゴミエリナーゼ活性を有するとき、第1工程において、測定対象リポタンパク質とそれ以外のリポタンパク質に対するスフィンゴミエリナーゼの触媒活性を調整するためにポリアニオンを添加することもできる。
添加するポリアニオンとしてはヘパリン、リンタングステン酸、デキストラン硫酸などを好適に用いることができる。
第1試薬組成物中のポリアニオンの濃度は、ヘパリンの場合好ましくは10~250U/mLであり、リンタングステン酸の場合は好ましくは0.02~1.25%(w/v)であり、デキストラン硫酸の場合は好ましくは0.02~1.25%(w/v)である。
【0066】
第1試薬組成物のpHは、組成物中の酵素活性を保持する観点、および、試薬の保存安定性向上の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上であり、また、好ましくは8以下であり、より好ましくは7.5以下である。
【0067】
(水素供与体、カップラー)
第1試薬組成物は、好ましくは水素供与体およびカップラーのいずれか一方を含む。水素供与体およびカップラーは、たとえばペルオキシダーゼ活性の存在下でカップリング反応する組み合わせで用いられる。また、水素供与体およびカップラーのいずれか一方は、第1工程で測定対象以外のリポタンパクCを反応系外に導くために使用される。さらに具体的には、測定対象以外のリポタンパクCにコレステロールエステラーゼやコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素をペルオキシダーゼ活性の存在下で無色キノンに転化させるために、水素供与体かカップラーのいずれか一方が用いられる。
【0068】
水素供与体の具体例として、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOPS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-(3-スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシ-5-アニリン(HMMPS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン(FDAOS)、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N'-サクシニルエチレンジアミン(EMSE)等のアニリン誘導体が挙げられる。
【0069】
第1試薬組成物中の水素供与体の濃度は、測定対象以外のリポタンパクCを反応系外に導く観点から、好ましくは1mmol/L以上であり、より好ましくは1.5mmol/L以上であり、また、好ましくは5mmol/L以下であり、より好ましくは3mmol/L以下である。
【0070】
また、水素供与体が後述の第2試薬組成物に含まれるとき、好ましくはカップリング反応に用いるカップラーを第1試薬組成物中は含む。
カップラーは、具体的には、4-アミノアンチピリン、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾンおよびスルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0071】
第1試薬組成物中のカップラーの濃度は、測定対象以外のリポタンパクCを反応系外に導く観点から、好ましくは0.5mM以上であり、より好ましくは1.0mM以上であり、また、好ましくは4mM以下であり、より好ましくは3mM以下である。
【0072】
(鉄錯体)
鉄錯体として、たとえば第2の試薬組成物について後述するものが挙げられる。鉄錯体の濃度としては0.001~0.05mmol/Lが好ましい。
【0073】
第1試薬組成物は、たとえばコレステロールエステラーゼやコレステロールオキシダーゼ等のコレステロールを分解する酵素、水素供与体またはカップラーのいずれか一方、ならびに、過酸化水素を消去するカタラーゼ等を含む構成とすることができる。
【0074】
(第2試薬組成物)
第2試薬組成物は、測定対象のリポタンパクCを定量するための試薬である。第2試薬組成物の成分は、第1試薬組成物の構成によって異なるが、測定対象のリポタンパクCを定量できる配合組成であればよく、公知の物質を用いることができる。
【0075】
第2試薬組成物の成分としては、たとえば、酵素、界面活性剤、酵素作用を有しないタンパク質、緩衝液、塩、カップラー、水素供与体、鉄錯体、カタラーゼ阻害剤が挙げられる。
【0076】
(酵素)
第2試薬組成物は、たとえばペルオキシダーゼ活性を有する。また、第2試薬組成物は、たとえばペルオキシダーゼ活性を有する酵素を含み、さらに具体的にはペルオキシダーゼを含む。
第2試薬組成物のペルオキシダーゼ活性は、測定対象のリポタンパクCを正確に測定する観点から、好ましくは500U/L以上、より好ましくは1000U/L以上であり、また、好ましくは20000U/L以下、より好ましくは10000U/L以下である。
ただし、第1試薬組成がペルオキシダーゼ活性を有するときは、測定対象のリポタンパクCの測定工程(後述の第2工程)にもペルオキシダーゼ活性が持ち越されるため、第2試薬中の濃度を減量する、あるいは含まなくすることもできる。
(界面活性剤)
【0077】
界面活性剤は、測定対象のリポタンパク質に応じて適宜選択することができる。
界面活性剤として、たとえば測定対象のリポタンパク質に作用する界面活性剤が挙げられる。また、第2試薬組成物は、リポタンパクCを安定的に定量する観点から、好ましくは測定対象のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む。
測定対象のリポタンパク質に作用する界面活性剤は、測定対象のリポタンパク質のみに作用する界面活性剤等の測定対象のリポタンパク質に選択的に作用する界面活性剤であってもよいし、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質にも作用する界面活性剤またはすべてのリポタンパク質に作用する界面活性剤であってもよい。
測定対象のリポタンパクCの測定工程において、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質が残存するとき、第2試薬組成物は、好ましくは測定対象のリポタンパク質に選択的に作用する界面活性剤を含む。
【0078】
たとえば、測定対象のリポタンパク質がHDLまたはapoE containing HDLであるとき、界面活性剤は、たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコール(炭素数4~35)エーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレン多環フェニルエーテルからなる群から選択される1種または2種以上である。
【0079】
測定対象のリポタンパク質がLDLまたはレムナントであるとき、界面活性剤は、たとえば、ポリオキシエチレン誘導体を含み、また、市販の総コレステロール測定用試薬等に用いられている界面活性剤を使用することができる。かかる界面活性剤として、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(たとえばエマルゲン909(花王社製)、TritonX100)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(たとえばエマルゲン707、エマルゲン709(以上、花王社製))、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体またはその誘導体(たとえば、プルロニック17R-4、プルロニックL-64、プルロニックPE3100、プルロニックP-85、プルロニックF-88、プルロニックP-103、プルロニックF-127等のプルロニック(登録商標)系界面活性剤(BASF社、ADEKA社))、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル(たとえば、エマルゲンB66、エマルゲンA90、エマルゲンA60(以上、花王社製))からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0080】
測定対象のリポタンパク質がHDL3であるとき、界面活性剤は、好ましくはHDL2に対してHDL3に選択的に作用するものであり、たとえば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル(たとえば、ニューコール610、ニューコール710(日本乳化剤社製)、アデカトールPC-10、ブラウノンDSP-12.5、ブラウノンTSP-16(青木油脂社製)、ノイゲンEA-137(第一工業製薬社製))である。
【0081】
第2試薬組成物中の界面活性剤の濃度は、第2試薬組成物の全組成に対して、測定対象のリポタンパクCに安定的に作用させる観点から、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%(w/v)以上、さらに好ましくは0.5%(w/v)以上であり、また、好ましくは8.0%(w/v)以下であり、より好ましくは5.0%(w/v)以下である。
【0082】
(酵素作用を有しないタンパク質、緩衝液、塩)
酵素作用を有しないタンパク質、緩衝液および塩の種類は、たとえば第2試薬組成物に含まれる酵素の種類によって適宜選択することができる。これらについての具体的な構成として、たとえば、第1試薬組成物について前述したものが挙げられる。
【0083】
(カップラー、水素供与体)
カップラーおよび水素供与体についての具体的な構成として、たとえば、第1試薬組成物について前述したものが挙げられる。
第2試薬組成物中の水素供与体の濃度は、リポタンパクCの測定をより安定的におこなう観点から、好ましくは1mmol/L以上であり、より好ましくは1.5mmol/L以上であり、また、好ましくは10mmol/L以下であり、より好ましくは8mmol/L以下である。
第2試薬組成物中のカップラーの濃度は、リポタンパクCの測定をより安定的におこなう観点から、好ましくは1mM以上であり、より好ましくは2mM以上であり、また、好ましくは8mM以下であり、より好ましくは5mM以下である。
【0084】
(鉄錯体)
鉄錯体としては、たとえば、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化ナトリウム、ポルフィリン鉄錯体、EDTA-鉄錯体が挙げられる。
第2試薬組成物中の鉄錯体の濃度は、第2試薬組成物の全組成に対して、好ましくは0.0015mmol/L以上であり、また、好ましくは0.3mmol/L以下であり、また、たとえば0.05mmol/L以下であってもよい。
【0085】
(カタラーゼ阻害剤)
第1試薬組成物がカタラーゼ活性を有するとき、リポタンパクCの測定をより安定的におこなう観点から、第2試薬組成物は、好ましくはカタラーゼ阻害剤を含む。カタラーゼ阻害剤の具体例として、アジ化ナトリウムが挙げられる。
第2試薬組成物中のアジ化ナトリウムの濃度は、リポタンパクCの測定をより安定的におこなう観点から、好ましくは0.01%(w/v)以上であり、より好ましくは0.02%(w/v)以上であり、また、好ましくは0.2%(w/v)以下であり、より好ましくは0.1%(w/v)以下である。
【0086】
次に、キットとしての好ましい構成例をさらに挙げる。
キットにおいては、リポタンパクCの定量をさらに安定的におこなう観点から、好ましくは、第1試薬組成物が、水素供与体およびカップラーのいずれか一方を含み他方を含まず、第2試薬組成物が、水素供与体およびカップラーの上記一方を含まず他方を含む。すなわち、カップラーと水素供与体とを、別々の試薬組成物中に分離して存在させることが好ましい。
また、キットにおいて、第1または第2試薬組成物中に、カップラーと水素供与体とが共存していないことも好ましい。
【0087】
また、キットにおいて、第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、第2試薬組成物が、以下の条件1~3のうち、第1試薬組成物が満たす1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たすことが好ましい。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する
【0088】
リポタンパクCの定量においては、たとえば水素供与体とカップラーをペルオキシダーゼ活性の存在下でカップリング反応させ、生成した色素により特定波長の吸光度を測定する。このとき、反応促進剤として鉄錯体を使用することができるが、カップラーとペルオキシダーゼ活性、鉄錯体が同一試薬中に存在すると、試薬が徐々に自然発色し、リポタンパクCの定量に影響をおよぼす場合があった。この点、第1および第2試薬組成物を上述の構成とすることにより、第1または第2試薬組成物中にカップラー、ペルオキシダーゼ活性および鉄錯体が共存しないようにすることができるため、試薬組成物の自然発色を抑制することができる。このため、リポタンパクCの定量をさらに安定的におこなうことができる。
【0089】
リポタンパクCをより安定的に定量する観点から、より好ましくは第1試薬組成物が条件1および条件3を満たすとともに、第2試薬組成物が条件2を満たす。
【0090】
(方法)
本実施形態における方法は、前述の第1および第2試薬組成物を用いて試料中のリポタンパクCを定量する方法であり、具体的にはsdLDL以外のリポタンパクCを定量する方法である。本実施形態における定量方法は、以下の第1工程および第2工程を含む。
(第1工程)前述の第1試薬組成物を試料に作用させる工程
(第2工程)第1工程の後、前述の第2試薬組成物を作用させることにより、残存するリポタンパク質中のコレステロールを定量する工程
第1および第2試薬組成物の構成は前述のとおりである。
かかる方法においては、吸光度の比R1が前述の条件を満たす第1および第2試薬組成物を用いることにより、測定対象のリポタンパクCを高い精度で安定的に定量することができる。
【0091】
また、リポタンパクCの定量方法は、たとえば試料(被検体試料)に第1試薬組成物を添加し反応させ、次いで第2試薬組成物を添加し反応させ、吸光度を測定することによりおこなえばよい。
被検体試料は、たとえば血清または血漿等の血液由来試料であり、好ましくは血清である。
【0092】
第1および第2工程は、通常、自動分析装置内でおこなわれる。
自動分析装置として、たとえば、TBA-120FR、TBA-200FR(以上、東芝社製)、JCA-BM1250、JCA-BM1650、JCA-BM2250(以上、日本電子社製)、HITACHI7180、HITACHI7170(以上、日立社製)、AU2700、AU5800、AU680(以上、OLYMPUS社製)、cobas c501、cobas c701(以上、Roche社製)が挙げられる。
【0093】
試料の量、各試薬組成物の量は、たとえば各試薬組成物中の試薬の濃度等を考慮して適宜決定できるが、自動分析装置に適用可能な範囲で行う。たとえば、被検体試料1~10μL、第1試薬50~300μL、第2試薬25~200μLを用いればよい。
【0094】
本実施形態において、各工程における、反応温度は2℃~45℃でおこなうことが好ましく、25℃~40℃でおこなうことがより好ましい。
反応時間は各工程とも1~10分間でおこなうことが好ましく、3~7分でおこなうことがさらに好ましい。
以下、各工程をさらに具体的に説明する。
【0095】
(第1工程)
第1工程では、試料に第1試薬組成物を作用させる。これにより、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質を消去し、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールを遊離させて反応系外に導く。
さらに具体的には、第1工程では、好ましくは測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を、コレステロールエステラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性の存在下で試料に作用させる。そして、リポタンパク質からの遊離により生じたコレステロールをたとえばコレステロールオキシダーゼ等のコレステロールと反応する酵素と反応させて反応系外へ導く。第1工程においては、たとえば、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロールを消去し反応系外に導く、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質のコレステロールを凝集させたり、後の工程で反応しないよう阻害したりする等の公知の技術を用いることができる。
【0096】
第1工程において、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質から生じたコレステロールを消去し反応系外に導く工程は、好ましくは以下のいずれかの方法でおこなうことができる。
(1)コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性により、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質の中コレステロールから過酸化水素を生成し、カタラーゼ活性の存在下で過酸化水素を水と酸素に分解させる方法
(2)コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性により生じた過酸化水素、ならびにカップラーもしくは水素供与体の存在下で無色キノンを形成させる方法
(3)カタラーゼ活性の存在下で過酸化水素を分解させ、かつ同時にカップラーまたは水素供与体の存在下で無色キノンを形成させる方法
【0097】
上記(1)または(2)の方法では、コレステロールにコレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼを作用させて過酸化水素を発生させ、発生した過酸化水素は消去される。
【0098】
上記の方法において、第1試薬組成物は、コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有するとともに、たとえば以下の構成とする。
上記(1)の方法とする場合、第1試薬組成物はカタラーゼ活性をさらに有する。
上記(2)の方法とする場合、第1試薬組成物が少なくともカップラーおよび水素供与体の一方を含むとともに、第1試薬組成物がペルオキシダーゼ活性をさらに有する。
上記(3)の方法とする場合、第1試薬組成物がカタラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性を有するとともに、第1試薬組成物がカップラーもしくは水素供与体を含む。
【0099】
第1工程では、測定対象外のリポタンパク質中のコレステロールを反応系外へ導くことにより、その後の工程においては、反応液中に好ましくはリポタンパク質として測定対象のリポタンパク質が選択的に、より好ましくは測定対象のリポタンパク質のみを残存させることができる。このように測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質を消去し、反応系外へ導き、その後の工程で測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク質のコレステロールを検出できないようにすることを、「測定対象とそれ以外のリポタンパク質を差別化する」ということがある。
また、第1工程では、測定対象のリポタンパク質以外のリポタンパク中のコレステロールが完全に消去されていなくてもよいが、その場合は、好ましくは第2工程において、測定対象のリポタンパクCが選択的に測定されるような界面活性剤を用いるとよい。
【0100】
(第2工程)
第2工程では、第1工程を経て残存したリポタンパクCを定量する。第2工程には、リポタンパク質の種類に応じて、従来から用いられているリポタンパクCの定量方法を用いることができる。
たとえば、凝集剤を添加して形成された特異的凝集物の含有量を比濁測定によって定量する方法、特異的な抗体による抗原抗体反応を用いる方法、酵素を用い分解生成物を定量する方法等がある。これらのうち、酵素を用い分解生成物を定量する方法が好ましい。
酵素を用い分解生成物を定量する方法においては、第1工程後の反応液に、たとえば、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼおよびペルオキシダーゼからなる群から選択される1または2以上のコレステロール測定用酵素を含む第2試薬組成物を加えてリポタンパクCを遊離、分解し、その反応生成物を定量する。
また、第2工程において、界面活性剤を含む第2試薬組成物を用いることも好ましい。
【0101】
リポタンパクCの定量は、たとえば580~720nmの波長域、好ましくは600~700nmの波長域の吸光度測定によりおこなう。
【0102】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 試料中のsmall dense LDL以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)の分別に用いられるキットであって、
コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する第1試薬組成物と、
測定対象の前記リポタンパクCを定量するための第2試薬組成物と、
を含み、
前記第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上3.50以下であり、
前記第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下である、キット。
2. 第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上3.00以下である、1.に記載のキット。
3. 前記第1試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する、1.または2.に記載のキット。
4. 前記第1試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、1.乃至3.いずれか1つに記載のキット。
5. 第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上2.50以下である、1.乃至4.いずれか1つに記載のキット。
6. 前記第2試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、1.乃至5.いずれか1つに記載のキット。
7. 前記第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、
前記第2試薬組成物が、前記条件1~3のうち、前記1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たす、1.乃至6.いずれか1つに記載のキット。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する
8. 測定対象の前記リポタンパクCが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、HDL3コレステロール、レムナントコレステロールまたはapoE containing HDLコレステロールである、1.乃至7.いずれか1つに記載のキット。
9. 試料中のsmall dense LDL以外のリポタンパク質中のコレステロール(リポタンパクC)を定量する方法であって、
コレステロールエステラーゼ活性およびコレステロールオキシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性を有する第1試薬組成物を前記試料に作用させる工程と、
第1試薬組成物を前記試料に作用させる前記工程の後、測定対象の前記リポタンパクCを定量するための第2試薬組成物を作用させることにより、残存するリポタンパク質中のコレステロールを定量する工程と、
を含み、
前記第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上3.50以下であり、
前記第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の吸収スペクトルにおいて、波長400nmにおける吸光度をABS400とし、450nmにおける吸光度をABS450としたとき、ABS400/ABS450で表される比R1が、0.90以上9.00以下である、方法。
10. 第1試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上3.00以下である、9.に記載の方法。
11. 前記第1試薬組成物が、ペルオキシダーゼ活性およびカタラーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性をさらに有する、9.または10.に記載の方法。
12. 前記第1試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、9.乃至11.いずれか1つに記載の方法。
13. 第2試薬組成物を37℃にて2週間保存した後の前記吸収スペクトルにおいて、波長360nmにおける吸光度をABS360としたとき、ABS360/ABS400で表される比R2が、0.90以上2.50以下である、9.乃至12.いずれか1つに記載の方法。
14. 前記第2試薬組成物が、測定対象の前記リポタンパク質に作用する界面活性剤を含む、9.乃至13.いずれか1つに記載の方法。
15. 前記第1試薬組成物が、以下の条件1~3の1つまたは2つの条件を満たすとともに、
前記第2試薬組成物が、前記条件1~3のうち、前記1つまたは2つの条件は満たさず、他のすべての条件を満たす、9.乃至14.いずれか1つに記載の方法。
条件1:カップラーを含む
条件2:鉄錯体を含む
条件3:ペルオキシダーゼ活性を有する
16. 測定対象の前記リポタンパクCが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、HDL3コレステロール、レムナントコレステロールまたはapoE containing HDLコレステロールである、9.乃至15.いずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0103】
以下の各例において、吸収スペクトルの測定には、HITACHI社製のU-3900を用いた。
【0104】
まず、試薬組成物に用いた成分を説明する。
以下の例において、測定対象のリポタンパクCの種類に応じて、各試薬組成物の基本配合を以下とした。
【0105】
(HDL-C)
第1試薬組成物
BES緩衝液,pH7.0 100mM
コレステロールエステラーゼ 800U/L
コレステロールオキシダーゼ 1400U/L
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー 0.1%
第2試薬組成物
BES緩衝液,pH7.0 100mM
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 1.0%
【0106】
(LDL-C)
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mM
コレステロールエステラーゼ 600U/L
コレステロールオキシダーゼ 500U/L
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 0.2%
BSA 1.0%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH7.0 50mM
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 1.0%(w/v)
【0107】
(HDL3-C)
第1試薬組成物
BES緩衝液,pH7.0 100mM
コレステロールエステラーゼ 2000U/L
コレステロールオキシダーゼ 300U/L
スフィンゴミエリナーゼ 500U/L
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー 0.05%(w/v)
BSA 1.0%(w/v)
第2試薬組成物
BES緩衝液,pH7.0 100mM
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 2.0%(w/v)
【0108】
(レムナント-C)
第1試薬組成物
PIPES緩衝液,pH6.8 50mM
コレステロールエステラーゼ(高分子) 5000U/L
コレステロールオキシダーゼ 2500U/L
スフィンゴミエリナーゼ 2500U/L
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 0.1%(w/v)
BSA 1.0%(w/v)
第2試薬組成物
PIPES緩衝液,pH6.8 50mM
コレステロールエステラーゼ(低分子) 4000U/L
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.1%(w/v)
【0109】
(apoE containing HDL-C)
第1試薬組成物
BES緩衝液,pH7.0 100mM
コレステロールエステラーゼ 800U/L
コレステロールオキシダーゼ 1600U/L
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 0.067%(w/v)
第2試薬組成物
BES緩衝液,pH7.0 100mM
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 1.0%(w/v)
【0110】
(調製例1a~11a)
各例について、上述に記載の成分に加えて、以下の成分を含む第1試薬組成物を調製した。すなわち、各例について、LDL-C、HDL-C、HDL3-C、レムナント-CまたはapoE containing HDL-Cの計5種の第1試薬組成物を調整した。
【0111】
(調製例1a)
カタラーゼ(B-Cat) 1200U/mL
4-アミノアンチピリン(4-AA) 1.3mM
【0112】
(調製例2a)
ペルオキシダーゼ(POD) 1.7U/mL
4-アミノアンチピリン 1.3mM
【0113】
(調製例3a)
4-アミノアンチピリン 1.3mM
フェロシアン化カリウム(FeK) 0.036mM
カタラーゼ 1200U/mL
【0114】
(調製例4a)
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 0.7mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 2.0mM
【0115】
(調製例5a)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 0.7mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 2.0 mM
フェロシアン化カリウム 0.036mM
カタラーゼ 1200U/mL
【0116】
(調製例6a)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 0.7mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 2.0 mM
フェロシアン化カリウム 0.036mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
【0117】
(調製例7a)
4-アミノアンチピリン 1.3mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
【0118】
(調製例8a)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 0.7mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 2.0 mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
【0119】
(調製例9a)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 0.7mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 2.0 mM
フェロシアン化カリウム 0.036mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
【0120】
(調製例10a)
カップラー(4アミノアンチピリン) 1.3mM
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
フェロシアン化カリウム 0.036mM
【0121】
(調製例11a)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 0.7mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 2.0 mM
カタラーゼ 1200U/mL
【0122】
得られた第1試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について波長320nm~480nmの吸収スペクトルを測定した。表1に各例で得られた試薬組成物の保存後の吸光度および吸光度比を示す。
また、
図1~
図11における各分図(a)は、それぞれ、実験例1a~11aで得られた第1試薬組成物の37℃にて2週間加速保存した後の吸収スペクトルを示す図である。
【0123】
【0124】
(調製例1b~11b)
各例について、上述に記載の成分に加えて、以下の成分を含む第2試薬組成物を調製した。すなわち、各例について、LDL-C、HDL-C、HDL3-C、レムナント-CまたはapoE containing HDL-Cの計5種の第2試薬組成物を調整した。
【0125】
(調製例1b)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 2.1mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 6.0mM
フェロシアン化カリウム 0.109mM
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
アジ化ナトリウム(NaN3) 0.05%(w/v)
【0126】
(調製例2b)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 2.2mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 6.0mM
フェロシアン化カリウム 0.109mM
【0127】
(調製例3b)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 2.3mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 6.0mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
【0128】
(調製例4b)
4-アミノアンチピリン 4.0mM
フェロシアン化カリウム 0.109mM
【0129】
(調製例5b)
4-アミノアンチピリン 4.0mM
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
【0130】
(調製例6b)
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
【0131】
(調製例7b)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 2.3mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 6.0mM
フェロシアン化カリウム 0.109mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
【0132】
(調製例8b)
4-アミノアンチピリン 4.0mM
フェロシアン化カリウム 0.109mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
【0133】
(調製例9b)
4-アミノアンチピリン 4.0mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
【0134】
(調製例10b)
水素供与体
(HDAOS:HDL-C、apoE containing HDL-C) 2.3mM
(TOOS:LDL-C、HDL3-C、レムナント-C) 6.0mM
【0135】
(調製例11b)
カップラー(4-アミノアンチピリン) 4.0mM
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
フェロシアン化カリウム 0.109mM
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
【0136】
得られた第2試薬組成物を37℃にて1週間または2週間加速保存し、保存中の自然発色について波長320nm~480nmの吸収スペクトルを測定した。表2に各例で得られた試薬組成物の保存後の吸光度および吸光度比を示す。
また、
図1~
図11における各分図(b)は、それぞれ、実験例1b~11bで得られた第2試薬組成物の37℃にて2週間加速保存した後の吸収スペクトルを示す図である。
【0137】
【0138】
(実施例3-1~3-7、比較例3-1~3-4)
LDL-Cを代表項目として、各例において第1および第2の試薬組成物を37℃、2週間の条件で保存し、加速試験をおこなった。保存後の第1および第2試薬組成物を表3に示した組み合わせで用い、リポタンパクCの測定精度を評価した。評価結果を表3にあわせて示す。
【0139】
各測定系において、LDL-C濃度が既知である標準物質およびLDL-Cが存在しないブランク物質である生理食塩水を用いて、検量線を作成した。その後低値検体の測定を行い、最小検出限界を測定した。
【0140】
具体的には、表3に記載の各例について、以下の手順でLDL-C濃度の評価をおこなった。
(LDL-C濃度の測定および評価方法)
1.上記標準物質および生理食塩水の試料2.0μLに対し、各例の第1試薬組成物を150μL加え、37℃、5分作用させた。
2.各例の第2試薬組成物を50μL加え、37℃、5分作用させた。
3.第2試薬組成物が入る直前、および第2試薬組成物添加5分後に波長600nm(主波長)および700nm(副波長)における吸光度を測定し、(第2試薬組成物添加5分後の600nm吸光度-700nm吸光度)-(第2試薬組成物が入る直前の600nm吸光度-700nm吸光度)よりキャリブレーション吸光度を算出し検量線を作成した。
4.次にLDL-C値が既知の低濃度(4.0mg/dL)試料を生理食塩水で希釈して10段階希釈系列試料を作成し、生理食塩水および各希釈系列を上記各試薬で各5重測定した。
5.生理食塩水の平均値+2.6SD<希釈試料の平均値-2.6SDを満たす最低濃度を検出限界とし、検出限界が2.0mg/dL以下である場合には「○」、2.0mg/dLより高濃度である場合には「×」として各例の測定精度を評価した。
【0141】
【0142】
第1および第2試薬組成物のR1、R2がいずれも特定の範囲にある実施例においては、LDL-Cを正確に検出することができた。