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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】水素貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20240318BHJP
   F17C 13/04 20060101ALI20240318BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C13/04 301Z
H02J15/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020099349
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193305
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆利
(72)【発明者】
【氏名】高木 雄市
(72)【発明者】
【氏名】長田 憲和
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173925(JP,A)
【文献】特開2015-214993(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073383(WO,A1)
【文献】特開2017-172690(JP,A)
【文献】特開平11-210989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0178432(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109185698(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02 - 13/04
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置から出力された電力を用いて水素製造装置が製造した水素を貯蔵する水素貯蔵システムであって、
前記水素製造装置から第1制御バルブと第1流量計と介して供給される水素を貯蔵する第1水素貯蔵部と、
前記水素製造装置から第2制御バルブと第2流量計と介して供給される水素を貯蔵する第2水素貯蔵部と、
前記再生可能エネルギー発電装置において発電され、前記水素製造装置に出力された電力量に基づいて、前記第1制御バルブおよび前記第2制御バルブの動作を制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記水素製造装置から前記第1水素貯蔵部および前記第2水素貯蔵部に水素を供給しているときに、前記再生可能エネルギー発電装置から前記水素製造装置に電力が出力された電力量が所定値以下になった場合には、前記第1制御バルブを開状態から閉状態にし、前記第2制御バルブを開状態に保持する、
水素貯蔵システム。
【請求項2】
再生可能エネルギー発電装置から出力された電力を用いて水素製造装置が製造した水素を貯蔵する水素貯蔵システムであって、
前記水素製造装置から第1制御バルブと第1流量計と介して供給される水素を貯蔵する第1水素貯蔵部と、
前記水素製造装置から第2制御バルブと第2流量計と介して供給される水素を貯蔵する第2水素貯蔵部と、
前記再生可能エネルギー発電装置において発電され、前記水素製造装置に出力された電力量に基づいて、前記第1制御バルブおよび前記第2制御バルブの動作を制御する制御部と
を有し、
前記第2流量計は、前記第1流量計よりも測定下限値が低く、
前記制御部は、前記水素製造装置から前記第2水素貯蔵部に水素を供給せずに前記第1水素貯蔵部に水素を供給しているときに、前記再生可能エネルギー発電装置から前記水素製造装置に電力が出力された電力量が所定値以下になった場合には、前記第1制御バルブを開状態から閉状態にし、前記第2制御バルブを閉状態から開状態にする、
水素貯蔵システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御バルブを閉状態にした後に、前記第2水素貯蔵部の水素貯蔵量が所定量を超えた場合、前記第2制御バルブを開状態から閉状態にし、前記第1制御バルブを閉状態から開状態にする、
請求項1または2に記載の水素貯蔵システム。
【請求項4】
前記第1流量計と前記第1水素貯蔵部との間において水素が流れる第1水素流路と、前記第2流量計と前記第2水素貯蔵部との間において水素が流れる第2水素流路との間に圧力調整流路が介在しており、
前記圧力調整流路には、圧力調整弁が設置されている、
請求項1から3のいずれかに記載の水素貯蔵システム。
【請求項5】
前記第1水素流路の圧力を測定する第1圧力計、および、前記第2水素流路の圧力を測定する第2圧力計が設けられており、
前記制御部は、前記第1圧力計で測定された圧力値と前記第2圧力計で測定された圧力値とが異なる場合には、前記圧力調整弁を開状態にし、前記第1圧力計で測定された圧力値と前記第2圧力計で測定された圧力値とが同じ場合には、前記圧力調整弁を閉状態にする、
請求項4に記載の水素貯蔵システム。
【請求項6】
前記第2水素貯蔵部を加熱するヒータが設けられており、
前記制御部は、前記第2水素貯蔵部から前記第1水素貯蔵部へ水素を移動させる際には、前記圧力調整弁を開状態にすると共に、前記ヒータを用いて前記第2水素貯蔵部を加熱することで前記第2水素貯蔵部が貯蔵している水素の圧力を高める、
請求項4または5に記載の水素貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素貯蔵システムは、水素ガスを貯蔵する水素貯蔵部として、たとえば、金属材料や炭素繊維などを用いて形成されたガスタンクを備えている。水素貯蔵システムは、たとえば、再生可能エネルギー発電装置から出力された電力を用いて水素製造装置が製造した水素が水素貯蔵部に供給されて貯蔵される。ここでは、水素製造装置から水素が流量計を介して水素貯蔵部に供給される。水素貯蔵システムは、水素ガスを多量に貯蔵するために、たとえば、複数の水素貯蔵部が並列して配置されており、その複数の水素貯蔵部のそれぞれにおいて水素が均一に貯蔵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6114777号
【文献】特開2005-54949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生可能エネルギー発電装置は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いて電力を発電するため、発電によって出力される電力が大きく変動する。これに伴って、水素製造装置で製造される水素の製造量も大きく変動する。このため、水素製造装置から流量計を介して水素貯蔵部に供給される水素の流量が、流量計の測定下限値よりも低くなる可能性がある。その結果、水素貯蔵部で貯蔵される水素の貯蔵量が不正確になる場合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、再生可能エネルギー発電装置から出力された電力を用いて水素製造装置が製造した水素を水素貯蔵部において正確に貯蔵可能な水素貯蔵システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施系形態の水素貯蔵システムは、再生可能エネルギー発電装置から出力された電力を用いて水素製造装置が製造した水素を貯蔵する水素貯蔵システムであって、第1水素貯蔵部と第2水素貯蔵部と制御部とを有する。第1水素貯蔵部は、水素製造装置から第1制御バルブと第1流量計と介して供給される水素を貯蔵する。第2水素貯蔵部は、水素製造装置から第2制御バルブと第2流量計と介して供給される水素を貯蔵する。制御部は、再生可能エネルギー発電装置において発電され、水素製造装置に出力された電力量に基づいて、第1制御バルブおよび第2制御バルブの動作を制御する。ここでは、制御部は、水素製造装置から第1水素貯蔵部および第2水素貯蔵部に水素を供給しているときに、再生可能エネルギー発電装置から水素製造装置に電力が出力された電力量が所定値以下になった場合には、第1制御バルブを開状態から閉状態にし、前記第2制御バルブを開状態に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る水素貯蔵システムにおいて、制御部70による制御動作を示すフロー図である。
図3図3は、第2実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図4図4は、第2実施形態の変形例に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図5図5は、第3実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図6図6は、第3実施形態の変形例に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図7図7は、第4実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
[A]構成
図1は、第1実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の水素貯蔵システムは、再生可能エネルギー発電装置10、水タンク20、水素製造装置30、水素タンク51(第1水素貯蔵部)、水素タンク52(第2水素貯蔵部)、および、制御部70を備えている。水素貯蔵システムを構成する各部について順次説明する。
【0010】
[A-1]再生可能エネルギー発電装置10
水素貯蔵システムにおいて、再生可能エネルギー発電装置10は、再生可能エネルギーを利用して発電を行う装置であって、図1に示すように、電力E10を出力するように構成されている。ここでは、再生可能エネルギー発電装置10は、たとえば、太陽光発電(PV)装置であって、太陽電池(図示省略)を含み、太陽光を太陽電池で受光し、太陽電池において光電変換を行うことによって、発電を行う。再生可能エネルギー発電装置10が発電した電力E10は、水素製造装置30に出力される。
【0011】
[A-2]水タンク20
水素貯蔵システムにおいて、水タンク20は、図1に示すように、貯蔵した水W20を水素製造装置30へ供給するように構成されている。
【0012】
[A-3]水素製造装置30
水素貯蔵システムにおいて、水素製造装置30は、図1に示すように、再生可能エネルギー発電装置10から出力された電力E10を用いて、水素H30を製造するように構成されている。ここでは、水素製造装置30は、たとえば、水タンク20から供給された水W20を電気分解することによって、水素H30を生成する。水素製造装置30において製造された水素H30は、水素タンク51および水素タンク52に供給される。
【0013】
[A-4]水素タンク51(第1水素貯蔵部),水素タンク52(第2水素貯蔵部)
水素貯蔵システムにおいて、水素タンク51および水素タンク52は、図1に示すように、水素製造装置30から供給された水素H30を貯蔵するように構成されている。水素タンク51および水素タンク52は、並列に配置されている。
【0014】
水素タンク51(第1水素貯蔵部)は、制御バルブV31(第1制御バルブ)と流量計M31(第1流量計)とを介して水素製造装置30から供給される水素H30を貯蔵する。水素タンク52(第2水素貯蔵部)は、制御バルブV32(第2制御バルブ)と流量計M32(第2流量計)とを介して水素製造装置30から供給される水素H30を貯蔵する。
【0015】
本実施形態では、流量計M31および流量計M32は、同機種であって、流量の測定下限値が互いに同じである。
【0016】
[A-5]制御部70
水素貯蔵システムにおいて、制御部70は、図1に示すように、水素貯蔵システムを構成する各部を制御するように構成されている。図示を省略しているが、制御部70は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、各部の制御を行う。
【0017】
制御部70は、各部の状態について計測機器(図示省略)が計測して得たデータが入力データ信号SG71として入力される。そして、制御部70は、その入力された入力データ信号SG71に基づいて制御信号CTL71を水素貯蔵システムの各部に出力することによって、各部の動作を制御する。
【0018】
本実施形態では、制御部70は、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力された電力E10の発電電力量のデータが、入力データ信号SG71として入力される。そして、制御部70は、その入力データ信号SG71に基づいて制御信号SG72を出力することで、制御バルブV31および制御バルブV32の動作を制御する。
【0019】
[B]動作
図2は、実施形態に係る水素貯蔵システムにおいて、制御部70による制御動作を示すフロー図である。ここでは、水素製造装置30から水素タンク51および水素タンク52に水素H30を供給している際の制御の一例に関して説明する。
【0020】
まず、図2に示すように、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値以下であるか否かの判断を行う(ST11)。
【0021】
ここでは、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値以下であるか否かを、制御部70が入力データ信号SG71に基づいて判断する。
【0022】
本実施形態では、水素製造装置30から水素タンク51および水素タンク52に流れる水素H30の流量が流量計M31および流量計M32の測定下限値以上になる場合には、制御部70は、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値を超えていると判断する。これに対して、水素製造装置30から水素タンク51および水素タンク52に流れる水素H30の流量が流量計M31および流量計M32の測定下限値未満になる場合には、制御部70は、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値以下であると判断する。
【0023】
そして、発電電力量が所定値以下であると判断した場合には、制御バルブV31を閉じる(ST12)。
【0024】
具体的には、制御部70は、制御バルブV31と制御バルブV32とのうち、一方の制御バルブV31を開状態から閉状態(たとえば、全開状態から全閉状態)にし、他方の制御バルブV32を開状態((たとえば、全開状態)に保持するように、制御部70が制御信号SG72を制御バルブV31および制御バルブV32に出力して動作を制御する。
【0025】
この制御によって、水素製造装置30で製造された水素H30は、開状態から閉状態になった制御バルブV31で流れが全て遮断され、流量計M31を通過しないので、水素タンク51へ流入しない。この一方で、水素製造装置30で製造された水素H30は、開状態を保持する制御バルブV32を通過後、流量計M32を介して水素タンク52へ流入する。
【0026】
[C]まとめ
このように、本実施形態では、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が低下したときには、一方の流量計M31を水素H30が流れずに、他方の流量計M32を通過する水素H30の流量が増加する。つまり、水素製造装置30で製造された水素H30は、上記の制御前は、50%ずつ、流量計M31と流量計M32とのそれぞれを通過していたのに対して、上記の制御後は、100%の水素H30が流量計M32を通過することになる。
【0027】
その結果、本実施形態では、流量計M32を通過する水素の流量を、容易に、流量計M32の測定下限値以上にすることできる。したがって、本実施形態においては、再生可能エネルギー発電装置10から出力された電力を用いて水素製造装置30が製造した水素を、水素タンク51および水素タンク52において正確に貯蔵可能である。
【0028】
[D]変形例
上記のように、制御バルブV31と制御バルブV32とのうち、一方の制御バルブV31を開状態から閉状態にし、他方の制御バルブV32を開状態に保持した後には、制御部70は、以下に示す制御を更に実行してもよい。
【0029】
具体的には、制御部70は、一方の制御バルブV31を閉状態にした後に他方の水素タンク52の水素貯蔵量が所定量を超えた場合には、他方の制御バルブV32を開状態から閉状態にし、一方の制御バルブV31を閉状態から開状態にする。これにより、水素製造装置30で製造された水素H30は、水素タンク52へ流入して貯蔵される状態から、水素タンク51へ流入して貯蔵される状態に切り替えられる。たとえば、水素H30が水素タンク52の最大容量まで貯蔵された場合に、上記の切り替えを行う。ここでは、流量計M32を通過した水素H30の流量の積分値に基づいて、制御部70が上記の切り替えを実行する。これにより、効率的に、水素H30の貯蔵を実行可能である。
【0030】
なお、上記実施形態では、水素タンクが2つである場合について例示したが、これに限らない。水素タンクが3つ以上であってもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、水素貯蔵部として水素タンクを用いる場合について説明したが、これに限らない。水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵部を利用してもよい。
【0032】
<第2実施形態>
[A]構成等
図3は、第2実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0033】
図3に示すように、本実施形態の水素貯蔵システムは、再生可能エネルギー発電装置10、水タンク20、水素製造装置30、および、制御部70を備えていると共に、2つの水素タンク51a,51b(第1水素貯蔵部)と小型水素タンク52b(第2水素貯蔵部)とを備えている。本実施形態は、水素タンク51a,51bの他に小型水素タンク52bを備えている点、および、これに関連する点を除き、第1実施形態の場合(図1参照)と同様である。このため、重複する事項については説明を省略する。
【0034】
[A-1]水素タンク51a,51b,小型水素タンク52b
水素貯蔵システムにおいて、水素タンク51a,51bおよび小型水素タンク52bは、図3に示すように、水素製造装置30から供給された水素H30を貯蔵するように構成されている。
【0035】
水素タンク51a,51bは、制御バルブV31a,V31b(第1制御バルブ)と流量計M31a,M31b(第1流量計)と介して水素製造装置30から供給される水素H30を貯蔵するように構成されている。制御バルブV31a,V31bは、互いに同種であり、流量計M31a,M31bは、互いに同種である。
【0036】
小型水素タンク52bは、制御バルブV32(第2制御バルブ)と流量計M32b(第2流量計)と介して水素製造装置30から供給される水素H30を貯蔵する。小型水素タンク52bは、水素タンク51a,51bよりも水素H30を貯蔵する貯蔵容量が小さい。流量計M32bは、流量計M31a,M31bよりも測定下限値が低い。つまり、流量計M32bは、流量計M31a,M31bよりも低い流量を測定可能である。
【0037】
[A-2]制御部70
水素貯蔵システムにおいて、制御部70は、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力された電力E10の発電電力量のデータが、入力データ信号SG71として入力される。そして、制御部70は、その入力データ信号SG71に基づいて制御信号SG72を出力することで、制御バルブV31a,V31bおよび制御バルブV32の動作を制御する。
【0038】
[B]動作
本実施形態に係る水素貯蔵システムの制御部70が実施する制御動作に関して説明する。ここでは、水素製造装置30から水素タンク51a,51bに水素H30を供給し、水素製造装置30から小型水素タンク52bには水素H30を供給していないときの制御の一例に関して説明する。
【0039】
この場合には、まず、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値以下であるか否かの判断を行う(ST11)。
【0040】
ここでは、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値以下であるか否かを、制御部70が入力データ信号SG71に基づいて判断する。
【0041】
本実施形態では、水素製造装置30から水素タンク51a,51bに流れる水素H30の流量が流量計M31a,M31bの測定下限値以上になる場合には、制御部70は、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値を超えていると判断する。これに対して、水素製造装置30から水素タンク51a,51bに流れる水素H30の流量が流量計M31a,M31bの測定下限値未満になる場合には、制御部70は、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が所定値以下であると判断する。
【0042】
そして、発電電力量が所定値以下であると判断した場合には、制御バルブV31a,V31bを閉じ、制御バルブV32を開ける。
【0043】
つまり、制御部70は、制御バルブV31a、V31bを開状態から閉状態((たとえば、全開状態から全閉状態)にし、制御バルブV32については閉状態から開状態((たとえば、全閉状態から全開状態)にするように、制御部70が制御信号SG72を制御バルブV31a,V31bおよび制御バルブV32に出力して動作を制御する。
【0044】
この制御によって、水素製造装置30で製造された水素H30は、開状態から閉状態になった制御バルブV31a,V31bで流れが遮断され、流量計M31a,M31Bを通過しないので、水素タンク51a,51bへ流入しない。この一方で、水素製造装置30で製造された水素H30は、閉状態から開状態になった制御バルブV32を通過後、流量計M32bを介して小型水素タンク52bへ流入する。
【0045】
[C]まとめ
このように、本実施形態では、再生可能エネルギー発電装置10から水素製造装置30に出力される電力E10の発電電力量が低下したときには、開状態から閉状態に制御バルブV31a,V31bが動作し、閉状態から開状態に制御バルブV32が動作するので、水素H30は、流量計M31a,M31bを通過せずに、流量計M32bを通過する。
【0046】
その結果、本実施形態では、流量計M31a,M31bよりも測定下限値が低い流量計M32bを水素H30が通過する。したがって、本実施形態においては、再生可能エネルギー発電装置10から出力された電力を用いて水素製造装置30が製造した水素を、水素タンク51a,51bおよび小型水素タンク52bにおいて正確に貯蔵可能である。
【0047】
[D]変形例
図4は、第2実施形態の変形例に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0048】
図3では、2つの水素タンク51a,51bのそれぞれが、2つの制御バルブV31a,V31bのそれぞれと2つの流量計M31a,M31bのそれぞれと介して水素製造装置30から供給される水素H30を貯蔵するように構成されているが、これに限らない。図4に示すように、2つの水素タンク51a,51bのそれぞれは、1つ制御バルブV31と1つの流量計M31とを介して水素製造装置30から供給される水素H30を貯蔵するように構成されていてもよい。つまり、水素製造装置30で製造された水素H30が1つ制御バルブV31と1つの流量計M31とを順次流れた後に、2つの水素タンク51a,51bのそれぞれに分岐して流入するように構成されていてもよい。
【0049】
また、図3および図4において、小型水素タンク52bについては、他の水素タンク51a,51bと容量が同等以上の水素タンクに置換してもよい。
【0050】
<第3実施形態>
[A]構成
図5は、第3実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0051】
図5に示すように、本実施形態の水素貯蔵システムは、第1実施形態の場合(図1参照)と同様に、再生可能エネルギー発電装置10、水タンク20、水素製造装置30、水素タンク51、水素タンク52、および、制御部70を備えている。この他に、本実施形態の水素貯蔵システムは、圧力調整流路H40と圧力調整弁V40とを含む。この点、および、これに関連する点を除き、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については説明を省略する。
【0052】
本実施形態の水素貯蔵システムにおいて、圧力調整流路H40は、流量計M31と水素タンク51との間において水素H30が流れる水素流路H31(第1水素流路)と、流量計M32と水素タンク52との間において水素H30が流れる水素流路H32(第2水素流路)との間に介在している。そして、圧力調整流路H40には、圧力調整弁V40が設置されている。
【0053】
[B]動作
本実施形態の水素貯蔵システムの動作について説明する。
【0054】
本実施形態において、圧力調整弁V40は、通常は、閉状態であり、水素タンク51の貯蔵量と水素タンク52の貯蔵量とを均一にする場合に開状態にされる。
【0055】
具体的には、水素タンク51の貯蔵量と水素タンク52の貯蔵量とを均一にする場合には、まず、制御バルブV31と制御バルブV32とを全て閉じるように、制御部70が制御を行う。
【0056】
つぎに、圧力調整弁V40が開状態になるように、制御部70が制御を行う。これにより、水素タンク51と水素タンク52とのうち、水素の貯蔵量が多く内部の圧力が高い一方から、水素の貯蔵量が少なく内部の圧力が低い他方へ向かうように、水素が圧力調整流路H40を経由して移動する。
【0057】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、水素タンク51の貯蔵量と水素タンク52の貯蔵量とを容易に均一化することができる。
【0058】
[D]変形例
図6は、第3実施形態の変形例に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0059】
図6に示すように、本変形例では、水素流路H31の圧力を測定する圧力計P31(第1圧力計)、および、水素流路H32の圧力を測定する圧力計P32(第2圧力計)が、更に設けられている。
【0060】
本変形例では、制御部70は、圧力計P31で測定された圧力値と圧力計P32で測定された圧力値とが同じ場合には、圧力調整弁V40を閉状態にする。これに対して、圧力計P31で測定された圧力値と圧力計P32で測定された圧力値とが異なる場合には、制御部70は、圧力調整弁(V40)を開状態にする。これにより、水素タンク51と水素タンク52とのうち水素の貯蔵量が多く内部の圧力が高い一方から、水素の貯蔵量が少なく内部の圧力が低い他方へ向かうように、水素が圧力調整流路H40を経由して移動する。
【0061】
したがって、本実施形態では、水素タンク51の貯蔵量と水素タンク52の貯蔵量とを容易に均一化することができる。
【0062】
<第4実施形態>
[A]構成等
図7は、第4実施形態に係る水素貯蔵システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0063】
図7に示すように、本実施形態の水素貯蔵システムは、第2実施形態の変形例の場合(図4参照)と同様に、再生可能エネルギー発電装置10、水タンク20、水素製造装置30、および、制御部70を備えていると共に、2つの水素タンク51a,51b(第1水素貯蔵部)と小型水素タンク52b(第2水素貯蔵部)とを備えている。本実施形態は、更に、圧力調整流路H40と圧力調整弁V40とを含むと共に、ヒータ60を備える。この点、および、これに関連する点を除き、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する事項については説明を省略する。
【0064】
本実施形態の水素貯蔵システムにおいて、圧力調整流路H40は、流量計M31と水素タンク51a,51bとの間において水素H30が流れる水素流路H31(第1水素流路)と、流量計M32bと小型水素タンク52bとの間において水素H30が流れる水素流路H32(第2水素流路)との間に介在している。そして、圧力調整流路H40には、圧力調整弁V40が設置されている。
【0065】
ヒータ60は、小型水素タンク52bを加熱するために設けられている。
【0066】
[B]動作
本実施形態の水素貯蔵システムの動作について説明する。
【0067】
本実施形態において、圧力調整弁V40は、通常は、閉状態である。しかし、小型水素タンク52bから水素タンク51a,51bへ水素を移動させる際に、圧力調整弁V40は、開状態にされる。
【0068】
具体的には、小型水素タンク52bから水素タンク51a,51bへ水素を移動させる場合には、まず、制御バルブV31と制御バルブV32とを全て閉じるように、制御部70が制御を行う。
【0069】
つぎに、圧力調整弁V40が開状態になるように、制御部70が制御を行う。このとき、制御部70は、ヒータ60を用いて小型水素タンク52bを加熱することで、小型水素タンク52bが貯蔵している水素の圧力を高める。これにより、小型水素タンク52bから水素タンク51a,51bへ水素が圧力調整流路H40を経由して移動する。
【0070】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、小型水素タンク52bから水素タンク51a,51bへ容易に水素を移動可能である。
【0071】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10:再生可能エネルギー発電装置、20:水タンク、30:水素製造装置、51:水素タンク、51a,51b:水素タンク、52:水素タンク、52b:小型水素タンク、60:ヒータ、70:制御部、E10:電力、H30:水素、H31:水素流路、H32:水素流路、H40:圧力調整流路、M31:流量計、M31a,M31b:流量計、M32:流量計、M32b:流量計、P31:圧力計、P32:圧力計、V31:制御バルブ、V31a,V31b:制御バルブ、V32:制御バルブ、V32b:制御バルブ、V40:圧力調整弁、W20:水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7