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特許7455678電子写真用ベルトおよび電子写真画像形成装置
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  • 特許-電子写真用ベルトおよび電子写真画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】電子写真用ベルトおよび電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240318BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 552
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020103055
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021009358
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2019123617
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】江川 紀章
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-81603(JP,A)
【文献】特開2015-125187(JP,A)
【文献】特開2014-160231(JP,A)
【文献】特開2012-163815(JP,A)
【文献】特開2014-186190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアクリル樹脂を含む表面層を有する電子写真用ベルトであって、
該表面層の外表面上に樹脂粒子が存在しており、
該樹脂粒子は、第2のアクリル樹脂とフッ素樹脂とを含み、
該樹脂粒子の外表面には、該第2のアクリル樹脂および該フッ素樹脂が露出している、ことを特徴とする電子写真用ベルト。
【請求項2】
前記第1のアクリル樹脂と、前記第2のアクリル樹脂とが同一の構造の繰り返し単位を有する請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項3】
前記表面層の外表面において、前記樹脂粒子が、電子写真用ベルトの幅方向の中央部よりも、両端部に多く存在している請求項1または2に記載の電子写真用ベルト。
【請求項4】
前記表面層の外表面に、電子写真用ベルトの周方向に延在する溝が複数本設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項5】
前記表面層の外表面を前記樹脂粒子が被覆している割合が0.1%以上、35%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項6】
前記第1のアクリル樹脂と前記第2のアクリル樹脂が、多官能アクリレートモノマーの重合物である請求項1~5のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項7】
前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである請求項1~6のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項8】
前記樹脂粒子に含まれる第2のアクリル樹脂の含有率が24質量%以上、90質量%以下であり、フッ素樹脂の含有率が5質量%以上、70質量%以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項9】
前記電子写真用ベルトの厚みが10μm以上、500μm以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項10】
前記電子写真用ベルトがエンドレスベルト形状を有する請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項11】
前記電子写真用ベルトが、エンドレスベルト形状の基層と、該基層の外周面上の前記表面層とを有する請求項10に記載の電子写真用ベルト。
【請求項12】
前記基層と前記表面層との間に弾性層を更に有する請求項11に記載の電子写真用ベルト。
【請求項13】
前記表面層の厚みが0.1μm以上、50μm以下である請求項11または12に記載の電子写真用ベルト。
【請求項14】
電子写真用ベルト、および該電子写真用ベルトの外表面に当接するクリーニングブレードを備える電子写真画像形成装置であって、
該電子写真用ベルトが、請求項1~13のいずれか一項に記載の電子写真用ベルトである電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送転写ベルトや中間転写ベルト等の電子写真用ベルトに関し、また電子写真用ベルトを備えた電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置では、転写材としての記録媒体を搬送する搬送転写ベルトとして、またトナー像を一時的に転写保持する中間転写ベルトとして、電子写真用ベルトが用いられている。
特許文献1には、クリーニングブレードによる中間転写ベルト上の残トナーのクリーニング性能を高くすることのできる、電子写真画像形成装置が開示されている。この電子写真画像形成装置のクリーニング装置は、中間転写ベルトの外周面に粉末状離型剤、具体的にはステアリン酸亜鉛の粉末を塗布する粉末状離型剤塗布装置を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-361765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電子写真画像形成装置によれば、中間転写ベルトに離型剤が継続的に供給されるため、長期に亘る使用によってもクリーニング不良の発生を防止し得る。しかしながら、当該粉末状離型剤塗布装置の存在は、電子写真画像形成装置の小型化やコスト低減の障害となり得る。
【0005】
本開示の一態様は、長期の使用によってもクリーニング不良の発生を抑制し得る電子写真用ベルトの提供に向けたものである。本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成できる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
第1のアクリル樹脂を含む表面層を有する電子写真用ベルトであって、
該表面層の外表面上に樹脂粒子が存在しており、
該樹脂粒子は、第2のアクリル樹脂とフッ素樹脂とを含み、
該樹脂粒子の外表面には、該第2のアクリル樹脂および該フッ素樹脂が露出している電子写真用ベルトが提供される。
【0007】
また、本開示の他の態様によれば、
電子写真用ベルト、および該電子写真用ベルトの外表面に当接するクリーニングブレードを備える電子写真画像形成装置であって、
該電子写真用ベルトが、上記の電子写真用ベルトである電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、長期の使用によってもクリーニング不良の発生を抑制し得る電子写真用ベルトを得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様に係る電子写真用ベルトの一例を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は表面層の外表面の拡大図、(c)はさらにその樹脂粒子部の拡大図である。
図2】中間転写方式の電子写真画像形成装置の構成の一例を示す概略断面図である。
図3】延伸ブロー成形機の一例を示す概略断面図である。
図4】電子写真用ベルトの表面に溝を形成するインプリント加工装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
金属石鹸などからなる離型剤は、電子写真用ベルト(以下、単に「ベルト」ということがある。)のトナー担持面(以降、単に「表面」ともいう)から離れやすい。すなわち、ベルトの表面の離型剤は、画像形成に伴う動作とともに、紙(転写材)、クリーニングブレード、感光体などベルト表面に接している部材等に移っていき、ベルト表面から消失する。
一方、耐摩耗性を付与するなどの目的で、ベルトの表面を構成する表面層中にアクリル樹脂を含有させる場合がある。本発明者らは、アクリル樹脂を含む表面層を備えたベルトの表面に、アクリル樹脂とフッ素樹脂を含む樹脂粒子を付着させた場合、当該樹脂粒子は、長期に亘る使用によっても表面から消失しにくく、クリーニング不良の発生を持続的に防止できることを見出した。
これは、表面層中のアクリル樹脂と樹脂粒子中のアクリル樹脂との親和性が高いこと、及び正帯電しやすいアクリル樹脂が正帯電し易い一方で、フッ素樹脂は負帯電し易い。このことにより、当該樹脂粒子がベルトの表面により強く付着しているためであると考えられる。
またフッ素樹脂は潤滑効果を有するため、当該樹脂粒子がベルトの表面に安定的に付着することで、良好なクリーニング性が長期に亘って維持されるものと考えられる。
不良防止効果が持続すると考えている。以下、本開示の一態様に係る電子写真用ベルトについて詳細に説明する。なお、本開示は以下の態様に限定されるものではない。
【0011】
<電子写真用ベルト、および樹脂粒子>
電子写真用ベルトは、第1のアクリル樹脂を含む表面層、典型的には第1のアクリル樹脂からなる表面層を有する。例えば、電子写真用ベルトは、エンドレスベルト形状の基層と、その外周面に設けられた表面層とを有する。
なお、基層と表面層との間に、弾性層を設けてもよい。弾性層の存在は、たとえば二次転写工程におけるトナー像の記録材への転写性をより向上させる効果がある。
【0012】
図1(a)に示す電子写真用ベルト5はエンドレスベルト形状を有する。該電子写真用ベルトは、エンドレスベルト形状の基層5-1と、基層5-1の外周面上に形成された表面層5-2とを有する。表面層5-2は少なくとも第1のアクリル樹脂を含む。
図1(b)に示すように、電子写真用ベルトの外表面202には樹脂粒子201が存在している。また、図1(c)は、樹脂粒子201の表面の模式図である。図1(c)に示すように、樹脂粒子201は第2のアクリル樹脂205とフッ素樹脂204とを含み、樹脂粒子201の外表面には、フッ素樹脂204と第2のアクリル樹脂205とが露出している。
【0013】
第1のアクリル樹脂と、樹脂粒子に含まれる第2のアクリル樹脂は同一の構造の繰り返し単位を有することが好ましい。これにより、ベルト外表面と樹脂粒子の親和性が増し、クリーニング不良の発生を防止する効果をより長期に亘って持続させることが容易となる。特に、第1のアクリル樹脂と第2のアクリル樹脂が同一であることが好ましい。
【0014】
表面層の外表面202において、樹脂粒子は、ベルト5の幅方向の中央部よりも、両端部に多く存在していることが好ましい。ベルトの両端部は、画像形成される領域外で、トナーの供給量が少なく、またクリーニングブレードの撓みによって、中央部に比べて押し付け圧が強く、したがって摩擦が大きくなる。中央部の摩擦の小さい領域に比べ、両端部の摩擦が大きい領域は、ブレードの欠けや摩耗などにより、クリーニング不良が早期に発生しやすい。よって、樹脂粒子が両端部に多く存在していることにより、クリーニング不良の発生をより持続的に抑えることができる。なお、ベルトの幅方向の端からベルトの幅方向中央に向かって20mmまでの部分を端部、それより中央寄りの部分を中央部とする。
【0015】
また、表面層の外表面202には、電子写真用ベルトの周方向に延在する溝203が複数本設けられていることが好ましい。溝が設けられていることにより、ベルトとクリーニングブレードとの間の摩擦が低減され、クリーニング不良の発生をより持続的に抑えることができる。
【0016】
外表面202の任意の位置に置いた所定の大きさ(例えば、横715μm、縦535μm)の観察領域内に存在する樹脂粒子の面積の総和を、該観察領域の面積で除した値(%)を「粒子付着面積率」と定義したとき、該粒子付着面積率は、電子写真用ベルトとクリーニングブレードとの摩擦を低減する観点から0.1%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましい。粒子付着面積率は、トナーの転写効率及び画像品質の観点から、35%以下であることが好ましい。ベルト幅方向の中央部と両端部とで粒子付着面積率が異なる場合、中央部と両端部のそれぞれにおいて粒子付着面積率が上記範囲にあることが好ましい。
【0017】
第1及び第2のアクリル樹脂はいずれも多官能アクリレートモノマーの重合物であることが好ましい。これにより、摩擦が容易に低減され、クリーニング不良の発生をより持続的に抑えることができる。
多官能アクリレートモノマーとして、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジグリセリンEO変性アクリレート、ビスフェノールEO変性ジアクリレートなどを用いることができる。ここで「EO」は「エチレンオキシド」、「PO」は「プロピレンオキシド」を意味する。ただし、第1及び第2のアクリル樹脂は、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、パラクミルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレートなどの、単官能アクリレートモノマーの重合物であってもよい。これら第1及び第2のアクリル樹脂はいずれも、単独重合体であっても共重合体であってもよく、あるいは複数種のアクリル樹脂の混合物であってもよい。
【0018】
樹脂粒子201に含まれるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンを用いることにより、クリーニングブレードとの摩擦がより低減され、クリーニング不良の発生をより持続的に抑えることができる。ただしその限りではなく、フッ素樹脂として例えばパーフルオロポリエーテルを用いることもできる。他のフッ素樹脂の例として、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体などが挙げられる。フッ素樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよく、あるいは複数種のフッ素樹脂の混合物であってもよい。
【0019】
樹脂粒子201に含まれる第2のアクリル樹脂の含有率が24質量%以上、90質量%以下、フッ素樹脂の含有率が5質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。第2のアクリル樹脂の含有率が24質量%以上であると、樹脂粒子とベルト外表面との付着力を良好に保ち、持続的なクリーニング不良防止効果を得ることが容易である。第2のアクリル樹脂の含有率が90質量%以下であると、摩擦を低減することが容易である。同様に、フッ素樹脂の含有率が5質量%以上であると、摩擦を低減することが容易である。フッ素樹脂の70質量%以下であると、樹脂粒子とベルト外表面との付着力を良好に保ち、持続的なクリーニング不良防止効果を得ることが容易である。
【0020】
エンドレスベルト形状の基層は、例えば、熱可塑性樹脂組成物のペレットを円筒状に溶融押出成形する方法や、射出成形法、ストレッチブロー成形法、インフレーション成形法の如き公知の方法を用いて作製することができる。
また、表面層は、例えばエンドレスベルト形状を有する基層の外周面に表面層形成用の塗料をディップコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、リングコートの如き公知の方法を用いて塗布し、乾燥、硬化させることで形成することができる。
【0021】
電子写真用ベルトの厚みは10μm以上、500μm以下が好ましく、30μm以上、150μm以下が特に好ましい。また、本開示の一態様に係る電子写真用ベルトは、そのままベルトとして使用するほか、電子写真用部材として使われているドラムあるいはロールなどに巻き付けたり、これらを被覆したりして使用してもよい。表面層の厚みは0.1μm以上、50μm以下が好ましく、0.5μm以上、10μm以下が特に好ましい。0.1μm以上であると、摩耗に対する耐久性を良好にすることが容易である。50μm以下であると、繰り返しの屈曲による割れの発生を抑制することが容易である。
【0022】
樹脂粒子の作製方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、固体を粉砕するボールミル、ジェットミル、スタンプミルなどの方法を用いることができる。また液中でモノマーを反応させるノズル振動法、SPG(シラスポーラスガラス)膜乳化法、マイクロチャンネル法、ミニエマルション重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法、シード乳化重合法などを用いることができる。
【0023】
樹脂粒子の形状、大きさは潤滑性を発現できれば特に限定されない。ただしクリーニングブレードとベルトの間に樹脂粒子が挟まった場合のトナーすり抜け防止の観点から、樹脂粒子の最も短い外径、すなわち短径は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0024】
樹脂粒子をベルトの表面層の外表面に付着させる方法としては、篩等を用いて直接(固体のまま)付着させる方法、樹脂粒子を水、アルコールなどの分散媒に混ぜたうえで外表面に塗布し、その後、分散媒を乾燥させる方法など、任意の方法を取ることができる。
【0025】
樹脂粒子はアクリル樹脂とフッ素樹脂を含むが、必要に応じ、導電剤、酸化防止剤、分散剤などを添加することができる。
【0026】
<電子写真画像形成装置>
図2は、本開示の一態様に係る電子写真用ベルトを中間転写体として搭載する画像形成装置であり、電子写真画像形成装置として構成されたものの一例を示している。この画像形成装置は、給紙カセット20から供給された紙などの記録媒体Sに対して4色のトナーを用いてカラー画像形成を行うものであり、色ごとの画像形成ステーションが略水平方向に併設されている。
これらの画像形成ステーションにはそれぞれ感光ドラム(感光体、像担持体)1c、1m、1y、1kが設けられている。ここでは、参照符号に対して添え字として「c」、「m」、「y」あるいは「k」を付することによって、参照符号が付された部材がそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの画像形成ステーションに属することを表している。画像形成装置には、レーザー光学ユニットであるレーザスキャナ3が設けられ、ここから、各色の画像信号に応じたレーザー光3c、3m、3y、3kがそれぞれの感光ドラム1c、1m、1y、1kに向けて発射される。画像形成ステーションはいずれも同じ構造であるので、ここではブラック用の画像形成ステーションを説明する。感光ドラム1kを囲むように、接触帯電装置である導電性ローラ2kと、現像器4kと、一次転写ローラである導電性ローラ8kと、感光ドラム1kのクリーニングに用いられるトナー回収ブレード14kとが配置されている。現像器4kには、感光ドラム1k上の潜像を現像する現像材担持体である現像ローラ41kと、現像ローラ41kに供給されるトナーを保持している現像容器42kと、現像ローラ41k上のトナー量を規制して電荷を付与する現像ブレード43kとが設けられている。なお、現像容器42k内のトナーは図示していない。
【0027】
エンドレスベルト形状を有する電子写真用ベルト5は、各色の画像形成ステーションに共通に設けられている。電子写真用ベルト5は、二次転写対向ローラ92、テンションローラ6及び駆動ローラ7に架け渡されて、駆動ローラ7により図2に示す矢印の方向に回動する。電子写真用ベルト5は、テンションローラ6と駆動ローラ7の間の区間において、感光ドラム1c、1m、1y、1kの表面に順次当接し、一次転写ローラ8c、8m、8y、8kによってそれぞれ感光ドラム1c、1m、1y、1k側に加圧されている。これにより、感光ドラム1c、1m、1y、1kの表面に形成されているトナー像が、中間転写体である電子写真用ベルト5の外周面に転写されることになる。対向ローラ92に対向して二次転写ローラ9が設けられており、電子写真用ベルト5は二次転写ローラ9により対向ローラ92に加圧されている。二次転写ローラ9には、電流検知回路10を介して電源から二次転写電圧が印加される。二次転写ローラ9及び対向ローラ92によって二次転写部が構成されている。記録媒体Sは、給送ローラ12及び搬送ローラ13を介し、対向ローラ92の位置において、電子写真用ベルト5と二次転写ローラ9とのニップ部を通過することにより、電子写真用ベルト5の外周面に保持されているトナー像が転写される。これにより、記録媒体Sの表面に画像が形成される。
トナー像が転写された記録媒体Sは、加熱ローラ151及び加圧ローラ152を具備する定着器15を通過することによって、画像が定着され、排紙トレー21に排出される。テンションローラ6の位置には電子写真用ベルト5の外周面に当接するクリーニングブレード11が設けられている。記録媒体Sに転写されずに電子写真用ベルト5の外周面に残存したトナーは、クリーニングブレード11によって掻き取られて除去されることになる。クリーニングブレード11は、電子写真用ベルト5の移動方向に対してほぼ直交する方向に延びる部材である。
【0028】
クリーニングブレード11としては、電子写真画像形成装置の分野で公知のクリーニングブレードを適宜用いることができる。その材料は、トナークリーニングに好適なものであれば特に制限はないが、例えば、ウレタンゴムやアクリルゴム、ニトリルゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などが挙げられ、トナークリーニングの観点からはウレタンゴムが好ましい。
【実施例
【0029】
以下に実施例および比較例を示し、本開示に係る電子写真用ベルトおよびを具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0030】
[基層の製造]
まず、二軸押出し機(商品名:TEX30α、日本製鋼所社製)を用いて、下記基層材料をPEN/PEEA/CB=84/15/1(質量比)の割合にて熱溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を調製した。熱溶融混練温度は260℃以上、280℃以下の範囲内となるように調整し、熱溶融混練時間はおよそ3~5分とした。
PEN:ポリエチレンナフタレート(商品名:TN-8050SC、帝人化成製)。
PEEA:ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタットNC6321、三洋化成工業製)。
CB:カーボンブラック(商品名:MA-100、三菱ケミカル社製)。
【0031】
得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。次いで、射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業社製)に、乾燥させたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を投入した。そして、シリンダ設定温度を295℃として、温度が30℃に調節された金型内に射出成形してプリフォームを作製した。得られたプリフォームは、外径が50mm、内径が46mm、長さが100mmの試験管形状を有していた。
【0032】
次に、上記のプリフォームを図3に示した二軸延伸装置(延伸ブロー成形機)を用いて二軸延伸した。まず二軸延伸前に、プリフォーム104の外壁および内壁を加熱するための非接触型のヒータ(不図示)を備えた加熱装置107内にプリフォーム104を配置し、ヒータで、プリフォームの外表面温度が150℃となるように加熱した。
次いで、加熱したプリフォーム104を、金型温度を30℃に保ったブロー金型108内に配置し、延伸棒109を用いて試験管形状の軸方向に延伸した。同時に、温度23℃に調節されたエアーをブローエア注入部分110からプリフォーム内に導入してプリフォーム104を径方向に延伸した。こうして、ボトル状成形物112を得た。
次いで、得られたボトル状成形物112の胴部を切断してシームレスなエンドレスベルト形状の基層を得た。この基層の厚さは70.2μm、周長は712.2mm、幅244.0mmであった。
【0033】
[表面層の形成]
表1に表面層形成用の塗料の材料処方を示した。表1には質量部を示してあり、溶剤以外は固形分としての質量部を示している。
表面層処方No.1およびNo.3については、表1に記載された材料を容器に秤量し、スターラーで30分攪拌することで塗料を得た。
表面層処方No.2では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を分散させるため、下記工程を行った。すなわち、表1に記載の材料(導電剤を除く)を容器に秤量し、粗分散処理を行った後に、高圧乳化分散器(商品名:ナノヴェイタ、吉田機械興業社製)を用いて本分散処理を行った。
このとき、含有するPTFEの50%平均粒径が200nmになるまで本分散処理を行った。さらに導電剤(スラリー)を撹拌しながら、前記本分散処理が終了した液を導電剤中に滴下し、塗料を得た。尚、塗料中のPTFEの粒径は動的光散乱(DLS)技術(規格ISO-DIS22412)に基づき、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR-1000、大塚電子社製)を用いて測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1および後述する表2に示す材料の詳細を下記に示す。なお、MEKはメチルエチルケトンである。
・「アロニックス M-402」:商品名、東亞合成社製
多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物)

・「アロニックス M-305」:商品名、東亞合成社製
多官能アクリレート ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート

・「アロニックス M-140」:商品名、東亞合成社製
単官能アクリレート N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド

・「ルブロンL-2」:商品名、ダイキン工業社製
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)

・「フルオロリンクAD1700」:商品名、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社製
アクリレート基付加パーフルオロポリエーテル

・「GF-300」:商品名、東亞合成社製
PTFE粒子を分散させるための分散剤

・「セルナックス CX-Z410K」:商品名、日産化学社製
導電剤 アンチモン酸亜鉛粒子スラリー 固形分として40質量%

・「イルガキュア907」:商品名、BASF社製
光反応開始剤

・「ステアリン酸亜鉛ZP」:商品名、大日化学工業製
ステアリン酸亜鉛。
【0036】
前記で作製した基層を円筒状の保持型の外周にはめ込み、基層の端部をシールしたうえで、前記塗料で満たした容器に、該保持型を浸漬し、塗料の液面と、基層の相対速度が一定になるように引き上げた。このようにして、基層の外周面に前記塗料の塗膜を形成した。求められる膜厚に応じて、引き上げ速度(塗料の液面と基層の相対速度)と塗料の溶剤比を調整することができる。ここでは、引き上げ速度を10~50mm/秒とし、塗膜の厚さが3μmになるように調整した。塗膜が形成された基層を、温度23℃、排気下で1分間置き、塗膜を乾燥させた。その後、塗膜に、UV照射機(商品名:UE06/81-3、アイグラフィック社製)を用いて、積算光量が600mJ/cmになるまで紫外線を照射し、塗膜を硬化させて、基層の外周面に表面層が形成された電子写真用ベルトを作製した。表面層の厚さは、断面を電子顕微鏡(商品名:XL30-SFEG、FEI社製)で観察した結果、3.0μmであった。
【0037】
[樹脂粒子の製造と付着]
表2に樹脂粒子を形成するため原料液の材料処方を示した。表2には質量部を示してあり、溶剤以外は固形分としての質量部を示している。
【0038】
樹脂粒子処方No.5およびNo.10については、表2に記載された材料を容器に秤量し、ミックスローターもしくは、スターラーで30分攪拌することで原料液を得た。
樹脂粒子処方No.1~4及び6~9については、PTFEを分散させるため、下記工程を行った。すなわち、表2に記載の材料(導電剤を除く)を容器に秤量し、粗分散処理を行った後に、高圧乳化分散器(商品名:ナノヴェイタ、吉田機械興業社製)を用いて本分散処理を行った。このとき含有するPTFEの50%平均粒径が200nmになるまで本分散処理を行って、原料液を得た。ただし、樹脂粒子処方No.3では、さらに導電剤(スラリー)を撹拌しながら、前記本分散処理が終了した液を導電剤中に滴下し、原料液を得た。尚、原料液中のPTFEの粒径は動的光散乱(DLS)技術(規格ISO-DIS22412)に基づき、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR-1000、大塚電子社製)を用いて測定した。樹脂粒子処方No.11、12については、入手したものをそのまま樹脂粒子として使用したので、上記のような攪拌等の工程は行わなかった。
【0039】
【表2】
【0040】
上記で得られた原料液を、PTFEシート(商品名:ナフロン、ニチアス社製)にワイヤーバーで膜厚2~4μmに塗布した。膜厚は、白色干渉計(商品名:VertScanR3300HL、菱化システム社製)によって測定した。
その後、温度23℃、排気下で5分間乾燥させた。その後、塗膜にUV照射機(商品名:UE06/81-3、アイグラフィック社製)を用い、積算光量が600mJ/cmになるまで紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。得られた塗膜をPTFEシートから剥離し、剥離した塗膜をボールミル(商品名:AV-1、アサヒ理化製作所社製)によって100rpm、5時間かけて粉砕した。得られた粉砕物を100メッシュの篩にかけ粗粉を取り除き、樹脂粒子を得た。
樹脂粒子の短径は3.8μmであった。樹脂粒子の短径は、走査型電子顕微鏡(商品名:Sigma500VP;CarlZeiss社製)による画像から測定した。上記走査型電子顕微鏡を用いて樹脂粒子を倍率7000倍にて観察し、最も短い径を画像から求め、50個の樹脂粒子についてのその平均値を樹脂粒子の短径とした。
【0041】
得られた樹脂粒子を、前記エンドレスベルトの表面層上に篩を用いて散布し、ウェスで擦りつけることによって表面層に付着させた。表面層をデジタルマイクロスコープ(商品名:VHX-500、キーエンス社製)用いて観察しながら、樹脂粒子の追加やふき取りを行い、付着量を調整した。以上のようにして、電子写真用ベルトを作製した。ただし、実施例4での、表面層製造方法、樹脂粒子製造方法及び付着方法は後述する。
【0042】
<評価方法>
実施例および比較例で作製した電子写真用ベルトの特性値や性能の評価方法を次に述べる。
・表面層の外表面を樹脂粒子が被覆している割合(粒子付着面積率) 電子写真用ベルトの表面層の外表面をデジタルマイクロスコープ(商品名:VHX-500、キーエンス社製)用いて観察し、該外表面の横715μm、縦535μmの矩形の観察領域の静止画を得た。その静止画において、樹脂粒子が見えている部分の面積(樹脂粒子部面積)を求め、静止画の全面積に対する比(樹脂粒子部面積/全面積)を求めた。この比を表面層外表面上の20地点で測定し、その平均値を粒子付着面積率とした。ベルトの中央部と両方の端部で粒子付着面積率を変えたサンプルに関しては、ベルトの幅方向の端部から中央に向かって20mmまでの領域を端部とし、ベルトの幅方向の端部から中央に向かって20mmよりも中央側の領域を中央部として、それぞれに20地点を測定して粒子付着面積率を求めた。
【0043】
・樹脂粒子外表面の第2のアクリル樹脂及びフッ素樹脂の露出
走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光器(EDS)による分析と、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR分析)の顕微ATR(全反射測定法)によって、材料表面の元素情報、材料表面の化学結合情報を測定することにより、樹脂粒子の外表面にアクリル樹脂およびフッ素樹脂が露出していることを確認した。
エネルギー分散型X線分光分析には、「X-MAXN80」(商品名、OXFORD社製)を用い、FT-IRには、顕微ATR分析を行える「Frontier Spotlight400」(商品名、PerkinElmer社製)を用いた。
【0044】
具体的には、まず、樹脂粒子の表面をSEMによって7000倍にて観察し、EDS分析によって炭素原子、フッ素原子が検出されることを確認した。さらに、スパチュラ1~2杯程度の樹脂粒子を用意し、FT-IRの顕微ATRユニットによって、樹脂粒子表面のIRスペクトルを測定した。その結果、C-F結合(フッ素樹脂)に由来する1213cm-1、1155cm-1付近のピークを確認した。また、メチレン基(アクリル樹脂)に由来する2925cm-1、2850cm-1、1470cm-1付近のピーク、R-COO-R基のC=O(アクリル樹脂)に由来する1735cm-1付近のピークを確認した。
【0045】
・トナークリーニング性能の評価(10万枚耐久後のトナーすり抜け本数)
図2に示した構成の電子写真画像形成装置として、改造(トナー回収用の帯電ブラシを除去)を施したレーザービームプリンター(商品名:LBP712Ci、キヤノン社製)を使用した。電子写真用ベルトをこの電子写真画像形成装置に中間転写ベルトとして装着し、画像を印刷しながら、ブレードクリーニングを行って、トナークリーニング性能の評価を行った。この評価の手順を次に示す。
【0046】
温度15℃、相対湿度10%の環境下で、記録媒体Sとして、日本産業規格(JIS) A4サイズの紙(商品名:Extra;OCE社製、坪量80g/m)を使用し、2枚の間欠印刷で10万枚を出力した。なお、この際の出力は、印字率1%でE文字画像(文字「E」の画像)を出力した。
その後、クリーニングブレードからのトナーすり抜けの本数をカウントした。具体的には、二次転写電圧をオフ(0V)にした状態で、レッド画像(イエロー及びマゼンタトナー)をA4サイズ全面に記録するように感光ドラム1y、1mにレーザー光3y、3mを照射した。その後に、クリーニングブレード11にA4サイズ全面を1回クリーニングさせたところで、ベルトの回転を止めて、電子写真画像形成装置から電子写真用ベルトを取り出し、その外周面を観察し、トナーが残留している箇所をカウントした。この際、記録媒体(紙)に転写されたときには認識されないような軽微な残留トナーもトナーすり抜けとしてカウントした。トナーすり抜けの本数は中央部、両端部に分けてカウントした。
【0047】
・樹脂粒子の付着程度の評価(テープ剥離操作後の粒子残留率)
電子写真用ベルトの表面層の外表面をデジタルマイクロスコープ(商品名:VHX-500、キーエンス社製)用いて観察し、静止画を得た。
その静止画において、樹脂粒子が付着している部分の面積(樹脂粒子部面積)を求めた。その後、粘着テープ(商品名:3M耐熱ポリイミドテープ、スリーエムジャパン社製)で、毎回新しい粘着面を用いて、粘着テープを貼った後に剥がす粘着テープ剥離操作を5回繰り返した。その後、先に静止画を取得した個所と同じ個所をデジタルマイクロスコープで再び観察し、樹脂粒子が付着している部分の面積を求めた。粘着テープ剥離操作前の樹脂粒子が粘着テープ剥離操作後に残留している残留率、すなわち、粘着テープ剥離操作前の樹脂粒子部面積に対する粘着テープ剥離操作後の樹脂粒子部面積の比を計算した。
【0048】
(実施例1)
表3に示すように、表面層処方No.1に従って作製した塗料を用いて、前述した基層の外周面に、前述のようにして表面層を形成した。また、樹脂粒子処方No.1に従って前述のようにして樹脂粒子を作製した。表面層の外表面に樹脂粒子を前述のようにして付着させることにより電子写真用ベルトを作製し、評価した。耐久後の画像は非常に良好であった。各実施例、比較例の電子写真用ベルト製造条件(表面層と樹脂粒子の処方の組み合わせ等)と評価結果を表3に示した。
【0049】
(実施例2、3、5-1~5-4、6、7、8-1~8-4、比較例1~3)
表面層処方、樹脂粒子処方及び粒子付着面積率を表3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして電子写真用ベルトを作製し、評価した。
これらの実施例のうち、実施例5-3、6、8-3~8-4では耐久後の画像が良好であり、他の実施例では耐久後の画像は非常に良好であった。ただし実施例5-4において、通紙耐久前の初期の画像では、ベタ画像でややボソつき感があった。これは、樹脂粒子の付着量が多く、トナーと樹脂粒子の付着力によってトナーの転写性が若干低下したことに起因すると考えられる。
【0050】
比較例1では、フッ素樹脂を含まない樹脂粒子を用いた。比較例2では、アクリル樹脂を含まない樹脂粒子を用いた。比較例3では、樹脂粒子に替えて、金属石けんを用いた。いずれの比較例でも、耐久後の画像にはトナーのすり抜け跡が多く見られた。
【0051】
(実施例4-1)
表面層処方No.2に従って作製した塗料を用い、前述した基層の外周面に、前述の方法により該塗料の塗膜を形成した。次いで、この塗膜に紫外線を、積算光量が60mJ/cmになるまで照射した。このとき、該塗膜は、完全には硬化していない「半硬化状態」であり、変形しやすい状態であった。
【0052】
その後、図4に示したインプリント加工装置を用い、下記方法にて、基層5-1の外周面上に形成した半硬化状態の塗膜51の外表面に、周方向に延在する溝を形成した。まず、溝付与用の円筒状金型81として、切削加工により、直径50mm、長さ250mmの円柱の外周面に、周方向に延在する複数本の凸パターンが形成されている金型を準備した。凸パターンの詳細は、凸の高さが3.5μm、凸底の長さが2.0μm、凸頂の長さが0.2μm、凸パターンの間隔が20μmであり、各凸パターンが周方向に1周、連続して形成されているものであった。この金型は無電解ニッケルメッキを施した炭素鋼(S45C)で作製した。
【0053】
次いで、塗膜51が外表面に形成された基層5-1基層を円筒状の保持型90(周長712mm)の外周にはめ込んだ。インプリント加工装置は、円筒状金型81、保持型90ともに自転させることが可能であった。金型81と保持型90とを各々互いの軸中心線を平行に維持しながら、円筒状金型81を保持型90に60MPaの加圧力で押し当てて、互いに逆方向に、回転数30mm/secで自転させた。こうして、円筒状金型81の凸パターンを、半硬化状態の塗膜の外表面に転写した。保持型90の自転が1周を1mm過ぎたところで円筒状金型81を保持型90から離間させた。
【0054】
上記の加工の結果、塗膜51の外表面には、周方向に延びる溝が形成された。また、塗膜51の外表面には、表面層処方No.2(樹脂粒子処方No.3と同一組成、アクリル樹脂比率62質量%、フッ素樹脂比率20質量%)と同じ組成の樹脂粒子が付着していた。
上記の加工の結果、塗膜51の外表面に樹脂粒子が付着した理由は以下のようなものであると推測される。
すなわち、円筒状金型81を高い圧力で、塗膜51に押し当てることによって、円筒状金型81は軸方向にも僅かに弾性変形する。この弾性変形によって、塗膜51と円筒状金型81に軸方向に相対的なズレが生じる。円筒状金型81の凸パターン部分では、このズレによって塗膜51の表面層の一部が円筒状金型81によって削られ、塗膜51と同一組成の短径1μm程度の樹脂粒子が発生する。この樹脂粒子が、円筒状金型81によって塗膜51の外表面に押圧され、塗膜51の外表面に付着する。
【0055】
次いで、UV照射機(商品名:UE06/81-3、アイグラフィック社製)を用いて、塗膜51に対して、積算光量が、先の60mJ/cmを含め、合計が600mJ/cmとなるまで紫外線を照射し、塗膜51および塗膜51の外表面上に付着した樹脂粒子とを十分に硬化させ、電子写真用ベルトを作製した。得られた電子写真用ベルトを実施例1と同様にして評価した。
【0056】
(実施例4-2)
溝付与用円筒状金型81の円筒形状を逆クラウン形状にしたこと以外は実施例4-1と同様にしてベルトを製造した。実施例4-1では金型81の円筒形状がストレートだったのに対し、本例では逆クラウン形状にし、エンドレスベルトの端部に圧力が集中するようにした。その結果、前記ズレ量が中央部に比べて両端部のほうが大きく、その結果、両端部のほうが樹脂粒子の発生量が多かった。なお、溝付与用円筒状金型81の凸パターンは実施例4-1と同じであった。逆クラウン量としては、溝付与用円筒状金型81の軸方向の中央と端で半径にして5μmの差をつけた。
【0057】
上記実施例4-1及び4-2に係る電子写真用ベルトにおいては、表面層の作製過程において、外表面に樹脂粒子が付着した半硬化状態の塗膜51に対して、更に紫外線を照射して硬化させた。このことにより、樹脂粒子が、電子写真用ベルトの外表面により強固に固着し、他部材に移行しにくい状態になっていたと考えられる。このことにより、実施例4-1~4-2に係る電子写真用ベルトにおいては、テープ剥離操作後の樹脂粒子残留率が非常に高くなったものと考えられる。
【0058】
【表3】
【符号の説明】
【0059】
5 電子写真用ベルト
11 クリーニングブレード
201 樹脂粒子
202 ベルト外表面
203 溝
204 樹脂粒子中のフッ素樹脂
205 樹脂粒子中のアクリル樹脂
図1
図2
図3
図4