(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】通信方法および該装置ならびに吊上げ具
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240318BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240318BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20240318BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G06K7/10 108
H04B5/48
H04B1/59
B66C1/66 K
(21)【出願番号】P 2020105292
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】辻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】毛笠 光容
(72)【発明者】
【氏名】丸山 政克
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-087193(JP,A)
【文献】特開2007-302391(JP,A)
【文献】特開2011-085397(JP,A)
【文献】特開2019-029880(JP,A)
【文献】特開2019-091120(JP,A)
【文献】特開2007-299277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C1/00-3/20
G06K7/00-7/14
G06Q10/00-99/00
G16Z99/00
H04B1/00、1/30
H04B1/59、1/72
H04B5/00-5/79
H04B11/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の部分を一方向に連続させて並置され、長尺な金属線または金属板をコイル状に巻き回して形成した複数の中空筒型対象物の中から所定数の中空筒型対象物を吊上げ具によって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物それぞれに備えられ、前記中空筒型対象物の識別子を少なくとも通信内容として収容した通信信号を近接無線通信で送信する複数のIDタグそれぞれから中心軸方向で複数同時に受信可能に送信される複数の前記通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する通信方法であって、
前記吊
上げ具は、前記複数の中空筒型対象物における中空の部分に一方側から他方側へ挿通され、前記中空筒型対象物を内側から引っかけるための、前記一方向に長尺な棒状の部材であるフック部を備え、
前記フック部の端部には、前記通信信号を受信するためのアンテナが設けられ、
オペレータによって、または、上位のコンピュータの送信によって、前記所定数を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された前記所定数に基づいて前記所定の前記通信信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出した前記所定の前記通信信号に収容された前記通信内容を取り出す内容取出し工程とを備える、
通信方法。
【請求項2】
前記抽出工程は、前記吊上げ具が前記複数の中空筒型対象物の一方端から前記中空の部分に挿入を開始した挿入開始時点から、前記挿入開始時点から所定時間だけ遡った時点から、または、前記挿入開始時点から所定時間だけ経過した経過時点から、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する、
請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
前記抽出工程は、前記吊上げ具が前記複数の中空筒型対象物の一方端から前記中空の部分に挿入を終了した挿入終了時点までの間で、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する、
請求項2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記抽出工程は、前記通信信号ごとに、経過時間に対する前記通信信号の受信強度の波形における重心を受信時点として求め、前記求めた受信時点で、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する、
請求項1に記載の通信方法。
【請求項5】
前記抽出工程は、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に、所定閾値以上の受信強度を持つ前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する、
請求項1に記載の通信方法。
【請求項6】
前記抽出工程の前に、前記通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度の移動平均を求める第1前処理工程をさらに備え、
前記抽出工程は、前記第1前処理工程で求めた移動平均後の通信信号に対して実行される、
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項7】
前記抽出工程の前に、前記通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度におけるピークから所定割合までの受信強度で前記通信信号を抽出する第2前処理工程をさらに備え、
前記抽出工程は、前記第2前処理工程で抽出した通信信号に対して実行される、
請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項8】
中空の部分を一方向に連続させて並置され、長尺な金属線または金属板をコイル状に巻き回して形成した複数の中空筒型対象物の中から所定数の中空筒型対象物を吊上げ具によって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物それぞれに備えられ、前記中空筒型対象物の識別子を少なくとも通信内容として収容した通信信号を近接無線通信で送信する複数のIDタグそれぞれから中心軸方向で複数同時に受信可能に送信される複数の前記通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する通信装置であって、
前記吊
上げ具は、前記複数の中空筒型対象物における中空の部分に一方側から他方側へ挿通され、前記中空筒型対象物を内側から引っかけるための、前記一方向に長尺な棒状の部材であるフック部を備え、
前記フック部の端部には、前記通信信号を受信するためのアンテナが設けられ、
オペレータによって、または、上位のコンピュータの送信によって、前記所定数を入力する入力部と、
前記入力部で入力された前記所定数に基づいて前記所定の前記通信信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出した前記所定の前記通信信号に収容された前記通信内容を取り出す内容取出し部とを備える、
通信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の通信装置を備えた吊上げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並置された複数の中空筒型対象物の中から所定数の中空筒型対象物を吊上げ具によって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物それぞれに備えられた複数のIDタグそれぞれから送信される複数の前記通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する通信方法および通信装置、ならびに、前記通信装置を備えた吊上げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
生産や流通等の現場では、完成品や中間製品等の各種製品がフォークリフトや移動クレーン等の搬送装置によって搬送され、保管場所に一時的に保管される。これら搬送や保管の際には、各製品を管理する必要があり、例えば、特許文献1や特許文献2には、金属コイルや中空円筒型金属製対象物の管理にIDタグを利用することが提案されている。
【0003】
この特許文献1に開示された金属コイルの管理方法は、RFIDタグに金属コイルを識別する固有情報を保持させる工程と、前記金属コイルの中心軸に沿って形成されている空洞内に前記RFIDタグを設置するタグ設置工程と、前記RFIDタグから読み出した前記固有情報を用いて、前記金属コイルを特定する特定工程とを備え、前記特定工程が、前記中心軸の延在方向を揃えて並べられた複数の前記金属コイルにそれぞれ設置された前記RFIDタグのうち少なくとも1つから前記固有情報を読み出し、読み出した前記固有情報を用いて前記金属コイルを特定する工程であり、読み出したいRFIDタグの設置されている1以上の金属コイルの空洞の端部と電波リーダーとの距離および前記電波リーダーの電波を供給する位置と読み出したいRFIDタグの設置されている1以上の金属コイルの中心軸の延在方向との距離を調節し、前記RFIDタグと前記電波リーダーとの情報の通信に極超短波を用い、前記電波リーダーの電波を供給する位置を、1つのRFIDタグからの情報のみが前記電波リーダーによって読み出され、かつ他のRFIDタグからの情報が電波干渉されるようになるまで前記金属コイルに近づけながら前記固有情報を読み出す方法である。
【0004】
前記特許文献2に開示されたRFIDタグの検知方法は、金属線又は金属板がコイル状に形成された複数の中空円筒型金属製対象物を中空部が連続するように並べて配置して、RFIDリーダアンテナを上記中空円筒型金属製対象物各々を順に通過するように上記中空部に挿入し、複数の上記中空円筒型金属製対象物各々の内側に取り付けられたRFIDタグを上記中空円筒型金属製対象物の並んだ順に検知するRFIDタグの検知方法であって、上記RFIDリーダアンテナを上記中空部に挿入しているとき或いは上記中空部から引き抜いているときに、該RFIDリーダアンテナによって上記RFIDタグが検知された頻度が高い場合は,上記RFIDリーダアンテナから送信される無線信号の信号強度を低下させ、上記RFIDリーダアンテナによって上記RFIDタグが検知されない場合は、上記RFIDリーダアンテナから送信される無線信号の信号強度を増大させる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6185714号公報
【文献】特許第4257378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示された金属コイルの管理方法では、金属コイルの中心軸方向に他の金属コイルが並んでいる場合、中心軸方向では金属コイルにより電波が遮蔽されずに、複数のRFIDタグそれぞれから同時に複数の固有情報が読み出されてしまう虞がある。一方、前記特許文献2に開示されたRFIDタグの検知方法は、このような場合にも対処できるが、無線信号の信号強度の調整に時間がかかる虞があり、作業効率が低下してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、より正確に通信信号を抽出できる通信方法および通信装置、ならびに、前記通信装置を備えた吊上げ具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる通信方法は、中空の部分を一方向に連続させて並置され、長尺な金属線または金属板をコイル状に巻き回して形成した複数の中空筒型対象物の中から所定数の中空筒型対象物を吊上げ具によって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物それぞれに備えられ、前記中空筒型対象物の識別子を少なくとも通信内容として収容した通信信号を近接無線通信で送信する複数のIDタグそれぞれから送信される複数の前記通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する方法であって、前記所定数を入力する入力工程と、前記入力工程で入力された前記所定数に基づいて前記所定の前記通信信号を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出した前記所定の前記通信信号に収容された前記通信内容を取り出す内容取出し工程とを備える。
【0009】
このような通信方法は、入力工程で入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0010】
他の一態様では、上述の通信方法において、前記抽出工程は、前記吊上げ具が前記複数の中空筒型対象物の一方端から前記中空の部分に挿入を開始した挿入開始時点から、前記挿入開始時点から所定時間だけ遡った時点から、または、前記挿入開始時点から所定時間だけ経過した経過時点から、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。好ましくは、上述の通信方法において、前記抽出工程は、前記挿入開始時点から、前記吊上げ具が前記中空の部分への挿入を終了した挿入終了時点までの間で、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。
【0011】
このような通信方法は、吊上げ具の挿入開始時点から、前記挿入開始時点から所定時間だけ遡った時点から、または、前記挿入開始時点から所定時間だけ経過した経過時点から、通信信号を抽出するので、吊上げ具の挿入開始前に受信される通信信号の影響を、または、吊上げ具の挿入開始前およびその近傍で受信される通信信号の影響を、排除できるから、より正確に通信信号を抽出できる。
【0012】
他の一態様では、上述の通信方法において、前記抽出工程は、前記吊上げ具が前記複数の中空筒型対象物の一方端から前記中空の部分に挿入を終了した挿入終了時点までの間で、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。
【0013】
このような通信方法は、吊上げ具の挿入終了時点までの間で、入力工程で入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0014】
他の一態様では、上述の通信方法において、前記抽出工程は、前記通信信号ごとに、経過時間に対する前記通信信号の受信強度の波形における重心を受信時点として求め、前記求めた受信時点で、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。
【0015】
このような通信方法は、経過時間に対する前記通信信号の受信強度の波形における重心を受信時点として求め、この受信時点で通信信号を抽出するので、マルチパス等によって受信順序がIDタグの並び順と異なる場合でも、前記マルチパス等の影響を低減してより正確に通信信号を抽出できる。
【0016】
他の一態様では、上述の通信方法において、前記抽出工程は、前記入力工程で入力された前記所定数だけ時系列に、所定閾値以上の受信強度を持つ前記通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。
【0017】
このような通信方法は、所定閾値未満の受信強度を持つ通信信号を排除することで、マルチパス等によって受信された、受信強度の比較的小さい通信信号を排除できるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0018】
他の一態様では、これら上述の通信方法において、前記抽出工程の前に、前記通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度の移動平均を求める第1前処理工程をさらに備え、前記抽出工程は、前記第1前処理工程で求めた移動平均後の通信信号に対して実行される。
【0019】
このような通信方法は、移動平均を行うので、受信された信号に含まれる突発的なノイズを低減できるから、より正確に通信信号を抽出できる。
【0020】
他の一態様では、これら上述の通信方法において、前記抽出工程の前に、前記通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度におけるピークから所定割合までの受信強度で前記通信信号を抽出する第2前処理工程をさらに備え、前記抽出工程は、前記第2前処理工程で抽出した通信信号に対して実行される。
【0021】
このような通信方法は、通信信号の受信強度におけるピークから所定の割合までの受信強度で前記通信信号を抽出するので、ノイズレベルの信号を排除できるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0022】
本発明の他の一態様にかかる通信装置は、中空の部分を一方向に連続させて並置され、長尺な金属線または金属板をコイル状に巻き回して形成した複数の中空筒型対象物の中から所定数の中空筒型対象物を吊上げ具によって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物それぞれに備えられ、前記中空筒型対象物の識別子を少なくとも通信内容として収容した通信信号を近接無線通信で送信する複数のIDタグそれぞれから送信される複数の前記通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する装置であって、前記所定数を入力する入力部と、前記入力部で入力された前記所定数に基づいて前記所定の前記通信信号を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した前記所定の前記通信信号に収容された前記通信内容を取り出す内容取出し部とを備える。
【0023】
このような通信装置は、入力部で入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0024】
本発明の他の一態様にかかる吊上げ具は、上述の通信装置を備える。
【0025】
これによれば、上述の通信装置を備える吊上げ具が提供できる。この吊上げ具は、上述の通信装置を備えるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる通信方法および通信装置は、より正確に通信信号を抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態における通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】前記通信装置を利用する吊上げ具の概略構成を示す概念図である。
【
図3】並置された複数の中空筒型対象物およびフック部に掛けられた中空筒型対象物の様子を説明するための図である。
【
図4】前記通信装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の第1態様における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態の第2態様における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
【
図7】第2実施形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
【
図8】第3実施形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
【
図9】第1変形形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
【
図10】第2変形形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0029】
実施形態における通信装置は、中空の部分を一方向に連続させて並置された複数の中空筒型対象物の中から所定数の中空筒型対象物を吊上げ具によって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物それぞれに備えられた複数のIDタグそれぞれから送信される複数の通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する装置である。そして、本実施形態では、この通信装置は、前記所定数を入力する入力部と、前記入力部で入力された前記所定数に基づいて前記所定の前記通信信号を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した前記所定の前記通信信号に収容された前記通信内容を取り出す内容取出し部とを備える。以下、このような通信装置について、第1ないし第3実施形態ならびにこれらの第1および第2変形形態でより具体的に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、実施形態における通信装置の構成を示すブロック図である。
図1には、第1ないし第3実施形態における通信装置Da、Db、Dcの各構成が示され、第1実施形態の通信装置Daにかかる構成には、添え字aが付され、第2実施形態の通信装置Dbにかかる構成には、添え字bが付され、第3実施形態の通信装置Dcにかかる構成には、添え字cが付され、第1ないし第3実施形態の通信装置Da~Dcに共通な構成には、添え字が付されていない。添え字に関し、他の図も同様である。
図2は、前記通信装置を利用する吊上げ具の概略構成を示す概念図である。
図3は、並置された複数の中空筒型対象物およびフック部に掛けられた中空筒型対象物の様子を説明するための図である。
図3Aは、並置された複数の中空筒型対象物の様子を示す側面図であり、
図3Bは、フック部HBaに掛けられた中空筒型対象物COの様子を示す断面図である。
【0031】
第1実施形態における通信装置Daは、例えば、
図3に示すように、中空の部分を一方向に連続させて並置された複数の中空筒型対象物CO(CO1~CO3)の中から所定数の中空筒型対象物COを吊上げ具HGによって吊り上げる場合に、前記複数の中空筒型対象物COそれぞれに備えられた複数のIDタグTGそれぞれから送信される複数の通信信号の中から、所定の前記通信信号を抽出する装置であって、例えば、
図1に示すように、アンテナ1と、第1検出部2と、第2検出部3と、制御処理部4aと、インターフェース部(IF部)5と、記憶部6aとを備える。
【0032】
中空筒型対象物COは、長尺な金属線または金属板をコイル状に巻き回して形成した部材である。
図3に示す例では、中空筒型対象物COは、断面円形の円筒型であるが、これに限定されるものではなく、断面形状は、例えば矩形等の任意であってよい。
図3に示す例では、複数の中空筒型対象物COは、3個の第1ないし第3中空筒型対象物CO1~CO3であるが、これに限定されるものではなく、個数は、任意であってよい。また、
図3に示す例では、中空筒型対象物COは、周方向に等間隔に設けられた4個の第1ないし第4フープ(帯鉄)HP1~HP4で結束されている。
【0033】
吊上げ具HGは、中空の部分を一方向に連続させて並置された複数の中空筒型対象物COの中から所定数(1または複数)の中空筒型対象物COを吊り上げる装置である。吊上げ具HGは、例えば、
図2に示すように、クレーンCRと、フックブロックHBとを備える。
【0034】
クレーンCRは、フックブロックHBに連結され、フックブロックHBを前後方向(X軸方向)、左右方向(Y軸方向)および上下方向(Z軸方向)に移動する装置であり、任意の形式であってよいが、例えば、クラブトロリ式天井クレーン等である。
【0035】
フックブロックHBは、所定数の中空筒型対象物COを掛ける装置である。フックブロックHBは、フック部HBaと、ハンガー部HBbとを備える。フック部HBaは、例えば、
図3Aに示すように、並置された複数の中空筒型対象物COにおける中空の部分に一方側から他方側へ挿通され、
図3Bに示すように、中空筒型対象物COを内側から引っかけるための、一方向に長尺な棒状の部材である。ハンガー部HBbは、フック部HBaに連結され、フック部HBaを略水平状態に保持するための部材である。ハンガー部HBbは、例えば、垂直(前記上下方向)に延びる部材である垂直部分HBbaと、水平(前記前後方向)に延びる部材である水平部分HBbbとを備える。前記垂直部分HBbaの一方端(下端)は、互いに直交するように、フック部HBaの一方端(基端)に連結され、その他方部(上端)は、互いに直交するように、前記水平部分HBbbの一方端(基端)に連結され、これによってハンガー部HBbは、側面視にて略Γ字形状を呈している。このため、フックブロックHBは、フック部HBaとハンガー部HBbとで、側面視にて略コ字形状を呈し、フック部HBaと前記水平部分HBbbとは、互いに平行となっている。クレーンCRは、ハンガー部HBbで連結されている。
【0036】
このような吊上げ具HGでは、クレーンCRによってフックブロックHBを前後方向に移動することで、フック部HBaが、並置された複数の中空筒型対象物COにおける中空の部分に挿通され、クレーンCRによってフックブロックHBを上げることで、フック部HBaが、所定数の中空筒型対象物COに引っかけられて前記所定数の中空筒型対象物COを吊り上げ、クレーンCRによってフックブロックHBを前後方向や左右方向等に移動することで、前記所定数の中空筒型対象物COが搬送(移動)される。そして、クレーンCRによってフックブロックHBを下げることで、前記所定数の中空筒型対象物COが所定の箇所に配置されてフック部HBaが、前記所定数の中空筒型対象物COから離間し、クレーンCRによってフックブロックHBを前後方向に移動することで、フック部HBaが、前記中空の部分から離脱する。
【0037】
IDタグTGは、中空筒型対象物COを特定し識別するための識別子(ID)を少なくとも通信内容として収容した通信信号を、例えば数cmや数mの近距離の近接無線通信で送信する部材である。前記近距離無線通信には、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)規格等が利用され、IDタグTGは、例えばパッシブ型のRFIDタグ等である。IDタグTGは、中空筒型対象物COの内側に、例えば、
図3Bに示すように、フープHPの内表面上に配置される。
【0038】
アンテナ1は、制御処理部4aに接続され、制御処理部4aの制御に従って、送信の場合、制御処理部4aの制御に従って通信信号の電気信号を電波に変換して放射し、受信の場合、IDタグTGからの通信信号の電波を受信して前記通信信号の電気信号に変換し、この前記通信信号の電気信号を制御処理部4aへ出力する装置である。アンテナ1は、フックブロックHBに装着される。より具体的には、アンテナ1は、例えば、長尺な導体線で形成され、中空筒型対象物COの内側に配置されたIDタグTGと効率的に送受信するために、
図2および
図3Bに示すように、フック部HBaの他方端部(先端部)に、前記一方向(水平方向)に延びるように設けられる。アンテナ1は、損傷を防止する観点から、保護カバーCVで覆われている。
【0039】
第1検出部2は、制御処理部4aに接続され、制御処理部4aの制御に従って、吊上げ具HGが、
図2および
図3Aに示す例ではアンテナ1の前記他方端(先端)(またはフック部HBaの他方端部(先端部))が、並置された複数の中空筒型対象物COの一方端から前記中空の部分に挿入を開始した挿入開始時点を検出するための装置である。第1検出部2は、例えば、
図2に示すように、フック部HBaに対向する、ハンガー部HBbの前記水平部分HBbbの他方端部(先端部)の内側に配設されたレーザ変位計(第1レーザ変位計2)である。レーザ変位計は、基本的に、物体が位置Aから他の位置Bへ移動したときに、その移動量を測定するが、物体の高さ等の寸法も測定できるので、アンテナ1の前記他方端(またはフック部HBaの他方端部)が前記中空の部分に挿入していない場合には、第1レーザ変位計2は、保護カバーCVで覆われたアンテナ1の前記他方端(またはフック部HBaの他方端部)までの第1高さを計測し、アンテナ1の前記他方端(またはフック部HBaの他方端部)が前記中空の部分に挿入すると、第1レーザ変位計2は、中空筒型対象物COまでの第2高さを計測する。前記第2高さが前記第1高さより高いので、測定結果の高さの変化で前記中空の部分への挿入開始が検出でき、その検出の時点が前記挿入開始時点として検出できる。第1検出部2の一例としての第1レーザ変位計2は、予め設定された所定のサンプリング間隔で測定し、その測定結果の高さを制御処理部4aへ出力する。
【0040】
第2検出部3は、制御処理部4aに無線で接続され、制御処理部4aの制御に従って、吊上げ具HGが、
図2および
図3Aに示す例ではアンテナ1の前記他方端(またはフック部HBaの他方端部)が、並置された複数の中空筒型対象物COにおける中空の部分への挿入を終了した挿入終了時点を検出するための装置である。第2検出部3は、例えば、クレーンCRによって移動するフックブロックHBに対し、固定的に配設されたレーザ変位計(第2レーザ変位計3)である。より具体的には、例えば、
図2に示すように、第2レーザ変位計3は、フックブロックHBを測定できるように、クレーンCRが配置される建屋や、前記建屋内に配設された他の設備等に、固定される。通常、フックブロックHBで所定数の中空筒型対象物COを吊り上げる場合、フックブロックHBは、前記所定数の中空筒型対象物COを超えた位置まで挿入された後に、前記所定数の中空筒型対象物COを吊り上げるように、少し後退される。このため、クレーンCRにフックブロックHBの移動を開始させる移動開始の指示がオペレータ(ユーザ)によって操作された後、クレーンCRにフックブロックHBの吊り上げを開始させる吊上開始の指示がオペレータによって操作されるまでの間に、第2レーザ変位計3で測定された最大移動量を検出することで、その最大移動量の時点が前記挿入終了時点として検出できる。第2検出部3の一例としての第2レーザ変位計3は、予め設定された所定のサンプリング間隔で測定し、その測定結果の移動量を制御処理部4aへ出力する。
【0041】
IF部5は、制御処理部4aに接続され、制御処理部4aの制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232CやRS-485等のインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であってもよい。IF部5には、上位の、例えば、オペレーションルームに配置された、吊上げ具HGを操作するためのコンソールが接続され、前記コンソールで入力操作された前記移動開始の指示や前記吊上開始の指示や中空筒型対象物COの前記所定数等が前記コンソールからIF部5を介して制御処理部4aに入力され、後述のように取り出された通信内容が制御処理部4aからIF部5を介して前記コンソールに出力され、表示される。
【0042】
記憶部6aは、制御処理部4aに接続され、制御処理部4aの制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、通信装置Daの各部1~3、5、6aを当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、IF部5を介して入力された前記所定数に基づいて所定の通信信号を抽出する抽出プログラムや、通信信号の変復調を行う変復調プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部6aは、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部6aは、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部4aのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0043】
制御処理部4aは、通信装置Daの各部1~3、5、6aを当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、前記所定の通信信号を抽出してその通信内容を取り出すための回路である。制御処理部4aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部4aには、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部41、抽出部42aおよび変復調部43が機能的に構成される。
【0044】
制御部41は、通信装置Daの各部1~3、5、6aを当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、通信装置Da全体の制御を司るものである。
【0045】
抽出部42aは、IF部5を介して入力された前記所定数に基づいて所定の通信信号を抽出するものである。第1実施形態では、抽出部42aは、次の第1ないし第3態様のいずれかによって、前記所定の通信信号を抽出する。抽出部42aは、第1態様として、例えば、吊上げ具HGが複数の中空筒型対象物COの一方端から前記中空の部分に挿入を開始した挿入開始時点より所定時間だけ経過した経過時点から、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。前記所定時間は、ノイズ等を低減する観点から、予め適宜に設定される。あるいは、例えば、抽出部42aは、第2態様として、前記挿入開始時点から所定時間(所定第2時間)だけ遡った時点から、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。前記所定第2時間は、ノイズ等を低減する観点から、予め適宜に設定される。あるいは、例えば、抽出部42aは、第3態様として、前記挿入開始時点から、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。この第3態様では、通信信号を抽出する起点(抽出起点)のみが設定されたが、通信信号を抽出する範囲(抽出範囲)が設定されてもよい。すなわち、例えば、抽出部42aは、前記挿入開始時点から、吊上げ具HGが前記中空の部分への挿入を終了した挿入終了時点までの間で、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出してもよい。
【0046】
変復調部43は、通信信号の変復調を行うものである。送信の場合、変復調部43は、通信内容に応じて変調することによって通信信号の電気信号を生成し、この生成した通信信号の電気信号をアンテナ1へ出力する。受信の場合、変復調部43は、アンテナ1から入力された通信信号の電気信号を復調することで、前記通信信号に収容された通信内容を取り出す。変復調部43は、抽出部42aで抽出された前記所定の通信信号の電気信号を復調することで、前記抽出部42aで抽出した前記所定の前記通信信号に収容された通信内容を取り出す。
【0047】
これら制御処理部4a、IF部5および記憶部6aは、例えば、コンピュータPCによって構成可能であり、
図2に示す例では、コンピュータPC(4a~6a)は、ハンガー部HBbの垂直部分HBbbに配設されている。
【0048】
ここで、本実施形態では、IF部5は、前記所定数を入力する入力部の一例に相当し、変復調部43は、前記抽出部で抽出した前記所定の前記通信信号に収容された前記通信内容を取り出す内容取出し部の一例に相当する。また、本実施形態では、IDタグは、一例としてRFIDタグであるので、大略、アンテナ1および変復調部43は、いわゆるRFIDリーダーに相当する。
【0049】
なお、通信装置Daは、入力部や出力部をさらに備えてもよい。前記入力部は、制御処理部4aに接続され、例えば、各種コマンドや各種データを通信装置Daに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ等である。前記入力部から、前記所定数等が入力されてもよい。前記出力部は、制御処理部4aに接続され、制御処理部4aの制御に従って、前記入力部から入力されたコマンドやデータ等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ等の表示装置等である。
【0050】
前記所定数の設定方法としては、スイッチ等を用いてオペレータが入力する他に、種々の方法を用いることができる。例えば、生産管理を扱っているコンピュータから通信装置Daへ所定数に関する情報を送信するようにしてもよい。あるいは、所定数に相当する値として、クレーンに設置した荷重計により検出された、吊っている中空筒形対象物の重量に相当する荷重値を用いてもよい。この場合、荷重値と所定数との対応関係が予め通信装置Daに記憶され、通信装置Daが入力された荷重値から所定数を求める。
【0051】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図4は、前記通信装置の動作を示すフローチャートである。
図5は、第1実施形態の第1態様における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
図5Aは、アンテナ1で受信された通信信号における、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)を示し、
図5Bは、
図5Aに示す通信信号から抽出部42aによって抽出される所定の通信信号を説明するための図である。
図6は、第1実施形態の第2態様における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
図6Aは、アンテナ1で受信された通信信号における、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)を示し、
図6Bは、
図6Aに示す通信信号から抽出部42aによって抽出される所定の通信信号を説明するための図である。
図5および
図6の各横軸は、経過時間であり、これら各縦軸は、信号強度(受信強度)である。
【0052】
このような構成の通信装置Daは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部4aには、その制御処理プログラムの実行によって、制御部41、抽出部42aおよび変復調部43が機能的に構成される。
【0053】
図4において、まず、オペレータ(ユーザ)によって吊上げ具HGによって吊り上げる中空筒型対象物COの個数として、所定数が入力される。本実施形態では、上述のように、オペレータは、前記コンソールに前記所定数を入力する。前記所定数が入力されると、前記コンソールは、通信装置DaのIF部5へ前記所定数を出力し、前記所定数がIF部5に入力され、通信装置Daに入力される(S11、入力工程)。
【0054】
次に、オペレータによって移動開始の指示が前記コンソールで入力操作されると、クレーンCRによってフックブロックHBが並置された複数の中空筒型対象物COにおける中空の部分へ移動し、アンテナ1の前記他方端(またはフック部HBaの他方端部、以下「アンテナ1の前記他方端等」と略記する)が、並置された複数の中空筒型対象物COの一方端から前記中空の部分に挿入を開始する。この挿入が開始すると、第1レーザ変位計2で測定されたら高さが前記第1高さから前記第2高さへ変化するので、制御処理部4aの抽出部42aは、所定のサンプリング間隔で計測される第1レーザ変位計2の各測定結果をモニタ(監視)し、この変化を検出すると、その検出の時点(第1時点)T1を前記挿入開始時点T1として検出し、記憶部6aに記憶する。フックブロックHBは、移動を続け、フック部HBa(アンテナ1の前記他方端等)は、前記中空の部分内へ挿入し続ける。フック部HBa(アンテナ1の前記他方端等)が前記所定数の中空筒型対象物COを超えた位置まで挿入されると、オペレータによって移動停止の指示が前記コンソールで入力操作され、フックブロックHBは、移動を停止し、少し後退する。このような動作の間、アンテナ1は、通信信号を受信して前記通信信号の電気信号を制御処理部4aへ出力し、制御処理部4aは、前記通信信号の電気信号を記憶部6aに記憶する(S12)。
【0055】
次に、通信装置Daは、抽出部42aによって、IF部5を介して入力された前記所定数に基づいて所定の通信信号を抽出する(S13a、抽出工程)。より具体的には、前記第1態様では、抽出部42aは、記憶部6aに記憶されている通信信号において、前記挿入開始時点T1より所定時間tだけ経過した経過時点T1+tから、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。例えば、
図5Aに示すように、アンテナ1で4個の通信信号α1、α2、α3、α4が時系列に受信された場合であって、前記所定数が例えば3である場合では、
図5Bに示すように、経過時点T1+t以降に受信された3個の通信信号α2、α3、α4が前記所定の通信信号として時系列に抽出される。このため、この例では、所定時間tの経過前における通信信号α1が排除できる。前記第2態様では、抽出部42aは、記憶部6aに記憶されている通信信号において、前記挿入開始時点T1より所定時間t‘だけ遡った時点T1-t’から、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。前記記第3態様では、抽出部42aは、記憶部6aに記憶されている通信信号において、前記挿入開始時点T1から、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。例えば、
図6Aに示すように、アンテナ1で4個の通信信号α11、α12、α13、α14が時系列に受信された場合であって、前記所定数が例えば3である場合では、
図6Bに示すように、前記挿入開始時点T1以降に受信された3個の通信信号α11、α12、α13が前記所定の通信信号として時系列に抽出される。このため、この例では、時系列で4番目の通信信号α4が排除できる。
【0056】
なお、前記抽出範囲が設定される場合では、上述の処理S12において、さらに、オペレータによって吊上開始の指示が前記コンソールで入力操作される。抽出部42aは、所定のサンプリング間隔で計測される第2レーザ変位計3の各測定結果をモニタ(監視)し、この吊上開始の指示が入力されると、第2レーザ変位計3で測定された最大移動量を検索し、その最大移動量の時点(第2時点)T2を前記挿入終了時点T2として検出し、記憶部6aに記憶する。この第2時点T2は、上述のように第2レーザ変位計3を用いて特定する他に、例えば、前記挿入開始時点T1およびフックブロックHBの移動速度から算出できる。あるいは、例えば、前記第2時点T2は、フックブロックHBの停止後の後退を時間(後退時間)で規定しておくことにより、吊上開始の指示が入力された時点(入力を受け付けた時点)および前記後退時間から算出できる。そして、処理S13aにおいて、抽出部42aは、記憶部6aに記憶されている通信信号において、前記挿入開始時点T1から、前記挿入終了時点T2までの間で、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。例えば、
図6に示す例では、
図6Bに示すように、前記挿入開始時点T1から、前記挿入終了時点T2までの間における3個の通信信号α11、α12、α13が前記所定の通信信号として時系列に抽出される。このため、この例では、抽出範囲外の通信信号α4が排除できる。
【0057】
図4に戻って、次に、通信装置Daは、制御処理部4aの変復調部43によって、抽出部42aで抽出された前記所定の通信信号の電気信号を復調することで、前記抽出部42aで抽出した前記所定の通信信号に収容された通信内容を取り出す(S14、内容取出し工程)。例えば、
図5に示す例では、3個の通信信号α2、α3、α4それぞれが復調され、各通信内容が取り出される。
図6に示す例では、3個の通信信号α11、α12、α13それぞれが復調され、各通信内容が取り出される。
【0058】
そして、通信装置Daは、制御処理部4aによって、変復調部43で取り出された通信内容を出力し(S15)、本処理を終了する。本実施形態では、制御処理部4aは、IF部5を介して前記コンソールに通信内容を出力し、前記コンソールは、この通信内容を表示する。
【0059】
オペレータは、この表示された通信内容から、吊り上げて搬送すべき所望の中空筒型対象物COであるか否かを判定し、正しければ、吊り上げ搬送の操作を続行し、正しくなければ、吊り上げ搬送の操作を停止し、例えば正しくない中空筒型対象物COを他所に移動して正しい中空筒型対象物COを探索する等の、正しくない場合の所定の処置を実行する。通常、金属コイル等の中空筒型対象物COは、出荷計画に従って保管されるが、誤操作等により、出荷計画と保管状態の実態とが不一致となってしまっている場合でも、IDタグTGの識別子により前記不一致が認識され、ご出荷が回避できる。
【0060】
以上説明したように、第1実施形態における通信装置Daおよびこれに実装された通信方法は、入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0061】
上記通信装置Daおよび通信方法は、吊上げ具HGの挿入開始時点T1から所定時間tだけ経過した経過時点T1+tから、または、前記挿入開始時点T1から、通信信号を抽出するので、吊上げ具HGの挿入開始前およびその近傍で受信される通信信号の影響を、または、吊上げ具HGの挿入開始前に受信される通信信号の影響を、排除できるから、より正確に通信信号を抽出できる。
【0062】
また、アンテナの指向性やIDタグの貼付け位置によっては、フック部HBaの挿入開始より少し前の時点から対象とするIDタグの信号を検知でき、かつ不要な周囲の信号の影響が無視できる程度の場合もあり得る。このような場合では、吊上げ具HGの挿入開始時点T1から所定時間t´だけ遡った時点T1-t´から通信信号を抽出する前記第2態様が好ましい。
【0063】
また、挿入終了時点T2は、フックブロックHBの最大移動量の時点に限定されるものではない。現場の状況に応じて適宜に設定すればよい。例えば、最大移動量の時点から処置時間遡った時点を挿入終了時点T2としてもよい。
【0064】
抽出範囲を設定する場合では、上記通信装置Daおよび通信方法は、前記抽出範囲外で受信される通信信号の影響を、排除できるから、より正確に通信信号を抽出できる。
【0065】
第1実施形態によれば、上述の通信装置Daを備える吊上げ具HGが提供できる。この吊上げ具HGは、上述の通信装置Daを備えるので、より正確に通信信号を抽出できる。このため、このような吊上げ具HGでは、出荷計画と保管状態の実態とが不一致となってしまっている場合でも、IDタグTGの識別子により前記不一致が認識され、ご出荷が回避できる。
【0066】
なお、上述では、抽出工程13aでは、挿入開始時点T1を起点に第1ないし第3態様で通信信号が抽出されたが、これらの場合において、抽出工程13aは、吊上げ具HGが複数の中空筒型対象物COの一方端から中空の部分に挿入を終了した挿入終了時点までの間で、入力工程S11で入力された所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出してもよい。これによれば、吊上げ具の挿入終了時点までの間で、入力工程で入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0067】
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
第1実施形態における通信装置Daは、挿入開始時点を利用することによって前記所定の通信信号を抽出したが、第2実施形態における通信装置Dbは、通信信号の重心を利用することによって前記所定の通信信号を抽出するものである。
【0068】
図7は、第2実施形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
図7Aは、アンテナ1で受信された通信信号における、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)を示し、
図7Bは、
図7Aに示す通信信号から求めた重心を示す。
図7の各横軸は、経過時間であり、これら各縦軸は、信号強度(受信強度)である。
【0069】
このような第2実施形態における通信装置Dbは、例えば、
図1に示すように、アンテナ1と、第1検出部2と、第2検出部3と、制御処理部4bと、IF部5と、記憶部6bとを備える。第2実施形態の通信装置Dbにおけるアンテナ1、第1検出部2、第2検出部3およびIF部5は、それぞれ、第1実施形態の通信装置Daにおけるアンテナ1、第1検出部2、第2検出部3およびIF部5と同様であるので、その説明を省略する。なお、第2実施形態において、挿入開始時点や挿入終了時点を利用しない場合は、第1および第2検出部2、3を、省略可能である。
【0070】
記憶部6bは、第2実施形態での抽出プログラムを備える点を除き、第1実施形態の通信装置Daにおける記憶部6aと同様である。第1実施形態での抽出プログラムは、より具体的には、挿入開始時点から、または、挿入開始時点から所定時間だけ経過した経過時点から、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出するプログラムであるが、第2実施形態での抽出プログラムは、通信信号ごとに、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)の波形における重心(幾何重心、幾何中心)を受信時点として求め、この求めた受信時点で、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の通信信号として抽出するプログラムである。
【0071】
制御処理部4bは、通信装置Dbの各部1~3、5、6bを当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、前記所定の通信信号を抽出してその通信内容を取り出すための回路である。制御処理部4bは、例えば、CPUおよびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部4bには、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部41、抽出部42bおよび変復調部43が機能的に構成される。第2実施形態の通信装置Dbにおける制御部41および変復調部43は、それぞれ、第1実施形態の通信装置Daにおける制御部41および変復調部43と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
抽出部42bは、IF部5を介して入力された前記所定数に基づいて所定の通信信号を抽出するものである。第2実施形態では、抽出部42bは、通信信号ごとに、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)の波形における重心(幾何重心、幾何中心)を受信時点として求め、この求めた受信時点で、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。
【0073】
このような第2実施形態における通信装置Dbは、
図4に示すように、処理S11および処理S12の各処理を順次に実行し、次に、処理S13bを実行し、次に、処理S14および処理S15の各処理を順次に実行し、本処理を終了する。これら第2実施形態の通信装置Dbにおける処理S11、処理S12、処理S14および処理S15は、それぞれ、第1実施形態の通信装置Daにおける処理S11、処理S12、処理S14および処理S15と同様であるので、その説明を省略する。なお、第2実施形態において、挿入開始時点や挿入終了時点を利用しない場合は、処理S12における、これらを検出する処理を、省略可能である。
【0074】
処理S13bでは、抽出部42bは、記憶部6bに記憶されている通信信号において、通信信号ごとに、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)の波形における重心(幾何重心、幾何中心)MPを受信時点TRとして求め、この求めた受信時点TRで、前記所定数だけ時系列に通信信号を前記所定の前記通信信号として抽出する。例えば、
図7Aに示すように、アンテナ1で3個の通信信号β1、β2、β3が時系列に受信された場合であって、前記所定数が例えば3である場合では、
図7Bに示すように、時系列の先頭から、経過時間と受信強度との座標系で、通信信号β1の重心MP1が受信時点TR1として求められ、通信信号β2の重心MP2が受信時点TR2として求められ、通信信号β3の重心MP3が受信時点TR3として求められる。そして、これら3個の各受信時点TR1、TR2、TR3それぞれで受信された3個の通信信号β1、β2、β3が前記所定の通信信号として時系列に抽出される。このため、この例では、通信信号β2の前後における、マルチパスによる通信信号が排除できる。
【0075】
以上説明したように、第2実施形態における通信装置Dbおよびこれに実装された通信方法は、入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0076】
上記通信装置Dbおよび通信方法は、前記重心MPの受信時点TRを求め、この受信時点TRで通信信号を抽出するので、マルチパス等によって受信順序がIDタグの並び順と異なる場合でも、前記マルチパス等の影響を低減してより正確に通信信号を抽出できる。
【0077】
第2実施形態によれば、上述の通信装置Dbを備える吊上げ具HGが提供できる。この吊上げ具HGは、上述の通信装置Dbを備えるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0078】
上記実施形態においては、挿入開始時点や挿入終了時点の情報を利用していないが、第1実施形態における挿入開始時点や挿入終了時点により抽出範囲を設定する方法と組み合わせてもよい。両者を組み合わせることにより、ノイズや不要信号を排除する効果をより高めることができる。
【0079】
次に、別の実施形態について説明する。
(第3実施形態)
第1実施形態における通信装置Daは、挿入開始時点を利用することによって前記所定の通信信号を抽出したが、第3実施形態における通信装置Dcは、受信強度(信号強度)に対する閾値を利用することによって前記所定の通信信号を抽出するものである。
【0080】
図8は、第3実施形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
図8Aは、アンテナ1で受信された通信信号における、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)を示し、
図8Bは、
図8Aに示す通信信号の中から、所定閾値Th1以上の受信強度を持つ通信信号を示す。
図8の各横軸は、経過時間であり、これら各縦軸は、信号強度(受信強度)である。
【0081】
このような第3実施形態における通信装置Dcは、例えば、
図1に示すように、アンテナ1と、第1検出部2と、第2検出部3と、制御処理部4cと、IF部5と、記憶部6cとを備える。第3実施形態の通信装置Dcにおけるアンテナ1、第1検出部2、第2検出部3およびIF部5は、それぞれ、第1実施形態の通信装置Daにおけるアンテナ1、第1検出部2、第2検出部3およびIF部5と同様であるので、その説明を省略する。なお、第3実施形態において、挿入開始時点や挿入終了時点を利用しない場合は、第1および第2検出部2、3を、省略可能である。
【0082】
記憶部6cは、第3実施形態での抽出プログラムを備える点を除き、第1実施形態の通信装置Daにおける記憶部6aと同様である。第3実施形態での抽出プログラムは、前記所定数だけ時系列に、所定閾値以上の受信強度を持つ通信信号を前記所定の通信信号として抽出するプログラムである。
【0083】
制御処理部4cは、通信装置Dcの各部1~3、5、6cを当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、前記所定の通信信号を抽出してその通信内容を取り出すための回路である。制御処理部4cは、例えば、CPUおよびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部4cには、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部41、抽出部42cおよび変復調部43が機能的に構成される。第3実施形態の通信装置Dcにおける制御部41および変復調部43は、それぞれ、第1実施形態の通信装置Daにおける制御部41および変復調部43と同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
抽出部42cは、IF部5を介して入力された前記所定数に基づいて所定の通信信号を抽出するものである。第3実施形態では、抽出部42cは、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に、所定閾値以上の受信強度を持つ通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。
【0085】
このような第3実施形態における通信装置Dcは、
図4に示すように、処理S11および処理S12の各処理を順次に実行し、次に、処理S13cを実行し、次に、処理S14および処理S15の各処理を順次に実行し、本処理を終了する。これら第3実施形態の通信装置Dcにおける処理S11、処理S12、処理S14および処理S15は、それぞれ、第1実施形態の通信装置Daにおける処理S11、処理S12、処理S14および処理S15と同様であるので、その説明を省略する。なお、第3実施形態において、挿入開始時点や挿入終了時点を利用しない場合は、処理S12における、これらを検出する処理を、省略可能である。
【0086】
処理S13cでは、抽出部42cは、記憶部6cに記憶されている通信信号において、IF部5を介して入力された前記所定数だけ時系列に、所定閾値Th1以上の受信強度を持つ通信信号を前記所定の通信信号として抽出する。例えば、
図8Aに示すように、アンテナ1で4個の通信信号γ1、γ2、γ3、γ4が時系列に受信された場合であって、前記所定数が例えば3である場合では、
図8Bに示すように、所定閾値Th1未満の通信信号γ3が排除され、時系列の先頭から、所定閾値Th1以上の受信強度を持つ3個の通信信号γ1、γ2、γ4が前記所定の通信信号として時系列に抽出される。
【0087】
以上説明したように、第2実施形態における通信装置Dbおよびこれに実装された通信方法は、入力された所定数に基づいて通信信号を抽出するので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0088】
上記通信装置Dcおよび通信方法は、所定閾値Th1未満の受信強度を持つ通信信号を排除することで、マルチパス等によって受信された、受信強度の比較的小さい通信信号を排除できるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0089】
第3実施形態によれば、上述の通信装置Dcを備える吊上げ具HGが提供できる。この吊上げ具HGは、上述の通信装置Dcを備えるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0090】
上記実施形態においては、挿入開始時点や挿入終了時点の情報を利用していないが、第1実施形態における挿入開始時点や挿入終了時点により抽出範囲を設定する方法と組み合わせてもよい。更には、第2実施形態の方法とも組み合わせてよい。複数の方法を組み合わせることにより、ノイズや不要信号を排除する効果をより高めることができる。
【0091】
なお、これら第1ないし第3実施形態における通信装置Da、Db、Dcにおいて、次の第1前処理(第1変形形態)および第2前処理(第2変形形態)の少なくとも一方が実施されてもよい。
【0092】
図9は、第1変形形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
図9Aは、アンテナ1で受信された通信信号における、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)を示し、
図9Bは、
図9Aに示す通信信号に対する移動平均後の通信信号を示す。
図10は、第2変形形態における通信信号の抽出処理を説明するための図である。
図10Aは、アンテナ1で受信された通信信号における、経過時間に対する前記通信信号の受信強度(信号強度)を示し、
図10Bは、
図10Aに示す通信信号に対する、ピークから所定の割合までの受信強度で前記通信信号を抽出した抽出後の通信信号を示す。
図9および
図10の各横軸は、経過時間であり、これら各縦軸は、信号強度(受信強度)である。
【0093】
第1変形形態では、
図1に破線で示すように、制御処理部4a、4b、4cは、抽出処理の前に、通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度の移動平均を求める第1前処理部44を機能的にさらに備える。この第1前処理部44は、
図4に破線で示すように、抽出処理S13a、S13b、S13cの前に、前記通信信号ごとに、所定時間範囲で、通信信号の受信強度の移動平均を求める(S21、第1前処理工程)。抽出処理S13a、S13b、S13cでは、抽出部42a、42b、42cは、この第1前処理で求めた移動平均後の通信信号に対して実行する。前記所定時間範囲は、予め適宜に設定される。例えば、
図9Aに示すように、アンテナ1で3個の通信信号δ1、δ2、δ3が時系列に受信された場合、通信信号ごとに移動平均を求めることによって、
図9Bに示すように、突発的なノイズが低減され、3個の通信信号δa1、δa2、δa3に整形される。そして、この整形された3個の通信信号δa1、δa2、δa3に対し、抽出処理S13a、S13b、S13cが実行される。
【0094】
この第1変形形態における通信装置Da、Db、Dcおよび通信方法は、移動平均を行うので、受信された信号に含まれる突発的なノイズを低減できるから、より正確に通信信号を抽出できる。
【0095】
第2変形形態では、
図1に破線で示すように、制御処理部4a、4b、4cは、抽出処理の前に、通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度におけるピークから所定割合までの受信強度で前記通信信号を抽出する第2前処理部45を機能的にさらに備える。この第2前処理部45は、
図4に破線で示すように、抽出処理S13a、S13b、S13cの前に、通信信号ごとに、前記通信信号の受信強度におけるピークから所定割合までの受信強度で前記通信信号を抽出する(S31、第2前処理工程)。抽出処理S13a、S13b、S13cでは、抽出部42a、42b、42cは、この第2前処理で求めた前記ピークから所定割合までの受信強度の通信信号に対して実行する。前記所定割合は、予め適宜に設定される。例えば、
図10Aに示すように、アンテナ1で3個の通信信号ε1、ε2、ε3が時系列に受信された場合、通信信号ごとに前記ピークから所定割合までの受信強度で通信信号を抽出することによって、
図10Bに示すように、ノイズレベルの通信信号が排除され、3個のピークで通信信号ε1、ε2、ε3が抽出される。そして、この抽出された3個の通信信号ε1、ε2、ε3に対し、抽出処理S13a、S13b、S13cが実行される。
【0096】
この第2変形形態における通信装置Da、Db、Dcおよび通信方法は、通信信号の受信強度におけるピークから所定の割合までの受信強度で前記通信信号を抽出するので、ノイズレベルの信号を排除できるので、より正確に通信信号を抽出できる。
【0097】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0098】
Da、Db、Dc 通信装置
1 アンテナ
2 第1検出部
3 第2検出部
4a、4b、4c 制御処理部
5 インターフェース部(IF部)
6a、6b、6c 記憶部
41 制御部
42a、42b、42c 抽出部
43 変復調部
44 第1前処理部
45 第2前処理部