(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】電源装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240318BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240318BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20240318BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G05F1/56 310L
G03G21/00 398
G03G15/02 102
G03G15/06 101
(21)【出願番号】P 2020111338
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-230675(JP,A)
【文献】特開平07-046422(JP,A)
【文献】特開2018-132653(JP,A)
【文献】特開平10-163835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
G03G 21/00
G03G 15/02
G03G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電源電圧を供給する電源装置であって、
第1の電圧源と、
入力端子が前記第1の電圧源と接続され、前記第1の電圧源から入力された電圧から前記負荷に供給する電圧を生成する電圧生成部と、
前記電圧生成部の出力端子に接続された第2の電圧源と、
前記電圧生成部が生成する前記電圧を制御する制御手段と、
前記制御手段と前記電圧生成部とに接続されたバイパス手段と、
を備え、
前記電圧生成部は、第1のトランジスタ、及び第2のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、エミッタ端子が前記第1の電圧源と接続され、ベース端子が前記制御手段と接続され、コレクタ端子が前記第2のトランジスタのエミッタ端子と接続され、
前記第2のトランジスタは、ベース端子が前記バイパス手段と接続され、コレクタ端子が前記電圧生成部の出力端子と接続され、
前記第1のトランジスタのベース端子と前記第2のトランジスタのベース端子とは第1の抵抗を介して接続され、
前記第2のトランジスタのベース端子とコレクタ端子とは第2の抵抗を介して接続され、
前記制御手段は、前記第1のトランジスタのベース端子に流れる電流を制御することにより、前記第2のトランジスタのコレクタ端子から出力される電圧を制御し、
前記バイパス手段は、前記第2のトランジスタのベース端子と前記制御手段との間に配置され、前記第2のトランジスタのベース端子に流れる電流を前記制御手段に流すことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電圧生成部の前記出力端子は、第3の抵抗を介して、前記第2の電圧源と接続されていることを特徴とする請求項1
に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1の抵抗、及び前記第2の抵抗は、同じ抵抗値を有することを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御手段は、オペアンプであり、
前記オペアンプは、前記負荷に供給する電圧に応じた目標電圧が入力される第1の入力端子と基準となる電圧が入力される第2の入力端子の入力電圧を比較した結果に応じた電圧を前記第1のトランジスタのベース端子に出力することを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記オペアンプの出力端子は、コンデンサを介して前記第2の入力端子と接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電源装置は、第3の電圧源を有し、
前記第3の電
圧源は、直列に接続された複数の抵抗を介して、前記第2のトランジスタのコレクタ端子と接続され、
前記複数の抵抗により分圧された電圧は、前記オペアンプの前記第2の入力端子に入力されることを特徴とする請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記バイパス手段は、ダイオードと抵抗とを有し、
前記ダイオードのアノード端子は、前記第2のトランジスタのベース端子と接続され、
前記ダイオードのカソード端子は、前記抵抗の一端と接続され、
前記抵抗の他端は、前記オペアンプの前記出力端子と接続され、
前記バイパス手段は、前記第2のトランジスタのベース端子の電圧が前記オペアンプの出力電圧よりも高い場合には、前記第2のトランジスタのベース端子に流れる電流を前記オペアンプの前記出力端子に流すことを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記負荷に供給する電圧に応じた目標電圧に対応するパルス信号を出力する制御部と、
前記制御部から出力されるパルス信号を平滑化する平滑部と、
を備え、
前記平滑部は、前記目標電圧に対応するパルス信号を平滑化した電圧を前記オペアンプの前記第1の入力端子に出力することを特徴とする請求項7に記載の電源装置。
【請求項9】
前記電源装置は、前記電圧生成部から出力される電流が前記第3の抵抗に流れることにより生じる電圧降下により、前記第2の電圧源の電圧から前記負荷に供給する電圧を生成することを特徴とする請求項8に記載の電源装置。
【請求項10】
前記電源装置は、前記第1の電圧源の電圧が所定の電圧よりも高い場合には、前記オペアンプの出力端子と、前記第1のトランジスタのベース端子及び前記バイパス手段の前記抵抗の前記他端との間に、耐圧の大きい第3のトランジスタを有することを特徴とする請求項9に記載の電源装置。
【請求項11】
感光ドラムと、
前記感光ドラムを一様の電位に帯電する帯電手段と、
前記帯電手段により前記一様の電位に帯電された前記感光ドラムに静電潜像を形成する露光手段と、
前記感光ドラム上の静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する現像手段と、
前記感光ドラム上に形成された前記トナー像をシートに転写する転写手段と、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電源装置と、
を備え、
前記現像手段は、前記静電潜像にトナーを付着させる現像ローラを有し、
前記電源装置は、前記現像ローラに電圧を供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記第2の電圧源は、前記現像ローラに電圧を供給する電圧源であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記帯電手段は、前記感光ドラムを前記一様の電位に帯電する帯電ローラを有し、
前記第2の電圧源は、前記帯電ローラに電圧を供給する電圧源であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、及び電源装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(b)は、
図8(a)に示すプリンタ300の画像形成部における画像形成動作を説明するための画像形成部周辺の断面図である。帯電ローラ102には、高電圧の帯電電圧を供給する帯電電圧源VPRの出力電圧である帯電電圧Vprが印加され、帯電ローラ102は、感光ドラム101の表面電位を暗部電位Vdに帯電させる。感光ドラム101は、
図8(b)中、矢印方向(時計回り方向)に回転し、露光部319から出射されたレーザ光103の照射を受けると、感光ドラム101の表面電位は、明部電位Vlに除電される。感光ドラム101は更に回転し、現像ローラ104に当接する。現像ローラ104には現像電圧Vdcが印加され、現像ローラ104の表面には、トナー100が付着している。このとき、レーザ光103の照射を受けた明部電位Vlの方が、現像電圧Vdcより電位が高いので、トナー100は感光ドラム101の表面に付着する。
【0003】
そして、感光ドラム101は更に回転し、シート109を介して、転写ローラ105に当接する。転写ローラ105には転写電圧Vtrが印加され、転写電圧Vtrの方が、トナー100が付着している明部電位Vlよりも電位が高いので、トナー100は感光ドラム101から剥離し、シート109上に付着する。シート109は、
図8(b)中、左方向に搬送され、定着器314(
図8(a))によって加圧、加熱される。すると、シート109上のトナー100が融解し、シート109に定着される。
【0004】
図9は、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcを生成する現像電圧回路Biasの構成を説明する回路図である。現像電圧Vdcは、現像電圧回路Biasとシャント抵抗R0と帯電電圧源VPRによって生成される。
図9に示す現像電圧回路Biasにおいて、CPUは、電源電圧として規定電圧Vbが供給され、出力端子TGTから現像電圧Vdcの出力電圧を制御するPWM信号を出力する。
【0005】
図9では、トランジスタTr1、Tr2は、規定電圧Vaに接続されており、トランジスタTr2のコレクタ端子にはシャント抵抗R0を介して帯電電圧源VPRが接続されている。破線で示すシャント電流Isは、規定電圧Va→トランジスタTr1→トランジスタTr2→シャント抵抗R0→帯電電圧源VPR→グランド(GND)の経路で流れる。現像電圧回路Biasは、TGT端子から出力するPWM信号により、シャント電流Isの電流値を適宜増減させることで、現像ローラ104に所望の現像電圧Vdcを出力することができる。例えば、特許文献1には、上述した現像電圧回路の回路構成が開示されている。なお、上述した
図8、
図9の詳細な説明は後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図11は、感光ドラム101が停止している状態(
図11(a))から回転開始した状態(
図11(b))を説明する画像形成部の断面図である。
図11(a)において、感光ドラム101の帯電ローラ102と当接した位置から現像ローラ104に当接した位置までの扇形の領域は、表面電位が0Vの領域である。そして、感光ドラム101は回転を開始して、
図11(a)の状態から
図11(b)に示す状態に移行する。このとき、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcが0Vよりも低い負電位の場合には、現像ローラ104の表面のトナー100は、電位の高い感光ドラム101側に付着してしまう。
【0008】
その結果、付着したトナー100は、感光ドラム101とともに転写ローラ105に移動すると、転写ローラ105に付着することにより転写ローラ105を汚してしまう。更に、転写ローラ105に搬送されるシートの裏面(転写ローラ105側の面)にトナー100が付着することにより、シート109の裏汚しが生じる。また、回転開始時に感光ドラム101に付着したトナー100は、クリーニングブレード106により除去される。ところが、除去されたトナー100が増えることにより、廃トナーを格納する廃トナーボックス107の大型化を招き、ひいては画像形成装置の大型化を招くという課題が生じる。
【0009】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、感光ドラムの回転開始時に感光ドラム上の帯電されていない領域にトナーが付着することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明では、以下の構成を備える。
【0011】
(1)負荷に電源電圧を供給する電源装置であって、第1の電圧源と、入力端子が前記第1の電圧源と接続され、前記第1の電圧源から入力された電圧から前記負荷に供給する電圧を生成する電圧生成部と、前記電圧生成部の出力端子に接続された第2の電圧源と、前記電圧生成部が生成する前記電圧を制御する制御手段と、前記制御手段と前記電圧生成部とに接続されたバイパス手段と、を備え、前記電圧生成部は、第1のトランジスタ、及び第2のトランジスタを有し、前記第1のトランジスタは、エミッタ端子が前記第1の電圧源と接続され、ベース端子が前記制御手段と接続され、コレクタ端子が前記第2のトランジスタのエミッタ端子と接続され、前記第2のトランジスタは、ベース端子が前記バイパス手段と接続され、コレクタ端子が前記電圧生成部の出力端子と接続され、前記第1のトランジスタのベース端子と前記第2のトランジスタのベース端子とは第1の抵抗を介して接続され、前記第2のトランジスタのベース端子とコレクタ端子とは第2の抵抗を介して接続され、前記制御手段は、前記第1のトランジスタのベース端子に流れる電流を制御することにより、前記第2のトランジスタのコレクタ端子から出力される電圧を制御し、前記バイパス手段は、前記第2のトランジスタのベース端子と前記制御手段との間に配置され、前記第2のトランジスタのベース端子に流れる電流を前記制御手段に流すことを特徴とする電源装置。
【0012】
(2)感光ドラムと、前記感光ドラムを一様の電位に帯電する帯電手段と、前記帯電手段により前記一様の電位に帯電された前記感光ドラムに静電潜像を形成する露光手段と、前記感光ドラム上の静電潜像をトナーにより現像し、トナー像を形成する現像手段と、前記感光ドラム上に形成された前記トナー像をシートに転写する転写手段と、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電源装置と、を備え、前記現像手段は、前記静電潜像にトナーを付着させる現像ローラを有し、前記電源装置は、前記現像ローラに電圧を供給することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感光ドラムの回転開始時に感光ドラム上の帯電されていない領域にトナーが付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の現像電圧回路の回路構成を示す回路図
【
図3】実施例1の現像電圧回路のその他の回路構成を示す回路図
【
図4】実施例2の画像形成部周辺の構成を説明する断面図
【
図5】実施例2の現像電圧回路の回路構成を示す回路図
【
図6】実施例3の画像形成部周辺の構成を説明する断面図
【
図7】実施例3の現像電圧回路の回路構成を示す回路図
【
図8】従来例の画像形成装置の構成を示す断面図、画像形成部周辺の構成を説明する断面図
【
図9】従来例の現像電圧回路の回路構成を示す回路図
【
図10】従来例の現像電圧回路のその他の回路構成を示す回路図
【
図11】従来例の回転ドラムの回転開始時の画像形成部周辺の状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[画像形成装置]
電源装置を備える画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを例にあげて説明する。
図8(a)に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ300(以下、プリンタ300という)は、静電潜像が形成される感光体としての感光ドラム101、感光ドラム101を一様の電位に帯電する帯電ローラ102(帯電手段)を備えている。プリンタ300は、更に、感光ドラム101に静電潜像を形成する露光部319(露光手段)、感光ドラム101上(感光ドラム上)に形成された静電潜像をトナーで現像する現像ローラ104を有する現像装置(現像手段)を備えている。そして、感光ドラム101に現像されたトナー像をカセット316から供給された記録材としてのシート109(不図示)に転写ローラ105(転写手段)によって転写して、シート109に転写したトナー像を定着器314で定着してトレイ315に排出する。クリーニングブレード106は、シート109に転写されず、感光ドラム101上に残留したトナーを除去し、除去されたトナーは、廃トナーを収容する廃トナーボックス107に蓄積される。この感光ドラム101、帯電ローラ102、露光部319、現像ローラ104、転写ローラ105が画像形成部である。また、プリンタ300は、後述する負荷に電源電圧を供給する電源装置500を備えている。なお、画像形成装置は、
図8(a)に例示したものに限定されず、例えば複数の画像形成部を備える画像形成装置であってもよい。更に、感光ドラム101上のトナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写部と、中間転写ベルト上のトナー像をシートに転写する二次転写部を備える画像形成装置であってもよい。
【0016】
プリンタ300は、画像形成部による画像形成動作や、シート109の搬送動作を制御するCPUを有するコントローラ320を備えている。電源装置500は、例えばコントローラ320に電力を供給する低電圧電源と、帯電ローラ102、現像ローラ104、転写ローラ105に高電圧を供給する高電圧電源(電圧源)と、を備えている。
【0017】
[画像形成部の構成]
図8(b)は、
図8(a)に示すプリンタ300の画像形成部における画像形成動作を説明するための画像形成部周辺の断面図である。帯電ローラ102には、高電圧の帯電電圧を供給する帯電電圧源VPRの出力電圧である帯電電圧Vprが印加されている。帯電電圧Vprは、概ね-1000V程度である。帯電ローラ102は、感光ドラム101の表面電位を暗部電位Vdに帯電する。暗部電位Vdは、概ね-700V程度である。感光ドラム101は、
図8(b)中、矢印方向(時計回り方向)に回転し、露光部319から出射されたレーザ光103の照射を受ける。感光ドラム101の表面電位は、レーザ光103の照射を受けることにより、明部電位Vlに除電される。明部電位Vlは、概ね-100V程度である。感光ドラム101は更に回転し、現像ローラ104に当接する。現像ローラ104には、現像電圧Vdcが印加されている。現像電圧Vdcは、概ね-400V程度である。現像ローラ104の表面には、トナー100が付着している。トナー100は、負の電荷をもった粉体である。このとき、レーザ光103の照射を受けた明部電位Vl(概略-100V)の方が、現像電圧Vdc(概略-400V)より電位が高いので、トナー100は感光ドラム101の表面に付着する。
【0018】
そして、感光ドラム101は更に回転し、シート109を介して、転写ローラ105に当接する。転写ローラ105には、高電圧の転写電圧を供給する転写電圧源VTRの出力電圧である転写電圧Vtrが印加されている。転写電圧Vtrは、概ね+1000V程度である。このとき、転写電圧Vtr(概略+1000V)の方が、トナー100が付着している明部電位Vl(概略-100V)よりも電位が高いので、トナー100は感光ドラム101から剥離し、シート109上に付着する。シート109は、
図8(b)中、左方向に搬送され、定着器314(
図8(a))によって加圧、加熱される。すると、シート109上のトナー100が融解し、シート109に定着される。なお、破線で示すシャント電流Isの説明は後述する。
【0019】
[従来の現像電圧回路の構成]
図9は、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcを生成する従来の現像電圧回路Biasの構成を説明する回路図である。現像電圧Vdcは、現像電圧回路Biasとシャント抵抗R0と帯電電圧源VPRによって生成される。
【0020】
図9に示す現像電圧回路Biasにおいて、制御部であるCPUは、電源電圧として第3の電圧源である規定電圧Vbが供給され、出力端子TGTから現像電圧Vdcの電圧を制御するパルス信号であるPWM信号を出力する。出力端子TGTは、抵抗R14の一端と接続され、抵抗R14の他端はコンデンサC2の一端及びオペアンプOP1の反転入力端子(-)と接続されている。抵抗R14及びコンデンサC2は、CPUのTGT端子から出力されるPWM信号を平滑化する平滑部を構成する。コンデンサC2の他端はグランド(GND)に接続(接地)されている。規定電圧Vbと出力される現像電圧Vdcとの間には、抵抗R12、R13が直列に接続されている。抵抗R12と抵抗R13の接続点がオペアンプOP1の非反転入力端子(+)と接続されている。制御手段であるオペアンプOP1の出力端子は、コンデンサC1を介して、非反転入力端子(+)と接続されている。また、オペアンプOP1の出力端子と非反転入力端子(+)とは、コンデンサC1を介して接続されている。
【0021】
第1のトランジスタであるpnp型のトランジスタTr1は、エミッタ端子は第1の電圧源である規定電圧Vaと接続され、コレクタ端子はトランジスタTr2のエミッタ端子と接続されている。トランジスタTr1のベース端子は、抵抗R10を介して規定電圧Vaと接続され、第1の抵抗である抵抗R1を介してトランジスタTr2のベース端子と接続され、抵抗R11を介して、オペアンプOP1の出力端子と接続されている。第2のトランジスタであるpnp型のトランジスタTr2のエミッタ端子は、トランジスタTr1のコレクタ端子と接続されている。また、トランジスタTr2のコレクタ端子は、一端がトランジスタTr2のベース端子と接続された第2の抵抗である抵抗R2の他端、及び抵抗R13の抵抗R12との接続点とは逆側の端子と接続されている。更に、トランジスタTr2のコレクタ端子は、現像電圧Vdcの出力端子と第3の抵抗であるシャント抵抗R0の一端と接続されている。シャント抵抗R0の他端は、帯電電圧Vprの出力端子、及び第2の電源である帯電電圧源VPRと接続されている。
【0022】
[従来の現像電圧回路の動作]
上述したように、
図9では、電圧生成部を構成するトランジスタTr1、Tr2は、規定電圧Va(例えば+24Vの直流電圧)に接続されており、トランジスタTr2のコレクタ端子にはシャント抵抗R0を介して帯電電圧源VPRが接続されている。破線で示すシャント電流Is(以下、コレクタ電流Isともいう)は、規定電圧Va→トランジスタTr1→トランジスタTr2→シャント抵抗R0→帯電電圧源VPR→グランド(GND)の経路で流れる。現像電圧回路Biasは、TGT端子から出力するPWM信号により、シャント電流Isの電流値を適宜増減させることで、現像ローラ104に所望の現像電圧Vdcを出力することができる。その結果、現像電圧Vdcは、次の(式1)により表すことができる。
現像電圧Vdc=Vpr+R0×Is・・・(式1)
【0023】
規定電圧Vb(例えば+3.3Vの直流電圧)と現像電圧Vdcとの間には、直列に接続された抵抗R12と抵抗R13が配置されている。そして、抵抗R12、R13により分圧された分圧電圧Vsnsは、基準電圧として、オペアンプOP1の第2の入力端子である非反転入力端子(+)に入力される。一方、オペアンプOP1の第1の入力端子である反転入力端子(-)には、コンデンサC2から所望の現像電圧Vdcに応じた電圧である目標電圧Vtgtが入力される。目標電圧Vtgtは、CPUの出力端子TGTから出力されたPWM信号を抵抗R14とコンデンサC2によって平滑した直流電圧である。オペアンプOP1は、反転入力端子(-)と非反転入力端子(+)に入力される入力電圧を比較して、比較結果に応じた出力電圧Voを出力端子より出力する。
【0024】
分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも高い場合には、オペアンプOP1の出力端子の出力電圧Voが上昇する。すると、トランジスタTr1のベース端子に流れるベース電流が減少し、その結果、トランジスタTr1のコレクタ端子に流れるコレクタ電流Is(シャント電流Isでもある)が減少する。トランジスタTr1のコレクタ電流Isが減少すると、上述した(式1)より、現像電圧Vdcが低下する。すると、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとを抵抗R12、R13で分圧した分圧電圧Vsnsが減少する。
【0025】
一方、分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも低い場合には、オペアンプOP1の出力端子の出力電圧Voが低下する。すると、トランジスタTr1のベース端子に流れるベース電流が増加し、その結果、トランジスタTr1のコレクタ端子に流れるコレクタ電流Isが増加する。コレクタ電流Isが増加すると、上述した(式1)より、現像電圧Vdcが上昇する。すると、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとを抵抗R12、R13で分圧した分圧電圧Vsnsが増加する。このように、オペアンプOP1に負帰還がかかり、目標電圧Vtgtは常に分圧電圧Vsnsと概ね等しくなる。
【0026】
CPUは、不揮発性メモリのROM(不図示)を有している。そして、ROMには、目標電圧VtgtをオペアンプOP1の反転入力端子(-)に出力するためのPWM信号のオンデューティ比(1周期におけるオン状態の比率)と現像電圧Vdcとを対応づけたテーブルが格納されている。そして、CPUは、所望の現像電圧Vdcが現像ローラ104に出力されるように、TGT端子から出力されるPWM信号のオンデューティ比を設定する。
図9に示す現像電圧回路Biasでは、目標電圧Vtgtに対応するPWM信号のオンデューティ比が高いほど、現像電圧Vdcは高くなる。
【0027】
トランジスタTr1のベース端子と出力される現像電圧Vdcの出力端子との間には、抵抗R1と抵抗R2が直列に接続されている。抵抗R1と抵抗R2は、略同じ抵抗値である。また、トランジスタTr1のベース端子に印加される電圧と現像電圧Vdcとを抵抗R1と抵抗R2により分圧した分圧電圧がトランジスタTr2のベース端子に印加される。
【0028】
トランジスタTr1のベース端子に印加される電圧は、規定電圧VaからトランジスタTr1のベース-エミッタ間電圧分だけ低い電圧となる。ベース-エミッタ間電圧は、略0.6V程度と非常に小さい電圧であるため、概ね0Vと考えても支障はない。そのため、抵抗R1のトランジスタTr1のベース端子と接続された端子(上端子)には、規定電圧Vaが印加される。一方、抵抗R2の現像電圧Vdcが出力される出力端子に接続される端子(下端子)には現像電圧Vdcが印加される。そのため、略同じ抵抗値を有する抵抗R1と抵抗R2が接続される接続点は、規定電圧Vaと現像電圧Vdcの分圧点である。その結果、抵抗R1と抵抗R2が接続される接続点と接続されたトランジスタTr2のベース端子には、規定電圧Vaと現像電圧Vdcの中間電圧、すなわち(規定電圧Va+現像電圧Vdc)/2が、印加されることとなる。すると、トランジスタTr1のエミッタ-コレクタ間電圧と、トランジスタTr2のエミッタ-コレクタ間電圧は、概ね等しくなる。トランジスタTr1、Tr2のように複数のトランジスタを使用する目的は、トランジスタのエミッタ-コレクタ間電圧を、それぞれのトランジスタに分散させることにより、より耐圧の小さいトランジスタを使用することができるようにするためである。
【0029】
図10は、
図9の現像電圧回路に、更にトランジスタTr3と抵抗R3を追加した回路の例である。このように、トランジスタと抵抗を追加することにより、更にエミッタ-コレクタ間電圧を分散させることもできる。
図10では、トランジスタを3つ使用した回路の例を示しているが、例えばトランジスタを4つ以上に増やすことも可能である。
【0030】
[従来の現像電圧回路における課題]
図11は、感光ドラム101が停止している状態(
図11(a))から回転開始した状態(
図11(b))を説明する画像形成部の断面図である。
図11(a)において、感光ドラム101の帯電ローラ102と当接した位置から現像ローラ104に当接した位置までの扇形の領域は、表面電位が0Vの箇所である。そして、感光ドラム101が回転を開始すると、
図11(a)の状態から
図11(b)に示す状態に移行する。このとき、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcが0Vよりも低い負電位の場合には、現像ローラ104の表面のトナー100は、電位の高い感光ドラム101側に付着してしまう。そこで、感光ドラム101にトナー100が付着することを防ぐために、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcを0Vより大きい電圧に設定することが考えられるが、上述した従来の現像電圧回路では難しい。以下に、従来の現像電圧回路の感光ドラム101の回転開始時の動作について説明する。
【0031】
[感光ドラムの回転開始時の現像電圧回路の動作]
図12は、現像電圧回路Biasから最大の現像電圧Vdcを出力する際の回路動作を説明する図である。
図12の回路図は、上述した
図9の回路図と同様であり、破線で示した電流Isの流れは、
図9で説明した感光ドラム101の通常動作時における電流の流れを示している。一方、
図12において、実線で示す電流Ib1、Ib2は、感光ドラム101の回転開始時の電流の流れを示している。
【0032】
図12において、
1)CPUは、出力端子TGTからオンデューティ比が最大(100%)のPWM信号を出力する。これにより、コンデンサC1により平滑化され、オペアンプOP1の反転入力端子(-)に入力される目標電圧は、常時、概ね規定電圧Vbとなる(
図12中、丸数字1参照)。
2)その結果、オペアンプOP1の出力端子から出力される電圧Voは、略0Vとなる(
図12中、丸数字2参照)。
【0033】
3)オペアンプOP1の出力端子から出力される電圧が略0Vとなるため、トランジスタTr1のベース端子に流れる電流Ib1(図中、実線で表示)が増加する。これにより、トランジスタTr1が飽和し、トランジスタTr1のエミッタ-コレクタ間電圧Vce1は略0.3Vとなる(
図12中、丸数字3参照)。
4)その結果、トランジスタTr1のコレクタ端子から出力されるコレクタ電圧Vc1は、以下の(式2)に示すように、規定電圧Va-(トランジスタTr1の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce1となる(
図12中、丸数字4参照)。
コレクタ電圧Vc1=Va-Vce1・・・(式2)
【0034】
5)トランジスタTr1がオンすることにより、トランジスタTr2のベース端子にベース電流Ib2(図中、実線で表示)が流れる。これにより、トランジスタTr2のベース端子のベース電圧Vb2は、以下の(式3)に示すように、(トランジスタTr1の)コレクタ電圧Vc1-(トランジスタTr2の)ベース-エミッタ間電圧Vbe2となる(
図12中、丸数字5参照)。
ベース電圧Vb2=Vc1-Vbe2・・・(式3)
6)トランジスタTr2の電流増幅率をhfe2とし、トランジスタTr2のコレクタ端子に流れるコレクタ電流Isとする。以下の(式4)に示すように、(トランジスタTr2の)電流増幅率hfe2を(トランジスタTr2の)ベース電流Ib2に乗じたコレクタ電流Isが、トランジスタTr2に流れる(
図12中、丸数字6参照)。
コレクタ電流Is=hfe2×Ib2・・・(式4)
【0035】
7)トランジスタTr2のコレクタ電圧Vc2は、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcであるから、トランジスタTr2のベース電流Ib2は、以下の(式5)で表される(
図12中、丸数字7参照)。
ベース電流Ib2=(Vb2-Vdc)/R2・・・(式5)
【0036】
以下に、上述した(式1)~(式5)を示す。
Vdc=Vpr+R0×Is・・・(式1)
Vc1=Va-Vce1・・・(式2)
Vb2=Vc1-Vbe2・・・(式3)
Is=hfe2×Ib2・・・(式4)
Ib2=(Vb2-Vdc)/R2・・・(式5)
そして、(式1)~(式5)を用いて、(式1)からコレクタ電流Isを消去し、現像電圧Vdcについて解くと、以下の(式6)が得られる。
現像電圧Vdc=(R2×Vpr+R0×hfe2×(Va-Vce1-Vbe2))
/(R2+R0×hfe2)・・・(式6)
【0037】
一般に、シャント抵抗R0は3.3MΩ程度、抵抗R2は10MΩ程度、電流増幅率hfe2は50程度、エミッタ-コレクタ間電圧Vce1は0.3V程度、ベース-エミッタ間電圧Vbe2は0.6V程度である。また、帯電電圧Vprは-1000V程度、規定電圧Vaは+24V程度である。これらの値を式(6)に代入すると、現像電圧Vdcは、-35V程度となる。すなわち、現像電圧Vdcは-35Vの負電位となり、感光ドラム101の表面電圧である0Vよりも低い電圧であるため、現像ローラ104上のトナー100は感光ドラム101側に付着してしまうことになる。
【0038】
[課題]
以上説明したように、回転開始時に感光ドラム101の帯電ローラ102と当接した位置から現像ローラ104に当接した位置までの領域は、表面電位が0Vの領域である。そのため、感光ドラム101が回転開始すると、表面電位が0Vの領域には、現像ローラ104からトナー100が付着してしまう。そして、感光ドラム101に付着したトナー100は、感光ドラム101の回転方向下流側に配置され、感光ドラム101に当接し、正電圧が印加される転写ローラ105に付着する。その結果、付着したトナー100は転写ローラ105の表面を汚し、転写ローラ105に搬送されるシート109の裏面(転写ローラ105側の面)にトナー100が付着することにより、シート109の裏汚しの原因となる。また、感光ドラム101上に残ったトナー100は、クリーニングブレード106により除去される。除去されるトナー100が増加することにより、廃トナー108を格納する廃トナーボックス107の大型化を招き、ひいては画像形成装置の大型化を招くという課題が生じる。
【実施例1】
【0039】
次に、本発明を適用した現像電圧回路Biasの実施例について説明する。なお、本実施例の現像電圧回路が適用される画像形成装置や、現像電圧回路Biasから出力される現像電圧が供給される現像ローラを含む画像形成部の構成は、上述した
図8、
図11と同様であり、説明を省略する。
【0040】
[現像電圧回路の構成]
図1は、本実施例の現像電圧回路Biasの回路構成を示す回路図である。
図1に示す回路構成は、上述した
図9に示す従来の現像電圧回路Biasの回路構成と比べて、バイパス手段であるダイオードD1と抵抗R15が追加された点が異なる。
図1において、抵抗R15は、一端がオペアンプOP1の出力端子、コンデンサC1の一端、及び抵抗R11の一端と接続されており、他端がダイオードD1のカソード端子と接続されている。また、ダイオードD1は、カソード端子が抵抗R15の他端と接続されており、アノード端子が抵抗R1の一端、抵抗R2の一端、及びトランジスタTr2のベース端子と接続されている。なお、
図1におけるその他の回路構成は、
図9の回路構成と同様であり、ここでの説明を省略する。
【0041】
[現像電圧回路の動作]
次に、現像電圧回路Biasの動作について、感光ドラム101の回転開始時(起動時)における回路動作と、通常動作時における回路動作と、に分けて説明する。
【0042】
[感光ドラムの起動時の現像電圧回路の動作]
上述したように、感光ドラム101の回転開始時には、
図11に示す灰色の扇型部のように、表面電位が0Vのまま、現像ローラ104に達する箇所が感光ドラム101上に存在する。このとき、現像電圧Vdcが0Vよりも低い負電位の場合には、トナー100は、電位の高い感光ドラム101の表面に付着してしまう。その結果、感光ドラム101に付着したトナーが、転写ローラ105に付着して転写ローラ105を汚し、シート109の裏汚れを生じることがある。また、クリーニングブレード106により回収された付着トナーが格納される廃トナーボックス107の大型化、ひいては画像形成装置の大型化を招くという課題も生じる。
【0043】
そのため、本実施例の現像電圧回路は、現像電圧Vdcをなるべく0Vよりも高い正電圧に設定することにより、感光ドラム101の回転開始時に感光ドラム101にトナー100が付着することを防ぐ構成を有している。
【0044】
図2は、感光ドラム101の回転開始時に、現像電圧回路Biasから最大の現像電圧Vdcを出力する際の回路動作を説明する図である。
図2において、実線で示す電流Ib1、Ib2は、感光ドラム101の回転開始時の電流の流れを示している。一方、破線で示した電流Isの流れは、後述する感光ドラム101の通常動作時における電流の流れを示している。
【0045】
図2において、
1)CPUは、出力端子TGTからオンデューティ比が最大(100%)のPWM信号を出力する。これにより、コンデンサC2により平滑化され、オペアンプOP1の反転入力端子(-)に入力される目標電圧は、常時、概ね規定電圧Vbとなる(
図2中、丸数字1参照)。
2)その結果、オペアンプOP1の出力端子から出力される電圧Voは、略0Vとなる(
図2中、丸数字2参照)。
【0046】
3)オペアンプOP1の出力端子から出力される電圧が略0Vとなるため、トランジスタTr1のベース端子に流れる電流Ib1(図中、実線で表示)が増加する。これにより、トランジスタTr1が飽和し、トランジスタTr1のエミッタ-コレクタ間電圧Vce1は略0.3Vとなる(
図2中、丸数字3参照)。
4)その結果、トランジスタTr1のコレクタ端子から出力されるコレクタ電圧Vc1は、以下の(式2)に示すように、規定電圧Va-(トランジスタTr1の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce1となる(
図2中、丸数字4参照)。
コレクタ電圧Vc1=Va-Vce1・・・(式2)
【0047】
5)トランジスタTr1がオンすることにより、トランジスタTr2のベース端子にベース電流Ib2(図中、実線で表示)が流れる。これにより、トランジスタTr2のベース端子のベース電圧Vb2は、以下の(式3)に示すように、(トランジスタTr1の)コレクタ電圧Vc1-(トランジスタTr2の)ベース-エミッタ間電圧Vbe2となる(
図2中、丸数字5参照)。
ベース電圧Vb2=Vc1-Vbe2・・・(式3)
6)(式2)を用いて、(式3)から(トランジスタTr1の)コレクタ電圧Vc1を消去すると、以下の(式7)が求められる。
ベース電圧Vb2=Va-Vce1-Vbe2・・・(式7)
一般に、エミッタ-コレクタ間電圧Vce1は0.3V程度、ベース-エミッタ間電圧Vbe2は0.6V程度、規定電圧Vaは+24V程度である。これらの値を(式7)に代入すると、(トランジスタTr2のベース端子の)ベース電圧Vb2は、+23.1V程度となる。ダイオードD1のカソード端子の電圧が略0V、アノード端子の電圧が23.1Vであるため、ダイオードD1は導通状態となる。その結果、トランジスタTr2のベース電流Ib2が、トランジスタTr2のベース端子→ダイオードD1→抵抗R15→オペアンプOP1の経路で流れる(
図2中、丸数字6参照)。
【0048】
7)トランジスタTr2のベース端子から電流Ib2(図中、実線で表示)が流れることにより、トランジスタTr2が飽和し、トランジスタTr2のエミッタ-コレクタ間電圧Vce2は略0.3Vとなる(
図2中、丸数字7参照)。
8)このときの現像電圧Vdcは、次の(式8)により表される(
図2中、丸数字8参照)。
現像電圧Vdc=Va-Vce1-Vce2・・・(式8)
【0049】
一般に、(トランジスタTr1の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce1は0.3V程度、(トランジスタTr2の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce2は0.3V程度、規定電圧Vaは+24V程度である。これらの値を(式8)に代入すると、現像電圧Vdcは、+23.4V程度となる。すなわち、現像電圧Vdcが+23.4Vであり、感光ドラム101の表面電圧0Vよりも高い電圧に設定されることにより、トナー100が感光ドラム101の表面に付着することを防ぐことができる。
【0050】
[感光ドラムの通常動作時の現像電圧回路の動作]
次に、感光ドラム101の通常動作時における現像電圧回路Biasの動作について説明する。ここで、通常動作時とは、上述した感光ドラム101の回転開始時を除いた、感光ドラム101の動作状態である。詳細には、通常動作時とは、帯電ローラ102により帯電された感光ドラム101の領域が現像ローラ104に移動した後の感光ドラム101の動作状態を指している。
【0051】
現像電圧回路Biasでは、
図2に示すように、トランジスタTr1、Tr2は、規定電圧Va(例えば+24Vの直流電圧)に接続されており、トランジスタTr2のコレクタ端子にはシャント抵抗R0を介して帯電電圧源VPRが接続されている。そして、感光ドラム101の通常動作時には、図中、破線で示すシャント電流Isが、規定電圧Va→トランジスタTr1→トランジスタTr2→シャント抵抗R0→帯電電圧源VPR→グランド(GND)の経路で流れる。現像電圧回路Biasは、TGT端子から出力するPWM信号により、シャント電流Isの電流値を適宜増減させることで、現像ローラ104に所望の現像電圧Vdcを出力することができ、現像電圧Vdcは、上述した次の(式1)により表すことができる。
現像電圧Vdc=Vpr+R0×Is・・・(式1)
【0052】
オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとの間に直列に接続された抵抗R12と抵抗R13により分圧された分圧電圧Vsnsが入力される。一方、オペアンプOP1の反転入力端子(-)には、CPUの出力端子TGTから出力されたPWM信号を抵抗R14とコンデンサC2によって平滑された直流電圧である目標電圧Vtgtが入力される。
【0053】
分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも高い場合には、オペアンプOP1の出力電圧Voが上昇して、トランジスタTr1のベース電流が減少すると、トランジスタTr1のコレクタ電流Isが減少する。その結果、上述した(式1)より、現像電圧Vdcが低下する。すると、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとを抵抗R12、R13で分圧した分圧電圧Vsnsが減少する。一方、分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも低い場合には、オペアンプOP1の出力電圧Voが低下し、トランジスタTr1のベース電流が増加すると、トランジスタTr1のコレクタ電流Isが増加する。その結果、上述した(式1)より、現像電圧Vdcが上昇する。すると、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとを抵抗R12、R13で分圧した分圧電圧Vsnsが増加する。このように、オペアンプOP1に負帰還がかかり、目標電圧Vtgtは常に分圧電圧Vsnsと概ね等しくなる。
【0054】
トランジスタTr1のベース端子と現像電圧Vdcの出力端子との間には、抵抗値が略同じである抵抗R1、R2が直列に接続されており、抵抗R1、R2で分圧した分圧電圧がトランジスタTr2のベース端子に印加される。トランジスタTr1のベース-エミッタ間電圧は、概ね0Vと考えても支障はないため、抵抗R1のトランジスタTr1のベース端子と接続された端子(上端子)には、規定電圧Vaが印加される。一方、抵抗R2の現像電圧Vdcが出力される出力端子に接続される端子(下端子)には現像電圧Vdcが印加される。その結果、抵抗R1と抵抗R2が接続される接続点と接続されたトランジスタTr2のベース端子には、規定電圧Vaと現像電圧Vdcの中間電圧、すなわち(規定電圧Va+現像電圧Vdc)/2が、印加されることとなる。
【0055】
そのため、上述した感光ドラム101の通常動作時には、ダイオードD1のカソード端子側の電圧は、アノード端子側の電圧よりも高い電圧となり、ダイオードD1は非導通状態が維持される。そのため、ダイオードD1と抵抗R15が直列に接続された回路は、感光ドラム101の回転開始時にはトランジスタTr2のベース電流Ib2が流れ、感光ドラム101の通常動作時には電流が流れない構成となっている。その結果、感光ドラム101の回転開始時には、現像ローラ104に印加する現像電圧Vdcを0Vよりも高い電圧に設定することができ、感光ドラム101にトナー100が付着することを防止することができる。これにより、感光ドラム101に付着したトナー100が転写ローラ105に付着し、転写ローラ105に搬送されるシートの裏面(転写ローラ105側の面)にトナー100が付着することによるシート109の裏汚しの発生を防ぐことができる。また、感光ドラム101にトナー100が付着しないため、クリーニングブレード106により除去される感光ドラム101上の付着トナー100を格納する廃トナーボックス107の大型化や、それに伴う画像形成装置の大型化を回避することができる。
【0056】
なお、
図2でトランジスタTr1、Tr2のように複数のトランジスタを使用している目的は、トランジスタのエミッタ-コレクタ間電圧を、各トランジスタに分散させることにより、耐圧の小さいトランジスタを使用することができるようにするためである。したがって、例えば
図3に示す現像電圧回路Biasのように、
図2の回路にトランジスタTr3、抵抗R3、抵抗R16、ダイオードD2を追加することで、更にエミッタ-コレクタ間電圧を分散させることもできる。なお、
図3では、使用しているトランジスタの数は3つであるが、例えば4つ以上に増やすことも可能である。
【0057】
以上説明したように、本実施例によれば、感光ドラムの回転開始時に感光ドラム上の帯電されていない領域にトナーが付着することを防止することができる。
【実施例2】
【0058】
実施例1では、シャント抵抗R0による電圧降下を利用して、帯電電圧源VPRの帯電電圧Vprから現像電圧Vdcを生成する実施例について説明した。実施例2では、高電圧の現像電圧を供給する現像電圧源VDC0を設け、シャント抵抗R0による電圧降下を利用して、現像電圧源VDC0の出力電圧Vdc0から現像電圧Vdcを生成する実施例について説明する。
【0059】
[画像形成部の構成]
図4は、
図8(a)に示すプリンタ300の画像形成部において、本実施例の画像形成部周辺の構成を説明する断面図である。実施例1の場合には、帯電ローラ102に供給される帯電電圧Vprは帯電電圧源VPRから供給され、現像ローラ104に供給される現像電圧Vdcも、シャント抵抗R0を介して、帯電電圧源VPRから供給されていた。一方、本実施例では、
図4に示すように、帯電電圧源VPRからの出力電圧は、帯電電圧Vprとして帯電ローラ102にのみ供給される。一方、現像電圧Vdcは、高電圧の現像電圧を供給する第2の電圧源である現像電圧源VDC0を設け、現像電圧源VDC0から出力される現像電圧Vdc0からシャント抵抗R0による電圧降下を利用して生成される。
【0060】
[現像電圧回路の構成]
図5は、本実施例の現像電圧回路Biasの回路構成を示す回路図である。
図5に示す現像電圧回路Biasの回路構成は、実施例1の
図1に示す現像電圧回路Biasの回路構成と同一であるが、シャント抵抗R0と接続されている電圧源が、
図1では帯電電圧源VPRであったのに対し、
図5では現像電圧源VDC0である点が異なる。
図5に示す回路では、現像電圧源VDC0が出力する現像電圧Vdc0から、シャント抵抗R0による電圧降下を利用して、現像電圧Vdcが生成される。
【0061】
[現像電圧回路の動作]
次に、本実施例の現像電圧回路の動作について、感光ドラム101の回転開始時(起動時)における回路動作と、通常動作時における回路動作と、に分けて説明する。
【0062】
[感光ドラムの起動時の現像電圧回路の動作]
図5に示す、本実施例の現像電圧回路Biasの回路構成は、実施例1の
図1に示す現像電圧回路Biasの回路構成と同一である。そのため、感光ドラム101の回転開始時(起動時)における回路動作は、実施例1と同様であり、ここでの説明を省略する。
【0063】
[感光ドラムの通常動作時の現像電圧回路の動作]
次に、感光ドラム101の通常動作時における現像電圧回路Biasの動作について説明する。本実施例の現像電圧回路Biasでは、
図5に示すようにトランジスタTr1、Tr2は、規定電圧Va(例えば+24Vの直流電圧)に接続されており、トランジスタTr2のコレクタ端子はシャント抵抗R0を介して、現像電圧源VDC0に接続されている。そして、感光ドラム101の通常動作時には、図中、破線で示すシャント電流Isが、規定電圧Va→トランジスタTr1→トランジスタTr2→シャント抵抗R0→現像電圧源VDC0→グランド(GND)の経路で流れる。現像電圧回路Biasは、TGT端子から出力するPWM信号により、シャント電流Isの電流値を適宜増減させることで、現像ローラ104に所望の現像電圧Vdcを出力することができ、現像電圧Vdcは、次の(式9)により表すことができる。
現像電圧Vdc=Vdc0+R0×Is・・・(式9)
【0064】
分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも高い場合、及び分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも低い場合の現像電圧回路Biasの回路動作については、実施例1と同様であり、説明を省略する。また、トランジスタTr2のベース端子には、実施例1と同様に、規定電圧Vaと現像電圧Vdcの中間電圧である(規定電圧Va+現像電圧Vdc)/2が印加されることとなる。そのため、上述した感光ドラム101の通常動作時において、ダイオードD1のカソード端子側の電圧は、アノード端子側の電圧よりも高い電圧となり、ダイオードD1は非導通状態が維持される。
【0065】
このように、本実施例でも、実施例1と同様に、ダイオードD1と抵抗R15が直列に接続された回路は、感光ドラム101の回転開始時にはトランジスタTr2のベース電流Ib2が流れ、感光ドラム101の通常動作時には電流が流れない構成となっている。その結果、感光ドラム101の回転開始時には、現像ローラ104に印加する現像電圧Vdcを0Vよりも高い電圧に設定することができ、感光ドラム101にトナー100が付着することを防止することができる。これにより、シートの裏面(転写ローラ105側の面)にトナー100が付着することによるシート109の裏汚しの発生を防ぐことができる。また、感光ドラム101にトナー100が付着しないため、感光ドラム101の回転開始時にクリーニングブレード106により除去される感光ドラム101上の付着トナー100が減少する。その結果、除去された付着トナー100を格納する廃トナーボックス107の大型化、画像形成装置の大型化を回避することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施例によれば、感光ドラムの回転開始時に感光ドラム上の帯電されていない領域にトナーが付着することを防止することができる。
【実施例3】
【0067】
実施例1、2では、現像電圧回路BiasのトランジスタTr1のコレクタ端子に印加される規定電圧Vaが、数十Vの正電圧(例えば+24Vの直流電圧)の場合の回路構成について説明した。現像電圧回路Biasで使用しているオペアンプOP1の出力端子の耐圧が数十Vであることが一般的であり、オペアンプOP1の耐圧に応じて、規定電圧Vaの電圧を数十Vの正電圧としている。オペアンプOP1の出力端子の耐圧は、規定電圧Vaと同じか、規定電圧Vaより高いことが望ましい。
【0068】
一方、感光ドラム101の回転開始時、感光ドラム101上には、
図11中の扇型の領域のように、表面電位が0Vのまま、現像ローラ104に移動する領域が存在する。このとき、現像ローラ104に印加される現像電圧Vdcが0Vよりも低い負電位の場合には、現像ローラ104の表面上のトナー100は、電位の高い感光ドラム側に付着してしまうことになる。
【0069】
そのための対策として、現像電圧Vdcをなるべく高い電圧に設定することが有効であることを上述した。現像電圧Vdcを更に高い電圧(例えば、プラス数十Vからプラス数百Vの正電圧)に設定しようとすると、所定の電圧である規定電圧Vaをより高い電圧にする必要があり、オペアンプOP1の出力端子の耐圧を高くする必要が生ずる。ところが、これは、回路のコストアップを招くことになる。実施例3では、オペアンプOP1の出力端子の耐圧を上げずに、規定電圧Vaの電圧を高く設定する方法について説明する。
【0070】
[画像形成部の構成]
図6は、
図8(a)に示すプリンタ300の画像形成部において、本実施例の画像形成部周辺の構成を説明する断面図である。
図8(b)に示す実施例1の場合の現像電圧回路Biasでは、トランジスタTr1は、規定電圧Vaと接続されていた。一方、本実施例では、
図6に示すように、現像電圧回路BiasのトランジスタTr1は、電圧Veを出力する電圧源VEと接続されている。なお、電圧源VEが出力する電圧Veの電圧値は、例えばプラス数十Vからプラス数百Vの直流電圧とする。
【0071】
[現像電圧回路の構成]
図7は、本実施例の現像電圧回路Biasの回路構成を示す回路図である。
図7に示す現像電圧回路Biasの回路構成は、実施例1の
図1に示す現像電圧回路Biasと比べて、次の点が異なる。すなわち、トランジスタTr1に接続される電圧が、実施例1の場合には規定電圧Vaであったが、実施例3では、規定電圧Vaよりも高電圧の電圧源VEから出力される電圧Ve(Ve>Va)となっている点が異なる。また、現像電圧回路Biasにおいて、実施例3の場合には、オペアンプOP1の出力端子と抵抗R11の一端及び抵抗R15の一端との間に、第3のトラジスタであるトランジスタTr4と抵抗R17、R18により構成された回路が追加されている点が異なる。
【0072】
図7において、抵抗R17は、一端がオペアンプOP1の出力端子、及びコンデンサC1の一端と接続され、他端が抵抗R18の一端、及びトランジスタTr4のベース端子と接続されている。抵抗R18の他端はトランジスタTr4のエミッタ端子と接続されている。トランジスタTr4のコレクタ端子は抵抗R11の一端及び抵抗R15の一端と接続され、エミッタ端子はGNDに接続されている。また、トランジスタTr1のエミッタ端子、及び抵抗R10の一端は、電圧源VEに接続されている。その他の回路構成は、実施例1の
図1と同様であり、説明を省略する。
【0073】
[現像電圧回路の動作]
次に、本実施例の現像電圧回路の動作について、感光ドラム101の回転開始時(起動時)における回路動作と、通常動作時における回路動作と、に分けて説明する。
【0074】
[感光ドラムの起動時の現像電圧回路の動作]
図7において、トランジスタTr4は、オペアンプOP1の出力端子から出力電圧Voがハイレベルのときにオン状態、ローレベルのときにオフ状態となるnpn型のトランジスタである。そのため、実施例1では、CPUは出力端子TGTからオンデューティ比が最大(100%)のPWM信号を出力していたが、本実施例では、CPUは出力端子TGTからオンデューティ比が最小(0%)のPWM信号を出力する。これにより、オペアンプOP1の出力端子からハイレベルの電圧が出力されるようにする。なお、CPUは、所望の現像電圧Vdcが現像ローラ104に出力されるように、上述したROMに格納されたテーブル内の情報に基づいて、TGT端子から出力されるPWM信号のオンデューティ比(1周期におけるオン状態の比率)を設定する。そのため、回路構成を変更することなく、PWM信号のオンデューティ比を変更して対応することが可能である。
【0075】
図7において、
1)CPUは、出力端子TGTからオンデューティ比が最小のPWM信号を出力する。これにより、オペアンプOP1の反転入力端子(-)に入力される目標電圧は、常時、概ね0Vとなる。その結果、オペアンプOP1の出力端子から出力される電圧Voは、ハイレベルとなる。これにより、トランジスタTr4は、オン状態となる。
2)トランジスタTr4がオン状態となることにより、トランジスタTr1のベース端子に流れる電流Ib1が増加して、トランジスタTr1が飽和し、トランジスタTr1のエミッタ-コレクタ間電圧Vce1は略0.3Vとなる。その結果、トランジスタTr1のコレクタ端子から出力されるコレクタ電圧Vc1は、規定電圧Ve-(トランジスタTr1の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce1となる。
【0076】
3)トランジスタTr1がオンすることにより、トランジスタTr2のベース端子にベース電流Ib2が流れる。これにより、トランジスタTr2のベース端子のベース電圧Vb2は、(トランジスタTr1の)コレクタ電圧Vc1-(トランジスタTr2の)ベース-エミッタ間電圧Vbe2となる。その結果、トランジスタTr2のベース端子のベース電圧Vb2は、規定電圧Ve-(トランジスタTr1の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce1-(トランジスタTr2の)ベース-エミッタ間電圧Vbe2となる。
ダイオードD1のアノード端子の電圧はカソード端子の電圧よりも高いため、ダイオードD1は導通状態となる。そのため、トランジスタTr2のベース電流Ib2が、トランジスタTr2のベース端子→ダイオードD1→抵抗R15→トランジスタTr4→オペアンプOP1の経路で流れる。
【0077】
4)トランジスタTr2のベース端子から電流Ib2が流れることにより、トランジスタTr2が飽和し、トランジスタTr2のエミッタ-コレクタ間電圧Vce2は略0.3Vとなる。このときの現像電圧Vdcは、次の(式10)により表される。
現像電圧Vdc=Ve-Vce1-Vce2・・・(式10)
【0078】
一般に、(トランジスタTr1の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce1は0.3V程度、(トランジスタTr2の)エミッタ-コレクタ間電圧Vce2は0.3V程度、規定電圧Veはプラス数十Vからプラス数百Vである。これらの値を(式10)に代入すると、現像電圧Vdcは、略プラス数十Vからプラス数百V程度となる。すなわち、現像電圧Vdcは、感光ドラム101の表面電圧0Vよりも高い電圧に設定され、トナー100が感光ドラム101の表面に付着することを防ぐことができる。
【0079】
[感光ドラムの通常動作時の現像電圧回路の動作]
現像電圧回路Biasでは、
図7に示すように、pnp型のトランジスタTr1、Tr2は、規定電圧Ve(例えば電圧源VEから出力される+数十Vから+数百Vの直流電圧)に接続されている。また、トランジスタTr2のコレクタ端子にはシャント抵抗R0を介して帯電電圧源VPRが接続されている。そして、感光ドラム101の通常動作時には、図中、破線で示すシャント電流Isが、電圧源VE→トランジスタTr1→トランジスタTr2→シャント抵抗R0→帯電電圧源VPR→グランド(GND)の経路で流れる。現像電圧回路Biasは、TGT端子から出力するPWM信号により、シャント電流Isの電流値を適宜増減させることで、現像ローラ104に所望の現像電圧Vdcを出力することができ、現像電圧Vdcは、次の(式11)により表すことができる。
現像電圧Vdc=Vpr+R0×Is・・・(式11)
【0080】
また、実施例1の場合と同様に、オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとの間に直列に接続された抵抗R12と抵抗R13により分圧された分圧電圧Vsnsが入力される。一方、オペアンプOP1の反転入力端子(-)には、CPUの出力端子TGTから出力されたPWM信号を抵抗R14とコンデンサC2によって平滑された直流電圧である目標電圧Vtgtが入力される。なお、上述したように、本実施例では、オペアンプOP1とpnp型のトランジスタTr1、Tr2との間にはnpn型のトランジスタTr4が配置されている。そのため、CPUは、実施例1のPWM信号のオンデューティ比(1周期におけるオン時間の比率)が、本実施例ではオフデューティ比(1周期におけるオフ時間の比率)となるPWM信号を出力する。
【0081】
分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも高い場合には、オペアンプOP1の出力電圧Voが上昇して、トランジスタTr4に流れ込むトランジスタTr1のベース電流が減少すると、トランジスタTr1のコレクタ電流Isが減少する。その結果、上述した(式11)より、現像電圧Vdcが低下する。すると、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとを抵抗R12、R13で分圧した分圧電圧Vsnsが減少する。一方、分圧電圧Vsnsが目標電圧Vtgtよりも低い場合には、オペアンプOP1の出力電圧Voが低下し、トランジスタTr4に流れ込むトランジスタTr1のベース電流が増加すると、トランジスタTr1のコレクタ電流Isが増加する。その結果、上述した(式11)より、現像電圧Vdcが上昇する。すると、規定電圧Vbと現像電圧Vdcとを抵抗R12、R13で分圧した分圧電圧Vsnsが増加する。このように、オペアンプOP1に負帰還がかかり、目標電圧Vtgtは常に分圧電圧Vsnsと概ね等しくなる。
【0082】
なお、感光ドラム101の通常動作時の現像電圧回路BiasのトランジスタTr1、Tr2の回路動作については、実施例1の場合と同様であり、ここでの説明を省略する。これにより、感光ドラム101の回転開始時には、現像ローラ104に印加する現像電圧Vdcを0Vよりも高い電圧に設定することができ、感光ドラム101にトナー100が付着することを防止することができる。その結果、感光ドラム101に付着したトナー100が転写ローラ105に付着し、転写ローラ105に搬送されるシートの裏面(転写ローラ105側の面)にトナー100が付着することによるシート109の裏汚しの発生を防ぐことができる。また、感光ドラム101にトナー100が付着しないため、クリーニングブレード106により除去される感光ドラム101上の付着トナー100を格納する廃トナーボックス107の大型化や、それに伴う画像形成装置の大型化を避けることができる。
【0083】
以上説明したように、
図7では、オペアンプOP1の出力端子と、トランジスタTr1のベース端子の間に、エミッタ-コレクタ間耐圧が、電圧源VEから供給される電圧Veよりも高いトランジスタTr4を挿入している。このような回路構成とすることで、オペアンプOP1の出力端子の耐圧を上げずに、トランジスタTr1のコレクタに印加する電圧を高く設定することができる。なお、電圧源VEから供給される電圧Veに応じて、トランジスタTr1、Tr2も、電圧Veに応じたトランジスタに変更される。
【0084】
なお、本実施例においても、実施例1の
図3に示す現像電圧回路Biasのように、
図7の回路にトランジスタTr3、抵抗R3、抵抗R16、ダイオードD2を追加することで、更にエミッタ-コレクタ間電圧を分散させることもできる。また、本実施例においても、実施例2のように、高電圧の現像電圧を供給する現像電圧源VDC0を設け、現像電圧源VDC0の出力電圧Vdc0からシャント抵抗R0による電圧降下を利用して、現像電圧Vdcを生成することもできる。
【0085】
以上説明したように、本実施例によれば、感光ドラムの回転開始時に感光ドラム上の帯電されていない領域にトナーが付着することを防止することができる。
【符号の説明】
【0086】
D1 ダイオードD1
OP1 オペアンプOP1
R1 抵抗R1
R2 抵抗R2
Tr1 トランジスタTr1
Tr2 トランジスタTr2
Va 規定電圧Va