(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】振れ補正装置、それを備えるレンズ装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240318BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240318BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240318BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240318BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G02B7/04 E
H04N23/68
H04N23/55
(21)【出願番号】P 2020115382
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】松本 徹
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187276(JP,A)
【文献】特開2014-170178(JP,A)
【文献】特開2017-090587(JP,A)
【文献】特開2013-231928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G02B 7/04
H04N 23/68
H04N 23/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠と、
レンズを保持して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動可能な可動枠と、
該可動枠を移動させるための駆動部とを備え、
前記可動枠は、光軸に垂直な方向において前記固定枠と対向する第1当接部を有し、
前記固定枠は、前記第1当接部に当接することで前記可動枠の移動を制限する第2当接部と、前記可動枠の移動に際して前記第1当接部に当接しない切欠部とを有し、
前記駆動部は、前記切欠部の位置に配置される第1マグネットを含み、
該第1マグネットは、前記第1当接部に当接することで前記可動枠の移動を制限する第3当接部を有することを特徴とする振れ補正装置。
【請求項2】
前記第1当接部は、光軸に垂直な方向において前記第3当接部と対向する平面部を含むことを特徴とする請求項1に記載の振れ補正装置。
【請求項3】
前記レンズの面頂点が光軸上に位置する状態において、光軸から前記第2当接部までの距離をL1、光軸から前記第3当接部までの距離をL2とするとき、
L1>L2
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の振れ補正装置。
【請求項4】
前記レンズの面頂点が光軸上に位置する状態において、前記第1当接部から前記第2当接部までの距離をL3、前記第1当接部から前記第3当接部までの距離をL4とするとき、
L3≦L4
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項5】
前記第2当接部の少なくとも一部は、光軸に垂直な方向から見たとき前記第1マグネットと重なっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項6】
前記切欠部の少なくとも一部は、光軸に垂直な方向から見たとき前記第1マグネットと重なっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項7】
前記第2当接部の少なくとも一部は、光軸に垂直な方向から見たとき前記レンズと重なっていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項8】
前記切欠部の少なくとも一部は、光軸に垂直な方向から見たとき前記レンズと重なっていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項9】
前記第1当接部は、前記可動枠における前記レンズを保持する保持部のうち、光軸に垂直な方向における前記レンズとは反対側の面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項10】
前記固定枠は、光軸に垂直な方向における前記切欠部に対して光軸とは反対側に設けられた開口部を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項11】
前記駆動部は、前記開口部の位置に配置される第2マグネットを含むことを特徴とする請求項10に記載の振れ補正装置。
【請求項12】
前記駆動部は、光軸に垂直な方向における前記第1マグネットに対して光軸とは反対側に配置される第2マグネットを含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項13】
前記第1マグネット及び前記第2マグネットは、互いに異なる磁極の面が同じ側を向くように配置されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の振れ補正装置。
【請求項14】
前記可動枠のうち光軸方向において前記第1当接部とは異なる位置に設けられた緩衝部材を備えることを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項15】
前記固定枠は、光軸方向において前記第2当接部とは異なる位置に設けられ、前記可動枠の移動に際して前記緩衝部材に当接する第4当接部を有することを特徴とする請求項14に記載の振れ補正装置。
【請求項16】
前記レンズの面頂点が光軸上に位置する状態において、前記第1当接部から前記第2当接部までの距離をL3、前記緩衝部材から前記第4当接部までの距離をL5とするとき、
L3>L5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項15に記載の振れ補正装置。
【請求項17】
前記第1マグネットは、光軸方向において前記第3当接部とは異なる位置に設けられ、前記可動枠の移動に際して前記緩衝部材に当接する第5当接部を有することを特徴とする請求項14乃至16の何れか一項に記載の振れ補正装置。
【請求項18】
前記レンズの面頂点が光軸上に位置する状態において、前記第1当接部から前記第3当接部までの距離をL4、前記緩衝部材から前記第5当接部までの距離をL6とするとき、
L4>L6
なる条件式を満足することを特徴とする請求項17に記載の振れ補正装置。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか一項に記載の振れ補正装置と、前記レンズとは異なるレンズとを備えることを特徴するレンズ装置。
【請求項20】
請求項1乃至18の何れか一項に記載の振れ補正装置と、前記レンズからの光を受光する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振れ補正装置に関し、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置に用いられるレンズ装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手振れ等に起因する像振れを抑制(補正)するための振れ補正装置を備えたレンズ装置及び撮像装置が知られている。特許文献1には、像振れ補正用のレンズを光軸に垂直な方向へ移動させるための駆動部として、マグネットとコイルを含む電磁アクチュエータを採用した振れ補正装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、振れ補正装置においては、小型でありながら像振れを良好に補正できることが求められている。良好な補正性能を得るためには、レンズの移動量(ストローク)を十分に確保することが必要になるが、一般的にレンズの移動量が大きくなるとそれに伴って駆動部のサイズも大きくなってしまう。特許文献1では、振れ補正装置の小型化に際しての駆動部の配置について考慮されていないため、駆動部のサイズを大きくした場合に装置全体が大型化してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、小型でありながら像振れを良好に補正することが可能な振れ補正装置、それを備えるレンズ装置及び撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、本発明の一側面としての振れ補正装置は、固定枠と、レンズを保持して光軸に垂直な方向の成分を含む方向へ移動可能な可動枠と、該可動枠を移動させるための駆動部とを備え、前記可動枠は、光軸に垂直な方向において前記固定枠と対向する第1当接部を有し、前記固定枠は、前記第1当接部に当接することで前記可動枠の移動を制限する第2当接部と、前記可動枠の移動に際して前記第1当接部に当接しない切欠部とを有し、前記駆動部は、前記切欠部の位置に配置される第1マグネットを含み、該第1マグネットは、前記第1当接部に当接することで前記可動枠の移動を制限する第3当接部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型でありながら像振れを良好に補正することが可能な振れ補正装置、それを備えるレンズ装置及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る撮像システムの要部を示すブロック図。
【
図3】実施例1に係る振れ補正装置における可動ユニットの正面図。
【
図4】実施例1に係る振れ補正装置を構成する各部材の位置関係を示す正面図。
【
図5】実施例1に係る振れ補正装置の光軸上における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面は、便宜的に実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。また、各図面において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る撮像システム(カメラシステム)100の要部の構成を示すブロック図である。撮像システム100は、レンズ装置(交換レンズ)200と撮像装置(カメラ本体)300と備える。本実施例に係る撮像システム100は、撮像装置300に対してレンズ装置200が着脱可能なカメラシステム(レンズ交換型カメラ)であることを想定している。ただし、撮像システム100は、レンズ装置200及び撮像装置300が互いに一体化されたカメラシステム(レンズ一体型カメラ)であってもよい。
【0011】
レンズ装置200は、レンズ群201、レンズ駆動部202、絞り203、レンズマイコン204、振れ検出部205、操作量検出部206、操作リング207、記憶部208、レンズマウント209、レンズ端子210、及び振れ補正装置400を有する。撮像装置300は、カメラマウント301、カメラマイコン302、撮像素子303、シャッタ304、カメラ表示部305、及びカメラ端子306を有する。
【0012】
レンズ群201は、光軸方向へ移動可能な少なくとも1枚のレンズで構成される。レンズ駆動部202は、レンズ群201をズーミングやフォーカシングに際して光軸方向へ移動させるための手段であり、例えばステッピングモータ、振動型モータ、及びボイスコイルモータ等である。絞り203は、開口径を変更することで撮像装置300へ向かう光の光量を調節する開口絞りである。振れ補正装置400は、撮像システム100による撮像時における使用者の手振れ等に起因する像振れを補正するための装置である。
【0013】
レンズ群201、絞り203、及び振れ補正装置400で構成される光学系によって、物体(被写体)の像(光学像)が形成される。なお、レンズ群201、絞り203、及び振れ補正装置400の光軸方向における位置関係は、
図1に示したものに限られず、必要に応じて変更してもよい。ズーミングやフォーカシングに際してレンズ群201及び絞り203を同時に(一体的に)移動させてもよい。また、レンズ装置200は必要に応じてレンズ群201以外のレンズ群を有していてもよい。この場合、ズーミングやフォーカシングに際して隣接するレンズ群の間隔が変化することになる。
【0014】
レンズマイコン204は、レンズ駆動部202、絞り203、及び振れ補正装置400を制御するための手段であり、
図1に示すとおり各構成要素と通信可能に構成されている。レンズマイコン204としては、例えばMPUやCPU等のプロセッサにより構成されるマイクロコンピュータを採用することができる。振れ検出部205は、レンズ装置200の角速度を検出するための手段であり、例えば角速度センサ(ジャイロセンサ)などである。レンズマイコン204は、振れ検出部205からの出力である角速度値を用いて振れ補正量を算出し、該振れ補正量に基づいて振れ補正装置400を制御する。
【0015】
操作リング207は、レンズ群201の光軸を中心とする回転方向(周方向)において回転可能な操作部材(回転部材)である。操作量検出部206は、操作リング207の回転量を検出するための手段であり、例えばエンコーダ等である。操作量検出部206は、操作リング207の回転量に応じた信号を出力し、レンズマイコン204は、該信号を用いてレンズ群201、絞り203、及び振れ補正装置400等を制御する。すなわち、使用者が操作リング207を回転させることにより、これらの各構成要素を操作することができる。なお、操作リング207による操作対象は、使用者により選択できるようにしてもよい。記憶部208は、レンズ装置200に関する情報を記憶するための手段(メモリ)である。
【0016】
レンズマウント209及びカメラマウント301は、互いに機械的に接続することでレンズ装置200を撮像装置300に装着するための接続部である。レンズ端子210及びカメラ端子306は、互いに電気的に接続することでレンズ装置200と撮像装置300との通信を可能にするための接続部である。なお、レンズ端子210及びカメラ端子306がレンズマウント209及びカメラマウント301に設けられていてもよい。言い換えると、レンズマウント209及びカメラマウント301が互いに機械的かつ電気的に接続可能であってもよい。また、撮像システム100がレンズ一体型カメラである場合は、これらのマウント及び端子を有していなくてもよい。
【0017】
撮像素子303は、レンズ装置200により形成された物体の像を受光して光電変換することで物体を撮像するための手段であり、例えばCCDセンサやCMOSセンサ等のセンサである。撮像素子303の撮像面(センサ面)は、レンズ装置200の像面と一致するように配置されている。カメラマイコン302は、撮像素子303、シャッタ304、及びカメラ表示部305を制御するための手段である。カメラマイコン302は、レンズ端子210及びカメラ端子306を介してレンズマイコン204と通信することができる。例えば、カメラマイコン302は、記憶部208が記憶するレンズ装置200に関する情報をレンズマイコン204から受け取り、この情報に基づいて各構成要素を制御することができる。
【0018】
カメラマイコン302は、撮像素子303から出力される信号を用いて画像データを生成し、該画像データをカメラ表示部305に表示したり不図示の記録媒体に記録したりすることができる。カメラ表示部305は、画像データのほか、レンズ装置200の状態、例えば振れ補正装置400のオン/オフ状態などを表示することができる。また、カメラマイコン302は、撮像素子303のISO感度、ホワイトバランス、シャッタ速度等の撮影条件を制御することができる。シャッタ304は、カメラマイコン302からの指示に応じて動作することで撮像素子303の露光量を制御する。カメラマイコン302としては、レンズマイコン204と同様のマイクロコンピュータを採用することができる。なお、撮像システム100がレンズ一体型カメラである場合は、レンズマイコン204とカメラマイコン302とを別体とする必要はなく、単一のマイコンとして一体化してもよい。
【0019】
次に、本実施例に係る振れ補正装置400の構成について詳細に説明する。
【0020】
図2は振れ補正装置400の分解斜視図であり、
図3は振れ補正装置400における可動ユニット500を像側(-Z側)から見たときの正面図である。また、
図4は振れ補正装置400のうち後述する第2ヨーク411を除いたものを像側から見たときの正面図であり、
図5は振れ補正装置400の光軸Oを含みX軸に垂直な断面を示す図(YZ断面図)である。
【0021】
振れ補正装置400は、固定枠403と、像振れ補正用のレンズ402を保持して光軸Oに垂直な方向(径方向)の成分を含む方向へ移動可能な可動枠(可動レンズ枠)401と、可動枠401を移動させるための駆動部(可動枠駆動部)とを備える。なお、
図3に示す可動ユニット500は、像振れ補正に際して移動する部材で構成されるユニットであり、言い換えると可動枠401及び可動枠401に取り付けられた部材で構成されるユニットである。本実施例に係る可動ユニット500は、後述する各コイル404,405及びフレキシブル基板414と、光軸方向においてそれらの間に配置された部材とで構成されている。
【0022】
図5に示すように、可動枠401には、レンズ402を嵌合させることで保持するレンズ嵌合部(レンズ保持部)401fが設けられている。本実施例では、レンズ402がUV接着材(紫外線硬化樹脂)により可動枠401に固定されているが、UV接着剤以外の接着剤や接着剤以外のカシメや押え環などの固定部材により固定されていてもよい。また、可動枠401には、第1コイル404及び第2コイル405が設けられている。
図3に示すように、第1コイル404及び第2コイル405は光軸Oからの距離が等しい位置に配置されており、夫々の長手方向は互いに90°の角度を成している。本実施例に係る第1コイル404及び第2コイル405は、UV接着剤により可動枠401に固定されているが、UV接着剤以外の接着剤や接着剤以外の粘着テープやビスなどの固定部材により固定されていてもよい。
【0023】
図2に示すように、固定枠403には、後述の各マグネット対の保持及び位置決めを行うための第1ヨーク410及び各マグネット対を保持するための第2ヨーク411が、夫々ビス416及び417によって固定されている。第1ヨーク410には、二つのマグネットで構成された第1マグネット対406と、二つのマグネットで構成された第3マグネット対408が設けられている。第1マグネット対406及び第3マグネット対408は光軸Oからの距離が等しい位置に配置されており、夫々の長手方向は互いに90°の角度を成している。第1マグネット対406及び第3マグネット対408は、第1ヨーク410に形成された不図示の凸部によって位置決めされている。
【0024】
また、第2ヨーク411には、二つのマグネットで構成された第2マグネット対407と、二つのマグネットで構成された第4マグネット対409が設けられている。第2マグネット対407及び第4マグネット対409は光軸Oからの距離が等しい位置に配置されており、夫々の長手方向は互いに90°の角度を成している。第1マグネット対406及び第2マグネット対407は光軸方向(Z方向)から見たとき互いに重なる位置に配置されている。同様に、第3マグネット対408及び第4マグネット対409も光軸方向から見たとき互いに重なる位置に配置されている。
【0025】
振れ補正装置400は三つの転動ボール412を備えている。各転動ボール412は、可動枠401の固定枠403に対する相対的な移動を補助するための手段であり、例えばセラミックなどの非磁性体で構成されたボール(球体)である。各転動ボール412は、可動枠401に形成された第1収納部401aと固定枠403に形成された第2収納部403aとの間の空間に収納されている。振れ補正装置400は、外部から衝撃が加わった際に可動枠401に形成された三つの突起部401eと第1ヨーク410とが当接するように構成されている。これにより、転動ボール412が第1収納部401a及び第2収納部403aの間から脱落することを防止することができる。
【0026】
また、振れ補正装置400は引張りばね413を備えている。引張りばね413は、可動枠401に形成された第1ばね掛け部401bと、固定枠403に形成された第2ばね掛け部403bとに取り付けられている。引張りばね413の弾性力によって可動枠401及び固定枠403を互いに引きつけ合い、転動ボール412を第1収納部401a及び第2収納部403aに当接させることで、可動枠401を固定枠403に沿って移動させることができる。
【0027】
駆動部は、第1コイル404、第1マグネット対406、及び第2マグネット対407で構成される第1駆動ユニットと、第2コイル405、第3マグネット対408、及び第4マグネット対409で構成される第2駆動ユニットとを含む。第1駆動ユニットは、第1コイル404が通電されることで生じる電磁力によって可動枠401をX方向へ移動させることができる。また、第2駆動ユニットは、第2コイル405が通電されることで生じる電磁力によって可動枠401をY方向へ移動させることができる。このように、可動枠401を径方向へ(光軸Oに垂直な平面内で)移動させることで像振れ補正を行うことができる。なお、必要に応じて可動枠401を光軸方向の成分を含む方向へ移動できるように構成してもよい。
【0028】
可動枠401にはフレキシブル基板414が固定されている。
図3に示すフレキシブル基板414の4箇所に設けられた半田付け部414bには、第1コイル404及び第2コイル405に接続されたリード線(不図示)が半田付けされている。このリード線を介して第1コイル404及び第2コイル405に通電することができる。
図3に示すように、フレキシブル基板414には、ホール効果を利用して固定枠403及び可動枠401の相対的な位置を検出するための、位置検出手段としての二つのホールセンサ414aが設けられている。
図2に示すように、固定枠403には、各ホールセンサ414aの検出対象としての二つの位置検出マグネット415が設けられている。
【0029】
各位置検出マグネット415は光軸Oからの距離が等しい位置に配置されており、夫々の長手方向は互いに90°の角度を成している。各位置検出マグネット415は、固定枠403に対してUV接着材やインサート成型などにより固定される。また、レンズ402の面頂点(中心)が光軸O上に位置する状態において、各ホールセンサ414aと各位置検出マグネット415とは光軸方向から見たとき互いに重なり合うように配置されている。この構成により、X方向及びY方向における可動枠401の固定枠403に対する相対的な位置を検出することができる。本実施例では、位置検出手段としてホールセンサ414aを採用したが、これに限定されるものではない。例えば、PSD(Position Sensitive Detector)などのフォトダイオードを用いた位置検出センサを位置検出手段として用いてもよい。
【0030】
次に、振れ補正装置400の特徴である、可動枠401、固定枠403、及び駆動部のより詳細な構成について説明する。
【0031】
図4及び
図5に示すように、可動枠401は、径方向において固定枠403と対向する第1当接部(可動枠側当接部)401cを有する。本実施例では、可動枠401のレンズ嵌合部401fのうち、径方向におけるレンズ402とは反対側の面(外周面)の全周に第1当接部401cが形成されている。また、固定枠403は、第1当接部401cに当接することで可動枠401の移動を制限する第2当接部(固定枠側当接部)403cと、可動枠401の移動に際して第1当接部401cに当接しない切欠部403dとを有する。本実施例では、固定枠403における径方向において第1当接部401cと対向する面(内周面)のうち、2箇所に切欠部403dが設けられ、それ以外の箇所に第2当接部403cが設けられている。なお、第1当接部401cの一部は平面部401dであり、第2当接部403cの一部は平面部403gである(詳細は後述)。
【0032】
ここで、第2マグネット対407のうち光軸Oに対して近い方及び遠い方を夫々マグネット407a(第1マグネット)及びマグネット407b(第2マグネット)とする。また、第4マグネット対409のうち光軸Oに対して近い方及び遠い方を夫々マグネット409a(第1マグネット)及びマグネット409b(第2マグネット)とする。このとき、光軸Oに対して近い方のマグネット407a及びマグネット409aの夫々は、2箇所の切欠部403dの位置に配置される。そして、マグネット407a及びマグネット409aの夫々は、第1当接部401c(401d)に当接することで可動枠401の移動を制限する第3当接部(マグネット側当接部)407c,409cを有する。
【0033】
すなわち、本実施例に係る振れ補正装置400は、固定枠403の内周面における切欠部403dが設けられた位相においては、固定枠403ではなくマグネット407a及びマグネット409aによって可動枠401の移動を制限している。この構成によれば、固定枠403の内周面に切欠部403dが設けられておらず、マグネット407a及びマグネット409aが第2当接部403cよりも光軸Oから離れた位置に配置される構成と比較して、各マグネットを光軸Oに近づけることができる。よって、固定枠403を径方向において小型化しつつ各マグネットのサイズを十分に大きくすることができるため、装置全体の小型化と良好な像振れ補正を両立することが可能になる。
【0034】
図4に示すように、第2マグネット対407を光軸方向から見たとき、マグネット407a,407bは互いに異なる磁極の面が同じ側を向くように配置されている。言い換えると、光軸方向から見たとき、マグネット407a,407bのうち一方はN極の面を向け、他方はS極の面を向けている。本実施例では、マグネット407aのN極の面及びマグネット407bのS極の面は共に-Z側を向いている。これにより、各マグネットの間に互いに引き付け合う力が働くことになる。第4マグネット対409についても、第2マグネット対407と同様である。
【0035】
固定枠403のうち、径方向における切欠部403dの夫々に対して光軸Oとは反対側には、開口部403fが設けられている。そして、光軸Oに対して遠い方のマグネット407b,409bの夫々は、2箇所の開口部403fの位置に配置されている。よって、マグネット407b,409bの夫々は、固定枠403によって径方向への移動を制限されることになる。このとき、マグネット407a,409aの夫々についても、固定枠403における切欠部403dと開口部403fとの境界部分(仕切り部分)によって移動が制限される。よって、第1当接部401cが各第3当接部に当接することでマグネット407a及びマグネット409aに径方向の力が加わった場合にも、各マグネットの位置ずれを抑制することができる。
【0036】
ただし、固定枠403の構成や各マグネットの配置はこれに限られるものではない。例えば、固定枠403に開口部403fを設けず、代わりに切欠部403dを径方向において拡大することで、一つの切欠部403dの位置に二つのマグネットを配置してもよい。この場合、二つのマグネットの相対的な位置決めのために、固定枠403や第2ヨーク411に凸部(突起部)などを設けたり、二つのマグネットの間にスペーサを設けたりしてもよい。また、必要に応じて各マグネット対を接着材等の固定部材により固定枠403に固定してもよい。
【0037】
なお、本実施例では、光軸Oに垂直な断面(XY断面)において第3当接部407c,409cは直線形状(平面)であるため、これに合わせて第1当接部401cのうち第3当接部407c,409cと対向する部分も平面とすることが望ましい。これにより、第1当接部401cと第3当接部407c,409cとを同形状とすることができるため、可動枠401の移動量を十分に確保しやすくなる。本実施例では、第1当接部401cのうち、第3当接部407c,409cと対向する2箇所に平面部401dが設けられている。ただし、必要に応じて当接部407c,409cと対向する部分以外に平面部401dを設けてもよい。
【0038】
図4に示すように、レンズ402の面頂点(レンズ嵌合部401fの内径中心)が光軸O上に位置する状態において、光軸Oから第2当接部403cまでの距離をL1、光軸Oから各第3当接部までの距離をL2とする。さらに、第1当接部401cから第2当接部403cまでの距離をL3、第1当接部401cから各第3当接部までの距離をL4とする。このとき、振れ補正装置400は以下の条件式(1)及び(2)の少なくとも一方を満足することが望ましい。
【0039】
L1>L2 (1)
L3≦L4 (2)
条件式(1)を満足することにより、各第3当接部を第2当接部403cよりも光軸Oに近い位置に配置することができるため、固定枠403の径方向における小型化が可能になる。また、条件式(2)を満足することにより、切欠部403dが設けられた位相における可動枠401の移動量を、第2当接部403cが設けられた位相における可動枠401の移動量と同等以上確保することができる。なお、条件式(1)を満足しつつ距離L4を距離L3よりも短くする場合、切欠部403dが設けられた位相における可動枠401の移動量が十分に確保できなくなるおそれがある。よって、条件式(1)及び(2)を同時に満足することが望ましい。
【0040】
なお、振れ補正装置400は、上記条件式(2)の代わりに以下の式(2a)を満足することがより好ましい。
【0041】
L3=L4 (2a)
式(2a)を満足することにより、切欠部403dが設けられた位相における可動枠401の移動量を、第2当接部403cが設けられた位相における可動枠401の移動量と同等にすることができる。特に、条件式(1)及び式(2a)を同時に満足することにより、可動枠401における第1当接部401cが設けられた部分(レンズ嵌合部401f)の強度を十分に確保しつつ固定枠403の径方向における小型化を実現することができる。一方、条件式(1)を満足しつつ距離L4を距離L3よりも長くする場合、レンズ嵌合部401fの厚みを必要以上に薄くすることになるため、レンズ嵌合部401fの強度を十分に確保することができなくなるおそれがある。
【0042】
なお、配置誤差(組立誤差)や部品公差などに起因して、ホールセンサ414aなどの位置検出手段が正確な値を出力できなくなる場合がある。この場合、実際はレンズ402の面頂点が光軸O上に位置していたとしても、位置検出手段はレンズ402の面頂点が光軸Oからずれていると誤検出してしまう。そこで、本実施例では、配置誤差や部品公差の影響を低減するために位置検出手段の出力値の補正を行っている。まず、第1当接部401cと第2当接部403cとが当接した状態でのホールセンサ414aの出力値を用いてレンズ402の面頂点位置を算出する。そして、算出したレンズ402の面頂点位置と、実際に計測したレンズ402の面頂点位置とのずれ量に基づいて補正値を取得し、この補正値を用いて位置検出手段の出力値を補正する。
【0043】
一般的に、マグネットの外形公差は、樹脂で成型された他の部品の精度保証面の外形公差よりも大きい。よって、補正量の算出に際しては、第1当接部401c(平面部401d)と第3当接部407c,409cとが当接した状態ではなく、第1当接部401cと第2当接部403cとが当接した状態でのホールセンサ414aの出力値を用いることが望ましい。この方法によれば、本実施例のように固定枠403に切欠部403dを設けた場合であっても、ホールセンサ414aの出力値を良好に補正することができる。
【0044】
図5に示すように、本実施例では、光軸方向において第2当接部403c及び切欠部403dが第4マグネット対409と同じ位置に配置されている。言い換えると、径方向(Y方向)から見たとき第2当接部403c及び切欠部403dの夫々の少なくとも一部が第4マグネット対409と重なっている。この構成によれば、光軸方向において第2当接部403c及び切欠部403dが第4マグネット対409とは異なる位置に配置された構成と比較して、装置全体を光軸方向において小型化することができる。ただし、必要に応じて第2当接部403c及び切欠部403dの何れか一方を光軸方向において第4マグネット対409とは異なる位置に配置してもよい。第2当接部403c及び切欠部403dと第2マグネット対407との位置関係も同様である。
【0045】
また、本実施例では、光軸方向において第2当接部403c及び切欠部403dがレンズ402と同じ位置に配置されている。言い換えると、径方向(Y方向)から見たとき第2当接部403c及び切欠部403dの夫々の少なくとも一部がレンズ402と重なっている。なお、本実施例では、第1当接部401c、第2マグネット対407、及び第4マグネット対409についても、光軸方向においてレンズ402とも同じ位置に配置されていることになる。この構成によれば、装置全体を光軸方向において小型化することができる。ただし、必要に応じて第2当接部403c及び切欠部403dの何れか一方を光軸方向においてレンズ402とは異なる位置に配置してもよい。
【0046】
上述したように、本実施例では、第1当接部401cを可動枠401のレンズ嵌合部401fのうち径方向におけるレンズ402とは反対側の面に設けている。このように、第1当接部401cを可動枠401のうちレンズ402の外周部に比較的近い位置に設けることで、第2当接部403cについてもレンズ402の外周部に比較的近い位置に設けることができる。これにより、レンズ402の外周部から離れた位置に各当接部を設ける場合と比較して、駆動部や位置検出手段などの配置の自由度を向上させることができ、装置全体の径方向における小型化が可能になる。
【0047】
また、
図4及び
図5に示すように、本実施例では可動枠401に緩衝部材418が設けられている。具体的には、
図5に示すように、可動枠401のレンズ嵌合部401fのうち光軸方向において第1当接部401cとは異なる位置の全周に緩衝部材418が巻き付けられている。緩衝部材418は、比較的小さな力で弾性変形が可能なシート状の弾性部材であり、例えばポリマーやゴムで構成される。緩衝部材418を設けることで、可動枠401が固定枠403やマグネット407a及びマグネット409aに当接する際の衝撃及び衝突音を低減(吸収)することができる。
【0048】
図5に示すように、固定枠403のうち光軸方向において第2当接部403cとは異なる位置には、可動枠401が移動した際に緩衝部材418に当接する第4当接部403eが設けられている。また、マグネット407a及びマグネット409aの夫々のうち光軸方向において第3当接部407c,409cとは異なる位置には、可動枠401が移動した際に緩衝部材418に当接する第5当接部407d,409dが設けられている。
【0049】
ここで、
図4及び
図5に示すように、レンズ402の面頂点が光軸O上に位置する状態において、緩衝部材418から第4当接部403eまでの距離をL5、緩衝部材418から各第5当接部までの距離をL6とする。このとき、振れ補正装置400は以下の条件式(3)及び(4)の少なくとも一方を満足することが望ましい。
【0050】
L3>L5 (3)
L4>L6 (4)
条件式(3)を満足することにより、可動枠401が移動した際に第1当接部401cが第2当接部403cに当接するよりも先に、緩衝部材418が第4当接部403eに当接することになる。そして、緩衝部材418が第4当接部403eに当接した後、緩衝部材418が弾性変形することで第1当接部401cが第2当接部403cに当接する。よって、条件式(3)を満足することで、可動枠401が固定枠403に当接する際の衝撃及び衝突音を低減することができる。ただし、必要に応じて、L3=L5としてもよい。
【0051】
また、条件式(4)を満足することにより、可動枠401が移動した際に第1当接部401c(平面部401d)が第3当接部407c,409cに当接するよりも先に、緩衝部材418が第5当接部407d,409に当接することになる。そして、緩衝部材418が第5当接部407d,409に当接した後、緩衝部材418が弾性変形することで第1当接部401c(平面部401d)が第3当接部407c,409cに当接する。よって、条件式(4)を満足することで、可動枠401がマグネット407a及びマグネット409aに当接する際の衝撃及び衝突音を低減することができる。ただし、必要に応じて、L4=L6としてもよい。
【0052】
図4に示すように、本実施例に係る第2当接部403cの一部は平面部403gとなっている。これにより、平面部403gを高精度に形成した精度保証面としつつ、それ以外の第2当接部403c及び第4当接部403eを精度保証面とする必要がなくなるため、固定枠403の製造が容易になる。ただし、必要に応じて平面部403gを第4当接部403eと同様の曲面形状としてもよい。この場合、固定枠403の内周面のうち、切欠部403dが設けられた箇所を除く全周を曲面形状の第2当接部403cとしてもよい。本実施例では、固定枠403の内周面のうち、光軸Oから第3当接部409cへの垂線に対して45°、135°、225°、及び315°の角度をなす各位置に平面部403gが設けられているが、平面部403gの配置や数はこれに限られるものではない。
【0053】
また、
図5に示すように、本実施例では第2当接部403cが第4当接部403eよりも光軸Oに向かって突出しているが、第4当接部403eに対して第2当接部403cを突出させずに同一面内に設けてもよい。同様に、本実施例では、可動枠401において緩衝部材418が設けられた部分よりも第1当接部401cが光軸Oから離れる方向へ突出しているが、第1当接部401cを突出させずに夫々を同一面内に設けてもよい。
【0054】
なお、必要に応じて可動枠401における第1当接部401cと同じ位置に緩衝部材418を設けてもよい。この場合、緩衝部材418を可動枠401の一部とみなし、緩衝部材418に第1当接部401cが設けられている(第1当接部401cが緩衝部材418で構成されている)とみなすことができる。同様に、第4当接部403eを第2当接部403cと同じ位置に設けたり、第5当接部407d,409dを第3当接部407c,409cと同じ位置に設けたりしてもよい。
【0055】
[変形例]
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【0056】
上述した実施例に係る駆動部は、第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットの両方を有するが、これに限られるものではない。例えば、可動枠401を一方向にのみ移動させる場合は、駆動部が第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットのうち一方のみを有する構成を採用してもよい。また、第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットの構成を互いに異ならせてもよい。例えば、X方向及びY方向のうち一方における可動枠401の移動量を小さくする場合は、第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットのうち一方のサイズを小さくしてもよい。このとき、サイズを小さくした方の駆動ユニットについては、上述した実施例1の特徴(各条件式など)を満たしていなくてもよい。
【0057】
また、上述した実施例に係る可動枠401は、レンズ嵌合部401fの外周面の全周に設けられた第1当接部401cを有しているが、これに限られるものではない。例えば、レンズ嵌合部401fの外周面の一部に、可動枠401の移動に際して第2当接部403cや各第3当接部に当接しない部分(凹部や切欠部など)を設けてもよい。同様に、第2当接部403cと切欠部403dとの間に、可動枠401の移動に際して第1当接部401cに当接しない部分(凹部や切欠部など)を設けてもよい。ただし、可動枠401の移動を適切に制御するためには、
図4に示すように、2箇所の切欠部403dの間に少なくとも一箇所の第2当接部403cを設けること、すなわち周方向において2箇所の切欠部403dを隣接させないことが望ましい。
【符号の説明】
【0058】
400 振れ補正装置
401 可動枠
401c 第1当接部(曲面部)
401d 第1当接部(平面部)
402 レンズ
403 固定枠
403c 第2当接部(曲面部)
403g 第2当接部(平面部)
403d 切欠部
407a,409a 第1マグネット
407c,409c 第3当接部