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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F01P 1/06 20060101AFI20240318BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20240318BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20240318BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20240318BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F01P1/06 K
A01D41/12 H
A01D41/12 R
F01N3/18 A
F01P5/06 504Z
F01P5/06 510A
B60K11/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020118117
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015349
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】舟木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古井 利武
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054751(JP,A)
【文献】特開2017-226252(JP,A)
【文献】実開昭59-117835(JP,U)
【文献】米国特許第05224447(US,A)
【文献】特開2015-128374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/06
A01D 41/12
F01N 3/18
F01P 5/06
B60K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、
前記機体フレーム前部に形成したエンジンルーム内に載置されるエンジンと、
前記エンジンルーム内の前記エンジン近傍に支持されて該エンジンから排出された排ガスを処理する排ガス処理装置と、
前記エンジンの左右側方側に設けられて該エンジンに向けて送風する冷却ファンとを備え、
前記排ガス処理装置を、側面視で前記エンジンに対して後方寄りに配置し、
前記冷却ファン軸の前後位置を、側面視で前記エンジンの前後方向の中心よりも、前記排ガス処理装置に寄せた位置に配置し
前記冷却ファンによる冷却風をガイドするガイド体を設け、
前記ガイド体は、前記冷却風を側面視で前記エンジンの前部に向けてガイドするように構成された
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと排ガス処理装置を空冷する冷却ファンを設けた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、前記機体フレーム上に載置されるエンジンと、前記エンジンの近傍に支持されて該エンジンから排出された排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記エンジンの左右側方側に設けられて該エンジンに向けて送風する冷却ファンとを備えた特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の作業車両によれば、前記冷却ファンによる冷却風を前記エンジン側面全体に送風することで、該エンジンを効率的に冷却することができるものであるが、該冷却ファンでは前記エンジンの後方に設けられた排ガス処理装置が冷却され難いため、エンジンルーム全体の冷却効率が低下したり、別途に冷却機構を設ける必要があったりするという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-128374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記エンジンの側面側に該エンジンを冷却する冷却ファンを設けた作業車両において、前記エンジンと前記排ガス処理装置とをより効率的に冷却することができる作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、走行装置により支持された機体フレームを有する走行機体と、前記機体フレーム前部に形成したエンジンルーム内に載置されるエンジンと、前記エンジンルーム内の前記エンジン近傍に支持されて該エンジンから排出された排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記エンジンの左右側方側に設けられて該エンジンに向けて送風する冷却ファンとを備え、前記排ガス処理装置を、側面視で前記エンジンに対して後方寄りに配置し、前記冷却ファン軸の前後位置を、側面視で前記エンジンの前後方向の中心よりも、前記排ガス処理装置に寄せた位置に配置したことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記冷却ファンによる冷却風をガイドするガイド体を設け、前記ガイド体は、前記冷却風を側面視で前記エンジンの前部に向けてガイドするように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
前記排ガス処理装置を側面視で前記エンジンの後方寄りに配置し、前記エンジンの側方側に設置される前記冷却ファン軸の前後位置を、側面視で前記排ガス処理装置に寄せたことにより、前記冷却ファンによる冷却風を、前記エンジンから排出される排ガスによって熱を持ち易い前記排ガス処理装置側にも同時に供給することができるため、エンジンルーム全体をより効率的に冷却することができる。
【0009】
また、前記冷却ファンによる冷却風をガイドするガイド体を設け、前記ガイド体は、前記冷却風を側面視で前記エンジンの前部に向けてガイドするように構成されたものによれば、前記冷却ファンによる冷却風を前記エンジンの側面全体に送風することができるため、前記エンジンの冷却効率がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を適用した自脱式コンバインの右側面図である。
図2】本発明を適用した自脱式コンバインの平面図である。
図3】開閉カバーを省略した状態を示した要部右側面図である。
図4】開閉カバー及びラジエータを省略した状態を示した要部右側面図である。
図5】エンジンルームを示した要部右側面図である。
図6】開閉カバーを示した要部斜視図である。
図7】エンジンを示した右側面図である。
図8】エンジンを示した背面図である。
図9】伝動機構の組付状態を示したエンジンの右背面斜視図である。
図10】伝動機構の組付状態を示したエンジンの左背面斜視図である。
図11】正逆転切換装置を示した要部右側面図である。
図12】冷却ファンの正転駆動時の伝動状態を示した図である。
図13】冷却ファンの逆転駆動時の伝動状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明を適用した作業車両である自脱式コンバインの右側面図及び平面図である。図示されたコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行装置)1,1を有する走行機体2と、該走行機体2の前部に昇降可能に連結された前処理部3とを備えている。
【0012】
前記前処理部3は、前記走行機体の前進走行中に左右方向に往復作動することによって圃場の穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃と、該刈刃によって刈取られた刈取穀稈を後方搬送する搬送装置6とを備え、該搬送装置6により刈取穀稈を前記走行機体2側に設けられた脱穀装置7まで後方搬送するように構成されている。
【0013】
前記走行機体2は、左右一対のクローラ式走行装置1,1に支持される機体フレーム8を有し、該機体フレーム8上には、オペレータが乗込む操縦部が設けられたキャビン9と、穀粒を貯留するグレンタンク(タンク)11と、前記脱穀装置7とが設置されている。前記脱穀装置7は、前記走行機体2の左部(進行方向左側、以下単に左)に配置され、前記グレンタンク11は、前記走行機体2の右部(進行方向右側、以下単に右)に配置され、前記キャビン9は、前記グレンタンク11の前方に配置されている。
【0014】
ちなみに、前記キャビン9と該キャビン9の後方に配置されたグレンタンク11との間に形成されるスペースには、エンジン10と、該エンジン10に空気を供給する吸気管12と、前記エンジン10から排出される排ガスを浄化処理する排ガス処理装置13,14と、該排ガス処理装置13,14によって浄化処理された排ガスを機外に排出する排気管16とが収容されるエンジンルーム20が形成されている。具体的には後述する。
【0015】
前記キャビン9は、オペレータが着座する座席17と、該座席17の前方から左右内側(図示する例では右側)に操向操作や作業走行を行うための操作を行う操作パネル18と、該座席17の前方下側に形成された床面である床板(フロアステップ)19と、該キャビン内を空調するエアコン装置とが設けられている。なお、該キャビン9の後面から下面側に形成するフレーム部材が、前記エンジンを覆うボンネットの一部を形成する隔壁を構成している。詳しくは後述する。
【0016】
上記エアコン装置は、キャビン内の空気を吸込口から取入れ、エバポレータで冷やしたりヒータコアで暖めたりした空気をキャビン内に送り込むことができるように構成されたエアコンユニット(図示しない)と、コンプレッサ21と、図示しないコンデンサと、レシーバドライヤとが配管によって接続されることにより構成されている。
【0017】
ちなみに、該コンプレッサ21は、前記エンジン10から取出された動力を利用して前記エバポレータから送られたガス状冷媒を圧縮して高温・高圧にした後、前記コンデンサに送ることができるように構成されたものであり、前記エンジンルーム20内の後部側に支持されている。詳しくは後述する。
【0018】
前記脱穀装置7は、前記前処理部3側の搬送装置6によって後方搬送された刈取穀稈を受取り、該刈取穀稈の脱穀・選別処理を行う。該脱穀装置7によって脱穀処理された穀稈は、排藁搬送体(図示しない)によって前記走行機体2の後端側に設けた後処理部22まで搬送され、前記後処理部22により切断処理された後に機外へと排出される。該脱穀装置7により選別された排出物は機外に排出される一方で、選別された穀粒は前記脱穀装置7から前記グレンタンク11内へと搬送される。
【0019】
前記グレンタンク11は、前記脱穀装置7によって脱穀・選別処理された穀粒を貯留することができるように構成され、該グレンタンク11内に貯留された穀粒は、前記走行機体の後端部から延設されたオーガ23によって、機外に排出することができるように構成されている。
【0020】
上記オーガ23は、前記グレンタンク11の後部に配置された上下方向の縦筒23aと、該縦筒23aの上端側を基端部として該基端部から水平方向に向かって一直線に延設された排出管23bと、該排出管23bの先端側に設けられて搬送された穀粒が排出される排出口23cとを有している。
【0021】
該オーガ23は、前記排出管23bがその基端(縦筒23aの上端)を支点として全体が昇降作動可能であることともに、前記縦筒23aの軸回りに全体が左右旋回可能に構成されている。
【0022】
ちなみに、前記グレンタンク11は、平面視で前記走行機体2の後部左右外側に配置された前記オーガ23の縦筒23aを軸に左右外側に水平回動可能に支持されている。これにより、該グレンタンク11は、図1及び図2で示されるように機体フレーム8上に載置された使用姿勢と、該グレンタンク11を左右外側に水平回動することにより、前記エンジンルーム20の後部側を開放した回動姿勢とに姿勢切換えすることができる。
【0023】
次に、図1乃至6に基づいて、前記エンジンルームについて説明する。図3は、開閉カバーを省略した状態を示した要部右側面図であり、図4は、開閉カバー及びラジエータを省略した状態を示した要部右側面図であり、図5は、エンジンルームを示した要部右側面図であり、図6は、開閉カバーを示した要部斜視図である。
【0024】
前記エンジンルーム20は、側面視で前記キャビン9の後面及び下面と、前記グレンタンク11の前面との間に形成された前記機体フレーム8上の空間(スペース)である。また、該エンジンルームの左右方向は開放されており、その左右外(図示する例では右)側には、前記走行機体2の側方側から前記エンジンルーム20内を視認できる開口部が形成されるとともに、該開口部を開閉する開閉カバー26が設けられている(図2参照)。
【0025】
これにより、該エンジンルーム20は、前記エンジン10の上方を覆う前後方向のボンネット部が形成されている。具体的に説明すると、前記ボンネット部は、前記グレンタンク11の前面側に立設されて該エンジンルームの後端となる後壁部20aと、該後壁部20aの上部と前記キャビンの後面上部との間を架渡すように形成された前後方向の上壁部20bと、前記キャビン9後面の上下方向中途部を前方に向かって下方傾斜させることにより形成された傾斜壁部20cと、該傾斜壁部20cの前端側から鉛直方向に向けて立設された前壁部20dとから構成されている(図4参照)。
【0026】
該構成により、前記エンジンルーム20は、側面視でその上部(上壁部)から前記エンジン10が載置される機体フレーム(下面)に向かって、前後(具体的には前方)に向けて徐々に幅広となるように形成されている(図3及び図4参照)。
【0027】
図3乃至5に示されるように、上記構成のエンジンルーム20は、該エンジンルーム20の下面(機体フレーム8上)前寄りに前記エンジン10が載置固定されており、該エンジン10を跨ぐように設けられた上下方向の支持機構35によって、前記エンジン10の上方側の所定位置に、前記吸気管12と、ディーゼル微粒子捕集装置(DPF、排ガス処理装置)13と、窒素酸化物還元装置(SCR、排ガス処理装置)14と、前記排気管16とが設置されている。
【0028】
具体的に説明すると、前記吸気管12は、その上端側が前記上壁部20bの上方且つ左右外側に空気を取入れる吸気部12aが設けられており、該吸気部12aから前記エンジン10の前部上方側に支持されたエアクリーナ27を介して、前記エンジン10の前部側に接続されるように上下方向に延設されている(図4等参照)。
【0029】
また、前記排気管16は、前記エンジン10の後部側から前記エアクリーナ27の後方に支持されたディーゼル微粒子捕集装置(DPF)13と、該ディーゼル微粒子捕集装置13の真上に支持された窒素酸化物還元装置(SCR)14とを介して、前記エンジンルーム20上端側まで延設されている。なお、該排気管16上端の吐出口は、前記エンジンルーム20内の上端左右内側から走行機体2の内側後方に向けた状態で支持されることにより、排ガスを前記脱穀装置7の上方側に向けて排出できるように構成されている(図1及び図4等参照)。
【0030】
また、前記エンジン10の下面は、前後端側にそれぞれ左右一対設けた(計4つの)エンジンマウント部28を介して前記機体フレーム8上に取付け固定されることにより、より安定した状態で強固に前記機体フレーム上(エンジンルーム内)に取付固定されている。
【0031】
該エンジンマウント部28は、前記機体フレーム8と、前記エンジン10下部の前端又は後端とを連結するとともに、間にゴム製部材等からなる防振部材29を有しており、前記エンジン10の振動が前記機体フレーム8側にダイレクトに伝わることを防止することができる。
【0032】
図5に示されるように、前記エンジン10の左右外側には、前記エンジンルーム20の左右外側から前記エンジン10に向けて送風するための冷却ファン31と、該冷却ファン31の左右外側に配置されたラジエータ32とが設けられており、該ラジエータ32の左右外側は、前記開閉カバー26によって開閉可能に構成されている。
【0033】
該開閉カバー26は、前記エンジンルーム29の左右外側の開口部に沿って形成されたドアフレーム25内に、前記冷却ファン31により前記エンジンルーム20の外側から空気を供給するための開口部26aが形成されており、該開口部26aには多孔板や網等が設けられている。また、該開閉カバー26(ドアフレーム25)の後端側には、該開閉カバー26を水平方向に回動可能な状態で支持する蝶番24が設けられている(図6等参照)。
【0034】
前記ラジエータ32は、図示する例では、その左右(前後)方向が側面視で前記エンジンルーム20下部側全体に亘って延設されるとともに、その上下方向が前記エンジンルーム20下端側から前記エンジン10の上方まで延設されている。すなわち、該ラジエータ32は、側面視で前記エンジン10の全体を覆う大型のものが設置されている(図3及び図5参照)。
【0035】
該構成によれば、前後方向を幅広に形成した前記エンジンルーム20下部側に合わせた大きなラジエータ32が設置することができるため、前記エンジン10の冷却効率をより向上させることができる。
【0036】
前記冷却ファン31は、該エンジンから取出した動力によって正転駆動させることにより、前記エンジンルーム20の外側から内側に向かって空気を供給し、前記ラジエータ32や前記エンジン10等を空冷できるように構成されている(図4及び図5参照)。
【0037】
また、前記冷却ファン31の前後位置は、側面視で前記排ガス処理装置13,14に近い前記エンジン10の後部寄りに設置されている(図4参照)。該構成によれば、前記冷却ファン18によって前記エンジンルーム20内に供給される空気が、前記排ガス処理装置13,14に近い前記エンジンの後部側を中心に供給されるため、前記エンジン10とともに、該エンジン10から排出される高温の排ガスによって熱を持ち易い前記排ガス処理装置13,14をより効率的に冷やすことができる。
【0038】
ちなみに、前記ラジエータ32の左右内側には、前記冷却ファン31の左右外側を覆う(カバーする)シュラウド33が設けられており、該シュラウド33の前部には、前後に開口部が形成されるように取付固定されたコ字状の導風板(ガイド体)34が設けられている(図4乃至6参照)。
【0039】
該導風板34は、平面視で前方に向かって前記シュラウド33から離間する方向に傾斜させることにより、前記冷却ファン31の前端近傍の後側開口部よりも前側開口部が幅広となるように構成されている(図5参照)。
【0040】
該構成の前記導風板34によれば、前記冷却ファン31によって前記エンジン10後部に向けて供給される空気の一部を、前記エンジン10の前部に案内することができる。これにより、前記冷却ファン31によって供給される空気を、前記エンジン10の側面全体に供給することができるため、前記エンジン10をより効率的に空冷することができる。
【0041】
ちなみに、前記エンジン10の左右外面側には、前記エンジン10から出力される出力軸36から各部へ動力を伝動する伝動機構が設けられている。該伝動機構は、前記冷却ファン31を逆転方向に駆動させる正逆転切換装置37を有している。具体的な構成については後述する。
【0042】
該正逆転切換装置37によれば、前記冷却ファン31を逆転駆動させて前記エンジンルーム20の外側に向けて空気を送る(排出する)ことにより、前記ラジエータ32や前記冷却ファン31に詰まったり堆積したりした埃等を、スムーズに機外(エンジンルーム外)へと飛ばすことができるため、前記冷却ファン31や前記ラジエータ32の清掃等のメンテナンス作業を助けることができる。以下、前記エンジン10の出力軸36から各部へ動力を伝動する前記伝動機構について説明する。
【0043】
次に、図7乃至11に基づいて、伝動機構の構成について説明する。図7及び図8は、伝動機構を示したエンジンの右側面図及び背面図であり、図9及び図10は、伝動機構の組付状態を示したエンジンの右背面斜視図及び左背面斜視図であり、図11は、正逆転切換装置を示した要部右側面図である。
【0044】
前記伝動機構は、前記エンジン10の左右外面の下部側に配置された出力軸36と一体回転する第1出力プーリ43から動力を取出し、電装部に電力を供給するオルタネータ44へ動力を伝動する電装側伝動機構41と、該第1出力プーリと並べて設けられた第2出力プーリ51から動力を取出し、前記冷却ファン31へ動力を伝動するファン側伝動機構42とを有している。また、前記電装側伝動機構41は側面視で前記エンジンの前部側に設けられ、前記ファン側伝動機構42はユニット化されて(以下、ファン側伝動ユニット42)側面視で前記エンジン10の後部側に設けられている(図6等参照)。
【0045】
前記電装側伝動機構41は、側面視で前記第1出力プーリ43の上方側に配置された第1伝動プーリ46と、該第1伝動プーリ46の前方に配置されて前記オルタネータ44に動力を入力する入力軸と一体回転する電装側入力プーリ47と、前記第1出力プーリ43と前記第1伝動プーリ46と前記電装側入力プーリ47とによって掛け回される第1伝動ベルト48とを有している。
【0046】
該構成によれば、前記エンジン10によって駆動する前記第1出力プーリ43によって、前記第1伝動ベルト48が掛け回されることにより、前記エンジン10上部の前端側に支持された前記オルタネート44に動力を伝動することができる。これにより、前記キャビン9内等の各種電装系で用いられる電力を発電することができる。
【0047】
前記ファン側伝動ユニット42は、前記第2出力プーリ51によって掛け回される第2伝動ベルト52と、側面視で前記第2出力プーリ51の後方に軸支されたカウンタプーリ53から前記コンプレッサ21に動力を伝動するコンプレッサ伝動機構56と、該カウンタプーリ53の前方下側に配置したテンションプーリ78により前記第2伝動ベルト52にテンションを与える張力付与機構57と、前記前記冷却ファン31のファン駆動軸(冷却ファン軸)30を正逆転切換可能する正逆転切換装置37と、これらの構成を一体的に支持する支持ブラケット58を有し、該支持ブラケット58を介して、前記エンジン10(前記電装側伝動機構41)の外面後部側に一体的に取付けることができるように構成されている。
【0048】
前記支持ブラケット58は、前記エンジン10の後部左右外側を支持する前記エンジンマウント部28に着脱可能に取付けられて上下方向に延設されたくの字状に形成された第1支持ブラケット58Aと、該第1支持ブラケット58Aの左右外側に着脱可能に構成されて前記正逆転切換装置37(回動プレート66)と、前記カウンタプーリ53と、前記テンションプーリ78とを上下方向に並べて支持できるように上下方向に延設されたクランク状の第2支持ブラケットとを有している。
【0049】
該構成によれば、前記ファン側伝動ユニット42(正逆転切換装置37)は、各部品を第2支持ブラケット58Bの所定位置に設置してユニット化した後に前記エンジン10後部の左右外側に一体的に取付けることができるため、各部品の組付作業をズレなくスムーズに行うことができる他、メンテナンス作業もし易くなる(図8及び図9参照)。
【0050】
また、該支持ブラケット58は、前記第1支持ブラケット58Aの後部側に着脱可能に取付けられた第3支持ブラケット58Cを介して、前記コンプレッサ21を支持することができるように構成されている。
【0051】
該構成の前記第3支持ブラケット58Cによれば、前記コンプレッサ21を前記エンジン10後部下側で且つ、前記第2支持ブラケット58Bの左右内側に形成される空間(側面視で第2支持ブラケット58Bとラップする位置)にスペース効率良く設置することができる(図7乃至9参照)。
【0052】
前記正逆転切換装置37は、前記ファン駆動軸30と同一軸芯上で空回りするように設けられて前記第2伝動ベルト52が掛け回される大径ファンプーリ61Aと、該ファン駆動軸30と同一軸芯上で一体回転する小径ファンプーリ61Bと、前記ファン駆動軸30の後方に配置されて前記冷却ファン31を正転駆動させる際に用いられる正転用プーリ62と、該正転用プーリ62の上方に配置されて該前記冷却ファン31を逆転駆動させる際に用いられる逆転用プーリ63と、小径ファンプーリ61Bと正転用プーリ62と逆転用プーリ63とで掛け回される第3伝動ベルト64とを有している(図11等参照)。
【0053】
これにより、前記第2伝動ベルト52は、前記第2出力プーリ51と、前記カウンタプーリ53と、前記正転ファンプーリ62(又は逆転ファンプーリ63の何れか一方)と、前記大径ファンプーリ61Aとで掛け回されるように構成されている。該第2伝動ベルト52に伝動された動力は、正転用プーリ62又は逆転用プーリ63を介して第3伝動ベルト64→小径ファンプーリ61B→ファン駆動軸30の順で伝動されることにより、前記冷却ファン31を駆動させることができるように構成されている。
【0054】
上記正転ファンプーリ62と上記逆転ファンプーリ63とは、前記ファン駆動軸30を軸に上下揺動可能に支持される回動プレート66に軸支されており、該回動プレート66は、前記エンジンルーム内の支持機構35側に支持された姿勢切換機構67を介して一体的に上下揺動可能に構成されている。
【0055】
具体的に説明すると、該姿勢切換機構67は、制御部を介して制御されるアクチュエータである電動モータ68と、該電動モータ68によって上端側が前後回動可能に支持された操作プレート69と、該操作プレート69の下部前端と前記回動プレート66の前端側とを連結する連結ワイヤ71と、上端側が前記操作プレート69の回動軸側に係止されて下端側が前記回動プレート66の後部側に係止される弾性部材である引張スプリング72とを有し、前記回動プレートの姿勢を切換えることにより、前記正転用プーリ62と、前記逆転用プーリ63の何れか一方を、前記第2伝動ベルト52と当接させる状態に切換えることができるように構成されている(図7図11及び図12参照)。
【0056】
上述の構成によれば、前記正逆転切換装置37は、前記電動モータ68により前記操作プレート69の前後揺動位置を制御することにより、前記冷却ファン31を正転駆動させるか、逆転駆動させるかを切換えることができる。具体的な伝動構成については後述する。
【0057】
なお、該回動プレート66には逆転ファンプーリ63を軸支する軸孔を上下方向に長い長孔66aにすることによって、逆転ファンプーリ63の位置を調整できるように構成されている。該構成によれば、前記逆転ファンプーリ63の位置を調整することで前記第3伝動ベルト64のテンションを調整することができる(図11参照)。
【0058】
前記張力付与機構57は、前記カウンタプーリ53の真下側に配置した取付軸76を軸に揺動可能に軸支された前後方向のテンションアーム77と、該テンションアーム77の前端側に軸支されたテンションプーリ78と、一端が前記テンションアーム77の後端側に係止されて他端側が前記支持ブラケット58の下端側に設けた固定具に係止された弾性部材である引張スプリング79とから構成されている。これにより、前記テンションプーリ78は、前記カウンタプーリ53の前方且つ下方側に配置された状態で、前記引張スプリング79の付勢力によって上方に付勢される。
【0059】
該構成によれば、前記テンションプーリ78は、前記第2出力プーリ51と前記カウンタプーリ53との間で前記第2伝動ベルト52を下から上方に向けて押し付けることにより、該第2伝動ベルト52にテンションを付与して弛むことを防止することができる。
【0060】
前記コンプレッサ伝動機構56は、左右外側に取付けられた前記カウンタプーリ53と一体的に回転駆動するカウンタ軸(カウンタプーリ軸)81と、該カウンタ軸81の左右内側に取付けられて該カウンタ軸81と一体回転するカウンタ出力プーリ82と、前記コンプレッサ21側に動力を入力する入力軸と一体回転する伝動プーリ83と、前記カウンタ出力プーリ82と伝動プーリ83とにより掛け回される第4伝動ベルト84とを備えている(図9及び図10等参照)。
【0061】
該構成によれば、前記コンプレッサ21は、前記エンジン10の出力軸側から直接ではなく、該出力軸36の後方に軸支された前記カウンタ軸81から動力を取出すように構成したことにより、前記出力軸36近傍の構成を簡素化することができる。
【0062】
また、前記コンプレッサ21は、前記第4伝動ベルトを取外すだけで、前記第3支持ブラケット58C側から取外すことができるため、前記コンプレッサ21のメンテナンス作業を容易に行うことができる。なお、該メンテナンスを行う場合には、前記グレンタンク11を回動姿勢に切換えることによって前記エンジンルーム後方のスペースを大きく開放できるため、メンテナンス作業等をよりスムーズに行うことができる。
【0063】
ちなみに、前記第3支持ブラケット58Cは、前記エンジンマウント部28側に取付固定する前記コンプレッサ21の上下位置を調整することができるように構成されている。該構成によれば、前記コンプレッサ21側の前記伝動プーリ83と、前記カウンタ軸81側の前記カウンタ出力プーリ82との間の距離を調整できるため、前記第4伝動ベルト84のテンションが緩くならないように容易に調整することができる。
【0064】
次に、図12及び図13に基づいて、前記冷却ファンの伝動構成(正逆転切換装置の作動構成)について説明する。図12は、冷却ファンの正転駆動時の伝動状態を示した図であり、図13は、冷却ファンの逆転駆動時の伝動状態を示した図である。
【0065】
前記正逆転切換装置37は、図示されるように、側面視において前記正転用プーリ62と、逆転用プーリ63とで、前記第2出力プーリ51によって掛け回される前記第2伝動ベルト52を挟むように配置されている。すなわち、該正逆転切換装置37は、前記第2伝動ベルト52に伝動された動力を、正転用プーリ62を介して前記第3伝動ベルト64に伝動するか、逆転用プーリ63を介して第3伝動ベルトに伝動するかを切換えることによって、前記冷却ファン31のファン駆動軸30の駆動方向を切換えることができる。
【0066】
言い換えると、該正逆転切換装置37は、前記姿勢切換機構67を介して、前記正転用ファン62を前記第2伝動ベルト52の内側に当接させることにより前記正転前記冷却ファン31を正転駆動させる正転状態と、前記逆転用ファン63を前記第2伝動ベルトの外側に当接させることにより前記冷却ファン31を逆転駆動させる逆転状態とに切換えることができるように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0067】
図12に示すように、前記電動モータ68によって前記操作プレート69を側面視で時計回りに揺動操作することにより、前記連結ワイヤ71が緩み、前記引張りスプリング72の付勢力によって、前記回動プレート66を後部が上方に持ち上げられた姿勢に切換えることができる。これにより、前記正逆転切換装置37を、前記正転用ファン62を前記第2伝動ベルト52に下方側から当接させた正転状態に切換えることができる。
【0068】
これにより、前記エンジン動力は、出力軸→第2出力プーリ→第2伝動ベルト→正転ファンプーリ→第3伝動ベルト→小径ファンプーリ→ファン駆動軸の順で伝動することにより、前記冷却ファンが正転駆動する(図12参照)。
【0069】
図13に示すように、前記電動モータ68によって前記操作プレート69が側面視で反時計回りに揺動操作されると、前記連結ワイヤ71が引っ張られるとともに前記引張スプリング72が緩むため、前記回動プレート66を後部が下方揺動された姿勢に切換えることができる。これにより、前記正逆転切換装置37を、前記逆転用ファン63を前記第2伝動ベルト52に上方側から当接させた逆転状態に切換えることができる。
【0070】
これにより、前記エンジン動力は、出力軸→第2出力プーリ→第2伝動ベルト→逆転ファンプーリ→第3伝動ベルト→小径ファンプーリ→ファン駆動軸の順で伝動することにより、前記冷却ファンが逆転駆動する(図13参照)。
【符号の説明】
【0071】
1 クローラ式走行装置(走行装置)
2 走行機体
8 機体フレーム
10 エンジン
13 ディーゼル微粒子捕集装置(排ガス処理装置、DPF)
14 窒素酸化物還元装置(排ガス処理装置、SCR)
30 ファン駆動軸(冷却ファン軸)
34 導風板(ガイド体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13