(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】移動支援装置、ガス検知装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/04 20060101AFI20240318BHJP
G08B 21/16 20060101ALI20240318BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240318BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01M3/04 F
G08B21/16
G01C21/36
G08G1/0968
(21)【出願番号】P 2020126801
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大貫 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108957507(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0209095(US,A1)
【文献】特開2016-080629(JP,A)
【文献】特開2019-139476(JP,A)
【文献】特開2019-095431(JP,A)
【文献】特開2020-044988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
G06F 3/01
G06Q 50/06- 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に埋設されたガス管からのガス漏えいの有無を検査するガス検知器本体を移動するときの移動支援装置であって、
作業者によるガス漏えい検査中の視野の変化に追従して、前記ガス検知器本体によるガス漏えい検査領域を撮影する撮影部と、
前記
移動支援装置の位置情報を特定する特定部と、
前記特定部で特定された位置情報に基づき、前記ガス管の埋設位置情報を取得する取得部と、
前記撮影部で撮影し
た撮影領域の画像を解析して、予め定めた注意喚起対象を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出した前記注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出す読出部と、
前記作業者の視野を妨げず、かつ変化する前記視野の範囲の位置座標と同等の位置座標が逐次割り当てられる表示部と、
前記表示部に、前記取得部で取得した前記埋設位置情報と、前記読出部で読み出した前記注意喚起情報と、を表示する制御を行う表示制御部と、
を有する移動支援装置。
【請求項2】
前記表示部を通して前記作業者が見る実像に対して、位置情報がマッチングした状態で、前記埋設位置情報及び前記注意喚起情報が、前記表示部で重畳される、請求項1記載の移動支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部が、前記撮影部で撮影したガス漏えい検査領域画像を、前記作業者が見る実像に代えて、視野画像として前記表示部に表示すると共に、前記視野画像に対して、前記埋設位置情報及び前記注意喚起情報を重畳表示する、請求項1又は請求項2記載の移動支援装置。
【請求項4】
前記注意喚起対象が、
路面に設置されたマンホール、及び路面の補修時に発生する補修溝を含むガス漏えい重点監視位置である、請求項1~請求項3の何れか1 項記載の移動支援装置。
【請求項5】
路面に埋設されたガス管からのガス漏えいの有無を検査するガス検知器本体と、
前記ガス検知器本体を移動するときの移動支援装置であって、作業者によるガス漏えい検査中の視野の変化に追従して前記ガス検知器本体によるガス漏えい検査領域を撮影する撮影部、前記
移動支援装置の位置情報を特定する特定部、前記特定部で特定された位置情報に基づき前記ガス管の埋設位置情報を取得する取得部、前記撮影部で撮影し
た撮影領域の画像を解析して予め定めた注意喚起対象を抽出する抽出部、前記抽出部で抽出した前記注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出す読出部、前記作業者の視野を妨げずかつ変化する前記視野の範囲の位置座標と同等の位置座標が逐次割り当てられる表示部、及び、前記表示部に、前記取得部で取得した前記埋設位置情報と前記読出部で読み出した前記注意喚起情報とを表示する制御を行う表示制御部、を備えた移動支援装置と、
前記ガス検知器本体及び前記移動支援装置が搭載され、駆動デバイスを制御して、前記ガス管が埋設された位置に沿って路面を移動可能な移動体と、
を有するガス検知装置。
【請求項6】
前記移動体は、ガス検知を監視する作業者が乗車可能である、請求項5記載のガス検知装置。
【請求項7】
前記移動体は、前記取得部で取得した前記ガス管の埋設位置情報、及び前記抽出部で抽出された前記注意喚起対象の位置に基づいて、予め定めた走行路に沿って自動で走行する自動走行機能を備える、請求項5記載のガス検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に埋設されたガス管に関連する作業を実行する際の、路面の移動を支援する移動支援装置、及びガス漏えいを検知するガス検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定対象の気体中にレーザビームを通過させ、該通過させたレーザビームの強度の変化に基づいて前記気体中の所定のガスを検出するLD分光ガス検出装置と、現在位置を測定する測位装置と、前記LD分光ガス検出装置によって前記所定のガスを検出した場所を、前記測位装置の出力に基づいて表示する表示制御装置とを移動体に搭載して成ることを特徴とするガス検出装置が記載されている。
【0003】
なお、特許文献1では、GPS(Global Positioning System)によって車両の位置を測定するための移動体測位装置、及び電子地図情報やガス管の埋設位置に関する情報等を有するとともにガス漏えい検出位置等を表示する、表示制御装置としての携帯型地理情報システム(mobile GIS「Geographic information system」)を備えており、mobile GISは、ガス導管の埋設状況などの電子地図情報を保有しており、通信線を通じて得た情報にしたがって、電子地図上にリアルタイムでガス検出情報と位置情報とを表示することが記載されている。
【0004】
地中に埋設されているガス導管は、ガス事業法の定めにより、ガスの漏えいがないことを定期的に確認する必要がある(ガス漏えい検査)。
【0005】
なお、参考として、特許文献2には、GPSを用いて測定車両の位置及び速度を検出し、測定したガスのデータ及び位置速度のデータを収録し、ガス漏えいのあった位置をデータとして収録する技術が開示されている。
【0006】
ところで、作業者は、周囲の交通環境に注意しながらガス漏えい検査を行う。例えば、作業者は、特許文献1及び特許文献2に記載のような車両に限らず、カート式ガス検知器を用いて、歩行しながら巡回を行う場合がある。
【0007】
また、ガス漏えい検査では、舗装の目地付近(修復痕跡の溝)及びマンホール等の周辺を重点的に検査する必要があるため、路面監視(注意喚起対象の把握)は重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-72411号公報
【文献】特開平10-300619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば、特許文献1等に記載されたGPSを用いて位置を特定して、モニタ上に現在位置の地図をリアルタイムに表示すると共に、予め周知のガス導管の配管図情報等に基づき、モニタ上に表示された地図画像にガス導管位置を重畳表示することが周知技術で可能だとしても、路面監視には不十分である。
【0010】
言い換えれば、修復痕跡やマンホール等の注意喚起対象は、現場に行き、作業者が直接目視で確認しないと、当該注意喚起対象の有無や位置特定は困難である。
【0011】
本発明は、作業現場で撮影された画像から、注意喚起対象を自動判別し、かつ、作業者の視野範囲に重畳表示することで、作業者に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる移動支援装置、ガス検知装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る移動支援装置は、路面に埋設されたガス管からのガス漏えいの有無を検査するガス検知器本体を移動するときの移動支援装置であって、作業者によるガス漏えい検査中の視野の変化に追従して、前記ガス検知器本体によるガス漏えい検査領域を撮影する撮影部と、前記移動支援装置の位置情報を特定する特定部と、前記特定部で特定された位置情報に基づき、前記ガス管の埋設位置情報を取得する取得部と、前記撮影部で撮影した撮影領域の画像を解析して、予め定めた注意喚起対象を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した前記注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出す読出部と、前記作業者の視野を妨げず、かつ変化する前記視野の範囲の位置座標と同等の位置座標が逐次割り当てられる表示部と、前記表示部に、前記取得部で取得した前記埋設位置情報と、前記読出部で読み出した前記注意喚起情報とを表示する制御を行う表示制御部と、を有している。
【0013】
本発明によれば、路面での導管ガス関連工事の際に作業者の目視に頼らず、作業者の視野の変化に追従して、路面を監視することができ、作業者の視野の範囲内に存在する予め定めた注意喚起対象(マンホール等)を自動検索して、重畳表示する。
【0014】
このため、作業者に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる。
【0015】
本発明において、前記表示部を通して前記作業者が見る実像に対して、位置情報がマッチングした状態で、前記埋設位置情報及び前記注意喚起情報が、前記表示部で重畳されることを特徴としている。
【0016】
例えば、スマートグラス等のレンズを表示部とすれば、作業者がレンズ越しに見る実像に対して、表示デバイスに埋設位置情報及び注意喚起情報を重畳表示することで、作業者への注意喚起情報の伝達が確実となる。
【0017】
本発明において、前記表示制御部が、前記撮影部で撮影したガス漏えい検査領域画像を、前記作業者が見る実像に代えて、視野画像として前記表示部に表示すると共に、前記視野画像に対して、前記埋設位置情報及び前記注意喚起情報を重畳表示することを特徴としている。
【0018】
実像に代えて、表示デバイスに撮影部で撮影した画像を表示すると共に、当該撮影画像に埋設位置情報と注意喚起情報を重畳表示する。例えば、VR(Virtual Reality)ゴーグル等が適用可能である。
【0019】
本発明において、前記注意喚起対象が、路面に設置されたマンホール、及び路面の補修時に発生する補修溝を含むガス漏えい重点監視位置であることを特徴としている。
【0020】
ガス漏えい検査において、ガス管と路面との間の隙間からガス漏えいが顕著となることを考慮し、路面に設置されたマンホール、及び路面の補修時に発生する補修溝を含む重点監視位置を注意喚起対象とすることで、ガス漏えい検査の有用性、確実性を向上することができる。
【0021】
本発明に係るガス検知装置は、路面に埋設されたガス管からのガス漏えいの有無を検査するガス検知器本体と、前記ガス検知器本体を移動するときの移動支援装置であって、作業者によるガス漏えい検査中の視野の変化に追従して前記ガス検知器本体によるガス漏えい検査領域を撮影する撮影部、前記移動支援装置の位置情報を特定する特定部、前記特定部で特定された位置情報に基づき前記ガス管の埋設位置情報を取得する取得部、前記撮影部で撮影した撮影領域の画像を解析して予め定めた注意喚起対象を抽出する抽出部、前記抽出部で抽出した前記注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出す読出部、前記作業者の視野を妨げずかつ変化する前記視野の範囲の位置座標と同等の位置座標が逐次割り当てられる表示部、及び、前記表示部に、前記取得部で取得した前記埋設位置情報と前記読出部で読み出した前記注意喚起情報とを表示する制御を行う表示制御部、を備えた移動支援装置と、前記ガス検知器本体及び前記移動支援装置が搭載され、駆動デバイスを制御して、前記ガス管が埋設された位置に沿って路面を移動可能な移動体と、を有している。
【0022】
本発明によれば、移動支援装置による効果に加え、ガス漏えい検査作業効率を向上することができる。
【0023】
本発明において、前記移動体は、ガス検知を監視する作業者が乗車可能であることを特徴としている。
【0024】
ガス漏えい検査時の作業者の負担を軽減することができる。
【0025】
本発明において、前記移動体は、前記取得部で取得した前記ガス管の埋設位置情報、及び前記抽出部で抽出された前記注意喚起対象の位置に基づいて、予め定めた走行路に沿って自動で走行する自動走行機能を備えることを特徴としている。
【0026】
自動運転により、検査ルート逸脱等、所謂ヒューマンエラーを削減することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した如く本発明では、作業現場で撮影された画像から、注意喚起対象を自動判別し、かつ、作業者の視野範囲に重畳表示することで、作業者に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施の形態に係るカート式ガス検知器を用いて、路面に埋設されたガス導管に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示す斜視図である。
【
図2】スマートグラスを装着した、
図1に示す検査員の上半身の拡大図である。
【
図3】本実施の形態に係る移動支援装置の制御ブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る移動支援装置における画像重畳制御の流れを示すフローチャートである。
【
図5】(A)は本実施の形態に係るカート式ガス検知器を用いて、路面に埋設されたガス導管に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示す側面図、(B)は検査員が装着したスマートグラス越しに見える視野画像の正面図である。
【
図6】本実施の形態の変形例1として適用された表示デバイスとしてのVRゴーグルを、検査員が装着した状態を示す斜視図である。
【
図7】本実施の形態の変形例2として適用された走行装置であり、検査器本体が搭載され、かつ検査員が乗車した状態を示す斜視図である。
【
図8】変形例2に係る走行装置の自動運転制御の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、ガス漏えいを検査する作業者である検査員10が、本実施の形態に係るカート式ガス検知器12を用いて、路面RSに埋設されたガス導管14に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示している。なお、ガス導管14は、家屋敷地内に配管されているものを含む全てのガス管の内、道路内に埋められているものを言う。
【0030】
カート式ガス検知器12は、路面RSに漂う気体を吸引して、吸引したガス成分を分析することでガス導管14からのガス漏えいの有無を判断する検査器本体16と、検査器本体16を、路面RSから予め定めた間隔をあけた状態を保持しながら移動可能な、左右一対の車輪18と、検査器本体16から路面RS上方に突出し、検査員10が把持して検査器本体16を移動させるハンドル部20と、で構成されている。
【0031】
ハンドル部20には、検査器本体16によるガス漏えい有無判定結果等を表示するモニタ部(図示省略)が取り付けられており、検査員10は、路面RSに埋設されたガス導管14に沿って移動しながら、このモニタ部を監視していくことでガス漏えい検査が実行される。なお、モニタは検査器本体16の上部に取り付けてもよい。
【0032】
ここで、本実施の形態では、検査員10は、移動支援機能を搭載したスマートグラス22を装着した状態で、ガス漏えい検査を実施している。移動支援機能は、ガス導管14に沿った移動を支援するものであり、スマートグラス22に、移動支援装置24(
図2参照)として装備されている(詳細後述)。
【0033】
例えば、本実施の形態に対する比較例として、検査員10はガス導管14の配管図等が記載された図面を一方の手に持ち、他方の手でハンドル部20を把持し、かつ、移動する周囲環境における注意喚起対象に注意を払って移動していた。
【0034】
これに対して、本実施の形態では、移動支援装置24は、検査員10の業務の内、ガス導管14の埋設位置の案内、周囲環境の注意喚起対象の監視が実行され、検査員10に報知する機能を有している。
【0035】
図2に示される如く、スマートグラス22に装備された移動支援装置24は、スマートグラス22のフレーム22Fに内蔵されている。フレーム22Fには、装着者(検査員10)の目の位置に合わせて一対の開口部が設けられ、それぞれにレンズ22Lが取り付けられている。
【0036】
レンズ22Lは、検査員10が装着することで実際の現場(実像)を目視することができるレンズ本来の機能に加え、移動支援装置24から指示によって情報を表示する表示デバイス22A(
図3参照)として機能する。
【0037】
図3は、本実施の形態に係る移動支援装置24の制御ブロック図である。
【0038】
本実施の形態の移動支援装置24は、前述したように、主な制御系のデバイスはスマートグラス22のフレーム22F(
図2参照)に設けられると共に、表示デバイス22Aがレンズ22Lと兼用されている。
【0039】
図3に示される如く、移動支援装置24は、入力デバイスとして撮影デバイス26及びGPSアンテナ28を備えている。
【0040】
(撮影デバイス処理系)
【0041】
撮影デバイス26は、例えば、CCDカメラ等で構成され、レンズ22Lの光軸と略平行な撮影光軸となるように、フレーム22Fに取り付けられている。言い換えれば、スマートグラス22を装着した検査員10の顔の向きに追従して、撮影光軸が変位することになる。
【0042】
撮影デバイス26は、画像解析部30に接続されており、撮影デバイス26で撮影した画像情報は、画像解析部30によって解析される。画像解析部30での画像解析例としては、画像情報に基づいて領域分割し、予め定めたラベリングリストに基づいて機械学習し、画像種類(建物、道路、車両、及び撮影画像範囲に存在する特徴画像等)に分類するといった手法が適用可能である。なお、画像解析技術は特に限定されるものではない。
【0043】
画像解析部30での解析結果は、注意喚起対象画像抽出部32へ送出される。注意喚起対象画像抽出部32には、予め注意喚起対象に関する情報が登録されており、画像解析部30で解析された画像種類の中から、路面RSでガス漏えいが起こり易い特徴画像として、一例として、「舗装痕跡部画像」及び「マンホール画像」等を抽出する。なお、以下において、舗装痕跡部及びマンホールをガス漏えい重点監視位置として説明するが、ガス漏えい重点監視位置は、この舗装痕跡部及びマンホールに限定されるものではない。
【0044】
注意喚起対象画像抽出部32は、注意喚起情報読出部34に接続されており、抽出した特徴画像(舗装痕跡画像及びマンホール画像等)を送出する。
【0045】
注意喚起情報読出部34は、注意喚起情報データベース36に接続されており、特徴画像に基づいて、注意喚起情報データベース36から注意喚起情報(メッセージ等)を読み出し、画像重畳部38へ送出する。
【0046】
なお、注意喚起情報データベース36は、移動支援装置24に搭載せず、移動支援装置24との間で通信機能を利用して外部から情報を取得することが可能となるようにクラウド化してもよい。
【0047】
(GPSアンテナ処理系)
【0048】
一方、GPSアンテナ28は、位置測位システムにおいて、複数のGPS衛星(スペースセグメント)から電波を受信し、位置情報取得部40へ送出する。位置情報取得部40では、受信した電波(少なくも3個、好ましくは4個のGPS衛星から受信した時刻情報)に基づいて現在位置を計算し、ガス導管位置情報読出部42へ送出する。
【0049】
ガス導管位置情報読出部42は、ガス導管位置情報データベース44に接続されている。ガス導管位置情報データベース44は、ガス漏えい検査管轄地域全般における、路面RSに埋設されたガス導管の配管図情報が格納されている。ガス導管位置情報読出部42は、位置情報取得部40から取得した位置情報に基づいて、ガス導管の配管図を読み出し、画像重畳部38へ送出する。
【0050】
なお、ガス導管位置情報データベース44は、移動支援装置24に搭載せず、移動支援装置24との間で通信機能を利用して外部から情報を取得することが可能となるようにクラウド化してもよい。
【0051】
画像重畳部38では、注意喚起対象画像抽出部32から注意喚起対象画像を読み出し、注意喚起対象を考慮したガス漏えい検査ルート画像50(
図5(B)参照)を生成する。
【0052】
また、画像重畳部38では、注意喚起対象画像抽出部32から読み出して生成したガス漏えい検査ルート画像50と、撮影デバイス処理系の注意喚起情報読出部34から取得した注意喚起情報に基づく画像(注意喚起情報画像52)と、GPS処理系のガス導管位置情報読出部42から取得したガス導管配管図画像と、を重畳する。
【0053】
重畳した画像は、出力部46を介して、表示デバイス22A(レンズ22L)に出力され、表示デバイス22Aに重畳画像が表示される。
【0054】
このとき、スマートグラス22のレンズ22L上では、本来の機能(レンズ機能)で検査員10が実際に目視している実像に対して追従、すなわち、相対位置関係がマッチング(照合)された状態で重畳画像が表示され、実像に対して、実際は見ることができない対象、すなわち、埋設されたガス導管画像及びガス漏えい検査ルート画像50(
図5(B)参照)が表示される共に、注意喚起対象を指標する注意喚起情報が表示される。
【0055】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0056】
まず、
図4のフローチャートに従い、移動支援装置24における画像重畳制御の流れについて説明する。
【0057】
ステップ100では、撮影デバイス26による撮影を開始すると共に、GPSアンテナ28による位置情報に関する電波の受信を開始し、ステップ102へ移行する。
【0058】
ステップ102では、撮影デバイス26で撮影した画像を解析し、次いで、ステップ104へ移行して、注意喚起対象画像を抽出し、ステップ106へ移行する。
【0059】
ステップ106では、抽出された注意喚起対象画像の種類を特定し、次いで、ステップ108へ移行して特定した種類に対応する注意喚起情報を読み出す。
【0060】
次のステップ110では、GPS位置情報に基づき、ガス導管位置情報を読み出し、ステップ112へ移行する。
【0061】
ステップ112では、レンズ22L内の実像の相対位置関係とマッチングする位置座標に、注意喚起情報及びガス導管位置情報を設定する。次のステップ114では、レンズ22L内の実像の相対位置関係とマッチングする位置座標に、ガス導管位置情報に沿い、かつ注意喚起対象を考慮したガス漏えい検査ルート画像50(
図5(B)参照)を設定する。
【0062】
次のステップ116では、ステップ112及びステップ114でそれぞれ設定した各画像を重畳し、次いでステップ118へ移行して、表示デバイス22A(レンズ22L)に重畳画像を表示し、ステップ120へ移行する。
【0063】
ステップ120では、処理が終了したか否かを判断し、否定判定された場合は、ステップ102へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0064】
また、ステップ120で肯定判定された場合は、ステップ122へ移行して、撮影デバイス26による撮影を終了すると共に、GPSアンテナ28による電波受信を終了し、このルーチンは終了する。
【0065】
(ガス漏えい検査手順)
【0066】
検査員10は、移動支援装置24が装備されたスマートグラス22を装着した状態で、路面RSを歩行しながらカート式ガス検知器12を押し転がし、ガス漏えい検査を行って行く(
図5(A)参照)。
【0067】
検査員10は、ガス漏えい検査の行く手(検査先)を、スマートグラス22越しに、実像を目視(
図5(A)の視野範囲L参照)すると共に、移動支援装置24による重畳画像を同時に視野に入れることができる。
【0068】
ここで、ガス漏えいの検査先には、注意喚起対象である舗装痕跡部(ここでは、補修溝48Aとする。)及びマンホール48Bが存在する場合がある。
【0069】
注意喚起対象の周囲は、ガスの漏えいの可能性が高いため、重点的に検査する必要がある。この場合、検査員10の視野範囲Lに注意喚起対象は存在し、目視しているにも関わらず、煩雑な業務により見落とす場合があった。
【0070】
そこで、本実施の形態では、移動支援装置24により、スマートグラス22で実像を見ている検査員10に対して、当該実像と相対位置関係をマッチングさせた状態で、表示デバイス22Aに重畳画像を表示するようにした。
【0071】
検査員10は、
図5(B)に示される如く、スマートグラス22のレンズ22Lを介して、実像に対して、ガス導管14の埋設位置を示す画像、注意喚起情報画像52、及び、注意喚起対象を考慮したガス漏えい検査ルート画像50が重ね合された画像を視野に入れることができる。
【0072】
すなわち、検査員10は、例えば、片手にガス導管配管図を持ち、このガス導管配管図を見ながら、実像の中の注意喚起対象に注意しつつ移動し、ガス漏えい検査ルートを決定するといった、煩雑な業務を強いられることない。このため、本実施の形態の移動支援装置24を適用した検査員10は、適正なガス漏えい検査ルートに沿ってガス漏えい検査を実行することができる。
【0073】
また、注意喚起情報読出部34では、例えば、抽出画像の種類がマンホール48Bの場合は、「○m先にマンホール」という特記情報と共に、マンホール48Bの位置を指標する、所謂吹き出し画像を読み出す。
【0074】
吹き出し画像には、予め、「要重点検査!」等のメッセージが付加されており、吹き出しの中に特記情報を書き込み、
図5(B)に示す注意喚起情報画像52を生成する。
【0075】
また、注意喚起情報読出部34では、例えば、抽出画像の種類が補修溝48Aの場合は、「△m先に補修溝」という特記情報と共に、補修溝48Aの位置を指標する、所謂吹き出し画像を読み出す。
【0076】
吹き出し画像には、予め、「要重点検査!」等のメッセージが付加されており、吹き出しの中に特記情報を書き込み、
図5(B)に示す注意喚起情報画像52を生成する。
【0077】
なお、複数の注意喚起対象(補修溝48Aとマンホール48B等)が存在する場合は、1つの吹き出し画像に、それぞれの特記情報を書き込み、1つの注意喚起情報画像52としてもよい(
図5(B)参照)。
【0078】
(変形例1)
【0079】
本実施の形態では、検査員10が装着するスマートグラス22に、移動支援装置24を取り付けることで、ガス導管14の埋設位置を示す画像、注意喚起情報画像52、及び、注意喚起対象を考慮したガス漏えい検査ルート画像50が重畳された画像を、実像の相対位置とマッチングさせて表示するようにした。
【0080】
これに対して変形例1では、
図6に示される如く、スマートグラス22に代えて、VRゴーグル54を適用するようにした。
【0081】
スマートグラス22では、実像(検査員10がスマートグラス22のレンズ22L越しで目視する画像)を利用したが、VRゴーグル54では、モニタ56に撮影デバイス26で撮影した現場画像を表示し、かつ、この現場画像にガス導管14の埋設位置を示す画像、注意喚起情報画像52、及び、注意喚起対象を考慮したガス漏えい検査ルート画像50を重畳する。
【0082】
VRゴーグル54を適用することで、撮影デバイス26で撮影した画像から、注意喚起対象のみならず、周辺の交通情報(車両や歩行者の存在)を画像処理によって抽出して、検査員10に報知することが可能となり、ガス漏えい検査の安全性を確保することができる。
【0083】
また、VRゴーグル54を適用することで、実像との相対位置関係のマッチング処理が不要であるため、画像処理の負担を軽減することができる。
【0084】
なお、VRゴーグル54にヘッドホン58を取り付け、聴覚を通じて注意喚起情報を報知することを併用してもよい。
【0085】
(変形例2)
【0086】
本実施の形態では、カート式ガス検知器12のハンドル部20を把持しながら歩行によってガス漏えい検査ルートに従い移動する。
【0087】
これに対して変形例2では、
図7に示される如く、検査器本体16が、検査員10が乗車可能な走行装置60に搭載する構成とした。なお、この変形例2の場合、本実施の形態のスマートグラス22であってもよいし、変形例1のVRゴーグル54であってもよい。
【0088】
走行装置60は、手動操作運転モードと自動操作運転モードとを選択可能としてもよい。また、手動操作運転専用でもよいし、自動操作運転専用でもよい。
【0089】
(手動操作運転モード)
【0090】
走行装置60は、例えば、一対の車輪62を駆動させるモータ等の駆動デバイス64(
図8参照)を搭載し、検査員10の意思で、操舵運転が可能となっており、検査員10は歩行が不要となる。
【0091】
なお、検査員10の意思による操舵運転とは、ハンドル部66の上端にリモートコントローラを取り付けてもよいし、検査員10の重心のかけかたによって走行速度や走行方法を変更できる機能を持たせてもよい。
【0092】
(自動運転モード)
【0093】
変形例2の走行装置60は、移動支援装置24と連携させることで、駆動デバイス64の駆動を駆動制御部74で制御して、ガス検査ルートに沿って、自動的に走行させるようにしてもよい。
【0094】
図8は、移動支援装置24と走行制御装置68とが組み合わされた自動運転制御装置70の制御ブロック図である。
【0095】
なお、
図2に示す移動支援装置24の同一構成(同一機能ブロック及びその情報伝達系統)について、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。また、
図8では、スマートグラス22を適用した場合について説明する。
【0096】
自動運転制御装置70は、走行ルート設定部72を備えている。走行ルート設定部72は、画像解析部30、注意喚起対象画像抽出部32、位置情報取得部40、及びガス導管位置情報読出部42のそれぞれと接続されている。
【0097】
走行ルート設定部72は、画像解析部30から周辺画像に関する情報を取得する。
【0098】
走行ルート設定部72は、注意喚起対象画像抽出部32から注意喚起対象に関する情報を取得する。
【0099】
走行ルート設定部72は、位置情報取得部40から位置情報を取得する。
【0100】
走行ルート設定部72は、ガス導管位置情報読出部42からガス導管位置情報を取得する。
【0101】
走行ルート設定部72は、周辺画像に関する情報、注意喚起対象に関する情報、位置情報、及びガス導管位置情報に基づき、走行装置60の走行ルートを設定し、駆動制御部74へ送出する。
【0102】
駆動制御部74は、駆動デバイス64を制御して、走行装置60の走行を制御する。
【0103】
なお、走行装置60として、同軸上に一対の車輪62が取り付けられた走行装置60を例に挙げたが、前後方向に異なる車軸が設けられた複数輪車(二輪車、三輪車、四輪車等)であってもよい。
【0104】
本実施の形態によれば、ガス漏えい検査の現場で撮影された画像から、路面RSの注意喚起対象を自動判別し、かつ、視野の範囲に重畳表示することで、検査員10に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる。より詳しくは、検査員10の視覚的情報に依存せずに、精度よく注意喚起対象を認識できるため、ガス漏えい検査作業の安全性を高めることができる。
【0105】
なお、本実施の形態では、主として、ガス漏えい検査員10を対象として、適正なガス漏えい検査の支援及び安全性を担保するものであるが、自動運転によるガス漏えい検査の情報源としても利用可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 検査員(作業者)
12 カート式ガス検知器
14 ガス導管
RS 路面
16 検査器本体
18 車輪
20 ハンドル部
22 スマートグラス
24 移動支援装置
22A 表示デバイス(表示部)
22F フレーム
26 撮影デバイス(撮影部)
28 GPSアンテナ(特定部)
30 画像解析部
32 注意喚起対象画像抽出部(抽出部)
34 注意喚起情報読出部(読出部)
36 注意喚起情報データベース
38 画像重畳部(表示制御部)
40 位置情報取得部(特定部)
42 ガス導管位置情報読出部(取得部)
44 ガス導管位置情報データベース
46 出力部
48A 補修溝(注意喚起対象)
48B マンホール(注意喚起対象)
50 ガス漏えい検査ルート画像
52 注意喚起情報画像
54 VRゴーグル
56 モニタ
58 ヘッドホン
60 走行装置
62 車輪
64 駆動デバイス
66 ハンドル部
68 走行制御装置
70 自動運転制御装置
72 走行ルート設定部
74 駆動制御部