(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】スイッチング素子駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240318BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240318BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M1/08 A
H03K17/16 H
(21)【出願番号】P 2020137453
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2021-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】吉満 翔大
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】打出 義尚
【審判官】山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0258697(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0007241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M1/00-3/44
H03K17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に流れる負荷電流を測定する電流センサと、
電源から入力された入力電圧を測定する電圧センサと、
前記電源と前記負荷との間に配置された降圧チョッパ回路のスイッチング素子を駆動するためのゲート駆動電圧を供給するゲート駆動電圧供給部に、前記ゲート駆動電圧の指令値を出力する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ゲート駆動電圧の指令値を、前記負荷電流と
、前記入力電圧と
、ゲート容量
の充電時間と
、の間の関係に基づいて決定
し、
前記負荷電流が大きくなるにつれて前記ゲート駆動電圧が大きくなるように、前記ゲート駆動電圧の指令値を決定する、スイッチング素子駆動装置。
【請求項2】
負荷に流れる負荷電流を測定する電流センサと、
電源から入力された入力電圧を測定する電圧センサと、
前記電源と前記負荷との間に配置された降圧チョッパ回路のスイッチング素子を駆動するためのゲート駆動電圧を供給するゲート駆動電圧供給部に、前記ゲート駆動電圧の指令値を出力する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記ゲート駆動電圧の指令値を、前記負荷電流と前記入力電圧に基づいて決定し、
前記入力電圧が大きくなるにつれて前記ゲート駆動電圧が大きくなるように、前記ゲート駆動電圧の指令値を決定する、スイッチング素子駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記負荷電流が大きくなるにつれて前記ゲート駆動電圧が大きくなるように、前記ゲート駆動電圧の指令値を決定する、請求項1または2に記載のスイッチング素子駆動装置。
【請求項4】
前記ゲート駆動電圧の指令値は、第1の係数と前記負荷電流の積と、第2の係数と前記入力電圧の積と、の和であ
り、前記第1の係数及び前記第2の係数は正の値である、請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチング素子駆動装置。
【請求項5】
前記第1の係数と前記第2の係数の少なくともどちらか一方は、前記負荷電流および/または前記入力電圧の関数である、請求項4に記載のスイッチング素子駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧駆動型のスイッチング素子は、スイッチング損失を低減するために、スイッチング速度を上げる必要があるが、スイッチング速度を上げた場合には、ゲート電流の急激な変化によりノイズが発生する。そこで、例えば、特許文献1では、ターンオン・オフ時に、ドレイン電圧に基づいてゲート抵抗値を切り替えることで、ゲート電圧を変化させ、ノイズの発生を抑制しつつ、スイッチング損失も低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ハードウェアを切り替えることで、ゲート抵抗値を切り替えており、コストが増大する。
【0005】
そこで、本発明は、安価な構成で、ノイズの発生を抑制しつつ、スイッチング損失も低減するスイッチング素子駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のスイッチング素子駆動装置は、負荷に流れる負荷電流を測定する電流センサと、電源から入力された入力電圧を測定する電圧センサと、前記電源と前記負荷との間に配置されたスイッチング素子を駆動するためのゲート駆動電圧を供給するゲート駆動電圧供給部に、前記ゲート駆動電圧の指令値を出力する制御部と、を有し、前記制御部は、前記ゲート駆動電圧の指令値を、前記負荷電流と前記入力電圧に基づいて決定する。
【0007】
前記制御部は、前記負荷電流が大きくなるにつれて前記ゲート駆動電圧が大きくなるように、前記ゲート駆動電圧の指令値を決定するようにしても良い。
【0008】
前記制御部は、前記入力電圧が大きくなるにつれて前記ゲート駆動電圧が大きくなるように、前記ゲート駆動電圧の指令値を決定するようにしても良い。
【0009】
前記ゲート駆動電圧の指令値は、第1の係数と前記負荷電流の積と、第2の係数と前記入力電圧の積と、の和であるようにしても良い。
【0010】
前記第1の係数は、前記負荷電流および/または前記入力電圧の関数であるようにしても良い。
【0011】
前記第2の係数は、前記負荷電流および/または前記入力電圧の関数であるようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価な構成で、ノイズの発生を抑制しつつ、スイッチング損失も低減するスイッチング素子駆動装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング素子駆動装置100を示す図である。
【
図2】第1の係数aと負荷電流Iout、入力電圧Vinとの関係を説明する図である。
【
図3】第2の係数bと負荷電流Iout、入力電圧Vinとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るスイッチング素子駆動装置100を示す図である。スイッチング素子駆動装置100は、スイッチング素子Sの駆動を制御する。スイッチング素子Sは、電圧により制御される電圧駆動型スイッチング素子であり、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
図1において、スイッチング素子Sは、降圧チョッパ回路SDCのスイッチング素子であるが、スイッチング素子Sは、他の種類のスイッチング電源回路のスイッチング素子であっても良い。
【0015】
スイッチング素子駆動装置100は、電流センサ110と、電圧センサ120と、ゲート駆動電圧供給部130と、ゲート駆動部140と、制御部150と、を有する。
【0016】
電流センサ110は、電源Eにより電力を供給される負荷Lに流れる電流(負荷電流Iout)を測定する。
【0017】
電圧センサ120は、電源Eから入力された電圧(入力電圧Vin)を測定する。
【0018】
ゲート駆動電圧供給部130は、ゲートを駆動するための電圧(ゲート駆動電圧)をゲート駆動部140に供給する。本実施形態において、ゲート駆動電圧の大きさは、可変であり、ゲート駆動電圧供給部130は、ゲート駆動電圧の指令値を受け、この指令値に基づいたゲート駆動電圧をゲート駆動部140に供給する。
【0019】
ゲート駆動部140は、電源Eと負荷Lとの間に配置されたスイッチング素子Sを駆動する。ゲート駆動部140は、ゲート信号に基づいたタイミングで、ゲート駆動電圧供給部130から供給されたゲート駆動電圧をスイッチング素子のゲートに供給することで、スイッチング素子Sを駆動する。例えば、ゲート抵抗RGが、ゲート駆動部140とスイッチング素子Sの間に接続され、ゲート駆動部140から出力された電流は、ゲート抵抗RGを介して、ゲート駆動部140からスイッチング素子Sのゲートに流れる。ゲート信号は、制御部150により出力されるようにしても良いし、制御部150とは別の装置により出力されるようにしても良い。
【0020】
制御部150は、電流センサ110により測定された負荷電流と、電圧センサ120により測定された入力電圧と、に基づいて、ゲート駆動電圧の指令値を決定し、この指令値をゲート駆動供給電圧部140に出力する。
【0021】
このため、本実施形態において、スイッチン素子Sは、入力電圧と負荷電流に基づいたゲート駆動電圧、つまり、負荷Lの消費電力に基づいたゲート駆動電圧により駆動される。よって、本実施形態では、ノイズの発生を抑制しつつ、スイッチング損失も低減することが可能である。
【0022】
本実施形態では、例えば、軽負荷に対しては、ゲート駆動電圧を小さくし、ゲート容量に充電される時間を延ばすことが可能であり、結果、スイッチング素子Sのドレイン・ソース間電圧の急峻な変化を抑えることが可能であり、ノイズを低減することが可能である。一方、重負荷に対しては、ゲート駆動電圧を大きくし、ゲート容量の充電される時間を短縮することが可能であり、結果、スイッチング素子Sのミラー期間を短縮することが可能になり、スイッチング損失を低減することが可能である。
【0023】
また、本実施形態では、制御部150をソフトウェアで構成することが可能である。よって、本実施形態では、追加の回路、部品が必要なく、安価な構成で、ノイズの発生を抑制しつつ、スイッチング損失も低減することが可能である。
【0024】
例えば、制御部150は、負荷電流が大きくなるにつれてゲート駆動電圧が大きくなるように指令値を決定すると良い。入力電圧Vinが一定であれば、負荷Lの消費電力は、負荷電流Ioutが大きくになるにつれて大きくなる。よって、このようにすることで、低負荷に対しては、ゲート駆動電圧を小さくし、重負荷に対しては、ゲート駆動電圧を大きくすることが可能になる。
【0025】
また、制御部150は、入力電圧Vinが大きくなるにつれてゲート駆動電圧が大きくなるようにゲート駆動電圧の指令値を決定すると良い。負荷電流Ioutが一定であれば、負荷Lの消費電力は、入力電圧Voutが大きくになるにつれて大きくなる。よって、このようにすることで、低負荷に対しては、ゲート駆動電圧を小さくし、重負荷に対しては、ゲート駆動電圧を大きくすることが可能になる。
【0026】
制御部150は、入力電圧Vin、負荷電流Ioutの値ごとのゲート駆動電圧の指令値が記載されたテーブルを有するようにしても良いし、ゲート駆動電圧の指令値を入力電圧Vin、負荷電流Ioutに基づいて計算するようにしても良い。
【0027】
例えば、ゲート駆動電圧の指令値は、第1の係数aと負荷電流Ioutの積と、第2の係数bと入力電圧Vinの積と、の和であると良い(aIout+bVin)。このとき、第1の係数a、第2の係数bは、例えば、スイッチング素子の電気的特性や、ゲート抵抗値、スイッチング電源回路の入出力仕様などに基づいて設定される。
【0028】
このようにすることで、本実施形態では、第1の係数a、第2の係数bをソフトウェアで書き換えるだけで、スイッチング素子の電気的特性や、ゲート抵抗値、スイッチング電源回路の入出力仕様に合わせた修正を行うことが可能になる。
【0029】
また、第1の係数a、第2の係数bを、負荷電流Ioutの関数とし、第1の係数a、第2の係数bは、負荷電流Ioutが大きくなるにつれて大きくなるようにしても良い。また、第1の係数a、第2の係数bを、入力電圧Vinの関数とし、第1の係数a、第2の係数bは、入力電圧Vinが大きくなるにつれて大きくなるようにしても良い。
【0030】
このとき、例えば、第1の係数aは、
図2に示すように、入力電圧Vinが大きくなるにつれて大きくなり、負荷電流Ioutが大きくなるにつれて大きくなるようにすると良い。また、第2の係数bは、
図3に示すように、入力電圧Vinが大きくなるにつれて大きくなり、負荷電流Ioutが大きくなるにつれて大きくなるようにすると良い。
【0031】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
100 スイッチング素子駆動装置
110 電流センサ
120 電圧センサ
130 ゲート駆動電圧供給部
140 ゲート駆動部
150 制御部