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特許7455707過酷環境下塩化物測定システムおよび過酷環境下塩化物測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】過酷環境下塩化物測定システムおよび過酷環境下塩化物測定方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/01 20060101AFI20240318BHJP
   G21C 17/007 20060101ALI20240318BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G21C17/01
G21C17/007
G01N27/06 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020150769
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045205
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 由美子
(72)【発明者】
【氏名】木畑 正法
(72)【発明者】
【氏名】田中 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友紀
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081901(JP,A)
【文献】特開2019-074410(JP,A)
【文献】特開2016-145744(JP,A)
【文献】特開2019-174289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14
G01N 27/00-27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酷事故が生じた原子力プラントの構造物の内部に設けられ、周囲の塩化物濃度に応じて変化する電流、電圧、周波数の少なくともいずれか1つの特定値を出力する塩化物測定センサーと、
前記塩化物測定センサーが検出した前記特定値が入力される測定装置と、
前記塩化物測定センサーから前記測定装置まで延びるケーブルと、
前記測定装置に入力された前記特定値に基づいて前記塩化物濃度を測定する塩化物濃度測定部と、
を備え、
前記塩化物測定センサーは、前記過酷事故が生じる前から設けられていた既設の配管を利用したセンサー挿入ラインを通過可能な大きさであり、かつ前記センサー挿入ラインを介して前記構造物の外部から内部に向けて送り込まれるものであり、
前記ケーブルは、前記構造物の内部の前記塩化物測定センサーから前記センサー挿入ラインを介して前記構造物の外部の前記測定装置まで延びる長さとなっている、
過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項2】
前記塩化物測定センサーは、前記構造物の壁面に接触または近接された状態で設けられる、
請求項1に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項3】
前記塩化物測定センサーは、前記構造物を構成する少なくとも1種の材料を含む特定材料を有し、前記特定材料に付着する前記構造物の内部の湿分に応じて前記特定値が変化する、
請求項1または請求項2に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項4】
前記塩化物測定センサーは、
前記構造物を構成するC、Fe、Crの少なくともいずれか2種を含む前記特定材料と、
Ag、Au、Pt、Tiの少なくともいずれか1種を含んで前記特定材料とは異なる異種材料と、
を有する、
請求項3に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項5】
前記特定値は、前記塩化物測定センサーに対して電流を流すことで得られる値である、
請求項3または請求項4に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項6】
前記塩化物濃度測定部は、前記塩化物測定センサーが有する互いに接近して配置された前記特定材料とプローブとの間に生じる接触電位差に基づいて前記塩化物濃度を測定する、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項7】
前記塩化物濃度測定部は、前記塩化物測定センサーが有する2つの電極の間に電流を流したときの周波数応答に基づいて前記塩化物濃度を測定する、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項8】
前記特定値は、周囲の前記塩化物濃度に応じて前記塩化物測定センサーから発せられる値である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項9】
前記塩化物濃度測定部は、前記塩化物測定センサーが有する異種金属の間に流れる短絡電流に基づいて前記塩化物濃度を測定する、
請求項8に記載の過酷環境下塩化物測定システム。
【請求項10】
過酷事故が生じた原子力プラントの構造物の内部に塩化物測定センサーを設けるステップと、
前記塩化物測定センサーが、周囲の塩化物濃度に応じて変化する電流、電圧、周波数の少なくともいずれか1つの特定値を出力するステップと、
前記塩化物測定センサーから測定装置まで延びるケーブルを介して、前記塩化物測定センサーが検出した前記特定値が前記測定装置に入力され、塩化物濃度測定部が、前記測定装置に入力された前記特定値に基づいて前記塩化物濃度を測定するステップと、
を含
前記塩化物測定センサーは、前記過酷事故が生じる前から設けられていた既設の配管を利用したセンサー挿入ラインを通過可能な大きさであり、かつ前記センサー挿入ラインを介して前記構造物の外部から内部に向けて送り込まれるものであり、
前記ケーブルは、前記構造物の内部の前記塩化物測定センサーから前記センサー挿入ラインを介して前記構造物の外部の前記測定装置まで延びる長さとなっている、
過酷環境下塩化物測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、過酷環境下塩化物測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントで過酷事故が発生すると構造物が損傷するため、一部を除いてモニタリングシステムが機能しなくなる。例えば、圧力容器付近の温度をモニタリングしているのみとなる。ここで、原子炉を構成する材料の健全性を維持することは、廃炉を進める上で重要である。材料の健全性を評価するには、可能な限り、温度、酸素濃度、湿度、塩化物濃度などを把握することが望ましいが、過酷事故が生じた場合には、その把握がかなり困難なものとなる。特に、過酷事故の初期に冷却水として海水を用いた場合には、格納容器などに高濃度の塩化物が付着している可能性があり、材料の寿命を推定する上でのリスク因子となっている。そこで、塩化物濃度を把握することが原子炉を構成する材料の寿命を評価する上で望ましい。従来の技術では、塩化物濃度を原子炉に注入した冷却水の量などにより推定するしかない。特に、気中における材料の壁面に付着している塩化物濃度を測定することは困難である。
【0003】
また、近年、腐食のモニタリングを行うために塩化物を測定する技術として、異種金属の間に流れる短絡電流を測定するもの、周波数応答を測定するもの、接触電位差を測定するものが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】洋上風車の塩分計測について 平成25年第35回風力エネルギー利用シンポジウム予稿集
【文献】大気腐食評価手法に関する最近の進歩 表面科学Vol.36、No.1、pp.4-11(2015)
【文献】人工海水液薄膜下での鋼の腐食速度と水膜厚さの関係 日本金属学会誌第65巻第4号(2001)298-302
【文献】表面の電位分布測定を用いた大気腐食環境下における金属の反応性評価 日本金属学会誌第75巻第5号(2011)310-314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩化物濃度を把握する手法には、イオンクロマトグラフ法、硝酸銀滴定法、イオン電極法、吸光光度法などがある。しかしながら、いずれもサンプリングまたは自動測定ラインを製作して測定するものである。そのため、過酷事故が生じた原子力プラントで使用することが難しい。さらに、放射線の影響を考慮すると原子炉の構造物の内部からサンプルを取り出すことも困難である。
【0006】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、過酷環境下の原子力プラントの構造物の内部からサンプルを取り出さずに構造物の内部の塩化物濃度を測定することができる過酷環境下塩化物測定技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る過酷環境下塩化物測定システムは、過酷事故が生じた原子力プラントの構造物の内部に設けられ、周囲の塩化物濃度に応じて変化する電流、電圧、周波数の少なくともいずれか1つの特定値を出力する塩化物測定センサーと、前記塩化物測定センサーが検出した前記特定値が入力される測定装置と、前記塩化物測定センサーから前記測定装置まで延びるケーブルと、前記測定装置に入力された前記特定値に基づいて前記塩化物濃度を測定する塩化物濃度測定部と、を備え、前記塩化物測定センサーは、前記過酷事故が生じる前から設けられていた既設の配管を利用したセンサー挿入ラインを通過可能な大きさであり、かつ前記センサー挿入ラインを介して前記構造物の外部から内部に向けて送り込まれるものであり、前記ケーブルは、前記構造物の内部の前記塩化物測定センサーから前記センサー挿入ラインを介して前記構造物の外部の前記測定装置まで延びる長さとなっている
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、過酷環境下の原子力プラントの構造物の内部からサンプルを取り出さずに構造物の内部の塩化物濃度を測定することができる過酷環境下塩化物測定技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】原子力プラントの原子炉建屋を示す断面図。
図2】原子炉格納容器の壁面に設けられる塩化物測定センサーを示す側面図。
図3】過酷環境下塩化物測定システムを示すブロック図。
図4】第1実施形態の塩化物測定センサーを示す正面図。
図5】第1実施形態の塩化物測定センサーを示す断面図。
図6】第1実施形態の短絡電流を測定する場合の較正曲線イメージを示すグラフ。
図7】第2実施形態の塩化物測定センサーを示す正面図。
図8】第2実施形態の塩化物測定センサーを示す断面図。
図9】第2実施形態の周波数応答を測定する場合の較正曲線イメージを示すグラフ。
図10】第3実施形態の塩化物測定センサーを示す側面図。
図11】第3実施形態の接触電位差を測定する場合の較正曲線イメージを示すグラフ。
図12】過酷環境下塩化物測定方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、過酷環境下塩化物測定システムおよび過酷環境下塩化物測定方法の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1の符号1は、原子力プラント(原子力発電所)の原子炉建屋1である。この原子炉建屋1は、鉄筋コンクリート製の建築物である。その内部には、原子炉を収容する原子炉圧力容器2と、この原子炉圧力容器2を収容する原子炉格納容器3とが設けられている。また、圧力抑制室4などのその他の設備も設けられている。本実施形態では、原子炉格納容器3とトーラス室の圧力抑制室4とが別体として設けられた沸騰水型原子炉(BWR)を例示している。
【0012】
過酷事故に見舞われると原子炉の燃料集合体が核燃料の過熱により融解し、所謂メルトダウンが生じる。溶融した核燃料は、原子炉圧力容器2から漏出する。また、原子炉格納容器3は、内部の圧力が高まることで損傷してしまう。さらに、溶融した核燃料を含む燃料デブリは高線量であるため、廃炉作業が困難になり、長期に亘り外部から冷却水の供給を継続する必要がある。
【0013】
過酷事故の初期に冷却水として海水が用いられると、原子力プラントの構造物としての原子炉格納容器3などの内部の塩化物濃度が高まった状態となる。原子力プラントの原子炉圧力容器2および原子炉格納容器3を構成する材料は、炭素鋼、低合金鋼およびステンレス鋼など様々な材料が使用されている。これらの材料のいずれもが、塩化物によって腐食する材料であることが分かっている。つまり、ppm以上の塩化物イオンが含まれる冷却水が用いられた場合には、原子炉圧力容器2および原子炉格納容器3の耐食性を劣化させてしまうのは明白である。
【0014】
原子炉格納容器3などの構造物の耐食性を評価するためには、構造物が曝されている環境における腐食因子を把握する必要があり、特に、塩化物濃度の把握は必要不可欠である。そこで、本実施形態では、過酷環境下塩化物測定システム10を用いて、過酷環境下の原子力プラントの構造物の内部の塩化物濃度を測定する。以下の説明において、構造物という用語は、原子炉圧力容器2または原子炉格納容器3などの原子炉を構成しているものを示す。
【0015】
過酷事故後の原子炉格納容器3の内部は、線量の高い過酷環境となっている。温度は20~40℃程度であるが、原子炉格納容器3の底部に冷却水が溜まっているため、湿度が高い状態になっている。また、原子炉格納容器3には、内部観察およびサンプリングのための機器を通すためのセンサー挿入ライン5が設けられている。このセンサー挿入ライン5は、過酷事故以前から設けられていた既設の配管を利用することができる。
【0016】
本実施形態では、センサー挿入ライン5を介して、塩化物測定センサー11を原子炉格納容器3の内部まで送り込んで塩化物濃度を測定する。本実施形態の塩化物測定センサー11は、比較的小型に設計することが可能である。そのため、既設の配管以外にも、他に挿入可能な空間があれば、その空間を通じて塩化物測定センサー11を送り込んでも構わない。塩化物測定センサー11の設置数は、多いほどデータを多く取得することができるため、原子炉格納容器3の内部の状況を正確に把握できるようになる。
【0017】
なお、塩化物測定センサー11から延びるケーブル6は、センサー挿入ライン5を介して原子炉格納容器3の外部の測定装置12まで延びている。
【0018】
図2に示すように、塩化物測定センサー11は、原子炉格納容器3(構造物)の壁部7に接触された状態で設けられる。また、原子炉格納容器3の壁部7から少し離れた状態で設けられても良い。つまり、塩化物測定センサー11は、原子炉格納容器3の壁面に接触または近接された状態で設けられる。
【0019】
例えば、原子炉格納容器3の内部で結露が生じ、その壁面に水が垂れていることが考えられる。また、原子炉格納容器3の内部の雰囲気中に塩素イオンが含まれていると、壁面の水に溶けて原子炉格納容器3の腐食を加速する。
【0020】
塩化物測定センサー11を原子炉格納容器3の壁部7に接触させた場合には、壁面を伝って落ちる水が塩化物測定センサー11に付着するようになる。一方、塩化物測定センサー11を原子炉格納容器3の壁部7から少し離した場合には、塩化物測定センサー11の表面に結露が生じて濡れるようになる。いずれの態様でも、塩化物測定センサー11の表面が濡れるようになり、塩化物濃度の測定が行える。
【0021】
塩化物は、原子炉格納容器3の壁面またはその近傍に存在している可能性が高いため、その周辺に塩化物測定センサー11を設けることが好ましい。このようにすれば、原子炉格納容器3の壁面に接触する雰囲気の塩化物濃度を測定することができる。なお、塩化物測定センサー11は、原子炉圧力容器2(構造物)の壁面に設けられても良い。また、原子炉格納容器3の内部のその他の構造物の表面に設けられても良い。
【0022】
次に、過酷環境下塩化物測定システム10のシステム構成を図3に示すブロック図を参照して説明する。
【0023】
過酷環境下塩化物測定システム10は、塩化物測定センサー11と測定装置12と解析装置13とを備える。
【0024】
塩化物測定センサー11は、周囲の塩化物濃度に応じて変化する電流、電圧、周波数の少なくともいずれか1つの特定値を出力する。なお、塩化物測定センサー11が検出した特定値は、ケーブル6を介して測定装置12に入力される。
【0025】
測定装置12は、センサー制御部14と通信部15とを備える。さらに、センサー制御部14は、特定値取得部16を備える。センサー制御部14(特定値取得部16)は、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0026】
センサー制御部14は、塩化物測定センサー11の制御を行う。例えば、塩化物測定センサー11に電流を流す制御などを行う。なお、塩化物測定センサー11の構成は、様々な態様が考えられる。例えば、塩化物測定センサー11から自然に特定値が発せられる場合には、センサー制御部14が塩化物測定センサー11に電流を流す制御を行わなくても良い。
【0027】
特定値取得部16は、塩化物測定センサー11から出力される特定値を取得する。なお、センサー制御部14は、特定値取得部16により取得された特定値を解析装置13に送信する。
【0028】
測定装置12の通信部15は、解析装置13と通信を行う。センサー制御部14は、特定値取得部16で取得した特定値を、通信部15を介して解析装置13に送信する。
【0029】
解析装置13は、入力部17と出力部18と記憶部19と通信部20とメイン制御部21とを備える。さらに、メイン制御部21は、塩化物濃度測定部22を備える。メイン制御部21(塩化物濃度測定部22)は、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。さらに、解析装置13は、データベースを備えても良い。データベースは、メモリまたはHDDに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。
【0030】
本実施形態の解析装置13は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の過酷環境下塩化物測定方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0031】
入力部17は、解析装置13を使用するユーザの操作に応じて所定の情報が入力される。この入力部17には、マウスまたはキーボードなどの入力装置が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が入力部17に入力される。
【0032】
出力部18は、所定の情報の出力を行う。本実施形態の解析装置13には、解析結果の出力を行うディスプレイなどの画像の表示を行う装置が含まれる。つまり、出力部18は、ディスプレイに表示される画像の制御を行う。なお、ディスプレイはコンピュータ本体と別体であっても良いし、一体であっても良い。さらに、ネットワークを介して接続される他のコンピュータが備えるディスプレイに表示される画像の制御を出力部18が行っても良い。
【0033】
なお、本実施形態では、画像の表示を行う装置としてディスプレイを例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、紙媒体に情報を印字するプリンタをディスプレイの替りとして用いても良い。つまり、出力部18が制御する対象として、プリンタが含まれても良い。
【0034】
記憶部19は、測定装置12から送信される情報を記憶する。測定装置12から送信される情報には、塩化物測定センサー11を用いて取得される特定値が含まれる。また、記憶部19には、特定値に基づいて塩化物濃度の解析を行うときに必要な各種情報が記憶される。なお、各種情報は、記憶部19のデータベースに蓄積されても良い。
【0035】
解析装置13の通信部20は、測定装置12と通信を行う。また、解析装置13が通信部20を介してインターネットなどの通信回線に接続されても良い。そして、このインターネットを介して他のコンピュータと通信を行っても良い。なお、本実施形態では、解析装置13と他のコンピュータがインターネットを介して互いに接続されているが、その他の態様であっても良い。例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)または携帯通信網を介して互いに接続されても良い。
【0036】
メイン制御部21は、過酷環境下塩化物測定システム10を統括的に制御する。メイン制御部21は、解析装置13の制御を行う。また、メイン制御部21は、測定装置12および塩化物測定センサー11の制御を行っても良い。
【0037】
塩化物濃度測定部22は、特定値に基づいて塩化物濃度を測定する。つまり、塩化物測定センサー11で検出された特定値に基づいて、原子炉格納容器3(構造物)の内部の塩化物濃度を測定する。
【0038】
次に、第1実施形態の塩化物測定センサー11Aについて図4から図6を用いて説明する。
【0039】
図4および図5に示すように、第1実施形態の塩化物測定センサー11Aは、矩形の板状を成す基板部24と、基板部24の表面側に取り付けられた絶縁部25と、絶縁部25の表面側に取り付けられた導電部26とを備える。つまり、基板部24と絶縁部25と導電部26とが積層して設けられている。
【0040】
基板部24と導電部26には、それぞれリード線23が接続される。これらのリード線23は、前述のケーブル6(図1)に含まれている。そして、リード線23が測定装置12の特定値取得部16(図3)に接続される。
【0041】
基板部24は、構造物を構成する少なくとも1種の材料を含む特定材料で構成されている。この特定材料には、評価したい材料を用いる。例えば、構造物を構成するC、Fe、Crの少なくともいずれか2種を含む。第1実施形態の特定材料は、炭素鋼となっている。なお、特定材料は、低合金鋼でも良いし、ステンレス鋼でも良い。
【0042】
絶縁部25は、合成樹脂などの絶縁性を有する材料で構成されている。特に、耐放射性の高い樹脂を用いると良い。なお、絶縁部25により基板部24と導電部26との間が絶縁されている。
【0043】
導電部26は、Ag、Au、Pt、Tiの少なくともいずれか1種を含んで特定材料(アノード側材料)とは異なる異種材料(カソード側材料)で構成されている。このようにすれば、周囲の塩化物濃度に応じて変化する特定値を特定材料と異種材料の性状に基づいて取得することができる。なお、特定材料と異種材料とを選定するときには、腐食電位の差分が大きい材料の2種を選定すると良い。第1実施形態の異種材料は、銀(Ag)となっている。
【0044】
絶縁部25および導電部26は、板状を成す部材に複数のスリット27が形成された構成となっている。絶縁部25および導電部26は、断面視で基板部24の表面に並んで設けられている。部分的(微視的)に見ると、複数の絶縁部25および導電部26が並んで設けられ、その間のスリット27に結露した水28(湿分)が入り込むようになっている。この水28の膜が形成されることにより、基板部24と導電部26とが短絡される。第1実施形態では、この異種金属の間に流れる短絡電流(腐食電流)の値が特定値となっている。この特定値を測定することで塩化物濃度を測定することが可能となっている。
【0045】
第1実施形態の特定値は、周囲の塩化物濃度に応じて塩化物測定センサー11Aから発せられる値である。このようにすれば、塩化物測定センサー11Aより自然に発生する特定値で塩化物濃度を測定することができる。なお、「自然に発生する」とは、塩化物測定センサー11Aに対して外部から電流を流さなくても発生する態様を示す。
【0046】
異種金属の間に流れる短絡電流を測定する場合には、図6に示す較正曲線にとなると推定される。図6のグラフにおいて、横軸は塩化物測定センサー11Aが設置された環境の相対湿度の値を示し、縦軸は塩化物測定センサー11Aで検出される短絡電流の値を示す。塩化物濃度がそれぞれ異なる環境で測定された4つのグラフG1,G2,G3,G4を例示している。例えば、グラフG1が最も塩化物濃度が低く、グラフG4が最も塩化物濃度が高い環境で測定されたものである。
【0047】
これらのグラフG1~G4に示すように、湿度が高くなり、かつ、塩化物濃度が高くなるとともに短絡電流の値が上昇する傾向になる。このような較正曲線を用いることで塩化物濃度を推測できる。
【0048】
第1実施形態の塩化物濃度測定部22(図3)は、塩化物測定センサー11Aが有する異種金属の間に流れる短絡電流に基づいて塩化物濃度を測定する。このようにすれば、塩化物測定センサー11Aの構成を簡略化することができる。
【0049】
また、解析装置13の記憶部19(図3)は、塩化物測定センサー11Aで検出される短絡電流の特定値と塩化物濃度の関係を示す情報を予め記憶している。そして、塩化物濃度測定部22は、記憶部19に記憶された情報に基づいて、特定値から塩化物濃度を算出する。
【0050】
また、塩化物測定センサー11Aが有する特定材料は、付着する構造物の内部の湿分に応じて特定値が変化する。このようにすれば、構造物を構成している材料を腐食させる湿分の塩化物濃度を測定することができる。
【0051】
次に、第2実施形態の塩化物測定センサー11Bについて図7から図9を用いて説明する。
【0052】
図7および図8に示すように、第2実施形態の塩化物測定センサー11Bは、正面視で円形状を成す基部29と、この基部29の中央に配置された円形状を成す中央電極30と、この中央電極30の周囲に配置された周辺電極31とを備える。なお、中央電極30と周辺電極31には、基部29に埋め込まれており、それぞれの一部が基部29から露出している。
【0053】
中央電極30と周辺電極31には、それぞれリード線23が接続される。これらのリード線23は、前述のケーブル6(図1)に含まれている。そして、リード線23が測定装置12の特定値取得部16(図3)に接続される。
【0054】
中央電極30と周辺電極31とは、互いに離間された状態で設けられている。つまり、塩化物測定センサー11Bは、互いに同心円状に配置される2つの電極30,31を備える。2つの電極30,31を同心円状に配置することで、電極30,31の形状に基づく異方性をなくしている。中央電極30と周辺電極31のそれぞれは、基部29から露出されている露出面積が同一となるように形成される。そして、塩化物測定センサー11Bの表面で結露が生じ、その結露による水が、中央電極30と周辺電極31の露出されている部分に接触するようになる。
【0055】
基部29は、合成樹脂などの絶縁性を有する材料で構成されている。特に、耐放射性の高い樹脂を用いると良い。なお、中央電極30と周辺電極31との間に基部29が設けられることで、中央電極30と周辺電極31との間が絶縁されている。
【0056】
中央電極30および周辺電極31は、構造物を構成する少なくとも1種の材料を含む特定材料で構成されている。この特定材料には、評価したい材料を用いる。例えば、構造物を構成するC、Fe、Crの少なくともいずれか2種を含む。第2実施形態の特定材料は、低合金鋼となっている。なお、特定材料は、炭素鋼でも良いし、ステンレス鋼でも良い。
【0057】
測定装置12(図3)は、リード線23を介して塩化物測定センサー11Bに特定の電圧(例えば、5mV)で特定周波数(例えば、10mHz~100kHz)の電流を流す。そして、塩化物測定センサー11Bに生じる周波数(またはインピーダンス)を測定することで、塩化物濃度を推定する。
【0058】
第2実施形態の特定値は、塩化物測定センサー11Bに対して電流を流すことで得られる値である。このようにすれば、塩化物濃度に応じて変化する特定値を取得し易くすることができる。
【0059】
2つの電極の間に特定周波数の電流を流したときの周波数応答を測定する場合には、図9に示す較正曲線にとなると推定される。図9のグラフにおいて、横軸は時間の経過を示し、縦軸は電極の腐食速度を示す。なお、分極抵抗(R)の逆数が腐食速度に相当する。塩化物濃度によって分極抵抗が異なっている。
【0060】
グラフG5は、NaClが0.001kg/m2のときのグラフである。グラフG6は、NaClが0.1kg/m2のときのグラフである。グラフG7は、NaClが0.01kg/m2のときのグラフである。時間の経過とともに相対湿度を変化させている。例えば、このグラフの左から右に行くに従って相対湿度が高くなる。
【0061】
これらのグラフに示すように、塩化物濃度が低い場合よりも高い方が、腐食速度の値が大きくなる。例えば、塩化物濃度が高いグラフG6およびG7の方が、塩化物濃度が低いグラフG5よりも腐食速度の値が大きくなっていることが分かる。
【0062】
第2実施形態の塩化物濃度測定部22(図3)は、塩化物測定センサー11Bが有する2つの電極の間に特定周波数の電流を流したときの周波数応答に基づいて塩化物濃度を測定する。このようにすれば、電気化学的な現象に頼らずに周波数応答に基づいて塩化物濃度を定量的に測定することができる。
【0063】
また、解析装置13の記憶部19(図3)は、塩化物測定センサー11Bで検出される周波数応答の特定値と塩化物濃度の関係を示す情報を予め記憶している。そして、塩化物濃度測定部22は、記憶部19に記憶された情報に基づいて、特定値から塩化物濃度を算出する。
【0064】
次に、第3実施形態の塩化物測定センサー11Cについて図10から図11を用いて説明する。
【0065】
図10に示すように、第3実施形態の塩化物測定センサー11Cは、棒状を成すプローブ32と、このプローブ32に近接して設けられた板状を成す評価試料33とを備える。プローブ32には、固定治具34が取り付けられ、この固定治具34から延びる保持部材35により評価試料33が保持される。なお、プローブ32の先端には、電極36が設けられている。このプローブ32と評価試料33との間には、所定寸法の隙間が設けられている。
【0066】
なお、評価試料33の表面で結露が生じ、その結露による水がプローブ32と評価試料33の隙間を埋めてしまっても良い。また、プローブ32と評価試料33とを互いに接触させても良い。
【0067】
プローブ32と評価試料33には、それぞれリード線23が接続される。これらのリード線23は、前述のケーブル6(図1)に含まれている。そして、リード線23が測定装置12の特定値取得部16(図3)に接続される。
【0068】
評価試料33は、構造物を構成する少なくとも1種の材料を含む特定材料で構成されている。この特定材料には、評価したい材料を用いる。例えば、構造物を構成するC、Fe、Crの少なくともいずれか2種を含む。第3実施形態の特定材料は、ステンレス鋼(例えば、SUS)となっている。なお、特定材料は、炭素鋼でも良いし、低合金鋼でも良い。原子力プラントに使用されている構造物の材料の多くは、C、Fe、Crを含んでいる。そのため、これらを含む材料を評価試料33として用いる。
【0069】
プローブ32の電極36は、Ag、Au、Pt、Tiの少なくともいずれか1種を含んで特定材料とは異なる異種材料で構成されている。第3実施形態の異種材料は、チタン(Ti)となっている。プローブ32の電極36(対極)として使用する異種材料は、貴な電位を持つものが好ましい。
【0070】
測定装置12(図3)は、リード線23を介して塩化物測定センサー11Cに特定の電圧で特定の電流を流す。そして、評価試料33とプローブ32との間に生じる接触電位差を測定することで、塩化物濃度を推定する。例えば、塩化物が評価試料33の表面に付着すると接触電位差(電圧)が変化するので、その変化度合いと塩化物濃度との関係により、塩化物測定センサー11Cの周囲の塩化物濃度を推定できる。
【0071】
図11は、ステンレスで構成される材料とチタンで構成される材料のそれぞれの表面に0.5mol/lの塩化ナトリウムを付着させたときの電位変化のイメージである。これを塩化物濃度ごとに測定すれば、塩化物濃度を測定可能となる。図11のグラフにおいて、横軸は時間の経過を示し、縦軸は電位を示す。グラフG8は、材料がチタンの場合の電位を示す。グラフG9は、材料がステンレス鋼(例えば、SUS)の場合の電位を示す。
【0072】
測定の初期には、それぞれのグラフG8およびG9の値が環境に反応して乱れているものの、その後にフラットなグラフになっている。このフラットな部分同士を比較すると、ステンレス鋼がチタンよりも高い電位となっていることが分かる。つまり、両者の間に電位差が生じている。
【0073】
なお、第3実施形態では、プローブ32の電極36としてチタンを用いるとともに、評価試料33としてステンレス鋼を用いているが、その他の態様であっても良い。例えば、プローブ32の電極36と評価試料33のいずれか一方が他方よりも高い基準電位を有する材料であれば良い。例えば、プローブ32の電極36を耐食性が高い材料で構成し、評価試料33を耐食性が低い材料で構成すると良い。
【0074】
第3実施形態の塩化物濃度測定部22(図3)は、塩化物測定センサー11Cが有する互いに接近して配置された評価試料33(特定材料)とプローブ32(電極36)との間に生じる接触電位差に基づいて塩化物濃度を測定する。このようにすれば、評価試料33とプローブ32との間に生じる接触電位差に基づいて塩化物濃度を定量的に測定することができる。
【0075】
また、解析装置13の記憶部19(図3)は、塩化物測定センサー11Cで検出される接触電位差の特定値と塩化物濃度の関係を示す情報を予め記憶している。そして、塩化物濃度測定部22は、記憶部19に記憶された情報に基づいて、特定値から塩化物濃度を算出する。
【0076】
塩化物測定センサー11(11A,11B,11C)を第1実施形態から第3実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0077】
次に、過酷環境下塩化物測定システム10が実行する過酷環境下塩化物測定方法について図12のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
【0078】
まず、ステップS11において、過酷環境下の原子力プラントの原子炉格納容器3(構造物)の内部に塩化物測定センサー11を設ける。
【0079】
次のステップS12において、塩化物測定センサー11が、周囲の塩化物濃度に応じて変化する電流、電圧、周波数の少なくともいずれか1つの特定値を出力する。
【0080】
次のステップS13において、測定装置12の特定値取得部16が塩化物測定センサー11から出力された特定値を取得する。センサー制御部14は、取得した特定値を解析装置13に送信する。
【0081】
次のステップS14において、解析装置13は、測定装置12から特定値を受信する。そして、塩化物濃度測定部22が特定値を解析する。例えば、記憶部19に予め記憶された特定値と塩化物濃度の関係を示す情報に基づいて、特定値から塩化物濃度を算出する。つまり、塩化物濃度測定部22が、特定値に基づいて塩化物濃度を測定する。
【0082】
次のステップS15において、解析装置13のメイン制御部21は、塩化物濃度測定部22が測定した塩化物濃度を示す情報を出力部18により出力する。そして、過酷環境下塩化物測定方法を終了する。
【0083】
なお、前述の実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0084】
前述の実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0085】
なお、前述の実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0086】
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0087】
なお、前述の実施形態では、原子炉格納容器3と圧力抑制室4とが別体に設けられた沸騰水型原子炉(BWR)に過酷環境下塩化物測定システム10を適用した形態を例示しているが、その他の態様であっても良い。例えば、原子炉格納容器と圧力抑制室とが一体的に設けられた改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)に過酷環境下塩化物測定システム10を適用しても良いし、加圧水型原子炉(PWR)に過酷環境下塩化物測定システム10を適用しても良い。
【0088】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、過酷環境下の原子力プラントの構造物の内部に設けられ、周囲の塩化物濃度に応じて変化する電流、電圧、周波数の少なくともいずれか1つの特定値を出力する塩化物測定センサーを備えることにより、過酷環境下の原子力プラントの構造物の内部からサンプルを取り出さずに構造物の内部の塩化物濃度を測定することができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1…原子炉建屋、2…原子炉圧力容器、3…原子炉格納容器、4…圧力抑制室、5…センサー挿入ライン、6…ケーブル、7…壁部、10…過酷環境下塩化物測定システム、11(11A,11B,11C)…塩化物測定センサー、12…測定装置、13…解析装置、14…センサー制御部、15…通信部、16…特定値取得部、17…入力部、18…出力部、19…記憶部、20…通信部、21…メイン制御部、22…塩化物濃度測定部、23…リード線、24…基板部、25…絶縁部、26…導電部、27…スリット、28…水、29…基部、30…中央電極、31…周辺電極、32…プローブ、33…評価試料、34…固定治具、35…保持部材、36…電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12