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特許7455710燃料電池システム、及び、燃料電池システム運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】燃料電池システム、及び、燃料電池システム運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04291 20160101AFI20240318BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20240318BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240318BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240318BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20240318BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240318BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/0612
H01M8/04313
H01M8/04858
H01M8/04664
H01M8/12 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020153270
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047383
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰久
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103329(JP,A)
【文献】特開2016-105393(JP,A)
【文献】特開2017-157272(JP,A)
【文献】特開2006-318827(JP,A)
【文献】特開2004-164913(JP,A)
【文献】特開2005-129252(JP,A)
【文献】特開2020-17507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質水を用いて原料ガスを水蒸気改質し、改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガスと酸化剤ガスとが供給されて発電が行われると共に、発電に伴い水蒸気を含む排ガスを排出する燃料電池と、
前記排ガス中の水蒸気を凝縮させた凝縮水を前記改質水として貯留する水タンクと、
前記水タンクの水位を検出する水位検出部と、
前記水位検出部で検出された水位が、改質水不足水位よりも低くなった場合に、前記燃料電池の発電出力を水回復用出力へと増大させて水位回復時間の間継続させる、水回復処理を実行する水回復処理実行部と、
を備え、
前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、系統電力へ逆潮流させる、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記水回復用出力は、前記凝縮水の回収流量が最大となる時の出力で設定される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、前記系統電力への逆潮が行えない場合に、自立ヒータで消費する、請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記水回復処理実行部による前記水回復処理の終了後から、前記水位検出部により前記改質水不足水位が検出されるまでの時間が、予め設定された異常短時間より短い場合に、水漏れを報知する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
改質水を用いて原料ガスが水蒸気改質された改質ガスと酸化剤ガスとで発電が行われる燃料電池から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて凝縮水を前記改質水として水タンクへ貯留し、
前記水タンクの水位が改質水不足水位よりも低くなった場合に、前記燃料電池の発電出力を水回復用出力へと増大させて水位回復時間の間継続させる水回復処理を実行し、
前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、系統電力へ逆潮流させる、
燃料電池システム運転方法。
【請求項6】
前記水回復用出力は、前記凝縮水の回収流量が最大となる時の出力で設定される、請求項5に記載の燃料電池システム運転方法。
【請求項7】
前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、前記系統電力への逆潮が行えない場合に、自立ヒータで消費する、請求項5または請求項6に記載の燃料電池システム運転方法。
【請求項8】
前記水回復処理の終了後から、前記水タンクの水位が改質水不足水位よりも低くなるまでの時間が、予め設定された異常短時間より短い場合に、水漏れを報知する、請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池システム運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、及び、燃料電池システム運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化水素ガスなどの原料ガスを水蒸気改質して得られる水素を含む改質ガスを燃料として発電を行う燃料電池システムが提案されている。当該燃料電池システムでは、燃料電池から排出される排ガスを冷却することで排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させ、改質水として再利用することが一般的である。そして、当該凝縮水で改質水を賄う水自立運転が行われ、水自立運転が成立するように、様々な技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、水自立運転が成立しないと判断した場合に、発電出力を増大させて、凝縮回収される凝縮水を増大させている。水自立運転が成立するか否かについては、燃料電池の出力と排ガスの出口温度の関係から定められたマップデータに基づいて判断されている。また、特許文献2では、水タンクの水位が判定水位よりも低い場合に水自立運転が成立しないと判断し、燃料電池からの排ガスの露点を高くして、回収される凝縮水を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5902542号公報
【文献】特開2016-225103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、凝縮水を貯留するタンクの水位に関わらず、水自立運転の成立判断を行っているので、何らかの要因により水タンクの水位が低下した場合に、凝縮水で改質水の不足を補えない場合が生じることも考えられる。また、低負荷時における、発電出力の切り換え頻度が高くなってしまう。
【0006】
一方、特許文献2では、水タンクの水位が判定水位よりも低い場合に、排ガスの露点を通常時よりも高くしているが、水タンクの水位が判定水位よりも高くなれば、通常の排ガス露点に戻るため、露点制御の切り換え頻度が高くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、簡易な制御で改質水不足を回避できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の燃料電池システムは、改質水を用いて原料ガスを水蒸気改質し、改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスと酸化剤ガスとが供給されて発電が行われると共に、発電に伴い水蒸気を含む排ガスを排出する燃料電池と、前記排ガス中の水蒸気を凝縮させた凝縮水を前記改質水として貯留する水タンクと、前記水タンクの水位を検出する水位検出部と、前記水位検出部で検出された水位が、改質水不足水位よりも低くなった場合に、前記燃料電池の発電出力を水回復用出力へと増大させて水位回復時間の間継続させる、水回復処理を実行する水回復処理実行部と、を備えている。
【0009】
請求項1に係る燃料電池システムでは、水位検出部で検出された水タンクの水位が、改質水不足水位よりも低くなった場合に、燃料電池の発電出力を水回復用出力へと増大させ、当該水回復出力を水位回復時間の間継続させる。水位回復時間は、水回復出力において回収される凝縮水の量に応じて、改質水を確保できる水量となるように設定される。このように、水回復用出力を継続させて水タンクの水位を上昇させることにより、簡易に改質水不足を回避することができる。
【0010】
請求項2に記載の燃料電池システムは、前記水回復用出力は、前記凝縮水の回収流量が最大となる時の出力で設定される。
【0011】
請求項2に係る燃料電池システムによれば、短時間で多くの凝縮水を回収することができる。
【0012】
請求項1に記載の燃料電池システムは、前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、系統電力へ逆潮流させる。
【0013】
請求項1に記載の燃料電池システムによれば、要求負荷電力を超えた電力を逆潮流させて、有効に利用することができる。
【0014】
請求項3に記載の燃料電池システムは、前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、自立ヒータで消費する。
【0015】
請求項3に記載の燃料電池システムによれば、要求負荷電力を超えた電力を、比較的調整の容易な自立ヒータで消費することにより、有効に利用することができる。
【0016】
請求項4に記載の燃料電池システムは、前記水回復処理実行部による前記水回復処理の終了後から、前記水位検出部により前記改質水不足水位が検出されるまでの時間が、予め設定された異常短時間より短い場合に、水漏れを報知する。
【0017】
請求項4に記載の燃料電池システムでは、水回復処理の終了後から、水位検出部により改質水不足水位が検出されるまでの時間が、異常短時間より短い場合に、水漏れを報知する。ここでの異常短時間は、正常時(水漏れなし)において想定される最短の時間よりも短く設定される。このようして、燃料電池システムにおける水漏れを検知することができる。
【0018】
請求項5に記載の燃料電池システム運転方法は、改質水を用いて原料ガスが水蒸気改質された改質ガスと酸化剤ガスとで発電が行われる燃料電池から排出された排ガス中の水蒸気を凝縮させて凝縮水を前記改質水として水タンクへ貯留し、前記水タンクの水位が改質水不足水位よりも低くなった場合に、前記燃料電池の発電出力を水回復用出力へと増大させて水位回復時間の間継続させる水回復処理を実行する、ものである。
【0019】
請求項5に係る燃料電池システム運転方法では、水タンクの水位が、改質水不足水位よりも低くなった場合に、燃料電池の発電出力を水回復用出力へと増大させ、当該水回復出力を水位回復時間の間継続させる。水位回復時間は、水回復出力において回収される凝縮水の量に応じて、改質水を確保できる水量となるように設定される。このように、水回復用出力を継続させて水タンクの水位を上昇させることにより、簡易に改質水不足を回避することができる。
【0020】
請求項6に記載の燃料電池システム運転方法は、前記水回復用出力は、前記凝縮水の回収流量が最大となる時の出力で設定される。
【0021】
請求項6に係る燃料電池システム運転方法によれば、短時間で多くの凝縮水を回収することができる。
【0022】
請求項5に記載の燃料電池システム運転方法は、前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、系統電力へ逆潮流させる。
【0023】
請求項5に記載の燃料電池システム運転方法によれば、要求負荷電力を超えた電力を逆潮流させて、有効に利用することができる。
【0024】
請求項7に記載の燃料電池システム運転方法は、前記水回復用出力で発電された電力で、要求負荷電力を超える電力を、自立ヒータで消費する。
【0025】
請求項7に記載の燃料電池システム運転方法によれば、要求負荷電力を超えた電力を、比較的調整の容易な自立ヒータで消費することにより、有効に利用することができる。
【0026】
請求項8に記載の燃料電池システム運転方法は、前記水回復処理の終了後から、前記水タンクの水位が改質水不足水位よりも低くなるまでの時間が、予め設定された異常短時間より短い場合に、水漏れを報知する。
【0027】
請求項8に記載の燃料電池システム運転方法は、水回復処理の終了後から、水タンクの水位が改質水不足水位よりも低くなるまでの時間が、異常短時間より短い場合に、水漏れを報知する。ここでの異常短時間は、正常時(水漏れなし)において想定される最短の時間よりも短く設定される。このようして、燃料電池システムにおける水漏れを検知することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳述したように、本発明によれば、簡易な制御で燃料電池システムの改質水不足を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの、制御系に係るブロック図である。
図3】第1実施形態の改質水回復処理のフローチャートである。
図4】第1実施形態の電力分配処理のフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る燃料電池システムの、制御系に係るブロック図である。
図6】第2実施形態の改質水回復処理のフローチャートである。
図7】第2実施形態の水漏れ検知処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
本実施形態に係る燃料電池システムS1は、図1に示されるように、燃料電池モジュール10と、貯湯タンク20と、熱交換器22と、凝縮水タンク24と、水位センサ26と、制御装置60とを備える。
【0032】
燃料電池モジュール10は、気化器12と、改質器14と、燃料電池16(セルスタック)とを有する。この燃料電池モジュール10は、原料ガス供給経路34、酸化剤ガス供給経路36、及び、改質水供給経路38と接続されている。燃料電池モジュール10には、原料ガス供給経路34、酸化剤ガス供給経路36、及び、改質水供給経路38を通じて原料ガス、酸化剤ガス、及び、改質水がそれぞれ供給される。
【0033】
原料ガス供給経路34には、原料ガスを流通させるブロワ40が設けられており、酸化剤ガス供給経路36には、酸化剤ガスを流通させるブロワ42が設けられている。また、改質水供給経路38には、改質水を流通させるポンプ44が設けられている。原料ガス供給経路34を流通する原料ガスとしては、例えば、都市ガス、液化石油ガス、バイオガスなどのメタンを含む炭化水素系ガスが使用される。
【0034】
改質水供給経路38を流通する改質水は、燃料電池モジュール10に設けられた気化器12によって気化され、気化器12にて改質水が気化されて生じた水蒸気は、改質器14に供給される。また、改質器14には、原料ガス供給経路34を通じてメタンを含む炭化水素系の原料ガスが供給される。この改質器14には、水蒸気改質器が適用されている。
【0035】
そして、改質器14では、改質水が気化されて生じた水蒸気を利用して原料ガスが水蒸気改質され、水素を含む改質ガスが生成される。メタンを含む炭化水素系ガスが原料ガスとして使用された場合、改質器14における水蒸気改質反応は、下記式(1)の通りである。
【0036】
CH+HO→CO+3H・・・・(1)
【0037】
燃料電池16には、一例として、固体酸化物形燃料電池が適用されている。この燃料電池16は、例えば、セルスタックであり、積層された複数のセルを有している。各セルは、燃料極、電解質層、空気極を有している。各セルの燃料極には、改質器14にて生成された改質ガスが供給され、各セルの空気極には、酸化剤ガス(空気)が供給される。
【0038】
空気極では、下記式(2)で示されるように、酸化剤ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層を通って燃料極に到達する。
【0039】
(空気極反応)
1/2O+2e→O2-・・・(2)
【0040】
一方、燃料極では、下記式(3)及び式(4)で示されるように、電解質層を通ってきた酸素イオンが改質ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水及び二酸化炭素と、電子が生成される。燃料極で生成された電子は、外部回路を通って空気極に到達する。
【0041】
そして、このようにして電子が燃料極から空気極に移動することにより、各セルにおいて発電される。燃料極で生成された水は、気相の水蒸気であり、燃料極にて発生するアノードオフガスには、水蒸気が含まれている。燃料電池16から排ガス経路46を通じて排出される排ガスには、水蒸気を含むアノードオフガスが含まれている。
【0042】
(燃料極反応)
+O2-→HO+2e・・・(3)
CO+O2-→CO+2e・・・(4)
【0043】
燃料電池16は、電気配線E1を介してパワーコンディショナ58と電気的に接続されている。パワーコンディショナ58は、制御装置60と電気的に接続されている。パワーコンディショナ58は、電気配線E1を流れる電流の大きさを制御可能とされ、電気配線E1を流れる電流の大きさは、パワーコンディショナ58を介して制御装置60によって制御されている。また、パワーコンディショナ58は、図示しない変電機器を介して家庭用負荷、及び系統電力と接続されている。また、パワーコンディショナ58は、燃料電池システムS1内の自立ヒータ26を含む各補機に接続されている。燃料電池16で発電された電力は、家庭用負荷、各補機、で消費され、余剰分が系統電力へ逆潮流される。
【0044】
なお、自立ヒータ26は、後述する貯湯循環経路48の熱交換器22よりも下流側に設けられている。自立ヒータ26は、主に停電時において自立発電を行う際に用いられるヒータであり、熱交換器22から貯湯タンク20へ送出される湯水を加熱する。
【0045】
熱交換器22は、排ガス経路46を介して燃料電池16と接続されている。また、熱交換器22は、貯湯循環経路48を介して貯湯タンク20と接続されている。貯湯タンク20には、湯水が貯留されている。貯湯タンク20の湯水は、不図示のポンプで貯湯循環経路48へ送出され、熱交換器22と貯湯タンク20の間を循環する。
【0046】
熱交換器22では、燃料電池16から排ガス経路46を通じて排出された排ガスと、貯湯循環経路48を循環すると湯水との間で、熱交換が行われる。当該熱交換では、貯湯タンク20からの湯水が加熱され、燃料電池16からの排ガスが冷却される。排ガスに含まれる水蒸気は、冷却により凝縮されて凝縮水が生成される。
【0047】
凝縮水タンク24は、凝縮水経路50を介して熱交換器22と接続されている。この凝縮水タンク24には、熱交換器22にて生成された凝縮水が貯留される。また、この凝縮水タンク24は、上述の改質水供給経路38を介して燃料電池モジュール10と接続されている。凝縮水経路50には、排気経路52が接続されており、排ガスに含まれるガス成分は、排気経路52を通じて凝縮水経路50から排出される。凝縮水タンク24に貯留された凝縮水は、ポンプ44により、改質水供給経路38を通じて燃料電池モジュール10に改質水として供給される。
【0048】
水位センサ26は、凝縮水タンク24の水位を検出するためのものであり、Hレベル検出部54と、Lレベル検出部56とを有する。Hレベル検出部54及びLレベル検出部56は、それぞれ凝縮水タンク24の高位レベル(Hレベル)及び低位レベル(Lレベル)に対応する高さに設けられている。以降、凝縮水タンク24の高位レベルをHレベルと称し、凝縮水タンク24の低位レベルをLレベルと称する。Hレベルは、予め定められる「改質水不足水位」に相当し、Lレベルは、予め定められる「低水位」に相当する。Hレベル検出部54及びLレベル検出部56は、凝縮水タンク24の水位がHレベル及びLレベルに達している場合に、それぞれ検出信号を出力する。
【0049】
具体的には、凝縮水タンク24の水位がHレベル以上である場合には、Hレベル検出部54及びLレベル検出部56の両方から検出信号が出力され、凝縮水タンク24の水位がHレベル未満でLレベル以上である場合には、Lレベル検出部56のみから検出信号が出力される。また、凝縮水タンク24の水位がLレベル未満である場合には、Hレベル検出部54及びLレベル検出部56のいずれからも検出信号が出力されない。凝縮水タンク24のHレベルは、例えば、凝縮水タンクの貯水率が50%の高さに設定され、凝縮水タンク24のLレベルは、例えば、凝縮水タンクの貯水率が20%の高さに設定される。Hレベルは、本実施形態の水回復出力運転を開始するための基準となる水位である。Lレベルは、例えば、上水から改質水の補水を開始する基準となる水位である。
【0050】
制御装置60は、CPU62、ROM63、RAM64、ストレージ65、I/O66、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス68を備える。ストレージ65には、後述する改質水回復処理のプログラム、水回復出力PR、水位回復時間T1などのデータが格納されている。
【0051】
ここで、水回復出力PR、水位回復時間T1について説明する。水回復出力PRは、凝縮水タンク24の水位が改質水不足水位以下となった場合に、積極的に凝縮水を増加させるための発電出力である。水回復出力PRは、回収される凝縮水の流量が最大となるように設定することが好ましい。このように設定することにより、短時間で凝縮水タンク24の水位を上昇させることができる。
【0052】
水位回復時間T1は、凝縮水タンク24の水位が改質水不足水位未満となった場合に、燃料電池モジュール10での発電を水回復出力PRで維持する時間である。水位回復時間T1として、凝縮水タンク24の水位が回復水位Iとなるように設定される。回復水位Iは、Hレベルを超えると共に改質水が充分に回復でき、且つ、所定の排水必要レベルに達しない状態となる位置に設定されている。
【0053】
I/O66には、パワーコンディショナ58、水位センサ26、ブロワ40、ブロワ42、ポンプ44、自立ヒータ28などの、データ取得機器、制御対象機器が接続されている。制御装置60により、燃料電池システムS1の全体が制御される。
【0054】
熱交換器22での冷却により得られた凝縮水は、前述のように、凝縮水タンク24を経て燃料電池モジュール10に改質水として供給される。凝縮水が不足すると、燃料電池モジュール10に供給される改質水が不足し、改質器14にて所望の量の改質ガスを得られなくなる。このため、改質水に不足が生じないようにする必要がある。
【0055】
次に、本実施形態の改質水回復処理について説明する。改質水回復処理は、燃料電池システムS1の運転中、制御装置60により、図3に示すフローチャートに基づいた処理が継続して行われる。
【0056】
まず、ステップS10で、水位センサ26からの検出信号を取得し、ステップS12で、検出信号に基づいて水位レベルがHレベル未満かどうかを判定する。具体的には、Hレベル検出部54及びLレベル検出部56の両方から検出信号が出力される場合には、凝縮水タンク24の水位がHレベル以上であるとし、Lレベル検出部56のみから検出信号が出力される場合には、凝縮水タンク24の水位がHレベル未満でLレベル以上であるとし、Hレベル検出部54及びLレベル検出部56のいずれからも検出信号が出力されない場合には、凝縮水タンク24の水位がLレベル未満であるとする。
【0057】
ステップS12で、判断が否定された場合には、ステップS10へ戻り、その後の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS12で、判断が肯定された場合には、ステップS14で、水回復出力PRの運転を実行する。すなわち、発電出力が水回復出力PRとなるように、各部を制御する。具体的には、パワーコンディショナ58で電流制御を行うと共に、ブロワ40、42、ポンプ44の出力等を制御する。
【0059】
ステップS14の後、ステップS16で、電力分配処理を行う。電力分配処理は、水回復出力PRで得られる電力をどこへ出力するかの配分を行う処理である。図4に示されるように、ステップS16-1で、水回復出力PRで得られる電力が要求されている負荷電力を超える出力かどうかを判断する。判断が否定された場合には、ステップS16-2へ進み、電力出力先を家庭用負荷とする。
【0060】
ステップS16-1での判断が肯定された場合には、ステップS16-3で、系統電力への逆潮流設定があるかどうかを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS16-4へ進み、家庭用電力の負荷余剰分を系統電力へ逆潮する。ステップS16-3での判断が否定された場合には、ステップS16-5へ進み、家庭用電力の負荷余剰分を自立ヒータ28へ出力する。
【0061】
当該電力分配処理では、水回復出力PRで得られる電力が、負荷電力内であれば家庭用負荷で消費し、負荷電力を超える場合には、家庭用負荷で優先的に消費し、余剰分を系統電力へ逆潮させ、逆潮が行えない場合に、自立ヒータ28での消費を行うように分配する。
【0062】
ステップS16の後、ステップS18で、水位回復時間T1が経過するまで待機する。水位回復時間T1の間に、凝縮水が増加し、凝縮水タンク24の水位が上昇し、Hレベルを超え、所定の回復水位Iに至る。
【0063】
水位回復時間T1が経過した後、ステップS20で水回復出力運転から負荷追従運転へ切り換える。そして、ステップS10へ戻り、処理を繰り返す。
【0064】
本実施形態に係る燃料電池システムS1では、凝縮水タンク24の水位がHレベル未満となった場合には、水回復出力で運転して凝縮水の量を増やすので、改質水不足を抑制することができる。また、水回復出力での運転を、水位回復時間水位回復時間の間継続させことにより回復水位とするので、簡易に改質水不足を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、水回復出力PRで得られる電力が、負荷電力内であれば家庭用負荷で消費し、負荷電力を超える場合には、家庭用負荷で優先的に消費し、余剰分を系統電力へ逆潮させる。したがって、水回復出力で得られた電力を有効に利用することができる。さらに、系統電力への逆潮が行えない場合に、自立ヒータ28での消費を行うので、熱利用が可能であると共に、簡易に電力消費を行うことができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態の燃料電池システムS1は、改質水回復処理中に、水漏れ検知を行う点が第1実施形態と異なる。燃料電池システムS1の構成については、図1に示されている第1実施形態と同一である。本実施形態では、図5に示されるように、水漏れ検知カウンタ70を備えており、水漏れ検知カウンタ70は、制御装置60とI/O66を介して接続されている。水漏れ検知カウンタ70は、燃料電池システムS1において、改質水回復処理が実行された直後から時間カウントを開始する。
【0068】
ストレージ65には、さらに水漏れ検知時間T2が格納されている。水漏れ検知時間T2は、凝縮水タンク24の水位が回復水位Iに達した後、水位がHレベル未満となるまでに要する、正常時(水漏れなしの時)における最短の時間が設定されている。すなわち、回復水位IからHレベルになるまでの時間が、水漏れ検知時間T2よりも短い場合には、想定される時間よりも短時間で水の減少が生じているため、水漏れが生じていると判断する。
【0069】
次に、本実施形態の改質水回復処理について説明する。改質水回復処理は、燃料電池システムS1の運転中、制御装置60により、図6に示すフローチャートに基づいた処理が継続して行われる。
【0070】
ステップS10、S12は、第1実施形態と同様に実行する。ステップS30では、水漏れ検知処理が実行される。
【0071】
図7に示されるように、水漏れ検知処理は、ステップS30-1で、水漏れ検知カウンタ70でカウントされた時間が水漏れ検知時間T2よりも短いかどうかを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS30-2で、水漏れ警報を出力する。水漏れ警報は、不図示のリモコンパネルへ表示してもよいし、音声で報知してもよいし、その他、通信で端末機器へ報知してもよい。
【0072】
ステップS30の後、ステップS14、S16、S18、S20は、第1実施形態と同様に実行する。そして、ステップS32で、水漏れ検知カウンタ70をリセットする。これにより、凝縮水タンク24の水位が回復水位Iとなった直後から、時間カウントを行うことができる。ステップS32の後、ステップS10へ戻り、処理を繰り返す。
【0073】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、凝縮水タンク24の水位がHレベル未満となった場合には、水回復出力で運転して凝縮水の量を増やすので、改質水不足を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、水漏れ検知処理を行い、短時間で凝縮水タンク24の水位が低下した場合に、水漏れを検知することができる。
【0075】
なお、第1、第2実施形態の改質水回復処理において、凝縮水タンク24の水位がHレベル未満と判断された場合に、さらに、Lレベル未満かどうかを判断してもよい。そして、判断が肯定された場合に、不図示の上水から改質水の補水を行ってもよい。
【符号の説明】
【0076】
14 改質器
16 燃料電池
24 凝縮水タンク(水タンク)
26 自立ヒータ
26 水位センサ(水位検出部)
28 自立ヒータ
60 制御装置(水回復処理実行部)
PR 水回復出力
S1 燃料電池システム
T1 水位回復時間
T2 水漏れ検知時間(異常短時間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7