IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池 図1
  • 特許-燃料電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/248 20160101AFI20240318BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M8/248
H01M8/2484
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020155347
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049240
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕磨
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/261166(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112117478(CN,A)
【文献】特開2007-280890(JP,A)
【文献】特開2009-081037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単セル電池を複数積層した単セル電池積層体と、
前記単セル電池積層体の両端に配置され、電気を取り出すための集電板と、
前記集電板の外側に配置され、電気的に絶縁するための絶縁板と、
前記集電板と前記絶縁板の間に配置され、締め付け面圧を均一にするための弾性体と、
前記単セル電池積層体の側面に配置され、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却水を供給する外部マニホールドと、
前記外部マニホールドと前記絶縁板とを嵌合させて固定する嵌合構造部と
を具備し、
前記嵌合構造部にて、前記外部マニホールドを、前記絶縁板を互いに近接する方向に押圧した状態で前記絶縁板に固定した
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池であって、
前記単セル電池積層体は外形が略四角柱状であり、
前記嵌合構造部が、少なくとも前記単セル電池積層体の対向する2つの面に位置する前記外部マニホールドと前記絶縁板とを嵌合させるように設けられている
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池であって、
前記嵌合構造部は、前記外部マニホールドの両側端部に設けられた凸部と、
前記絶縁板に設けられ、前記凸部と嵌合可能な凹部と
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池であって、
前記凸部は、前記外部マニホールド側から先端側に向けて次第に幅広になる形状を有し、
前記凹部は、前記外部マニホールド側から奥側に向けて次第に幅広になる形状を有する
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の燃料電池であって、
前記外部マニホールドと、前記絶縁板とが、前記嵌合構造部にてねじ止めされている
ことを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単セル電池に冷却水と燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給する外部マニホールドを有する燃料電池が知られている。また、単セル電池を複数積層した単セル電池積層体と、単セル電池積層体の両端に配置された電気を取り出すための集電板と、集電板の外側に配置された電気的に絶縁するための絶縁板で構成された燃料電池積層体を締結した構造の燃料電池が知られている。
【0003】
上記の単セル電池積層体と集電板と絶縁板とを有する燃料電池積層体を締結する構造としては、燃料電池積層体の両端に一対のエンドプレートを配置し、これらのエンドプレートを跨ぐ複数のタイロッドを配置して、タイロッドをナットによって締め付ける構造のものが知られている。この構造の燃料電池では、タイロッドに設置したナットを上下させることで一対のエンドプレートをお互いに近接する方向に動かし、燃料電池積層体を締め付けることで、燃料電池積層体を構成する各部材間の接触電気抵抗を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-46540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の燃料電池では、燃料電池積層体を締め付けるナットの締め付け圧力が不均一であった場合や、経時および振動などによりナットに緩みが生じて締め付け圧力が均一では無くなった場合等に、エンドプレートに歪みが発生する。この歪みにより、燃料電池積層体に掛かるエンドプレートの締め付け面圧が不均一となる場合がある。
【0006】
このように、燃料電池積層体に掛かるエンドプレートの締め付け面圧が不均一になると、面圧不足による接触電気抵抗の増大や、面圧過剰による燃料電池積層体の破損が発生する可能性が生じるという課題があった。
【0007】
また、燃料電池積層体を締め付ける構造にエンドプレートとタイロッドを使用することにより燃料電池が一回り大きくなり、燃料電池システム内の燃料電池の占める体積が大きくなることから、燃料電池システム内の燃料電池や各部品の配置スペースが制限され、効率的な部品配置が行えないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料電池積層体に掛かる締め付け面圧を常に均一とすることができるとともに、よりコンパクトな燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の燃料電池は、単セル電池を複数積層した単セル電池積層体と、前記単セル電池積層体の両端に配置され、電気を取り出すための集電板と、前記集電板の外側に配置され、電気的に絶縁するための絶縁板と、前記集電板と前記絶縁板の間に配置され、締め付け面圧を均一にするための弾性体と、前記単セル電池積層体の側面に配置され、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却水を供給する外部マニホールドと、前記外部マニホールドと前記絶縁板とを嵌合させて固定する嵌合構造部とを具備し、前記嵌合構造部にて、前記外部マニホールドを、前記絶縁板を互いに近接する方向に押圧した状態で前記絶縁板に固定したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る燃料電池の構成を模式的に示す分解斜視図。
図2図1の燃料電池の絶縁板と外部マニホールドとを固定した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る燃料電池ついて、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る燃料電池100の構成を模式的に示す分解斜視図である。図1において、単セル電池を複数積層した略四角柱状の単セル電池積層体101は、例えば、水素を含む燃料ガスと、酸素を含む空気等の酸化剤ガスとの電気化学反応を利用して発電する。単セル電池は、例えば、電解質膜を挟んで燃料極及び酸化剤極を配置して構成される電解質膜・電極接合体と、電解質膜・電極接合体にガス供給を行うと共に燃料と酸化剤を分離する機能を有するセパレータとを有する。
【0013】
単セル電池積層体101の両端には、単セル電池積層体101から電気を取り出すための略四角形状の集電板102が設置されており、集電板102の外側には集電板102から電気的に絶縁するための略四角形状の絶縁板103が設置されている。
【0014】
集電板102と絶縁板103の間には、単セル電池積層体101に掛かる面圧を調整するための略四角形状の弾性体104が設置されている。この弾性体104は、例えば、ゴム又は金属製のバネ体等からなり、その厚さ方向に弾性変形可能とされており、単セル電池積層体101及び集電板102の締め付け面圧を均一にする作用を果たす。
【0015】
図1に示す燃料電池100では、単セル電池積層体101の両側に弾性体104が設置されている場合を示しているが、弾性体104の設置は、単セル電池積層体101の片側のみでも構わない。なお、絶縁板103及び弾性体104には、単セル電池積層体101で発生させた電力を、集電板102を介して取り出すための電力取り出し口103b、104bが設けられている。
【0016】
単セル電池積層体101の長手方向に沿った4つの側面には、単セル電池積層体101に燃料ガスや酸化剤ガスおよび冷却水を供給する外部マニホールド105が配置されている。なお、図1では、説明を分かり易くするため、図中単セル電池積層体101の手前側に位置する単セル電池積層体101の2つの側面に配置される2つの外部マニホールド105のみを示してある。
【0017】
外部マニホールド105と絶縁板103には、これらを固定するための嵌合構造部が設けられている。本実施形態の燃料電池100では、この嵌合構造部は、以下に説明する外部マニホールド105に設けられた凸部105aと、絶縁板103に設けられた凹部103aとによって構成されている。しかし、嵌合構造部は、嵌合することによって外部マニホールド105と絶縁板103とを固定できるものであれば、どのような構造のものでもよく、例えば、絶縁板103側に凸部を設け、外部マニホールド105側に凹部を設けてもよい。なお、本実施形態では、単セル電池積層体101の長手方向に沿った4つの側面に、合計4つの外部マニホールド105を設けた場合について説明するが、嵌合構造部を有する外部マニホールド105と絶縁板103は、少なくとも対向する2つの側面に設ければ良い。
【0018】
外部マニホールド105の単セル電池積層体101側に位置する上側端部及び下側端部(長手方向の両側端部)には、それぞれ外部マニホールド105から上側及び下側に向けて突出する凸部105aが設けられている。図2にも示すように、これらの凸部105aは、外部マニホールド105から突出する方向(先端側)に向けて次第に横幅が広がる形状とされており、横側端面はそれぞれ外部マニホールド105側に向く斜めの面となっている。
【0019】
一方、絶縁板103の、外部マニホールド105側に向く4つの側面には、それぞれ外部マニホールド105の凸部105aに対応する形状の凹部103aが設けられている。すなわち、図2にも示すように、これらの凹部103aは、外部マニホールド105側から奥側(上側若しくは下側)に向けて次第に幅広になる形状とされている。
【0020】
そして、これらの絶縁板103の凹部103aに、それぞれ外部マニホールド105の凸部105aを嵌め込んで固定することができる嵌合構造となっている。外部マニホールド105の両側の凸部105aを、夫々単セル電池積層体101の両側に配置された絶縁板103の凹部103aに嵌合させる際には、単セル電池積層体101の両端に位置する絶縁板103を互いに近接する方向に押圧して絶縁板103を近接させ、単セル電池積層体101を締め付けている状態(弾性体104が厚さ方向に圧縮されて弾性変形した状態)で、絶縁板103の側面に設けられた凹部103aに、外部マニホールド105に設けられた凸部105aを嵌め込む。
【0021】
そして、更に複数(図1に示す例では、それぞれの外部マニホールド105について4本)のネジ106で、外部マニホールド105と絶縁板103とを固定する。図2に、絶縁板103に設けられた凹部103aに、外部マニホールド105に設けられた凸部105aを嵌め込み、ネジ106をねじ込んで絶縁板103と外部マニホールド105とを固定した状態を示す。
【0022】
上記のようにして、外部マニホールド105と絶縁板103とを固定することにより、厚さ方向に圧縮されて弾性変形した弾性体104による厚さ方向に延びようとする弾性力が加わり、凹部103aと凸部105aとが固定された状態となる。すなわち、凸部105aの先端側の方が基端側よりも幅広の形状とされているので、図2において上下に伸びる方向に力が加わると、凸部105aの下方に向く斜めの面と、凹部103aの上方に向く斜めの面とが押圧されてこれらが固定された状態となる。
【0023】
上記のように、弾性体104が厚さ方向に圧縮されて弾性変形した状態で外部マニホールド105と絶縁板103とを固定するためには、単セル電池積層体101、集電板102、弾性体104、絶縁板103を積層した状態における上下の凹部103a間の距離より、外部マニホールド105の両端の凸部105aの距離の方が短くなるように、外部マニホールド105の長手方向の寸法を設定する必要がある。すなわち、両側の絶縁板103を押圧して近接させた状態で、凸部105aが凹部103a内に嵌合可能となる寸法に設計する。
【0024】
この場合、設計寸法と実際の寸法との寸法公差を考慮する必要があり、弾性体104の厚さ及び弾性変形可能な長さを多く設定しておくことによって、寸法公差を吸収して締め付け圧力を一定かつ均一にすることができる。例えば、寸法公差が1見込まれる場合、弾性体104の弾性変形可能な伸縮長さを1よりも大きく例えば2以上、3以上としておくことによって、寸法公差を吸収して締め付け圧力を一定かつ均一にすることができる。
【0025】
本実施形態の燃料電池100によれば、外部マニホールド105を、単セル電池積層体101と集電板102と弾性体104を締め付けている状態の絶縁板103に固定することにより、外部マニホールド105の固定寸法で単セル電池積層体101と集電板102と絶縁板103と弾性体104を締め付けることができ、締め付け圧力が一定かつ均一の状態を保つことができる。
【0026】
また、外部マニホールド105に寸法公差がある場合でも、弾性体104が伸縮することにより締め付け面圧を均一に保つことができる。さらに、ナットなどの可動部品が不要となることから、部品点数の抑制や締め付け圧力の不足や過剰により発生する不具合を低減できる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池100では、規定の寸法で製造された外部マニホールド105にて、単セル電池積層体101を締め付ける構造のため、単セル電池積層体101に掛かる締め付け圧力が常に一定かつ均一で、不変であるという利点がある。また、締め付け構造にエンドプレートやタイロッドなどを用いないことから燃料電池がコンパクトになるため、燃料電池システム内の燃料電池や部品の配置を、より自由に行うことが可能となる。
【0028】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
100……燃料電池、101……単セル電池積層体、102……集電板、103……絶縁板、103a……凹部、103b……電力取り出し口、104……弾性体、104b……電力取り出し口、105……外部マニホールド、105a……凸部、106……ネジ。
図1
図2