(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240318BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2020156509
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】森井 俊樹
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110148(JP,A)
【文献】特開2015-56631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0129679(US,A1)
【文献】特開2020-47657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸および硝酸を含む、貯留槽に貯留された第1処理液の交換要否を判断する判断工程と、
前記判断工程において前記第1処理液の交換が必要であると判断したときに、液交換部が前記貯留槽に貯留された前記第1処理液を交換する交換工程と、
前記交換工程の後に、基板搬送部が、基板処理装置内の据え付け型の基板収容器からダミー基板を取り出し、前記ダミー基板を処理ユニットに搬送するダミー搬入工程と、
前記ダミー搬入工程の後に、前記処理ユニットにおいて、処理液供給機構が、シリコン層が形成された前記ダミー基板の主面に対して、フッ酸および硝酸を含む第2処理液を供給し、前記ダミー基板の前記主面を経由した前記第2処理液を処理液回収機構によって前記貯留槽に回収するダミー工程と、
前記ダミー工程の後に、前記基板搬送部が前記処理ユニットから前記基板収容器に前記ダミー基板を搬送するダミー搬出工程と、
前記ダミー搬出工程の後に、前記基板搬送部が、シリコン層が形成された主面を有する製品用の基板を前記処理ユニットに搬送し、前記処理ユニットにおいて、前記処理液供給機構が、前記貯留槽に貯留された前記第1処理液を前記基板の前記主面に供給する処理工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第2処理液は、前記貯留槽に貯留された交換後の前記第1処理液である、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1処理液は、フッ酸、硝酸および酢酸を含み、
前記第2処理液は、酢酸を含まずにフッ酸および硝酸を含む、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記ダミー工程は、前記第2処理液の供給を停止して、前記第2処理液の液膜を前記ダミー基板の前記主面の上で保持するパドル工程を含む、基板処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記ダミー工程において、前記貯留槽に回収される前記第2処理液における窒素酸化物をセンサによって検出し、前記センサの検出値に基づいて、前記ダミー工程を終了させる、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの薄型化のためのエッチング処理として、フッ酸と硝酸との混合液(フッ硝酸)を用いた技術が提案されている。例えば下記の特許文献1において、当該混合液はノズルによってウエハの上面に供給される。また特許文献1においてはリンス液をウエハの上面に供給するノズルも提案されている。
【0003】
特許文献2には、基板に供給する処理液として、フッ化水素酸(HF)水溶液、硫酸・過酸化水素水の混合溶液(SPM:Sulfuric acid/hydrogen Peroxide Mixture)、アンモニア水・過酸化水素水の混合溶液(APM(Ammonia Hydroxide/Hydrogen Peroxide Mixture),SC1(Standard Clean 1))、塩酸・過酸化水素水の混合溶液(HPM(Hydrochloride/Hydrogen Peroxide Mixture,SC2(Standard Clean 2))、リン酸水溶液にシリコンの粒子が分散された液(シリコン粒子分散リン酸水溶液)が示される。特許文献2では、貯留槽に貯留された処理液を交換した後に、ダミー基板に対して処理液を供給するダミー処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-194090号公報
【文献】特開2019-110148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ酸および硝酸を含む処理液を用いたエッチング処理において、窒素酸化物がエッチング速度に寄与することが分かった。具体的には、窒素酸化物を処理液に多く溶解させると、エッチング速度が高くなって安定する。
【0006】
一方で、貯留槽内の処理液が古くなり劣化すると、貯留槽内の処理液を新しい処理液に交換することが望まれる。しかしながら、交換直後の貯留槽内の処理液には窒素酸化物があまり溶解していないので、交換直後の処理液を用いると、エッチング不足を招き得る。そこで、このようなエッチング不足を抑制するために、貯留槽内の処理液における窒素酸化物の濃度を高める処理を行うことが考えられる。
【0007】
また、当該処理の開始条件にユーザの操作が採用されると、ユーザにとっての利便性が低くなってしまう。
【0008】
そこで、本願は、処理液の交換直後のエッチング不足を抑制することができ、ユーザにとっての利便性を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基板処理方法の態様は、フッ酸および硝酸を含む、貯留槽に貯留された第1処理液の交換要否を判断する判断工程と、前記判断工程において前記第1処理液の交換が必要であると判断したときに、液交換部が前記貯留槽に貯留された前記第1処理液を交換する交換工程と、前記交換工程の後に、基板搬送部が、基板処理装置内の据え付け型の基板収容器からダミー基板を取り出し、前記ダミー基板を処理ユニットに搬送するダミー搬入工程と、前記ダミー搬入工程の後に、前記処理ユニットにおいて、処理液供給機構が、シリコン層が形成された前記ダミー基板の主面に対して、フッ酸および硝酸を含む第2処理液を供給し、前記ダミー基板の前記主面を経由した前記第2処理液を処理液回収機構によって前記貯留槽に回収するダミー工程と、前記ダミー工程の後に、前記基板搬送部が前記処理ユニットから前記基板収容器に前記ダミー基板を搬送するダミー搬出工程と、前記ダミー搬出工程の後に、前記基板搬送部が、シリコン層が形成された主面を有する製品用の基板を前記処理ユニットに搬送し、前記処理ユニットにおいて、前記処理液供給機構が、前記貯留槽に貯留された前記第1処理液を前記基板の前記主面に供給する処理工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
基板処理方法によれば、交換工程の後にダミー工程が行われる。ダミー工程では、第2処理液がダミー基板のシリコンと反応して窒素酸化物を生成する。当該窒素酸化物の一部はダミー基板のシリコン層のエッチング反応に用いられ、残りの一部は第2処理液に溶解したまま貯留槽に回収される。よって、貯留槽内の第1処理液における窒素酸化物の濃度を高めることができる。したがって、処理工程における第1処理液によるエッチング不足を抑制することができる。
【0011】
しかも、ダミー基板は据え付け型の基板収容器から取り出されるので、どのタイミングで第1処理液の交換が必要だと判断されても、ダミー基板を基板収容器から取り出して処理ユニットに搬送でき、ダミー工程を自動的に行うことができる。よって、ユーザにとっての利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る基板処理システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】ホストコンピュータの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】基板処理装置の概略構成の一例を示す模式的な平面図である。
【
図4】基板処理装置の概略構成の一例を示す模式的な側面図である。
【
図5】一つの処理ユニットの構成を例示する概略図である。
【
図6】貯留槽の周辺の配管系統の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図7】貯留槽の周辺の配管系統の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図8】本体制御ユニットの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】液管理制御ユニットの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】処理液の交換処理に関する基板処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】ダミー処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】ダミー工程の一例を示すフローチャートである。
【
図13】ダミー工程における基板処理装置の様子の一例を概略的に示す図である。
【
図14】ダミー工程の終了処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】貯留槽の周辺の配管系統の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図16】処理液供給機構の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略および構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0014】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0015】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0016】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0017】
<1.一実施形態>
<1-1.基板処理システムの概略構成>
図1は、一実施形態に係る基板処理システム1の概略構成の一例を示す図である。基板処理システム1は、例えば、ホストコンピュータ10と、基板処理装置20と、搬送装置30とを備える。基板処理装置20は複数設けられてもよい。ホストコンピュータ10と、複数の基板処理装置20と、搬送装置30とは例えば通信回線50を介して通信可能に接続される。通信回線50には、例えば、有線回線および無線回線の一方もしくは両方が採用される。
【0018】
<1-2.ホストコンピュータの構成>
図2は、ホストコンピュータ10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。ホストコンピュータ10は、複数の基板処理装置20を統括的に管理するための装置(管理装置ともいう)である。
【0019】
ホストコンピュータ10は、例えば、コンピュータで実現され、バスラインBu1を介して接続された、通信部101、入力部102、出力部103、記憶部104、制御部105およびドライブ106を備える。
【0020】
通信部101は、例えば、通信回線50を介して各基板処理装置20および搬送装置30に対して信号を送信可能な送信部としての機能を有する。通信部101は、例えば、通信回線50を介して各基板処理装置20および搬送装置30からの信号を受信可能な受信部としての機能を有する。
【0021】
入力部102には、例えば、ホストコンピュータ10を使用するユーザの動作などに応じた信号が入力され得る。入力部102には、例えば、操作部、マイクおよび各種センサなどが含まれ得る。
【0022】
出力部103は、例えば、各種情報を出力することができる。出力部103には、例えば、表示部およびスピーカなどが含まれ得る。
【0023】
記憶部104は、例えば、各種情報を記憶することができる。この記憶部104は、例えば、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され得る。記憶部104には、例えば、プログラムPg1および処理計画の情報(「処理計画情報」とも称される)PP1を含む各種の情報が記憶され得る。記憶部104には、後述するメモリ105bが含まれてもよい。
【0024】
1つのロットを構成する複数枚の基板が基板群と称される。処理計画情報PP1は、例えば基板群に係る複数の連続した基板処理(「連続処理」とも称される)を実行するタイミング(実行タイミングともいう)を示す。
【0025】
制御部105は、例えば、プロセッサとして働く演算処理部105aおよび情報を一時的に記憶するメモリ105bなどを含む。演算処理部105aには、例えば、中央演算部(CPU)が採用される。メモリ105bには、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)が採用される。演算処理部105aにおいて、例えば、記憶部104に記憶されているプログラムPg1が読み込まれて実行されることで、ホストコンピュータ10の機能が実現される。制御部105における各種の情報処理によって一時的に得られる各種情報は、例えば適宜にメモリ105bに記憶される。
【0026】
ドライブ106は、例えば、可搬性の記憶媒体RM1が脱着される部分である。ドライブ106では、例えば、記憶媒体RM1が装着されている状態で、この記憶媒体RM1と制御部105との間におけるデータの授受が行われる。例えば、プログラムPg1が記憶された記憶媒体RM1がドライブ106に装着されることで、記憶媒体RM1から記憶部104内にプログラムPg1が読み込まれて記憶される。
【0027】
<1-3.基板処理装置の構成>
図3は、基板処理装置20の概略構成の一例を示す模式的な平面図であり、
図4は、基板処理装置20の概略構成の一例を示す模式的な側面図である。
【0028】
基板処理装置20は、例えば、基板Wの表面に対して処理液を供給することで各種処理を行うことができる枚葉式の装置である。ここでは、基板Wの一例として、半導体基板(ウエハ)が用いられる。各種処理には、例えば、エッチャントを用いたエッチング処理、液体で異物や除去対象物を除去する洗浄処理、水で洗い流すリンス処理およびレジストなどを塗布する塗布処理が含まれる。以下ではエッチング処理とリンス処理とを用いた説明が例示される。
【0029】
基板処理装置20はロードポートLP1~LP4を含む。ロードポートの個数は4に限定されない。ロードポートLP1~LP4の各々は、キャリアCを保持する収容器保持機構として機能する。キャリアCは複数枚の基板Wを収容する可搬型の基板収容器として機能する。
【0030】
ロードポートLP1~LP4には、例えば、キャリア置き場40内から搬送装置30によってキャリアCが搬送されて載置される。搬送装置30の動作は、例えば、ホストコンピュータ10によって制御される。基板処理装置20が複数設けられるときには、例えば、搬送装置30はキャリアCを基板処理装置20同士の間で搬送する。
【0031】
基板処理装置20は、4台の処理ユニット21をさらに含む。処理ユニット21の台数は4に限定されない。
図3における例示では、2台の処理ユニット21が一組となって鉛直方向に積層して配置される(
図4も参照)。二組の処理ユニットが平面視上では2台の処理ユニット21として現れる。
【0032】
処理ユニット21には、後述のように基板Wが搬入される。処理ユニット21は基板Wに処理液を供給して、基板Wに対して処理を行う。ここでは、基板Wの主面にはシリコン層が形成されており、基板Wの主面に処理液を供給することにより、基板Wの主面のシリコン層をエッチングする。シリコン層は、例えば、p型の不純物(例えばボロン)が注入されたp型のシリコン層であってもよい。
【0033】
処理ユニット21には、後述のようにダミー基板DWも搬入され得る。ダミー基板DWは基板Wと同様の形状(例えば円板形状)を有しており、例えばその径は互いにほぼ同一である。ただし、ダミー基板DWは基板Wとは異なって、実際の製品の製造に利用される製品用の基板ではない。このダミー基板DWの主面にもシリコン層が形成されている。このシリコン層も、例えば、p型の不純物(例えばボロン)が注入されたp型のシリコン層であってもよい。処理ユニット21はダミー基板DWの主面に処理液を供給して、ダミー基板DWに対して処理を行う。以下では、ダミー基板DWに対する処理をダミー処理とも呼ぶ。
【0034】
基板処理装置20は、さらに、例えば、インデクサロボット81(基板搬送部)と、センターロボット82(基板搬送部)と、本体制御ユニット22と、液貯留部26L,26Rと、液管理制御ユニット24と、リンス液貯留部25と、液交換部28L,28Rと、ダミー基板収容器23とを含む。
【0035】
インデクサロボット81は、例えば、ロードポートLP1~LP4とセンターロボット82との間で基板Wを搬送する。センターロボット82は、例えば、インデクサロボット81と処理ユニット21との間で基板Wを搬送する。センターロボット82は、ダミー基板収容器23(
図4も参照)に収容されたダミー基板DWを、ダミー基板収容器23と処理ユニット21との間で搬送することもできる。
【0036】
本体制御ユニット22は例えば、基板処理装置20に備えられた各部の動作およびバルブの開閉などを制御する。本体制御ユニット22は例えば、液管理制御ユニット24との間で各種の信号の送受信を行う。
【0037】
液貯留部26Lは、処理液を貯留することが可能な貯留槽261L,262Lを含む。貯留槽261L,262Lには、
図3の上側に図示されて1台の処理ユニット21として現れる一組の処理ユニット21が接続され、これらに採用される処理液を貯留する。
【0038】
液貯留部26Rは、処理液を貯留することが可能な貯留槽261R,262Rを含む。貯留槽261R,262Rには、
図3の下側に図示されて1台の処理ユニット21として現れる一組の処理ユニット21が接続され、これらに採用される処理液を貯留する。
【0039】
以下では、貯留槽261L,261Rを区別する必要はない場合には、これらを纏めて貯留槽261とも呼び、貯留槽262L,262Rを区別する必要がない場合には、これらを纏めて貯留槽262とも呼ぶ。同様に、液貯留部26L,26Rを区別する必要がない場合には、これらを纏めて液貯留部26とも呼ぶ。
【0040】
以下では貯留槽261に貯留される処理液が、フッ酸と硝酸の混合液(以下、当該混合液は「処理液HFN」と仮称される)である場合が例示される。以下では貯留槽262に貯留される処理液が、フッ酸と硝酸と酢酸との混合液(以下、当該混合液は「処理液HNA」と仮称される)である場合が例示される。処理液HFNは、硝酸を含まずにフッ酸および硝酸を含む処理液の一例であり、処理液HNAは、フッ酸、硝酸および酢酸を含む処理液の一例である。
【0041】
貯留槽261,262のそれぞれには、例えば、センサ27が設けられる。センサ27は処理液の状態、例えば濃度、水素イオン指数(pH:power of hydrogen)および温度を示す物理量を測定する。貯留槽261,262のそれぞれには、例えば、それぞれが貯留する処理液を攪拌するための機構が設けられてもよい。
【0042】
液交換部28Lは液交換ユニット281L,282Lを含む。液交換ユニット281Lは貯留槽261L内の処理液HFNを新しい処理液HFNに交換し、液交換ユニット282Lは貯留槽262L内の処理液HNAを新しい処理液HNAに交換する。液交換部28Rは液交換ユニット281R,282Rを含む。液交換ユニット281Rは貯留槽261R内の処理液HFNを新しい処理液HFNに交換し、液交換ユニット282Rは貯留槽262R内の処理液HNAを新しい処理液HNAに交換する。
【0043】
以下では、液交換ユニット281L,281Rを区別する必要はない場合には、これらを纏めて液交換ユニット281とも呼び、液交換ユニット282L,282Rを区別する必要がない場合には、これらを纏めて液交換ユニット282とも呼ぶ。同様に、液交換部28L,28Rを区別する必要がない場合には、これらを纏めて液交換部28とも呼ぶ。
【0044】
液管理制御ユニット24は、例えば、液貯留部26および液交換部28に含まれている後述の各部の動作およびバルブの開閉などを制御することで、液貯留部26内の処理液HFN,HNAの状態を管理することができる。具体的には、液管理制御ユニット24は、例えば、各貯留槽261のセンサ27から処理液HFNの状態を示す物理量に係る信号を得ることができ、各貯留槽262のセンサ27から処理液HNAの状態を示す物理量を得ることができる。液管理制御ユニット24は、例えば、貯留槽261内の処理液HFNを不図示の加熱部(例えばヒータ)によって加熱させることができ、貯留槽262内の処理液HNAを不図示の加熱部によって加熱させることができる。また、液管理制御ユニット24は、例えば、本体制御ユニット22との間で各種の信号の送受信を行うことができる。ここでは、例えば、液管理制御ユニット24は、センサ27から得た信号あるいは該信号から認識される物理量を示す数値を、本体制御ユニット22に送信することができる。
【0045】
また、例えば液管理制御ユニット24は本体制御ユニット22からの指令に応答して、液交換部28を制御する。液交換部28は、例えば、液管理制御ユニット24からの制御の下で、液貯留部26に貯留されている処理液を交換する処理(液交換処理ともいう)を実行することができる。
【0046】
リンス液貯留部25は、リンス液を貯留することが可能である。リンス液は例えば炭酸水である。リンス液は、炭酸水に限らず、純水(脱イオン水:Deionized Water)、電解イオン水、水素水、オゾン水であってもよい。
【0047】
ロードポートLP1~LP4は、基板処理装置20とこの基板処理装置20の外部との間で基板群の搬入および搬出を行うための部分(以下「搬出入部」とも称される)としての機能を有する。
図3の例では、ロードポートLP1~LP4と処理ユニット21の各々とは、水平方向に間隔を空けて配置される。ロードポートLP1~LP4は、平面視したときに水平な第1方向DR1に沿って配列される。
【0048】
例えば搬送装置30は、ロードポートLP1~LP4に複数の基板群を搬送する。
図3の例では、搬送装置30は、例えば、第1方向DR1およびこの第1方向DR1に直交する水平な第2方向DR2に沿って移動可能である。例えば、1つの基板群を成す複数枚の基板Wをそれぞれ収容するキャリアCが、キャリア置き場40内から搬送されてロードポートLP1~LP4のいずれかに載置される。ロードポートLP1~LP4において複数のキャリアCは、第1方向DR1に沿って配列される。
【0049】
図3の例では、インデクサロボット81は、キャリアCから基板載置部29に複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送することができる。インデクサロボット81は、基板載置部29からキャリアCに複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送することができる。
【0050】
同様に、センターロボット82は、基板載置部29から各処理ユニット21に複数枚の基板Wを一枚ずつ搬入することができる。センターロボット82は、各処理ユニット21から基板載置部29に複数枚の基板Wを一枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボット82は、必要に応じて複数の処理ユニット21の間において基板Wを搬送することができる。また、センターロボット82はダミー基板収容器23と処理ユニット21との間でダミー基板DWを一枚ずつ搬送することができる。
【0051】
例えばインデクサロボット81は、4つのハンドを有する。ハンドの各々は、基板Wを水平な姿勢で支持できる。インデクサロボット81は、ハンドを水平方向および鉛直方向に移動させ得る。インデクサロボット81は、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することができ、当該回転によってハンドの向きが変更される。
【0052】
インデクサロボット81は、受渡位置を通る経路201において第1方向DR1に沿って移動する。受渡位置は、平面視上、インデクサロボット81とセンターロボット82とが第2方向DR2において対向する位置である。
【0053】
インデクサロボット81は、任意のキャリアCおよび基板載置部29にそれぞれハンドを対向させることができる。例えば、インデクサロボット81は、ハンドを移動させることにより、キャリアCに基板Wを搬入する搬入動作と、キャリアCから基板Wを搬出する搬出動作とを行う。例えば、インデクサロボット81は、センターロボット82と協働して、インデクサロボット81およびセンターロボット82の一方から他方に基板載置部29を経由して基板Wを移動させる受渡動作を受渡位置で行う。
【0054】
基板載置部29はインデクサロボット81の受渡位置とセンターロボット82との間に設けられ、基板Wを載置する載置台を含む。基板載置部29は、4枚の基板Wを載置することが可能であってもよい。インデクサロボット81は基板Wを基板載置部29に搬入し、センターロボット82は基板載置部29から基板Wを搬出する。これにより、インデクサロボット81からセンターロボット82に基板Wを受け渡すことができる。逆に、センターロボット82は基板Wを基板載置部29に搬入し、インデクサロボット81は基板載置部29から基板Wを搬出する。これにより、センターロボット82からインデクサロボット81に基板Wを受け渡すことができる。
【0055】
センターロボット82は、インデクサロボット81と同様に、例えば4つのハンド(図示省略)を有する。ハンドの各々は、基板Wを水平な姿勢で支持できる。センターロボット82は、ハンドを水平方向および鉛直方向に移動させ得る。センターロボット82は、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することができ、当該回転によってハンドの向きが変更される。
【0056】
センターロボット82は、任意の処理ユニット21および基板載置部29のいずれかにハンドを対向させることができる。例えば、センターロボット82は、ハンドを移動させることにより、各処理ユニット21に基板Wを搬入する搬入動作と、各処理ユニット21から基板Wを搬出する搬出動作とを行う。例えば、センターロボット82は、インデクサロボット81と協働して、インデクサロボット81およびセンターロボット82の一方から他方に基板載置部29を経由して基板Wを移動させる受渡動作を行う。
【0057】
ダミー基板収容器23は据え付け型の基板収容器であり、基板処理装置20内に設けられる。
図3および
図4の例では、ダミー基板収容器23は基板載置部29の上方空間内に設けられている。具体的な一例として、ダミー基板収容器23は、基板載置部29と鉛直方向において対向する位置に設けられている。
【0058】
ダミー基板収容器23は複数枚のダミー基板DWを水平姿勢で、かつ、鉛直方向に並べた状態で収容する。また、ダミー基板収容器23は、平面視においてセンターロボット82側に開口する箱型形状を有する。
【0059】
センターロボット82はハンドを昇降可能であり、ハンドを、ダミー基板収容器23と水平方向で対向する高さ位置に移動させることができる。センターロボット82はハンドを移動させることにより、ダミー基板収容器23にダミー基板DWを搬入する搬入動作と、ダミー基板収容器23からダミー基板DWを搬出する搬出動作とを行う。
【0060】
<1-4.処理ユニットの構成例>
図5は、一つの処理ユニット21の構成を例示する概略図である。
図5は鉛直方向に垂直な方向から見た図である。処理ユニット21は基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式のユニットである。処理ユニット21は本体制御ユニット22の制御の下で動作する。本体制御ユニット22は処理ユニット21に備えられた各部の動作やバルブの開閉を制御する。
【0061】
処理ユニット21の各々は、チャンバー4と、スピンチャック5と、処理液供給機構6と、ガード機構7とを含む。チャンバー4はスピンチャック5と、処理液供給機構6と、ガード機構7とを格納する。
【0062】
スピンチャック5は、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持する基板保持機構として機能する。スピンチャック5は鉛直な線である基板回転軸A1まわりに基板Wを回転させる。基板回転軸A1は例えば基板Wの中心を通る。
【0063】
処理液供給機構6はスピンチャック5に保持された基板Wの処理の対象となる表面(主面)に処理液を供給する。ガード機構7は基板回転軸A1まわりにスピンチャック5を取り囲む。
【0064】
スピンチャック5は、スピンベース11と、スピン軸14と、スピンモータ15とを含む。スピンベース11は円板状であって水平な姿勢で保持される。
図5の例では、スピンベース11の外径は、基板Wの直径よりも小さい。スピンベース11は真空チャックを用いて基板Wを吸着して保持することができる。基板Wの下面Wbがスピンベース11の上面に吸着した状態で、基板Wが水平に保持される。
【0065】
スピンベース11の中心線は、鉛直な線である基板回転軸A1上に位置する。基板回転軸A1は例えば基板Wの中心を通る。スピンベース11は基板回転軸A1まわりに基板Wを回転させる。
【0066】
スピン軸14はスピンベース11の中央部から鉛直下方に延びる。スピン軸14の内側には、スピンベース11における真空チャックに利用される排気孔13が設けられる。
【0067】
処理ユニット21は排気管42と、排気バルブ43とを含む。排気管42は排気孔13と連通する。排気バルブ43は排気管42に介挿される。排気孔13は排気管42と、排気バルブ43とを介し、不図示の機構(例えば基板処理システム1が設置される工場に設けられた排気設備)によって排気される。
【0068】
排気バルブ43を開くことにより、真空チャックによって基板Wがスピンベース11に吸着される。排気バルブ43を閉じ、さらに不図示の機構によって排気孔13に気体(例えば窒素ガス)が供給されることにより、スピンベース11における真空チャックが解除される。
【0069】
スピンモータ15はスピン軸14を回転させ、ひいてはスピンベース11を基板回転軸A1まわり、例えば鉛直下方に沿って見て反時計回りの方向RDrに回転させる。基板Wがスピンベース11に吸着された状態でスピンモータ15がスピン軸14を回転させることにより、基板Wはスピンベース11とともに基板回転軸A1まわりに回転する。
【0070】
処理液供給機構6は、処理液ノズル341,342と、処理液配管351,352と、処理液バルブ361,362とを含む。処理液ノズル341,342は基板Wの上面Wuに向けて処理液を吐出する上面ノズルとして機能する。処理液配管351は処理液ノズル341に接続され、処理液配管352は処理液ノズル342に接続される。処理液バルブ361は処理液配管351に介挿され、処理液バルブ362は処理液配管352に介挿される。
【0071】
処理液ノズル341は処理液配管351および処理液バルブ361を介して貯留槽261に接続される(
図6も参照)。
図6は、貯留槽261および貯留槽261の周辺の配管系統の構成の一例を概略的に示す図である。貯留槽261の例えば底部には、処理液配管351の上流端が接続されている。
図6の例では、処理液配管351にはポンプ371が介挿される。ポンプ371は、貯留槽261内に貯留された処理液HFNを、処理液配管351を通じて処理液ノズル341へと送液する。
【0072】
処理液バルブ361が開き、ポンプ371が作動すると、貯留槽261から処理液配管351を通じて処理液ノズル341に供給された処理液HFNが、処理液ノズル341から下方に吐出される。処理液バルブ361が閉じられると、処理液ノズル341からの処理液HFNの吐出が停止される。
【0073】
処理液ノズル342は処理液配管352および処理液バルブ362を介して貯留槽262に接続される(
図5および
図7を参照)。
図7は、貯留槽262および貯留槽262の周辺の配管系統の構成の一例を概略的に示す図である。貯留槽262の例えば底部には、処理液配管352の上流端が接続されている。
図7の例では、処理液配管352にはポンプ372が介挿される。ポンプ372は、貯留槽262内に貯留された処理液HNAを、処理液配管352を通じて処理液ノズル342へと送液する。
【0074】
処理液バルブ362が開き、ポンプ372が作動すると、貯留槽262から処理液配管352を通じて処理液ノズル342に供給された処理液HNAが、処理液ノズル342から下方に吐出される。処理液バルブ362が閉じられると、処理液ノズル342からの処理液HNAの吐出が停止される。
【0075】
図5を参照して、処理ユニット21はノズル移動装置37を含む。ノズル移動装置37は、処理液ノズル341,342から吐出された処理液HFN,HNAが上面Wuに着液する処理位置と、処理液ノズル341,342がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で処理液ノズル341,342を移動させる。
【0076】
処理液供給機構6は、リンス液ノズル38と、リンス液配管39と、リンス液バルブ47とを含む。リンス液ノズル38は、上面Wuに向けてリンス液を吐出する上面ノズルとして機能する。リンス液配管39はリンス液ノズル38に接続される。リンス液バルブ47はリンス液配管39に介挿される。リンス液ノズル38はリンス液配管39およびリンス液バルブ47を介してリンス液貯留部25に接続される。
【0077】
リンス液バルブ47が開かれると、リンス液配管39からリンス液ノズル38に供給されたリンス液が、リンス液ノズル38から下方に吐出される。リンス液バルブ47が閉じられると、リンス液ノズル38からのリンス液の吐出が停止される。
【0078】
処理ユニット21はノズル移動装置41を含む。ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38から吐出されたリンス液が上面Wuに着液する処理位置と、リンス液ノズル38がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間でリンス液ノズル38を移動させる。
【0079】
処理ユニット21はガード機構7を含む。ガード機構7は、保持状態にある基板Wよりも外方(基板回転軸A1から離れる方向)に位置し、処理液およびリンス液が基板Wから飛散する範囲を限定する。ガード機構7は、外壁70と、ガード71,72,73,74と、カップ75,76,77,78と、ガード昇降装置55とを含む。
【0080】
外壁70は筒状であって、スピンチャック5と、ガード71,72,73,74と、カップ75,76,77,78とを取り囲む。
【0081】
ガード71はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁71sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板71tとを含む。上板71tの外周は側壁71sの上端と連結される。ガード72はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁72sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板72tとを含む。上板72tの外周は側壁72sの上端と連結される。ガード73はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁73sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板73tとを含む。上板73tの外周は側壁73sの上端と連結される。ガード74はスピンチャック5を取り囲む円筒状の側壁74sと、基板Wよりも内径が大きな円環状の上板74tとを含む。上板74tの外周は側壁74sの上端と連結される。側壁71s,72s,73s,74sは基板回転軸A1のまわりで同軸的に位置する。
【0082】
カップ75は、側壁72sの下方端において側壁72sに対して外周側に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。カップ76は、側壁73sの下方端において側壁73sに対して外周側に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。カップ77は、側壁74sの下方端において側壁74sに対して外周側に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。カップ78は側壁74sとスピンチャック5との間に設けられ、上方に開口する環状の溝を有する。
【0083】
上板71tはガード72およびカップ75よりも上方に位置する。側壁71sはガード72およびカップ75よりも外方に位置する。上板72tはガード73およびカップ76よりも上方に位置する。側壁72sはガード73よりも外方に位置する。側壁72sの下端はカップ76もしくはその外周端の鉛直上方に位置する。上板73tはガード74およびカップ77よりも上方に位置する。側壁73sはガード74よりも外方に位置する。側壁73sの下端はカップ77もしくはその外周端の鉛直上方に位置する。上板74tはカップ78よりも上方に位置する。側壁74sはカップ78よりも外方に位置する。
【0084】
ガード71,72,73,74は、ガード昇降装置55の制御により駆動され、独立して昇降する。カップ75,76,77は、それぞれガード72,73,74の昇降に付随して昇降する。
【0085】
ガード昇降装置55は、上板71tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板71tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード71を昇降させ、上位置と下位置においてガード71の位置を維持する機能を有する。ガード昇降装置55は、上板72tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板72tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード72を昇降させ、上位置と下位置においてガード72の位置を維持する機能を有する。ガード昇降装置55は、上板73tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板73tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード73を昇降させ、上位置と下位置においてガード73の位置を維持する機能を有する。ガード昇降装置55は、上板74tが基板Wより上方に位置する上位置と、上板74tが基板Wより下方に位置する下位置との間でガード74を昇降させ、上位置と下位置においてガード74の位置を維持する機能を有する。
【0086】
ガード74がその下位置に位置するときに、ガード73はその下位置に位置することができる。ガード73,74のいずれもがそれぞれの下位置に位置するときに、ガード72はその下位置に位置することができる。ガード72,73,74のいずれもがそれぞれの下位置に位置するときに、ガード71はその下位置に位置することができる。
【0087】
ガード71がその上位置に位置するときに、ガード72はその上位置に位置することができる。ガード71,72のいずれもがその上位置に位置するときに、ガード73はその上位置に位置することができる。ガード71,72,73のいずれもがそれぞれの上位置に位置するときに、ガード74はその上位置に位置することができる。
【0088】
基板Wの上面Wuに供給された処理液は、その処理液の種類に応じたガードによって受け止められる。処理液ノズル341から処理液HFNが供給される場合、例えば、ガード71,72がそれぞれの上位置に位置し、ガード73,74がそれぞれの下位置に位置する(
図6も参照)。なお、
図6の例では、処理液ノズル341から吐出された処理液HFNを、処理液ノズル341の直下に付記した矢印で模式的に示している。
【0089】
基板Wの上面Wuの周縁から飛散する処理液HFNはガード72の側壁72sによって受け止められ、続けてその直下のカップ76によって受け止められる。カップ76内の処理液HFNは後述のように貯留槽261に回収される。
【0090】
カップ76の底は回収配管266を介して貯留槽261に接続されている。具体的には、カップ76の底部には排液孔が形成され、回収配管266の上流端が当該排液孔に接続される。カップ76内の処理液HFNは当該排液孔を通じて回収配管266の上流端に流入する。回収配管266の下流端は貯留槽261に接続される。
【0091】
回収配管266には回収機構263が介挿される。回収機構263は例えば回収バルブを含み、さらに回収ポンプを含んでいてもよい。回収バルブが開いているときに、カップ76に流入した処理液HFNは回収配管266および回収機構263を通じて貯留槽261に回収される。なお、
図6の例では、センサ271が設けられているものの、これについては後述する。
【0092】
このような構成において、ガード機構7(特にガード72およびカップ76)、回収配管266および回収機構263は、処理液を貯留槽261に回収する処理液回収機構91を構成する。
【0093】
処理液ノズル342から処理液HNAが供給される場合には、例えば、ガード71~73がそれぞれの上位置に位置し、ガード74がその下位置に位置する(
図7も参照)。なお、
図7の例では、処理液ノズル342から吐出された処理液HNAを、処理液ノズル342の直下に付記した矢印で模式的に示している。
【0094】
基板Wの上面Wuの周縁から飛散する処理液HNAはガード73の側壁73sによって受け止められ、続けてその直下のカップ77によって受け止められる。カップ77内の処理液HNAは後述のように貯留槽262に回収される。
【0095】
カップ77の底は回収配管267を介して貯留槽262に接続されている。具体的には、カップ77の底部には排液孔が形成され、回収配管267の上流端が当該排液孔に接続される。カップ77内の処理液HNAは当該排液孔を通じて回収配管267の上流端に流入する。回収配管267の下流端は貯留槽262に接続される。
【0096】
回収配管267には回収機構264が介挿される。回収機構264は例えば回収バルブを含み、さらに回収ポンプを含んでいてもよい。回収バルブが開いているときに、カップ77に流入した処理液HNAは回収配管267および回収機構264を通じて貯留槽262に回収される。なお、
図7の例では、センサ272が設けられているものの、これについては後述する。
【0097】
このような構成において、ガード機構7(特にガード73およびカップ77)、回収配管267および回収機構264は、処理液を貯留槽262に回収する処理液回収機構92を構成する。
【0098】
<1-5.液交換部>
図6には、液交換部28の液交換ユニット281の一例が概略的に示されている。液交換ユニット281は貯留槽261内の処理液HFNを新しい処理液HFNに交換することができ、液排出部D1と液供給部F1とを含んでいる。液排出部D1は排液配管2811と排液バルブ2812とを含む。排液配管2811の上流端は貯留槽261の例えば底部に接続される。排液バルブ2812は排液配管2811に介挿されている。排液バルブ2812が開くことにより、貯留槽261内の処理液HFNは排液配管2811および排液バルブ2812を通じて外部に排出される。排液バルブ2812が閉じることにより、貯留槽261は処理液HFNを貯留することができる。排液配管2811にはポンプが介挿され得る。
【0099】
液供給部F1は新液配管2813と新液バルブ2814とを含む。新液配管2813は新しい処理液HFNを供給するための配管であり、その上流端は処理液HFNの供給源(不図示)に接続され、その下流端は貯留槽261に接続される。新液バルブ2814は新液配管2813に介挿されている。新液バルブ2814が開くことにより、新しい処理液HFNが新液配管2813および新液バルブ2814を通じて貯留槽261の内部に供給される。新液バルブ2814が閉じることにより、新しい処理液HFNの供給が停止する。新液配管2813にはポンプが介挿され得る。
【0100】
処理液HFNはフッ酸および硝酸の混合液であるので、液供給部F1はフッ酸および硝酸を個別に貯留槽261の内部に供給してもよい。また、液供給部F1は濃度調整用としての純水も個別に貯留槽261の内部に供給してもよい。この場合、フッ酸、硝酸および純水用に3つの新液配管2813が設けられ、各新液配管2813に新液バルブ2814およびポンプが介挿される。
【0101】
液交換ユニット281は排液バルブ2812を開いて貯留槽261内の処理液HFNのほぼ全てを排出した後に、排液バルブ2812を閉じて新液バルブ2814を開くことにより、新しい処理液HFNを貯留槽261の内部に供給する。これにより、液交換ユニット281は貯留槽261内の処理液HFNを新しい処理液HFNに交換することができる。
【0102】
図7には、液交換部28の液交換ユニット282の一例が概略的に示されている。液交換ユニット282は貯留槽262内の処理液HNAを新しい処理液HNAに交換することができ、液供給部F2と液排出部D2とを含む。液排出部D2は排液配管2821と排液バルブ2822とを含む。排液配管2821の上流端は貯留槽262の例えば底部に接続されている。排液バルブ2822は排液配管2821に介挿されている。排液バルブ2822が開くことにより、貯留槽262内の処理液HNAは排液配管2821および排液バルブ2822を通じて外部に排出される。排液バルブ2822が閉じることにより、貯留槽262は処理液HNAを貯留することができる。排液配管2821にはポンプが介挿され得る。
【0103】
液供給部F2は新液配管2823と新液バルブ2824とを含む。新液配管2823は新しい処理液HNAを供給するための配管であり、その上流端は処理液HNAの供給源(不図示)に接続され、その下流端は貯留槽262に接続される。新液バルブ2824は新液配管2823に介挿されている。新液バルブ2824が開くことにより、新しい処理液HNAが新液配管2823および新液バルブ2824を通じて貯留槽262の内部に供給される。新液バルブ2824が閉じることにより、新しい処理液HNAの供給が停止する。新液配管2823にはポンプが介挿され得る。
【0104】
処理液HNAはフッ酸、硝酸および酢酸の混合液であるので、液供給部F2はフッ酸、硝酸および硝酸を個別に貯留槽262の内部に供給してもよい。また、液供給部F2は濃度調整用としての純水も個別に貯留槽262の内部に供給してもよい。この場合、フッ酸、硝酸、酢酸および純水用に4つの新液配管2823が設けられ、各新液配管2823に新液バルブ2824およびポンプが介挿される。
【0105】
液交換ユニット282は排液バルブ2822を開いて貯留槽262内の処理液HNAのほぼ全てを排出した後に、排液バルブ2822を閉じて新液バルブ2824を開くことにより、新しい処理液HNAを貯留槽262の内部に供給する。これにより、液交換ユニット282は貯留槽262内の処理液HNAを新しい処理液HNAに交換することができる。
【0106】
<1-6.本体制御ユニット、液管理制御ユニット>
図8は、本体制御ユニット22の電気的な構成の一例を示すブロック図である。本体制御ユニット22は、例えば、コンピュータで実現され、バスラインBu2を介して接続された、通信部221、入力部222、出力部223、記憶部224、制御部225およびドライブ226を備える。
【0107】
通信部221は、例えば、通信回線50を介してホストコンピュータ10に対して信号を送信可能な送信部としての機能を有する。通信部221は、例えば、通信回線50を介してホストコンピュータ10からの信号を受信可能な受信部としての機能を有する。通信部221は、例えばさらに、ケーブルなどの配線を介して、液管理制御ユニット24との間で信号の送受信を行うことができる。
【0108】
入力部222には、例えば、基板処理装置20を使用するユーザの動作などに応じた信号が入力され得る。入力部222には、例えば、上記入力部102と同様に、操作部、マイクおよび各種センサなどが含まれ得る。
【0109】
出力部223は、例えば、各種情報を出力することができる。出力部223には、例えば、上記出力部103と同様に、表示部およびスピーカなどが含まれ得る。
【0110】
記憶部224は、例えば、各種情報を記憶することができる。この記憶部224は、例えば、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され得る。記憶部224には、例えば、プログラムPg2および各種情報Dt2が記憶され得る。記憶部224には、後述するメモリ225bが含まれてもよい。
【0111】
制御部225は、例えば、プロセッサとして働く演算処理部225aおよび情報を一時的に記憶するメモリ225bなどを含む。演算処理部225aには、例えば、CPUが採用される。メモリ225bには、例えば、RAMが採用される。演算処理部225aにおいて、例えば、記憶部224に記憶されているプログラムPg2が読み込まれて実行されることで、本体制御ユニット22の機能が実現される。制御部225における各種の情報処理によって一時的に得られる各種情報は、例えば適宜にメモリ225bに記憶される。
【0112】
ドライブ226は、例えば、可搬性の記憶媒体RM2の脱着される部分である。ドライブ226では、例えば、記憶媒体RM2が装着されている状態で、この記憶媒体RM2と制御部225との間におけるデータの授受が行われ得る。例えば、プログラムPg2が記憶された記憶媒体RM2がドライブ226に装着されることで、記憶媒体RM2から記憶部224内にプログラムPg2が読み込まれて記憶される。
【0113】
図9は、液管理制御ユニット24の電気的な構成の一例を示すブロック図である。液管理制御ユニット24は、例えば、上述した本体制御ユニット22と同様に、コンピュータなどで実現され、バスラインBu3を介して接続された、通信部241、入力部242、出力部243、記憶部244、制御部245およびドライブ246を備える。
【0114】
通信部241は、例えば、ケーブルなどの配線を介して、本体制御ユニット22との間で信号の送受信を行うことができる。
【0115】
入力部242には、例えば、基板処理装置20を使用するユーザの動作などに応じた信号が入力され得る。入力部242には、例えば、上記入力部102と同様に、操作部、マイクおよび各種センサなどが含まれ得る。
【0116】
出力部243は、例えば、各種情報を出力することができる。出力部243には、例えば、上記出力部103と同様に、表示部およびスピーカなどが含まれ得る。
【0117】
記憶部244は、例えば、各種情報を記憶することができる。この記憶部244は、例えば、上記記憶部224と同様に、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され得る。記憶部244には、例えば、プログラムPg3および各種情報Dt3が記憶され得る。記憶部244には、後述するメモリ245bが含まれてもよい。
【0118】
制御部245は、例えば、プロセッサとして働く演算処理部245aおよび情報を一時的に記憶するメモリ245bなどを含む。演算処理部245aには、例えば、CPUが適用される。メモリ245bには、例えば、RAMが適用される。演算処理部245aにおいて、例えば、記憶部244に記憶されているプログラムPg3が読み込まれて実行されることで、液管理制御ユニット24の機能が実現される。制御部245における各種情報処理によって一時的に得られる各種情報は、例えば適宜にメモリ245bに記憶される。
【0119】
ドライブ246は、例えば、可搬性の記憶媒体RM3の脱着が可能な部分である。ドライブ246では、例えば、記憶媒体RM3が装着されている状態で、この記憶媒体RM3と制御部245との間におけるデータの授受が行われ得る。例えば、プログラムPg3が記憶された記憶媒体RM3がドライブ246に装着されることで、記憶媒体RM3から記憶部244内にプログラムPg3が読み込まれて記憶される。
【0120】
<1-7.薬液処理>
次に、製品用の基板Wに対する薬液処理(エッチング処理)について述べる。まず、センターロボット82から未処理の基板Wが処理ユニット21に搬入され、スピンチャック5によって保持される。基板Wの上面Wuにはシリコン層が形成されている。スピンチャック5は基板Wを保持した状態で基板回転軸A1のまわりで基板Wを回転させる。ガード昇降装置55はガード機構7に、例えば処理液HFN用の位置をとらせる。具体的には、ガード昇降装置55はガード71,72をそれぞれの上位置に移動させ、ガード73,74をそれぞれの下位置で停止したままとする。次に、ノズル移動装置37が処理液ノズル341,342を処理位置に移動させた上で、例えば、処理液バルブ361が開くことにより、処理液ノズル341から基板Wの上面Wuに処理液HFNを吐出する。
【0121】
基板Wの上面Wuに着液した処理液HFNは、回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面Wuを広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。基板Wの周縁から飛散した処理液HFNはガード機構7および回収配管266を通じて貯留槽261に回収される。
【0122】
処理液HFNは基板Wの上面Wuに形成されたシリコン層とともに次の2つの化学反応を生じさせ、エッチング対象となるシリコン層が除去される。
【0123】
3Si+4HNO3⇔3SiO2+4NO+2H2O ・・・(1)
SiO2+6HF⇔H2SiF6+2H2O ・・・(2)
式(1)は、シリコン(Si)と硝酸(HNO3)との酸化反応を示しており、当該酸化反応によりシリコン酸化膜(SiO2)が形成される。式(2)は、式(1)で生じたシリコン酸化膜とフッ酸(HF)との溶解反応を示しており、当該溶解反応によりシリコン酸化膜が除去される。つまり、シリコン層は硝酸により酸化されて、一旦、シリコン酸化膜という中間生成膜となり、この中間生成膜がフッ酸により溶解されることで、除去される。
【0124】
さらに酸化反応をより詳細に確認すると、式(1)の酸化反応と並行して以下の反応も行われている。
【0125】
H++NO3
-+2NO+2H2O⇔3HNO2 ・・・(3)
Si+4HNO2⇔SiO2+4NO+2H2O ・・・(4)
つまり、式(1)の酸化反応によって生じた一酸化窒素(NO)と硝酸とが反応し、亜硝酸(HNO2)を生成し(式(3))、当該亜硝酸がシリコンに作用して、シリコンを酸化させる(式(4))。亜硝酸は硝酸よりも酸化力が強いので、式(4)の酸化反応により、速やかにシリコン層を酸化することができる。そして、フッ酸により、そのシリコン酸化膜を速やかに除去することができる。
【0126】
また、例えば一酸化窒素が処理液HFN中の酸素成分と反応すること等により、二酸化窒素(NO2)も生じ得る。処理液HFNに溶解された二酸化窒素もエッチング速度の向上に資することが知られている。以下、一酸化窒素および二酸化窒素を総称して、窒素酸化物(NOx)とも呼ぶ。
【0127】
処理液HFNとシリコンとの反応で生じた窒素酸化物の一部はエッチング反応に用いられ、残りの一部は処理液HFNに溶解したまま貯留槽261に回収される。よって、貯留槽261内の処理液HFNには窒素酸化物が溶解している。貯留槽261内の処理液HFNに窒素酸化物が溶解しているので、この処理液HFNを用いたエッチング処理では、高いエッチング速度で安定してシリコン層をエッチングすることができる。
【0128】
処理液HNAにおいても硝酸とフッ酸とが用いられている。よって、処理液HNAを基板Wの上面Wuに供給すると、上記の反応が発生する。よって、処理液HNAを用いてもシリコン層をエッチングすることができる。
【0129】
処理液HNAとシリコンとの反応で生じた窒素酸化物の一部もエッチング反応に用いられ、残りの一部は処理液HNAに溶解したまま貯留槽262に回収される。よって、貯留槽262内の処理液HNAには窒素酸化物が溶解している。貯留槽262内の処理液HNAに窒素酸化物が溶解しているので、この処理液HNAを用いたエッチング処理では、高いエッチング速度で安定してシリコン層をエッチングすることができる。
【0130】
ただし、処理液HFN,HNAによるエッチング速度は互いに相違する。より具体的には、処理液HFNによるエッチング速度は処理液HNAによるエッチング速度の数倍以上である。
【0131】
基板Wに対する処理において、処理ユニット21は処理液HFNのみを基板Wの上面Wuに供給してもよいし、処理液HNAのみを基板Wの上面Wuに供給してもよい。いずれの処理液によっても基板Wのシリコン層をエッチングすることが可能である。処理液HFNのみを基板Wの上面Wuに供給する場合には、基板処理装置20には、処理液HNAに関する諸構成が設けられなくても構わない。処理液HNAのみを基板Wの上面Wuに供給する場合には、基板処理装置20には、処理液HFNに関する諸構成が設けられなくても構わない。
【0132】
その一方で、基板Wに対する処理において、例えば処理液HFN、リンス液および処理液HNAをこの順で基板Wの上面Wuに供給してもよい。これによれば、初期的には高いエッチング速度でシリコン層をエッチングし、エッチング終了間際では低いエッチング速度でシリコン層をエッチングすることができ、エッチング量の制御を行いやすい。
【0133】
基板Wに対する薬液処理の終了後には、必要に応じて、リンス液ノズル38からリンス液が基板Wの上面Wuに供給され、その後、基板Wを乾燥する乾燥処理が行われる。
【0134】
<2.処理液の交換>
貯留槽261に貯留された処理液HFNの状態は時間の経過とともに変化する。例えば基板Wの処理に供された処理液HFNを貯留槽261に回収することにより、貯留槽261内の処理液HFNは徐々に劣化する。なぜなら、基板Wの処理に供された処理液には、例えば、基板Wのシリコンとの反応で生成した副生成物、および、基板Wに付着した不純物の少なくともいずれか一方が含まれ、これらも貯留槽261に回収されるからである。貯留槽262に貯留された処理液HNAの状態も同様に時間の経過とともに変化する。
【0135】
処理液HFNの劣化の程度が大きくなると、貯留槽261内の処理液HFNを新しい処理液HFNに交換することが望まれる。同様に、処理液HNAの劣化の程度が大きくなると、貯留槽262内の処理液HNAを新しい処理液HNAに交換することが望まれる。
【0136】
図10は、処理液の交換処理に関する基板処理装置20の動作の一例を示すフローチャートである。
図10の一連の処理は、例えば、ロードポートLP1~LP4に搬入された基板群(キャリアC内の複数枚の基板W)に対する基板処理装置20の連続処理と並行して実行される。
【0137】
<2-1.処理液の交換要否>
以下では、主として、貯留槽261内の処理液HFNに対する交換処理について説明する。
【0138】
本体制御ユニット22は貯留槽261内の処理液HFNの交換要否を判断する(ステップS1:判断工程)。具体的には、本体制御ユニット22は、処理液HFNの状態と相関する後述のライフ値を取得し、当該ライフ値と、処理液HFNの寿命に関する後述の寿命ルールとに基づいて、処理液HFNの交換要否を判断する。具体的には、本体制御ユニット22はライフ値が、寿命ルールで規定された寿命条件を満足するか否かを判断し、ライフ値が寿命条件を満足するときに、処理液HFNの交換が必要であると判断する。
【0139】
処理液HFNは時間の経過とともに劣化すると考えられるので、ライフ値としては、処理液HFNの使用開始時からの経過時間を採用することができる。処理液HFNの使用開始時としては、例えば、処理液HFNを液貯留部26に貯留した時刻が採用される。使用開始時は、例えば、本体制御ユニット22の時刻機能と、液交換部28の制御タイミングとに基づいて取得され得る。使用開始時からの経過時間は、例えば、単純に時間が経過した時間であればよい。経過時間は、例えば、本体制御ユニット22の時刻機能と使用開始時の時刻情報とによって取得され得る。
【0140】
ライフ値として経過時間を採用したときの寿命条件としては、例えば、経過時間が基準時間以上である、という条件を採用することができる。基準時間は例えば予め設定されて記憶部224に記憶されていてもよい。基準時間は処理液の種類ごとに相違していてもよい。つまり、基準時間は処理液HFNと処理液HNAとの間で相違していてもよい。
【0141】
また、処理液HFNは基板Wの処理枚数の増加に応じて劣化するとも考えられるので、ライフ値として基板Wの処理枚数を採用してもよい。言い換えれば、ライフ値として処理液HFNの使用回数を採用してもよい。基板Wの処理枚数は、例えば、基板Wが処理ユニット21に搬入されるたびに、処理枚数を示すパラメータ(ライフ値)に1を加算することで、測定される。
【0142】
ライフ値として処理枚数を採用したときの寿命条件としては、例えば、処理枚数が基準枚数以上である、という条件を採用できる。基準枚数は例えば予め設定されて記憶部224に記憶されていてもよい。基準枚数は処理液の種類ごとに相違していてもよい。つまり、基準枚数は処理液HFNと処理液HNAとの間で相違していてもよい。
【0143】
なお、ライフ値および寿命条件は上記に限らず任意に設定すればよい。例えば、ライフ値としては、処理液HFNの使用開始時からの使用時間、処理液HFNの濃度、または、pHを採用してもよい。使用時間とは、例えば、処理ユニット21で処理液HFNを用いて基板Wに処理を施した時間の累積である。処理液HFNの濃度またはpHはセンサ27によって測定される。寿命ルールの寿命条件はライフ値に応じて設定される。例えば、寿命条件としては、使用時間が基準使用時間以上であるという条件、濃度が基準濃度範囲外であるという条件、または、pHが基準範囲外であるという条件を採用できる。寿命条件は処理液の種類に応じて相違していてもよく、ユーザが予め任意に設定してもよい。
【0144】
<2-2.処理液の交換処理>
本体制御ユニット22は、ライフ値が寿命条件を満足していないときに、ステップS1を再び実行する。つまり、ライフ値が寿命条件を満足していないので、処理液の交換は不要であると判断し、本体制御ユニット22はステップS1を繰り返す。
【0145】
一方で、本体制御ユニット22は、ライフ値が寿命条件を満足しているときには、基板処理装置20についての処理計画情報PP1を変更する(ステップS2)。例えば、基板処理装置20が基板Wを処理している最中にライフ値が寿命条件を満足すると、本体制御ユニット22は当該基板Wの処理の終了を待って処理液HFNの液交換処理を実行するように、処理計画情報PP1を変更する。
【0146】
本体制御ユニット22は変更後の処理計画情報PP1に基づいて、当該基板Wの処理の終了に応答して、次の基板Wの処理を中断し、処理液HFNの液交換処理を行う(ステップS3:交換工程)。
【0147】
これによれば、本体制御ユニット22は、ライフ値が寿命条件を満足した時点で実行中の処理を中断することなく継続することができ、当該基板Wの処理を適切に終了させることができる。そして、本体制御ユニット22は当該基板Wの処理の終了に応答して、処理液HFNの液交換処理を行うので、比較的速やかに処理液HFNについての液交換処理を行うことができる。
【0148】
ところで、ここでは、基板処理装置20は基板群を一単位とし、単位ごとに基板Wを処理する。例えば基板群は、キャリアCに含まれる複数枚の基板Wであってもよい。基板処理装置20は第1基板群内の基板Wを連続的に処理し、当該第1基板群の基板Wの全てを処理すると、続けて次の第2基板群内の基板Wを連続的に処理する。各基板群内の基板Wの処理中にライフ値が寿命条件を満足したときには、本体制御ユニット22は、処理中の基板群に対する処理の終了を待って処理液の液交換処理を実行するように、処理計画情報PP1を変更してもよい(ステップS2)。
【0149】
これによれば、本体制御ユニット22は基板群に対する実行中の処理を中断することなく継続することができ、基板群に対する処理を適切に終了させることができる。そして、本体制御ユニット22は、当該基板群に対する処理の終了に応答して、次回以降の基板群の処理を中断し、処理液HFNについての液交換処理を行う。
【0150】
基板Wの処理の終了から次の基板Wの処理までに液交換処理を実行するのか、基板群の処理の終了から次の基板群の処理までに液交換処理を実行するのかは、例えば、ユーザによって設定され得る。
【0151】
本体制御ユニット22は液管理制御ユニット24に処理液の交換を指示する。液管理制御ユニット24は本体制御ユニット22からの指示に応答して液交換部28を制御して、交換対象となる処理液HFNを交換する。
【0152】
具体的には、液管理制御ユニット24は、交換対象の処理液HFNを貯留する貯留槽261に接続された排液配管2811の排液バルブ2812を開く。これにより、貯留槽261内の処理液HFNは時間の経過とともに減り、いずれ貯留槽261はほぼ空となる。貯留槽261のセンサ27が処理液HFNの貯留量を検出できる場合には、液管理制御ユニット24は、例えばセンサ27によって検出された貯留量がほぼゼロとなったときに、排液バルブ2812を閉じる。
【0153】
次に、液管理制御ユニット24は、貯留槽261に接続された新液配管2813の新液バルブ2814を開いて、貯留槽261の内部に新たな処理液HFNを供給する。これにより、未だほとんど劣化していない新しい処理液HFNが貯留槽261に貯留される。液管理制御ユニット24は、例えばセンサ27によって検出された処理液HFNの貯留量が基準貯留量以上となったときに、新液バルブ2814を閉じる。
【0154】
以上のようにして、貯留槽261内の処理液HFNに対する液交換処理が行われる。
【0155】
貯留槽261内に貯留された新しい処理液HFNはほとんど劣化していない一方で、その処理液HFNには窒素酸化物があまり溶解していない。よって、交換直後では貯留槽261内の処理液HFNによるエッチング速度は低い。したがって、このような交換直後の処理液HFNを基板Wの上面Wuに供給すると、エッチング不足が生じ得る。
【0156】
<2-3.ダミー処理>
そこで、液交換処理(ステップS3)に続いて自動的にダミー処理(ステップS4)が実行される。つまり、次の基板Wに対する処理の再開(後述のステップS5:処理工程)に先立って、ダミー処理が行われる。
【0157】
図11は、ダミー処理の一例を示すフローチャートである。まず、センターロボット82がダミー基板収容器83から一枚のダミー基板DWを取り出し、当該ダミー基板DWを処理ユニット21に搬送する(ステップS41:ダミー搬入工程)。処理ユニット21において、ダミー基板DWはスピンチャック5によって保持される。ダミー基板DWの主面(ここでは上面)にはシリコン層が形成されている。
【0158】
次に、処理ユニット21において、処理液供給機構6が処理液HFNをダミー基板DWの上面に供給し、ダミー基板DWの上面を経由した処理液HFNを処理液回収機構91によって貯留槽261に回収させる(ステップS42:ダミー工程)。以下、具体的に説明する。
【0159】
スピンチャック5がダミー基板DWを基板回転軸A1のまわりで回転させつつ、ノズル移動装置37が処理液ノズル341,342を一体で処理位置に移動させる。またガード機構7は、処理液HFNに対応した位置をとる。より具体的には、ガード昇降装置55はガード71,72をそれぞれの上位置に移動させ、ガード73,74をそれぞれの下位置で停止したままとする。また、本体制御ユニット22は回収機構263の回収バルブを開く。
【0160】
この状態で、処理液バルブ361を開くことにより、貯留槽261内の新しい処理液HFNが処理液配管351を通じて処理液ノズル341に供給され、処理液ノズル341からダミー基板DWの上面に向かって吐出される。処理液HFNは例えばダミー基板DWの上面の中央部に着液する。ダミー基板DWの上面に着液した処理液HFNは、回転に伴う遠心力を受けてダミー基板DWの上面を広がり、ダミー基板DWの周縁から外側に飛散する。処理液HFNはダミー基板DWのシリコン層と反応し、当該シリコン層をエッチングする。
【0161】
当該反応において窒素酸化物が発生する(式(1)も参照)。窒素酸化物の一部はエッチング反応に用いられ、残りの一部は処理液HFNに溶解したまま、ダミー基板DWの周縁から飛散されることになる。ダミー基板DWの周縁から飛散した処理液HFNはガード72の側壁72sの内周面で受け止められて落下し、カップ76に流入する(
図6参照)。カップ76に流入した処理液HFNは回収配管266および回収機構263を通じて貯留槽261に回収される。これにより、貯留槽261には、窒素酸化物を含んだ処理液HFNが回収される。よって、貯留槽261内の処理液HFNにおける窒素酸化物の量(濃度)を高めることができる。
【0162】
本体制御ユニット22は、例えば処理液HFNの供給開始から第1所定時間が経過したときに、処理液バルブ361を閉じる。これにより、ダミー基板DWへの処理液HFNの供給が停止する。第1所定時間は例えば予め設定されて記憶部224に記憶されていてもよい。第1所定時間は、例えば、貯留槽261内の処理液HFNに溶解した窒素酸化物の量が必要量となるための所要時間以上に設定される。処理液バルブ361を閉じた後において、ノズル移動装置37は処理液ノズル341,342を退避位置に一体に移動させる。
【0163】
次に、必要に応じて、ガード機構7のガード71~74をリンス液に応じた位置とした上で、ノズル移動装置41がリンス液ノズル38を処理位置に移動させ、リンス液ノズル38からリンス液をダミー基板DWの上面に供給する。これにより、ダミー基板DWの上面の処理液HFNを洗い流すことができる。次に、リンス液の供給を停止した上で、ダミー基板DWを乾燥させる。例えばスピンチャック5はダミー基板DWの回転速度を高めてダミー基板DWを乾燥させる(いわゆるスピンドライ)。ノズル移動装置41はリンス液ノズル38をその退避位置に移動させる。
【0164】
次に、ガード昇降装置55がガード71~74をそれぞれの下位置に移動させた上で、センターロボット82が処理ユニット21からダミー基板DWを搬出し、当該ダミー基板DWをダミー基板収容器23に搬送する(ステップS43:ダミー搬出工程)。
【0165】
以上のように、ダミー処理によって、貯留槽261内の処理液HFNに含まれた窒素酸化物の量(濃度)が高まる。よって、ダミー処理後の貯留槽261内の処理液HFNを用いることにより、初期から高いエッチング速度で基板Wのシリコン層を安定してエッチングすることができる。
【0166】
<2-4.基板に対する処理>
そこで、基板処理装置20は、ダミー処理(ステップS4)の後に自動的に次の基板Wからの処理を再開する(ステップS6:処理工程)。この基板処理(ステップS6)では、インデクサロボット81およびセンターロボット82が協働して、キャリアC内の製品用の基板Wを処理ユニット21に搬送し、処理ユニット21において、処理液供給機構6が交換後の処理液HFNを基板Wの上面Wuに供給する。これにより、基板Wのシリコン層を高いエッチング速度で安定してエッチングすることができる。
【0167】
<3.作用効果>
以上のように、本体制御ユニット22は処理液の交換要否を判断し(ステップS1)、処理液の交換が必要と判断したときに、自動的に処理液の液交換処理(ステップS3)が実行される。言い換えれば、ユーザの入力部102,222,242への操作なしに、液交換処理が行われる。よって、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【0168】
そして、処理液の液交換処理後には、自動的にダミー処理が行われる(ステップS4)。言い換えれば、ユーザの入力部102,222,242への操作なしに、ダミー処理が行われる。本実施の形態では、据え付け型のダミー基板収容器23が設けられているので、常にダミー基板DWをダミー基板収容器23から取り出し可能である。よって、どのタイミングで処理液の交換が必要と判断されても、自動的にダミー処理を行うことができる。したがって、ユーザにとっての利便性をさらに向上させることができる。
【0169】
そして、ダミー処理が行われることにより、交換後の貯留槽261内の処理液HFNにおける窒素酸化物の濃度を高めることができる。よって、処理液HFNによるエッチング速度を高めることができる。したがって、ダミー処理に続く基板Wに対する処理(ステップS6)において、その初期から高いエッチング速度で基板Wのシリコン層を安定してエッチングすることができる。
【0170】
上述の例では、主として処理液HFNの交換について述べたものの、処理液HNAについても同様である。
【0171】
<4.ダミー処理におけるパドル処理>
図12は、ダミー工程の一例を示すフローチャートである。ダミー工程(ステップS42)は、パドル処理(ステップS423)を含んでいてもよい。以下に、具体的に説明する。ダミー工程において、まず、スピンチャック5が基板回転軸A1のまわりでダミー基板DWを回転させる(ステップS421)。また、ガード昇降装置55はガード機構7に処理液HFNに応じた位置をとらせる。次に、ノズル移動装置37が処理液ノズル341,342を処理位置に移動させ、処理液ノズル341が処理液HFNをダミー基板DWの上面に吐出する(ステップS422)。これにより、処理液HFNはダミー基板DWの上面を広がってダミー基板DWの周縁から飛散する。
【0172】
次にパドル処理(ステップS423:パドル工程)が行われる。パドル処理とは、ダミー基板DWの上面に処理液の液膜を維持する処理をいう。具体的には、スピンチャック5がダミー基板DWの回転速度を減速させ、処理液バルブ361が閉じて処理液ノズル341からの処理液HFNの吐出を停止させる。これにより、処理液HFNの液膜がダミー基板DWの上面で保持される。言い換えれば、スピンチャック5はダミー基板DWの回転速度を、処理液HFNの液膜がダミー基板DWの上面で保持される程度の回転速度以下とする。パドル工程において、スピンチャック5はダミー基板DWの回転速度をゼロに減速させてもよい。言い換えれば、スピンチャック5はダミー基板DWの回転を停止してもよい。パドル工程においては、ダミー基板DWの周縁から流れ落ちる処理液HFNはごくわずかであり、理想的には流れ落ちない。
【0173】
処理液HFNの液膜がダミー基板DWの上面で保持された状態で、処理液HFNとシリコン層と反応が進むので、より多くの窒素酸化物を処理液HFNに溶解させることができる。つまり、ダミー基板DWの上面の上の処理液HFNにおける窒素酸化物の濃度をより高めることができる。
【0174】
そして、例えばパドル処理の開始から第2所定時間が経過すると、スピンチャック5は再び基板Wの回転速度を高める(ステップS424)。第2所定時間は例えば予め設定されて記憶部224に記憶されていてもよい。第2所定時間は、例えば、基板Wの上面の処理液HFNにおける窒素酸化物の濃度が必要量となる所要時間以上に設定される。スピンチャック5の回転により、ダミー基板DWの上面に保持された処理液HFNはダミー基板DWの周縁から飛散し、貯留槽261に回収される。
【0175】
ダミー工程の後には、必要に応じて、リンス処理および乾燥処理が行われる。
【0176】
これによれば、ステップS424において、窒素酸化物の濃度が高い処理液HFNが貯留槽261に回収される。また、パドル処理(ステップS423)では、処理液HFNの吐出を停止し、ダミー基板DWの回転速度を減速させるので、ダミー工程で要する消費電力を低減させることができる。つまり、より効率的に貯留槽261内の処理液HFNの窒素酸化物の濃度を高めることができる。
【0177】
上述の例では、主として処理液HFNの交換について述べたものの、処理液HNAについても同様である。
【0178】
<5.処理液HNAの交換>
上述の例では、貯留槽261内の処理液HFNを交換したときには、ダミー工程において、貯留槽261内の新しい処理液HFNをダミー基板DWに供給し、ダミー基板DWの主面を経由した処理液HFNを貯留槽261に回収した。同様に、貯留槽262内の処理液HNAを交換したときには、ダミー工程において、貯留槽262内の新しい処理液HFNをダミー基板DWに供給し、ダミー基板DWの主面を経由した処理液HNAを貯留槽261に回収する。つまり、交換対象となる処理液を第1処理液と呼び、ダミー工程においてダミー基板DWの主面に供給される処理液を第2処理液と呼ぶと、上述の例では、第2処理液は、貯留槽に貯留された交換後の第1処理液である。これによれば、複数種類の処理液を必要とせずに、貯留槽内の第1処理液における窒素酸化物の量(濃度)を高めることができる。しかしながら、本実施の形態は必ずしもこれに限らない。
【0179】
交換対象となる第1処理液が処理液HNAである場合には、ダミー工程において供給される第2処理液として、処理液HFNを採用してもよい。
図13は、ダミー工程における基板処理装置20の様子の一例を概略的に示す図である。
図13の例では、処理液ノズル341から吐出された処理液HFNを、処理液ノズル341の直下に付記した矢印で模式的に示している。
【0180】
また、
図13に示すように、ダミー工程において、ガード機構7は処理液HNAに対応した位置をとる。つまり、ガード昇降装置55はガード71~73をそれぞれの上位置に移動させ、ガード74をその下位置のままとする。
【0181】
これによれば、ダミー工程において、ダミー基板DWの上面を経由した処理液HFNはガード73の側壁73sで受け止められ、カップ77、回収配管267および回収機構264を介して、処理液HNAが貯留された貯留槽262に回収される。つまり、ダミー基板DWのシリコンとの反応により生じた窒素酸化物を含んだ処理液HFNが、処理液HNAを貯留する貯留槽262に回収される。
【0182】
したがって、このようなダミー工程においても、貯留槽262内の処理液HNAにおける窒素酸化物の量(濃度)を高めることができる。しかも、処理液HFNによるエッチング速度は処理液HNAによるエッチング速度よりも高いので、処理液HFNがダミー基板DWの上面に供給されたときに単位時間あたりに生じる窒素酸化物は、処理液HNAがダミー基板DWの上面に供給されたときに生じる窒素酸化物よりも多い。よって、より短時間でより多くの窒素酸化物を、貯留槽262の内部に供給することができる。したがって、より短時間でダミー工程を行うことできる。つまり、基板処理装置20のスループットを向上させることができる。
【0183】
<6.センサ>
図6および
図7の例では、センサ271,272が設けられている。センサ271は、貯留槽261に回収される処理液における窒素酸化物(例えば一酸化窒素または二酸化窒素)の量(濃度)を検出する溶存成分マイクロセンサであり、センサ272は貯留槽262に回収される処理液における窒素酸化物の量(濃度)を検出する溶存成分マイクロセンサである。センサ271は例えば回収配管266に設けられ、センサ272は例えば回収配管267に設けられる。センサ271,272はその検出値を示す電気信号を本体制御ユニット22に出力する。
【0184】
本体制御ユニット22は、センサ271またはセンサ272によって検出された検出値に基づいて、ダミー工程を終了させる。言い換えれば、本体制御ユニット22は当該検出値に基づいて処理液の吐出を停止させる。以下では、代表的に、ダミー工程において処理液HFNをダミー基板DWに供給し、当該処理液HFNを貯留槽261に回収する場合について述べる。
【0185】
図14は、ダミー工程の終了処理の一例を示すフローチャートである。センサ271は処理液HFNにおける窒素酸化物の量(濃度)を検出し、その検出値を本体制御ユニット22に出力する(ステップS425)。
【0186】
次に、本体制御ユニット22は、検出された窒素酸化物の積算量を算出し、当該積算量が基準量以上であるか否かを判断する(ステップS426)。窒素酸化物の積算量とは、ダミー工程の開始時点、つまり、処理液バルブ361を開いた時点から、センサ271によって検出された検出値の総和である。この積算量は、センサ271が窒素酸化物の量を検出するたびに、その検出値を積算することで算出される。基準量は例えば予め設定されて記憶部224に記憶されてもよい。当該積算量が基準量未満であるときには、再びステップS425が実行される。つまり、窒素酸化物の積算量が基準量未満であるときには、未だ十分な窒素酸化物が貯留槽261に回収されていないので、ダミー工程を続行する。
【0187】
一方で、当該積算量が基準量以上であるときには、本体制御ユニット22はダミー工程を終了させる(ステップS427)。具体的には、本体制御ユニット22は処理液バルブ361を閉じる。これにより、処理液HFNの供給が停止する。その後、必要に応じてリンス処理および乾燥処理が行われる。
【0188】
これによれば、貯留槽261内の処理液HFNにおける窒素酸化物の量(濃度)がより確実に必要量以上となったときに、ダミー工程を終了させることができる。よって、貯留槽261内の処理液HFNを用いた基板Wに対するエッチング処理を、より確実に高いエッチング速度で安定して行うことができる。
【0189】
なお、上述の例では、センサ271は回収配管266に設けられているものの、貯留槽261の内部に設けられてもよい。センサ271は貯留槽261内の処理液HFNにおける窒素酸化物の量(濃度)を検出してもよい。同様にセンサ272は貯留槽262の内部に設けられていてもよい。
【0190】
<7.変形例>
<7-1.処理液の回収についての変形>
上述の例では、ガード機構7の位置制御によって、処理液の回収先を変更した。しかしながら、必ずしもこれに限らない。
【0191】
図15は、各貯留槽261,262の周辺の配管系統の構成の他の一例を概略的に示す図である。ここでは一例として、処理液HFNおよび処理液HNAの各々はガード73の側壁73sで受け止められて、カップ77に流入するものとする。つまり、処理液HFNおよび処理液HNAの各々が供給されるときには、ガード71~73が上位置に位置し、ガード74が下位置に位置する。
【0192】
カップ77の底は、回収配管268、回収バルブ276、回収配管266をこの順に介して、貯留槽261へ連結される。カップ77の底は、回収配管268、回収バルブ277、回収配管267をこの順に介して、貯留槽262へ連結される。回収配管268には回収機構265が介挿される。
【0193】
回収バルブ277が閉じ、回収バルブ276が開くと、処理液は、カップ77および回収配管268,266をこの順に経由して、貯留槽261へ回収される。ダミー工程において処理液HFNをダミー基板DWに供給し、当該処理液HFNを貯留槽261に回収する場合には、ダミー工程において、回収バルブ277を閉じ、回収バルブ276を開く。これにより、処理液HFNを貯留槽261に回収することができる。
【0194】
回収バルブ277が開き、回収バルブ276が閉じると、処理液は、カップ77および回収配管268,267をこの順に経由して、貯留槽262へ回収される。ダミー工程において処理液HNAをダミー基板DWに供給し、当該処理液HNAを貯留槽261に回収する場合には、ダミー工程において、回収バルブ276を閉じ、回収バルブ277を開く。これにより、処理液HNAを貯留槽262に回収することができる。
【0195】
<7-2.処理液の供給についての変形>
図16は、処理液供給機構6の構成の一部の他の一例を概略的に示す図である。処理液ノズル34が処理液配管351,352の両方と接続される。処理液バルブ361は処理液配管351に介挿され、処理液バルブ362は処理液配管352に介挿される。
【0196】
処理液ノズル34には処理液バルブ361および処理液配管351を介して処理液HFNが供給され、処理液バルブ362および処理液配管352を介して処理液HNAが供給される。よって当該変形によれば、処理液ノズル34において処理液ノズル341,342のいずれの機能も果たされる。
【0197】
以上のように、基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0198】
上述の例では、スピンチャック5は真空チャックにより基板Wおよびダミー基板DWの各々を保持した。しかしながら、スピンチャック5は真空チャック以外の方式で基板Wおおよびダミー基板DWの各々を保持してもよい。
【0199】
また、上述の例では、基板処理装置20には本体制御ユニット22および液管理制御ユニット24が設けられている。しかるに、本体制御ユニット22および液管理制御ユニット24の機能を実現する単一の制御ユニットが設けられてもよい。あるいは、当該制御ユニットの機能を3以上に分割して得られる機能をそれぞれ担う3以上の制御ユニットが設けられてもよい。
【0200】
また、ダミー工程では、一枚のダミー基板DWに対して処理可能な時間の最大値が制限されている場合がある。この場合、ダミー処理では、複数枚のダミー基板DWを順次に処理ユニット21に搬入し、複数枚のダミー基板DWに対して順次にダミー工程を行ってもよい。これによれば、1回のダミー工程によって十分な窒素酸化物を貯留槽261または貯留槽262に回収できない場合であっても、十分な窒素酸化物を貯留槽261または貯留槽262に回収させることができる。
【0201】
また、ダミー工程でのパドル処理は複数回行われてもよい。これによれば、1回のパドル処理によって十分な窒素酸化物を貯留槽261または貯留槽262に回収できない場合であっても、十分な窒素酸化物を貯留槽261または貯留槽262に回収させることができる。
【0202】
また、上述の例では、ダミー処理の実行開始条件に、ユーザの操作が含まれていない。これによって利便性を向上させることができる。しかしながら、ユーザの利便性が低下してもよい場合には、必ずしもこれに限らない。処理液の交換が必要と判断したときに、本体制御ユニット22はダミー処理の実行要否を、例えば出力部223等を用いて、ユーザに問い合わせてもよい。ユーザが例えば入力部222等にダミー処理の実行要否を入力したときに、本体制御ユニット22は当該入力に応答して、ダミー処理の実行要否を判断してもよい。
【0203】
また、上述の例では、ダミー基板DWはダミー基板収容器23に収容されている。これにより、基板処理装置20の外部にダミー基板DWが存在しなくても、ダミー基板DWを用いることができ、任意のタイミングでダミー基板DWを取り出すことができる。しかしながら、例えばキャリア置き場40内にダミー基板DWが存在している場合には、必ずしもダミー基板収容器23が設けられていなくてもよい。ダミー基板DWを収容するキャリアCがキャリア置き場40からロードポートLP1~LP4のいずれかに搬送されてもよい。ただし、ロードポートLP1~LP4にキャリアCが専有されている場合など、容易にダミー基板DWをロードポートLP1~LP4に搬送できない場合もあり得る。
【符号の説明】
【0204】
5 スピンチャック
6 処理液供給機構
20 基板処理装置
21 処理ユニット
23 基板収容器(ダミー基板収容器)
261,261L,261R,262,262L,262R 貯留槽
271,272 センサ
28,28L,28R 液交換部
82 基板搬送部(センターロボット)
91,92 処理液回収機構
HFN,HNA 処理液
DW ダミー基板
W 基板