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特許7455718ポリスチレン系樹脂積層発泡板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂積層発泡板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/32 20060101AFI20240318BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240318BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240318BHJP
   G09F 15/00 20060101ALI20240318BHJP
   C08J 9/14 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
B32B5/32
B32B5/18
B32B27/30 B
G09F15/00 D
C08J9/14 CET
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020162417
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055052
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】細川 哲
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-213283(JP,A)
【文献】特開2012-006335(JP,A)
【文献】特開平01-090732(JP,A)
【文献】特開平04-191038(JP,A)
【文献】特開2004-168835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
G09F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上のポリスチレン系樹脂発泡シートが積層された積層発泡体を有するポリスチレン系樹脂積層発泡板であって、
隣接する2枚の前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを厚み方向に3等分した内の中央部分において、発泡シート押出流れ方向の平均気泡径(MD)と、発泡シート押出流れ方向と直交する方向の平均気泡径(TD)と、発泡シート厚み方向の平均気泡径(VD)とが、下記式(1)及び(2)を満足し、かつ、前記中央部分の総合平均気泡径(D)が下記式(3)で表され、
隣接する2枚の前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを厚み方向に3等分した内の外側部分において、発泡シート押出流れ方向の平均気泡径(md)と、発泡シート押出流れ方向と直交する方向の平均気泡径(td)と、発泡シート厚み方向の平均気泡径(vd)と、前記外側部分の総合平均気泡径(d)とが、下記式(4)で表され、
前記総合平均気泡径(D)に対する前記総合平均気泡径(d)の比(d/D)が、下記式(5)を満足することを特徴とする、ポリスチレン系樹脂積層発泡板。
MD/VD=0.6~1.4 ・・・(1)
TD/VD=0.6~1.4 ・・・(2)
D=(MD×TD×VD)1/3 ・・・(3)
d=(md×td×vd)1/3 ・・・(4)
d/D=0.90~1.15 ・・・(5)
【請求項2】
前記平均気泡径(md)と、前記平均気泡径(td)と、前記平均気泡径(vd)とが、下記式(6)及び(7)を満足することを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
md/vd=0.6~2.4 ・・・(6)
td/vd=0.6~2.4 ・・・(7)
【請求項3】
前記積層発泡体の見掛け密度が0.04~0.15g/cmの範囲であり、かつ前記平均気泡径(MD)、前記平均気泡径(TD)及び前記平均気泡径(VD)が10~500μmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
【請求項4】
前記積層発泡体の双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層又は表皮材が設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
【請求項5】
ディスプレイパネル用であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
【請求項6】
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを溶融混練して押出発泡させて得られた2枚以上の前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを積層して前記積層発泡体を得るポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面を加熱し、複数枚重ねて押圧して、前記積層発泡体を得ることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法。
【請求項7】
前記積層発泡体の双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層又は表皮材を積層する工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真、ポスター、広告等の印刷物を貼付する展示パネル用台紙(ディスプレイパネル)として、ポリスチレン製の発泡シートの表面に接着剤を介して紙を積層してなるポリスチレン系樹脂積層発泡板が知られている。展示パネル用台紙には、発泡シートの寸法変化により表面の紙が浮いてしまうこと(紙浮き)を抑制し、表面の平滑性(表面性)が保たれることが求められる。
【0003】
このような展示パネル用台紙として、例えば、特許文献1には、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡シートが積層され、発泡シートの中央部分の気泡の各方向における平均気泡径の比率を特定の範囲内としたポリスチレン系樹脂積層発泡板が提案されている。特許文献1の発明によれば、気泡の変形の抑制と、表面の平滑性の改善が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-6335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの接合面を加熱して融着接合しているため、被接合面の加熱が不充分であると、残留応力による反りや寸法変化が発生する場合があった。反りや寸法変化が発生すると、合紙後に紙浮きが発生し、表面の平滑性が損なわれてしまう。特に、夏場の運搬や保管時等、高温(例えば、40~60℃)環境下においては、反りや寸法変化が顕著になる。
【0006】
そこで、本発明は、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れるポリスチレン系樹脂積層発泡板及びその製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]2枚以上のポリスチレン系樹脂発泡シートが積層された積層発泡体を有するポリスチレン系樹脂積層発泡板であって、隣接する2枚の前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを厚み方向に3等分した内の中央部分において、発泡シート押出流れ方向の平均気泡径(MD)と、発泡シート押出流れ方向と直交する方向の平均気泡径(TD)と、発泡シート厚み方向の平均気泡径(VD)とが、下記式(1)及び(2)を満足し、かつ、前記中央部分の総合平均気泡径(D)が下記式(3)で表され、隣接する2枚の前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを厚み方向に3等分した内の外側部分において、発泡シート押出流れ方向の平均気泡径(md)と、発泡シート押出流れ方向と直交する方向の平均気泡径(td)と、発泡シート厚み方向の平均気泡径(vd)と、前記外側部分の総合平均気泡径(d)とが、下記式(4)で表され、前記総合平均気泡径(D)に対する前記総合平均気泡径(d)の比(d/D)が、下記式(5)を満足することを特徴とする、ポリスチレン系樹脂積層発泡板。
MD/VD=0.6~1.4 ・・・(1)
TD/VD=0.6~1.4 ・・・(2)
D=(MD×TD×VD)1/3 ・・・(3)
d=(md×td×vd)1/3 ・・・(4)
d/D=0.90~1.15 ・・・(5)
[2]前記平均気泡径(md)と、前記平均気泡径(td)と、前記平均気泡径(vd)とが、下記式(6)及び(7)を満足することを特徴とする、[1]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
md/vd=0.6~2.4 ・・・(6)
td/vd=0.6~2.4 ・・・(7)
[3]前記積層発泡体の見掛け密度が0.04~0.15g/cmの範囲であり、かつ前記平均気泡径(MD)、前記平均気泡径(TD)及び前記平均気泡径(VD)が10~500μmの範囲であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
[4]前記積層発泡体の双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層又は表皮材が設けられていることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
[5]ディスプレイパネル用であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板。
【0008】
[6]ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを溶融混練して押出発泡させて得られた2枚以上の前記ポリスチレン系樹脂発泡シートを積層して前記積層発泡体を得るポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法であって、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面を加熱し、複数枚重ねて押圧して、前記積層発泡体を得ることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法。
[7]前記積層発泡体の双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層又は表皮材を積層する工程を含むことを特徴とする、[6]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板によれば、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂積層発泡板の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法の一例を説明する概略構成図である。
図3】実施例1で作製した積層発泡体のMD断面の電子顕微鏡画像である。
図4】実施例1で作製した積層発泡体のTD断面の電子顕微鏡画像である。
図5】比較例1で作製した積層発泡体のMD断面の電子顕微鏡画像である。
図6】比較例1で作製した積層発泡体のTD断面の電子顕微鏡画像である。
図7】比較例2で作製した積層発泡体のMD断面の電子顕微鏡画像である。
図8】比較例2で作製した積層発泡体のTD断面の電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ポリスチレン系樹脂積層発泡板]
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板(以下、単に「積層発泡板」ともいう。)は、複数枚のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)が積層されてなる積層発泡体を有する。
積層発泡板の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1の積層発泡板1は、2枚の発泡シート2a、2bが積層されてなる積層発泡体20を有する。隣接する2枚の発泡シート2a、2bは、融着により接合されている。積層発泡体20(隣接する2枚の発泡シート2a、2b)を厚み方向に3等分した内の中央部分30を「中央1/3部分」ともいう。中央1/3部分において、発泡シート押出流れ方向(MD方向)の平均気泡径(MD)と、MD方向と直交する方向(TD方向)の平均気泡径(TD)と、発泡シート厚み方向(VD方向)の平均気泡径(VD)とは、下記式(1)及び(2)を満足する。加えて、中央1/3部分の全体の平均気泡径(総合平均気泡径(D))は、下記式(3)で表される。
MD/VD=0.6~1.4 ・・・(1)
TD/VD=0.6~1.4 ・・・(2)
D=(MD×TD×VD)1/3 ・・・(3)
【0013】
積層発泡体20は、2枚の発泡シート2a、2bの接合部3近傍の気泡が潰れておらず、略球状を保っていることを特徴としている。
式(1)、式(3)におけるMDは、発泡シートの押出方向を含み、かつ発泡シートの厚さ方向を含む面で切断した断面(以下、「MD断面」ともいう。)における、MD方向の気泡長さの平均値である。
式(2)、式(3)におけるTDは、発泡シートの押出方向と直交する方向を含み、かつ発泡シートの厚さ方向を含む面で切断した断面(以下、「TD断面」ともいう。)における、TD方向の気泡長さの平均値である。
式(1)~式(3)におけるVDは、MD断面及びTD断面におけるVD方向の気泡長さの平均値である。
本明細書におけるMD、TD及びVDの求め方は、後述する。
【0014】
式(1)において、MD/VDは、0.6~1.4であり、0.7~1.3が好ましく、0.8~1.2がより好ましく、0.8~1.0が特に好ましい。MD/VDが上記数値範囲内であると、接合部3近傍の気泡が潰れて非発泡樹脂層となったり、気泡が変形したりすることが少なくなり、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れる積層発泡板1を提供することができる。MD/VDが上記数値範囲から外れると、強度が弱くなったり、反りが発生したりする恐れがある。
式(2)において、TD/VDは、0.6~1.4であり、0.7~1.3が好ましく、0.8~1.3がより好ましく、1.1~1.3が特に好ましい。TD/VDが上記数値範囲内であると、接合部3近傍の気泡が潰れて非発泡樹脂層となったり、気泡が変形したりすることが少なくなり、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れる積層発泡板1を提供することができる。TD/VDが上記数値範囲から外れると、強度が弱くなったり、反りが発生したりする恐れがある。
【0015】
積層発泡体20を厚み方向に3等分した内の外側部分(以下、「外側1/3部分」ともいう。)において、MD方向の平均気泡径(md)と、TD方向の平均気泡径(td)と、VD方向の平均気泡径(vd)と、外側1/3部分の全体の平均気泡径(総合平均気泡径(d))とは、下記式(4)で表される。
d=(md×td×vd)1/3 ・・・(4)
【0016】
式(4)におけるmdは、MD断面におけるMD方向の気泡長さの平均値である。
式(4)におけるtdは、TD断面におけるTD方向の気泡長さの平均値である。
式(4)におけるvdは、MD断面及びTD断面におけるVD方向の気泡長さの平均値である。
本明細書におけるmd、td及びvdの求め方は、後述する。
【0017】
外側1/3部分は、第一の外側部分41でもよく、第二の外側部分42でもよい。第一の外側部分41の総合平均気泡径(d1)と、第二の外側部分42の総合平均気泡径(d2)とは、ほぼ等しく、本明細書においては、第一の外側部分41の総合平均気泡径(d1)を外側1/3部分の総合平均気泡径(d)とする。平均気泡径(md)、平均気泡径(td)、平均気泡径(vd)も同様に、第一の外側部分41のMD方向の平均気泡径、第一の外側部分41のTD方向の平均気泡径、第一の外側部分41のVD方向の平均気泡径であるとする。
【0018】
積層発泡体20において、総合平均気泡径(D)に対する総合平均気泡径(d)の比(d/D)は、下記式(5)を満足する。
d/D=0.90~1.15 ・・・(5)
【0019】
式(5)において、比(d/D)は、0.90~1.15であり、0.91~1.13が好ましく、0.92~1.11がより好ましく、0.92~1.05が特に好ましい。比(d/D)が上記数値範囲内であると、外力に対する変形が少なく、表面の平滑性により優れる。
【0020】
積層発泡体20において、平均気泡径(md)と、平均気泡径(td)と、平均気泡径(vd)とは、下記式(6)及び(7)を満足することが好ましい。
md/vd=0.6~2.4 ・・・(6)
td/vd=0.6~2.4 ・・・(7)
【0021】
式(6)において、md/vdは、0.6~2.4が好ましく、0.8~2.1がより好ましく、1.0~1.8がさらに好ましく、1.0~1.4が特に好ましい。md/vdが上記数値範囲内であると、外力に対する変形が少なく、表面の平滑性により優れる積層発泡板1を提供することができる。md/vdが上記数値範囲から外れると、製造後の変形が大きくなり、たわみやすい発泡板となる恐れがある。
式(7)において、td/vdは、0.6~2.4が好ましく、0.8~2.1がより好ましく、1.0~2.0がさらに好ましく、1.5~1.9が特に好ましい。td/vdが上記数値範囲内であると、外力に対する変形が少なく、表面の平滑性により優れる積層発泡板1を提供することができる。td/vdが上記数値範囲から外れると、製造後の変形が大きくなり、たわみやすい発泡板となる恐れがある。
【0022】
本明細書において、平均気泡径(MD)、平均気泡径(TD)、平均気泡径(VD)、平均気泡径(md)、平均気泡径(td)及び平均気泡径(vd)は、下記測定方法によって求められる。
【0023】
≪平均気泡径の測定方法≫
積層発泡体20の厚み方向の中央1/3部分にある気泡の、平均気泡径(MD)、平均気泡径(TD)及び平均気泡径(VD)を、ASTM D2842-69の試験方法に準拠して下記のように測定する。
(1)まず、得られた積層発泡体20をMD断面で切断する。また、得られた積層発泡体20をTD断面で切断する。それぞれの切断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテク製「SU1510」)で、拡大して撮影する。このときの拡大倍率は、10~100倍が好ましい。
平均気泡径(MD)は、撮影したMD断面の画像をA4用紙上に印刷し、積層発泡体20の厚み方向の中央1/3部分の位置にMD方向に直線を引き、一直線上(長さ50mm)にある気泡数を求め、その平均値を平均気泡数として、下記式(8)により算出する。ただし、直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合は気泡数を0.5個として数える。なお、気泡膜中に存在する気泡の長径が0.05mm以下の微細気泡は気泡数に数えないこととする。
平均気泡径(MD)(μm)=50(mm)/(平均気泡数×拡大倍率)×1000 ・・・(8)
(2)平均気泡径(TD)は、撮影したTD断面の画像をA4用紙上に印刷し、積層発泡体20の厚み方向の中央1/3部分の位置にTD方向に直線を引き、一直線上(長さ50mm)にある気泡数を求め、その平均値を平均気泡数として、下記式(9)により算出する。ただし、直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合は気泡数を0.5個として数える。なお、気泡膜中に存在する気泡の長径が0.05mm以下の微細気泡は気泡数に数えないこととする。
平均気泡径(TD)(μm)=50(mm)/(平均気泡数×拡大倍率)×1000 ・・・(9)
(3)平均気泡径(VD)は、撮影したMD断面及びTD断面の画像をA4用紙上に印刷し、積層発泡体20の厚み方向の中央1/3部分の位置にVD方向に直線を引き、一直線上(長さLmm)にある気泡数を求め、その平均値を平均気泡数として、下記式(10)により算出する。ただし、直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合は気泡数を0.5個として数える。なお、気泡膜中に存在する気泡の長径が0.05mm以下の微細気泡は気泡数に数えないこととする。
平均気泡径(VD)(μm)=L(mm)/(平均気泡数×写真の倍率)×1000 ・・・(10)
(4)総合平均気泡径(D)は、MD、TD及びVDの積の3乗根とし、下記式(11)により算出する。
総合平均気泡径(D)=(MD×TD×VD)1/3 ・・・(11)
【0024】
積層発泡体20の厚み方向の外側1/3部分にある気泡の、平均気泡径(md)、平均気泡径(td)、平均気泡径(vd)及び総合平均気泡径(d)は、上記測定方法に準じて求められる。
【0025】
発泡シート2枚を積層した積層発泡体の場合は、最外層(1枚目)の発泡シートの外面から、もう一方の最外層(2枚目)の発泡シートの外面までの距離(厚み方向)を、接合された2枚の発泡シート2a、2bの厚みとする。そして、その厚みを3等分することで、外側1/3部分、中央1/3部分とする。
【0026】
発泡シート3枚を積層した積層発泡体の場合は、最外層(1枚目)の発泡シートの外面から、2枚目と3枚目の発泡シートの間の接合部までの厚み方向の距離を5ヶ所測定しその平均値を、隣接する2枚の発泡シート2a、2bの厚みとする。そして、その厚みを3等分することで、外側1/3部分、中央1/3部分とする。
発泡シート4枚以上を積層した積層発泡体の場合は、発泡シート3枚を積層した場合に準ずるが、例えば、最外層(1枚目)の発泡シートと2枚目の発泡シートの間の接合部から、3枚目と4枚目の発泡シートの間の接合部までの厚み方向の距離を5ヶ所測定しその平均値を、隣接する2枚の発泡シート2a、2bの厚みとする場合がある。そして、その厚みを3等分することで、外側1/3部分、中央1/3部分とする。
【0027】
積層発泡体20において、発泡シート2a、2bの樹脂原料であるポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0028】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよい。このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等が挙げられる。
これらのビニルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を表し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」と「メタクリロニトリル」の一方又は双方を表す。
【0029】
発泡シート2a、2bは、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよい。他の樹脂としては、例えば、発泡板の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体等のジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂である、いわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS)が挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0030】
発泡シート2a、2bにおいて、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂等の、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる。この他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレー等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料の1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0031】
発泡シート2a、2bを構成するポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、12万~45万が好ましく、15万~40万がより好ましい。質量平均分子量を上記数値範囲とすることで、直接印刷性に優れた板状発泡シートの中でも低密度の曲げ強度を維持することができ、より軽量で強度に優れたポリスチレン系樹脂発泡シート2a、2bを製造し易くなる。また、比較的低密度のポリスチレン系樹脂発泡シート2a、2bであっても、押出された直後の表面の凹凸が発生し難くなり、外観良好な積層発泡体20を得ることができる。
ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量は、以下の測定方法で求められる。
【0032】
≪質量平均分子量の測定方法≫
試料を、スライサー又は剃刀で発泡シート2a、2bから採取する。この試料について、下記測定条件のもと、前処理によってポリスチレン系樹脂を試料から分離し、ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)を測定する。試料は、縦5mm、横5mmの正方形の形状に切り出して使用する。
【0033】
<測定条件>
(前処理)
(i)試料100mgを50mL遠沈管に量り取り、20mLのメチルエチルケトン(MEK)を加えて、24時間攪拌する。
(ii)攪拌後の分散液を3500rpmにて30分間、遠心分離機で分離し、上澄み液を50mLビーカーに取り分ける。
(iii)上記の遠沈管にMEK5mLを加え、超音波洗浄器にて5分間洗浄し、よく混合する。
(iv)この混合液を3500rpmにて30分間、遠心分離機で分離し、上澄み液を除去する。
(v)上記(iii)~上記(iv)を2回繰り返し、その後、200メッシュの金網で濾過し、不溶物を得る。
(vi)得られた不溶物を室温(25℃)で蒸発乾固させる。
(vii)蒸発乾固させた不溶物を20mg量り取り、クロロホルム2.5mLを加えて、浸漬時間6.0±1.0hrで、分散させる。その後、この分散液を非水系0.45μmシリンジフィルター((株)島津ジーエルシー製)で濾過する。
【0034】
上記前処理で得られた濾液を用いて、下記測定条件のもと、下記測定装置でポリスチレン系樹脂の質量平均分子量を測定する。
(測定装置)
GPC装置:東ソー(株)製、HLC-8320GPC(RI検出器・UV検出器内蔵)。
ガードカラム:TOSOH TSK ガードカラム HXL-H(6.0mmI.D.×4cm)×1本。
カラム(リファレンス):抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本。
カラム(サンプル):TOSOH TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本。
(測定条件)
カラム温度:40℃。
検出器温度:40℃。
ポンプ注入部温度:40℃。
溶媒:クロロホルム。
流量(リファレンス):0.5mL/min。
流量(サンプル):1.0mL/min。
実行時間:28min。
データ集積時間:10~28min。
データ間隔:500msec。
注入容積:50μL。
検出器:RI。
【0035】
(検量線用標準ポリスチレン試料)
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」から、質量平均分子量Mが5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、131,000、54,000、20,000、7,590、3,450、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、131,000、20,000、3,450)及びB(3,120,000、442,000、54,000、7,590、1,320)にグループ分けする。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解する。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解する。
標準ポリスチレン検量線は、作成した各A及びB溶解液を50μL注入して、測定後に得られる保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得る。その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
【0036】
積層発泡板1は、積層発泡体20の両面に、非発泡樹脂層4a、4bが積層された構成になっている。
該非発泡樹脂層4a、4bは、発泡シート2a、2bのそれぞれの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された構成とすることが好ましい。前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルムやポリプロピレン系樹脂フィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ポリアクリル酸エステル系樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等の透明な樹脂フィルムが挙げられる。ポリエチレン系樹脂フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のフィルムが挙げられる。非発泡樹脂層4a、4bとしては、積層しやすいことから、ポリスチレン系樹脂フィルムが好ましい。また、非発泡樹脂層4a、4bとしては、ガス透過率が大きく、ブタン等の発泡剤を放散しやすいことから、ポリエチレン系樹脂フィルムが好ましく、LDPEフィルム、LLDPEフィルムがより好ましい。
【0037】
積層発泡板1の厚みは、3.0~15.0mmが好ましく、4.0~12.0mmがより好ましく、5.0~10.0mmがさらに好ましい。積層発泡板1の厚みが上記下限値以上であると、充分な強度が得られる。加えて、積層発泡板1の厚みが上記下限値以上であると、反りの発生をより抑制できる。積層発泡板1の厚みが上記上限値以下であると、積層発泡板1を軽量にでき、製造しやすい。
積層発泡板1の厚みは、例えば、マイクロゲージを用いて測定できる。
【0038】
非発泡樹脂層4a、4bのそれぞれの厚みは、3~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましい。非発泡樹脂層4a、4bのそれぞれの厚みが上記下限値以上であると、反りの発生をより抑制できる。非発泡樹脂層4a、4bのそれぞれの厚みが上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
非発泡樹脂層4a、4bのそれぞれの厚みは、積層発泡板1の厚みと同様の方法で求められる。
【0039】
積層発泡体20の見掛け密度は、0.04~0.15g/cmが好ましく、0.05~0.12g/cmがより好ましく、0.06~0.10g/cmがさらに好ましい。積層発泡体20の見掛け密度が上記数値範囲内であると、軽量で、機械強度に優れ、表面の平滑性により優れる積層発泡板1が得られる。積層発泡体20の見掛け密度が上記下限値以上であると、充分な機械強度が得られ、表面の平滑性により優れる。積層発泡体20の見掛け密度が上記上限値以下であると、積層発泡板1を軽量にでき、製造しやすい。
積層発泡体20の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。
即ち、積層発泡体20の見掛け密度は、得られた測定試料の寸法を測定して体積V(cm)を求め、測定した質量W(g)と体積から密度を下記式(12)により求める。
見掛け密度(g/cm)=測定試料の質量W(g)/測定試料の体積V(cm) ・・・(12)
【0040】
平均気泡径(MD)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、100~300μmがさらに好ましい。平均気泡径(MD)が上記下限値以上であると、積層発泡体20を軽量にでき、耐衝撃性に優れる。平均気泡径(MD)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
平均気泡径(TD)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、160~360μmがさらに好ましい。平均気泡径(TD)が上記下限値以上であると、積層発泡体20を軽量にでき、耐衝撃性に優れる。平均気泡径(TD)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
平均気泡径(VD)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、120~320μmがさらに好ましい。平均気泡径(VD)が上記下限値以上であると、積層発泡体20を軽量にでき、耐衝撃性に優れる。平均気泡径(VD)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
総合平均気泡径(D)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、120~320μmがさらに好ましい。総合平均気泡径(D)が上記下限値以上であると、積層発泡体20を軽量にでき、耐衝撃性に優れる。総合平均気泡径(D)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
平均気泡径(MD)、平均気泡径(TD)、平均気泡径(VD)及び総合平均気泡径(D)は、積層発泡体20の原料となる樹脂の種類、発泡剤の種類と量、発泡核剤の種類と量、製造時の温度、及びこれらの組合せ等により調節できる。
【0041】
平均気泡径(md)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、110~310μmがさらに好ましい。平均気泡径(md)が上記下限値以上であると、積層発泡体20の表面を固くでき、ディスプレイ用途等に使用する場合、ポスター等の紙を貼りやすくできる。平均気泡径(md)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
平均気泡径(td)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、190~390μmがさらに好ましい。平均気泡径(td)が上記下限値以上であると、積層発泡体20の表面を固くでき、ディスプレイ用途等に使用する場合、ポスター等の紙を貼りやすくできる。平均気泡径(td)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
平均気泡径(vd)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、80~280μmがさらに好ましい。平均気泡径(vd)が上記下限値以上であると、積層発泡体20の表面を固くでき、ディスプレイ用途等に使用する場合、ポスター等の紙を貼りやすくできる。平均気泡径(vd)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
総合平均気泡径(d)は、10~500μmが好ましく、50~400μmがより好ましく、120~320μmがさらに好ましい。総合平均気泡径(d)が上記下限値以上であると、積層発泡体20の表面を固くでき、ディスプレイ用途等に使用する場合、ポスター等の紙を貼りやすくできる。総合平均気泡径(d)が上記上限値以下であると、表面の平滑性をより高められる。
平均気泡径(md)、平均気泡径(td)、平均気泡径(vd)及び総合平均気泡径(d)は、積層発泡体20の原料となる樹脂の種類、発泡剤の種類と量、発泡核剤の種類と量、製造時の温度、及びこれらの組合せ等により調節できる。
【0042】
積層発泡体20の坪量は、50~600g/mが好ましく、90~500g/mがより好ましく、150~400g/mがさらに好ましい。積層発泡体20の坪量が上記下限値以上であると、機械強度をより高められる。積層発泡体20の坪量が上記上限値以下であると、積層発泡板1を軽量にでき、製造しやすい。
積層発泡体20の坪量は、以下の方法で測定することができる。
積層発泡体20の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、積層発泡体20の坪量(g/m)とする。
【0043】
積層発泡体20は、双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層又は表皮材が設けられていることが好ましい。積層発泡体20の表面に非発泡樹脂層又は表皮材が設けられていると、機械強度をより高められ、表面の平滑性をより高められる。
表皮材としては、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、クラフト紙、合成紙、離型紙、タック紙等が挙げられる。表皮材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。表皮材と非発泡樹脂層とを併用してもよい。
【0044】
本実施形態の積層発泡板1において、非発泡樹脂層4a、4bそれぞれの算術平均表面粗さRaは、2.0μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。非発泡樹脂層4a、4bそれぞれの算術平均表面粗さRaが上記上限値以下であると、積層発泡板1に直接印刷を施す場合に、極めて鮮明で美麗な印刷を行うことができる。加えて、積層発泡板1に紙やフィルム等の印刷物を貼付する際にも、極めて平滑で美麗な印刷面を得ることができる。非発泡樹脂層4a、4bそれぞれの算術平均表面粗さRaの下限値は特に限定されないが、実質的には、0.01μmである。
非発泡樹脂層4a、4bそれぞれの算術平均表面粗さRaは、JIS B0601:2013に記載の方法に準じて測定できる。
【0045】
積層発泡板1は、隣接する2枚の発泡シート2a、2bの厚み方向の中央1/3部分の気泡が、下記式(1)及び(2)を満たす気泡構造を有していることで、積層発泡体20の外面側に積層された非発泡樹脂層4a、4bの表面の平滑性を極めて高くすることができる。
MD/VD=0.6~1.4 ・・・(1)
TD/VD=0.6~1.4 ・・・(2)
【0046】
本実施形態の積層発泡板1は、2枚の発泡シート2a、2bが接合部3を介して接合され、2枚の発泡シート2a、2bの厚み方向の中央1/3部分の気泡は、MD/VDの値が0.6~1.4であり、TD/VDの値が0.6~1.4である気泡構造を有する。加えて、積層発泡板1は、中央1/3部分の総合平均気泡径(D)に対する、外側1/3部分の総合平均気泡径(d)の比(d/D)が、0.90~1.15である。このため、接合部3近傍の気泡が潰れて非発泡樹脂層となったり、気泡が変形したりすることが少なくなり、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れる積層発泡板1を提供することができる。
【0047】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板は、図1に示した本実施形態のみに限定されるものではなく、種々の変更や修正が可能である。
例えば、積層発泡板1は、2枚の発泡シート2a、2bを融着接合して構成したが、積層する発泡シートの枚数は本例示に限らず、3枚以上としてもよい。積層する複数枚の発泡シートは、2枚以上であり、好ましくは2~6枚、より好ましくは2~4枚の範囲である。
2枚以上積層することでポリスチレン系樹脂積層発泡板の厚みが厚くなり発泡板としての強度が増すので、ポスターを貼り合わせたりするディスプレイパネル、打ち抜きや切削加工後に所定形状にして構造部材として使用する軽量工業材料、住宅用建材等として利用できる。3枚以上積層することによって、特に強度を必要とする軽量工業材料、住宅用建材の用途として好適となる。
【0048】
積層発泡板1は、接合した2枚の発泡シート2a、2bのそれぞれの外面側に非発泡樹脂層4a、4bを積層しているが、非発泡樹脂層を積層しなくてもよいし、いずれか一方の外面側のみに非発泡樹脂層を積層した構成とすることもできる。
また、非発泡樹脂層4a、4bは、接合した2枚の発泡シート2a、2bに熱融着等によって直接積層してもよいし、接着剤を介して積層してもよいし、前述した表皮材を介して積層してもよい。
さらに、非発泡樹脂層4a、4bの外面側(非発泡樹脂層を積層しない場合には発泡シート2a、2bの外面側)には、前述した表皮材や印刷を施すための紙や樹脂フィルムを接着するための接着剤層を積層してもよい。
【0049】
接着剤としては、主溶剤として有機溶媒を用いた油性接着剤であってもよいし、主溶剤として水を用いた水性接着剤であってもよいし、熱溶融性樹脂を用いた熱融着性接着剤(ホットメルト接着剤)であってもよい。水性接着剤としては、例えば、澱粉、変性澱粉、ガゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、大豆タンパク、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル変性酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン系の水性接着剤が適用可能である。ホットメルト接着剤としては、例えば、合成ゴム系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0050】
[ポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法]
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面を加熱して複数枚重ねて押圧して、積層発泡体を得ることを特徴とする。
以下、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法について、図2を参照して説明する。
【0051】
図2は、本発明の一実施形態に係るポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法の一例を説明する概略構成図である。なお、本例では、2枚の非発泡樹脂層付きポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを融着接合し、図1に示す積層発泡板1を製造する方法について説明する。
本製造方法では、まず、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを原反ロール6a、6bに、シート送り出し可能にセットする。
【0052】
このポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bは、押出機等の樹脂供給装置内でポリスチレン系樹脂、発泡核剤等の添加剤、及び揮発性発泡剤を溶融混練し、その樹脂混合物を装置先端に取り付けたサーキュラーダイの環状スリットから環状に押し出し、発泡させ、冷却して筒状の発泡シートとし、それをカッターで切開することによって製造される。
【0053】
ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを押出発泡法によって製造する際には、揮発性発泡剤を使用することが好ましい。
揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素や、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素等の1種又は2種以上が挙げられ、特にブタンが好適に使用される。ブタンとしては、ノルマルブタン、もしくはイソブタンをそれぞれ単独で使用してもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとを任意の割合で併用してもよい。
【0054】
揮発性発泡剤の添加量は、揮発性発泡剤の種類や、発泡シートに求める全体密度等を勘案して決定される。揮発性発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、1.0~7.0質量部が好ましく、2.0~6.0質量部がより好ましく、3.0~5.0質量部がさらに好ましい。揮発性発泡剤の添加量が上記下限値以上であると、発泡シートを充分に発泡させることができる。揮発性発泡剤の添加量が上記上限値以下であると、発泡シートが発泡し過ぎることを抑制でき、表面の平滑性をより高められる。
【0055】
ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの製造において、ポリスチレン系樹脂に添加される発泡核剤としては、例えば、タルクやステアリン酸カルシウム等が挙げられる。発泡核剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、0.2~5.0質量部が好ましく、0.3~4.0質量部がより好ましく、0.4~3.0質量部がさらに好ましい。発泡核剤の添加量が上記下限値以上であると、気泡をより均一かつ微細にできる。発泡核剤の添加量が上記上限値以下であると、気泡の破泡を抑制でき充分に発泡させることができる。
【0056】
ポリスチレン系樹脂には、発泡剤、発泡核剤以外の種々の添加剤を添加してもよい。ポリスチレン系樹脂に添加することのできるその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤の配合割合は適宜、設定される。
【0057】
ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの片面に非発泡樹脂層4a、4bを設ける方法としては、例えば、以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)非発泡樹脂層4a、4bとなる樹脂を押出機に投入し、溶融した非発泡樹脂層形成用の樹脂を押出機先端に取り付けたTダイからポリスチレン系樹脂発泡シート上に押し出す方法。
(2)2つの押出機を備えた共押出装置を用い、一方の押出機でポリスチレン系樹脂発泡シートの発泡押出しを行うと共に、他方の押出機から非発泡樹脂層形成用の樹脂を共押出しする方法。
(3)非発泡樹脂層4a、4bとなる樹脂フィルムを、接着剤を用いてポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に接着する方法。
非発泡樹脂層4a、4bとしてポリスチレン系樹脂を用いる場合には、接着剤を用いずにポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に非発泡樹脂層4a、4bを形成する上記(1)又は(2)の方法が好ましい。
【0058】
次に、2つの原反ロール6a、6bから引き出した2枚のポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを、直接、又はローラ7で支持し、重ね合わせた状態で熱ロール9a、9bに供給する。熱ロール9a、9bに送られる前に、それぞれのポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの両面をヒーター8a、8bで加熱し、その表面を溶融発泡させた状態にしておく。
ヒーター8a、8bで加熱する際の温度は、スチレンが軟化する温度であればよく、例えば、100~180℃が好ましく、110~170℃がより好ましく、120~160℃がさらに好ましい。ヒーター8a、8bで加熱する際の温度が上記下限値以上であると、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bが充分に軟化し、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5b同士を綺麗に融着接合できる。ヒーター8a、8bで加熱する際の温度が上記上限値以下であると、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの外側の表面(非発泡樹脂層4a、4bが形成された面)が軟化し過ぎることを抑制でき、表面の平滑性をより高められる。
ヒーター8a、8bの発生熱量や、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bとの間隔等は、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの移動速度等に応じて適宜設定される。
【0059】
押出発泡法によって製造されたポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの表面は、押出発泡後に冷却することで、表面に表皮層(又はスキン層)と呼ばれる非発泡の樹脂薄層が形成されている場合が多い。本製造方法では、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの表面をヒーター8a、8bで加熱した後、両者を押圧して融着接合することで、それぞれのポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの表面が溶融し、残存している揮発性発泡剤によって発泡し、表皮層が発泡層となった状態で融着接合される。この結果、2枚のポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bの接合部には表皮層に起因する非発泡樹脂層がなく、また残留する揮発性発泡剤の量も少なくなる。
【0060】
ヒーター8a、8bで加熱され、その表面を溶融発泡させた2枚のポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bは、熱ロール9a、9bを通して押圧することで、融着により接合され、図1に示す積層構造を有するポリスチレン系樹脂積層発泡板1となる。
熱ロール9a、9bでポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを押圧する際の圧力は、0.1~1.1MPaが好ましく、0.2~1.0MPaがより好ましく、0.3~0.9MPaがさらに好ましい。熱ロール9a、9bでポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを押圧する際の圧力が上記下限値以上であると、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5b同士を充分に接合できる。熱ロール9a、9bでポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを押圧する際の圧力が上記上限値以下であると、ポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5b同士が潰され過ぎず、表面の平滑性をより高められる。
【0061】
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡板1は、裁断工程に送られ、カッター10等の切断手段によって所望の寸法に裁断され、ディスプレイパネル用のパネル本体11等に用いられる。
【0062】
本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面を加熱して複数枚重ねて押圧することにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートの残留応力をより小さくできる。このため、ポリスチレン系樹脂発泡シートの寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性をより高められる。加えて、ポリスチレン系樹脂発泡シートの反りの発生を抑制でき、合紙後の紙浮きを抑制できる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面を加熱して複数枚重ねて押圧することにより、厚み方向の中央1/3部分の気泡のMD/VDが0.6~1.4であり、TD/VDが0.6~1.4であり、中央1/3部分の総合平均気泡径(D)に対する、外側1/3部分の総合平均気泡径(d)の比(d/D)が、0.90~1.15である気泡構造を有し、寸法変化が少なく、表面の平滑性により優れるポリスチレン系樹脂積層発泡板1を簡単に製造することができる。
特に、夏場の運搬や保管時等、高温環境下において、反りや寸法変化を抑制でき、本発明の効果が顕著である。
【0063】
上述の実施形態では、2枚の非発泡樹脂層付きポリスチレン系樹脂発泡シート5a、5bを融着接合し、図1に示す積層発泡板1を製造する方法について説明したが、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板の製造方法は、これに限定されない。
例えば、非発泡樹脂層のないポリスチレン系樹脂発泡シート2a、2bを融着接合し、積層発泡体20を得、積層発泡体20の双方の面に非発泡樹脂層4a、4bを積層して積層発泡板1を製造してもよい。
このように、積層発泡体の双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層を積層する工程を経て積層発泡板を製造することにより、より容易に寸法変化が少なく、表面の平滑性により優れる積層発泡板を得ることができる。
積層発泡体の双方又はいずれか一方の面に非発泡樹脂層を積層する方法は特に限定されず、接着剤を用いて積層してもよく、融着により積層してもよい。
非発泡樹脂層としては、上述した表皮材が挙げられる。非発泡樹脂層としては、接着剤を用いずに積層できることから、ポリスチレン系樹脂フィルムが好ましい。
【0064】
[ディスプレイパネル]
本発明のディスプレイパネルは、上述した製造方法により製造された本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡板1を必要に応じて所望の寸法に裁断し、パネル本体11とし、該パネル本体11の一方又は両方の表面に直接印刷を施し、或いは印刷済みの紙や樹脂フィルム等を接着してなるものである。前記パネル本体11の寸法や印刷する文字や画像については制限されない。
【0065】
前記パネル本体11の表面に直接印刷する方法は、特に限定されないが、インクジェット印刷を用いることが好ましい。
インクジェット印刷に用いるインクとしては、UVインク、水性インクの両方を用いることができる。これらのインクは、市販されている各種インクジェット印刷用インクの中から適宜選択して使用することができる。また、インクジェット印刷機は、使用するインクの硬化特性に応じて、印刷直後に紫外線を照射するためのUV光源や乾燥のためのヒーターやドライヤー等の機能を付設してあることが好ましい。
【0066】
本発明のディスプレイパネルは、上述したように、寸法変化が少なく、表面の平滑性により優れるポリスチレン系樹脂積層発泡板1をパネル本体11として用いたものなので、極めて鮮明で美麗な印刷が可能なディスプレイパネルとなる。
【0067】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板の用途は、前記ディスプレイパネルのみに限定されるものではなく、例えば、打ち抜きや切削加工後に所定形状にして構造部材として使用する軽量工業材料、住宅用建材等としても利用できる。
【実施例
【0068】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0069】
[実施例1]
押出機として内径115mmの押出機と、内径150mmの押出機とが連結された押出機を用意した。ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、商品名「XC-515」)100質量部に対し、発泡核剤としてタルクを40質量%含んだポリスチレンベースのマスターバッチを1.0質量部混合し、これを押出機に投入した。ポリスチレン樹脂と発泡核剤との混合物を溶融混練しつつ、揮発性発泡剤としてブタン(イソブタン100%)を3.6質量部添加し、樹脂と混合し、発泡適正温度域まで冷却した。さらに、押出機先端に取り付けた、口径175φでスリットクリアランス0.5mmに設定されたサーキュラーダイより溶融樹脂を大気下へ押出して発泡した。押出された円筒状の発泡体の両表面をエアーにて冷却しつつ、ダイに近接配置した冷却マンドレルに接触させて冷却した後、水平方向2点でカッターにより切り開き、巻き取り機にてロール状に巻き取ることで、2枚の発泡シートロールを得た。得られた発泡シートは、厚み1.3mm、密度0.12g/cmであった。
得られた発泡シートロールを所定の熟成期間をおいた後、発泡シートロールを2つ使用し、2枚の発泡シートのそれぞれの両面をヒーターで加熱した。接合させる内面側のヒーター温度は140℃、接合させない外面側のヒーター温度は120℃とし、二次発泡させつつ、熱ロールにて押圧0.6MPaで発泡層面同士を熱融着させて接合し、積層発泡体を得た。得られた積層発泡体は、厚み5mm、密度0.064g/cm、坪量320g/m、幅930mm、長さ1855mmであった。
【0070】
その後、坪量128g/mの上質紙の表面に、坪量20g/mのポリエチレンフィルムが両面に積層された複合紙をベース紙とし、このベース紙の一方のフィルム側の面に、粘着剤としてポリアクリル酸ブチルを24g/m塗布した。次いで、その上に剥離紙を積層し、ロール状に巻き取って長尺のタック紙を得た。前記剥離紙は、坪量54.3g/mの上質紙の両面に厚み20μmのポリエチレンフィルムが積層されており、このポリエチレンフィルム面には剥離紙と粘着剤との剥離強度を調整する剥離剤層としてのシリコーン樹脂が塗布されている。
また、裏紙として、前記タック紙のベース紙と同様の複合紙(坪量128g/mの上質紙の両面に、厚み20μmのポリエチレンフィルムが積層された複合紙)を準備した。
【0071】
次に、熱融着性接着剤として、合成ゴム系ホットメルト接着剤(MORESCO社製、TN-194MZ)を準備した。この熱融着性接着剤を設定温度160℃の溶融タンクに入れ、加熱溶融を行った。設定温度165℃のノズルユニットを用いて、ノズルユニットの吐出口群から熱融着性接着剤を吐出させると共に、ノズルユニットの吹出口から高温高速のエアーを吹き付けて、熱融着性接着剤を前記タック紙と前記裏紙の表面に網目状に塗布した。熱融着性接着剤の塗布量は20g/mとした。
【0072】
その後、上述の積層発泡体の両面を前記タック紙と前記裏紙で挟み込みつつ、圧着ロールを通過させ、熱融着性接着剤を介して、積層発泡体にそれぞれの紙素材を積層した。その後、幅910mm、長さ1820mmのサイズに耳処理を行った。これにより、実施例1に係るポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製した。
【0073】
[実施例2]
2枚の発泡シートのそれぞれの両面を加熱する際、外面側のヒーター温度を130℃とした以外は、実施例1と同様にポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製した。
【0074】
[実施例3]
2枚の発泡シートのそれぞれの両面を加熱する際、外面側のヒーター温度を115℃とした以外は、実施例1と同様にポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製した。
【0075】
[実施例4]
2枚の発泡シートのそれぞれの両面を加熱する際、外面側のヒーター温度を110℃とした以外は、実施例1と同様にポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製した。
【0076】
[比較例1]
押出機として内径115mmの押出機と、150mmの押出機とが連結された押出機を用意した。ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、商品名「G9305」)100質量部に対し、タルク(キハラ化成社製)0.13質量部、タルクMB(キハラ化成社製、商品名:「MO-60」)0.45質量部、を添加した配合原料を押出機に投入した。この配合原料を押出機内にて最高温度230℃で溶融、混練した後、揮発性発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタンの質量比:65質量%/35質量%)を3.8質量部添加し、樹脂と混合した。その後発泡に適した樹脂温度165℃まで冷却した。さらに、押出機の先端部に設けられた口径180mmφでスリットクリアランス1.2mmに設定されたサーキュラーダイより溶融樹脂を押出して発泡させた。押出された円筒状の発泡体の外面に冷却エアーを吹き付け、ワニ口ロールで上下より圧着して2層を融着させながら冷却し、厚み5mm、密度0.064g/cm、坪量320g/mの積層発泡体を得たこと以外は実施例1と同様に、ポリスチレン系樹脂積層発泡板を得た。
【0077】
[比較例2]
2枚の発泡シートの内面側のヒーター温度を160℃とし、外面側の加熱は行わなかった以外は、実施例1と同様にポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製した。
【0078】
[比較例3]
2枚の発泡シートのそれぞれの両面を加熱する際、外面側のヒーター温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製した。
【0079】
(積層発泡体の気泡状態の比較)
図3に実施例1で作製した積層発泡体のMD断面の電子顕微鏡画像を示す。
図4に実施例1で作製した積層発泡体のTD断面の電子顕微鏡画像を示す。
図5に比較例1で作製した積層発泡体のMD断面の電子顕微鏡画像を示す。
図6に比較例1で作製した積層発泡体のTD断面の電子顕微鏡画像を示す。
図7に比較例2で作製した積層発泡体のMD断面の電子顕微鏡画像を示す。
図8に比較例2で作製した積層発泡体のTD断面の電子顕微鏡画像を示す。
また、電子顕微鏡画像の図示はしないが、実施例2~4で作製した積層発泡体のMD断面、TD断面の接合部近傍の気泡状態及び外面側近傍の気泡状態は、実施例1で作製した積層発泡体のMD断面、TD断面の接合部近傍の気泡状態及び外面側近傍の気泡状態と同じ傾向の画像であった。比較例3で作製した積層発泡体のMD断面、TD断面の接合部近傍の気泡状態及び外面側近傍の気泡状態は、実施例1で作製した積層発泡体のMD断面、TD断面の接合部近傍の気泡状態及び外面側近傍の気泡状態と似た傾向の画像であった。
【0080】
図3図4に示す実施例1の積層発泡体は、図5図6に示す比較例1の積層発泡体と比べ、接合部近傍の気泡が厚み方向に潰れておらず略球状となっていた。一方、比較例1の積層発泡体は、接合部近傍の気泡が厚み方向に潰れていた。
また、実施例1の積層発泡体は、図7図8に示す比較例2の積層発泡体と比べ、中央1/3部分の気泡と外側1/3部分の気泡との大きさに差がなく、全体的に同じ大きさの気泡が分布していた。一方、比較例2の積層発泡体は、外側1/3部分の気泡が、中央1/3部分の気泡よりも小さく、中央1/3部分の気泡の大きさと外側1/3部分の気泡の大きさとの差が顕著であった。
【0081】
各例の積層発泡体の平均気泡径(MD)、平均気泡径(TD)、平均気泡径(VD)、平均気泡径(md)、平均気泡径(td)、平均気泡径(vd)、総合平均気泡径(D)、総合平均気泡径(d)は、前記≪平均気泡径の測定方法≫に従って測定した。すなわち、各例の積層発泡体をMD断面及びTD断面で切断し、それぞれの切断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテク製「SU1510」)で、拡大倍率15~20倍程度に拡大して撮影して測定した。図3~6の電子顕微鏡画像の拡大倍率は15倍である。図7、8の電子顕微鏡画像の拡大倍率は20倍である。
また、得られた積層発泡体の厚み、見掛け密度及び坪量については、下記の測定方法によって行った。結果を表1に示す。
【0082】
<厚みの測定>
得られた積層発泡体の厚みを、厚み測定器SM-114(TECLOCK社製)を用いて測定した。
【0083】
<見掛け密度の測定>
得られた積層発泡体の見掛け密度(g/cm)は、その質量と体積とを測定して、質量(g)÷体積(cm)により求めた。
【0084】
<坪量の測定>
得られた積層発泡体の坪量は、積層発泡体の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定し、各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値(g/m)とした。
【0085】
<加熱寸法変化率の評価>
加熱寸法変化率を以下の測定方法によって評価した。
各例のポリスチレン系樹脂積層発泡板を作製して24時間以上経過した後、900(mm)×900(mm)×5(mm)の大きさの試験片を切り出した。この際、試験片の辺の方向が発泡シート押出流れ方向と、発泡シート押出流れ方向に直交する方向(発泡シート幅方向)とになるように試験片を切り出した。この試験片に、対向している辺の中点同士を結ぶ十字の線を記入し、60℃の熱風循環式乾燥機の中で24時間加熱した後に、試験片を取り出し、25℃の環境下で放冷した。十字の線の縦線(発泡シート押出流れ方向)及び横線(発泡シート幅方向)の寸法を測定し、下記式(13)に基づいて加熱寸法変化率S(%)を算出した。
S(%)=((L/L)-1)×100 ・・・(13)
式(13)において、Lは加熱後の寸法(mm)、Lは加熱前の寸法(mm)を表す。Sがマイナスの場合は、LがLよりも小さくなったこと、すなわち加熱によりポリスチレン系樹脂積層発泡板が収縮したことを意味する。
【0086】
算出された加熱寸法変化率S(%)を、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
《評価基準》
A:Sが-0.3%以上0.3%以下。
B:Sが-0.4%以上-0.3%未満又は0.3%超0.4%以下。
C:Sが-0.4%未満又は0.4%超。
【0087】
<表面性の評価>
上記<加熱寸法変化率の評価>における加熱後の試験片の表面を目視で確認し、下記評価基準に基づいて表面の平滑性(表面性)を評価した。結果を表2に示す。
《評価基準》
○:表面が平滑で良好である。
△:表面が若干荒れている。
×:表面が著しく荒れている。
【0088】
<合紙品の紙浮きの評価>
上記<加熱寸法変化率の評価>における加熱後の試験片の表面を目視で確認し、下記評価基準に基づいて合紙品の紙浮きを評価した。結果を表2に示す。
《評価基準》
○:表面の紙浮きが見られず美麗である。
△:表面の紙浮きがわずかに見られる。
×:表面の紙が剥がれているところがあり、はっきりと表面の紙浮きが見られる。
【0089】
<総合評価>
上記<加熱寸法変化率の評価>、<表面性の評価>及び<合紙品の紙浮きの評価>の結果から、下記評価基準に基づいて総合評価をした。結果を表2に示す。
《評価基準》
A:加熱寸法変化率の評価が「A」評価であり、表面性の評価及び合紙品の紙浮きの評価がともに「〇」であるものを総合評価「A」とした。
B:加熱寸法変化率の評価が「A」評価であり、表面性の評価又は合紙品の紙浮きの評価に「△」があるものを総合評価「B」とした。
C:加熱寸法変化率の評価が「B」評価であり、表面性の評価及び合紙品の紙浮きの評価に「×」がないものを総合評価「C」評価とした。
D:加熱寸法変化率の評価が「C」評価であるか、又は表面性の評価もしくは合紙品の紙浮きの評価に「×」があるものを総合評価「D」とした。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
本発明を適用した実施例1~4は、総合評価が「A」~「C」であった。
一方、MD/VD及びTD/VDの値が本発明の範囲外である比較例1は、加熱寸法変化率の評価が「C」、合紙品の紙浮きの評価が「×」で、総合評価が「D」だった。比(d/D)が本発明の範囲外である比較例2は、加熱寸法変化率の評価が「C」で、総合評価が「D」だった。比(d/D)が本発明の範囲外である比較例3は、表面性の評価が「×」で、総合評価が「D」だった。
【0093】
これらの結果から、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板によれば、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡板は、寸法変化が少なく、かつ、表面の平滑性により優れることから、表面に印刷を施したり、ポスターを貼り合わせたりするディスプレイパネル、打ち抜きや切削加工後に所定形状にして構造部材として使用する軽量工業材料、住宅用建材等として利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 ポリスチレン系樹脂積層発泡板
2a,2b ポリスチレン系樹脂発泡シート
3 接合部
4a,4b 非発泡樹脂層
5a,5b ポリスチレン系樹脂発泡シート
6a,6b 原反ロール
7 ローラ
8a,8b ヒーター
9a,9b 熱ロール
10 カッター
11 パネル本体
20 積層発泡体
30 中央部分
41 第一の外側部分
42 第二の外側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8