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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240318BHJP
   H01M 8/04223 20160101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04223
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020163749
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055994
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】中島 信一
(72)【発明者】
【氏名】白井 良和
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2010/029744(JP,A1)
【文献】特開2018-005428(JP,A)
【文献】特開2017-045268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/04223
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムの運転を制御する制御装置と、
前記制御装置と通信可能に接続され、表示器を有するリモートコントローラと、
前記燃料電池システムの定期点検時に交換が必要とされる消耗品と、
を備え、
前記制御装置及び前記リモートコントローラのうち少なくとも前記制御装置によって制御部が構成され、
前記制御部は、
前記消耗品の寿命を判定する判定部と、
前記判定部で前記消耗品が寿命に到達したと判定された場合に、前記消耗品が寿命に到達した旨の寿命到達メッセージと、ユーザに対して前記寿命到達メッセージの表示を取り消すか否かの判断材料になる取消判断材料メッセージとを前記表示器に表示させる表示制御部と、
前記リモートコントローラに対して前記寿命到達メッセージの表示を取り消すための操作が行われた場合に、前記寿命到達メッセージの表示を取り消す取消制御部と、
前記寿命到達メッセージの表示を取り消すための操作として、前記表示器に表示された複数のボタンを選択する操作とは異なる態様の操作が行われたか否かを判定する取消操作判定部と、
を備え、
前記取消制御部は、前記寿命到達メッセージの表示を取り消すための操作として、前記複数のボタンを選択する操作とは異なる態様の操作が行われたと前記取消操作判定部で判定された場合に、前記寿命到達メッセージの表示を取り消す、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記判定部で前記消耗品が寿命に到達したと判定された場合に、前記燃料電池システムの運転を停止する運転停止制御部をさらに備える、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記運転停止制御部によって前記燃料電池システムの運転が停止された場合に、前記ユーザが前記消耗品の交換を望む場合には前記燃料電池システムを販売した販売店へ連絡することが必要である旨の要連絡メッセージを前記表示器に表示させる、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記運転停止制御部によって前記燃料電池システムの運転が停止された場合に、前記ユーザが前記燃料電池システムの運転継続を望む場合には前記燃料電池システムに対して発電指示の操作が必要である旨の要発電指示メッセージを前記表示器に表示させ、
前記制御部は、前記燃料電池システムに対して発電指示の操作が行われた場合に、前記燃料電池システムの運転を再開させる運転再開制御部をさらに備える、
請求項2又は請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記運転再開制御部によって前記燃料電池システムの運転が再開された場合に、前記燃料電池システムの運転再開後の累積通電時間又は累積ガス積算流量を記憶部に記憶させる記憶制御部をさらに備える、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記判定部で前記消耗品が寿命に到達したと判定された場合に、前記燃料電池システムの設置後の運転継続時間が予め定められた限界に到達するまでの残時間を前記表示器に表示させ、
前記運転停止制御部は、前記運転再開制御部によって前記燃料電池システムの運転が再開された後、前記運転継続時間が前記限界に到達した場合に、前記燃料電池システムの運転を停止する、
請求項4又は請求項5に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエネファーム(登録商標)と称される燃料電池システムは、長期間継続した運転を可能にするために、定期点検を受けることが必要とされている。一例として、定期点検は、通常、運転開始後11年目以降に必要となる。この定期点検には、累積通電時間が約10年に到達した場合に必要になるものと、発電出力400Wで10年相当の運転をした場合に必要になるものの2種類がある。これらの定期点検には、それぞれ費用が発生する。
【0003】
燃料電池システムは、所定の期限までに定期点検を受けない場合に、自動停止する仕様になっている。したがって、ユーザは、所定の期限までに定期点検を販売店まで申し込む必要がある。ところが、定期点検の期限をユーザが管理することは困難である。
【0004】
そこで、定期点検の期限をユーザが管理する煩わしさを解消するために、リモートコントローラの表示器に定期点検を促す表示をする燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムは、具体的には、リモートコントローラの表示器に「定期点検」の文字が表示される仕様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-305808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リモートコントローラの表示器に「定期点検」の文字が表示されても、その表示がされた時点で定期点検が本当に必要であるか否かをユーザが判断することは難しく、定期点検を受けるか否かの選択肢が少ない。また、定期点検には、費用が発生するため、定期点検に対してユーザが抵抗感を示すことが少なくない。
【0007】
本発明の目的は、定期点検の要否をユーザが容易に選択できる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る燃料電池システムは、燃料電池を備えた燃料電池システムであって、前記燃料電池システムの運転を制御する制御装置と、前記制御装置と通信可能に接続され、表示器を有するリモートコントローラと、前記燃料電池システムの定期点検時に交換が必要とされる消耗品と、を備え、前記制御装置及び前記リモートコントローラのうち少なくとも前記制御装置によって制御部が構成され、前記制御部は、前記消耗品の寿命を判定する判定部と、前記判定部で前記消耗品が寿命に到達したと判定された場合に、前記消耗品が寿命に到達した旨の寿命到達メッセージと、ユーザに対して前記寿命到達メッセージの表示を取り消すか否かの判断材料になる取消判断材料メッセージとを前記表示器に表示させる表示制御部と、前記リモートコントローラに対して前記寿命到達メッセージの表示を取り消すための操作が行われた場合に、前記寿命到達メッセージの表示を取り消す取消制御部と、前記寿命到達メッセージの表示を取り消すための操作として、前記表示器に表示された複数のボタンを選択する操作とは異なる態様の操作が行われたか否かを判定する取消操作判定部と、を備え、前記取消制御部は、前記寿命到達メッセージの表示を取り消すための操作として、前記複数のボタンを選択する操作とは異なる態様の操作が行われたと前記取消操作判定部で判定された場合に、前記寿命到達メッセージの表示を取り消す、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る燃料電池システムによれば、定期点検の要否をユーザが容易に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの全体構成の概略を示すブロック図である。
図2図1に示される制御装置及びリモートコントローラの電気的な構成を示すブロック図である。
図3図1に示される燃料電池システムの機能的な構成を示すブロック図である。
図4図3に示される制御部の動作の流れを示すフローチャートである。
図5】消耗品が寿命に近づいた場合にリモートコントローラの表示器に表示される寿命接近メッセージの一例を示す図である。
図6】消耗品が寿命に到達した場合にリモートコントローラの表示器に表示される複数のメッセージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム10の全体構成の概略を示すブロック図である。本発明の一実施形態に係る燃料電池システム10は、例えばエネファーム(登録商標)と称される発電システムであり、発電ユニット12と、リモートコントローラ140とを備える。
【0013】
通常、発電ユニット12は、ユーザの建物の外に設置され、リモートコントローラ140は、ユーザの建物の中に設置される。以降、リモートコントローラ140をリモコン140と略称する。
【0014】
発電ユニット12は、原燃料ガス供給装置20と、酸化剤ガス供給装置30と、改質水供給装置40と、発電モジュール50と、排熱回収装置60と、貯湯タンク70とを備える。
【0015】
原燃料ガス供給装置20は、発電モジュール50に原燃料ガスを供給する装置である。原燃料ガスは、例えば、都市ガスやLPガス等である。原燃料ガス供給装置20は、原燃料ガス供給管21と、ガス弁22と、脱硫器23と、圧力センサ24と、流量センサ25と、原燃料ガスポンプ26とを備える。
【0016】
原燃料ガス供給管21は、発電モジュール50の気化器52に接続されている。原燃料ガス供給管21には、ガス弁22、脱硫器23、圧力センサ24、流量センサ25及び原燃料ガスポンプ26が設けられている。
【0017】
ガス弁22は、例えば電磁弁であり、原燃料ガス供給管21を開通する開弁状態と、原燃料ガス供給管21を閉止する閉弁状態とを取り得る構成である。脱硫器23は、原燃料ガス供給管21を流れる原燃料ガスに含まれる硫黄分を除去し、圧力センサ24は、原燃料ガス供給管21内の原燃料ガスの圧力を検出する。流量センサ25は、原燃料ガス供給管21を流れる原燃料ガスの流量を検出し、原燃料ガスポンプ26は、原燃料ガス供給管21を通じて原燃料ガスを気化器52へ供給する。
【0018】
酸化剤ガス供給装置30は、発電モジュール50に酸化剤ガスを供給する装置である。酸化剤ガス供給装置30は、酸化剤ガス供給管31と、エアフィルタ32と、流量センサ33と、ブロワ34とを備える。
【0019】
エアフィルタ32は、後述する発電ユニット12の筐体80に形成された酸化剤ガス取入口81に設けられている。酸化剤ガス供給管31は、酸化剤ガス取入口81と後述する発電モジュール50の燃料電池54とを接続している。酸化剤ガス供給管31には、流量センサ33及びブロワ34が設けられている。
【0020】
流量センサ33は、酸化剤ガス供給管31を流れる酸化剤ガスの流量を検出し、ブロワ34は、酸化剤ガス供給管31を通じて酸化剤ガスを燃料電池54へ供給する。
【0021】
改質水供給装置40は、発電モジュール50に改質水を供給する装置である。改質水供給装置40は、改質水供給管41と、改質水タンク42と、イオン交換樹脂43と、改質水ポンプ44とを備える。改質水供給管41は、改質水タンク42と後述する発電モジュール50の気化器52とを接続している。改質水供給管41には、イオン交換樹脂43及び改質水ポンプ44が設けられている。
【0022】
改質水タンク42には、後述する排熱回収装置60の熱交換器63で凝縮された凝縮水が改質水として貯留される。イオン交換樹脂43は、改質水供給管41を流れる改質水の不純物を除去し、改質水ポンプ44は、改質水供給管41を通じて改質水を気化器52に供給する。
【0023】
発電モジュール50は、モジュールケース51と、気化器52と、改質器53と、燃料電池54(燃料電池セルスタック)とを備える。気化器52、改質器53及び燃料電池54は、断熱材によって形成されたモジュールケース51に収容されている。
【0024】
気化器52は、改質水及び原燃料ガスの供給を受け、この改質水及び原燃料ガスを加熱し、改質水を蒸発させて水蒸気を生成すると共に原燃料ガスを予熱する。改質器53は、気化器52から水蒸気及び予熱された原燃料ガスの供給を受け、原燃料ガスを水蒸気改質反応により改質して、水素を含む燃料ガスを生成する。
【0025】
燃料電池54は、改質器53から燃料ガスの供給を受けると共に、酸化剤ガス供給装置30から酸化剤ガスの供給を受け、燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応により発電する。また、燃料電池54は、発電に伴い発熱する。
【0026】
排熱回収装置60は、燃料電池54の発電に伴って発生する熱を回収する装置であり、往路管61と、復路管62と、熱交換器63と、循環ポンプ64とを備える。熱交換器63と貯湯タンク70は、往路管61及び復路管62によって接続されており、往路管61には、循環ポンプ64が設けられている。
【0027】
貯湯タンク70に供給された水は、往路管61を通じて熱交換器63に供給され、熱交換器63では、燃料電池54から排出された排気ガスにより水が加熱されて湯が生成される。この湯は、復路管62を通じて貯湯タンク70に供給される。貯湯タンク70に供給された湯は、貯湯タンク70に貯留され、貯湯タンク70に貯留された湯は、給湯に利用される。燃料電池54から熱交換器63に供給された排気ガスは、筐体80の外部に排出される。
【0028】
発電ユニット12は、上記構成に加え、筐体80を備える。上述の原燃料ガス供給装置20、酸化剤ガス供給装置30、改質水供給装置40、発電モジュール50、排熱回収装置60及び貯湯タンク70は、筐体80に収容されている。筐体80には、換気口82が設けられており、この換気口82には、換気フィルタ83が設けられている。
【0029】
また、発電ユニット12は、ガスセンサ90と、外気温センサ91と、操作基板92と、表示パネル93と、パワーコンディショナ94と、電源基板95と、制御装置100とを備える。ガスセンサ90、外気温センサ91、操作基板92、表示パネル93及びパワーコンディショナ94は、制御装置100と電気的に接続されている。また、リモコン140及び制御装置100は、熱源機200と通信可能に接続されている。
【0030】
ガスセンサ90は、例えば、筐体80の内部に設けられている。このガスセンサ90は、原燃料ガスの漏れを検知する。すなわち、ガスセンサ90は、原燃料ガスを検知した場合には、ガス検知信号を出力する構成とされている。
【0031】
外気温センサ91は、外気温を検出し、外気温に応じた信号を出力する。操作基板92は、制御装置100と有線又は無線により通信可能に接続されており、操作者の操作に応じた操作信号を制御装置100に出力する。表示パネル93は、制御装置100から出力された表示信号に応じた表示を行う。
【0032】
パワーコンディショナ94は、燃料電池54の出力端子と商用電源110から負荷111への交流電力ライン112との間に接続されている。以降、パワーコンディショナ94をパワコン94と略称する。パワコン94は、燃料電池54からの直流電力を交流電力に変換し商用電源110からの交流電力に付加する。
【0033】
電源基板95は、パワコン94から分岐した直流電力ライン113に接続されている。この電源基板95は、上述のガス弁22、圧力センサ24、流量センサ25、原燃料ガスポンプ26、流量センサ33、ブロワ34、改質水ポンプ44及び循環ポンプ64等の複数の補機や制御装置100等に直流電力を供給する。
【0034】
上述のガス弁22、圧力センサ24、流量センサ25、原燃料ガスポンプ26、流量センサ33、ブロワ34、改質水ポンプ44及び循環ポンプ64は、制御装置100に電気的に接続されている。制御装置100は、ガス弁22、原燃料ガスポンプ26、ブロワ34、改質水ポンプ44及び循環ポンプ64等の複数の補機を制御することにより、燃料電池システム10の運転を制御する。
【0035】
図2は、図1に示される制御装置100及びリモコン140の電気的な構成を示すブロック図である。制御装置100は、コンピュータによって構成されている。この制御装置100は、ハードウェア構成として、プロセッサ101と、メモリ102とを有する。プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。メモリ102は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージ等によって構成される。
【0036】
ROMは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを格納する。
【0037】
メモリ102を構成するROM又はストレージには、制御装置100の機能を実現するためのプログラム103が格納されている。プロセッサ101は、プログラム103を読み出し、RAMを作業領域としてプログラム103を実行する。
【0038】
リモコン140は、ハードウェア構成として、プロセッサ141と、メモリ142と、表示器144とを有する。プロセッサ141は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。メモリ142は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージ等によって構成される。
【0039】
リモコン140は、有線又は無線により制御装置100と通信可能に接続されている。制御装置100のプロセッサ101及びメモリ102と、リモコン140のプロセッサ141及びメモリ142と、リモコン140の表示器144とは、相互に電気的に接続されている。表示器144は、一例として、タッチパネルである。
【0040】
メモリ142を構成するROM又はストレージには、リモコン140の機能を実現するためのプログラム143が格納されている。プロセッサ141は、プログラム143を読み出し、RAMを作業領域としてプログラム143を実行する。燃料電池システム10の全体構成の概略は以上の通りである。
【0041】
ところで、上記構成の燃料電池システム10は、長期間継続した運転を可能にするために、定期点検を受けることが必要とされている。一例として、定期点検は、通常、運転開始後11年目以降に必要となる。この定期点検には、累積通電時間が約10年に到達した場合に必要になる定期点検Aと、発電出力400Wで10年相当の運転をした場合に必要になる定期点検Bの2種類がある。これらの定期点検には、それぞれ費用が発生する。
【0042】
燃料電池システム10は、所定の期限までに定期点検を受けない場合に、自動停止する仕様になっている。したがって、ユーザは、所定の期限までに定期点検を販売店まで申し込む必要がある。ところが、定期点検の期限をユーザが管理することは困難である。
【0043】
そこで、定期点検の期限をユーザが管理する煩わしさを解消するために、リモコン140の表示器144に定期点検を促す表示をすることが考えられる。すなわち、具体的には、リモコン140の表示器144に「定期点検」の文字を表示することが考えられる。
【0044】
しかしながら、リモコン140の表示器144に「定期点検」の文字が表示されても、その表示がされた時点で定期点検が本当に必要であるか否かをユーザが判断することは難しく、定期点検を受けるか否かの選択肢が少ない。また、定期点検には、費用が発生するため、定期点検に対してユーザが抵抗感を示すことが少なくない。したがって、定期点検の要否をユーザが容易に選択できることが望まれる。
【0045】
そこで、燃料電池システム10は、次の機能を備える。図3は、図1に示される燃料電池システム10の機能的な構成を示すブロック図である。燃料電池システム10は、制御部150と、記憶部158とを備える。制御部150は、例えば、図2に示される制御装置100によって構成される。記憶部158は、例えば、図2に示される制御装置100のメモリ102によって構成される。
【0046】
制御部150は、より具体的には、判定部151と、表示制御部152と、取消制御部153と、取消操作判定部154と、運転停止制御部155と、運転再開制御部156と、記憶制御部157とを備える。これら判定部151等の機能部は、図2に示される制御装置100のプロセッサ101がプログラム103を実行することで実現される。これら判定部151等の機能部が有する機能については、後述する燃料電池システム10の動作と併せて説明する。
【0047】
なお、制御部150の一部は、リモコン140によって構成されてもよい。この場合、制御部150は、制御装置100及びリモコン140によって構成される。つまり、制御部150は、制御装置100及びリモコン140のうち少なくとも制御装置100によって構成されていればよい。また、記憶部158は、リモコン140のメモリ142によって構成されてもよく、制御装置100のメモリ102及びリモコン140のメモリ142の両方によって構成されてもよい。
【0048】
以上の構成の燃料電池システム10は、燃料電池システム10の定期点検時に交換が必要とされる消耗品を備える。この消耗品には、累積通電時間が約10年に到達した場合の定期点検Aの際に交換が必要な消耗品Aと、発電出力400Wで10年相当の運転をした場合の定期点検Bの際に交換が必要な消耗品Bとがある。
【0049】
消耗品Aは、例えば、ガスセンサ90であり、消耗品Bは、例えば、脱硫器23、改質水タンク42(中和タンク)、エアフィルタ32、イオン交換樹脂43(イオン交換樹脂タンク)及び換気フィルタ83である。
【0050】
次に、本実施形態に係る燃料電池システム10の動作について説明する。
【0051】
図4は、図3に示される制御部150の動作の流れを示すフローチャートである。制御部150は、燃料電池システム10が運転されている期間中に、以下のステップS1~ステップS11を実行する。
【0052】
ステップS1では、制御部150(判定部151)が、消耗品の寿命を判定する。このとき、制御部150(判定部151)は、例えば、累積通電時間が約10年に達するまで残り3か月(累積通電時間で計算)になった場合には、消耗品Aが寿命に近づいたと判定する。また、制御部150(判定部151)は、発電出力400Wで10年相当の運転をした期間に達するまで残り3か月(発電出力400W相当のガス積算流量で計算)になった場合には、消耗品Bが寿命に近づいたと判定する。
【0053】
制御部150は、消耗品A及び消耗品Bが寿命に近づいていないと判定した場合(ステップS1:NO)には、リターンする。そして、制御部150は、消耗品A又は消耗品Bが寿命に近づいたと判定するまでステップS1を繰り返し実行する。制御部150は、消耗品A又は消耗品Bが寿命に近づいたと判定した場合(ステップS1:YES)には、ステップS2に移行する。
【0054】
ステップS2では、制御部150(判定部151)が、消耗品の寿命を再び判定する。このとき、制御部150(判定部151)は、例えば、累積通電時間が約10年に到達した場合には、消耗品Aが寿命に到達したと判定する。また、制御部150(判定部151)は、発電出力400Wで10年相当の運転をした場合には、消耗品Bが寿命に到達したと判定する。制御部150は、消耗品A及び消耗品Bが寿命に到達していないと判定した場合(ステップS2:NO)には、ステップS3に移行する。
【0055】
ステップS3では、制御部150(表示制御部152)が、消耗品A又は消耗品Bが寿命に近づいた旨の寿命接近メッセージ162を表示器144に表示させる。
【0056】
図5は、消耗品が寿命に近づいた場合に表示器144に表示される寿命接近メッセージ162の一例を示す図である。図5には、一例として、消耗品Bが寿命に近づいた場合に表示器144に表示される寿命接近メッセージ162が示されている。
【0057】
寿命接近メッセージ162は、消耗品Bが寿命に近づいた旨のメッセージであり、具体的には、「発電ユニットの消耗品Bが寿命間近です。交換せずに使用すると故障の可能性があります。」と表示される。寿命接近メッセージ162は、ふろ設定温度や給湯設定温度等を表す設定温度表示145や、床暖房、ふろ設定、メニュー及びふろ自動を選択するための複数のボタン146とは別に、ポップアップ表示160により表示される。
【0058】
なお、特に図示しないが、消耗品Aが寿命に近づいた場合にも、消耗品Bが寿命に近づいた場合と同様の寿命接近メッセージ162がポップアップ表示160により表示される。
【0059】
また、ポップアップ表示160には、OKボタン161が表示される。このOKボタン161が押されると、ポップアップ表示160が取り消される(消滅する)。
【0060】
ステップS4は、上述のステップS2で消耗品A又は消耗品Bが寿命に到達したと判定された場合に実行される。このステップS4では、制御部150(運転停止制御部155)が、燃料電池システム10の運転を停止する。そして、制御部150は、ステップS5に移行する。
【0061】
ステップS5では、制御部150(表示制御部152)が、複数のメッセージを表示器144に表示させる。
【0062】
図6は、消耗品が寿命に到達した場合に表示器144に表示される複数のメッセージの一例を示す図である。図6には、一例として、消耗品Bが寿命に到達した場合に表示器144に表示される複数のメッセージの一例が示されている。
【0063】
この場合に表示される複数のメッセージには、寿命到達メッセージ172と、取消判断材料メッセージ173と、要連絡メッセージ174と、要発電指示メッセージ175と、残時間メッセージ176が含まれる。これらのメッセージは、ふろ設定温度や給湯設定温度等を表す設定温度表示145や、床暖房、ふろ設定、メニュー及びふろ自動を選択するための複数のボタン146とは別に、ポップアップ表示170により表示される。
【0064】
寿命到達メッセージ172は、消耗品Bが寿命に到達した旨のメッセージであり、具体的には、「発電ユニットの消耗品Bが寿命を迎えました。」と表示される。取消判断材料メッセージ173は、ユーザに対して寿命到達メッセージ172の表示を取り消すか否かの判断材料になるメッセージであり、具体的には、「交換せずに使用すると故障の可能性があります。」と表示される。
【0065】
要連絡メッセージ174は、ユーザが消耗品Bの交換を望む場合には燃料電池システム10を販売した販売店へ連絡することが必要である旨のメッセージであり、具体的には、「交換する場合は販売店にご連絡ください。」と表示される。要発電指示メッセージ175は、ユーザが燃料電池システム10の運転継続を望む場合には燃料電池システム10に対して発電指示の操作が必要である旨のメッセージであり、具体的には、「運転継続の場合は発電設定入にしてください。」と表示される。
【0066】
残時間メッセージ176は、燃料電池システム10の設置後の運転継続時間が予め定められた限界に到達するまでの残時間を表すメッセージであり、具体的には、「運転継続できなくなるまで残り〇〇時間です。」と表示される。「残り〇〇時間」には、例えば、「残り24時間」等のように具体的な数値が表示される。
【0067】
なお、特に図示しないが、消耗品Aが寿命に到達した場合にも、消耗品Bが寿命に到達した場合と同様に、複数のメッセージがポップアップ表示170により表示される。
【0068】
また、ポップアップ表示170には、OKボタン171が表示される。さらに、表示器144には、ふろ設定温度及び給湯温度を設定するボタン147や、床暖房、ふろ設定、メニュー及びふろ自動を選択するための複数のボタン146が表示される。これらの複数のボタン146、147は、短く押されることで選択されるが、OKボタン171は、複数のボタン146、147を選択する操作(短く押す)とは異なる態様の操作の一例として、長押しされることで選択される。このOKボタン171が長押しされると、ポップアップ表示170の表示が取り消される(消滅する)。
【0069】
ステップS6では、制御部150(取消操作判定部154)が、OKボタン171が長押しされたか否かを判定する。このOKボタン171を長押しすることは、ポップアップ表示170の表示を取り消す操作の他に、燃料電池システム10の運転を再開させるための発電指示の操作にも相当する。
【0070】
ここで、OKボタン171が長押しされていない場合、制御部150は、上述のステップS4に戻り、燃料電池システム10の運転を停止した状態に維持する。一方、ステップS4~ステップS6が繰り返し実行される間に、OKボタン171が長押しされると、制御部150(取消操作判定部154)が、OKボタン171が長押しされたと判定する。そして、制御部150は、ステップS7に移行する。
【0071】
ステップS7では、制御部150(取消制御部153)が、寿命到達メッセージ172を含む複数のメッセージを表すポップアップ表示170の表示を取り消す。そして、制御部150は、ステップS8に移行する。
【0072】
ステップS8では、制御部150(運転再開制御部156)が、燃料電池システム10の運転を再開させる。そして、制御部150は、ステップS9に移行する。
【0073】
ステップS9では、制御部150(記憶制御部157)が、燃料電池システム10の運転再開後の累積通電時間又は累積ガス積算流量を記憶部158に記憶させる。そして、制御部150は、ステップS10に移行する。
【0074】
ステップS10では、制御部150(運転停止制御部155)が、燃料電池システム10の設置後の運転継続時間が予め定められた限界に到達したか否かを判定する。燃料電池システム10の設置後の運転継続時間は、累積通電時間又は累積ガス積算流量に基づいて算出される。
【0075】
ここで、燃料電池システム10の設置後の運転継続時間が限界に到達していない場合、制御部150は、上述のステップS8に戻り、燃料電池システム10の運転を継続する。一方、ステップS8~ステップS10が繰り返し実行される間に、燃料電池システム10の設置後の運転継続時間が限界に到達すると、制御部150(運転停止制御部155)が、燃料電池システム10の設置後の運転継続時間が限界に到達したと判定する。そして、制御部150は、ステップS11に移行する。
【0076】
ステップS11では、制御部150(運転停止制御部155)が、燃料電池システム10の運転を停止する。
【0077】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0078】
以上詳述したように、本実施形態に係る燃料電池システム10では、消耗品が寿命に近づくと、消耗品が寿命に近づいた旨の寿命接近メッセージ162が表示器144に表示される。したがって、寿命接近メッセージ162により、消耗品の交換時期をユーザに事前に知らせることができる。
【0079】
また、消耗品が寿命に到達すると、消耗品が寿命に到達した旨の寿命到達メッセージ172と、ユーザに対して寿命到達メッセージ172の表示を取り消すか否かの判断材料になる取消判断材料メッセージ173が表示器144に表示される。したがって、寿命到達メッセージ172により、消耗品が寿命に到達したことをユーザに知らせることができると共に、取消判断材料メッセージ173により、寿命到達メッセージ172の表示を取消しても大丈夫か否か、すなわち、定期点検が本当に必要であるか否かをユーザが判断することができる。
【0080】
また、寿命到達メッセージ172及び取消判断材料メッセージ173を含むポップアップ表示170に表示されたOKボタン171が長押しされると、ポップアップ表示170の表示が取り消され、ユーザがひとまず定期点検を受けなくて済む状態になる。このように、本実施形態に係る燃料電池システム10では、定期点検の要否をユーザが容易に選択できる。
【0081】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10では、寿命到達メッセージ172及び取消判断材料メッセージ173を含むポップアップ表示170の表示を取り消すには、OKボタン171を長押しする必要がある。したがって、ユーザがポップアップ表示170を誤って取り消してしまうことを防止できる。
【0082】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10では、消耗品が寿命に到達すると、燃料電池システム10の運転がひとまず停止する。したがって、この段階で、定期点検が本当に必要であるか否かをユーザが熟慮することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10では、燃料電池システム10の運転が停止されると、要連絡メッセージ174、すなわち、ユーザが消耗品の交換を望む場合には燃料電池システム10を販売した販売店へ連絡することが必要である旨のメッセージが表示器144に表示される。これにより、定期点検が本当に必要であるか否かをユーザが検討できる。
【0084】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10では、燃料電池システム10の運転が停止されると、要発電指示メッセージ175、すなわち、ユーザが燃料電池システム10の運転継続を望む場合には燃料電池システム10に対して発電指示の操作が必要である旨のメッセージが表示器144に表示される。そして、燃料電池システム10に対して発電指示の操作(一例として、OKボタン171の長押し)が行われた場合には、燃料電池システム10の運転が再開される。これにより、ユーザの意思で燃料電池システム10の運転を継続できる。
【0085】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10では、燃料電池システム10の運転が再開された場合に、燃料電池システム10の運転再開後の累積通電時間又は累積ガス積算流量が記憶部158に記憶される。これにより、後の定期点検時に、燃料電池システム10の運転再開後の累積通電時間又は累積ガス積算流量を把握することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る燃料電池システム10では、消耗品が寿命に到達した場合に、燃料電池システム10の設置後の運転継続時間が予め定められた限界に到達するまでの残時間が表示器144に表示される。これにより、定期点検をしなくても、燃料電池システム10を残りどれくらいの時間だけ使用できるかをユーザが把握することができる。
【0087】
また、燃料電池システム10の運転が再開された後、運転継続時間が限界に到達した場合には、燃料電池システム10の運転が停止される。これにより、燃料電池システム10の限界を超えた使用を防止できる。
【0088】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0089】
上記実施形態では、好ましい例として、OKボタン171が長押しされた場合に、ポップアップ表示170の表示が取り消されるが、複数のボタン146と同様にOKボタン171が短く押された場合に、ポップアップ表示170の表示が取り消されてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、好ましい例として、ポップアップ表示170の表示を取り消すための操作として、OKボタン171を長押しする必要があるが、OKボタン171の長押し以外の操作によって、ポップアップ表示170の表示が取り消されてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、好ましい例として、燃料電池システム10の運転が停止された場合に、要連絡メッセージ174が表示器144に表示されるが、要連絡メッセージ174の表示が省かれてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、好ましい例として、燃料電池システム10の運転が停止された場合に、要発電指示メッセージ175が表示器144に表示されるが、要発電指示メッセージ175の表示が省かれてもよい。また、要発電指示メッセージ175の代わりに、例えば、OKボタン171に発電指示の操作が必要である旨の表示がされてもよい。
【0093】
また、上記実施形態において、寿命接近メッセージ162、寿命到達メッセージ172、取消判断材料メッセージ173、要連絡メッセージ174、要発電指示メッセージ175及び残時間メッセージ176の具体的内容は、一例であって、図5図6に示される内容以外でもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、好ましい例として、消耗品A又は消耗品Bが寿命に近づいた場合に、寿命接近メッセージ162が表示器144に表示されるが、寿命接近メッセージ162の表示は省かれてもよい。
【0095】
なお、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0097】
10…燃料電池システム、12…発電ユニット、20…原燃料ガス供給装置、21…原燃料ガス供給管、22…ガス弁、23…脱硫器、24…圧力センサ、25…流量センサ、26…原燃料ガスポンプ、30…酸化剤ガス供給装置、31…酸化剤ガス供給管、32…エアフィルタ、33…流量センサ、34…ブロワ、40…改質水供給装置、41…改質水供給管、42…改質水タンク、43…イオン交換樹脂、44…改質水ポンプ、50…発電モジュール、51…モジュールケース、52…気化器、53…改質器、54…燃料電池、60…排熱回収装置、61…往路管、62…復路管、63…熱交換器、64…循環ポンプ、70…貯湯タンク、80…筐体、81…酸化剤ガス取入口、82…換気口、83…換気フィルタ、90…ガスセンサ、91…外気温センサ、92…操作基板、93…表示パネル、94…パワーコンディショナ(パワコン)、95…電源基板、100…制御装置、101…プロセッサ、102…メモリ、103…プログラム、110…商用電源、111…負荷、112…交流電力ライン、113…直流電力ライン、140…リモートコントローラ(リモコン)、141…プロセッサ、142…メモリ、143…プログラム、144…表示器、145…設定温度表示、146…ボタン、147…ボタン、150…制御部、151…判定部、152…表示制御部、153…取消制御部、154…取消操作判定部、155…運転停止制御部、156…運転再開制御部、157…記憶制御部、158…記憶部、160…ポップアップ表示、161…OKボタン、162…寿命接近メッセージ、170…ポップアップ表示、171…OKボタン、172…寿命到達メッセージ、173…取消判断材料メッセージ、174…要連絡メッセージ、175…要発電指示メッセージ、176…残時間メッセージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6