(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】燃料電池システム、制御装置、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20240318BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240318BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/0612
H01M8/0432
H01M8/04 Z
(21)【出願番号】P 2020176201
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】斎宮 久幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030303(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132410(WO,A1)
【文献】特開2012-256607(JP,A)
【文献】特開2018-169903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04664
H01M 8/04228
H01M 8/04303
H01M 8/0612
H01M 8/0432
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電を行う燃料電池モジュールが設けられ、かつ、前記燃料電池モジュールに接続されたガス経路、改質水経路、及び空気経路が設けられた燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットがエラーにより停止した場合に、前記エラーを通知する制御を行う制御部を含む制御装置と、
を備え、
前記制御部は、前記エラーの種別を判定し、前記エラーが、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合に、前記燃料電池ユニットの温度が所定温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行い、前記エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーである場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーである場合に、即時に前記エラーを通知する制御を行う、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーでない場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーでない場合に、前記燃料電池ユニットの温度が、手で触れることが可能な温度、又は前記燃料電池システムの再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行う、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池モジュールは、電解質層、燃料極、及び空気極を有する複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、炭化水素原料を含むガスを改質する改質器と、を備え、
前記所定温度として、前記改質器に導入される改質水が気化する温度である気化温度より高く、前記燃料電池スタックへの空気導入により燃料電池セルの再酸化が生じる温度である再酸化温度以下の温度が設定されている
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池ユニットの温度として、前記燃料電池スタックの温度であるスタック温度及び前記改質器の温度である改質温度の両方が用いられる
請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記所定温度として、前記エラーの対象とされる、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路の組み合わせによって異なる温度が設定されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池モジュールは、電解質層、燃料極、及び空気極を有する複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、炭化水素原料を含むガスを改質する改質器と、を備え、
前記所定温度は、前記燃料電池スタックへの空気導入により燃料電池セルの再酸化が生じる温度である再酸化温度より高く、前記改質器へのガス導入により炭素析出が生じる温度である炭素析出温度以下の第1温度と、前記改質器に導入される改質水が気化する温度である気化温度より高く、前記再酸化温度以下の第2温度と、を含み、
前記制御部は、
前記エラーの対象が、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路の組み合わせ、又は、前記ガス経路及び前記空気経路の組み合わせ、又は、前記改質水経路及び前記空気経路の組み合わせ、又は、前記空気経路のみである場合に、前記第2温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行い、
前記エラーの対象が、前記ガス経路及び前記改質水経路の組み合わせ、又は、前記ガス経路のみである場合に、前記第1温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行う
請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
発電を行う燃料電池モジュールが設けられ、かつ、前記燃料電池モジュールに接続されたガス経路、改質水経路、及び空気経路が設けられた燃料電池ユニットを備えた燃料電池システムの運転を制御する制御装置であって、
前記燃料電池ユニットがエラーにより停止した場合に、前記エラーを通知する制御を行う制御部を含み、
前記制御部は、前記エラーの種別を判定し、前記エラーが、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合に、前記燃料電池ユニットの温度が所定温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行い、前記エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーである場合又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーである場合に、即時に前記エラーを通知する制御を行う、
制御装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の制御装置が備える制御部として機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、制御装置、及び制御プログラムに関し、詳しくは、電力と湯の供給が可能な燃料電池システム、制御装置、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムは、燃料電池ユニットの空気取り入れ口に接近する障害物を検出し、障害物の検出から所定時間経過後に警告を発するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、アラーム信号が入力されると、熱情報とアラーム情報との両方の情報を表示する第1表示画面を表示手段に表示させ、第1表示画面が表示されている状態で、操作手段が操作されると、アラーム情報とアラーム詳細情報との両方の情報を表示する第2表示画面を表示手段に表示させるものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、発電システムが故障しておらず、かつ、発電システムが発電していない期間が予め定められる第1期間以上になった場合に、報知器で予め定められた報知情報を報知するものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-103167号公報
【文献】WO2012/063380号公報
【文献】特開2014-049218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発電ユニットがエラー停止した場合、ガス経路、改質水経路、及び空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合、発電ユニットの温度が高いとメンテナンス作業(修理を含む)を行うことができない。このため、エラー停止後にユーザがエラーに気づいてコールセンターへ連絡し、すぐに作業担当者が現場へ急行できた場合であっても、発電ユニットの温度がある程度低下するまでメンテナンス作業が行えない。この場合、作業担当者は現場で待機する、あるいは、再出動することもあり、ユーザ及び作業担当者の負担が増す。つまり、発電ユニットがエラー停止した場合、全てのエラーの種別に対して、即時にエラー通知を行えばよいわけではなく、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラー通知を行うことが望ましい。
【0007】
上記特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載される従来技術はいずれも、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラー通知を行うことについて考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてされたものであって、発電ユニットがエラー停止した場合に、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラーを通知することができる燃料電池システム、制御装置、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1態様に係る燃料電池システムは、発電を行う燃料電池モジュールが設けられ、かつ、前記燃料電池モジュールに接続されたガス経路、改質水経路、及び空気経路が設けられた燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットがエラーにより停止した場合に、前記エラーを通知する制御を行う制御部を含む制御装置と、を備え、前記制御部は、前記エラーの種別を判定し、前記エラーが、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合に、前記燃料電池ユニットの温度が所定温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行い、前記エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーである場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーである場合に、即時に前記エラーを通知する制御を行う。
【0010】
第1態様に係る燃料電池システムによれば、燃料電池ユニットがエラー停止した場合に、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラーを通知することができる。
【0011】
具体的には、エラーが、ガス経路、改質水経路、及び空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合には、燃料電池ユニットの温度が所定温度以下になってからエラーを通知することができる。
また、エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーである場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーである場合には、即時にエラーを通知することができる。
【0012】
第2態様に係る燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーでない場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーでない場合に、前記燃料電池ユニットの温度が、手で触れることが可能な温度、又は前記燃料電池システムの再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行う。
【0013】
第2態様に係る燃料電池システムによれば、エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーでない場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーでない場合には、燃料電池システムの内部の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システムの再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になってからエラーを通知することができる。
【0014】
第3態様に係る燃料電池システムにおいて、前記燃料電池モジュールは、電解質層、燃料極、及び空気極を有する複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、炭化水素原料を含むガスを改質する改質器と、を備え、前記所定温度として、前記改質器に導入される改質水が気化する温度である気化温度より高く、前記燃料電池スタックへの空気導入により燃料電池セルの再酸化が生じる温度である再酸化温度以下の温度が設定されている。
【0015】
第3態様に係る燃料電池システムによれば、所定温度として、燃料電池ユニットのガス経路、改質水経路、及び空気経路に対する経路診断可能な温度を適用することができる。
【0016】
第4態様に係る燃料電池システムでは、前記燃料電池ユニットの温度として、前記燃料電池スタックの温度であるスタック温度及び前記改質器の温度である改質温度の両方が用いられる。
【0017】
第4態様に係る燃料電池システムによれば、燃料電池ユニットの温度として、スタック温度及び改質温度の両方を適用することができる。
【0018】
第5態様に係る燃料電池システムでは、前記所定温度として、エラーの対象とされる、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路の組み合わせによって異なる温度が設定されている。
【0019】
第5態様に係る燃料電池システムによれば、所定温度として、ガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせ毎に経路診断可能な温度を適用することができる。
【0020】
第6態様に係る燃料電池システムは、前記燃料電池モジュールが、電解質層、燃料極、及び空気極を有する複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、炭化水素原料を含むガスを改質する改質器と、を備え、前記所定温度が、前記燃料電池スタックへの空気導入により燃料電池セルの再酸化が生じる温度である再酸化温度より高く、前記改質器へのガス導入により炭素析出が生じる温度である炭素析出温度以下の第1温度と、前記改質器に導入される改質水が気化する温度である気化温度より高く、前記再酸化温度以下の第2温度と、を含み、前記制御部が、前記エラーの対象が、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路の組み合わせ、又は、前記ガス経路及び前記空気経路の組み合わせ、又は、前記改質水経路及び前記空気経路の組み合わせ、又は、前記空気経路のみである場合に、前記第2温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行い、前記エラーの対象が、前記ガス経路及び前記改質水経路の組み合わせ、又は、前記ガス経路のみである場合に、前記第1温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行う。
【0021】
第6態様に係る燃料電池システムによれば、ガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせ毎に、燃料電池ユニットの温度が所定温度以下になってからエラーを通知することができる。
【0022】
更に、上記目的を達成するために、第7態様に係る制御装置は、発電を行う燃料電池モジュールが設けられ、かつ、前記燃料電池モジュールに接続されたガス経路、改質水経路、及び空気経路が設けられた燃料電池ユニットを備えた燃料電池システムの運転を制御する制御装置であって、前記燃料電池ユニットがエラーにより停止した場合に、前記エラーを通知する制御を行う制御部を含み、前記制御部は、前記エラーの種別を判定し、前記エラーが、前記ガス経路、前記改質水経路、及び前記空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合に、前記燃料電池ユニットの温度が所定温度以下になってから前記エラーを通知する制御を行い、前記エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーである場合又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーである場合に、即時に前記エラーを通知する制御を行う。
【0023】
第7態様に係る制御装置によれば、第1態様に係る燃料電池システムと同様の効果を得ることができる。
【0024】
更に、上記目的を達成するために、第8態様に係る制御プログラムは、コンピュータを、第1態様~第6態様のいずれか1の態様に係る制御装置が備える制御部として機能させる。
【0025】
第8態様に係る制御プログラムによれば、第1態様~第6態様のいずれか1の態様に係る燃料電池システムと同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、発電ユニットがエラー停止した場合に、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラーを通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る燃料電池モジュールの構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る第1データテーブルの一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態に係る第2データテーブルの一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る第3データテーブルの一例を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池システム10の構成の一例を示す図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム10は、大きく分けて、燃料電池ユニット12と、熱源機ユニットの一例である給湯ユニット14との2ユニットで構成されている。なお、燃料電池ユニット12は、後述する貯湯タンク48を収容する貯湯タンクユニットを別体としてもよく、この場合、3ユニットで構成される。
【0031】
燃料電池ユニット12は、燃料ガス及び酸化ガスを用いて発電を行う。また、燃料電池ユニット12は、貯湯タンク48を備え、発電により生じた熱を熱交換で回収する伝熱媒体としての水を貯湯タンク48に蓄える。給湯ユニット14は、燃料電池ユニット12で加熱された上水を目的の温度まで加熱して供給する。なお、貯湯タンク48には、一例として、開放式のタンクを用いているが、加圧式のタンクを用いてもよい。
【0032】
燃料電池ユニット12は、発電を行う燃料電池の一例である燃料電池モジュール20を備えている。燃料電池モジュール20は、ガス供給路21を介して、ガス継手22に接続されており、ガス継手22には、ガス供給管24が接続されている。ガス供給管24は、後述する給湯ユニット14のバーナ150へ向かう流路と燃料電池モジュール20へ向かう流路とに分岐されている。当該分岐を分岐部24Aと称する。
【0033】
ガス供給管24は、ガス本管(図示省略)に接続されており、ガス供給管24には、炭化水素原料の一例であるメタンを主成分とする都市ガス(原料ガス)が供給される。ガス供給路21には、脱硫部26が設けられており、都市ガスに含まれた硫黄分や硫黄化合物が脱硫部26で除去されて燃料電池モジュール20に供給される。
【0034】
また、燃料電池モジュール20は、供給ポンプ28を有する改質水流入路30を介して貯留槽32に接続されており、燃料電池モジュール20には、貯留槽32に貯留された改質水が供給ポンプ28で供給される。この燃料電池モジュール20には、空気ブロワ211が設けられた酸化ガス管212が接続されており、酸化ガス管212を介して、酸化ガス(外部の空気)が供給される。この燃料電池モジュール20は、都市ガスと改質水とを改質反応させて水素を生成する水素生成部(改質器)を備えている。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係る燃料電池モジュール20の構成の一例を示す図である。
【0036】
図2に示すように、燃料電池モジュール20は、筐体201の内部に、改質触媒202、バーナ203、及び燃料電池スタック205を主要な構成として備えている。
【0037】
改質触媒202は、ガス供給路21と接続されている。この改質触媒202には、脱硫部26にて硫黄化合物が吸着除去された都市ガスがガス供給路21を通じて供給される。この改質触媒202は、供給された都市ガスを、改質水流入路30を通じて供給された改質水(凝縮水)を利用して水蒸気改質する改質器である。改質触媒202には、温度センサS1が設けられており、温度センサS1により改質温度が計測可能とされる。
【0038】
バーナ203には、後述する排出路34が接続されている。このバーナ203は、スタック排ガス管207を通じて供給されたバーナガス(スタックから排出されるガス)を燃焼し、改質触媒202を加熱する。そして、この改質触媒202では、脱硫部26から供給された都市ガスから、水素ガスを含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、燃料ガス管204を通じて後述する燃料電池スタック205の燃料極206に供給される。
【0039】
燃料電池スタック205は、例えば、固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セル208(
図2では1つのみ図示)を有している。各燃料電池セル208は、電解質層209と、この電解質層209の表裏面にそれぞれ積層された燃料極206と空気極210とを有している。燃料電池スタック205には、温度センサS2が設けられており、温度センサS2によりスタック温度が計測可能とされる。
【0040】
空気極210(カソード極)には、空気ブロワ211が設けられた酸化ガス管212を通じて酸化ガス(外部の空気)が供給される。この空気極210では、下記式(1)で示されるように、酸化ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層209を通って燃料極206に到達する。
【0041】
(空気極反応)
1/2O2+2e- →O2- ・・・(1)
【0042】
一方、燃料極206では、下記式(2)及び式(3)で示されるように、電解質層209を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と、電子が生成される。燃料極206で生成された電子は、外部回路を通って空気極210に到達する。そして、このようにして電子が燃料極206から空気極210に移動することにより、各燃料電池セル208において発電される。また、各燃料電池セル208は、発電時に上記反応に伴って発熱する。
【0043】
(燃料極反応)
H2 +O2- →H2O+2e- ・・・(2)
CO+O2- →CO2+2e- ・・・(3)
【0044】
燃料電池スタック205に接続されたスタック排ガス管207の上流側は、燃料極排ガス管214及び空気極排ガス管215に分岐されており、この燃料極排ガス管214及び空気極排ガス管215は、燃料極206及び空気極210にそれぞれ接続されている。燃料極206から排出された燃料極排ガスと、空気極210から排出された空気極排ガスとは、燃料極排ガス管214及び空気極排ガス管215を通じて排出されると共に、スタック排ガス管207内にて混合されてスタック排ガスとされる。このスタック排ガスは、燃料極排ガスに含まれる未反応の水素ガスを含んでおり、上述の通り、バーナ203にバーナガスとして供給される。なお、このバーナ203に、バーナ排ガスを排気熱交換器36へ排出する排出路34が接続されている。
【0045】
燃料電池モジュール20には、水素生成部での改質反応促進の為に利用した燃焼排ガスを排出する排出路34が接続されている。排出路34には、排気熱交換器36が設けられており、排気熱交換器36より下流側が貯留槽32に接続されている。燃料電池モジュール20からの燃焼排ガスは、排気熱交換器36で後述する伝熱媒体50との熱交換により冷却され、含有されている水蒸気が凝縮される。これにより、燃焼排ガスは、水とガスとに分けられ、水は貯留槽32へ送られて改質水として再利用される。また、ガスは、排気口(図示省略)より排気される。
【0046】
貯留槽32には、排水ポンプ100を有した排水路102が接続されており、排水路102は、排水継手102aに接続された排水管104を介して下水道に接続されている。排水ポンプ100は、貯留槽32の水が所定量以上になった際に作動し、貯留槽32内の水を、排水管104を介して下水道に排出する。
【0047】
燃料電池モジュール20は、上述したように、水素生成部で生成した水素を利用して発電を行う燃料電池スタック205を備えている。燃料電池モジュール20の燃料電池スタック205で発電された電力は、インバータ回路38によって交流に変換された後、接続端子40aに接続された供給線92aを介して外部へ供給される。
【0048】
排気熱交換器36には、伝熱媒体50を排気熱交換器36と貯湯タンク48との間で循環させる熱回収循環路42が接続されている。排気熱交換器36と貯湯タンク48とを接続する熱回収循環路42の一方の流路である第一流路42aには、熱回収ポンプ44及びラジエータ46が設けられている。この第一流路42aのラジエータ46より上流側は、貯湯タンク48に接続されている。貯湯タンク48には、伝熱媒体50が貯留されており、伝熱媒体50としては、一例として水が使用されている。貯湯タンク48の上部は大気開放されている。また、貯湯タンク48には、貯湯タンク内の上水の水位を計測する水位センサ52が設けられている。
【0049】
この第一流路42aは、貯湯タンク48の下部に接続されており、貯湯タンク48の下部に貯留された伝熱媒体50が優先的に排気熱交換器36へ送られる。貯湯タンク48から熱回収循環路42の第一流路42aに供給された伝熱媒体50は、ラジエータ46で冷却された後、熱回収ポンプ44によって排気熱交換器36へ送られる。なお、ラジエータ46は、供給される伝熱媒体50が高温の際など必要に応じてファンモータが作動する。
【0050】
貯湯タンク48から第一流路42aを介して排気熱交換器36へ送られた伝熱媒体50は、熱回収循環路42の他方の流路である第二流路42eを介して貯湯タンク48に戻される。第二流路42eは、貯湯タンク48の上部に接続されている。燃料電池モジュール20からの燃焼排ガスの熱は、排気熱交換器36によって伝熱媒体50へ移動され、この熱で加熱された伝熱媒体50は、貯湯タンク48の上部に戻される。これにより、燃料電池モジュール20で発生した熱により貯湯タンク48内の伝熱媒体50が加熱される。
【0051】
貯湯タンク48に貯留された伝熱媒体50は、熱回収循環路42と異なる熱供給循環路58を介して、燃料電池ユニット12に設けられた上水熱交換器54に供給される。これにより、貯湯タンク48の伝熱媒体50は、熱供給循環路58に設けられた上水熱交換器54を経て貯湯タンク48へ戻される。
【0052】
熱供給循環路58の上水熱交換器54よりも上流側の第一流路58aには、熱供給ポンプ56が設けられている。熱供給ポンプ56は、貯湯タンク48の伝熱媒体50の熱を利用して上水等を加熱する際に作動する。
【0053】
第一流路58aの上流端は、貯湯タンク48の上部に接続されており、貯湯タンク48の上部に貯留された伝熱媒体50が第一流路58aへ送出される。第一流路58aの下流端は、上水熱交換器54と接続され、貯湯タンク48の上部に貯留された伝熱媒体50が上水熱交換器54へ供給される。熱供給循環路58の下流側の第二流路58eは、貯湯タンク48の下部に接続されており、上水熱交換器54で熱が奪われた伝熱媒体50は、貯湯タンク48の下部側に戻される。
【0054】
上水熱交換器54には、流入側分岐点60aを有する流入路60が接続されている。流入路60は、入側管継手62に接続されている。入側管継手62は、例えば水道管の給水管64に接続されており、流入路60には、上水が供給される。
【0055】
上水熱交換器54には、流入路60からの上水が熱交換後に流出する流出路66が接続されている。流出路66には、流出側分岐点66aが設けられており、流出側分岐点66aには、補水弁68を有した補水路71が接続されている。補水路71は、熱供給循環路58の第一流路58aに接続されており、補水弁68を開作動することで、上水を伝熱媒体50として、上水熱交換器54の上流側から貯湯タンク48へ供給することができる。
【0056】
流出路66の流出側分岐点66aの下流には、混合弁72が設けられている。混合弁72は、バイパス路74を介して流入側分岐点60aに接続されている。混合弁72は、流入路60からの上水と上水熱交換器54からの上水とを混合する弁であり、例えば流出温度が予め定められた設定温度となるように、流入路60からの上水と上水熱交換器54からの上水との混合比を調整する。
【0057】
流出路66の混合弁72より下流側は、出側継手76に接続されており、出側継手76は、出湯管78を介して、給湯ユニット14の入水継手80に接続されている。
【0058】
また、給湯ユニット14のガス継手82には、ガス供給管24が接続されており、給湯ユニット14のバーナ150には、ガス供給管24からの都市ガスが供給される。バーナ150の燃焼熱により、熱交換器154を通過する水が加熱される。
【0059】
給湯ユニット14の給湯継手84には、給湯管86が接続されており、給湯管86は、お湯が利用される給湯箇所へ配索されている。そして、給湯ユニット14に接続された排水管88は、下水道に接続されている。
【0060】
給湯ユニット14の入水継手80には、入水路152が接続されており、入水路152は、熱交換器154に接続されている。熱交換器154は、混合弁156を有する給湯路158を介して給湯継手84に接続されており、混合弁156は、バイパス路160を介して入水路152の入水側分岐点152aに接続されている。また、入水継手80と入水側分岐点152aとの間には、流量制御弁53が設けられている。
【0061】
混合弁156は、入水路152からの上水と熱交換器154からの上水とを混合する弁であり、入水路152からの上水と熱交換器154からの上水との混合比を調整する。
【0062】
なお、給湯ユニット14には、暖房用の暖房管や、ふろ追焚き用のふろ管などが配策されており、各々循環路を構成すると共に、熱交換器154での熱交換により循環路内の水が加熱される。これら暖房管、ふろ管については図示を省略している。
【0063】
給湯ユニット14は、燃料電池ユニット12で加熱された上水、暖房管、ふろ管内を流れる水を必要に応じて加熱するバックアップ用の熱源機として機能する。
【0064】
ガス供給管24の分岐部24Aよりも上流側には、マイコンメータ70が取り付けられている。マイコンメータ70は、供給するガスの流量を計測すると共に、ガスの供給における異常を監視する複数の機能を有している。主たる監視機能としては、異常流出監視機能、感震機能、圧力監視機能、及び長時間使用監視機能等がある。
【0065】
燃料電池ユニット12には、コントローラとしての制御装置110が設けられている。制御装置110により、燃料電池システム10の動作が制御される。制御装置110は、燃料電池ユニット12及び給湯ユニット14の各々に設けられた各種電装部品の制御を行う。また、制御装置110には、リモコン装置51が接続されている。リモコン装置51は、ユーザからの操作入力を受け付けると共に、燃料電池システム10の状態情報、エラー情報等の各種の情報を表示する。
【0066】
図3は、第1の実施形態に係る制御装置110の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、入出力インターフェース(I/O)114と、記憶部115と、外部インターフェース(以下、「外部I/F」という。)116と、を備えている。
【0068】
CPU111、ROM112、RAM113、及びI/O114は、バスを介して各々接続されている。I/O114には、記憶部115と、外部I/F116と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O114を介して、CPU111と相互に通信可能とされる。
【0069】
記憶部115としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部115には、燃料電池システム10の動作を制御するための制御プログラム115Aが記憶される。なお、この制御プログラム115Aは、ROM112に記憶されていてもよい。
【0070】
制御プログラム115Aは、例えば、制御装置110に予めインストールされていてもよい。制御プログラム115Aは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置110に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0071】
外部I/F116には、例えば、リモコン装置51、第1温度センサS1、及び第2温度センサS2が接続されている。これらのリモコン装置51、第1温度センサS1、及び第2温度センサS2は、外部I/F116を介して、CPU111と通信可能に接続される。
【0072】
ところで、上述したように、燃料電池ユニット12がエラー停止した場合、全てのエラーの種別に対して、即時にエラー通知を行えばよいわけではなく、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラー通知を行うことが望ましい。
【0073】
このため、本実施形態に係る制御装置110のCPU111は、記憶部115に記憶されている制御プログラム115AをRAM113に書き込んで実行することにより、
図4に示す各部として機能する。
【0074】
図4は、第1の実施形態に係る制御装置110の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0075】
図4に示すように、本実施形態に係る制御装置110のCPU111は、エラー検知部111A及びエラー通知制御部111Bとして機能する。なお、エラー通知制御部111Bは、制御部の一例である。
【0076】
本実施形態に係るエラー検知部111Aは、燃料電池ユニット12で発生するエラーを検知する。具体的に、燃料電池ユニット12に設けられた配管、タンク等の複数の構成部品にはそれぞれエラーの発生を検知するためのセンサが設けられており、センサの出力値がエラー検知部111Aでモニタされる。エラー検知部111Aは、センサの出力値が異常値を示した場合に、エラー発生として検知する。
【0077】
本実施形態に係るエラー通知制御部111Bは、燃料電池ユニット12がエラーにより停止した場合に、エラーの種別を判定し、エラーの種別に応じてエラーを通知する制御を行う。具体的には、エラー通知制御部111Bは、エラーが、ガス経路、改質水経路、及び空気経路のうちの少なくとも1つが故障の可能性があるエラーである場合に、燃料電池ユニット12の温度が所定温度以下になってからエラーを通知する制御を行う。また、エラー通知制御部111Bは、エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーである場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーである場合に、即時にエラーを通知する制御を行う。また、エラー通知制御部111Bは、エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーでない場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーでない場合に、燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になってからエラーを通知する制御を行う。
【0078】
エラーの通知先は、例えば、備え付けのリモコン装置51とされる。なお、ガス経路、改質水経路、及び空気経路は、燃料電池ユニット12に設けられ、燃料電池モジュール20に接続された経路である。本実施形態の場合、ガス供給路21は、ガス経路の一例であり、改質水流入路30は、改質水経路の一例であり、酸化ガス管212は、空気経路の一例である。但し、これらのガス経路、改質水経路、及び空気経路は、燃料電池システム10の構成に応じて各種の形態をとり得る。
【0079】
ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーは、例えば、配管破損や接続部からの漏洩を機器内部のガスセンサが検知された事によるガス漏洩検知エラーである。また、ユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーとは、例えば、ガスが供給されていない状態で起動した際に発生する燃料ガス元圧異常である。
【0080】
上記の所定温度をT[℃]とした場合、所定温度Tとしては、一例として、改質触媒202に導入される改質水が気化する温度(例えば、100℃、以下では「気化温度」という。)より高く、燃料電池スタック205への空気導入により燃料電池セル208の再酸化が生じる温度(例えば、300℃、以下では「再酸化温度」という。)以下の温度が予め設定されている。この所定温度Tは、燃料電池ユニット12がエラーにより停止した場合に、作業担当者による経路診断が可能になる温度とされる。ここでいう経路診断とは、作業担当者が、燃料電池ユニット12の改質水経路、ガス経路、及び空気経路について故障の有無を診断する作業のことをいう。
【0081】
また、燃料電池ユニット12の温度としては、燃料電池スタック205のスタック温度及び改質触媒202の改質温度の両方が用いられる。つまり、スタック温度及び改質温度の両方が所定温度T以下になってからエラーの通知が行われる。
【0082】
ここで、本実施形態に係る記憶部115には、第1データテーブル115Bが記憶されている。この第1データテーブル115Bは、エラー通知制御部111Bにより参照可能とされる。
【0083】
図5は、第1の実施形態に係る第1データテーブル115Bの一例を示す図である。
【0084】
図5に示す第1データテーブル115Bは、エラー種別(エラーコードA~H)毎に故障の可能性がある経路を予め指定して区分けしたデータテーブルである。エラーコードAは、ガス経路、改質水経路、及び空気経路を対象とするコードである。エラーコードBは、ガス経路及び改質水経路を対象とするコードである。エラーコードCは、ガス経路及び空気経路を対象とするコードである。エラーコードDは、ガス経路のみを対象とするコードである。エラーコードEは、改質水経路及び空気経路を対象とするコードである。エラーコードFは、改質水経路のみを対象とするコードである。エラーコードGは、空気経路のみを対象とするコードである。これらのエラーコードA~Gには「所定温度以下でエラー表示」が対応付けられている。
【0085】
また、エラーコードHは、ガス経路、改質水経路、及び空気経路以外をエラーの対象とするコードである。このエラーコードHには「別途処理後にエラー表示」が対応付けられている。
【0086】
次に、
図6を参照して、第1の実施形態に係る制御装置110の作用について説明する。
【0087】
図6は、第1の実施形態に係る制御プログラム115Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0088】
まず、CPU111により記憶部115に記憶されている制御プログラム115Aが起動され、以下に示す各ステップが実行される。
【0089】
図6のステップ300では、CPU111が、燃料電池ユニット12で発生するエラーを検知したか否かを判定する。エラーを検知したと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ301に移行し、エラーを検知していないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ300で待機となる。
【0090】
ステップ301では、CPU111が、ステップ300で検知したエラーのエラー種別を表すエラーコードを判定する。エラーコードA、B、C、D、E、F、Gのいずれかであると判定した場合(A、B、C、D、E、F、Gの場合)、ステップ302に移行し、エラーコードHであると判定した場合(Hの場合)、ステップ305に移行する。
【0091】
ステップ302では、CPU111が、一例として、上述の
図5に示す第1データテーブル115Bを参照し、スタック温度及び改質温度が共に所定温度T以下になるまで待機する。
【0092】
ステップ303では、CPU111が、スタック温度及び改質温度が共に所定温度T以下になったか否かを判定する。スタック温度及び改質温度が共に所定温度T以下になったと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ304に移行し、スタック温度及び改質温度が共に所定温度T以下にならないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ302に戻り処理を繰り返す。
【0093】
ステップ304では、CPU111が、一例として、リモコン装置51に対して、エラーコードを表示させ、本制御プログラム115Aによる一連の処理を終了する。
【0094】
一方、ステップ305では、CPU111が、エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーであるか、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーであるかを判定する。ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーであるか、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーであると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ304に移行し、一例として、リモコン装置51に対して、エラーコードを即時に表示させる。エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーでない場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーでないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ306に移行する。
【0095】
ステップ306では、CPU111が、燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度(規定温度)以下になるまで待機する。
【0096】
ステップ307では、CPU111が、燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になったか否かを判定する。燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になったと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ304に移行し、一例として、リモコン装置51に対して、エラーコードを表示させる。燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下にならないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ306に戻り処理を繰り返す。
【0097】
このように本実施形態によれば、燃料電池ユニットがエラーで停止した場合に、エラーの種別に応じて、適切なタイミングでエラーを通知することができる。このため、作業担当者が現場に到着してすぐにメンテナンス作業を行うことができ、作業担当者及びユーザの負担を軽減することができる。
【0098】
[第2の実施形態]
本実施形態では、エラーを通知する所定温度がガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせによって異なる形態について説明する。
【0099】
図7は、第2の実施形態に係る制御装置110Aの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0100】
図7に示すように、本実施形態に係る制御装置110AのCPU111は、エラー検知部111A及びエラー通知制御部111Bとして機能する。
【0101】
本実施形態に係る所定温度Tには、エラーの対象とされる、ガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせによって異なる温度が設定されている。具体的に、所定温度Tには、第1温度及び第2温度が含まれる。第1温度は、再酸化温度(例えば、300℃)より高く、改質触媒202へのガス導入により炭素析出が生じる温度(例えば、500℃、以下では「炭素析出温度」という。)以下の温度である。第2温度は、気化温度(例えば、100℃)より高く、再酸化温度以下の温度である。
【0102】
本実施形態に係るエラー通知制御部111Bは、エラーの対象が、ガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせ、又は、ガス経路及び空気経路の組み合わせ、又は、改質水経路及び空気経路の組み合わせ、又は、空気経路のみである場合に、第2温度以下になってからエラーを通知する制御を行う。また、エラー通知制御部111Bは、エラーの対象が、ガス経路及び改質水経路の組み合わせ、又は、ガス経路のみである場合に、第1温度以下になってからエラーを通知する制御を行う。
【0103】
ここで、本実施形態に係る記憶部115には、第1データテーブル115Bに代えて、第2データテーブル115C及び第3データテーブル115Dが記憶されている。これらの第2データテーブル115C及び第3データテーブル115Dは、エラー通知制御部111Bにより参照可能とされる。
【0104】
図8は、第2の実施形態に係る第2データテーブル115Cの一例を示す図である。
【0105】
図8に示す第2データテーブル115Cは、温度帯の区分けと各温度帯における改質水、ガス、及び空気の経路診断の可否を規定したデータテーブルである。燃料電池ユニット12の温度帯は、温度帯[イ]、温度帯[ロ]、及び温度帯[ハ]を含んでいる。燃料電池モジュール20の最高温度をT1[℃]、炭素析出温度をT2[℃]、再酸化温度をT3[℃]、気化温度をT4[℃]とした場合、温度帯[イ]は、炭素析出温度T2より高く、最高温度T1以下の温度帯である。温度帯[ロ]は、再酸化温度T3より高く、炭素析出温度T2以下の温度帯である。つまり、温度帯[ロ]は、第1温度を含む温度帯である。温度帯[ハ]は、気化温度T4より高く、再酸化温度T3以下の温度帯である。つまり、温度帯[ハ]は、第2温度を含む温度帯である。
【0106】
図8の例の場合、改質水経路は、温度帯[イ]、温度帯[ロ]、及び温度帯[ハ]の全ての温度帯で診断可能である。ガス経路は、温度帯[イ]では診断不可で、温度帯[ロ]及び温度帯[ハ]では診断可能である。空気経路は、温度帯[イ]及び温度帯[ロ]では診断不可で、温度帯[ハ]では診断可能である。
【0107】
図9は、第2の実施形態に係る第3データテーブル115Dの一例を示す図である。
【0108】
図9に示す第3データテーブル115Dは、エラー種別(エラーコードA~H)毎に故障の可能性がある経路を予め指定して区分けしたデータテーブルである。エラーコードA、エラーコードC、エラーコードE、及びエラーコードGには「温度帯[ハ]でエラー表示」が対応付けられている。エラーコードB及びエラーコードDには「温度帯[ロ]以下でエラー表示」が対応付けられている。
【0109】
また、エラーコードF及びエラーコードHには「別途処理後にエラー表示」が対応付けられている。なお、本実施形態では、温度によらず改質水経路の診断が可能であることを想定しているため、エラーコードFに対して「別途処理後にエラー表示」としている。しかし、システム構成によって改質水経路の診断に温度制約がある場合には、所定温度T以下になるまで待ってエラーを表示するようにしてもよい。
【0110】
次に、
図10を参照して、第2の実施形態に係る制御装置110Aの作用について説明する。
【0111】
図10は、第2の実施形態に係る制御プログラム115Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0112】
まず、CPU111により記憶部115に記憶されている制御プログラム115Aが起動され、以下に示す各ステップが実行される。
【0113】
図10のステップ310では、CPU111が、燃料電池ユニット12で発生するエラーを検知したか否かを判定する。エラーを検知したと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ311に移行し、エラーを検知していないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ310で待機となる。
【0114】
ステップ311では、CPU111が、ステップ310で検知したエラーのエラー種別を表すエラーコードを判定する。エラーコードB又はエラーコードDであると判定した場合(B、Dの場合)、ステップ312に移行し、エラーコードA、C、E、Gのいずれかであると判定した場合(A、C、E、Gの場合)、ステップ315に移行し、エラーコードF又はエラーコードHであると判定した場合(F、Hの場合)、ステップ317に移行する。
【0115】
ステップ312では、CPU111が、一例として、上述の
図9に示す第3データテーブル115Dを参照し、スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ロ]以下、つまり、第1温度以下になるまで待機する。
【0116】
ステップ313では、CPU111が、スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ロ]以下になったか否かを判定する。スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ロ]以下になったと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ314に移行し、スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ロ]以下にならないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ312に戻り処理を繰り返す。
【0117】
ステップ314では、CPU111が、一例として、リモコン装置51に対して、エラーコードを表示させ、本制御プログラム115Aによる一連の処理を終了する。
【0118】
一方、ステップ315では、CPU111が、一例として、上述の
図9に示す第3データテーブル115Dを参照し、スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ハ]、つまり、第2温度になるまで待機する。
【0119】
ステップ316では、CPU111が、スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ハ]になったか否かを判定する。スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ハ]になったと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ314に移行し、スタック温度及び改質温度が共に温度帯[ハ]にならないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ315に戻り処理を繰り返す。
【0120】
一方、ステップ317では、CPU111が、エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーであるか、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーであるかを判定する。ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーであるか、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーであると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ314に移行し、一例として、リモコン装置51に対して、エラーコードを即時に表示させる。エラーが、ガスの漏洩及びその他に関し安全性に影響を与えると予め定められたエラーでない場合、又はユーザの使用状態によるものであると予め定められたエラーでないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ318に移行する。
【0121】
ステップ318では、CPU111が、燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度(規定温度)以下になるまで待機する。
【0122】
ステップ319では、CPU111が、燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になったか否かを判定する。燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下になったと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップ314に移行し、一例として、リモコン装置51に対して、エラーコードを表示させる。燃料電池ユニット12の温度が、手で触れることが可能な温度、又は燃料電池システム10の再起動を受け付けることが可能な温度として予め定められた温度以下にならないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップ318に戻り処理を繰り返す。
【0123】
このように本実施形態によれば、エラーを通知する所定温度がガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせによって異なっている。このため、ガス経路、改質水経路、及び空気経路の組み合わせ毎に適切なタイミングでエラーを通知することができる。
【0124】
以上、上記実施形態として、燃料電池システム及び制御装置を例示して説明したが、実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、このプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体の形態としてもよい。
【0125】
その他、上記実施形態で説明した燃料電池システム及び制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0126】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0128】
10 燃料電池システム
12 燃料電池ユニット
14 給湯ユニット
20 燃料電池モジュール
21 ガス供給路
30 改質水流入路
51 リモコン装置
110、110A 制御装置
111 CPU
111A エラー検知部
111B エラー通知制御部
112 ROM
113 RAM
114 I/O
115 記憶部
115A 制御プログラム
115B 第1データテーブル
115C 第2データテーブル
115D 第3データテーブル
116 外部I/F
212 酸化ガス管
S1、S2 温度センサ