(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】釣状況検知・伝達装置
(51)【国際特許分類】
A01K 87/00 20060101AFI20240318BHJP
A01K 87/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A01K87/00 640Z
A01K87/08 Z
(21)【出願番号】P 2020179325
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】小田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】三屋 幸久
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183102(JP,A)
【文献】実開昭62-094780(JP,U)
【文献】特開2013-192542(JP,A)
【文献】特開2017-029051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00-87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を備え、端部に釣針を有する釣糸が取付けられた釣竿に設けられる釣状況検知・伝達装置であって、
該把持部に設けられ、該把持部に振動を発生させる振動生成部と、該釣竿に設けられ、該釣竿の動きや振動を検出して第1の時系列データを生成する第1の検出部と、該第1の時系列データに基づき、該振動生成部に振動発生信号を送信する情報処理部と、を備
え、 前記釣竿に設けられ、該釣糸の糸長を検出し第3の時系列データを生成し、かつ糸長変化を検出し第4の時系列データを生成する糸長・糸長変化検出部を備え、該第3の時系列データと第4の時系列データとが所定の条件を満たす場合、前記情報処理部は、前記振動生成部への振動発生信号の送信を行わないことを特徴とする、釣状況検知・伝達装置。
【請求項2】
前記振動生成部は、前記把持部を振動させるアクチュエータ部を備え、前記情報処理部による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させる、請求項1に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ部は、板状アクチュエータである、請求項2に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項4】
前記第1の時系列データが、前記釣針に魚が近付いていることを示す場合、前記振動生成部は第1の振動を生成する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項5】
前記第1の時系列データが、前記釣竿による誘いの動作中であることを示す場合、前記振動生成部は第2の振動を生成する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項6】
前記第1の時系列データが、前記釣針への魚のアタリを示す場合、前記振動生成部は第3の振動を生成する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項7】
前記第1の検出部は、釣竿の変形と振動を検出可能な位置に設けられる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項8】
前記第1の検出部は、釣竿の曲率変化が大きな位置に設けられる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項9】
前記把持部に設けられ、釣竿の操作による動作を検出し第2の時系列データを生成する第2の検出部を備え、前記情報処理部は、前記第1の時系列データと前記第2の時系列データとに基づき、前記振動生成部へ振動発生信号の送信を行う、請求項1から8までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項10】
送信部を備え、前記第2の検出部により検出された前記第2の時系列データ、糸長・糸長変化検出部により検出された前記第3の時系列データ又は前記第4の時系列データのすくなくともいずれかを外部に送信する、請求項
1又は9に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項11】
送信部を備え、前記第1の検出部により検出された前記第1の時系列データを外部に送信する、請求項1から
10までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項12】
受信部を備え、前記外部から釣り条件に関するデータを受信し、前記情報処理部は、該データを参照して、前記振動生成部へ振動発生信号の送信を行う、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置。
【請求項13】
請求項1から
12までのいずれか1項に記載の釣状況検知・伝達装置を備えることを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に設けられることが想定される釣状況検知・伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚信の検出が可能な様々な方法が知られている。このような釣竿では、所謂アタリの振動を検知して、これを発光体やブザーなどの報知手段や電子装置を用いて釣人に知らせるようにしている。
【0003】
このような釣竿は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1では、釣竿本体の基端部を囲む基端保護部を有する釣竿であって、前記釣竿本体内部に基端面で開口する空洞が形成されているとともに、前記基端保護部には内部を貫通する通孔が形成され、前記釣竿本体の基端部を前記基端保護部の通孔に挿通することにより、少なくとも釣をしている間、前記釣竿本体に形成された空洞が前記通孔と連通して外部に開口している状態であることにより、使用時に水底または水中において魚が掛かったときに道糸を介して釣竿の穂先に伝わるアタリの振動が前記空洞にも伝達されて前記開口から抜けることで増幅と鋭敏化が生じ、釣竿本体を把持する釣人に前記アタリの振動を明確に感知させる釣竿が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、釣竿の先端に位置するように形成された取付体の前方の下側に、釣糸支承環の支持杆を設け、該支持杆の下端近傍に水平方向に伸びる支軸を有する枢軸部を設け、該枢軸部に上部に回動接点を有する釣糸支承環の中部を軸着し、取付体の前端下側に固定接点を設け、釣糸支承環を常時後傾姿勢をとらせるようにし、釣糸支承環をくぐらせた釣糸が釣糸支承環の下半部に当接するとき、その当接によって後傾姿勢の釣糸支承環を前傾する向きに回動させて回動接点を固定接点に接触させ、釣糸の前記の当接が緩められると釣糸支承環が後傾する向きに回動して回動接点が固定接点から離れるように構成し、かつ、電池の一方の電極と回動接点とを結線し他方の電極と固定接点とを結線して、その結線路中に電気報知器を挿設したところの感知部と、釣竿の先端近傍の下側にあって釣糸支承環の後方に位置して釣糸を係止する釣糸係止部とから成る魚信の感知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6634628号公報
【文献】特開2005-34116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る態様では、所謂アタリの振動を増幅して伝達することが可能となるとしているものの、該アタリはあくまで魚が餌を咥え、釣針に魚がかかった状態であり、該アタリ以外の仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態を知ることはできないという問題があった。例えば、仕掛けの餌に魚が近付いてくると、魚が釣糸に接触したり仕掛け周辺が水流変化等の影響を受けて移動や振動をする結果、餌が取付けられた釣糸を通じて釣竿に微小な変形や振動として伝達されることが判っている。
【0007】
また、特許文献2に掛かる態様でも、微妙なアタリの感知を行うことができるとするものの、該アタリ以外の仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態を知ることは難しいという問題があった。
【0008】
釣果をさらに向上させるためには、そもそもアタリの振動検知を行うだけでは不十分であり、着底を含め仕掛け投入からアタリまでの間の魚や釣糸の状況、またアタリ以降の巻上げ等の状況(以下、総合して釣状況と呼ぶこととする)を的確かつ確実に知ることが必要不可欠となっているが、特許文献1に係る態様も含め、このような釣状況を検知・伝達を行うことができていない。なお、このような伝達機(バイトアラーム)は、釣座に竿を据え置く(動かさない)、置き竿を前提としたものであり、主に釣竿を把持状態(持ち竿)で使用すること(置き竿用としても使用することは可能)が想定されていない。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、釣竿に設けることができ、上述のような釣状況を的確かつ確実に検知し、これを釣人に伝達することが可能な釣状況検知・伝達装置を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、把持部を備え、端部に釣針を有する釣糸が取付けられた釣竿に設けられる釣状況検知・伝達装置であって、該把持部に設けられ、該把持部に振動を発生させる振動生成部と、該釣竿に設けられ、該釣竿の動きや振動を検出して第1の時系列データを生成する第1の検出部と、該第1の時系列データに基づき、該振動生成部に振動発生信号を送信する情報処理部と、を備えるよう構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、該振動生成部は、該把持部を振動させるアクチュエータ部を備え、該情報処理部による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させるよう構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、前記アクチュエータ部は、板状アクチュエータであるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、前記第1の時系列データが、前記釣針に魚が近付いていることを示す場合、前記振動生成部は第1の振動を生成するよう構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、前記第1の時系列データが、前記釣竿による誘いの動作中であることを示す場合、前記振動生成部は第2の振動を生成する。また、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、前記第1の時系列データが、前記釣針への魚のアタリを示す場合、前記振動生成部は第3の振動を生成する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、該第1の検出部は、釣竿の変形と振動を検出可能な位置に設けられるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、該第1の検出部は、釣竿の曲率変化が大きな位置に設けられるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、前記把持部に設けられ、釣竿の操作による動作を検出し第2の時系列データを生成する第2の検出部を備え、前記情報処理部は、前記第1の時系列データと前記第2の時系列データとに基づき、前記振動生成部へ振動発生信号の送信を行うように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、送信部を備え、前記第2の検出部により検出された前記第2の時系列データ又糸長・糸長変化検出部により検出された前記第3の時系列データ若しくは前記第4の時系列データのすくなくともいずれかを外部に送信するように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、送信部を備え、前記第1の検出部により検出された前記第1の時系列データを外部に送信するように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、前記釣竿に設けられ、該釣糸の糸長を検出し第3の時系列データを生成し、かつ糸長変化を検出し第4の時系列データを生成する糸長・糸長変化検出部を備え、該第3の時系列データと第4の時系列データとが所定の条件を満たす場合、前記情報処理部は、前記振動生成部への振動発生信号の送信を行わないように構成される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、受信部を備え、前記外部から釣り条件に関するデータを受信し、前記情報処理部は、該データも参照して、前記振動生成部へ振動発生信号の送信を行うように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかの釣状況検知・伝達装置を備えるよう構成される。
【発明の効果】
【0018】
上記実施形態によれば、釣竿に設けることができ、釣状況を的確かつ確実に検知し、これを釣人に伝達することが可能な釣状況検知・伝達装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置における時系列データを説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置を示す図である。
【
図5】ベイトリールを使用したえさ釣りの手順を説明する図である。
【
図6】ベイトリールを使用したルアー釣りの手順を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る釣竿における釣竿の曲率変化が大きな位置を説明する図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置における外部との送受信を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置における外部からの釣り条件(パターン)の受信を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0021】
図1は、釣竿を説明する図である。図示のように、釣竿11は、竿体2と、竿体2に釣竿11を介して取り付けられたリール6と、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、釣竿11及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
【0022】
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
【0023】
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
【0024】
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、釣竿11に装着されるリール6から繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A~10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられるが、詳細は省略する。
【0025】
次に、
図5を参照して、ベイトリールを使用したえさ釣りの手順について説明する。なお、スピニングリールを使用することもできるが説明の便宜上、ベイトリールを前提として説明する。まずは、準備として、釣竿にリールをセットし、ガイドに釣糸を通し、仕掛けを取付け、釣針に餌をつけ、釣竿の穂先を海側(川や池等の場合も含む)に出す(図示しない)。
【0026】
次に、釣動作に入る。図示のように、まず、セットの手順として、クラッチを切り(SA1)、仕掛けを落とし(SA2)、着底させ(SA3)、クラッチを戻し(SA4)、糸ふけをとる(SA5)。次に、リールを巻いて底をきり(SA6)、誘い下げる(SA7)。この手順には様々なパターンが考えられ、図示の例はあくまでその一例である。次に、着底後(SA8)、誘い上げ(SA9)、釣竿を上下に小刻みに振り(SA10)、誘い下げる(SA11)。
【0027】
その後、所定の時間待ち(SA12)、場合により最初に戻る。仕掛けに変化が出て(SA13)、アタリが出たら(SA14)、釣糸の合わせ及び巻上げを行い(SA15)、最後に巻上げを行う(SA16)このようにして、掛かった魚を回収することができる。
【0028】
次に、
図6を参照して、ベイトリールを使用したルアー釣りの手順について説明する。なお、スピニングリールを使用することもできるが説明の便宜上、ベイトリールを前提として説明する。まずは、準備として、釣竿にリールをセットし、ガイドに釣糸を通し、ルアーを取付ける(図示しない)。
【0029】
次に、釣動作に入る。図示のように、まず、セットの手順として、クラッチを切り(SB1)、釣竿のキャストを行い(SB2)、ルアーを着水させ(SB3)、クラッチを戻し(SB4)、糸ふけをとる(SB5)。次に、ルアーを着底させる(SB6)。その後、リトリーブし(SB7)、ルアーにアクションをつけ(SB8)、リトリーブをストップし(SB9)、さらにリトリーブする(SB10)。この手順には様々なパターンが考えられ、図示の例はあくまでその一例である。場合により、ルアーを回収して(SB11)、最初に戻る。
【0030】
その後、ルアーに変化が出て(SB12)、アタリが出たら(SA13)、釣糸の合わせ及び巻上げを行い(SA14)、最後に巻上げを行う(SA15)このようにして、掛かった魚を回収することができる。
【0031】
次に、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1は、把持部4を備え、端部に釣針16を有する釣糸8が取付けられた釣竿11に設けられ、該把持部4に設けられ、該把持部4に振動を発生させる振動生成部12と、該釣竿に設けられ、該釣竿の動きや振動を検出して第1の時系列データを生成する第1の検出部13と、該第1の時系列データに基づき、該振動生成部12に振動発生信号を送信する情報処理部14と、を備えるよう構成される。第1の検出部13として、圧電素子、ひずみゲージ又は歪検出素子を用いることができるがこれらに限られない。ここで、該釣竿の動きや振動を振動生成部12により忠実に再現することができる。また、該釣竿の動きや振動を振動生成部12により増幅して生成してもよい。または、該釣竿の動きや振動を振動生成部12において伝達強度を調整して生成するようにしてもよい。なお、当該釣糸8には、釣針16に加えて、ルアーや集魚部材(例えば、コマセ籠や集魚板など)等を取付けることができ(これらに限られない)、これらを総称して釣針等と呼ぶこととする。
【0032】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1によれば、釣竿に設けることができ、釣状況を的確かつ確実に検知し、これを釣人に伝達することが可能となる。これにより、釣人は、アタリ以前の釣糸や釣針等の状況やアタリ以降の釣糸や釣針等の状況を広く知ることができるため、釣人の技量によらず釣果の大幅な向上や釣への関心の向上に繋げることができる。また、餌が取られると振動生成部からの反応がなくなるため、餌が残っているか否かの判別をより容易に行うことができ、集中力の維持にも繋げることができる。
【0033】
ここで、端部に釣針16を有する釣糸が取付けられた釣竿11という場合、当該端部は、仕掛けの種類によっては、厳密な意味で端部とはならない場合もある。例えば、釣糸の端部に仕掛けやルアー若しくはその他の部材が設けられ、これらに釣針16が設けられることもあるし、釣糸自体が複数の釣糸で構成されていたり、複数の釣糸とこれらの釣糸間に別の中間部材が取付けられるなど様々な態様が考えられる。以上のことから、釣糸には、1つの釣糸、複数の釣糸、又は複数の釣糸とこれらの間に設けられた中間部材とで構成され得、釣糸の端部に釣針を設けるという場合、釣糸の端部に直接又は中間部材(仕掛けやルアー等が想定されるがこれらに限られない)を介して設けることを意味するものと理解されたい。
【0034】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、該振動生成部12は、該把持部4を振動させるアクチュエータ部を備え、該情報処理部14による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させるよう構成される。ここで、また、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、前記アクチュエータ部は、板状アクチュエータであるように構成される。板状アクチュエータが望ましい理由は、まず、振動生成12の振動波形を釣人の実釣感覚と同化させるのに最適であること(板の変形形態が釣竿の変形形態と同じで、穂先の変形・振動が手元にあるように感ずる)、次に、物理的な変形により、低周波数(1Hz~)の振動も感じ取ることができるからである。
【0035】
次に、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1における第1の時系列データについて説明する。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸に電圧を示す。図示の例では、カワハギを例に釣の開始からカワハギが釣れるまでの、該釣竿の動きや振動を第1の検出部13により捉えたものである。
【0036】
例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、第1の検出部13が、図示の第1の時系列データのAを検出したとすると、波形の性質から釣竿による誘いの動作中であることが判るため、当該振動生成部は、釣竿による誘いの動作中であることを示す第1の振動を生成するようにする。
【0037】
また、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、第1の検出部13が、図示の第1の時系列データのBを検出したとすると、波形の性質から釣針に魚が近付いている(所謂前アタリとも呼ぶ)ことを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣針に魚が近付いていることを示す第2の振動を生成するようにする。
【0038】
次に、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、第1の検出部13が、図示の第1の時系列データのCを検出したとすると、波形の性質から釣針への魚のアタリを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣針への魚のアタリを示す第3の振動を生成するようにする。
【0039】
また、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、第1の検出部13が、図示の第1の時系列データのDを検出したとすると、波形の性質から釣糸の合わせ及び巻上げ中であることを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣糸の合わせ及び巻上げ中であることを示す第4の振動を生成するようにする。
【0040】
次に、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、第1の検出部13が、図示の第1の時系列データのEを検出したとすると、波形の性質から釣糸の巻上げ中であることを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣糸の巻上げ中であることを示す第5の振動を生成するようにする。
【0041】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1において、該第1の検出部は、釣竿の変形と振動を検出可能な位置に設けられるように構成される。例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置において、該第1の検出部は、釣竿の曲率変化が大きな位置に設けられるように構成される。このようにして、釣竿の僅かな変形や振動をより正確に捉えることが可能となる。
【0042】
ここで、釣竿の曲率変化が大きな位置とは、釣竿の竿先に荷重を加えると釣竿は曲がるが、この際、釣竿を局所的に観察すると、各部分の曲がりはk(曲率)で表すことができる。当該k(曲率)は、荷重を変化させると、これに同調して変化するものである。釣竿において当該kの変化が大きい位置を釣竿の曲率変化が大きな位置と定義される。
【0043】
ここで、
図7は、釣竿の竿元から竿先の各位置におけるk(曲率)を示すものである。また、釣糸に掛かる荷重に応じて曲率が変化することも示している。
図7を参照すると、k(曲率)は竿元から凡そ1200mmの位置までそれ程の変化がなく推移し、当該位置から曲率の変化が大きくなり、竿先の手前の位置で最大の曲率値となっていることが判る。また、荷重変化によって1200mmの位置から曲率最大値の間で曲率変化が大きくなっていることが判る。なお、図示の例は一例に過ぎず、釣竿の調子や釣竿の使用される角度又は釣竿に加えられる荷重により曲率の変化は異なる。このように、第1の検出部を、釣竿の曲率変化が大きな位置に設けられるように構成することで、釣竿の僅かな変形や振動をより正確に捉えることができる。
【0044】
次に、
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置について説明する。本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1は、さらに、把持部4に設けられ、釣竿11の操作による動作を検出し第2の時系列データを生成する第2の検出部15を備え、情報処理部14は、当該第1の時系列データと当該第2の時系列データとに基づき、振動生成部12へ振動発生信号の送信を行うように構成される。このようにして、釣竿11の操作による釣竿の動作に係る情報も含めて判断することで、より的確かつ正確な判断が可能となる。例えば、釣竿を意図せず操作した場合に、釣竿11の操作による釣竿11の動作を検出することは有益となり得る。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置1は、釣竿11に設けられ、該釣糸11の糸長を検出し第3の時系列データを生成し、かつ糸長変化を検出し第4の時系列データを生成する糸長・糸長変化検出部(図示しない)を備え、該第3の時系列データと第4の時系列データとが所定の条件を満たす場合、情報処理部14は、振動生成部12への振動発生信号の送信を行わないように構成される。このようにして、釣糸の糸長や糸長変化を確認することで、ノイズや不要な振動の発生することを防止することが可能となる。例えば、錘の着底の際に振動が発生する場合があるが、これが不要な振動である場合においては、振動発生信号の送信を行わないようにすることができる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る釣竿11は、上記いずれかの釣状況検知・伝達装置1を備えるよう構成される。本発明の一実施形態に係る釣竿11によれば、釣状況を的確かつ確実に検知し、これを釣人に伝達することが可能となる。これにより、釣人は、アタリ以前の釣糸や釣針等の状況やアタリ以降の釣糸や釣針等の状況を広く知ることができるため、釣人の技量によらず釣果の大幅な向上や釣への関心の向上に繋げることができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、送信部を備え、前記第2の検出部により検出された前記第2の時系列データ又糸長・糸長変化検出部により検出された前記第3の時系列データ若しくは前記第4の時系列データのすくなくともいずれかを外部に送信するように構成される。これにより、振動生成部12の増幅条件の調整や時系列データA~Eの記録や報知、および発生状態の時系列変化による釣状の検出処理が可能となる。ここで、外部とは、外部の情報通信端末(例えば、スマートフォンなど)や情報処理装置、情報処理システムが考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置は、送信部を備え、前記第1の検出部により検出された前記第1の時系列データを外部に送信するように構成される。ここで、外部とは、外部の情報通信端末(例えば、スマートフォンなど)や情報処理装置、情報処理システムが考えられるが、これらに限定されるものではない。尚、送信形態はスマートフォンなどに限定されない。
【0049】
次に、
図8を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置における外部との送受信を行う場合の一例につき、説明する。図示のように、まず、釣状況検知・伝達装置の電源を入れ起動する(SC1)。その後、受信可能状態となる(SC2)。外部から受信したか否かを確認し(SC3)、受信していない場合は、前(SC2)に戻る。外部から要求(設定変更など)を受信した場合は、それに従い必要な設定変更を実施する(SC4)。これは、例えば、振動の検知方法や出力増幅方法などが考えられるが、これらに限られない。その後、釣人による釣りが開始され、釣りが終了したか確認し(SC5)、その後、更に設定変更を行うか確認する。設定変更を行う場合は、その要求が外部へ送信される(SC6)。
【0050】
当該要求を受領した外部(機器)では、まず、釣種の選択を行う(SC7)。次に、釣り方法を選択する(SC8)。次に、釣竿の種類の選択を行う(SC9)。そして、選択されたこれらの種類・方法に基づく条件作成を行う(SC10)。その後、当該外部(機器)から変更の要求を釣状況検知・伝達装置に対して行い(SC11)、上記外部から受信したか否かの確認(SC3)へ戻る。このようにして、釣状況検知・伝達装置と外部(機器)とを連携させ、振動検知方法や出力増幅方法を外部(機器)を使用して簡易かつ確実に変更等を行うことが可能となる。
【0051】
次に、
図9を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置における外部から釣り条件(パターン)の受信等を行う場合の一例につき、説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置の情報処理部14は、受信部18を備え、外部(機器)から釣り条件(パターン)を受領することができる。釣り条件(パターン)として、図示の例では、P-1、P-2、P-3・・・P-10・・・P-20が挙げられている。各釣り条件には、釣りの場所、釣りの種類等の条件が含まれる。
【0052】
本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置の情報処理部14は、釣り条件(パターン)を受領すると、プログラム(処理部)19により読み込まれ振動条件等の変更を行った後、アクチュエータ(振動生成部)12へ受領した釣り条件が反映された振動条件が送信される。このようにして、各釣りのパターンに適した振動の発生が可能となるため、釣状況をより的確かつ確実に検知し、これを釣人に伝達することが可能となる。これにより、釣人は、釣り全般における状況をより広く知ることができるため、釣人の技量によらず釣果の大幅な向上や釣への関心の向上に繋げることができる。
【0053】
また、図示のように、本発明の一実施形態に係る釣状況検知・伝達装置の情報処理部14は、送信部20を備え、必要に応じて、外部(機器)へアクチュエータ(振動生成部)12における振動条件等の設定情報を送信することができる。これにより、外部(機器)にて最新の設定情報を確認し、必要であれば、当該外部(機器)より釣状況検知・伝達装置へ設定情報変更の要求を送信することができる。このようにして、釣状況検知・伝達装置と外部(機器)とを連携させ、振動条件等の設定情報を外部(機器)を使用して簡易かつ確実に変更等を行うことが可能となる。
【0054】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 釣状況検知・伝達装置
2 竿体
3 元竿
4 把持部
5 中竿
6 リール
7 穂先竿
8 釣糸
10 釣糸ガイド
11 釣竿
12 振動生成部
13 第1の検出部
14 情報処理部
15 第2の検出部
16 釣針
18 受信部
19 プログラム(処理部)
20 送信部