(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】土の評価システム、土の評価方法及び盛土の施工方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20240318BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20240318BHJP
G01N 33/24 20060101ALI20240318BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240318BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N15/0227 100
E02D1/04
G01N33/24 C
G06T7/00 350B
G06T7/62
(21)【出願番号】P 2020190919
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康生
(72)【発明者】
【氏名】間中 弘之
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004096(JP,A)
【文献】特開2020-173150(JP,A)
【文献】岩下将也、大塚義一,深層学習を用いた土の粒度分布推定法の基礎的研究,奥村組技術研究年報,日本,2019年09月,No.45,109-114頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/1492
E02D 1/04
G01N 33/24
G06T 7/00
G06T 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土の特性を評価可能な土の評価システムであって、
学習用の土の画像を入力情報とし、粒径分布情報を出力情報として学習させた学習モデルと、
土の画像を取得する画像取得手段と、
を具備し、
処理部において、前記画像取得手段で取得された画像データを、前記学習モデルに入力し、土の特性情報として、粒径分布情報を出力可能であ
り、
前記学習モデルは、さらに、学習用の土の画像を入力情報とし、土の水分量情報を出力情報として学習させており、
前記画像取得手段で取得された画像データを、前記学習モデルに入力し、前記特性情報として、前記粒径分布情報と共に、水分量情報を出力させるものであり、
前記学習モデルの前記土の水分量情報の学習においては、前記学習用の土の画像を拡大し、学習用の土の拡大画像を入力情報とし、前記学習用の土の拡大画像において、土の粒子間に存在する水部分を識別することで、当該土の水分量情報を出力情報として学習されたものであり、
前記処理部は、前記画像取得手段で撮像された、対象となる土の全体画像から、その一部を拡大した拡大画像を取得可能であり、
前記処理部で取得された前記全体画像と前記拡大画像を、前記学習モデルに入力し、前記特性情報として、前記粒径分布情報と共に、前記水分量情報を出力することを特徴とする土の評価システム。
【請求項2】
前記画像取得手段は、重機に設置され、前記重機で掘削したバケット内の土の画像を取得可能であることを特徴とする請求項1記載の土の評価システム。
【請求項3】
事前に前記粒径分布情報ごとに紐づけられた、土の乾燥密度情報を記憶部から読みだして、得られた前記粒径分布情報から、対応する土の乾燥密度情報を出力可能であることを特徴とする請求項
1または請求項
2記載の土の評価システム。
【請求項4】
土の粒径を評価する土の評価方法であって、
学習用の複数の土の画像を入力情報とし、土の粒径の分布情報を出力情報として学習させて、学習モデルを作成し、
画像取得手段によって土の画像データを取得し、
前記画像データを、前記学習モデルに入力し、土の粒径分布情報を出力させ
るものであり、
前記学習モデルの作成において、さらに、学習用の土の画像を入力情報とし、土の水分量情報を出力情報として学習させ、
前記画像取得手段で取得された画像データを、前記学習モデルに入力し、前記粒径分布情報と共に、土の水分量情報を出力させるものであり、
前記学習モデルの作成においては、前記学習用の土の画像を拡大し、得られた学習用の土の拡大画像を入力情報とし、前記学習用の土の拡大画像において、土の粒子間に存在する水部分を認識することで、当該土の水分量情報を出力情報として学習させ、
前記画像取得手段によって撮像された土の全体画像の一部を拡大した拡大画像を取得し、
取得された前記全体画像と前記拡大画像を、前記学習モデルに入力し、土の粒径分布情報と共に、土の水分量情報を出力することを特徴とする土の評価方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の土の評価方法を用いた盛土の施工方法であって、
得られた土の粒径分布情報及び土の水分量情報を用いて、
前記粒径分布情報及び前記水分量情報に対して、あらかじめ紐づけられた、土の乾燥密度情報を取得し、
得られた前記乾燥密度情報に応じて、盛土の施工条件を設定して盛土の施工を行うことを特徴とする盛土の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削した土をその場で評価することが可能な土の評価システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や建物等のための造成工事を行う際、例えば、所定の地山の切土を行い、土を造成地へ運搬して、盛土を行う場合がある。このような盛土の施工の際には、土の特性に応じた適切な転圧条件等を設定する必要がある。
【0003】
図10(a)は、土の粒径加積曲線を示す図であり、
図10(b)は、土の種類ごとの締固め曲線を示す図である(いずれも、公益社団法人地盤工学会発行「地盤工学・実務シリーズ30 土の締固め」より)。図中I~Mは、それぞれ粒径分布の異なる土の種類を示す。
図10(a)において、縦軸は粒径ごとの累積%であり、例えば、土Iは、0.075mm以下の粒子が約80%、0.075mm超0.25mm以下の粒子が約8%、0.25mm超0.425mm以下の粒子が約3%、0.425mm超0.84mm以下の粒子が約6%、0.84mm超2.0mm以下の粒子が約3%の比率で混合された土であることを示す。
【0004】
また、
図10(b)に示すように、それぞれの土の種類に応じて、乾燥密度が異なる。より詳細には、土の種類と、含水比(土に含まれる水の質量/水以外の土の質量×100%)に応じて、乾燥密度が異なる。このように、乾燥密度が異なるため、土ごとに締固め条件(転圧時間や回数など)を適切に設定する必要がある。また、盛土の部位等によっては、適切な土を使用しないと、所望の強度が出ないこともある。このため、盛土の施工においては、土の種類(粒径分布)を知ることは極めて重要である。
【0005】
したがって、従来は、土の粒径分布を知るために、切土によって得られた土の一部からサンプルを採取し、このサンプルを試験場に送り、試験場において土の粒度分布を例えばふるい法及び沈降法などで測定し、この結果を踏まえて、盛土の施工条件を設定していた。このため、測定結果が反映されるまでに1~2週間の時間を要する場合もあり、また、掘削位置によっても土の特性が同一ではないため、その日の掘削土の代表サンプルのみで評価を行う方法では精度の高い粒径分布評価は困難である。このため、より短時間で精度の高い土の評価が望まれている。
【0006】
これに対し、より簡易な土の評価方法としては、例えば、土の画像を取得し、二値化処理によって土の粒ごとのサイズを判定し、これにより土の平均粒径等を求める方法がある(例えば特許文献1、2)。
【0007】
また、土を撒きだして、全体画像と拡大画像とから、粒径加積曲線を得る方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-74641号公報
【文献】特開2003-83868号公報
【文献】特開2016-29391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~3は、いずれも、試験場等において詳細に試験を行うことなく、より簡易な方法で粒径情報を得るものである。しかし、特許文献1、2のように、二値化などの画像処理によって粒子ごとに径を測定する方法では、必ずしも正確に粒径情報を得ることが容易ではない。
【0010】
例えば、前述したように、土を構成する粒径は、数十μmから数十mmまでの範囲があり、これら全体の粒径を一つの画像から二値化によって高精度で得ることは困難である。また、粒子同士は重なりもあり、また、掘削直後の状態であっても、細かな粒子は粗い粒子の間に落ち込みやすい。このため、奥に存在する粒子は、影によって、二値化により認識できなくなる場合や、粒子を認識できても、重なり合う粒子同士を分離することができない場合がある。このように、二値化等の画像処理によって、土の表面の写真から粒径分布を得ることは困難である。このため、二値化を行う場合でも、掘削土からサンプルを採取し、平坦な場所に撒きだすなどした上で評価する必要がある。
【0011】
これに対し、特許文献3は、全体画像と拡大画像とを用い、得られた粒子の輪郭処理を行うことで、細かな粒子と粗い粒子の両者のそれぞれ別の画像で粒径を測るものである。このため、比較的広い粒径分布の情報を得ることができる。しかし、特許文献3も、ある程度の範囲に土を撒きださなければ、粒子全体を把握することが困難である。
【0012】
また、従来技術はいずれも、画像内の粒径の一つ一つの径を計測する方法であるため、二値化や輪郭処理で認識可能な画像中の全ての粒子について、とりあえず粒径を数値化することは可能である。しかし、前述したように、画像中で正確に認識できない(二値化や輪郭処理により粒子の分離や個々の粒子の形状の把握が困難な)粒子も多数あることから、このようにして認識できた粒子だけを数値化し、この数値を用いて粒径分布を算出する方法では、必ずしも、土の粒径分布を正確に知ることができない。このように、個々の粒子のサイズを求め、これを統計処理により平均化または分布を算出する方法では、正確な数値を得ることが困難な場合がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、土の粒径分布を容易に判定することが可能な土の評価システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、土の特性を評価可能な土の評価システムであって、学習用の土の画像を入力情報とし、粒径分布情報を出力情報として学習させた学習モデルと、土の画像を取得する画像取得手段と、を具備し、処理部において、前記画像取得手段で取得された画像データを、前記学習モデルに入力し、土の特性情報として、粒径分布情報を出力可能であり、前記学習モデルは、さらに、学習用の土の画像を入力情報とし、土の水分量情報を出力情報として学習させており、前記画像取得手段で取得された画像データを、前記学習モデルに入力し、前記特性情報として、前記粒径分布情報と共に、水分量情報を出力させるものであり、前記学習モデルの前記土の水分量情報の学習においては、前記学習用の土の画像を拡大し、学習用の土の拡大画像を入力情報とし、前記学習用の土の拡大画像において、土の粒子間に存在する水部分を識別することで、当該土の水分量情報を出力情報として学習されたものであり、前記処理部は、前記画像取得手段で撮像された、対象となる土の全体画像から、その一部を拡大した拡大画像を取得可能であり、前記処理部で取得された前記全体画像と前記拡大画像を、前記学習モデルに入力し、前記特性情報として、前記粒径分布情報と共に、前記水分量情報を出力することを特徴とする土の評価システムである。
【0015】
前記画像取得手段は、重機に設置され、前記重機で掘削したバケット内の土の画像を取得可能であってもよい。この場合、土を水平な地盤等に撒き出す必要はない。
【0018】
事前に前記粒径分布情報ごとに紐づけられた、土の乾燥密度情報を記憶部から読みだして、得られた前記粒径分布情報から、対応する土の乾燥密度情報を出力可能であってもよい。
【0019】
第1の発明によれば、土の粒径分布情報を学習させるため、個々の粒子ごとに粒径を測定することなく、粒径分布情報を得ることができる。
【0020】
また、画像取得手段を重機に設置することで、重機で掘削したバケット内の土の画像を取得可能である。このため、掘削ごとに、粒径分布情報を得ることができる。
【0021】
また、学習モデルとして、学習用の土の画像を入力情報とした際に、識別情報として土の水分量情報を関連付けて学習させておくことで、出力情報として、粒径分布情報とともに水分情報も得ることができる。例えば、土の粒径分布情報は、土の表面に見える粒子の分布やサイズ(すなわち、粒子の見え方であって、例えば、粒の光沢部や陰影部の形態から粒子を判断)などを特徴量として、粒子の種類(すなわち、粒径分布)を認識することができる。これに対し、水分量情報は、土の含水量が多くなると、土の色が濃くなり、また、土全体の光沢(輝度)が変化するため、土の濡れ具合による特徴量を抽出して、これと関連付けられた土の水分量情報を学習させることで、土の画像から、水分量情報を得ることができる。
【0022】
また、土の水分量情報の学習においては、学習用の土の全体画像を拡大し、学習用の土の拡大画像を用いてもよい。拡大画像を用いることで、粒子間に存在する水部分を識別することができ、この水部分の形状や分布を特徴量として、水分量情報を得ることもできる。
【0023】
また、事前に粒径分布情報ごとに土の乾燥密度情報を紐づけておくことで、得られた粒径分布情報から、対応する土の乾燥密度情報を知ることができる。このため、当該乾燥密度情報に応じた施工条件を設定することができる。
【0024】
第2の発明は、土の粒径を評価する土の評価方法であって、学習用の複数の土の画像を入力情報とし、土の粒径の分布情報を出力情報として学習させて、学習モデルを作成し、画像取得手段によって土の画像データを取得し、前記画像データを、前記学習モデルに入力し、土の粒径分布情報を出力させるものであり、前記学習モデルの作成において、さらに、学習用の土の画像を入力情報とし、土の水分量情報を出力情報として学習させ、前記画像取得手段で取得された画像データを、前記学習モデルに入力し、前記粒径分布情報と共に、土の水分量情報を出力させるものであり、前記学習モデルの作成においては、前記学習用の土の画像を拡大し、得られた学習用の土の拡大画像を入力情報とし、前記学習用の土の拡大画像において、土の粒子間に存在する水部分を認識することで、当該土の水分量情報を出力情報として学習させ、前記画像取得手段によって撮像された土の全体画像の一部を拡大した拡大画像を取得し、取得された前記全体画像と前記拡大画像を、前記学習モデルに入力し、土の粒径分布情報と共に、土の水分量情報を出力することを特徴とする土の評価方法である。
【0027】
第2の発明によれば、土の画像から、粒径分布情報を学習させるため、個々の粒子ごとに粒径を測定することなく、粒径分布情報を得ることができる。
【0028】
また、学習モデルとして、学習用の土の画像を入力情報とした際に、土の水分量情報を出力情報として学習させておくことで、粒径分布情報ととともに水分情報も得ることができる。
【0029】
また、土の水分量情報の学習においては、学習用の土の画像を拡大し、学習用の土の拡大画像を用いてもよい。拡大画像にすることで、粒子間に存在する水部分を識別することができ、この水部分の形状や分布を特徴量として、水分量情報を得ることもできる。
【0030】
第3の発明は、第2の発明にかかる土の評価方法を用いた盛土の施工方法であって、得られた土の粒径分布情報及び土の水分量情報を用いて、前記粒径分布情報及び前記水分量情報に対して、あらかじめ紐づけられた、土の乾燥密度情報を取得し、得られた前記乾燥密度情報に応じて、盛土の施工条件を設定して盛土の施工を行うことを特徴とする盛土の施工方法である。
【0031】
第3の発明によれば、事前に粒径分布情報ごとに土の乾燥密度情報を紐づけておくことで、得られた粒径分布情報から、対応する土の乾燥密度情報を知ることができる。このため、当該乾燥密度情報に応じた盛土の施工条件を設定することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、土の粒径分布を容易に判定することが可能な土の評価システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】土の評価システム10による土の評価方法のフローチャート。
【
図4】(a)は、土全体画像29aの概念図、(b)は、土全体画像29bの概念図。
【
図5】(a)は、粒径分布ごとの分布を示す図、(b)は、粒径加積曲線を示す図。
【
図6】(a)、(b)は盛土9における土31a、31b、31cの分布を示す概念図。
【
図7】土の評価システム10による他の土の評価方法のフローチャート。
【
図10】(a)は土の種類ごとの粒径加積曲線を示す図、(b)は土の種類ごとの締固め曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、第1の実施形態にかかる土の評価システムについて説明する。
図1は、土の特性を評価可能な土の評価システム10の使用状態を示す概略図であり、
図2は、土の評価システム10の構成を示す図である。土の評価システム10は、主に、GPS3、撮像装置5、およびこれらを制御する各種処理を行う処理部12等を備えている。
【0035】
画像取得手段である撮像装置5及び掘削部の位置情報を取得可能なGPS3は、重機1に設置される。重機1は、地山を掘削可能なバケット7を有し、撮像装置5は、重機1で掘削したバケット7内の土の画像を取得可能である。GPS3で取得された位置情報と撮像装置5で撮像された土の画像は処理部12に送られる。
【0036】
図2に示すように、処理部12は、例えばコンピュータであり、制御部13、記憶部15、メディア入出力部17、通信制御部19、入力部21、表示部23、周辺機器I/F部25等から構成され、それらがバス27を介して接続される。
【0037】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部15、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス27を介して接続された各装置を駆動制御し、下記に示すような、土の評価システム10が行う各種の処理を実現する。
【0038】
記憶部15は、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(フラッシュSSD)(ソリッドステートドライブ)であり、制御部13が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。これらの各プログラムコードは、制御部13により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。また、記憶部15には、後述する学習モデル及び各種データが保管される。
【0039】
メディア入出力部17(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ、USBメモリ、SDカード等のメディア入出力装置を有する。
【0040】
通信制御部19は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースである。
【0041】
入力部21は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部21を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0042】
表示部23は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0043】
周辺機器I/F(インタフェース)部25は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部25を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。
【0044】
バス27は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。ここで、土の評価システム10としては、上記構成をすべて含むものに限定されるものではなく、本発明の機能を奏するために必要な構成のみを有すればよい。また、GPS3と撮像装置5は、それぞれ処理部12と有線で接続されている場合には限られず、また、処理部12の少なくとも一部の構成は、重機1に設置されていなくてもよい。例えば、GPS3と撮像装置5で取得された情報を、メディアに記憶させ、他の場所に設置された処理部12にメディアから情報を入力させてもよい。
【0045】
次に、記憶部15に記憶されている学習モデルについて説明する。本発明で使用される学習モデルは、複数の学習用の土の画像を入力情報とし、これに紐づけられた土の特性情報について機械学習させたものである。より詳細には、各種の土について、あらかじめ粒径分布を測定し、それぞれの土の画像の特徴量と、その粒径分布情報との関連を識別モデルとして学習させたものである。
【0046】
前述したように、画像処理を用いた従来の土の粒径分布測定は、粒ごとに粒径を数値化し、これを統計処理して求めるものである。しかし、この方法では、視野によるばらつきも大きく、画像処理により粒子として認識可能な粒のみを数値化することから、精度の良い評価は困難であった。
【0047】
これに対し、発明者らは、現場で作業者が実際の土の表面を視認することで、ある程度はその土の特性(例えば、加積曲線I~Mの土の分類)が把握できることに着目し、本発明に至ったものである。すなわち、発明者らは、鋭意研究の結果、土の粒子ごとのサイズを数値化しなくても、「見た目」から直接土の特性を区分することで、粒子の画像処理による数値化が困難である場合にも、土の粒径分布情報を得ることが可能であることを見出したものである。
【0048】
ここで、粒径分布情報とは、前述した粒径加積曲線を直接用いて、土の画像と粒径加積曲線を紐づけてもよいが、土ごとに正確に粒径加積曲線を得るには、ふるい法と沈降法とを組わせるなど、手間と時間を要する。そこで、対象となる土について、まず、土の所定の粒径範囲ごとに区分された粒径区分ごとの比率を測定し、これらの比率を粒径分布情報としてもよい。例えば、
図10(a)に示す例では、A~Hの8つの粒径区分に区分し、それぞれの粒径区分ごとの質量比を計測し、粒径分布情報とする。
【0049】
なお、粒径区分は、
図10(a)に示したA~Hの8つの粒径区分には限られず、より細かな区分であってもよく、又は、より粗い区分であってもよい。すなわち、区分ごとの境界値や区分数は特に限定されない。但し、区分が細かすぎると、区分ごとの外観の差が出にくくなり、また、区分が粗すぎると、得られた粒径分布から、土の特性(例えば乾燥密度)の予測精度が悪くなるため、各区分の設定に当たっては、外観として区分ごとの差が認識できる程度であって、区分ごとの分布によって、特性の差が認識できる程度の区分とする。
【0050】
なお、土の画像から粒径分布情報を学習する際には、周知の特徴量抽出手段により、土の画像から所定の複数の特徴量を抽出し、これらの特徴量に基づいて、粒径分布情報が紐づけられる。画像中の特徴量としては、画像中の各ピクセルの色、濃度(輝度)、分布、テクスチャなど、これらの画像特徴量要素から、光沢や影(コントラスト)により粒を認識し、さらに粒のサイズや分布、全体としての上記画像特徴量要素の変化(均一性や不均一性)、上記画像特徴量要素の変化部分の形態や分布などを特徴量とすることができる。また、さらに、粒の色や濃淡の有無などにより、土の種類の特定も可能である。
【0051】
なお、土の画像の取得に際しては、特殊な赤外線カメラやハイパースペクトルカメラなどは高価であり、特殊な解析が必要となるため望ましくない。また、ステレオ画像や3D画像などを用いることなく通常のデジタルカメラ等の画像から特性評価ができることが望ましい。
【0052】
一方、細かな土の粒を粒として認識するためには、ある程度の解像度が必要である。例えば、土の工学分類(JIS A1204)に基づくと、最小粒度としては75μm(細粒分)を検出できることが望ましい。このため、分解能としては50μm以下であることがより望ましい。しかし、拡大画像のみを用いたのでは、土の全体を把握することが困難であり、また、サイズの大きな粒子の判定が困難である。このため、撮像装置5としては、1億画素以上のデジタルカメラを用いることが望ましい。例えば、市販の1億画素のカメラを用いても、5mの距離で撮像した際に、0.063mm/pixelの分解能を有するものがあり、土に対してよりカメラを近づければ、さらに分解能を高めることができる。
【0053】
次に、土の評価システム10による土の評価方法について説明する。
図3は、土の評価システム10による土の評価方法のフローチャートである。前述したように、まず、複数の学習用の土の画像と土の粒径分布情報とを紐づけて学習モデルを作成する(ステップ101)。
【0054】
この際、出力情報である粒径分布情報としては、粒径範囲ごとに区分された粒径区分ごとの比率であってもよいし、粒径加積曲線を用いてもよい。また、学習用の土の画像としては、掘削して採取した土の画像を用い、この土の粒径分布をふるい法などで求めて紐づけてもよいが、まず、複数の粒径区分ごとの粒子を準備し、これらを所定の配合比率で混合することで、複数種類の粒径分布を有する土を作成し、この画像を用いてもよい。
【0055】
また、あらかじめ、複数の土の種類をグルーピングして、それぞれのグループの代表的な粒径加積曲線のパターンを学習させてもよい。すなわち、例えば、
図10(a)の土I~Mのように、土の種類をグルーピングしておき、各種の土の画像に対して、どのグループに属する土の種類か(すなわち、どの粒径加積曲線に最も近い種類か)を学習させてもよい。
【0056】
このような学習モデルを記憶部15に格納した状態で、実際の現場で掘削作業を行う。掘削の際には、バケット7内の土の画像を撮像装置5によって撮像する(ステップ102)。撮像された土の画像は、記憶部15に保管される。この際、土の画像ごとに、GPS3によって取得した位置情報を紐づけてもよい。また、バケット7内の土の量も、土の画像(又は他のセンサ)から取得することもできる。さらに、重機1の油圧抵抗によって、掘削した土の硬さ情報も得ることができる。これらの情報も、土の画像とともに紐づけられて記憶部15に保管してもよい。
【0057】
次に、撮像した土の画像データを学習モデルに入力し、前述した特徴量を抽出し、これらの特徴量から、土の特性情報である粒径分布情報を識別情報として推定して出力する(ステップ103)。
図4(a)は、土全体画像29aを示す概念図であり、
図4(b)は、土全体画像29bを示す概念図である。前述したように、土の種類(粒径分布)に応じて、土の外観が変わる。このため、学習モデルによって、これらの画像の違いから、それぞれ特徴量を抽出し、それに関連付けられた粒径分布を推測し、粒径分布情報として出力することができる。
【0058】
図5(a)は、あらかじめ設定された所定の粒径範囲ごとの区分に対する質量比を出力した例を示す図である。図中Oは、それぞれの粒径範囲A~Hの粒子の推定比率の出力例である。図に示す例では、Aの粒径範囲の粒子が約40%、Bの粒径範囲の粒子が約20%、・・・と推定された際の、各粒径範囲の加積比率が線Oで示される。
【0059】
このように、それぞれの粒径範囲ごとの加積比率が分かれば、
図5(b)に示すように、粒径加積曲線Pを推定することも可能である。なお、前述したとおり、出力情報として、粒径加積曲線Pを出力してもよい。
【0060】
なお、出力される粒径分布情報としては、
図5(a)に示すような粒径範囲ごとの比率であってもよいが、直接、粒径加積曲線を出力してもよい。また、あらかじめグルーピングされた粒径加積曲線候補の中から、最も近いと判定されたものを選択して出力する場合には、それぞれの粒径加積曲線候補ごとに一致確率を付し、最も高い確率の粒径加積曲線を出力してもよい。この際、あらかじめ学習モデルに対して、それぞれの粒径加積曲線候補ごとに、土の硬さ情報も紐づけておくことで、外観から得られる粒径加積曲線候補に対する一致確率を、前述した掘削時の土の硬さ情報によって補正(すなわち、硬さ情報に基づく粒径加積曲線候補に対する一致確率も加味)してもよい。
【0061】
また、GPS3によって得られた位置情報によって、それぞれの土の画像に対して、所定の位置範囲の土をグループ化して、それらのグループごとに、粒径分布情報を補正してもよい。例えば、掘削位置の近い土同士は、粒径分布も近い可能性が高いため、例えば、グループ内に特異な粒径分布情報として推定された土画像があった場合に、この情報を補正(例えば、他の粒径分布に近くなるように補正)してもよい。
【0062】
次に、得られた粒径分布情報に基づいて、粒径分布情報ごとにあらかじめ紐づけられた土の乾燥密度情報を取得し、出力する(ステップ104)。例えば、
図10(a)に示した土I~土Mに基づいて、あらかじめ紐づけられた、
図10(b)に示す、締固め曲線を記憶部15から読みだして出力する。なお、締固め曲線は、含水比によって変化するが、例えば、最も高い乾燥密度を代表値として読みだして、当該土の特性情報として出力するとともに、記憶部15に記憶する。
【0063】
なお、各種の粒径分布を有する土に対して、あらかじめ締固め曲線を求めておき、得られた粒径分布情報に最も近い粒径分布を有する土の締固め曲線を選択してもよく、又は、粒径分布と乾燥密度との関係を関係式等で近似させておき、得られた粒径分布ごとに乾燥密度を算出してもよい。
【0064】
以上により、掘削した土ごとに、その土の乾燥密度を知ることができる。前述したように、土の乾燥密度に応じて、盛土を形成する際の転圧条件や、施工後の盛土の強度等が異なる。このため、土の特性を知ることで、適切な条件で盛土を施工することができる。このため、部位または土種ごとに転圧試験などを行う必要がない。
【0065】
図6(a)は、盛土9を示す概念断面図である。例えば、掘削した土が、大きく土31a、31b、31cの3種類に分類できたとする。この際、盛土9を施工する際に、施工部分がどの土であるかを知ることで、各部ごとに適切な施工条件で盛土を施工することができる。
【0066】
なお、通常は、掘削した土は、ある程度集められ、盛土の施工現場に運搬されて使用される。このため、掘削した直後の土がどのような土の種類であるかを知ることで、これを別に管理することもできる。例えば、掘削したバケット内の土の種類(粒径分布情報)と、その土の量とを判断し、所定量(例えばダンプカーの積載量)ごとに、それらを合算することで、掘削土の運搬ごとの総量の粒径分布情報を得ることもできる。
【0067】
このようにして、土を種類ごと(ある程度似た種類ごと)に別々に管理することで、
図6(b)に示すように、盛土9の部分ごとに、適切な種類の土を配置することもできる。また、このようにして施工された盛土9は、元の土の掘削位置情報と紐づけて記憶部15に記憶させることで、盛土9のどの位置に、どの場所で掘削した土が使われているかを記録し、管理することもできる。このように、盛土施工時に、使用した土の情報と盛土9の施工位置情報とを紐づけることで、盛土9自体をより確実に管理し、トレーサビリティーを確保することができる。
【0068】
以上、本実施の形態によれば、土の画像の特徴量から土の粒径分布を推測するため、画像処理が不要である。また、個々の粒子ごとに粒径を測定する必要がなく、バケット7内の画像から直接粒径分布情報を取得できるため、汎用性が高い。また、粒径範囲ごとに区分された粒径区分ごとの比率によって学習を行うことで、学習用のデータの作成も容易である。
【0069】
また、得られた粒径分布情報から、土の乾燥密度を推測可能であるため、その後の盛土9の施工において、転圧試験等を行うことなく、適切な条件で施工を行うことができる。また、土を所定の種類で分類することで、盛土9の各部に適した土を選択して使用することもできる。例えば、盛土9に適さない土は、あらかじめ使用せずに廃棄や他の部位に使用することで、転圧後に盛土の強度不良などが生じることを事前に避けることもできる。また、どこで掘削した土がどこに使用されたかを把握することができるため、盛土9自体をより確実に管理し、トレーサビリティーを確保することができる。
【0070】
次に、第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態にかかる土の評価システム10による土の評価方法のフローチャートである。なお、以下の説明において、第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0071】
まず、複数の学習用の土の画像を入力情報とし、これと関連付けられた土の粒径分布情報及び水分量情報とを紐づけて学習モデルを作成する(ステップ201)。出力情報である粒径分布情報については、第1の実施形態と同様である。また、本実施形態では、学習モデルとして、学習用の土の画像を入力情報とした際に、土の水分量情報(土に含まれる水分量に関する情報であり、例えば含水比)も出力情報として学習させておく。
【0072】
例えば、土の粒径分布情報は、土の表面に見える粒子の分布やサイズ(すなわち、粒子の見え方であって、例えば、粒の光沢部や陰影部の形態から粒子を判断)などを特徴量として、粒子の種類(すなわち、粒径分布)を認識することができる。これに対し、土の含水量が多くなると、土の色が全体的に濃くなり、また、土全体の光沢(輝度)が変化する。このため、これらを特徴量として、土の水分量情報を学習させることで、土の画像から、水分量情報を推測することもできる。
【0073】
なお、水分量情報の学習においては、土の全体画像と共に拡大画像を併用してもよい。例えば、学習用の土の全体画像と粒径分布情報とを紐づけて学習させるとともに、土の全体画像の一部を拡大して学習用の拡大画像を取得し、この拡大画像を入力情報として、画像中の水分の存在を特徴量として、特徴量と水分量情報とを関連付けて学習させてもよい。
【0074】
図8は、土拡大画像29cの概念図である。土の一部を拡大(例えば、0.075mm以下の粒子を認識可能な程度に拡大)すると、土粒子33の間において、水35と空気37とを識別することができる。なお、土粒子33、水35、空気37とは、その形態や写真における色(輝度、濃度)などによって識別することができる。このため、各種の粒径分布の土に対して、さらに、含水比を変えた土画像を準備し、学習用の土画像として用い、この際の既知の粒径分布情報と含水比を当該画像と紐づけて学習させてもよい。
【0075】
このように、本実施形態においては、学習モデルの作成において、全体画像と粒径分布情報とを紐づけた学習とともに、学習用の土の全体画像の一部を拡大し、得られた学習用の土の拡大画像を入力情報とし、学習用の土の拡大画像において、土粒子33間に存在する水35の部分を認識することで、当該土の含水比を出力情報として学習させることができる。
【0076】
また、この際、
図10(b)に示すように、粒径分布の異なる土I~土Mのそれぞれに対して、所定の水分範囲に区分可能に学習させてもよい。例えば、土Iに区分される土の種類に対しては、含水比30%未満、含水比30~40%、含水比40%超の3区分に分類し、このいずれに該当するか(どのグループとの一致確率が最も高いか)を学習させてもよい。すなわち、あらかじめグループ分けされた土の粒径分布(I~M)のいずれに近い土であるかと、その際の水分量が多い/中間/少ない、のいずれに該当するかの組み合わせで学習させてもよい。
【0077】
また、土の全体画像から、土の濡れ方による特徴量を抽出し、一次的に水分量情報を取得し、拡大画像から水分の存在形態による特徴量を抽出して二次的に水分量情報を取得し、これら二つの水分量情報から、最終的な水分量情報を推定してもよい。例えば、全体画像からは、水分量が多いか少ないかによって第1の水分量判定を行って水分量を粗く区分し、第1の水分量判定によって区分された水分量ごとに(又は水分量が多い区分に対してのみ)、拡大画像を用いて第2の水分量判定を行うことで、より細かな水分量情報の推定が可能である。
【0078】
このような学習モデルを記憶部15に格納した状態で、現場で掘削作業を行う。掘削の際には、バケット7内の土の画像を撮像装置5によって撮像する(ステップ202)。撮像画像については、第1の実施形態と同様である。
【0079】
次に、撮像した土の画像を学習モデルに入力し、土の特性情報である粒径分布情報及び水分量情報を出力する(ステップ203)。この際、前述したように、撮像装置5は、対象となる土の全体画像を取得すると、処理部において全体画像の一部を拡大した拡大画像を作成してもよい。すなわち、撮像装置5による画像から、全体画像と拡大画像の両方を取得可能であり、撮像した土の全体画像と共に、一部を拡大した拡大画像を作成し、全体画像と拡大画像とを学習モデルに入力してもよい。
【0080】
なお、出力される粒径分布情報としては、あらかじめ定められた複数の粒径加積曲線候補から選択されてもよく、また、さらに、水分量情報としては、それぞれの粒径加積曲線ごとに紐づけられた複数の含水比候補から選択されてもよい。
【0081】
次に、得られた粒径分布情報及び水分量情報に基づいて、あらかじめ紐づけられた土の乾燥密度情報を取得し、出力する(ステップ204)。例えば、
図10(a)に示すような、土I~土Mに基づいて、あらかじめ紐づけられた、
図10(b)に示す、締固め曲線を記憶部15から読みだして出力するとともに、当該土の乾燥密度を記憶部15に記憶する。
【0082】
以上により、掘削した土ごとに、その土の乾燥密度を知ることができる。前述したように、土の乾燥密度に応じて、盛土を形成する際の転圧条件や、施工後の盛土の強度等が異なる。このため、土の特性を知ることで、転圧試験などを行うことなく、適切な条件で盛土を施工することができる。
【0083】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、土の画像によって、粒径分布情報だけではなく、水分量情報を推定することで、より正確に、当該土の乾燥密度を推定することができる。なお、土中の水分の分布はほぼ均一であることから、水分量情報については、学習モデルを使用せずに、例えば、土の全体画像を取得後、その一部を拡大した土拡大画像29cを作成し、土拡大画像29cの画像解析によって水35の面積率を算出することで、水分量情報を得ることもできる。
【実施例】
【0084】
実際に、粒子径が既知の粒子を配合して、各種の粒径比率のサンプルを準備し、この学習用画像と粒径比率とを関連付けて学習させて学習モデルを作成し、この学習モデルに対して、サンプル画像を入力し、粒径分布の推定を行った。
【0085】
学習モデルとしては、簡単のため、2種類の粒径の粒子を配合し、この配合比率を学習させた。使用した粒子は、5号の珪砂(呼び径は0.5mm)と6号の珪砂(呼び径は0.3mm)を用いた。
図9は、それぞれの珪砂の粒径加積曲線を示す図であり、図中Xは6号の珪砂、図中Yは5号の珪砂を示す。それぞれの試料は、粒径に多少の分布があるが、5号の珪砂Yを0.5mm径の粒子とし、6号の珪砂Xを0.3mm径として取り扱った。なお、5号の珪砂Yは、
図10(a)における粒径区分Dに該当し、6号の珪砂Xは、
図10(a)における粒径区分Cに該当する。
【0086】
これらの珪砂X、Yを用いて、X:Y=100:0、75:25、50:50、25:75、0:100の5水準について、それぞれ250枚の学習用画像を作成し、それぞれの水準で250枚の画像を入力情報とし、配合比率(0.3mm径:0.5mm径の粒子径分布)を関連付けた出力情報として学習モデルを作成した。より詳細には、0.4mm以下の粒子径範囲と0.4mm超の粒子径範囲の配合比率を関連付けた出力情報として学習モデルを作成した。
【0087】
次に、この学習モデルに対して、珪砂X:珪砂Yの配合比率を100:0~0:100まで変化させた画像を新たに作成し、これらの画像から、それぞれの粒子径分布を推定した。結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
結果より、多少のばらつきはあるものの、少なくとも、#1~5、#6~10、#11~15、#16~20、#21~25のそれぞれの水準ごとには区別可能な程度に推定を行うことができた。このように、0.3mm径と0.5mm径のように、比較的近い粒径分布の土の表面の画像であっても、土を構成する粒子の粒径分布をある程度推定可能であることが分かった。
【0090】
なお、本実施例では、2水準の粒径の試料を用いたが、外観から所定の特徴量を抽出し、その配合を推定できることが分かったため、3種以上の粒径のものであっても、その配合割合のパターンは増えるものの、同様の効果が期待できる。また、各配合比率に対して、含水比を変化させれば、水分量によって外観が変化するため、この特徴量を抽出することで、水分量情報も外観から推定することも当然に可能である。
【0091】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
例えば、学習モデルにおいて、土の画像を入力情報とし、この特徴量に土の乾燥密度情報を直接関連付けて学習させてもよい。すなわち、土の画像から抽出される粒径分布や含水比の変化による特徴量を抽出し、これに関連付けられた乾燥密度情報を識別情報として学習させてもよい。
【0093】
また、撮像装置5は、重機に設置される場合に限られず、他の支柱等に設置してもよい。また、位置情報の取得が不要であれば、GPSは必ずしも必須ではない。
【0094】
1………重機
3………GPS
5………撮像装置
7………バケット
9………盛土
10………土の評価システム
12………処理部
29a、29b………土全体画像
29c………土拡大画像
31a、31b、31c………土
33………土粒子
35………水
37………空気