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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】頭頸部癌の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240318BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240318BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240318BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28
A61K45/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020549048
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019056174
(87)【国際公開番号】W WO2019175182
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】62/642,292
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520348325
【氏名又は名称】インネート ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤー-シャマール,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】ドディオン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】コヘン,ロジャー,ビー
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】Cancer Res,2017年, 77 (13_Supplement),Abstract 5666
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切除不可能なHNSCCを有するヒト個体における癌の処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する抗体を含む医薬組成物であって、前記処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する抗体、及び(b)セツキシマブの各々の有効量を前記個体に投与することを含み、前記個体は、放射線療法と併用されたセツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有し、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、配列番号2に示される配列を有する重鎖と、配列番号7に示される配列を有する軽鎖とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
個体におけるHNSCCの前記処置は、
a)個体が、セツキシマブに対して耐性であるHNSCCを有するかどうかを決定すること、及び
b)前記個体が、セツキシマブに対して耐性であるHNSCCを有すると決定されると、(i)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する抗体、及び(ii)セツキシマブを前記個体に投与すること
を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
個体におけるHNSCCの前記処置は、
a)HLA-Eポリペプチドが、HNSCCを有する前記個体からの悪性細胞によって発現されるかどうかを決定すること、及び
b)悪性細胞がHLA-Eポリペプチドを発現すると決定されると、(i)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する抗体、及びii)セツキシマブを前記個体に投与すること
を含む、請求項1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
HLA-Eポリペプチドが悪性細胞によって発現されるかどうかを決定することは、HNSCC細胞を含む生体サンプルを前記個体から取得すること、前記細胞を、HLA-Eポリペプチドに結合する抗体と接触させること及びHLA-Eを発現する細胞を検出することを含む、請求項3に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、野生型NKG2Aポリペプチド(配列番号1)と比較して、置換K199A/D202A/V213S/R215A/K217A(配列番号1を参照して)を有する突然変異型NKG2Aポリペプチドへの結合の低減によって特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、ヒトIgG4定常領域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、ヒトFcγ受容体への結合を低減するアミノ酸修飾を含むFc操作された定常領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、ヒトNKG2Aへの結合について、配列番号2及び7をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖を有する抗体と競合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物は、いかなる他の薬学的活性剤も含まない、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、約1週間に1回~約1ケ月に1回の投薬頻度で数回投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
セツキシマブは、毎週投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記処置は、少なくとも1つの投与サイクルを含み、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、2週間毎に投与され、且つセツキシマブは、毎週投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記処置は、2週間の少なくとも1つの期間を含み、前記少なくとも1つの期間の各々にわたり、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、1~10mg/kg体重の用量で投与され、且つセツキシマブは、400mg/mの初期用量及びそれに続いて250mg/mで毎週投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記処置は、2週間の少なくとも1つの期間を含み、前記少なくとも1つの期間の各々にわたり、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、100~1000mg、任意選択的に750mgの固定用量で投与され、且つセツキシマブは、400mg/mの初期用量及びそれに続いて250mg/mで毎週投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、特に頭頸部癌の処置のためのNKG2A標的剤の使用に関する。本発明は、癌の処置のためにNKG2A標的剤と共に使用するのに有利な併用レジメンも提供する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞活性は、活性化シグナル及び阻害性シグナルの両方を含む複雑な機構によって制御される。HLAクラスI欠損標的細胞のNK細胞媒介性の認識及び死滅において重要な役割を果たすいくつかの別個のNK特異的受容体が同定されている。天然細胞毒性受容体(NCR)は、活性化受容体タンパク質の種類及びこれらを発現する遺伝子(NK細胞において特異的に発現される)を指す。NCRの例としては、NKp30、NKp44及びNKp46が挙げられる(例えば、Lanier(2001)Nat Immunol 2:23-27を参照されたい)。NK細胞による標的細胞溶解に関与する別の重要な活性化受容体は、NKG2Dである。NKG2Dは、MICA/B及びULBPタンパク質ファミリーの主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI関連抗原を認識する。後者は、ストレス関連タンパク質であり、NK細胞が腫瘍細胞を認識して、それらを排除することを可能にする腫瘍特異的抗原として作用することができる。
【0003】
CD94/NKG2Aは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)及びT細胞(α/β及びγ/δ)のサブセットにおいて見出される阻害性受容体である。CD94/NKG2Aは、CD94/NKG2A-リガンドHLA-Eを発現する細胞に対する上記のリンパ球のサイトカイン放出及び細胞毒性反応を制限する(例えば、国際公開第99/28748号パンフレットを参照されたい)。HLA-Eは、特定の腫瘍細胞(Derre et al.,J Immunol 2006;177:3100-7)及び活性化内皮細胞(Coupel et al.,Blood 2007;109:2806-14)によって可溶性形態で分泌されることも見出されている。CD94/NKG2Aシグナル伝達を阻害する抗体は、ウイルス感染細胞に対するCD94/NKG2A陽性NK細胞応答の応答など、HLA-E陽性標的細胞に対するリンパ球のサイトカイン放出及び細胞溶解活性を増大し得る。従って、CD94/NKG2Aを阻害するが、CD94/NKG2A発現細胞の死滅を誘発しない治療抗体(すなわち非枯渇抗体)は、癌患者における腫瘍成長の制御を誘導し得る。
【0004】
NKG2Aに対する種々の抗体は、当技術分野において記載されている。国際公開第2008/009545号パンフレットにはヒト化抗NKG2A抗体Z270が記載されており、国際公開第2009/092805号パンフレットにはヒト化抗NKG2A抗体Z199が記載されている。Vance et al.(J Exp Med 1999;190:1801-12)は、ラット抗マウスNKG2抗体20D5(現在、BD Biosciences Pharmingen,カタログ番号550518,USAにより市販されている)について言及しており、米国特許出願公開第20030095965号明細書には、NKG2A、NKG2C及びNKG2Eに結合すると主張されるマウス抗体3S9が記載されている。
【0005】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、年間約600,000件の発生率及び約50%の死亡率を有する。HNSCCの主要な危険因子は、喫煙、アルコール消費及びヒトパピローマウイルス(HPV)による感染である。その疫学及び病態形成の知識の向上にもかかわらず、多くのタイプのHNSCCの生存率は、過去40年間にわたってほとんど改善されていない。HNSCC患者の5年間の全生存率は、わずか約50%である。タバコ、アルコール消費及びウイルス性因子は、HNSCCの発生の主要な危険因子である。これらの危険因子は、遺伝的感受性と共に、癌発生の多段階プロセスにおいて複数の遺伝的及びエピジェネティックな変化の蓄積をもたらし、HNSCCのこのような分子的発癌の理解は、HNSCCを処置するための標的剤の開発に使用されている。
【0006】
HNSCCの処置としての免疫療法の考えは、数十年間にわたり存在しており、HNSCCを処置する試みは、腫瘍特異的抗原のターゲティングを含んでいる。様々な固形癌に対してこのような免疫刺激性治療戦略を用いて改善がなされているが、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)患者に対するこれらの戦略の使用は、遅れている。HNSCCの免疫療法アプローチは、HNSCCにより誘導されて免疫刺激の取り組みの有効性を潜在的に低下させる深刻な免疫抑制によって特に複雑化される。HLAクラスIの発現低下など、HNSCCが抗腫瘍免疫応答を逃れる機構の概説は、Duray et al.(2010)Clin.Dev.Immunol.Article ID 701657;2010:1-15に提供されている。
【0007】
HNSCCの標準治療法としては、転移性HNSCCの処置のためのセツキシマブとの併用を含め、シスプラチンベースの化学療法がある。切除不可能な非転移性HNSCCの処置の場合、処置は、シスプラチンベースの化学療法及びセツキシマブと放射線療法との併用を含む。c225抗体(セツキシマブ、ERBITUX(登録商標))は、EGF媒介性腫瘍細胞増殖をインビトロで阻害することが実証された抗EGFR抗体であり、これは、頭頸部癌の処置のために2011年にFDAによって承認されている。セツキシマブは、EGF受容体経路の発癌性シグナル伝達を遮断することにより、且つFcγ受容体媒介抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することにより作用すると考えられる。しかしながら、HNSCCの場合、ADCCは、誘導される強い免疫抑制により影響を受ける可能性がある。同時に、Vantourout et al.,Sci.Transl.Med.6:231ra49(2014)は、EGF受容体経路の発癌性シグナル伝達の遮断により、NK細胞及びT細胞のサブセット上の活性化受容体NKG2Dにより認識されるMICA/B及びULBPタンパク質ファミリーの主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI関連抗原の腫瘍細胞の転写後調節が起こることを報告している。特に、NKG2Dの天然リガンドであるこれらのストレス関連抗原の腫瘍細胞による発現は、臨床的EGFR阻害剤により低減され、従ってNK及びT細胞に対する腫瘍細胞の可視性が低減する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、様々な処置を受ける多くのHNSCC患者は、現在のところ承認された治療法にもかかわらず進行するため、免疫治療薬による処置から最も多くの利益を受け得る患者集団を見出すことが当技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、中でも、セツキシマブと組み合わせて抗NKG2A抗体を用いる阻害性受容体NKG2Aの遮断が、癌、特に頭頸部癌、とりわけHNSCCを有する患者、例えば事前にプラチナ製剤療法を受けており、且つその癌が進行している(例えば、非応答、再発又はそれ以外に進行した)患者に臨床的奏効をもたらすという所見に由来する。さらに、セツキシマブと組み合わせた抗NKG2A抗体の併用は、セツキシマブによる事前の処置中又はその後に癌が進行した患者でも臨床的奏効をもたらした。一部の実施形態では、患者は、事前のセツキシマブ及び/若しくは化学療法薬(例えば、プラチナ製剤療法)又はセツキシマブ及び放射線療法で処置されていることができる。一実施形態では、本明細書に開示される併用療法は、不治の切除不可能な及び/又は転移性HNSCCを有する患者集団の処置に使用するうえで特に有用であり得るが、任意選択的に、さらに、患者は、事前のプラチナ製剤療法、放射線療法及び/又はセツキシマブを受けている。
【0010】
従って、一態様では、セツキシマブと組み合わせた抗NKG2A抗体の中和は、切除不可能な(例えば、不治であり、切除不可能な)及び/又は転移性)頭頸部癌、とりわけHNSCCを有し、その癌がセツキシマブに対して耐性とみなされた個体の集団において癌の有意な改善をもたらし得る。この併用処置は、頭頸部癌、とりわけHNSCCを有し、その癌がセツキシマブによる処置にもかかわらず進行した個体の相当な集団に機会を提供し得る。特に、併用処置は、さらなる進行を防ぐうえでとりわけ転移性癌(例えば、非転移性癌を有する個体の)を遅らせるか又は予防するために有益であり得る。
【0011】
本明細書には、頭頸部癌を有する個体の頭頸部癌を処置する方法が提供される。一実施形態では、癌は、切除不可能(手術により完全に除去することができない頭頸部癌)である。一実施形態では、切除不可能及び/又は転移性頭頸部癌を有する個体において、腫瘍負荷を低減(例えば、ベースライン直径和と比較して標的細胞病変の直径和を減少)する方法が提供される。
【0012】
一実施形態では、この方法は、個体の頭頸部癌を処置することを含み、この方法は、セツキシマブと組み合わせて、ヒトNKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和する薬剤の治療的に活性な量を個体に投与することを含む。一実施形態では、個体は、セツキシマブによる事前の処置過程中又はその後に進行した癌を有する(セツキシマブによる事前の処置過程は、NKG2Aの活性を中和する化合物を含まないが、他の処置、とりわけ放射線療法及び/又は化学療法と組み合わせて投与され得る)。一実施形態では、セツキシマブによる事前の治療過程(任意選択的に化学療法薬又は放射線療法と併用された)に加えて、個体は、化学療法薬によるさらに別の事前の治療過程を受けており;例えば、個体は、プラチナ製剤を用いた第1の事前の治療過程後、セツキシマブによる第2の事前の治療過程を受けている。一実施形態では、癌は、切除不可能(例えば、不治であり、切除不可能)及び/又は転移性頭頸部癌である。
【0013】
一実施形態では、切除不可能であり、任意選択的に非転移性の頭頸部癌、とりわけHNSCCを有する個体の頭頸部癌を処置する方法が提供され、この方法は、(a)治療的に活性な量の、ヒトNKG2Aポリペプチドの活性を中和する薬剤、(b)治療的に活性な量のセツキシマブを個体に投与することを含む。一実施形態では、個体は、化学療法薬(例えば、プラチナ製剤療法)、放射線療法及び/又はセツキシマブによる事前の処置(例えば、こうした化学療法薬、放射線療法及び/又はセツキシマブの投与を含む事前の処置過程)を受けており、その頭頸部癌は、そうした事前の処置中又はその後に進行している。一実施形態では、個体は、こうした化学療法薬、放射線療法及び/又はセツキシマブによる処置に応答しなかったか又は十分に応答しなかった頭頸部癌を有する。一実施形態では、個体は、こうした化学療法薬、放射線療法及び/又はセツキシマブによる処置後に再発した頭頸部癌を有する。一例において、個体は、化学療法薬(例えば、プラチナ製剤療法薬)、放射線療法及び/又はセツキシマブの投与を含む事前の処置過程を受けたことがあり、且つ処置過程の終了後、例えば処置過程の終了から3年以内に癌の進行又は再発を経験している。一実施形態では、個体は、放射線療法と併用されたセツキシマブを受けたことがある。一実施形態では、個体は、セツキシマブ療法後又はそれと併用して、プラチナ製剤療法を受けている。別の実施形態では、個体は、セツキシマブによる事前の処置を受けている。
【0014】
一実施形態では、頭頸部癌を有する個体であって、セツキシマブによる事前の処置(例えば、セツキシマブの投与を含む事前の処置過程)を受けており、且つその癌が進行している個体の頭頸部癌を処置する方法が提供され、この方法は、(a)治療的に活性な量の、ヒトNKG2Aポリペプチドの活性を中和する薬剤、(b)治療的に活性な量のセツキシマブを個体に投与することを含む。一実施形態では、頭頸部癌を有する個体は、セツキシマブの投与を含む事前の処置過程を受けており、且つこうした処置に応答しなかったか又は十分に応答しなかった。一実施形態では、個体は、セツキシマブの投与を含む事前の処置過程を受けており、且つセツキシマブを含む前記処置過程中又はその後に癌の進行又は再発を経験している。一例では、個体は、セツキシマブの投与を含む事前の処置過程を受けており、且つセツキシマブを含む前記事前の処置過程の終了後、例えば前記事前の処置過程の終了から3年以内に癌の進行又は再発を経験している。セツキシマブを含む事前の処置過程は、例えば、放射線療法と組み合わせてセツキシマブを含み得る。一実施形態では、セツキシマブを含む事前の処置過程は、放射線及び/又は化学療法薬、例えばプラチナ製剤と組み合わせてセツキシマブを含んだ。
【0015】
一実施形態では、個体のHNSCCの進行を処置又は予防する方法が提供され、これは、(i)セツキシマブによる処置に対して耐性である(例えば、セツキシマブ、任意選択的に放射線療法及び/又は化学療法と組み合わせたセツキシマブによる処置にもかかわらず進行した)HNSCCを有する個体を同定することと、(ii)セツキシマブと組み合わせて、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤の有効量を個体に投与することとを含む。一実施形態では、ステップ(i)の個体は、切除不可能な非転移性頭頸部癌を有する。一実施形態では、ステップ(i)の個体は、切除不可能な転移性頭頸部癌を有する。
【0016】
別の実施形態では、HNSCC、任意選択的に切除不可能な頭頸部癌、任意選択的に非転移性頭頸部癌、任意選択的に転移性頭頸部癌を有する個体(又は例えば固体の集団)が、セツキシマブと組み合わせて、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤による処置から特定の利益を受け、それに対して応答性であり、且つ/又はそれに適している可能性があるかどうかを決定する方法が提供され、この方法は、個体が、セツキシマブ(例えば、単剤療法としてのセツキシマブ、放射線療法と併用されたセツキシマブ及び/又は化学療法と併用されたセツキシマブ)に対して耐性の頭頸部癌を有するかどうかを決定することを含み、個体が、セツキシマブに対して耐性の頭頸部癌を有するという決定は、個体が、セツキシマブと組み合わせて、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤による処置から特定の利益を受け、それに対して応答性であり、且つ/又はそれに適している可能性があることを示す。任意選択的に、この方法は、こうした処置から特定の利益を受け、それに対して応答性であり、且つ/又はそれに適していると決定された個体に、セツキシマブと組み合わせて、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤を投与するステップをさらに含む。
【0017】
本明細書には、疾患、例えばセツキシマブ耐性癌の処置に使用するための組成物も提供される。一部の実施形態では、そのHNSCC癌がセツキシマブ(例えば、セツキシマブ単独又は化学療法若しくは放射線療法などの別の薬剤との併用)による処置(例えば、事前の処置)に対して耐性である個体におけるHNSCCの処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤及び/又はセツキシマブが提供される。一実施形態では、セツキシマブによる事前の処置を受けた個体における癌の処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤が提供される。一実施形態では、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤をセツキシマブと組み合わせて投与する。一実施形態では、セツキシマブによる事前の処置を受けたヒト個体におけるHNSCCの処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤が提供され、この処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブの各々の有効量を個体に投与することを含む。一実施形態では、癌又は癌腫は、HNSCCである。一実施形態では、切除不可能であり、任意選択的に非転移性の癌腫を有するヒト個体における癌の処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤が提供され、この処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブの各々の有効量を個体に投与することを含む。一実施形態では、癌又は癌腫は、HNSCCである。一実施形態では、事前の処置(例えば、セツキシマブによる第1の処置過程)を受けた個体におけるHNSCCの処置に使用するためのセツキシマブが提供され、前記処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブ(例えば、セツキシマブによる第2の処置過程)の各々の有効量を個体に投与することを含む。
【0018】
本明細書に記載の任意の実施形態では、個体は、セツキシマブによる処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有するとして特徴付けられる。任意選択的に、個体は、放射線療法と併用されたセツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有する。
【0019】
本明細書に記載の任意の実施形態では、セツキシマブによる処置に対して耐性の頭頸部癌は、セツキシマブを含む事前の処置過程中又はその後に進行又は再発した癌である。一例では、セツキシマブによる処置に対して耐性の癌は、セツキシマブを含む事前の処置過程の終了後、例えば3年以内に進行又は再発した癌である。例えば、癌は、セツキシマブを含む事前の処置過程の終了から2年以内又は12ヶ月、6ヶ月、4ヶ月若しくは3ヶ月以内に進行したものであり得る。任意選択的に、再発した癌は、新たな原発癌ではないが、元のHNSCCの再発を示す癌である。任意選択的に、再発した癌は、同じ領域及び/又は側性(例えば、右若しくは左側)の癌である。セツキシマブを含んだ事前の処置過程は、例えば、放射線療法と併用してセツキシマブを含んだものであり得る。セツキシマブを含んだ事前の処置過程は、例えば、プラチナ製剤療法などの化学療法と併用してセツキシマブを含んだものであり得る。
【0020】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一態様では、本発明の処置は、腫瘍負荷の低減、任意選択的に例えばベースライン直径和と比較した標的細胞病変の直径和の減少をもたらす。一実施形態では、この処置は、癌の進行を遅らせる。一実施形態では、処置は、癌の転移を遅らせるか又は予防する。一実施形態では、癌増殖の収縮又は遅延による処置は、患者の症状又はウェルビーイングを改善する。
【0021】
本明細書に記載の任意の実施形態では、個体は、事前のプラチナ製剤療法を受けたとして特徴付けることができる(且つ場合によりそうした療法にもかかわらず進行した癌を有し得る)。プラチナ製剤療法は、例えば、プラチナ製剤及びさらにパクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン又は5FU(5-フルオロウラシル)を含むレジメンにおいて、例えばシスプラチン又はカルボプラチンを含む処置レジメンの投与を含み得る。
【0022】
一実施形態では、個体のHNSCCを処置する方法が提供され、これは、
(a)個体にセツキシマブを投与する(例えば、セツキシマブを含む治療サイクル又は過程、任意選択的にセツキシマブと放射線療法とを含むか、又はセツキシマブと化学療法とを含む治療過程を投与する)こと;及び
(b)ステップ(a)において、個体の癌がセツキシマブに対して(例えば、ステップ(a)の治療過程に対して)耐性であり、任意選択的に、患者が、進行し、他の器官に広がるか又は非応答性である癌を有する)場合、治療的に活性な量のセツキシマブと組み合わせて、ヒトNKG2Aポリペプチドの活性を中和する薬剤の治療的に活性な量を個体に投与すること
を含む。
【0023】
一実施形態では、個体は、非転移性HNSCCを有する。
【0024】
一実施形態では、個体は、事前のプラチナ製剤療法を受けたことがある(且つ例えばそうした療法にもかかわらず進行している)。
【0025】
一実施形態では、ステップ(a)のセツキシマブ処置は、放射線療法及び/又は化学療法との併用処置を含む。
【0026】
本明細書に記載の任意の態様の一実施形態では、ヒトNKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和する薬剤は、NKG2Aを結合することができる抗体である。一態様では、ヒトNKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和する薬剤は、非細胞除去抗体(例えば、Fcドメインのない抗体又は1つ若しくは複数のFcγ受容体との結合が最小であるか若しくは結合がないFcドメインを有する抗体)である。
【0027】
一実施形態では、癌は、中咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、口腔腫瘍、鼻咽頭腫瘍又は下咽頭腫瘍である。一実施形態では、HNSCCは、口腔SCC(OCSCC)である。OCSCCは、唇、舌の前方2/3、口腔底、頬側粘膜、歯肉、硬口蓋及び臼後三角の扁平上皮癌を含む。
【0028】
一実施形態では、HNSCCは、非転移性癌である。
【0029】
一実施形態では、個体は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性である(例えば、ヒトパピローマウイルスの存在によって特徴付けられ、高い癌リスクに関連するHPV遺伝子型に陽性、HPV16遺伝子型に陽性及び/又はP16INKa発現に陽性である)。
【0030】
一実施形態では、個体は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性である(例えば、ヒトパピローマウイルスの非存在によって特徴付けられ、高い癌リスクに関連するHPV遺伝子型の非存在、HPV16遺伝子型に陰性及び/又はP16INKa発現に陰性である)。
【0031】
一実施形態では、個人は、腫瘍環境中(例えば、腫瘍組織内及び/又は腫瘍隣接組織内)のリンパ球の存在によって特徴付けられる頭頸部癌を有する。
【0032】
一実施形態では、抗NKG2A抗体は、ヒト患者(インビボ)においてヒトCD94/NKG2Aの阻害活性の中和をもたらす量で投与され、任意選択的に、抗NKG2A抗体は、少なくとも2週間、任意選択的に少なくとも4週間にわたり、末梢血NK及びTリンパ球上のNKG2Aポリペプチドの飽和をもたらす用量で投与される。一実施形態では、抗NKG2A抗体は、1mg/kg~10mg/kg、任意選択的に約4mg/kg、任意選択的に約10mg/kgの用量で投与される。一実施形態では、抗NKG2A抗体は、100~1000mgの範囲、任意選択的に200~1200mgの範囲、例えば750mgの固定用量で投与される。
【0033】
任意選択的に、抗NKGA剤による処置前に癌のHLA-E状態を評価することができる。一実施形態では、HLA-E+ HNSCCを有する患者を同定するためのHLA-E検出ステップを組み合わせる方法が提供され;これらの患者は、その後、NKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和する薬剤によって処置することができる。
【0034】
一実施形態では、ヒトNKG2Aポリペプチドの活性を中和する薬剤は、抗NKG2A抗体であり、これは、ヒト患者において(インビボで)ヒトCD94/NKG2Aの阻害活性の中和をもたらす有効量で投与され、任意選択的に、抗NKG2A抗体は、末梢血NK及びTリンパ球におけるNKG2Aの中和を少なくとも2週間、任意選択的に少なくとも4週間にわたってもたらす用量で投与される。一態様において、併用薬は、特定の臨床投薬レジメンに従って、特に特定の用量で且つ特定の投与スケジュールに従って(例えば、本明細書に提供される用量及び/又は具体的な投与スケジュールに従って)投与される(又はそうした投与を目的とする)。
【0035】
一実施形態では、ヒトNKG2Aポリペプチドの活性を中和する薬剤は、そのリガンドであるHLA-Eの結合を遮断することによってNKG2Aの阻害活性を低減する抗体である。すなわち、抗NKG2A抗体は、HLA-EによるNKG2Aの結合を妨害する。配列番号2~6のいずれか1つの重鎖及び配列番号7の軽鎖を有する抗体は、このような抗体の一例である。一実施形態では、抗NKG2A抗体は、そのリガンドHLA-Eの結合を遮断することなくNKG2Aの阻害活性を低下させる。すなわち、抗NKG2A剤は、非競合的なアンタゴニストであり、HLA-EによるNKG2Aの結合を妨害しない。それぞれ配列番号16及び17の重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体は、このような抗体の一例である。
【0036】
一実施形態では、抗NKG2A剤は、NKG2Aに対して、1つ又は複数の活性化NKG2受容体に対するよりも著しく高い親和性で結合する抗体である。例えば、一実施形態では、薬剤は、NKG2Aに対して、NKG2Cに対するよりも著しく高い親和性で結合する抗体である。付加的又は代替的な実施形態では、薬剤は、NKG2Aに対して、NKG2Eに対するよりも著しく高い親和性で結合する抗体である。付加的又は代替的な実施形態では、薬剤は、NKG2Aに対して、NKG2Hに対するよりも著しく高い親和性で結合する抗体である。配列番号2~6のいずれか1つの重鎖及び配列番号7の軽鎖をそれぞれ有する抗体は、実質的にNKG2C、NKG2E又はNKG2Hに結合することなくNKG2Aに結合する。
【0037】
付加的又は代替的な実施形態では、抗NKG2A剤は、CD94/NKG2Aへの結合において、配列番号2~6のいずれか1つの重鎖及び配列番号7の軽鎖を有する抗体並びに/又はそれぞれ配列番号16及び17の重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体と競合する。薬剤は、例えば、ヒト又はヒト化抗NKG2A抗体であり得る。
【0038】
一実施形態では、抗NKG2A抗体は、配列番号2~6のいずれか1つの重鎖及び配列番号7の軽鎖を有するヒト化抗体である。改善された特性(例えば、より低い免疫原性、改善された抗原結合性又は他の機能特性など)及び/又は改善された物理化学的特性(例えば、より良好な安定性など)を有するこのようなヒト化抗体のフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸置換のための例示的な相補性決定領域(CDR)残基若しくは配列及び/又は部位が提供される。
【0039】
他の実施形態では、医薬組成物及びキット並びにこれらを使用する方法が提供される。
【0040】
これらの態様は、本明細書で提供される本発明の説明においてより詳細に記載されており、付加的な態様、特徴及び利点は、本明細書で提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
「含む」が使用される場合、これは、任意選択的に、「から本質的になる」又は「からなる」によって置き換えることができる。
【0042】
NKG2A(OMIM161555、その開示全体は、参照によって本明細書中に援用される)は、転写物のNKG2グループのメンバーである(Houchins,et al.(1991)J.Exp.Med.173:1017-1020)。NKG2Aは、25kbに及ぶ7つのエクソンによってコードされ、いくらかの差別的スプライシングを示す。CD94と一緒に、NKG2Aは、NK細胞、α/βT細胞、γ/δT細胞及びNKT細胞のサブセットの表面において見出されるヘテロ二量体の阻害性受容体CD94/NKG2Aを形成する。阻害性KIR受容体と同様に、それは、その細胞質ドメインにITIMを有する。本明細書で使用される場合、「NKG2A」は、NKG2A遺伝子又はコード化タンパク質の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームを指す。野生型、全長NKG2Aと1つ又は複数の生物学的特性又は機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超えるヌクレオチド又はアミノ酸同一性を共有するあらゆる核酸又はタンパク質配列も包含される。ヒトNKG2Aは、以下の配列:
【化1】
の233のアミノ酸を3つのドメインに含み、細胞質ドメインが残基1~70を含み、膜貫通領域が残基71~93を含み、細胞外領域が残基94~233を含む。
【0043】
NKG2C(OMIM602891、その開示全体は、参照によって本明細書中に援用される)及びNKG2E(OMIM602892、その開示全体は、参照によって本明細書中に援用される)は、転写物のNKG2グループの2つの他のメンバーである(Gilenke,et al.(1998)Immunogenetics 48:163-173)。CD94/NKG2C及びCD94/NKG2E受容体は、NK細胞及びT細胞などのリンパ球のサブセットの表面において見出される活性化受容体である。
【0044】
HLA-E(OMIM143010、その開示全体は、参照によって本明細書中に援用される)は、細胞表面で発現され、例えば他のMHCクラスI分子のシグナル配列に由来する断片などのペプチドの結合によって制御される非古典的なMHC分子である。HLA-Eの可溶性型も同定されている。そのT細胞受容体結合特性に加えて、HLA-Eは、CD94/NKG2A、CD94/NKG2B及びCD94/NKG2Cに特異的に結合することにより、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びT細胞(α/β及びγ/δ)のサブセットに結合する(例えば、その開示全体が参照によって本明細書中に援用されるBraud et al.(1998)Nature 391:795-799を参照されたい)。HLA-Eの表面発現は、CD94/NKG2A+NK、T又はNKT細胞クローンによる溶解から標的細胞を保護する。本明細書で使用される場合、「HLA-E」は、HLA-E遺伝子又はコード化タンパク質の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームを指す。野生型、全長HLA-Eと1つ又は複数の生物学的特性又は機能を共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超えるヌクレオチド又はアミノ酸同一性を共有するあらゆる核酸又はタンパク質配列も包含される。
【0045】
本開示との関連において、「CD94/NKG2A陽性リンパ球」は、細胞表面においてCD94/NKG2Aを発現するリンパ球系(例えば、NK-、NKT-及びT細胞)の細胞を指し、これは、例えば、CD94及びNKG2A上の複合エピトープ又は及びNKG2A単独上のエピトープを特異的に認識する抗体を用いるフローサイトメトリーによって検出することができる。「CD94/NKG2A陽性リンパ球」は、リンパ球由来の不死細胞株(例えば、NKL、NK-92)も含む。
【0046】
本開示との関連において、「NKG2Aの阻害活性を低下させる」、「NKG2Aを中和する」又は「NKG2Aの阻害活性を中和する」は、CD94/NKG2Aが細胞内プロセスに悪影響を与えるその能力において阻害され、サイトカイン放出及び細胞毒性応答などのリンパ球応答をもたらすプロセスを指す。これは、例えば、NK-又はT細胞ベースの細胞毒性アッセイにおいて測定することができ、このアッセイでは、CD94/NKG2A陽性リンパ球によるHLA-E陽性細胞の死滅を刺激する治療用化合物の能力が測定される。一実施形態では、抗体調製物は、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞毒性の少なくとも10%の増強、好ましくはリンパ球細胞毒性の少なくとも40%又は50%の増強又はより好ましくはNK細胞毒性の少なくとも70%の増強を引き起し、記載される細胞毒性アッセイが参照される。抗NKG2A抗体がCD94/NKG2AのHLA-Eとの相互作用を低減又は遮断すれば、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞毒性が増大され得る。これは、例えば、例えばCD94/NKG2Aを発現するNK細胞及びHLA-Eを発現する標的細胞を用いて、標準的な4時間インビトロ細胞毒性アッセイにおいて評価することができる。CD94/NKG2AがHLA-Eを認識して、リンパ球媒介性の細胞溶解を防止する阻害性シグナル伝達の開始及び伝播をもたらすため、このようなNK細胞は、HLA-Eを発現する標的を効率的に死滅させない。このようなインビトロ細胞毒性アッセイは、例えば、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)に記載されるように、当技術分野において周知の標準的な方法によって実行することができる。抗体がリンパ球を刺激してP815、K562細胞又は適切な腫瘍細胞などの標的細胞を死滅させる能力を評価するためのクロム放出及び/又は他のパラメータは、Sivori et al.,J.Exp.Med.1997;186:1129-1136;Vitale et al.,J.Exp.Med.1998;187:2065-2072;Pessino et al.J.Exp.Med.1998;188:953-960;Neri et al.Clin.Diag.Lab.Immun.2001;8:1131-1135;Pende et al.J.Exp.Med.1999;190:1505-1516(これらのそれぞれの開示全体は、参照によって本明細書中に援用される)にも開示されている。標的細胞は、NK細胞の添加前に51Crによって標識化され、次に死滅の結果としての細胞から培地への51Crの放出に比例するように死滅が推定される。CD94/NKG2AがHLA-Eへ結合することを防止する抗体を添加すると、結果的にCD94/NKG2Aによる阻害性シグナル伝達の開始及び伝播が防止される。従って、このような薬剤の添加の結果、リンパ球媒介性の標的細胞の死滅が増大される。このステップは、これにより、CD94/NKG2Aに誘導される負のシグナル伝達を、例えばリガンド結合の遮断によって防止する薬剤を同定する。特定の51Cr放出細胞毒性アッセイにおいて、CD94/NKG2A発現NKエフェクター細胞は、HLA-E陰性LCL721.221標的細胞を死滅させることができるが、HLA-E発現LCL721.221-Cw3対照細胞についてあまり死滅させない。対照的に、CD94/NKG2Aを欠いているYTSエフェクター細胞は、両方の細胞株を効率的に死滅させる。従って、NKエフェクター細胞は、CD94/NKG2AによるHLA-E誘導性阻害性シグナル伝達のために、HLA-ELCL721.221-Cw3細胞をあまり効率的に死滅させない。このような51Cr放出細胞毒性アッセイにおいて、NK細胞が、本発明に従う遮断性の抗CD94/NKG2A抗体と共にプレインキュベートされる場合、HLA-E発現LCL721.221-Cw3細胞は、抗体濃度に依存した方式でより効率的に死滅される。抗NKG2A抗体の阻害活性(すなわち細胞毒性増強能)は、いくつかの他の方法のいずれかにおいて、例えば、例えばSivori et al.,J.Exp.Med.1997;186:1129-1136(その開示は、参照によって本明細書中に援用される)に記載されるような、細胞内遊離カルシウムに対するその効果によって評価することもできる。NK細胞の細胞毒性の活性化は、例えば、サイトカイン産生(例えば、IFN-γ産生)又は細胞毒性マーカー(例えば、CD107又はCD137動員)の増大を測定することによって評価することができる。例示的なプロトコルでは、PBMCからのIFN-yの産生は、培養下で4日後に細胞表面及び細胞質内染色並びにフローサイトメトリーによる分析によって評価される。簡単に言うと、ブレフェルジンA(Sigma Aldrich)が培養の最後の4時間に5μg/mlの最終濃度で添加される。次に、細胞は、透過処理(IntraPrep(商標);Beckman Coulter)及びPE-抗IFN-y又はPE-IgG1(Pharmingen)による染色前に抗CD3及び抗CD56mAbと共にインキュベートされる。ポリクローナル活性化NK細胞からのGM-CSF及びIFN-yの産生は、ELISA(GM-CSF:DuoSet Elisa,R&D Systems,Minneapolis,MN、IFN-y:OptElA set、Pharmingen)を用いて上清において測定される。
【0047】
本明細書全体において、「HNSCCの処置」又は同様のものがNKG2A中和剤(例えば、抗体)と関連して言及される場合には常に以下のことが意味される:(a)HNSCCを処置する方法であり、前記方法は、NKG2A中和剤(好ましくは薬学的に許容可能な担体材料中)を、HNSCCの処置を可能にする用量(治療的に有効な量)、好ましくは本明細書で指定される用量(量)において、このような処置を必要としている個人、哺乳類、特にヒトに投与する(少なくとも1つの処置のために)ステップを含む;(b)HNSCCの処置のためのNKG2A中和剤の使用又は前記処置(特にヒトにおける)で使用するためのNKG2A中和剤;(c)HNSCCの処置のための医薬品を製造するためのNKG2A中和剤の使用、(d)NKG2A中和剤を薬学的に許容可能な担体と混合することを含む、HNSCCの処置のための医薬品を製造するためのNKG2A中和剤を使用する方法又はHNSCCの処置のために適切な有効用量のNKG2A中和剤を含む医薬品;又は(e)本出願が提出された国において特許が認められる主題に従う(a)、(b)、(c)及び(d)の任意の組み合わせ。
【0048】
「生検」という用語は、本明細書で使用される場合、診断の確立などの検査の目的で組織を除去することと定義される。生検のタイプの例としては、例えば、シリンジに取り付けられた針を介した吸引の適用によるもの;組織の断片の機器による除去によるもの;内視鏡を介する適切な機器を用いた除去によるもの;外科的切除、例えば病変全体の外科的切除によるものなどが挙げられる。
【0049】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を指す。重鎖内の定常ドメインのタイプに応じて、抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの1つに割り当てられる。これらのいくつかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのサブクラス又はアイソタイプにさらに分類される。例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のペアのポリペプチド鎖で構成され、各ペアは、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110又はそれを超えるアミノ酸の可変領域を画定する。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「アルファ」、「デルタ」、「イプシロン」、「ガンマ」及び「ミュー」と呼ばれる。免疫グロブリンの種々のクラスのサブユニット構造及び三次元配置は、周知である。IgGは、生理学的状況下で最も一般的な抗体であり、研究室環境で最も容易に作製されるため、本明細書で使用される抗体の例示的な種類である。任意選択的に、抗体は、モノクローナル抗体である。抗体の特定の例は、ヒト化、キメラ、ヒト又は別の方法でヒトに適した抗体である。「抗体」は、抗体のいずれかの任意の断片又は誘導体も含む。
【0050】
「特異的に結合する」という用語は、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ又は単離した標的細胞の表面に存在する天然タンパク質のいずれかを用いて評価されるとき、抗体が、好ましくは、競合的結合アッセイにおいて結合パートナー、例えばNKG2Aに結合できることを意味する。特異的な結合を決定するための競合的結合アッセイ及び他の方法は、当技術分野において周知である。例えば、結合は、放射標識、質量分析などの物理的方法又は例えば細胞蛍光測定分析(例えば、FACScan)を用いて検出される直接若しくは間接的な蛍光標識によって検出することができる。対照の非特異的な薬剤で見られる量を超える結合は、その薬剤が標的に結合することを示す。NKG2Aに特異的に結合する薬剤は、単独のNKG2A又はCD94との二量体としてのNKG2Aに結合し得る。
【0051】
抗体が特定のモノクローナル抗体「と競合する」と言われる場合、それは、組換え分子(例えば、NKG2A)又は表面発現分子(例えば、NKG2A)のいずれかを用いる結合アッセイにおいて、抗体がモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいて、配列番号2のいずれかの重鎖及び配列番号7の軽鎖を有する抗体の、NKG2Aポリペプチド又はNKG2A発現細胞への結合を低減すると、抗体は、このような抗体とそれぞれ「競合する」と言われる。
【0052】
「親和性」という用語は、本明細書で使用される場合、エピトープに対する抗体の結合の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag](式中、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は、非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は、非結合抗原のモル濃度である)として定義される解離定数Kdによって与えられる。親和性定数Kは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定する方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)において見出すことができ、これらの参考文献は、参照によって本明細書中に完全に援用される。mAbの親和性を測定するための当技術分野において周知の1つの標準的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置を用いた分析によるものなど)の使用である。
【0053】
本明細書に関連して、「決定基」は、ポリペプチド上の相互作用又は結合の部位を指定する。
【0054】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基を指し、抗体が結合する抗原上の区域又は領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基と、特異的抗原結合抗体又はペプチドにより効果的に遮断されるアミノ酸残基、すなわち抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基とを含み得る。それは、例えば、抗体又は受容体と結合し得る複雑な抗原分子上の最も単純な形態又は最小の構造領域である。エピトープは、直線的又は立体構造的/構造的であり得る。「直線的エピトープ」という用語は、アミノ酸の直鎖配列(一次構造)上で連続するアミノ酸残基で構成されるエピトープとして定義される。「立体構造的又は構造的エピトープ」という用語は、全てが連続しているわけではなく、従って分子の折り畳み(二次、三次及び/又は四次構造)により互いに近接されるアミノ酸の直鎖配列の分離部を表すアミノ酸残基で構成されるエピトープとして定義される。立体構造的エピトープは、三次元構造に依存する。「立体構造的」という用語は、従って、「構造的」と互換的に使用されることが多い。
【0055】
「薬剤」という用語は、本明細書では、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子又は生物学的材料から作製される抽出物を示すために使用される。「治療薬」という用語は、生物活性を有する薬剤を指す。
【0056】
本明細書での目的のために、「ヒト化」又は「ヒト」抗体は、1つ又は複数のヒト免疫グロブリンの定常及び可変フレームワーク領域が動物免疫グロブリンの結合領域、例えばCDRと融合された抗体を指す。このような抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を保持するが、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように設計される。このような抗体は、抗原負荷に応答して特異的ヒト抗体を産生するように「操作された」トランスジェニックマウス又は他の動物から得ることができる(例えば、その教示全体が参照によって本明細書中に援用されるGreen et al.(1994)Nature Genet 7:13;Lonberg et al.(1994)Nature 368:856;Taylor et al.(1994)Int Immun 6:579を参照されたい)。完全ヒト抗体は、遺伝子又は染色体トランスフェクション法及びファージディスプレイ技術によって構築することもでき、これらは、全て当技術分野において知られている(例えば、McCafferty et al.(1990)Nature 348:552-553を参照されたい)。ヒト抗体は、インビトロの活性化B細胞により生成することもできる(例えば、参照によってその全体が援用される米国特許第5,567,610号明細書及び米国特許第5,229,275号明細書を参照されたい)。
【0057】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なる若しくは改変されたクラス、エフェクター機能及び/若しくは種の定常領域又はキメラ抗体に新しい特性を付与する完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに連結されるように、定常領域又はその一部が改変、置換又は交換された抗体分子であるか、又は(b)可変領域又はその一部が、異なる又は改変された抗原特異性を有する可変領域によって改変、置換又は交換された抗体分子である。
【0058】
「Fcドメイン」、「Fc部分」及び「Fc領域」という用語は、抗体重鎖のC末端断片、例えばヒトγ(ガンマ)重鎖の約アミノ酸(aa)230~約aa450又は他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体のα、δ、ε及びμ)におけるその対応物の配列又はその天然に存在するアロタイプを指す。他に規定されない限り、本開示の全体を通して免疫グロブリンに対して一般的に容認されたKabatのアミノ酸番号付けが使用される(Kabat et al.(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest,5th ed.,United States Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MDを参照されたい)。
【0059】
「単離された」、「精製された」又は「生物学的に純粋な」という用語は、材料がその天然の状態で見出される際に通常付随される成分を実質的又は本質的に含まない材料を指す。純度及び均質性は、通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する主な種であるタンパク質は、実質的に精製される。
【0060】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマーと、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーとに適用される。
【0061】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入又は天然核酸若しくはタンパク質の改変によって修飾されていること又細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態において見出されない遺伝子を発現するか、又は改変されていなければ異常発現されるか、低発現されるか若しくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0062】
本明細書に関連して、ポリペプチド又はエピトープに「結合する」抗体という用語は、特異性及び/又は親和性により前記決定基に結合する抗体を示す。
【0063】
「同一性」又は「同一性の」という用語は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基の鎖間のマッチの数によって決定されるようなポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により対処されるギャップアライメント(存在する場合)による2つ以上の配列の小さい方の間での同一のマッチのパーセントを測る。関連ポリペプチドの同一性は、既知の方法によって容易に計算することができる。このような方法には、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;及びCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
同一性を決定する方法は、試験される配列間の最大マッチを与えるように設計される。同一性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに記載される。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラム方法としては、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410(1990))を含むGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及び他の供給源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.、上記)から公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0065】
NKG2A中和剤の作製
阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤は、例えば、ヒトCD94/NKG2A受容体の細胞外部分又はその天然リガンドHLA-Eに結合して、CD94/NKG2A陽性リンパ球の表面で発現されるヒトCD94/NKG2A受容体の阻害活性を低下させる薬剤(例えば、タンパク質)を含み得る。一実施形態では、薬剤は、CD94/NKG2Aへの結合において、HLA-Eと競合する。すなわち、薬剤は、CD94/NKG2AとそのリガンドHLA-Eとの間の相互作用を遮断する。一実施形態では、薬剤(例えば、抗体)は、CD94/NKG2Aに結合して、CD94/NKG2AとそのリガンドHLA-Eとの間の相互作用を遮断する。別の実施形態では、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤は、ヒトHLA-Eポリペプチドと結合して、ヒトHLA-Eタンパク質とヒトCD94/NKG2Aタンパク質との間の相互作用を阻害するタンパク質(例えば、抗体)である。別の実施形態では、薬剤は、CD94/NKG2Aへの結合において、HLA-Eと競合しない。すなわち、薬剤は、NKG2Aに結合し、且つHLA-Eと同時にCD94/NKG2Aに結合することができる。抗体は、CD94及びNKG2A上の複合エピトープ又は及びNKG2A単独上のエピトープに結合し得る。一実施形態では、抗体は、HLA-E結合部位と少なくとも部分的に重複するNKG2A上のエピトープに結合する。
【0066】
1つの態様では、抗NKG2A剤は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体及びキメラ抗体から選択される抗体である。1つの態様では、薬剤は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体に由来する定常ドメインを含む。1つの態様では、薬剤は、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgM抗体から選択される抗体の断片である。1つの態様では、薬剤は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、Fv断片、重鎖Ig(ラマ又はラクダIg)、VHH断片、単一ドメインFV及び単鎖抗体断片から選択される抗体断片である。1つの態様では、薬剤は、scFV、dsFV、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、カッパボディ、IgNAR;及び多特異性抗体から選択される合成又は半合成抗体由来の分子である。
【0067】
一実施形態では、抗NKG2A抗体は、Fcγ受容体、例えばヒトCD16、CD32a、CD32b及びCD64の1つ又は複数(又は全て)に対する実質的な特異的結合を呈示しない。このような抗体は、Fc受容体に結合しないことが知られている種々の重鎖の定常領域を含み得る。1つのこのような例は、IgG4定常領域である。IgG4、代わりにFab若しくはF(ab’)2断片などの定常領域を含まない抗体断片を使用して、Fc受容体結合を回避することができる。Fc受容体結合は、例えば、BIACOREアッセイにおいて抗体のFc受容体タンパク質への結合を試験することを含む、当技術分野において知られている方法に従って評価することができる。Fc受容体への結合を最小限又は除去するようにFc部分が修飾された任意のヒト抗体タイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)を使用することもできる(例えば、参照によってその開示が本明細書中に援用される国際公開第03101485号パンフレットを参照されたい)。Fc受容体結合を評価するためのアッセイ、例えば細胞ベースのアッセイなどは、当技術分野において周知であり、例えば国際公開第03101485号パンフレットに記載されている。
【0068】
従って、本開示は、NKG2Aに結合する抗体又は他の薬剤に関する。1つの態様では、抗体は、ヒトNKG2C及び/又はNKG2Eに対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aに結合する。
【0069】
本開示の1つの態様では、薬剤は、CD94/NKG2Aシグナル伝達を妨害することにより、例えばNKG2AによるHLA-Eの結合を妨害すること、CD94/NKG2A受容体の立体構造変化を防止又は誘導すること及び/又はCD94/NKG2A受容体の二量体化及び/又はクラスター化に影響することにより、CD94/NKG2A発現リンパ球のCD94/NKG2A媒介性の阻害を低減する。
【0070】
本開示の1つの態様では、薬剤は、NKG2Cに対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。さらに好ましい態様では、薬剤は、NKG2Cに対するよりも少なくとも150、200、300、400又は10,000倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。本開示の別の態様では、薬剤は、NKG2C、NKG2E及び/又はNKG2H分子に対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。さらに好ましい態様では、薬剤は、NKG2C、NKG2C及び/又はNKG2H分子に対するよりも少なくとも150、200、300、400又は10,000倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。これは、例えば、BiaCore実験において測定することができ、固定化CD94/NKG2A(例えば、CD94/NKG2発現細胞から精製されるか又は生物系で産生される)の細胞外部分に結合する薬剤の能力が測定され、同じアッセイにおいて同様に生成されたCD94/NKG2C及び/又は他のCD94/NKG2変異体に対する薬剤の結合と比較される。代わりに、CD94/NKG2Aを天然に発現するか又は過剰発現(例えば、一過性又は安定したトランスフェクション後)する細胞への薬剤の結合が測定され、CD94/NKG2C及び/又は他のCD94/NKG2変異体を発現する細胞の結合と比較され得る。抗NKG2A抗体は、任意選択的に、CD94と一緒に阻害性受容体を形成するNKG2Aスプライス変異体であるNKG2Bと結合し得る。一実施形態では、親和性は、例えば、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書中に援用される)の実施例8に示されるようにBiacoreによって共有結合で固定化されたNKG2A-CD94-Fc融合タンパク質への結合を評価することにより、米国特許第8,206,709号明細書に開示される方法を用いて測定することができる。
【0071】
抗体は、例えば、NKG2A発現細胞への結合(高親和性)について、0.5~10ng/ml、任意選択的に1~5ng/ml、任意選択的に1~10ng/ml、任意選択的に1~20ng/ml、例えば約4ng/mlのEC50を有することができる。NKG2A発現細胞は、例えば、ヒトPBMC中のNKG2A発現細胞であり得る。一実施形態では、NKG2A発現細胞は、CD94/NKG2Aを発現するように作製された細胞、例えば米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって援用される)の実施例13に示されるような、CD94/NKG2Aを安定して過剰発現するBa/F3細胞である。一実施形態では、抗体は、ヒトNKG2Aポリペプチドに対して10-9M未満、任意選択的に10-10M未満又は任意選択的に10-11M未満、任意選択的に10-10M~10-12M、任意選択的に10-10M~10-11Mの結合親和性(K)を有し、任意選択的に、結合親和性は、二価である。親和性は、例えば、米国特許第7,932,055号明細書(その開示は、参照によって援用される)に記載されるような単鎖NKG2A-CD94-mFc構築物への結合について評価することができる。
【0072】
抗NKG2A抗体は、例えば、以下の表に示される抗体のそれぞれのVH及びVL領域を含むヒト又はヒト化抗体であり得る。
【0073】
【表1】
【0074】
抗NKG2A抗体は、例えば、例えばVH1_18、VH5_a、VH5_51、VH1_f及びVH1_46から選択されるヒトアクセプター配列からのVHヒトアクセプターフレームワークと、JH6 J-セグメント又は当技術分野で知られている他のヒト生殖系VHフレームワーク配列とを含むヒト又はヒト化抗体であり得る。VL領域ヒトアクセプター配列は、例えば、VKI_O2/JK4であり得る。
【0075】
一実施形態では、抗体は、抗体Z270に基づくヒト化抗体又は抗体断片である。種々のヒト化Z270VH鎖は、配列番号2~6(可変領域ドメインアミノ酸に下線)で示される。ヒト化Z270VH軽鎖は、配列番号7に示される。humZ270抗体は、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書中に援用される)にも開示される。humZ270VH6(配列番号3)は、VH5_51に基づき、humZ270VH1(配列番号2)は、VH1_18に基づき、humZ270VH5(配列番号4)は、VH5_aに基づき、humZ270VH7(配列番号5)は、VH1_fに基づき、且つhumZ270VH8(配列番号6)は、VH1_46に基づいており、これらは、全てJH6 J-セグメントを有する。これらの抗体は、それぞれNKG2Aへの高親和性結合を保持しており、ヒト化構築物のそれぞれのKabat CDR-H2の6つのC末端アミノ酸残基がヒトアクセプターフレームワークと同一であるため、抗体に対する宿主免疫応答の可能性が低い。アライメントプログラムVectorNTIを用いて、humZ270VH1とhumZ270VH5、-6、-7及び-8との間の以下の配列同一性を得た:78,2%(VH1対VH5)、79,0%(VH1対VH6)、88,7%(VH1対VH7)及び96,0%(VH1対VH8)。
【0076】
1つの態様では、薬剤は、(i)配列番号2~6のいずれか又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、(ii)配列番号7又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む。1つの態様では、薬剤は、(i)配列番号2~6のいずれかのアミノ酸配列又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号7のアミノ酸配列又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。配列番号2~6のいずれかの配列を含む重鎖と、配列番号7の配列を含む軽鎖とを有する抗体は、NKG2Aの阻害活性を中和するが、実質的に活性化受容体NKG2C、NKGE又はNKG2Hに結合しない。さらに、この抗体は、細胞表面のNKG2Aへの結合についてHLA-Eと競合する。1つの態様では、薬剤は、配列番号2~6のいずれかのアミノ酸配列を有する重鎖に由来するHCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3配列を含む。本発明の1つの態様では、薬剤は、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖に由来するLCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3配列を含む。
【0077】
重鎖(可変領域に下線)
VH1:
【化2】
【0078】
VH6:
【化3】
【0079】
VH5:
【化4】
【0080】
VH7:
【化5】
【0081】
VH8:
【化6】
【0082】
軽鎖
【化7】
【0083】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号2~6のいずれかの残基31~35(アミノ酸配列SYWMN(配列番号8))に対応するCDR-H1と、配列番号2~6のいずれかの残基50~60(アミノ酸配列RIDPYDSETHY(配列番号9))(任意選択的に、ヒト由来の6つの末端アミノ酸を含む場合には残基50~66、すなわちVH6重鎖の配列RIDPYDSETHYSPSFQG(配列番号10)、VH1重鎖の配列RIDPYDSETHYAQKLQG(配列番号11)など)に対応するCDR-H2と、配列番号2~6のいずれかの残基99~114(Kabatに従うと95~102)(アミノ酸配列GGYDFDVGTLYWFFDV(配列番号12))に対応するCDR-H3とを含む抗体又は抗体断片である。一実施形態では、CDR-H2は、配列番号2~6のいずれかの残基50~66に対応する。任意選択的に、CDRは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0084】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号7の残基24~34(アミノ酸配列RASENIYSYLA(配列番号13))に対応するCDR-L1と、配列番号7の残基50~56(アミノ酸配列NAKTLAE(配列番号14))に対応するCDR-L2と、配列番号7の残基89~97(アミノ酸配列QHHYGTPRT(配列番号15))に対応するCDR-L3とを含む抗体又は抗体断片である。任意選択的に、CDRは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0085】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号2~6のいずれかの残基31~35に対応するCDR-H1と、配列番号2~6のいずれかの残基50~60(任意選択的に、50~66)に対応するCDR-H2と、配列番号2~6のいずれかの残基99~114(Kabatに従うと95~102)に対応するCDR-H3と、配列番号7の残基24~34に対応するCDR-L1と、配列番号7の残基50~56に対応するCDR-L2と、配列番号7の残基89~97に対応するCDR-L3とを含む抗体又は抗体断片である。
【0086】
1つの態様では、薬剤は、上記の抗体のいずれかが結合するCD94/NKG2Aエピトープに対して産生された完全ヒト抗体である。
【0087】
上記の抗体を使用可能であるが、他の抗体も作製され得ることが理解されるであろう。例えば、NKG2A、好ましくは(しかし、排他的ではない)ヒトNKG2Aの任意の断片又はNKG2A断片の任意の組み合わせを免疫原として使用して、抗体を産生させることができ、抗体は、本明細書に記載されるようにNKG2A発現NK細胞においてそのようにできる限り、NKG2Aポリペプチド内の任意の位置のエピトープを認識することができる。最も好ましくは、エピトープは、配列番号2~6のいずれかの重鎖及び配列番号7の軽鎖を有する抗体によって特異的に認識されるエピトープである。
【0088】
一態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号2~6のいずれかの重鎖と配列番号7の軽鎖とを有する抗体、例えばモナリズマブと実質的に同じエピトープに結合する。配列番号2~6のいずれかの重鎖と配列番号7の軽鎖とを有する抗体は、以下のアミノ酸置換:K199A/D202A/V213S/R215A/K217A(GenBankアクセッション番号AAL65234.1を参照されたい)を有するNKG2A突然変異体への結合の喪失を有する。一実施形態では、本開示に従って使用される抗NKG2A抗体は、配列番号2~6のいずれかの重鎖と配列番号7の軽鎖とを有する抗体、例えばモナリズマブが結合するエピトープと少なくとも部分的に重複するか、又はその中の少なくとも1つの残基を含むNKG2Aのエピトープに結合する。抗体が結合する残基は、NKG2Aポリペプチドの表面上において、例えば細胞の表面で発現されるNKG2Aポリペプチド中に存在するものとして記述することができる。抗体が結合するNKG2A上のアミノ酸残基は、例えば、K199、D202、V213、R215及びK217(GenBankアクセッション番号AAL65234.1又は配列番号1のNKG2Aアミノ酸配列を参照されたい)からなる残基の群から選択することができる。
【0089】
NKG2A突然変異体でトランスフェクトした細胞に対する抗NKG2A抗体の結合を測定し、これを、抗NKG2A抗体が野生型NKG2Aポリペプチド(配列番号1)に結合する能力と比較することができる。抗NKG2A抗体と、突然変異型NKG2Aポリペプチド(例えば、置換K199A/D202A/V213S/R215A/K217Aを有する突然変異型NKG2A)との結合の低減は、結合親和性(例えば、特定の突然変異体を発現する細胞のFACS試験などの公知の方法若しくは突然変異型ポリペプチドとの結合のBiacore試験により測定される)の低減及び/又は抗NKG2A抗体の全結合能力(例えば、ポリペプチド濃度に対する抗NKG2A抗体濃度のプロットにおけるBmaxの減少によって立証される通り)に低減があることを意味する。結合の有意な低減は、突然変異残基が抗NKG2A抗体との結合に直接関与するか、又は抗NKG2A抗体がNKG2Aに結合していれば、結合タンパク質に接近していることを示す。
【0090】
一部の実施形態では、結合の有意な低減とは、抗NKG2A抗体と突然変異型NKG2Aポリペプチドとの結合親和性及び/又は能力が、その抗体と野生型NKG2Aポリペプチドとの結合と比較して40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超だけ低減されることを意味する。特定の実施形態では、結合は、検出限界を下回る。一部の実施形態では、結合の有意な低減は、突然変異型NKG2Aポリペプチドに対する抗NKG2A抗体の結合が、抗NKG2A抗体と野生型NKG2Aポリペプチドとの間で観察される結合の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%又は10%未満)であるときに立証される。
【0091】
一部の実施形態では、突然変異型NKG2Aポリペプチドに対する有意に低い結合を呈示する抗NKG2A抗体が提供され、突然変異型NKG2Aポリペプチドでは、配列番号2~6のいずれかの重鎖と配列番号7の軽鎖とを有する抗体、例えばモナリズマブが結合するアミノ酸残基を含むセグメント中の残基が、野生型NKG2Aポリペプチド(例えば、配列番号1のポリペプチド)への結合と比較して異なるアミノ酸で置換されている。一実施形態では、突然変異体は、配列番号1の野生型NKG2Aを参照して置換K199A、D202A、V213S、R215A及びK217Aを有する。
【0092】
1つの態様では、薬剤は、配列番号16のアミノ酸配列をするVHに由来するHCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3配列を含む。本開示の1つの態様では、薬剤は、配列番号17のアミノ酸配列を有するVLに由来するLCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3配列を含む。1つの態様では、薬剤は、配列番号16のアミノ酸配列を有するVHに由来するHCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3配列と、配列番号17のアミノ酸配列を有するVLに由来するLCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3配列とを含む。配列番号16の重鎖及び配列番号17の軽鎖を有する抗体は、NKG2Aの阻害活性を中和し、活性化受容体NKG2C、NKGE又はNKG2Hにも結合する。抗体は、細胞表面のNKG2Aへの結合に対してHLA-Eと競合しない(すなわちNKG2Aの非競合的アンタゴニストである)。
【化8】
【化9】
【0093】
1つの態様では、薬剤は、可変重(VH)ドメイン(配列番号16)のアミノ酸残基31~35、50~60、62、64、66及び99~108と、可変軽(VL)ドメイン(配列番号17)のアミノ酸残基24~33、49~55及び88~96とを含み、任意選択的に、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるアミノ酸置換を有する。
【0094】
1つの態様では、薬剤は、上記の抗体のいずれかが結合するCD94/NKG2Aエピトープに対して産生された完全ヒト抗体である。
【0095】
上記の抗体を使用可能であるが、抗体がNKG2Aの阻害活性の中和を引き起す限り、他の抗体もNKG2Aポリペプチドの任意の部分を認識して、それに対して産生され得ることが理解されるであろう。例えば、NKG2A、好ましくは(しかし、排他的ではない)ヒトNKG2Aの任意の断片又はNKG2A断片の任意の組み合わせを免疫原として使用して、抗体を産生させることができ、抗体は、本明細書に記載されるようにNKG2A発現NK細胞においてそのようにできる限り、NKG2Aポリペプチド内の任意の位置のエピトープを認識することができる。一実施形態では、エピトープは、配列番号2~6のいずれかの重鎖及び配列番号7の軽鎖を有する抗体によって特異的に認識されるエピトープである。
【0096】
1つの態様では、薬剤は、ヒトCD94/NKG2A受容体の細胞外部分への結合において、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書中に援用される)に開示されるhumZ270抗体と競合する。1つの態様では、薬剤は、ヒトCD94/NKG2A受容体の細胞外部分への結合において、米国特許第8,796,427号明細書(その開示は、参照によって本明細書中に援用される)に開示されるヒト化Z199抗体と競合する。競合的結合は、例えば、BiaCore実験において測定することができ、humZ270で飽和された固定化CD94/NKG2A受容体(例えば、CD94/NKG2発現細胞から精製されるか又は生物系で産生される)の細胞外部分に結合するための薬剤の能力が測定される。代わりに、CD94/NKG2A受容体を天然に発現するか又は過剰発現(例えば、一過性又は安定したトランスフェクション後)する細胞(これは、飽和用量のZ270と共にインキュベートされている)への薬剤の結合が測定される。一実施形態では、競合的結合は、例えば、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書中に援用される)の実施例15に示されるようにフローサイトメトリーによってBa/F3-CD94-NKG2A細胞への結合を評価することにより、米国特許第8,206,709号明細書に開示される方法を用いて測定することができる。
【0097】
抗NKG2A剤(例えば、抗体など)は、1mg/ml~500mg/mlの濃度で医薬製剤中に取り込むことができ、前記製剤は、2.0~10.0のpHを有する。製剤は、緩衝系、保存剤、等張化剤、キレート剤、安定剤及び界面活性剤をさらに含み得る。一実施形態では、医薬製剤は、水性製剤、すなわち水を含む製剤である。このような製剤は、通常、溶液又は懸濁液である。さらなる実施形態では、医薬製剤は、水溶液である。「水性製剤」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤であると定義される。同様に、「水溶液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液であると定義され、「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液であると定義される。
【0098】
別の実施形態では、医薬製剤は、凍結乾燥製剤であり、使用前に医師又は患者によって溶媒及び/又は希釈剤が添加される。
【0099】
別の実施形態では、医薬製剤は、事前に溶解することなく直ちに使用可能な乾燥製剤(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
【0100】
さらなる態様では、医薬製剤は、このような抗体及び緩衝剤の水溶液を含み、抗体は、1mg/ml以上の濃度で存在し、前記製剤は、約2.0~約10.0のpHを有する。
【0101】
別の実施形態では、製剤のpHは、約2.0~約10.0、約3.0~約9.0、約4.0~約8.5、約5.0~約8.0及び約5.5~約7.5からなるリストから選択される範囲内である。
【0102】
さらなる実施形態では、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はこれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定の緩衝剤のそれぞれは、代替実施形態を構成する。
【0103】
さらなる実施形態では、製剤は、薬学的に許容可能な保存剤をさらに含む。さらなる実施形態では、製剤は、等張剤をさらに含む。さらなる実施形態では、製剤は、キレート剤も含む。さらなる実施形態では、製剤は、安定剤をさらに含む。さらなる実施形態では、製剤は、界面活性剤をさらに含む。便宜上、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995が参照される。
【0104】
ペプチド医薬製剤中に他の成分が存在することも可能である。このような付加的な成分には、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、浸透圧調整剤、キレート剤、金属イオン、油性媒体、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジンなどのアミノ酸)が含まれ得る。このような付加的な成分は、当然ながら、医薬製剤の全体的な安定性に悪影響を与えてはならない。
【0105】
抗体を含有する医薬組成物は、いくつかの部位、例えば局所部位(例えば、皮膚及び粘膜部位)、吸収を迂回する部位(例えば、動脈内、静脈内、心臓内の投与)及び吸収を伴う部位(例えば、皮膚内、皮膚下、筋肉内又は腹部内の投与)において、このような処置を必要としている患者に投与され得る。医薬組成物の投与は、このような処置を必要としている患者に対して、いくつかの投与経路、例えば皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、舌側、舌下、頬側、口内、経口、胃及び腸内、経鼻、肺(例えば、細気管支及び肺胞又はその全体を通して)、上皮性、真皮、経皮、膣内、直腸、眼球(例えば、結膜を通して)、尿管及び非経口によるものであり得る。
【0106】
適切な抗体製剤は、他の既に開発された治療用モノクローナル抗体による経験を検討することにより決定することもできる。Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Xolair(登録商標)(オマリズマブ)、Bexxar(登録商標)(トシツモマブ)及びCampath(登録商標)(アレムツズマブ)並びに同様の製剤などの臨床的状況において効果があることが示されているいくつかのモノクローナル抗体は、本開示の抗体と共に使用され得る。例えば、モノクローナル抗体は、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80及び注射用滅菌水中でのIV投与のために処方された100mg(10mL)又は500mg(50mL)のいずれかの単回使用バイアル中、10mg/mLの濃度で供給することができる。pHは、6.5に調整される。別の実施形態では、抗体は、約20mMのクエン酸Na、約150mMのNaClを含む約6.0のpHの製剤において供給される。
【0107】
HNSCCの処置
癌腫、特にHNSCC、とりわけセツキシマブ耐性である切除不可能な癌腫又はHNSCCの処置に有用な方法が記載される。セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))は、HNSCCについて2011年に規制当局(アメリカ食品医薬品局(FDA))の承認を受けた抗EGFR抗体である。
【0108】
セツキシマブ耐性癌腫は、セツキシマブによる事前の処置(及び任意選択的に放射線療法又は他の処置)にもかかわらず進行している(例えば、応答しない、再発した、他の器官に広がった)可能性がある。一部の実施形態では、癌が進行した個体は、単剤としてのセツキシマブによる事前の処置を受けていることができる。一部の実施形態では、癌が進行した個体は、化学療法薬(例えば、プラチナ製剤療法)と併用されたセツキシマブ又は放射線療法と併用されたセツキシマブによる事前の処置を受けていることができる。一部の実施形態では、セツキシマブによる事前の治療過程(任意選択的に放射線療法、化学療法及び/又は他の薬剤と組み合わせて)に加えて、個体は、プラチナ製剤化学療法薬によるさらに別の事前の治療過程を受けており、プラチナ製剤によるさらに別の事前の治療過程は、セツキシマブによる治療過程前に投与される。
【0109】
一実施形態では、癌腫は、HNSCCである。HNSCCは、頭部又は頸部領域に発生する扁平細胞又は類基底腫瘍であり、鼻腔、鼻咽頭、副鼻腔、唇、口及び口腔、唾液腺、咽頭、下咽頭又は喉頭の腫瘍を含む。本明細書に開示される処置は、例えば、中咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、口腔腫瘍及び下咽頭腫瘍の処置において特に有用であり得る。このような腫瘍は、医師、腫瘍内科医、組織病理学者及び耳鼻咽喉科医並びに頭頸部外科医などの腫瘍学の分野における実践者によって日常的に特定されている。任意選択的に、HNSCCは、非転移性HNSCCである。
【0110】
本明細書に記載する任意の実施形態では、文脈から別の解釈が示されない限り、頭頸部癌(例えば、HNSCC)は、任意選択的に、局部再発性、遠隔転移性であるとして記述され、且つ/又は不治と考えられ得る(及びそれらの組み合わせ、例えば局部再発性、局部再発性且つ遠隔転移性、局部再発性且つ非遠隔転移性であり、任意選択的にさらに上記症例のいずれかにおいて不治と考えられる。
【0111】
一例示的態様では、切除不可能なHNSCC癌を有し、その疾患又は癌が、セツキシマブ単独又は化学療法若しくは放射線と併用されたセツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行している哺乳動物宿主(例えば、ヒト患者)におけるHNSCCの進行を停止、逆転又は抑制する方法が提供され、この方法は、宿主におけるHNSCCの進行を検出可能に抑制するのに十分な量で抗NKG2A剤(例えば、抗NKG2A抗体)、抗NKG2A抗体組成物又は関連組成物(例えば、抗NKG2A抗体をコードする核酸)を患者に投与することを含む。
【0112】
別の態様では、切除不可能な非転移性癌を有する哺乳動物宿主(例えば、ヒト患者)におけるHNSCCの転移性癌への進行を予防する方法が提供され、任意選択的に、さらに、癌は、セツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行しており、この方法は、抗NKG2A剤を患者に投与することを含む。
【0113】
本明細書に記載する任意の実施形態では、セツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行した疾患、癌又はHNSCCは、セツキシマブ耐性の疾患、癌又はHNSCCと呼ぶことができる。セツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行した癌又はHNSCCを有する個体は、セツキシマブ耐性の(又は疾患、癌若しくはHNSCCを有する)個体と呼ぶことができる。
【0114】
一実施形態では、抗NKG2A剤は、セツキシマブと組み合わせて投与される。耐性であるか又は例えば進行した癌は、任意選択的に、セツキシマブ処置に対して耐性であり、且つ例えば新しい原発腫瘍ではない腫瘍として特徴付けることができる。セツキシマブ耐性腫瘍は、例えば、同じ領域において且つセツキシマブ処置過程中又はセツキシマブ処置終了から限定的な期間(例えば、1、2又は3年以下、例えば3、4、6、9ヶ月)で出現し得る。
【0115】
一実施形態では、疾患、例えばセツキシマブ耐性癌の処置に使用するための組成物が提供される。一部の実施形態では、そのHNSCC癌がセツキシマブによる(セツキシマブ単独又は化学療法若しくは放射線療法などの別の薬剤との併用)処置(例えば、事前の処置)に対して耐性である個体におけるHNSCCの処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤及び/又はセツキシマブが提供される。一実施形態では、セツキシマブによる事前の処置を受けたヒト個体におけるHNSCCの処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤が提供され、この処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブの各々の有効量を個体に投与することを含む。一実施形態では、癌又は癌腫は、HNSCCである。
【0116】
一実施形態では、事前の処置(例えば、セツキシマブによる第1の処置過程)を受けた個体におけるHNSCCの処置に使用するためのセツキシマブが提供され、前記処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブ(例えば、セツキシマブによる第2の処置過程)の各々の有効量を個体に投与することを含む。従って、セツキシマブによる第1の事前の処置過程を受けたことがあり、その疾患がそうしたセツキシマブによる第1の処置過程中又はその後に進行した個体をセツキシマブによる第2の処置過程で処置することができ、この処置過程では、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体と組み合わせてセツキシマブを使用する。従って、セツキシマブによる第1の事前の処置過程を受けた個体は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブ(セツキシマブによる第2の処置過程)の各々の有効量で処置することができる。
【0117】
一態様では、セツキシマブ及び/又はNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤の使用は、腫瘍負荷の低減をもたらすこと、任意選択的にベースライン直径和と比較した標的細胞病変の直径和の減少をもたらすことを目的とする。一実施形態では、セツキシマブ及び/又はNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤の使用は、癌の進行を遅らせることを目的とする。一実施形態では、セツキシマブ及び/又はNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤の使用は、癌の転移を遅らせるか又は予防することを目的とする。
【0118】
個体を処置するのに好適な処置プロトコルは、例えば、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する抗体の有効量を個体に投与することを含み、この方法は、少なくとも1つの投与サイクルを含み、このサイクルにおいて、少なくとも1用量の抗NKG2A抗体が1~10mg/kg体重の用量で投与される。一実施形態では、投与サイクルは、2週間~8週間である。
【0119】
一実施形態では、方法は、少なくとも1つの投与サイクルを含み、このサイクルは、8週間以下の期間であり、少なくとも1つのサイクルの各々にわたり、2、3又は4用量の抗NKG2A抗体が1~10mg/kg体重の用量で投与される。
【0120】
一実施形態では、抗NKG2Aは、少なくとも1週間、2週間、3週間又は4週間にわたり、リンパ球上のNKG2A受容体を飽和させるのに有効な量で投与される。特定の実施形態では、抗NKG2A抗体の用量(例えば、各用量)は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10mg/kgで投与される。
【0121】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一態様では、抗NKG2A抗体は、約2週間又は4週間に1回投与される。
【0122】
個体への抗NKG2A抗体の送達(直接投与又は例えば抗NKG2A抗体コード化核酸配列を含むポックスウイルス遺伝子導入ベクターからなど、そこでの核酸からの発現のいずれかによる)及び本明細書に記載される他の方法の実施は、癌進行(特にHNSCC進行)の任意の好適な態様を低減、処置、予防又はそうでなければ改善するために使用することができる。本明細書に開示される方法は、腫瘍増殖、腫瘍細胞の数及びそれに関連する任意のパラメータ又は症状(例えば、バイオマーカー)の低減及び/又は改善に特に有用であり得る。本明細書に開示される方法は、腫瘍再発の予防、無増悪生存期間の増加、転移の予防に特に有用であり得る。こうした癌進行の態様を独立に且つ総合的に低減、予防又はそうでなければ改善する方法は、有利な特徴である。
【0123】
別の態様では、癌進行のリスクを低減し、開始を経た細胞集団におけるさらなる癌進行のリスクを低減し、且つ/又はヒト患者における癌進行を抑制するための治療レジメンを付与する方法が提供される。別の態様では、HNSCCと診断されたヒト患者の関連期間にわたる生存確率を高める方法が提供される。別の態様では、HNSCC患者のクオリティオブライフを改善する方法が提供され、これは、そのクオリティオブライフを改善するのに有効な量で組成物を患者に投与することを含む。別の態様では、本明細書に記載の方法は、腫瘍サイズ又は腫瘍負荷を有意に低減するために適用することができる。さらに別の態様では、本明細書に記載の方法は、脊椎動物宿主のHNSCC細胞の数を有意に減少させるために、例えばHNSCC細胞の総数が減少するように適用することができる。関連する意味において、脊椎動物、例えばヒト癌患者のHNSCC細胞を殺傷する(例えば、その細胞死を直接又は間接的に引き起こす)方法が提供される。
【0124】
一般に、癌進行及び応答は、標準的な腫瘍効果基準慣例、例えばEisenhauer,EA,et al,New response evaluation criteria in solid tumours:Revised RECIST guideline(version 1.1),Eur J Cancer 2009:45:228-247(その開示内容は、参照により本明細書中に援用される)により詳述されている通りの“Response Evaluation Criteria in Solid Tumors”(RECIST)v1.1に従って研究者により決定することができる。
【0125】
本明細書に開示される通り、セツキシマブと組み合わせてNKG2A中和剤(例えば、抗NKG2A抗体)を使用して個体を処置することができる。その結果、事前のセツキシマブ過程(事前のセツキシマブ過程は、NKG2A中和剤による併用処置を含まない)中又はその後にHNSCCが進行したら、個体(例えば、切除不可能であり、任意選択的に非転移性の癌を有する)をNKG2A中和剤とセツキシマブとの組み合わせで処置することができる。事前のセツキシマブ過程は、1つ又は複数の別の薬剤又は療法、特に放射線療法及び/又は化学療法を含み得る。
【0126】
いくつかの症例では、事前のセツキシマブ過程(単剤として又は任意選択的に放射線療法及び/若しくは化学療法との併用のいずれか)前に、個体は、プラチナ製剤化学療法薬を用いたより早期の事前の処置過程を受けていることができ;例えば、個体は、プラチナ製剤による処置過程後、事前のセツキシマブ過程による処置を受けている。この状況において、個体は、プラチナ製剤による処置にもかかわらず癌の進行を経験し、それに続いてセツキシマブによる処置(事前のセツキシマブ過程)を受けた可能性があり、この場合、任意選択的に、セツキシマブは、放射線療法及び/又は化学療法薬と併用して投与される。その後、個体が事前のセツキシマブ過程による処置にもかかわらず癌の進行を経験した場合、個体は、NKG2A中和剤とセツキシマブとの併用によって処置することができる。
【0127】
NKG2A中和剤とセツキシマブとの併用投与は、同じ若しくは異なる剤形の化合物の同時投与又は化合物の個別投与(例えば、連続投与)を含む。従って、NKG2A中和剤とセツキシマブとは、個別投与のために製剤化されるものとして記述することができ、これらは、同時に又は順次投与することができる。処置は、任意選択的に1つ又は複数のさらに別の薬剤の投与と組み合わせることができる。一実施形態では、NKG2A中和剤による処置過程は、NKG2A中和剤とセツキシマブとを含み、他の治療(例えば、抗癌)薬を含まない。別の実施形態では、NKG2A中和剤による処置過程は、NKG2A中和剤、セツキシマブ及び1つ又は複数の別の治療(例えば、抗癌)薬を含む。
【0128】
本明細書で使用される通り、抗NKG2A剤とセツキシマブとの補助的又は併用投与は、同じ若しくは異なる剤形の化合物の同時投与又は化合物の個別投与(例えば、連続投与)を含む。従って、抗NKG2Aとセツキシマブとは、単一製剤で同時投与することができる。代わりに、抗NKG2Aとセツキシマブとは、個別投与のために製剤化することもでき、これらは、同時に又は順次投与する。
【0129】
これらの処置方法において、抗NKG2A抗体とセツキシマブとは、個別に、一緒に若しくは順次又はカクテルにおいて投与することができる。一部の実施形態では、セツキシマブは、抗NKG2A抗体の投与前に投与する。例えば、抗NKG2A抗体は、セツキシマブの投与の約0~30日前に投与することができる。一部の実施形態では、抗NKG2A抗体は、セツキシマブの投与の約30分~約2週間前、約30分~約1週間前、約1時間~約2時間前、約2時間~約4時間前、約4時間~約6時間前、約6時間~約8時間前、約8時間~1日前又は約1日~5日前に投与される。一部の実施形態では、抗NKG2A抗体は、セツキシマブの投与と同時に投与される。一部の実施形態では、抗NKG2A抗体は、セツキシマブの投与後に投与される。例えば、抗NKG2A抗体は、セツキシマブの投与から約0~30日後に投与することができる。一部の実施形態では、抗NKG2A抗体は、セツキシマブの投与から約30分~約2週間後、約30分~約1週間後、約1時間~約2時間後、約2時間~約4時間後、約4時間~約6時間後、約6時間~約8時間後、約8時間~1日後又は約1日~5日後に投与される。
【0130】
HNSCCを有するヒトを処置するための好適な処置プロトコルは、例えば、NKG2Aの活性を中和する抗体及びセツキシマブの各々の有効量を患者に投与することを含み、この方法は、少なくとも1用量の抗NKG2A抗体が1~10mg/kg体重の用量において(例えば、2週間毎に)、且つ少なくとも1用量、任意選択的に少なくとも2用量のセツキシマブが投与される少なくとも1つの投与サイクルを含み、任意選択的に、セツキシマブは、250mg/mの用量で毎週投与され、任意選択的に、セツキシマブは、初期用量としての400mg/mの用量に続いて250mg/mの少なくとも1用量が毎週投与される。本明細書に記載される任意の実施形態では、各用量の抗NKG2A抗体は、固定用量、例えば100~1000mg、任意選択的に200~1200mg、例えば750mgの固定用量で投与することができる。
【0131】
一実施形態では、方法は、少なくとも1つの投与期間(例えば、投与サイクル)を含み、サイクル又は期間は、8週間(以下)であり、少なくとも1つの期間の各々にわたり、2、3又は4用量の抗NKG2A抗体が1~10mg/kg体重の用量(例えば、100~1000mg、任意選択的に200~1200mg、例えば750mgの固定用量)で投与される。一部の実施形態では、各サイクルは、250mg/mの用量で2、3、4、5、6、7又は8用量のセツキシマブの投与をさらに含む。任意選択的に、サイクルは、セツキシマブの負荷投与を含み;すなわち、サイクルにおける最初の用量は、400mg/mの用量で1回の初期用量のセツキシマブの後、250mg/mの用量での後続用量のセツキシマブの投与を含む。
【0132】
抗NKG2A抗体は、有利には、実質的に完全(例えば、90%、95%)受容体飽和に必要な濃度(例えば、PBMC中のNKG2A発現細胞上の抗NKG2A抗体を滴定することにより評価される)より少なくとも10、20若しくは30倍高い循環中濃度を達成する量又は任意選択的に実質的に完全な受容体飽和に必要な濃度(例えば、PBMC中のNKG2A発現細胞上の抗NKG2A抗体を滴定することにより評価される)より少なくとも10、20若しくは30倍高い血管外組織(例えば、腫瘍組織若しくは環境)中濃度を達成する量で投与することができる。
【0133】
NKG2A+ NK細胞応答は、HLA-E発現標的細胞に対するNKG2A発現NK細胞の細胞障害活性の好適なアッセイを用いて評価することができる。いくつかの例として、NK細胞活性のマーカーに基づくアッセイ、例えばCD107又はCD137発現が挙げられる。有利には、少なくとも10μg/mlの連続(最小)組織濃度を達成及び/又は維持するような量の抗NKG2A抗体を投与することができる。例えば、組織中10μg/mlを達成/維持するために達成及び/又は維持すべき血中濃度は、100~110μg/ml、100~120μg/ml、100~130μg/ml、100~140μg/ml、100~150μg/ml、100~200μg/ml、100~250μg/ml又は100~300μg/mlであり得る。
【0134】
1~10μg/mlのNKG2A+ NK細胞応答のEC100を有する、本明細書の実施例で使用されるhumZ270(例えば、モナリズマブ)などの抗NKG2A抗体のための例示的な処置プロトコルは、少なくとも1用量の抗NKG2A抗体が約10mg/kg体重、任意選択的に2~10mg/kg体重、任意選択的に4~10mg/kg体重、任意選択的に6~10mg/kg体重、任意選択的に2~6mg/kg体重、任意選択的に2~8mg/kg体重又は任意選択的に2~4mg/kg体重の用量、任意選択的に100~1000mg、任意選択的に200~1200mg、例えば750mgの固定用量で投与される少なくとも1つの投与サイクルを含む。任意選択的に、少なくとも2、3、4、5、6、7又は8用量の抗NKG2A抗体が投与される。一実施形態では、投与サイクルは、2週間~8週間である。一実施形態では、投与サイクルは、8週間である。一実施形態では、投与サイクルは、8週間であり、これは、1用量の抗NKG2A抗体を2週間毎に(すなわち合計4用量)投与することを含む。
【0135】
本明細書に記載のいずれかの一態様では、抗NKG2A抗体は、約2週間に1回投与される。
【0136】
抗NKG2A抗体と共に使用される例示的処置プロトコルは、例えば、抗NKG2A抗体を患者に月2回投与することを含み、抗NKG2A抗体の少なくとも2回の連続した投与間で少なくとも40μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度を維持するのに有効な量は、2~10mg/kg体重、任意選択的に2~6mg/kg体重、任意選択的に2~4mg/kg体重、任意選択的に約4mg/kg体重又は任意選択的に100~1000mg、任意選択的に200~1200mg、例えば750mgの固定用量である。これらの用量は、任意選択的に、処置サイクル全体を通して、少なくとも40μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度をもたらすように投与することができる。40μg/mlの抗NKG2A抗体の血中濃度を達成すると、約4μg/mlの組織(例えば、血管外組織、腫瘍環境)中濃度をもたらすと予測され、ヒト化Z270(例えば、モナリズマブ)などの抗体について少なくともEC50を付与する。
【0137】
抗NKG2A抗体で使用される例示的処置プロトコルは、例えば、有効量の抗NKG2A抗体を患者に投与することを含み、抗体は、月2回投与され、抗NKG2A抗体の少なくとも2回の連続した投与間で少なくとも100μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度を維持するのに有効な量は、4~10mg/kg体重、任意選択的に4~6mg/kg体重、任意選択的に4~8mg/kg体重、任意選択的に約4mg/kg体重、任意選択的に約6mg/kg体重、任意選択的に約8mg/kg体重、任意選択的に約10mg/kg体重又は任意選択的に100~1000mg、任意選択的に200~1200mg、例えば750mgの固定用量である。これらの用量は、任意選択的に、処置サイクル全体を通して、少なくとも100μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度をもたらすように投与することができる。100μg/mlの抗NKG2A抗体の血中濃度を達成すると、約10μg/mlの組織(例えば、血管外組織、腫瘍環境)中濃度をもたらすと予測され、従ってヒト化Z270などの抗体について少なくともEC100を付与する。
【0138】
セツキシマブによる事前の処置時又はその後に進行したか又は十分応答することができなかった頭頸部癌を有する患者は、腫瘍細胞の表面でのHLA-Eの発現を評価する事前の検出ステップと共に又はそれなしで、NKG2A中和剤で処置することができる。従って、任意選択的に、処置方法は、個体からの腫瘍の生体サンプル中(例えば、腫瘍細胞上)のHLA-E核酸又はポリペプチドを検出するステップを含み得る。生体サンプルがHLA-Eを発現する(例えば、いずれの場合も任意選択的に基準と比較して検出可能なレベルでHLA-Eを発現する、少なくとも所定のレベルでHLA-Eを発現する、顕著にHLA-Eを発現する、高レベルにおいて又は抗HLA-E抗体による高染色強度でHLA-Eを発現する)という決定を用いて、NKG2Aの活性を中和する薬剤による処置から特に強い利益を受ける可能性がある頭頸部癌を有する者として患者を明示することができる。一実施形態では、方法は、生体サンプル中のHLA-E核酸又はポリペプチドの発現レベルを決定することと、にNKG2Aの活性を阻害し、中和する薬剤による処置から利益を受ける個体に対応する基準レベル(例えば、値、強い細胞表面染色など)とそのレベルを比較することとを含む。生体サンプルが、基準レベルに対応し、且つ/又は基準レベルに対して増加したレベルでHLA-E核酸又はポリペプチドを発現という決定は、その個体が、NKG2Aの活性を阻害し、中和する薬剤による処置から特に強い利益を受ける可能性がある頭頸部癌を有することを示している。任意選択的に、生体サンプル中のHLA-Eポリペプチドを検出することは、悪性HNSCC細胞の表面上に発現されたHLA-Eポリペプチドを検出することを含む。一実施形態では、生体サンプルがHLA-E核酸又はポリペプチドを顕著に発現するという決定は、個体が、NKG2Aの活性を中和する薬剤による処置から特に強い利益を受ける可能性がある頭頸部癌を有することを示している。「顕著に発現される」は、HLA-Eポリペプチドに関連する場合、所与の患者から採取された相当な数の腫瘍細胞においてHLA-Eポリペプチドが発現されることを意味する。「顕著に発現される」という用語の定義は、正確な割合の値によって制約されないが、いくつかの例では、「顕著に発現される」と言われる受容体は、患者から採取されたHNSCC細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又はそれを超えて存在するであろう。
【0139】
個人が、HLA-Eポリペプチドを発現する頭頸部癌細胞を有するかどうかの決定は、例えば、頭頸部癌細胞を含む個人からの生体サンプルを入手(例えば、生検の実施により)し、前記細胞を、HLA-Eポリペプチドに結合する抗体と接触させ、且つ細胞がその表面上でHLA-Eを発現するかどうかを検出することを含み得る。任意選択的に、個人が、HLA-Eを発現する頭頸部癌細胞を有するかどうかの決定は、免疫組織化学アッセイを実行することを含む。任意選択的に、個人が、HLA-Eを発現する頭頸部癌細胞を有するかどうかの決定は、フローサイトメトリーアッセイを実行することを含む。
【0140】
さらに、頭頸部癌、特にHNSCCを有する患者は、患者(又は患者の腫瘍)がHPV陽性であるかどうかを評価するための事前の検出ステップの有無にかかわらず、抗NKG2A剤を用いて処置することができる。一部の実施形態では、本発明の方法で処置される個体は、HPV陽性である。一部の実施形態では、本発明の方法で処置される個体は、HPV陰性である。
【実施例
【0141】
実施例1 - セツキシマブ耐性患者におけるセツキシマブと組み合わせたモナリズマブの反復注射によるHNSCCの応答処置の症例
頭頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)(+)及びHPV(-)扁平上皮癌を有する患者にIPH2201及びセツキシマブの第1b/2相臨床試験を実施した。プラチナ製剤療法後のHNSCCにおいて承認されているが、セツキシマブは、その状況では活性が限定的である(12%奏効率)。本臨床試験は、セツキシマブと組み合わせてモナリズマブを用いたHNSCCの処置の有効性を評価した。モナリズマブ(WHO Drug Information Vol.30,No.1,2016を参照されたい)は、IPH2201とも呼ばれ、配列番号2に示される重鎖アミノ酸配列と、配列番号7に示される軽鎖アミノ酸配列とを有する中和抗NKG2A抗体である。
【0142】
参加基準は、以下の通りであった:
年齢≧18歳
1.鼻咽頭(WHO 1型)、中咽頭、下咽頭、喉頭(声門上、声門、声門下)又は口腔の組織学的若しくは細胞学的に確認されたHPV(+)若しくはHPV(-)扁平上皮癌。
2.イメージング(CTスキャン、MRI、X線)及び/又は理学的検査により立証された再発性及び転移性疾患。第II相では、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors[RECIST]1.1により測定可能な疾患が許可される。第Ib相では、測定可能な疾患の有無にかかわらず、患者は、適格である。
3.プラチナ製剤化学療法後の進行。
4.第Ib相についてのみ:事前に処置を受け、且つ治癒を目的とするさらなる治療を受けられない患者。この部は、過去の選択処置の数にかかわらず、事前に処置を受けた患者も受けられる。
第II相についてのみ:再発性及び/又は転移性疾患のために最大2つの事前の全身レジメンを受け、治癒を目的とするさらなる治療を受けられない患者。
5.一次処置(局部進行性疾患)のために投与され、事前のセツキシマブ処置の終了後少なくとも4ヶ月間進行性疾患がない場合を除いて、セツキシマブによる事前の処置を受けていない。
6.事前の手術からの回復並びに事前の放射線療法及び任意の全身療法によるグレード1以下の有害事象(脱毛症を除く)からの回復。
7. 0~1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステイタス。
8.余命≧3ヶ月。
9.脳転移の処置を受けた患者は、治療終了(放射線及び/又は手術を含む)から>4週間であり、治験登録時点で臨床的に安定しており、且つ試験登録時点でコルチコステロイド療法を受けていなければ適格である。
10.以下のように定義される十分な血液、免疫、肝臓及び腎臓機能
・ヘモグロビン≧9.0g/dL、
・絶対好中球数≧1,500/mm3、
・血小板≧100,000/mm3、
・総ビリルビン≦1.5×試験施設正常値上限(UNL)、
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×試験施設UNL、
・血清クレアチニン≦1.5×試験施設UNL又は推定(Cockcroft-Gault式)若しくは実測クレアチニンクリアランス≧50mL/分。
11.妊娠可能な女性について、試験処置開始前の72時間以内に血清妊娠テストが陰性である。妊娠可能な女性及び全ての男性は、モナリズマブ投与の期間中及びモナリズマブの最後の投与から最大5ヶ月にわたって適切な避妊(ホルモン又はバリア式避妊法;自制)を実施することに治験登録前に同意しなければならない。
12.書面による同意説明文書を理解する能力。
13.あらゆるプロトコル固有の手順に先立ち署名されたインフォームドコンセント。
【0143】
除外基準は、以下の通りであった:
1.第II相についてのみ:再発性及び/又は転移性疾患のための全身レジメンを事前に3回以上受けた患者(治験の第Ib相の部では制限なし)。
2.第II相についてのみ:セツキシマブ又は上皮成長因子受容体の別の阻害剤を受けた患者は、セツキシマブが一次処置アプローチの一環として投与され、且つ事前のセツキシマブ処置の終了から少なくとも4ヶ月間進行性疾患がない場合を除いて、治験の第II相から除外する。
3.セツキシマブに類似する化学又は生物学的組成の化合物に起因するアレルギー反応歴。
4.既知の未処置且つコントロール不良の脳転移を有する患者は、除外される。しかし、患者に神経兆候又は症状がなければ、適格性のための脳イメージング試験は必要ない。
5.同時発生の重篤なコントロール不良の医学的障害。
6.自己免疫疾患であって、
1.現時点で又は以前に全身免疫抑制又は免疫調節療法(全身経路により投与されるコルチコステロイドを含む)を必要とし、且つ/又は
2.いずれかの組織に不可逆的損傷を引き起こす相当の可能性を有し、且つ/又は
3.治験登録の3ヶ月未満前に診断されており、且つ/又は
4.臨床的に不安定であり、且つ/又は
5.進行して重篤な合併症を引き起こす相当のリスクを有する、自己免疫疾患。
7.下記のいずれかを含む心臓状態の異常:
1.不安定狭心症、
2.処置を必要とするが、その処置で安定化しない不整脈、
3. QTc>450ms(M)又は470ms(F)(バゼット(Bazett)補正式-QT間隔/√(RR間隔)、式中、RR間隔=60/HR)。
8.以下のいずれかを含む心不全の病歴:
1.過去6ヶ月以内の心筋梗塞、
2.報告されているうっ血性心不全(ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)の機能分類III~IV)の病歴。
9.既知の間質性肺疾患。
10.妊娠している女性は、この治験から除外される;授乳は、中断しなければならない。
11.他の活性浸潤性悪性腫瘍(処置された基底若しくは扁平上皮癌又は子宮頸上皮内癌を除く)。
12.治験登録前14日以内の他の治験薬による処置。
13.登録前30日以内のステロイド又は他の免疫抑制剤による全身処置。ヒドロコルチゾン又は均等物による生理学的代替は、許容される。
14.現時点の活性感染症。
15. HIVの血清学検査が陽性である。
16.陽性HBs Ag又は陽性HBVウイルス血症、陽性HCV血症。
17.医学的追跡及び試験プロトコルに関するコンプライアンスが可能ではない心理学的、家族的、社会学的又は地理的条件。
【0144】
本治験は、用量漸増部を含んだが、患者は、3+3設計を用いて固定用量のセツキシマブ(400mg/m2の負荷用量、次に毎週250mg/m2)と組み合わせて、0.4、1、2、4又は10mg/kgの漸増用量レベルのモナリズマブを2週間毎に受けた。コホート拡大部は、最高試験用量10mg/kgのモナリズマブを使用し、最初の11人の患者の後に無益性解析を含んだ。RECISTに従って奏効率を評価し、8週間毎に評価した。癌進行又は許容不可能な毒性に到るまで患者を処置した。本治験は、さらに多くの患者を登録させ、奏効期間、無増悪生存及び全生存期間を評価するために依然として進行中である。
【0145】
初期の部分奏功の中で、腓骨フリーフラップ再建と共に右後外側下顎骨切除を含む外科切除、その後の補助的放射線による処置を受けた右下歯槽堤の扁平上皮癌、ステージT4aN2bM0/IVAの病歴を有する患者が観察された。その患者は、口腔の再発性扁平上皮癌(新しい原発癌ではない)、p16-陰性を有し、これは、切除不可能であった。患者は、以前に3サイクルのシスプラチン-タキソテレ-5-FU(TPF)誘導(シスプラチンをカルボプラチンで代用)、続いて毎週のセツキシマブを含む同時化学放射線療法による処置を受けていた。セツキシマブの終了から約4ヶ月後、患者のPET/CTは、再発性癌を示した。患者は、セツキシマブ及び根治的放射線療法過程の終了から4ヶ月を少し超えた時点で再発が認められ、3年以内に再発性口腔癌が出現し(従って新しい原発癌とみなされなかった)、それは、同じ領域、この症例では全て右側に位置したことから、セツキシマブに対して耐性とみなされた。この患者には、IPH2201及びセツキシマブの第Ib/2相治験が推奨された。プロトコルに従うモナリズマブ及びセツキシマブによる処置は、客観的奏効(PR)をもたらし、最良奏効は、ベースライン(処置前)と比較して、処置を受けた標的病変の50%減少であった。病変の尺度は、長径和又はリンパ節の場合には短軸である。
【0146】
初期部分奏功の中には、中咽頭、右側性、ステージTxN2bM0/IVAの扁平上皮癌を有する患者も観察された。この患者の事前の処置過程は、疾患早期における化学療法(シスプラチン/ドセタキセル/5FU)、それに続く放射線療法を含んだ。進行性疾患に際して、患者は、再発性/転移性疾患のために、初期部位及びリンパ節の手術、続いて化学療法(シスプラチン/カルボプラチン/5FU)、その後、セツキシマブによる処置を受けた。患者は、セツキシマブ処置に際して進行性疾患(最良奏効として)を示し、その後、患者は、パクリタキセル及びカルボプラチンによる処置を受けた。疾患進行時、患者は、IPH2201及びセツキシマブの第Ib/2相治験に参加した。プロトコルに従うモナリズマブ及びセツキシマブによる処置は、奏効(PR)をもたらした。
【0147】
セツキシマブと組み合わせた中和抗NKG2A抗体が、セツキシマブに対して耐性とみなされたHNSCC患者に有意な改善をもたらすことができるという知見は、切除不可能な癌を有し、且つその癌が、セツキシマブ、特に放射線療法と組み合わせた処置にもかかわらず進行するHNSCC患者の相当な集団に特定の機会を提供する。この処置は、さらなる進行を防ぐうえでとりわけ転移性癌を遅らせるか又は予防するために有益であり得る。
【0148】
本明細書において援用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に援用され、且つ本明細書中の他の箇所で行われる任意の別個に提供される特定の文献の援用に関係なく、各参考文献が参照によって援用されると個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書中で説明された場合と同じ程度まで(法律で許容される最大範囲まで)援用される。
【0149】
「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語並びに同様の指示対象の使用は、本発明の説明に関連して、本明細書において他に記載されない限り又は文脈により明らかに否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0150】
他に規定されない限り、本明細書において提供される全ての正確な値は、対応する概略値を代表する(例えば、特定の因子又は測定に関して提供される全ての正確な例示的な値は、必要に応じて「約」によって修飾される対応する概略測定値も提供すると考えることができる)。数に関連して「約」が使用される場合、これは、規定される数の+/-10%に対応する値を含むと規定され得る。
【0151】
1つ又は複数の要素に関して「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの用語を用いて本発明の任意の態様又は実施形態を本明細書中で記載することは、他に規定されない限り又は文脈により明らかに否定されない限り、その1つ又は複数の特定の要素「からなる」、「から本質的になる」又は「を実質的に含む」、本発明の同様の態様又は実施形態に対する支持を提供することが意図される(例えば、本明細書において特定の要素を含むと記載される組成物は、他に規定されない限り又は文脈により明らかに否定されない限り、その要素からなる組成物も記載すると理解されるべきである)。
【0152】
本明細書において提供されるいずれか及び全ての例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することのみが意図され、他で主張されない限り、本発明の範囲に限定を課さない。本明細書中の言葉は、特許請求されていない任意の要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されてはならない。

本出願は、以下を提供する。
1. セツキシマブによる事前の処置を受けた個体におけるHNSCCの処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤。
2. 前記個体は、セツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有する、上記1に記載の使用のための薬剤。
3. 前記個体は、放射線療法又は化学療法と併用されたセツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有する、上記1又は2に記載の使用のための薬剤。
4. 前記個体は、単剤としてのセツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有する、上記1~3のいずれかに記載の使用のための薬剤。
5. 前記個体は、切除不可能なHNSCCを有する、上記1~4のいずれかに記載の使用のための薬剤。
6. セツキシマブと組み合わせて投与される、上記1~5のいずれかに記載の使用のための薬剤。
7. セツキシマブによる事前の処置を受けた個体におけるHNSCCの処置に使用するためのセツキシマブであって、前記処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブの各々の有効量を前記個体に投与することを含む、セツキシマブ。
8. 前記個体は、切除不可能なHNSCCを有する、上記7に記載の使用のための薬剤。
9. 切除不可能であり、任意選択的に非転移性のHNSCCを有するヒト個体における癌の処置に使用するための、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤であって、任意選択的に、前記HNSCCは、セツキシマブ耐性であり、前記処置は、(a)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(b)セツキシマブの各々の有効量を前記個体に投与することを含む、薬剤。
10. 前記個体は、セツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有する、上記1~9のいずれかに記載の使用のための薬剤。
11. 前記個体は、放射線療法と併用されたセツキシマブによる事前の処置にもかかわらず進行したHNSCC癌を有する、上記1~10のいずれかに記載の使用のための薬剤。
12. 個体におけるHNSCCの前記処置は、
a)個体が、セツキシマブ(単剤として又は放射線療法及び/若しくは化学療法薬との組み合わせにおいて)に対して耐性であるHNSCCを有するかどうかを決定すること、及び
b)前記個体が、セツキシマブに対して耐性であるHNSCCを有すると決定されると、(i)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及び(ii)セツキシマブを前記個体に投与すること
を含む、上記1~11のいずれかに記載の使用のための薬剤。
13. 個体におけるHNSCCの前記処置は、
a)HLA-Eポリペプチドが、HNSCCを有する前記個体からの悪性細胞によって発現されるかどうかを決定すること、及び
b)悪性細胞がHLA-Eポリペプチドを発現すると決定されると、(i)ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する薬剤、任意選択的に抗体、及びii)セツキシマブを前記個体に投与すること
を含む、上記1~12のいずれかに記載の使用のための薬剤。
14. HLA-Eポリペプチドが悪性細胞によって発現されるかどうかを決定することは、HNSCC細胞を含む生体サンプルを前記個体から取得すること、前記細胞を、HLA-Eポリペプチドに結合する抗体と接触させること及びHLA-Eを発現する細胞を検出することを含む、上記13に記載の使用のための薬剤。
15. ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記薬剤は、抗NKG2A抗体である、上記1~14のいずれかに記載の使用のための薬剤。
16. 前記抗NKG2A抗体は、野生型NKG2Aポリペプチド(配列番号1)と比較して、置換K199A/D202A/V213S/R215A/K217A(配列番号1を参照して)を有する突然変異型NKG2Aポリペプチドへの結合の低減によって特徴付けられる、上記15に記載の使用のための薬剤。
17. 前記抗NKG2A抗体は、ヒトIgG4定常領域を含む、上記15又は16に記載の使用のための薬剤。
18. 前記抗NKG2A抗体は、ヒトFcγ受容体への結合を低減するアミノ酸修飾を含むFc操作された定常領域を含む、上記15~17のいずれかに記載の使用のための薬剤。
19. 前記抗NKG2A抗体は、ヒトNKG2Aへの結合について、配列番号2及び7をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖を有する抗体と競合する、上記15~18のいずれかに記載の使用のための薬剤。
20. 前記NKG2A抗体は、配列番号2に示される配列を有する重鎖のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインと、配列番号7に示される配列を有する軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインとを含む、上記15~19のいずれかに記載の使用のための薬剤。
21. 前記抗NKG2A抗体は、治療的に有効な量の前記抗NKG2A抗体を含む薬学的に許容可能な組成物として投与される、上記15~20のいずれかに記載の使用のための薬剤。
22. 前記組成物は、いかなる他の薬学的活性剤も含まない、上記21に記載の使用のための薬剤。
23. 前記抗NKG2A抗体は、約1週間に1回~約1ケ月に1回の投薬頻度で数回投与される、上記1~22のいずれかに記載の使用のための薬剤。
24. セツキシマブは、毎週投与される、上記1~23のいずれかに記載の使用のための薬剤。
25. 前記処置は、少なくとも1つの投与サイクルを含み、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記薬剤は、2週間毎に投与され、且つセツキシマブは、毎週投与される、上記1~24のいずれかに記載の使用のための薬剤。
26. 前記処置は、2週間の少なくとも1つの期間を含み、前記少なくとも1つの期間の各々にわたり、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、1~10mg/kg体重の用量で投与され、且つセツキシマブは、400mg/m2の初期用量及びそれに続いて250mg/m2で毎週投与される、上記1~25のいずれかに記載の使用のための薬剤。
27. 前記処置は、2週間の少なくとも1つの期間を含み、前記少なくとも1つの期間の各々にわたり、ヒトNKG2Aの阻害活性を中和する前記抗体は、100~1000mg、任意選択的に750mgの固定用量で投与され、且つセツキシマブは、400mg/m2の初期用量及びそれに続いて250mg/m2で毎週投与される、上記1~26のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【配列表】
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