(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20240318BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240318BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240318BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240318BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20240318BHJP
【FI】
C08J5/00 CES
C08L101/00
C08K7/06
C08K7/14
C08K3/016
(21)【出願番号】P 2020550497
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038898
(87)【国際公開番号】W WO2020071421
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018190124
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595138155
【氏名又は名称】ダイセルミライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】片山 弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆史
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-262855(JP,A)
【文献】特開昭63-077971(JP,A)
【文献】特開平10-195311(JP,A)
【文献】特開平07-138485(JP,A)
【文献】特開平11-115011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
C08L 101/00
C08K 7/06
C08K 7/14
C08K 3/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂、(B)
リン系難燃
剤、および(C)金属繊維を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体中、(B)
リン系難燃剤を15~30質量%、および(C)金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、
前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たす、樹脂成形体。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂、(B)
リン系難燃
剤、(C)金属繊維、および(D)ガラス繊維を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体中、(B)
リン系難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%、および(D)ガラス繊維を5~50質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、
前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たす、樹脂成形体。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【請求項3】
(A)熱可塑性樹脂、(B)
リン系難燃
剤、(C)金属繊維、(D)ガラス繊維、および(E)重炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1つの炭化促進剤を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体であって、
前記成形体中、(B)
リン系難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%、(D)ガラス繊維を5~50質量%、および(E)炭化促進剤を0.7~5.0質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、
前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たす、樹脂成形体。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【請求項4】
さらに下記(V)、および(VI)の要件を満たす、請求項2または3記載の樹脂成形体。
(V)下記方法のコーンカロリーメータ発熱性試験により測定される総発熱量が、加熱開始から130sec経過後において8MJ/m
2以下であること。
(VI)下記方法のコーンカロリーメータ発熱性試験による総発熱量測定の際、加熱開始から5min経過後において前記自己消火性樹脂成形体を被覆するアルミニウム箔に開孔がないこと。
コーンカロリーメータ発熱性試験:ISO5660-1に準拠し、大きさ100mm×100mm、厚み2.0mmの平板状成形品の加熱面を除いた面をアルミニウム箔(厚さ12μm)で覆ったものを試料とし、輻射熱強度は50kW/m
2にて、5分間加熱を行う。
【請求項5】
(C)成分の金属繊維または(D)成分のガラス繊維が、金属繊維またはガラス繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた金属繊維束またはガラス繊維束に(A)成分の熱可塑性脂が溶融状態で付着されて一体化されたものが1~15mmの長さに切断された樹脂付着長繊維束の形態のものである、請求項1~4のいずれか1項記載の樹脂成形体。
【請求項6】
(A)成分がポリプロピレン系樹脂である、請求項1~5のいずれか1項記載の樹脂成形体。
【請求項7】
車両用バッテリーモジュールの筐体部品またはその周辺部品である、請求項1~
6のいずれか1項記載の樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その1つの実施態様によれば、電気自動車や電動二輪等のバッテリー式電動輸送機器のバッテリーモジュール筐体部品または周辺部品に使用できる樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)等のバッテリー式電動輸送機器に搭載される、バッテリー等の充電式エネルギー貯蔵システム(REESS)には、それを構成する各部品に、従来の車載用樹脂部品よりも高度な難燃性や自己消火性が求められる。例えば、欧州ECE-R100等の電気安全に関する法規を満たす必要がある。
【0003】
特開2014-133808号公報には、電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体、電気自動車用充電スタンド用筺体に関する樹脂成形体が記載されており、高度の難燃性のほか、電気的負荷に対する発火に対する安全性の確保のための耐トラッキング性を有している。難燃剤はハロゲン系難燃剤を使用している。
【0004】
Journal of Composite Materials 2018, Vol. 52(4) 519-530,「Effect of carbon fiber amount and length on flame retardant and mechanical properties of intumescent polypropylene composites」には、ポリプロピレン、炭素繊維、ポリリン酸アンモニウムを含有する混合物において、各構成成分が有する要件(繊維長、含有量)と熱的挙動や難燃効果との関係についての分析評価が記載されており、特に難燃性はUL94においてV-0を満たすことが求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、1つの側面において、バッテリー式電動輸送機器への搭載可能基準を満たす難燃性を有し、さらに機械的強度が良く、電磁波シールド性を有する樹脂成形体を提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、1つの実施態様において、(A)熱可塑性樹脂、(B)難燃剤、および(C)金属繊維を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体中、(B)難燃剤を15~30質量%、および(C)金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、
前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たす、樹脂成形体を提供する。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【0007】
また本発明は、別の実施態様において、(A)熱可塑性樹脂、(B)難燃剤、(C)金属繊維、および(D)ガラス繊維を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体中、(B)難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%、および(D)ガラス繊維を5~50質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、
前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たす、樹脂成形体を提供する。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【0008】
また本発明は、さらに別の実施態様において、(A)熱可塑性樹脂、(B)難燃剤、(C)金属繊維、(D)ガラス繊維、および(E)重炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1つの炭化促進剤を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体であって、
前記成形体中、(B)難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%、(D)ガラス繊維を5~50質量%、および(E)炭化促進剤を0.7~5.0質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、
前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たす、樹脂成形体を提供する。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【0009】
本発明の例による樹脂成形体は、火災事故時の火災収束性能を示す自己消火性に加え、バッテリー式電動輸送機器への搭載可能基準(ECE-R100等)を満たす難燃性を有しており、さらに機械的強度が良く、高い電磁波シールド性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<樹脂組成物>
以下、本発明の実施態様による樹脂成形体で使用する樹脂組成物の幾つかの例を説明する。
[(A)熱可塑性樹脂]
(A)成分の熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂が使用されてよい。幾つかの例では、ポリエチレン系樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE,ULDPE)など)、ポリプロピレン系樹脂、メチルペンテン系樹脂などのα-C2~20鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂などが使用できる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて使用してもよい。本発明の1つの実施態様では、特に、ポリプロピレン系樹脂が好適に使用される。
【0011】
幾つかの具体的な例によれば、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体であってもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、オレフィン系単量体(例えば、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-C2~20鎖状オレフィン、環状オレフィンなど)、ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系モノマーなど]、ジエン系単量体(例えば、ブタジエンなど)、不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物(例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸またはその酸無水物など)、イミド系単量体[例えば、マレイミド、N-アルキルマレイミド(例えば、N-C1~4アルキルマレイミドなど)などのN-置換マレイミド]などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0012】
より詳細な幾つかの例においては、ポリプロピレン系樹脂としては、単独重合体であるホモポリプロピレンの他、共重合体として、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体などのプロピレン含有量が80質量%以上のプロピレン-α2~20鎖状オレフィン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体など)などが挙げられる。
【0013】
これらのポリプロピレン系樹脂のうち、本発明の好ましい一態様ではホモポリプロピレン、プロピレン-α2~6鎖状オレフィン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体など)であり、本発明の別の好ましい一態様ではホモポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体)である。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0014】
[(B)難燃剤]
(B)成分の難燃剤は、本発明の好ましい一態様では燃焼試験後の自己消火性や成形体の開孔抑制の点からリン系難燃剤であり、本発明の別の好ましい一態様では(B-1)有機リン酸化合物または(B-2)有機リン酸塩化合物であってよく、それらの混合物であってもよく、ハロゲン原子は含まない。
【0015】
(B-1)有機リン酸化合物としては、例えばリン酸、オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸メラミンなどが挙げられ、これらの中でも、ポリリン酸メラミンが好ましく、ピロリン酸メラミンが特に好ましい。
【0016】
(B-2)有機リン酸塩化合物としては、例えばオルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジンなどが挙げられ、これらの中でも、本発明の好ましい一態様ではポリリン酸ピペラジンであり、本発明の別の好ましい一態様ではピロリン酸ピペラジンである。
【0017】
(B)成分が(B-1)成分と(B-2)成分との混合物である場合、(B-1)成分と(B-2)成分の質量比は、本発明の好ましい一態様では1:99~99:1であり、本発明の別の好ましい一態様では10:90~90:10であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では30:70~70:30である。前記質量比が1:99~99:1の範囲内であると、難燃化効果が良い。
【0018】
(B)成分は、市販品として、株式会社ADEKAのアデカスタブFP-2100JC、FP-2200S、およびFP-2500Sが例示できる。
【0019】
(B)成分は、本発明の好ましい一態様では平均粒径40μm以下のものであり、本発明の別の好ましい一態様では難燃性の点から10μm以下のものであることができる。平均粒径が40μm以下の場合には、(A)成分の熱可塑性樹脂に対する分散性がよく、高度な難燃性を得ることができ、さらに樹脂成形体の機械的強度もよい。
【0020】
(B)成分の難燃剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の難燃助剤、発泡剤、他の非ハロゲン系難燃剤などを含んでいてもよい。また場合によっては、(B)成分の難燃剤は、後述する(E)成分に該当する炭化促進剤を含んでいてもよい。
【0021】
難燃助剤は、本発明の好ましい一態様ではペンタエリスリトールの2量体以上の縮合体およびそのエステルから選ばれるものであってよく、本発明の別の好ましい一態様ではペンタエリスリトールとそのエステル、ジペンタエリスリトールとそのエステル、トリペンタエリスリトールとそのエステルから選ばれる1または2以上であることができる。難燃助剤は、前記のペンタエリスリトールの縮合体などを主成分として含有し(本発明の好ましい一態様では80質量%以上)、残部として他の難燃助剤を配合することができる。
【0022】
他の難燃助剤としては、例えばペンタエリスリトール、セルロース、マルトース、グルコース、アラビノース、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオール;或いはこれらのポリオール成分とカルボン酸とが反応して生成するエステル化合物;メラミン、その他のメラミン誘導体、グアナミンまたはその他のグアナミン誘導体、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)、イソシアヌル酸、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌル酸、トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレートなどのトリアジン系誘導体などを挙げることができる。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態において、発泡剤としては、メラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、炭素数4~9のメチロールメラミン、シアヌル酸メラミンなどのメラミン誘導体、尿素、チオ尿素、(チオ)尿素-ホルムアルデヒド樹脂、炭素数2~5のメチロール(チオ)尿素などの尿素誘導体、ベンゾグアナミン、フェニルグアナミン、アセトグアナミン、サクシニルグアナミンなどのグアナミン類、グアナミン類とホルムアルデヒドとの反応生成物、ジシアンジアミド、グアニジンおよびスルファミン酸グアニジンなどの窒素含有化合物から選ばれるものを挙げることができる。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態において、他の非ハロゲン系難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、赤燐、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、および膨張黒鉛などが挙げられる。例えばリン酸エステル系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o-またはp-フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、o-フェニルフェニルジクレジルホスフェート、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、テトラフェニル-m-フェニレンジホスフェート、テトラフェニル-p-フェニレンジホスフェート、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA・ポリフェニルホスフェート、ジピロカテコールハイポジホスフェートなどを挙げることができる。その他にも、脂肪酸・芳香族リン酸エステルとして、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、フェニルネオペンチルホスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジホスフェート、エチルピロカテコールホスフェートなどの正リン酸エステルおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0025】
1つの実施形態では、難燃助剤は、(B)成分の難燃剤において単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。難燃助剤の添加により難燃剤の配合量を低減できたり、難燃剤単独では得られない難燃性が得られたりするので、難燃剤を配合する樹脂の種類や用途に応じて適宜併用することができる。難燃助剤の粒径、融点、粘度などは難燃化効果や粉体特性で優れたものになるように選択することができる。
【0026】
難燃助剤の配合量は、例えば前記(B-1)および(B-2)の合計含有量100質量部に対して、本発明の好ましい一態様では10~60質量部であり、本発明の別の好ましい一態様では15~50質量部であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では15~45質量部である。前記範囲内であると、成形品の機械強度がよく、表面のべたつきも生じることなく、さらに、難燃性向上に作用する強固な炭化層が形成されて難燃性が良好となる。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態において、樹脂組成物は、(B)成分の難燃剤を含む樹脂混合物を含有してもよく、前記樹脂混合物中の(B)成分の難燃剤である前記(B-1)および(B-2)の合計含有量の含有割合は、本発明の好ましい一態様では50~80質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では55~75質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では60~70質量%である。
【0028】
樹脂混合物は前記含有割合の残部として、(A)成分の熱可塑性樹脂を含有することができる。さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂混合物は必要に応じて従来公知の酸化防止剤、および滑剤を含んでいてもよい。(A)成分の熱可塑性樹脂としては、本発明の好ましい一態様では具体的にはポリプロピレン樹脂であり、本発明の別の好ましい一態様ではホモポリプロピレン、またはプロピレン-エチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体)である。
【0029】
酸化防止剤としては、樹脂用の酸化防止剤として公知のリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤(例えば、ホスファイト系酸化防止剤やチオエーテル系酸化防止剤などの特開平7-76640号公報の段落番号0015~0025に記載されているものやトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリスイソデシルホスファイト等のアリルホスファイトやアルキルホスファイト)、アミン系酸化防止剤から選ばれるものを挙げることができる。市販品として、BASFジャパン株式会社製「Irganox1010」、(株)ADEKA製「アデカスタブPEP36」が例示できる。
【0030】
滑剤としては、従来公知の滑剤、例えば、脂質類、ワックス類、シリコーン樹脂類などを挙げることができ、例えば、特開2009-167270号公報の段落番号0068~0073に記載のものから選ばれるものを挙げることができる。市販品として、日油株式会社製「アルフローH-50S」が例示できる。
【0031】
[(C)金属繊維]
(C)成分は、金属繊維として、本発明の好ましい一態様では例えばステンレス(SUS)繊維、銅繊維、銀繊維、金繊維、アルミニウム繊維、および黄銅繊維から選ばれるものであり、本発明の別の好ましい一態様ではステンレス繊維であってよい。
【0032】
本発明の実施形態によれば、(C)成分は、金属繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた金属繊維束に(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分を溶融させ、必要に応じて(B)成分の難燃剤を分散させた状態で付着させて、一体化した後に、所定の長さに切断して得られる樹脂付着金属繊繊束を使用してもよい。
【0033】
(C)成分の金属繊維の繊維径は、本発明の好ましい一態様では5~20μmであり、本発明の別の好ましい一態様では7~16μmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様では10~13μmであり、また長繊維でも短繊維でもよい。
【0034】
本発明の実施形態によれば、(C)成分の金属繊維が樹脂付着金属繊繊束の形態であるとき、樹脂付着金属繊繊束中の金属繊維が(C)成分であり、樹脂成分は(A)成分に含まれる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、ここでいう樹脂金属付着繊維束は、付着状態によって、金属繊維束の中心部まで樹脂が浸透され(含浸され)、繊維束を構成する中心部の繊維間にまで樹脂が入り込んだ状態のもの(以下「樹脂含浸金属繊維束」という);強化用繊維束の表面のみが樹脂で覆われた状態のもの(「樹脂表面被覆金属繊維束」);それらの中間のもの(繊維束の表面が樹脂で覆われ、表面近傍のみに樹脂が含浸され、中心部にまで樹脂が入り込んでいないもの)(「樹脂一部含浸金属繊維束」)を含むものであって、「樹脂含浸金属繊維束」が好ましい。
【0036】
本発明の実施形態によれば、樹脂付着金属繊維束は、例えば特許第5959183号公報の段落番号0043に挙げられる周知の製造方法により製造することができる。金属繊維束中の金属繊維の本数は、例えば100~30000本の範囲から調整されることができる。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態において、樹脂付着金属繊維束中の金属繊維の含有量は、樹脂付着金属繊維束100質量%中、本発明の好ましい一態様では20~70質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では30~60質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では40~50質量%である。残部は(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分であってよく、(A)成分の熱可塑性樹脂としては、本発明の好ましい一態様ではポリプロピレン樹脂であり、本発明の別の好ましい一態様ではホモポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体)である。(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分は、安定剤といった樹脂添加剤を含んでもよいが、(B)成分をはじめとする難燃剤は含まない。
【0038】
本発明の実施形態によれば、樹脂付着金属繊維束の長さ(即ち、(C)成分の金属繊維の長さ)は、本発明の好ましい一態様では1~15mmであり、本発明の別の好ましい一態様では2~10mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様では3~7mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様では5~7mmである。樹脂付着金属繊維束の直径は特に制限されるものではないが、例えば0.5~5mmの範囲にすることができる。
【0039】
[(D)ガラス繊維]
さらに、例えば剛性向上および強度向上(引張強度、曲げ強度、衝撃強度)の点から、樹脂組成物は(D)成分であるガラス繊維を含有することができる。
【0040】
(D)成分は、ガラス繊維を含む樹脂混合物であってもよく、前記樹脂混合物100質量%中、ガラス繊維の含有割合は、本発明の好ましい一態様では10~70質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では20~65質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では30~60質量%である。残部は(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分であってよく、(A)成分の熱可塑性樹脂は、本発明の好ましい一態様ではポリプロピレン樹脂であり、本発明の別の好ましい一態様ではホモポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体)である。
【0041】
(D)成分のガラス繊維が(A)成分を含む樹脂混合物であるとき、前記樹脂混合物中のガラス繊維が(C)成分であり、樹脂成分は(A)成分に含まれる。
【0042】
(D)成分のガラス繊維の繊維径は、本発明の好ましい一態様では9~20μmであり、本発明の別の好ましい一態様では10~17μmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様では13~17μmであり、また長繊維でも短繊維でもよい。
【0043】
(D)成分のガラス繊維が長繊維であるときは、ガラス繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねたガラス長繊維束に(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分を溶融させた状態で付着させて、一体化した後に、所定の長さに切断して得られる樹脂付着ガラス長繊繊束を使用してもよい。(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分は、安定剤といった樹脂添加剤を含んでもよいが、(B)成分をはじめとする難燃剤は含まない。(D)成分のガラス繊維が樹脂付着ガラス長繊繊束の形態であるとき、樹脂付着ガラス長繊繊束中のガラス繊維が(D)成分であり、樹脂成分は(A)成分に含まれる。
【0044】
ここでいう樹脂付着ガラス長繊維束は、前記[(C)金属繊維]に記載された場合と同様に、付着状態によって区別される「樹脂含浸ガラス長繊維束」;「樹脂表面被覆ガラス長繊維束」;「樹脂一部含浸ガラス長繊維束」を含むものであって、「樹脂含浸ガラス長繊維束」が好ましく使用されてよい。
【0045】
ガラス長繊維束中のガラス繊維の本数は、例えば500~10000本の範囲から調整され、前記[(C)金属繊維]に記載された「樹脂付着金属繊維束の製造方法」に準拠して製造することができる。
【0046】
本発明の実施形態によれば、樹脂付着ガラス長繊維束の長さ(即ち、(D)成分のガラス繊維の長さ)は、本発明の好ましい一態様では5~50mmであり、本発明の別の好ましい一態様では7~25mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様では9~15mmである。樹脂付着繊維束の直径は特に制限されるものではないが、例えば0.5~5mmの範囲にすることができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、(D)成分のガラス繊維が短繊維であるときは、本発明の好ましい一態様では長さ範囲1~4mmのガラス短繊維であり、本発明の別の好ましい一態様では2~3mmのガラス短繊維である。ガラス短繊維は、例えば、チョップドストランドなどであってもよく、表面処理された繊維であってもよい。
【0048】
本発明の実施形態によれば、(D)成分のガラス繊維が短繊維であるときは、(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分にガラス短繊維を分散させた樹脂混合物を使用してもよく、前記樹脂成分は、安定剤といった樹脂添加剤や(B)成分の難燃剤を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、(D)成分のガラス繊維は、上記の長繊維(樹脂付着ガラス長繊繊束)とガラス短繊維を併用することもできる。
【0049】
幾つかの実施形態において、(D)成分は、電磁波シールド性の点から、ガラス短繊維であってよい。(D)成分としてガラス短繊維を用いることで、金属繊維同士の接触を妨げることなく、本発明の樹脂組成物を含む成形体の電磁波シールド性を高めることができる。
【0050】
[(E)炭化促進剤]
本発明の実施形態によれば、炭化促進剤としては、例えばフェロセンなどの有機金属錯体化合物、水酸化コバルト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、硼酸マグネシウム、硼酸カルシウムマグネシウムなどの硼酸アルカリ土類金属塩、硼酸マンガン、硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ三水和物、重炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化コバルト、酸化亜鉛などの金属酸化物類、ゼオライトなどのアルミノケイ酸塩、シリカチタニアなどの珪酸塩型固体酸、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛などの金属リン酸塩、ハイドロタルサイト、カオリナイト、セリサイト、パイロフィライト、ベントナイト、タルクなどの粘土鉱物類を挙げることができる。
【0051】
中でも炭化促進剤としての効果の面から、炭化促進剤は、本発明の好ましい一態様では例えば重炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1つであり、本発明の別の好ましい一態様では酸化亜鉛である。任意選択的に、さらに上記した他の炭化促進剤のいずれかを含有してもよい。
【0052】
幾つかの実施形態において、樹脂組成物は、カーボンブラックを含有していてもよい。カーボンブラックとしては、公知のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物に含まれるカーボンブラックは、カーボンブラックを含む樹脂混合物(マスターバッチ)であってもよく、前記樹脂混合物100質量%中、カーボンブラックの含有割合は、本発明の好ましい一態様では0.01~40質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では0.01~30質量%である。残部は(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分であってよく、(A)成分の熱可塑性樹脂としては具体的には例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、それらの混合物が好ましく使用されてよい。
【0053】
[その他の成分]
幾つかの実施形態において、樹脂組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で、熱安定剤、滑剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、および離型剤などを含有することができる。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態によれば、樹脂組成物は、例えば、(C)、(D)成分を除く各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて調製してもよい。さらに、前記混合機で予備混合した後、(C)、(D)成分と合わせて一軸または二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサーなどの混練機で溶融混練して調製する方法を適用することができる。
【0055】
<樹脂成形体>
以下、本発明の幾つかの実施形態による樹脂成形体を説明する。
例示的な第1実施形態の樹脂成形体は、上記(A)~(C)成分を含む((D)成分と(E)成分は含まない)樹脂組成物から得られる成形体であって、前記樹脂成形体中、(B)難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、下記(I)~(IV)の要件を満たすものである。
(I)前記樹脂成形体の厚みが1.5~8.0mmであること。
(II)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験終了後5分以内に自己消火すること。
(III)前記樹脂成形体が、下記燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体に開孔がないこと。
(IV)前記樹脂成形体が、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値であること。
燃焼試験E法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。200mm長さの炎を使用し、前記平板の上方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は150mm。
【0056】
本発明の実施形態によれば、樹脂成形体は、1.5mm厚みの試験片において、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果がV-0またはV-1であり、本発明の好ましい一態様ではV-0である。
【0057】
樹脂成形体の大きさや形状は、下記要件(I)を満たす範囲内で用途に応じて適宜調整することができる。本発明の一態様では樹脂成形体は、厚み1.5~8.0mmであって、本発明の好ましい一態様では2.0~6.0mmであり、本発明の別の好ましい一態様では2.0~4.0mmである(要件(I))。
【0058】
樹脂成形体は、前記燃焼試験E法による燃焼試験終了後の2分以内に、外から消火処理を加えずとも消火する、自己消火性を有するものである(要件(II))。「自己消火性」とは、炎と接触させたときに、炎の中では燃焼するが炎を遠ざけると一定時間内に自ら炎を消す性質をいう。本発明の幾つかの実施形態によれば、前記E法以外にも下記の燃焼試験A~D法のいずれか1以上による燃焼試験終了後の2分以内に自己消火性を有するものであってよい。
【0059】
なお、本発明における燃焼試験A~E法は、A法がもっとも緩やかな燃焼条件であって、次いでB法、C法の順に燃焼条件が比較的厳しい試験であって、D法およびE法は燃焼条件の厳しい試験である。
【0060】
燃焼試験A法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。UL94における20mm炎を使用し、前記平板の下方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は10mm。
【0061】
燃焼試験B法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。UL94における38mm炎を使用し、前記平板下方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は20mm。
【0062】
燃焼試験C法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。
UL94における125mm炎を使用し、前記平板下方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は100mm。
【0063】
燃焼試験D法:前記成形体からなる平板(150×150×2.0mm)を使用する。UL94における125mm炎を使用し、前記平板下方から、前記平板の中心に対して130秒間接炎する。前記平板の接炎位置からバーナー口までの距離は40mm。
【0064】
前記各種燃焼試験法は、欧州ECE-R100における自己燃焼性試験を想定したもので、前記各種燃焼試験法における自己消火性を有する本発明の樹脂成形体は欧州ECE-R100の規定を満たすことができる。
【0065】
さらに樹脂成形体は、前記の燃焼試験E法による燃焼試験後の成形体、具体的には成形体表面の着火部分において、燃焼熱によって成形体の着火部分が溶けて孔が開くことはない(開孔がない)(要件(III))。ここでいう「開孔」とは、着火した成形体表面から成形体の厚さ方向に貫いて開く孔のことで、孔の最大径が3mm以下のものや、貫通していない孔や凹みなどは含まない。1つの実施形態では、前記E法以外にも、前記燃焼試験A~D法のいずれか1以上による燃焼試験後の成形体において開孔がないことが好ましい。
【0066】
例示的な第2実施形態の樹脂成形体は、上記(A)~(D)成分を含む((E)成分は含まない)樹脂組成物から得られる成形体樹脂成形体であって、前記樹脂成形体中、(B)難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%、(D)ガラス繊維を5~50質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、上記(I)~(IV)の要件を満たすものである。
【0067】
例示的な第3の実施形態の樹脂成形体は、上記(A)~(E)成分を含む樹脂組成物から得られる成形体樹脂成形体であって、前記樹脂成形体中、(B)難燃剤を15~30質量%、(C)金属繊維を2.5~7.5質量%、(D)ガラス繊維を5~50質量%、(E)炭化促進剤を0.7~5.0質量%含有し、残部が合計で100質量%とする(A)成分であり、前記樹脂成形体は、UL94 V試験法による燃焼試験判定結果が1.5mm厚みの試験片においてV-0またはV-1であり、上記(I)~(IV)の要件を満たすものである。
【0068】
さらに第2の実施形態と第3の実施形態は、例示的な別の態様において、上記(I)~(IV)の要件に加えて、下記(V)と(VI)の要件を満たすものであってよい。
【0069】
(V)下記方法のコーンカロリーメータ発熱性試験により測定される総発熱量が、加熱開始から130sec経過後において8MJ/m2以下であること。
【0070】
(VI)下記方法のコーンカロリーメータ発熱性試験による総発熱量測定の際、加熱開始から5min経過後において前記自己消火性樹脂成形体を被覆するアルミニウム箔に開孔がないこと。
【0071】
コーンカロリーメータ発熱性試験:ISO5660-1に準拠し、大きさ100mm×100mm、厚み2.0mmの平板状成形品の加熱面を除いた面をアルミニウム箔(厚さ12μm)で覆ったものを試料とし、輻射熱強度は50kW/m2にて、5分間加熱を行う。試験装置としては例えば、コーンカロリーメータC4((株)東洋精機製作所製)が使用できる。
【0072】
要件(V)は、本発明の好ましい一態様では、加熱開始から130sec経過後において8MJ/m2以下であることであり、本発明の別の好ましい一態様では、加熱開始から130sec経過後において7.5MJ/m2以下であることである。
【0073】
要件(VI)の「開孔」とは、アルミニウム箔の厚さ方向に貫いて開く孔のことで、孔の最大径が3mm以下のものや、貫通していない孔や凹みなどは含まない。コーンカロリーメータ発熱性試験においては、試料の加熱面を除いた面をアルミニウム箔で被覆することから、主に加熱面の反対側の面の被覆部分まで熱が伝達し、アルミニウムの融点である約660℃を超えるような場合に、アルミニウム箔が溶融し開孔が生じる。
【0074】
本発明の幾つかの実施形態によれば、樹脂成形体は、前記成形体からなる平板(縦150mm、横150mm、厚み2.0mm)を用いて測定した、周波数範囲1~100MHzにおいてKEC法電界による電磁波シールド性が30dBを超える値を示す(要件(IV))。電磁波シールド性の測定方法は、例えば実施例に記載のものを適用することができる。
【0075】
本発明の幾つかの実施形態によれば、樹脂成形体は、(B)、(C)、および(D)成分の前記成形体中の各含有量について、下記の範囲内であれば、(B)、(C)、および(D)成分のいずれか1以上および(A)成分の熱可塑性樹脂を含む樹脂成分を含有する、例えばマスターバッチ(MB)のような樹脂混合物(コンパウンド)を用いたものであってもよい。
【0076】
(A)~(C)成分を含む((D)成分と(E)成分は含まない)樹脂成形体は、1つの実施形態では、(B)成分である難燃剤を15~30質量%含有し、本発明の好ましい一態様では17~28質量%、本発明の別の好ましい一態様では18.5~25質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では19~25質量%含有する。この樹脂成形体は、別の実施形態では、(C)成分である金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、本発明の好ましい一態様では2.5~7.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では2.5~6.0質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では3.0~5.0質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では3.0~4.5質量%含有する。残部の(A)成分と合わせて100質量%とする。
【0077】
また(A)~(D)成分を含む((E)成分は含まない)樹脂成形体は、1つの実施形態では、(B)成分である難燃剤を15~30質量%含有し、本発明の好ましい一態様では17~28質量%、本発明の別の好ましい一態様では18.5~25質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では19~25質量%含有する。この樹脂成形体は、別の実施形態では、(C)成分である金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、本発明の好ましい一態様では2.5~7.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では2.5~6.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では3.0~5.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では3.0~4.5質量%含有する。この樹脂成形体は、さらに別の実施形態では、(D)成分であるガラス繊維を5~50質量%含有し、本発明の好ましい一態様では10~45質量%含有し、本発明の別の好ましい一態様では20~40質量%含有する。残部の(A)成分を合わせて100質量%とする。
【0078】
また(A)~(E)成分を含む樹脂成形体は、1つの実施形態では、(B)成分である難燃剤を15~30質量%含有し、本発明の好ましい一態様では17~28質量%、本発明の別の好ましい一態様では18.5~25質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では19~25質量%含有する。この樹脂成形体は、別の実施形態では、(C)成分である金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、本発明の好ましい一態様では2.5~7.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では2.5~6.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では3.0~5.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では3.0~4.5質量%含有する。この樹脂成形体は、さらに別の実施形態では、(D)成分であるガラス繊維を5~50質量%含有し、本発明の好ましい一態様では10~45質量%含有し、本発明の別の好ましい一態様では20~40質量%含有する。この樹脂成形体は、さらに別の実施形態では、(E)成分である炭化促進剤を0.7~5.0質量%含有し、本発明の好ましい一態様では0.7~4.0質量%含有し、本発明の別の好ましい一態様では0.8~3.5質量%含有する。残部の(A)成分を合わせて100質量%とする。
【0079】
本発明の別の実施形態によれば、炭化促進剤の配合量は、前記(B-1)および(B-2)の合計含有量100質量部に対して1~30質量部であってよく、本発明の別の好ましい一態様では0.5~10質量部であってよく、本発明のさらに別の好ましい一態様では0.5~6質量部であってよく、本発明のさらに別の好ましい一態様では2~5質量部であってよい。前記範囲内であると、難燃効果がよく、成形時の押出が安定し、さらに成形体の機械物性が良く、難燃性が良好となる。
【0080】
幾つかの実施形態によれば、(D)成分のガラス繊維と(E)成分の炭化促進剤は、本発明の好ましい一態様では(D)成分と(E)成分の合計量中の(E)成分の含有割合[(E)/((D)+(E))×100]が2~13質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では2.5~10質量%である。
【0081】
幾つかの実施形態によれば、(A)成分のポリオレフィン系樹脂、(B)成分のリン系難燃剤、(E)成分の炭化促進剤の合計量中の(E)成分の含有割合[(E)/((A)+(B)+(E))×100]の本発明の好ましい一態様では1~8質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では1~6質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では3.1~6質量%である。
【0082】
さらに(A)~(D)成分、およびカーボンブラックを含む((E)成分は含まない)樹脂成形体は、1つの実施形態では、(B)成分である難燃剤を15~30質量%含有し、本発明の好ましい一態様では17~28質量%、本発明の別の好ましい一態様では18.5~25質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では19~25質量%含有する。この樹脂成形体は、別の実施形態では、(C)成分である金属繊維を2.5~7.5質量%含有し、本発明の好ましい一態様では2.5~7.0質量%、本発明の別の好ましい一態様では2.5~6.0質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では3.0~5.0質量%、本発明のさらに別の好ましい一態様では3.0~4.5質量%含有する。この樹脂成形体は、さらに別の実施形態では、(D)成分であるガラス繊維を0~50質量%含有し、本発明の好ましい一態様では5~45質量%含有し、本発明の別の好ましい一態様では10~40質量%含有し、本発明のさらに別の好ましい一態様では20~40質量%含有する。この樹脂成形体は、さらに別の実施形態では、カーボンブラックを0.03~3質量%含有し、本発明の好ましい一態様では0.1~1質量%含有し、本発明の別の好ましい一態様では0.2~0.7質量%含有する。残部の(A)成分を合わせて100質量%とする。
【0083】
幾つかの実施形態によれば、樹脂成形体は、(A)成分と(B)成分の合計含有量に対する次式(B)/[(A)+(B)]×100から求められる(B)成分の含有割合(質量%)は、本発明の好ましい一態様では18~40質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では20~38質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では23~35質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では28~30質量%である。
【0084】
幾つかの実施形態によれば、樹脂成形体は、(A)、(C)、および(D)成分の合計含有量に対する次式(B)/[(A)+(C)+(D)]×100から求められる(B)成分の含有割合(質量%)は、本発明の好ましい一態様では23~40質量%であり、本発明の別の好ましい一態様では23~30質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様では23~25質量%である。
【0085】
本発明の幾つかの実施形態によれば、樹脂成形体は、前記樹脂組成物を用いて、公知の技術、例えば、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形などによって各種成形品に成形することができる。例えば上述したような本発明の利点をより享受し得る観点から、射出成形によって各種成形品に成形することができる。
【0086】
各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲で、適宜構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0087】
(A)成分として、以下に示すポリオレフィン系樹脂(A1)~(A6)を使用した。
・(A1)ホモポリプロピレン、MFR(メルトフローレート)7、製品名「PM600A」、サンアロマー株式会社製
・(A3)高流動性ホモポリプロピレン、MFR70、製品名「PMB02A」、サンアロマー株式会社製
・(A5)高流動性プロピレン-エチレンブロック共重合体、MFR60、製品名「PMB60A」、サンアロマー株式会社製
・(A6)無水マレイン酸変性ポリプロピレン、MFR10(190℃×0.325kg)、製品名「OREVAC CA100」、アルケマ株式会社製
・(A7)プロピレン-エチレンランダム共重合体、MFR25、製品名「PM921V」、サンアロマー株式会社製
【0088】
(B)成分としては以下のものを使用した。
・(B-1)リン系難燃剤、製品名「FP-2500S」、株式会社ADEKA製
・(B-2)リン系難燃剤、製品名「FP-2100JC」、株式会社ADEKA製
・製造例11にしたがって調製したリン系難燃剤(B-1)を含む樹脂混合物
【0089】
(C)成分:製造例12にしたがって調製した樹脂含浸ステンレス長繊維束
【0090】
(D)成分:チョップドガラス繊維(ECS03T-480、日本電気硝子株式会社製)、繊維の平均径13μm、平均長さ3mm
【0091】
(E)成分:酸化亜鉛、酸化亜鉛II種、堺化学工業株式会社製
【0092】
その他の成分として以下のものを使用した。
・チョップドカーボン繊維(HT C413、帝人株式会社製)、繊維の平均径7μm、平均長さ6mm
・カーボンブラックマスターバッチ(以下、CBMB)、製品名「EPP-K-22771」、ポリコール工業株式会社製(カーボンブラック30質量%含有、残部はポリプロピレンとポリエチレンの混合物)
・安定剤1、製品名「Irganox1010」、BASFジャパン株式会社製
・安定剤2、製品名「アデカスタブPEP36」、(株)ADEKA製
・滑剤、製品名「アルフローH-50S」、日油株式会社製(エチレンビスステアリン酸アミド)
【0093】
評価項目の測定方法は以下の通りであった。
(1)MFR(g/10min)
ISO1133に準拠して温度230℃および荷重2.16kgで測定した。
(2)引張強さ(MPa)
ISO527に準拠して測定した。
(3)曲げ強度(MPa)
ISO178に準拠して測定した。
(4)曲げ弾性率(MPa)
ISO178に準拠して測定した。
(5)シャルピー衝撃強度(kJ/m2)
ISO179/1eAに準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
【0094】
(難燃性)
UL94のバー型試験片(125mm×13mm×1.5mm)の20mm炎垂直燃焼試験(V試験)にて、実施例および比較例の樹脂組成物から作製した厚さ1.5mmの試験片にて試験した。
【0095】
(電磁波シールド性)
成形体(縦150mm、横150mm、厚み2.0mm)を用い、KEC法(電界)に準拠して周波数範囲1~100MHzにおける電磁波シールド性を評価した。
【0096】
(平板燃焼試験による自己消火性および開孔評価)
成形体として大きさ150mm×150mm、厚み2.0mmの平板状成形品を試料に用い、上記の燃焼試験E法による燃焼試験終了後2分以内に、本発明の樹脂成形体が自己消火したものを「(自己消火性)有り」、2分以内には自己消火しなかったものを「(自己消火性)無し」と評価した。
【0097】
また、自己消火後または蓋をするなどして空気(酸素)から遮断して消火させた後の前記樹脂成形体において、最大径が3mmを超える貫通孔が空いているものを「(開孔)有り」、貫通した孔が空いていないものを「(開孔)無し」と評価した。なお、表中の「-」は、UL94燃焼試験において、UL94規格外の評価「notV」であったため、平板燃焼試験を実施することができなかった。
【0098】
(総発熱量)
ISO5660-1に準拠し、大きさ100mm×100mm、厚み2.0mmの平板状成形品を試料とし、試験装置としてコーンカロリーメータC4((株)東洋精機製作所製)を使用して、総発熱量を測定した。輻射熱強度は50kW/m2にて、5分間加熱を行った。試料の加熱面を除いた面はアルミニウム箔(厚さ12μm)で被覆した。加熱開始から130sec経過後の総発熱量[MJ/m2]とアルミニウム箔の開孔の有無(目視観察)の結果を表4に示す。
【0099】
製造例1~10(繊維含有ポリプロピレン系難燃コンパウンドの製造)
表1に示す(A)成分の熱可塑性樹脂、(B)成分の難燃剤、(E)成分の酸化亜鉛、カーボンブラック(マスターバッチ)およびその他の添加剤を含む樹脂混合物を、表1に示す配合でタンブラーにて混合後、二軸押出機((株)日本製鋼所製「TEX30α」、230℃)のホッパーから供給し、さらに(D)成分のチョップドガラス繊維およびチョップドカーボン繊維をサイドフィーダーから供給して、溶融混練および賦形して、表1に示す樹脂混合物(直径3.0mm×長さ3.0mmのペレット)を得た。
【0100】
【0101】
製造例11(リン系難燃剤(B-1)を含む樹脂混合物の製造)
(A7)成分30質量部、安定剤1を0.20質量部、安定剤2を0.20質量部、および滑剤2.50質量部をドライブレンドした後、二軸押出機((株)日本製鋼所製「TEX30α」、230℃)のホッパーから供給した。さらに(B-1)成分70質量部はサイドフィーダーから供給して、溶融混練および賦形して、表2に示すリン系難燃剤(B-1)を含む樹脂混合物(直径3.0mm×長さ3.0mmのペレット)を得た。
【0102】
製造例12(樹脂含浸ステンレス繊維束の製造)
(C)成分であるステンレス繊維束(約7000本の繊維の束)をクロスヘッドダイに通して、(A5)成分:(A6)成分:安定剤1:安定剤2=48.0:1.50:0.25:0.25(質量部)のブレンド物を溶融させて供給し、ステンレス繊維束に含浸させ、樹脂含浸ステンレス長繊維束を得た。その後、クロスヘッドダイ出口の賦形ノズルで賦形し(直径3.5mm)、整形ロールで形を整えた後、ペレタイザーにより7mmに切断し、ステンレス繊維(C)50質量%を含有する樹脂含浸繊維束(ペレット)を得た。このようにして得た樹脂含浸繊維束を切断して確認したところ、ステンレス繊維が長さ方向にほぼ平行になっており、中心部まで樹脂が含浸されていた。
【0103】
実施例1、2
製造例1の繊維含有ポリプロピレン系難燃コンパウンドおよび製造例12の樹脂含浸繊維束を、表2に示す配合でタンブラーにて混合後、射出成形機(ファナック(株)製FANUC ROBOSHOTα-S150iA、金型50℃、成形温度220℃)に投入して、樹脂成形体を得た。
【0104】
実施例3
(A)成分、製造例11の難燃剤(B)を含む樹脂混合物、製造例12の樹脂含浸金属長繊維束を、表2に示す配合でタンブラーにて混合後、実施例1同様の製造方法によって樹脂成形体を得た。
【0105】
比較例1
製造例1の繊維含有ポリプロピレン系難燃コンパウンドおよび製造例12の樹脂含浸繊維束を、表2に示す配合でタンブラーにて混合後、実施例1と同様の製造方法によって樹脂成形体を得た。
【0106】
比較例2~8
製造例1~7の繊維含有ポリプロピレン系難燃コンパウンドを射出成形機射出成形機(ファナック(株)製FANUC ROBOSHOT α-S150iA、金型50℃、成形温度220℃)に投入して、樹脂成形体を得た。実施例1~3および比較例1~8の評価結果を表2に併せて示す。
【0107】
【0108】
実施例1~3においては、高度な自己消火性、難燃性および電磁波シールド性に加えて、高い機械的強度を有する樹脂成形体が得られ、中でも実施例1、2は比引張強度(引張強度/密度)、比曲げ強度(曲げ強度/密度)および比弾性率(曲げ弾性率/密度)の大きい樹脂成形体が得られた。また実施例3では、ガラス繊維を含有する実施例1、2よりも軽量、つまり密度が小さく、実施例1、2と同等の自己消火性、難燃性および電磁波シールド性を有する樹脂成形体が得られた。
【0109】
実施例4~6
表1に示す製造例8~10の繊維含有ポリプロピレン系難燃コンパウンドおよび製造例12の樹脂含浸繊維束を、表3に示す配合でタンブラーにて混合後、射出成形機(ファナック(株)製FANUC ROBOSHOTα-S150iA、金型50℃、成形温度220℃)に投入して、樹脂成形体を得た。評価結果を表3に併せて示す。
【0110】
【0111】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の例による樹脂成形体は、ECE-R100等の耐火試験に関する基準を満たす難燃性と自己消火性を有するため、電気自動車、電気シャトルバス、電動トラック、電動二輪、電動車椅子、電動立ち乗り二輪車等のバッテリー式電動輸送機器、特にバッテリーを脱着することのできない固定式バッテリーを用いる電動輸送機器のバッテリーモジュールの筐体の全部または一部、周辺部品(締結用部品等)、さらに電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体にも使用することができる。
【0113】
また、本発明の例による樹脂成形体は、電磁波シールド性を有するため、上記筐体または部品から発生する不要電波が車載ラジオへの雑音となることを防止できる。さらに、本発明の例による樹脂成形体は、車両以外の電気・電子機器のハウジング等に使用することができる。