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特許7455755オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの生成量を増大させる方法、並びにそのための宿主細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの生成量を増大させる方法、並びにそのための宿主細胞
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/00 20060101AFI20240318BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20240318BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20240318BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240318BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C12P5/00
C12P7/02
C12N9/04
C12N1/19
C12N15/31 ZNA
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020555356
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019058789
(87)【国際公開番号】W WO2019197327
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】18166374.1
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512304722
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ズル フェーダールン ダー・アンゲヴァンデン フォーシャン イー.ファオ.
【氏名又は名称原語表記】FRAUNHOFER-GESELLSCHAFT ZUR FOERDERUNG DER ANGEWANDTEN FORSCHUNG E.V.
(73)【特許権者】
【識別番号】513283981
【氏名又は名称】ヴェストファーレン・ヴィルヘルム ウニベージテート ミュンスター
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ グロノヴァー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ボイエ ミュラー, ルイス ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ディーネン, ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ブローカー, ジャン ニクラス
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106635853(CN,A)
【文献】特表2011-517410(JP,A)
【文献】中園 幹生,ダイズにおける有用トリテルペン(ルペオールおよびベツリン酸)の 合成酵素の機能解析,大豆たん白質研究,2014年,Vol. 17,pp. 13-17
【文献】Yuan J. et al.,Combinatorial engineering of mevalonate pathway for improved amorpha-4,11-diene production in budding yeast,Biotechnol Bioeng,2014年,Vol. 111,pp. 608-617
【文献】Ozaydin B. et al.,Carotenoid-based phenotypic screen of the yeast deletion collection reveals new genes with roles in isoprenoid production,Metab Eng,2013年,Vol. 15,pp. 174-183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 15/90
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主酵母細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法であって、前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、2,3-オキシドスクアレン又はルペオールであり、
‐配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現するように、
及び、
配列番号3のアミノ酸配列を含むタンパク質を過剰発現するように、前記宿主酵母細胞を改変し、さらにROX1(配列番号25)の座位をノックアウトするように前記宿主酵母細胞を改変し、さらに配列番号9に示すアミノ酸配列を含むラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するように、前記宿主酵母細胞を改変すること、
‐前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質であるルペオール合成酵素又はオキシドスクアレン環化酵素(OSC)を発現するように、前記宿主酵母細胞を改変すること、
‐前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で前記宿主酵母細胞を培養すること、
‐並びに、前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の前記宿主酵母細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む、方法。
【請求項2】
前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの前記精製は、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上のオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの前記生成量を増大する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための組換え宿主酵母細胞であって、前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、2,3-オキシドスクアレン又はルペオールであり、
前記宿主酵母細胞は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現するように、並びに、配列番号3のアミノ酸配列を含むタンパク質を過剰発現するように改変され、さらに配列番号9に示すアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素を抑制するように改変され、さらにROX1(配列番号25)の座位をノックアウトするように改変された、宿主酵母細胞。
【請求項5】
前記宿主酵母細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Nicotiana benthamiana、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Pichia stipitis、Candida albicans、Candida utilis、及びBY2細胞からなる群より選択される、請求項に記載の宿主酵母細胞。
【請求項6】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための、請求項4又は5に記載の宿主酵母細胞の使用。
【請求項7】
CTR3-プロモーターの挿入及び/又は硫酸銅CuSOの添加によって、配列番号9に示すアミノ酸配列を含むラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するように、前記宿主酵母細胞をさらに改変することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記硫酸銅の添加量は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、又は375mMのCuSOである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの前記精製は、第1のクロマトグラフィーステップにC18カラムを使用し、第2のクロマトグラフィーステップにビフェニルカラムを使用することによる、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップによって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記宿主酵母細胞は、CTR3-プロモーターの挿入及び/又は硫酸銅CuSOの添加によって、配列番号9に示すアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素を抑制するように、さらに改変された、請求項に記載の宿主酵母細胞。
【請求項11】
前記オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、ルペオールである、請求項に記載の宿主酵母細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、コンピュータ可読形式の配列表を含み、これは言及することにより本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、組換え生物工学の分野のものであり、特に代謝工学の分野のものである。本発明は、概して、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法、及びそれらの精製の方法に関する。また、本発明は、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する宿主細胞の能力を改良した、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための各宿主細胞に関する。また、本発明は、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための宿主細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
5員環トリテルペンは、メバロナート(MVA)経路に由来する植物の2次代謝物群であり、経済や医薬において高い可能性を示すものである。Saccharomyces cerevisiaeなどの異種系においてこれらの物質を生成することが望ましいことから、近年、そうした系における研究や設計が提起されている。
【0004】
イソプレノイドは、あらゆる生体に見受けられる最も大きな天然化合物群であり、現在のところ知られる、様々な、少なくとも5万の種々の構造を示す(Hemmerlin et al., 2012; Liao et al., 2016)。これらの構造は、主に、アセチル-CoAがイソプレノイド前駆物質イソペンテニル二リン酸(IPP)に変換される、高制御メバロナート経路(MVA経路)に由来する。アセチル-CoAをIPPに変換するため、6つの酵素を必要とするが、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMGR)は経路の律速段階として知られている(Demierre et al., 2005)。ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)への異性化反応後、IPP及びDMAPPは別のイソプレノイド経路に入ることが可能となる。2つのIPP分子と1つのDMAPP分子との反応後、ファルネシルピロリン酸(FPP)が生成されて、スクアレン合成酵素を介してスクアレンに変換される。スクアレンは、その酸化形態2,3-オキシドスクアレンにおいて、ステロール前駆物質(例えば、真菌及び動物におけるラノステロール、若しくは植物におけるシクロアルテノール)、又は、Taraxacum officinaleのルペオール合成酵素若しくはArtemisia annuaのβ-アミリン合成酵素などの種々のオキシドスクアレン環化酵素を介して5員環トリテルペンを合成するために使用される(Shibuya et al., 1999; Kirby et al., 2008)。さらに、他のFPP修飾により、ファルネセン、又は抗マラリア剤アルテミシニンの前駆物質であるアモルファ-4,11-ジエンなどのセスキテルペンの合成がもたらされる(Martin et al., 2003)。
【0005】
その経済や医薬における可能性から、多くの研究が、Saccharomyces cerevisiaeなどの異種系におけるイソプレノイドの生成を扱っている(Liao et al., 2016及びVickers et al., 2017における考察)。1997年にイソプレノイド生成のため酵母MVA経路の可能性をクローズアップすることから始まって、Donald等は、酵母におけるHMGRの触媒ドメインの過剰発現を報告し、トリテルペンスクアレンの増大をもたらした。MVA経路のディレギュレートにおけるさらなる報告は、ノックアウトされるとメバロナート及びトリテルペン蓄積を誘発する一連の座位を提供するCRISPR/Cas9実験においてなされた(Jakociunas et al., 2015; Ahrend et al., 2017)。この一連のものは、MVA経路及びステロール生合成における遺伝子を抑制すると報告される転写調節因子ROX1を含むものであった(Henry et al., 2002; Montanes et al., 2011; Ozaydin et al., 2013; Jakociunas et al., 2015)。さらに、いくつかの研究では、内在性だが競合性のイソプレノイド経路(例えば、ステロール生合成vs.5員環トリテルペン生合成)に関与する遺伝子を調節して代謝の流れを正確かつ所望するように変更するために、特定のプロモーターを酵母ゲノムに挿入することについて報告している。
【0006】
ゆえに、Kirby等は、β-アミリン生成のため、後期ステロール生合成の第1段階を触媒する酵母ラノステロール合成酵素(ERG7)の発現をダウンレギュレートするようにメチオニン感応性MET3プロモーターを使用した。さらに、MET3プロモーターは、酵母スクアレン合成酵素遺伝子(ERG9)の抑制のため、アルテミシニン生成に使用された(Ro et al., 2006; Westfall et al., 2012)。
【0007】
特許文献1は、酵母株、並びに酵母における5員環トリテルペン及び/又はトリテルペノイドの微生物における生成の方法を記載している。特に、該改変酵母株は、オキシドスクアレン環化酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピー、NADPH-シトクロムP450還元酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピー、及び/又はシトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーを含む5員環トリテルペノイドの生成のためのものである。
【0008】
特許文献2は、ステロール生合成酵素の発現において1つ又は2つの欠損を有する突然変異体酵母においてHMG-CoA-還元酵素活性を有するポリペプチドをコードする構造遺伝子の発現レベルを増大させることを含む、酵母におけるスクアレン及び特定のステロールの蓄積を増大させる方法を記載している。
【0009】
5員環トリテルペン及びトリテルペノイドは、産業上及び医薬上の用途に大きな可能性を示すものである(Sheng and Sun, 2010)。しかしながら、植物内での全体量が少なく、異種宿主における生物工学的生成は、対応する酵素の低効率、又は翻訳後修飾の欠如などのいくつかの制約に直面することから、抽出がしばしば経済的に実行不可能であることが分かっている(Moses and Pollier, 2013; Arendt et al., 2016)。
【0010】
したがって、植物からの有機的抽出及びその後の精製によるオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの生成及び抽出は可能であるが、これは、現在まで、植物におけるトリテルペンの濃度及び組成が広い範囲で変化し得ることから、純粋な最終生成物を得るための高いコスト、及び最終生成物の品質の大きなばらつきにつながっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2017/0130233号明細書
【文献】米国特許第5,460,948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、コストを抑えるとともに確実である、高生成量のオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドを得るための方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明において、発明者等は、コスト効率がよく、確実で、高純度のオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの生成を可能にする、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドを生成するための、新しい異種プラットフォームを設計した。
【0014】
本発明は、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有するタンパク質であってメバロン酸を生成可能であるタンパク質を過剰発現するように、
及び、
配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むタンパク質であって、アセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるタンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、配列番号3のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号3と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であって、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAを生成可能であるタンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明における方法は、ROX1(配列番号25)、BTS1(配列番号54)、YPL062W(配列番号55)、DOS2(配列番号56)、YER134C(配列番号57)、VBA5(配列番号58)、YNR063W(配列番号59)、YJL064W(配列番号60)、及びYGR259C(配列番号61)からなる群より選択される少なくとも1つの座位をノックアウトするように宿主細胞を改変することをさらに含む。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明における方法は、配列番号9に示すアミノ酸配列を含むラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制する、又は、配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってラノステロールを生成可能であるタンパク質を抑制するように、宿主細胞を改変することをさらに含む。好ましくは、該抑制は、CTR3-プロモーターの挿入、及び/又は硫酸銅CuSOの添加によって行われる。
【0018】
この好ましい実施形態において、硫酸銅の添加量は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、又は375mMのCuSO、好ましくは少なくとも150mMのCuSOであってもよい。
【0019】
本発明の方法において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質は、ルペオール合成酵素、好ましくはTaraxacum koksaghyzのルペオール合成酵素、オキシドスクアレン環化酵素(OSC)、好ましくはTaraxacum koksaghyzのオキシドスクアレン環化酵素TkOSC1-6、β-アミリン合成酵素、好ましくはArabidopsis thaliana又はArtemisia annuaのβ-アミリン合成酵素、テルペン環化酵素、好ましくはGlycyrrhiza uralensis のテルペン環化酵素(GuLUP1)からなる群より選択することができる。
【0020】
本発明の方法において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、植物から抽出される。
【0021】
本発明の方法のさらなる実施形態において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの精製は、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップによって、好ましくは第1のクロマトグラフィーステップにC18カラム、第2のクロマトグラフィーステップにビフェニルカラムを使用して、行われる。
【0022】
本発明の方法の一実施形態において、2つ以上のオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの生成量を増大することができる。
【0023】
本発明は、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための組換え宿主細胞をさらに提供し、該宿主細胞は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有するタンパク質であってメバロン酸を生成可能であるタンパク質を過剰発現するように、並びに、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むタンパク質であって、アセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるタンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0024】
本発明において、宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Nicotiana benthamiana、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Pichia stipitis、Candida albicans、Candida utilis、及びBY2細胞からなる群より選択することができる。
【0025】
宿主細胞は、配列番号3を含む、又は、配列番号3と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であって3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAを生成可能であるタンパク質を過剰発現するように、さらに改変することができる。
【0026】
本発明の宿主細胞は、好ましくはCTR3-プロモーターの挿入及び/又は硫酸銅CuSOの添加によって、配列番号9に示すアミノ酸配列を含むラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制する、又は、配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列であってラノステロールを生成可能であるタンパク質を抑制するように、さらに改変することができる。好ましくは、本発明において抑制されるラノステロール合成酵素(ERG7)は、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Pichia stipitis、Candida albicans、又はCandida utilisからのものである。
【0027】
宿主細胞は、ROX1(配列番号25)、BTS1(配列番号54)、YPL062W(配列番号55)、DOS2(配列番号56)、YER134C(配列番号57)、VBA5(配列番号58)、YNR063W(配列番号59)、YJL064W(配列番号60)、及びYGR259C(配列番号61)からなる群より選択される少なくとも1つの座位をノックアウトするようにさらに改変されることが好ましい。
【0028】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つが、オキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレン、ステロール、好ましくはシグマステロール又はシトステロール、トリテルペン、好ましくは5員環トリテルペン、より好ましくは、限定されないがlup-19(21)-en-3-ol及びlup-20(29)-en-3-olなどのルペオール、β-アミリン、α-アミリン、タラキサステロール、トリテルペンアセテート、アシル化トリテルペン、サポニン、サポゲニン、lup-19(21)-en-3-one、lup-20(29)-en-3-one、タラキセロール、タラキセロン、α-アミロン、β-アミロン、タラキサステロン、フリーデリン、ベツリン、ベツリン酸、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、ゲスターゲン、カルデノリド、ブファジエノリド(bufadienolide)、ステロイドアルカロイド、サポニン、サポゲニン、又はアシル化トリテルペンであることが、本発明の宿主細胞に好ましい。
【0029】
また、本発明は、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための本発明の宿主細胞の使用にある。
【0030】
このように、本発明者らは、メバロナート経路遺伝子及び/又はタンパク質の過剰発現を含む、組合せの改変方法を見いだした。さらに、一実施形態において、本発明の方法は、負の調節因子のノックアウト及びメバロナート経路の競合性経路のノックダウンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素のアミノ酸配列を示す。
図2図2は、本発明の一実施形態において使用されるPerg7::PCTR3-コンストラクト(配列番号10)及びrox1::PGal1-tHMGR;PGAL19-ERG13-コンストラクト(配列番号11)を概略的に示す。
図3図3は、Perg7::PCTR3-コンストラクトのヌクレオチド配列(配列番号10)を示す。
図4図4は、rox1::PGal1-tHMGR;PGAL10-ERG13-コンストラクトのヌクレオチド配列(配列番号11)を示す。
図5図5は、Taraxacum koksaghyzの酵素LUP(TkLUP)のヌクレオチド配列(配列番号12)を示す。
図6図6は、TkLUP発現酵母におけるトリテルペン蓄積を示す。図6aは、GAL1プロモーター(GAL1-P)及びCYC1ターミネーター(CYC1-T)の制御下のTkLUPコード配列(配列番号12)の概略図を示す。図6bは、TkLUPコード配列(配列番号12)を有する酵母細胞のGC-MSスペクトルにおける2つのさらなるピークを示し(矢印; m/z = 218)、これらが対応する標準物質と同じ保持時間を有することから、おそらくβ-アミリン(保持時間17.95 min)及びルペオール(保持時間18.25 min)を示す。図6cは、TkLUPコード配列(配列番号12)を有する酵母が0.16mg/gCDWの推定ルペオールを蓄積する一方、β-アミリンピークの定量はできなかったことを示す。非形質転換(WT)及びpAG424GAL1-ccdb形質転換(ベクターコントロール)CEN.PK2-1C細胞をコントロールとした。n=3の個々の形質転換体から、標準偏差を計算した。CDW=細胞乾燥重量。
図7図7は、ROX1(配列番号25)の欠失及びMVA経路遺伝子の過剰発現後の、スクアレン及びルペオールの蓄積を示す。図7aは、ROX1(配列番号25)の欠失並びにtHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)の過剰発現のためのコンストラクトの概略図を示す。tHMGR及びERG13のコード配列を、GAL1/GAL10双方向性プロモーター(GAL1-P; GAL10-P)の制御下でクローニングした。コンストラクトを酵母ゲノムに組み込むときウラシル栄養要求性を補完するため、KlUra3を使用した。組込みの座位を、コンストラクトに隣接する(ターゲットアップ、ターゲットダウン)とともにゲノムターゲット部位(ROX1, 配列番号25)に相同性の配列によって定めた。NotI直鎖化コンストラクトの形質転換は、相同組換えによりROX1(配列番号25)のノックアウトをもたらす。図7b及び図7cは、TkLUP(配列番号12)コード配列に加え、組み込みコンストラクトを有する酵母株(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 TkLUP)が、TkLUP含有プラスミドのみを有する酵母(TkLUP; p = 0,0137)と対照的にルペオール前駆物質スクアレンの蓄積の増加を示したことを示す。空のベクターpAG424GALl_ccdBを含有する細胞をコントロールとした(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13ベクターコントロール)。さらに、ROX1(配列番号25)の欠失並びにtHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)の過剰発現により、ルペオールの蓄積が16.5倍増加した(p=0.00893)。図7dは同定したルペオールピークのMSスペクトルを示し、図7eは測定したルペオール外部標準物質のMSスペクトルを示す。n=3の個々の形質転換体から、標準偏差を計算した。CDW=細胞乾燥重量、*=p≦0.05、**=p≦0.01。
図8図8は、ERG7(配列番号20)の抑制が2,3-オキシドスクアレン蓄積をもたらすことを示す。図8aは、銅感応性CTR3プロモーター(CTR3-P)(配列番号42)の組込みためのコンストラクトの概略図である。プロモーターを酵母ゲノムに導入するため、ロイシン栄養要求性をKlLeu2遺伝子で補完した。ステロール生合成を抑制するため内在性ERG7コード配列(配列番号20)の前のCTR3プロモーター(配列番号42)をターゲットにするように、コンストラクトを、ERG7プロモーター(ターゲットアップ;ERG7-P)及びERG7コード配列(ターゲットダウン;ERG7、配列番号42)に相同性の配列に隣接させた。図8b及び図8cは、CTR3プロモーターコンストラクト(配列番号42)を有する酵母株がCuSOに暴露しなくてもスクアレンレベルの低下(図8b)及び2,3-オキシドスクアレン(図8c)の蓄積を示すことを表す(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 PERG7Δ::PCTR3, 0μM CuSO4)。この効果は、150μMのCuSOを増殖培地に添加することで有意に高めることができた(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 PERG7Δ::PCTR3, 150μM CuSO4; スクアレン低下ではp=0.00613; 2,3-オキシドスクアレンの蓄積ではp=0.00507)。2.5倍の銅濃度で添加することで、スクアレンレベルのさらなる有意な低下、及び2,3-オキシドスクアレン含有量のさらなる増加を示した(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 PERG7Δ::PCTR3, 375μM CuSO4)。n=3の個々の形質転換体から、標準偏差を計算した。CDW=細胞乾燥重量、*=p≦0.05、**=p≦0.001、***=p≦0.001。
図9図9は、ERG7(配列番号20)の抑制がルペオール蓄積の増加(図9e)及びステロールレベルの低下(図9c及び図9d)をもたらすことを示す。2,3-オキシドスクアレンの蓄積(図9b)及びスクアレンの減少(図9a)は、その親株と比較して(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 TkLUP; スクアレンではp = 0.04422)、増殖時に150μMのCuSOに暴露させた後、rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13及びPERG7Δ::PCTR3修飾に加えTkLUP配列(配列番号12)を有する酵母株において観察することができた(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 PERG7Δ::PCTR3 TkLUP)。予期されるように、ステロール含有量は減少し、ステロール生合成の典型としてのラノステロール及びエルゴステロールの量によって示される。ERG7(配列番号20)の抑制は、ラノステロールの6.5倍の減少(p = 0.02384)をもたらし、エルゴステロール含有量の3.9倍の減少をもたらした(p = 0.00941)。ステロール生合成の抑制により、ルペオール生成が7.6倍増加し(p = 0.00637)、ステロール生合成からルペオール生成へと代謝の流れを変更したことを示唆した。n=3の個々の形質転換体から、標準偏差を計算した。CDW=細胞乾燥重量、*=p≦0.05、**=p≦0.001。
図10図10は、ERG7(配列番号20)の抑制後の酵母におけるβ-アミリンの同定を示す。図10aは、改変酵母株の同定したβ-アミリンピークのMSスペクトルを示し(rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13 Perg7Δ::PCTR3 TkLUP)、図10bは、測定したβ-アミリン外部標準物質のMSスペクトルを示す。
図11図11は、メバロナート経路の概略抜粋を示す。
図12図12はHPLCによるトリテルペン精製を示す。単一のトリテルペンをUltraC18カラム(図12a)、その後Ultraビフェニルカラム(図12b)を使用して分離した。図12cは、それぞれフラクション4(F4)及び5(F5)から精製された、β-アミリン及びタラキサステロール、並びにそれらのケトン誘導体のMSスペクトルを示す(実施例7を参照)。図12c~図12fは、それぞれF4及びF5から精製された、新しく同定したlup-19(21)-en-3-ol、及びそのケトン誘導体lup-19(21)-en-3-oneの分子構造及びMSスペクトルを示す(実施例7を参照)。
図13図13は、Nicotiana tabacumのシクロアルテノール合成酵素様(配列番号21、NP_001311688.1)、Schizosaccharomyces pombeのラノステロール合成酵素(配列番号63、AAA92502.1)、Pichia pastorisのラノステロール合成酵素(配列番号64、CCA38589.2)、Kluyveromyces lactisのラノステロール合成酵素(配列番号65、CAH02375.1)、Kluyveromyces marxianusのラノステロール合成酵素(配列番号66、BAP71121.1)、Candida albicans SC5314のラノステロール合成酵素(配列番号67、XP_722612.2)、及びPichia stipitisのラノステロール合成酵素(オキシドスクアレン-ラノステロール環化酵素)(2,3-エポキシスクアレン-ラノステロール環化酵素)(OSC)(配列番号62、XP_001384446.2)の配列アライメントを示す。このアライメントの条件は以下にさらに記載される。
図14図14は、図13のアライメントから作成した、それぞれのバーセント同一性のマトリックスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0033】
本発明において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つが、オキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレン、ステロール、好ましくはシグマステロール又はシトステロール、トリテルペン、好ましくは5員環トリテルペン、より好ましくは、限定されないがlup-19(21)-en-3-ol及びlup-20(29)-en-3-olなどのルペオール、β-アミリン、α-アミリン、タラキサステロール、トリテルペンアセテート、アシル化トリテルペン、サポニン、サポゲニン、lup-19(21)-en-3-one、lup-20(29)-en-3-one、タラキセロール、タラキセロン、α-アミロン、β-アミロン、タラキサステロン、フリーデリン、ベツリン、ベツリン酸、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、ゲスターゲン、カルデノリド、ブファジエノリド(bufadienolide)、ステロイドアルカロイド、サポニン、サポゲニン、又はアシル化トリテルペンである。
【0034】
これは、一実施形態において、本発明が宿主細胞において少なくとも1つのオキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
少なくとも1つのオキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレンを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
少なくとも1つのオキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレンを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、少なくとも1つのオキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレンを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、少なくとも1つのオキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させることを含むということを意味する。
【0035】
これは、一実施形態において、本発明が宿主細胞において2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
2,3-オキシドスクアレンを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
2,3-オキシドスクアレンを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、2,3-オキシドスクアレンを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させることを含むということを意味する。
【0036】
一実施形態において、本発明は、宿主細胞においてルペオールの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
ルペオールを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
ルペオールを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、ルペオールを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、ルペオールの生成量を増大させることを含む。
【0037】
これは、一実施形態において、本発明が宿主細胞においてスクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つの生成量を増大させることを含むことを意味する。
【0038】
本発明は、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含み、
該オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、グリチルレチン酸(glycyrrhetinic acid)ではない。グリチルレチン酸は、グリチルレチン酸(glycyrrhetic acid)及びエノキソロンとしても知られ、グリチルリチン酸の加水分解から得られるβ-アミリンタイプの5員環トリテルペノイド誘導体である。
【0039】
イソプレノイドとも呼ばれることのあるテルペノイドは、テルペンと類似する、五炭素イソプレン単位由来の、大きく多様な自然起源有機化合物群である。
【0040】
植物のテルペノイドは、その芳香のある性質のため広範に使用されており、伝統的なハーブ療法に用いられている。テルペノイドは、ユーカリの芳香、シナモン、クローブ、及びジンジャーの風味、ヒマワリの黄色、トマトの赤色に寄与している。既知のテルペノイドは、シトラール、メントール、カンファー、植物Salvia divinorumのサルビノリンA、カンナビスで見つかったカンナビノイド、Ginkgo bilobaで見つかったギンコライド及びビロバライド、並びにターメリック及びマスタードシードで見つかったクルクミノイドを含む。
【0041】
動物のステロイド及びステロールは、テルペノイド前駆物質から生物学的に生成される。テルペノイドは、例えばその細胞膜への付着性を向上させるため、タンパク質に付加されることがあり、これはイソプレニル化として知られる。
【0042】
さらに、トリテルペノイドは、例えば、これらに限らないが、サポニン、サポゲニン、アシル化トリテルペン、α-アミロン、β-アミロン、タラキサステロンなどのトリテルペンのケト誘導体、並びにベツリン酸、グリチルレチン酸及びボスウェル酸(boswellic acid)などのカルボン酸誘導体である。
【0043】
トリテルペンは、分子式C3048を伴う3つのテルペン単位から構成される化学物質群である。また、これらは、6つのイソプレン単位からなるとも考えられている。トリテルペンは、直鎖状、4員環、及び5員環トリテルペンに細区分される。動物、植物、及び真菌はすべてトリテルペンを生成するが、おそらく最も重要な例はスクアレンであり、これはスクアレンがほぼすべてのステロイドの基礎を形成するためである。トリテルペンのさらなる例は、所定のステロイド及び強心配糖体である。本発明におけるさらなるトリテルペンは、例えば、これらに限らないが、ルペオール、lup-19(21)-en-3-ol、lup-20(29)-en-3-ol、β-アミリン、α-アミリン、及びタラキサステロールである。さらに、例えば、トリテルペノイドサポニンは、この群の化学物質のサポニン群に属するトリテルペンである。
【0044】
オキシドスクアレンは、例えば、これに限らないが、2,3-オキシドスクアレンである。
【0045】
本発明において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることは、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現しない、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、宿主細胞との比較を意味し、該宿主細胞は、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現しない。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の方法は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現するように、宿主細胞を改変することを含む。該3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素は、tHMGRと略記することができる。またこれは、酵素HMGRの触媒ドメインとしても知られる。好ましい実施形態において、酵素tHMGRは配列番号1に示すアミノ酸配列からなる。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質が3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAを生成可能であるという条件で、配列番号3のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号3と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質がアセトアセチル-CoAを生成可能であるという条件で、配列番号2のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号2と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質がメバロナート-5-ホスフェートを生成可能であるという条件で、配列番号4のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号4と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質がメバロナート-5-ピロホスフェートを生成可能であるという条件で、配列番号5のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号5と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質がイソペンテニル-5-ピロホスフェートを生成可能であるという条件で、配列番号6のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号6と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質がファルネシル-5-ピロホスフェートを生成可能であるという条件で、配列番号7のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号7と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0053】
好ましい実施形態において、本発明における方法では、宿主細胞は、タンパク質がジメチルアリル-5-ピロホスフェートを生成可能であるという条件で、配列番号8のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号8と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0054】
また、本発明は、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0055】
配列番号1:
MVLTNKTVISGSKVKSLSSAQSSSSGPSSSSEEDDSRDIESLDKKIRPLEELEALLSSGNTKQLKNKEVAALVIHGKLPLYALEKKLGDTTRAVAVRRKALSILAEAPVLASDRLPYKNYDYDRVFGACCENVIGYMPLPVGVIGPLVIDGTSYHIPMATTEGCLVASAMRGCKAINAGGGATTVLTKDGMTRGPVVRFPTLKRSGACKIWLDSEEGQNAIKKAFNSTSRFARLQHIQTCLAGDLLFMRFRTTTGDAMGMNMISKGVEYSLKQMVEEYGWEDMEVVSVSGNYCTDKKPAAINWIEGRGKSVVAEATIPGDVVRKVLKSDVSALVELNIAKNLVGSAMAGSVGGFNAHAANLVTAVFLALGQDPAQNVESSNCITLMKEVDGDLRISVSMPSIEVGTIGGGTVLEPQGAMLDLLGVRGPHATAPGTNARQLARIVACAVLAGELSLCAALAAGHLVQSHMTHNRKPAEPTKPNNLDATDINRLKDGSVTCIKS
【0056】
3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル補酵素A還元酵素は、コレステロール及びその他のイソプレノイドを生成する代謝経路であるメバロナート経路の律速酵素である。通常、哺乳動物細胞では、この酵素は、LDL受容体を介した低密度リポタンパク質(LDL)の内部移行及び分解に由来するコレステロールや、コレステロールの酸化種によって抑制される。還元酵素の競合性阻害剤は、肝臓においてLDL受容体の発現を誘発し、これが血漿LDLの異化作用を増大させ、アテローム性動脈硬化症の重要な決定因子であるコレステロールの血漿中濃度を低下させる。このように、この酵素は、まとめてスタチンとして知られる広く入手可能なコレステロール降下剤のターゲットとなっている。
【0057】
本発明において、過剰発現は、当業者に知られるいずれかの方法において行うことができる。一般に、これは、遺伝子の転写/翻訳を増加させることで、例えば遺伝子のコピー数を増加させる、又は遺伝子発現に関連する調節配列若しくは部位を変化させる若しくは修飾することで、行うことができる。例えば、過剰発現は、各タンパク質をコードするポリヌクレオチドの1つ以上のコピー、又はその各調節配列(例えばプロモーター)に作動可能に連結された機能的相同体を導入することによって行うことができる。例えば、遺伝子は、高い発現レベルを得るために、強力な恒常的プロモーター及び/又は強力な遍在的プロモーターに作動可能に連結することができる。そうしたプロモーターは内在性プロモーター又は組換えプロモーターであり得る。あるいは、発現が恒常的となるように、調節配列を除くこともできる。所与の遺伝子の天然プロモーターを、該遺伝子の発現を増大させる又は該遺伝子の恒常的発現をもたらす異種プロモーターと置換することができる。例えば、tHMGR(配列番号32)、及び/又は配列番号1のアミノ酸配列を含む各タンパク質tHMGRは、改変前の、同じ条件下で培養した宿主細胞と比較して本発明における宿主細胞によって、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%を超えて、又は300%を超えて過剰発現することができる。例えば、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つのタンパク質は、改変前の、同じ条件下で培養した宿主細胞と比較して該宿主細胞によって、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%を超えて、又は300%を超えて過剰発現することができる。誘導的プロモーターの使用は、さらに宿主細胞培養において発現の増加を可能にする。また、さらに、過剰発現は、例えば、特定の遺伝子の染色体位置を修飾すること、リボソーム結合部位若しくは転写ターミネーターなどの特定の遺伝子に隣接する核酸配列を変化させること、遺伝子の転写及び/若しくは遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写アクチベーターなど)を修飾すること、又は、例えば、リプレッサータンパク質の発現をブロックするようにアンチセンス核酸分子を使用すること、若しくは、通常過剰発現させたい遺伝子の発現を抑制する転写因子のための遺伝子を欠失若しくは突然変異させることを含むが、これらに限らない、当技術分野における慣例的な特定の遺伝子発現をディレギュレートする他の任意の従来の手段によっても行うことができる。また、mRNAの寿命を延ばすことも、発現レベルを向上させ得る。例えば、所定のターミネーター領域は、mRNAの半減期を延ばすために使用することができる(Yamanishi et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. (2011) 75:2234 and US 2013/0244243)。複数の遺伝子コピーを含む場合、遺伝子は、種々のコピー数のプラスミドに配置される、又は染色体に組み込まれ増幅させることができる。宿主細胞が過剰発現のための各タンパク質をコードする遺伝子を含まない場合、発現のために遺伝子を宿主細胞に導入することができる。この場合、「過剰発現」とは、当業者に知られる任意の方法を使用して遺伝子産物を発現することを意味する。
【0058】
本発明において、「ERG10」は、ステロール及び非ステロールイソプレノイドの生合成に必要とされる中間体である、メバロナートの生合成におけるアセトアセチル-CoAの形成を触媒する、タンパク質のアセチル-CoA-アセチルトランスフェラーゼ(アセトアセチル-CoAチオラーゼ、ERG10とも呼ばれる)をコードする遺伝子(配列番号2)である。つまり、これは、一方のアセチル-CoA分子から他方へ、アセチル基を転移させて、アセトアセチル-CoAを形成するとともに、メバロナート生合成の第1段階に関与する、サイトゾル酵素をコードする。さらに、「ERG10」のヌクレオチド配列は、配列番号13として本明細書に記載される。
【0059】
本発明において、「ERG13」という用語は、アセチル-CoAのアセトアセチル-CoAとの縮合を触媒して、HMG-CoA還元酵素の基質である3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)を形成する、酵素3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)合成酵素(ERG13)をコードする遺伝子(配列番号3)を意味する。このように、これはメバロナート生合成の第2段階に関与する。さらに、「ERG13」のヌクレオチド配列は、配列番号14として本明細書に記載される。
【0060】
本発明の文脈において、「ERG12」という用語は、メバロン酸のATPとの反応を触媒して、メバロナート-5-ホスフェートを生成する、タンパク質のメバロナートキナーゼをコードする遺伝子(ERG12)(配列番号4)を意味する。さらに、「ERG12」のヌクレオチド配列は、配列番号15として本明細書に記載される。
【0061】
本発明において、「ERG8」という用語は、エルゴステロールを含むイソプレノイド及びステロールのメバロナートからの生合成において作用する必須のサイトゾル酵素である、タンパク質のホスホメバロナートキナーゼをコードする遺伝子(ERG8)(配列番号5)を意味する。このタンパク質は、メバロナート-5-ホスフェートのATPとの反応を触媒して、メバロナート-5-ピロホスフェートを生成する。さらに、「ERG8」のヌクレオチド配列は、配列番号16として本明細書に記載される。
【0062】
本発明の文脈において、「ERG19」という用語は、エルゴステロールを含むイソプレノイド及びステロールの生合成に関与する必須の酵素であるとともに、ホモ二量体として作用する、タンパク質のメバロナート-5-ピロホスフェートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子(ERG19)(配列番号6)を意味する。メバロナート-5-ピロホスフェートデカルボキシラーゼによって触媒される反応は、イソペンテニル-5-ピロホスフェートを形成する。また、「ERG19」遺伝子は、「mvd1」という名称でも知られる。さらに、「ERG19」のヌクレオチド配列は、配列番号17として本明細書に記載される。
【0063】
本発明において、「ERG20」という用語は、タンパク質のファルネシルピロホスフェート合成酵素をコードする遺伝子(ERG20)(配列番号7)を意味する。この酵素は、ジメチルアリルトランストランスフェラーゼ活性とゲラニルトランストランスフェラーゼ活性との両方を有するとともに、イソプレノイド及びステロール生合成のためにC15ファルネシルピロホスフェート単位の形成を触媒する。また、該「ERG20」遺伝子は、「bot3」、「fds1」、及び「fpp1」という名称でも知られる。さらに、「ERG20」のヌクレオチド配列は、配列番号18として本明細書に記載される。
【0064】
本発明において使用するとき「IDI1」という用語は、比較的反応性の低いイソペンテニルピロホスフェート(IPP)の、より反応性の高い親電子性ジメチルアリルピロホスフェート(DMAPP)への変換を触媒するイソメラーゼである、イソペンテニルピロホスフェートイソメラーゼをコードする遺伝子(IDI1)(配列番号8)である。この異性化反応は、メバロナート経路を介したイソプレノイドの生合成における重要な段階である。さらに、「IDI1」のヌクレオチド配列は、配列番号19として本明細書に記載される。
【0065】
本発明において、遺伝子は本明細書において常に大文字で記されている一方、突然変異/ノックアウトアレルは小文字で記されている。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、該方法は、配列番号1に示される3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素のアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有するタンパク質を過剰発現するように宿主細胞を改変することを含む。該タンパク質はメバロン酸を生成することができる。
【0067】
本発明の文脈で使用するとき「配列同一性」又は「同一性%」"は、標準アルゴリズムを用いてアライメントした少なくとも2つのポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列間の残基整合パーセンテージを指す。こうしたアルゴリズムは、2つの配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で、比較される配列にギャップを挿入してもよく、ゆえに、2つの配列のより意味のある比較をすることができる。本発明の目的のため、2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の配列同一性は、クラスタルオメガ(Clustal Omega(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/))のデフォルト設定を用いて判定することができる。入力パラメータは、program: clustalo; version 1.2.4; output guide tree: false; output distance matrix: false; dealign input sequences: false; mBed-like clustering guide tree: true; mBed-like clustering iteration: true; number of iterations: 0; maximum guide tree iterations: -1; maximum HMM iterations: -1; output alignment format: clustal_num; output order: aligned; sequence type: proteinであった。
【0068】
したがって、本発明のさらなる態様において、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0069】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることは、本明細書において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、及び、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現しない、宿主細胞と比較することを意味する。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、該方法は、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように宿主細胞を改変することを含む。
【0071】
これは、本発明のさらなる態様が、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含むことを意味する。
【0072】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることは、この実施形態において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現しない、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、及び、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現しない、宿主細胞との比較を意味する。
【0073】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、宿主細胞においてオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示される3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素のアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有するタンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0074】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることは、この特定の実施形態において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示される3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素のアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、及び、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現しない、宿主細胞との比較における増大を意味する。
【0075】
本発明における方法の好ましい実施形態において、宿主細胞は、タンパク質が3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoAを生成可能であるという条件で、配列番号3のアミノ酸配列を含む、又は、配列番号3と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように改変される。
【0076】
本発明における方法の好ましい実施形態において、該方法は、ROX1(配列番号25)、BTS1(配列番号54)、YPL062W(配列番号55)、DOS2(配列番号56)、YER134C(配列番号57)、VBA5(配列番号58)、YNR063W(配列番号59)、YJL064W(配列番号60)、及びYGR259C(配列番号61)からなる群より選択される少なくとも1つの座位をノックアウトするように宿主細胞を改変することをさらに含む。
【0077】
本発明における方法の好ましい実施形態において、該方法は、ROX1(配列番号25)、YPL062W(配列番号55)、DOS2(配列番号56)、YER134C(配列番号57)、VBA5(配列番号58)、YNR063W(配列番号59)、YJL064W(配列番号60)、及びYGR259C(配列番号61)からなる群より選択される少なくとも1つの座位をノックアウトするように宿主細胞を改変することをさらに含む。
【0078】
特に、該方法がROX1(配列番号25)座位をノックアウトするように宿主細胞を改変することをさらに含むことがさらにより好ましい。
【0079】
本発明における特に好ましい方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
及び、
ROX1(配列番号25)座位をノックアウトするように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0080】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることは、この特定の実施形態において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現しない、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、宿主細胞との比較における増大を意味し、該宿主細胞は、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現せず、並びに、該宿主細胞は、ROX1(配列番号25)座位をノックアウトしない。
【0081】
また本発明は、一実施形態において、宿主細胞においてスクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
及び、
ROX1(配列番号25)座位をノックアウトするように、宿主細胞を改変すること、
スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、スクアレン、ラノステロール、又はエルゴステロールの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0082】
スクアレン、ラノステロール、及び/又はエルゴステロールの少なくとも1つの生成量を増大させることは、この特定の実施形態において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現しない、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、宿主細胞との比較における増大を意味し、該宿主細胞は、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現せず、並びに、該宿主細胞は、ROX1(配列番号25)座位をノックアウトしない。
【0083】
好ましい実施形態において、本発明における方法は、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有する配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するように、宿主細胞をさらに改変することを含む。ラノステロール合成酵素の各ヌクレオチド配列は、配列番号20に示すように本明細書においてさらに示される。好ましくは、ラノステロール合成酵素(ERG7)をコードするポリヌクレオチドの該抑制、又はタンパク質ラノステロール合成酵素自体の抑制は、CTR3-プロモーター(配列番号42)の挿入、及び/又は硫酸銅CuSOの添加によって行われる。
【0084】
この好ましい実施形態において、ラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するための硫酸銅の添加量は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、又は375mMのCuSO、好ましくは少なくとも150mMのCuSOであってもよい。
【0085】
ラノステロール合成酵素は、(S)-2,3-オキシドスクアレンをプロトステロールカチオンに、そしてラノステロールに変換するオキシドスクアレン環化酵素(OSC)酵素である。ラノステロールは、コレステロール生合成における重要な4環中間体である。ヒトにおいて、ラノステロール合成酵素は、LSS遺伝子によってコードされる。
【0086】
好ましくは、本発明における抑制されるラノステロール合成酵素(又は植物における同種のシクロアルテノール合成酵素)は、Saccharomyces cerevisiae、Nicotiana benthamiana、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Pichia stipitis、Candida albicans、Candida utilis、及びBY2細胞からのものである。
【0087】
好ましい実施形態において、本発明における方法は、配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列と少なくとも44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むシクロアルテノール合成酵素を抑制するように、宿主細胞をさらに改変することを含む。シクロアルテノール合成酵素のヌクレオチド配列は、配列番号22に示すように本明細書においてにさらに示される。
【0088】
つまり、本発明における特に好ましい方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
及び、
ROX1(配列番号25)座位をノックアウトするように、宿主細胞を改変すること、
及び、
タンパク質がラノステロールを生成可能であるという条件で、配列番号9に示すアミノ酸配列を有する、又は配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0089】
メバロナート経路のタンパク質の生成量を増大させることは、この特定の実施形態において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現しない、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、及び、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現しない、及び、ROX1(配列番号25)座位をノックアウトしない、及び、タンパク質がラノステロールを生成可能であるという条件で、配列番号9に示すアミノ酸配列を有する、又は配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制しない、宿主細胞との比較における増大を意味する。
【0090】
これは、一実施形態において、本発明が宿主細胞において2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
及び、
ROX1(配列番号25)座位をノックアウトするように、宿主細胞を改変すること、
及び、
タンパク質がラノステロールを生成可能であるという条件で、配列番号9に示すアミノ酸配列を有する、又は配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するように、宿主細胞を改変すること、
2,3-オキシドスクアレンを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
2,3-オキシドスクアレンを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、2,3-オキシドスクアレンを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させることを含むということを意味する。
【0091】
2,3-オキシドスクアレンの生成量を増大させることは、この特定の実施形態において、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現しない、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現しない、及び、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現しない、及び、ROX1(配列番号25)座位をノックアウトしない、及び、タンパク質がラノステロールを生成可能であるという条件で、配列番号9に示すアミノ酸配列を有する、又は配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制しない、宿主細胞との比較における増大を意味する。
【0092】
本発明の方法において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つをコードする少なくとも1つの異種タンパク質は、ルペオール合成酵素、好ましくはTaraxacum koksaghyzのルペオール合成酵素、オキシドスクアレン環化酵素(OSC)、好ましくはTaraxacum koksaghyzのオキシドスクアレン環化酵素TkOSC1-6、β-アミリン合成酵素、好ましくはArabidopsis thaliana又はArtemisia annuaのβ-アミリン合成酵素、テルペン環化酵素、好ましくはGlycyrrhiza uralensis のテルペン環化酵素(GuLUP1)からなる群より選択することができる。
【0093】
本発明の方法において、該宿主細胞を培養することは、適切な条件下で行われる。そうした条件は、好ましくは、少なくとも50℃、60℃、70℃、80℃において、より好ましくは約80℃で、2~6分間、より好ましくは約5分間の、凍結乾燥酵母細胞のインキュベートである。好ましくは、メタノール中のKOH及び内部標準物質としてのコレステロールを各サンプルに添加する。オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの抽出には、好ましくはn-ヘキサンを添加する。例えば、その上部抽出相を好ましくは使用する。その後、サンプルを、例えば、アセトンに再溶解し、GC-MSを行う。GC-MS分析は、好ましくは、GC-MS-QP2010Ultraにおいて、温度勾配で行う。
【0094】
本発明の方法の他の実施形態において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、植物から抽出される。これは、本発明において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つが、本明細書に記載の各実施形態において、本明細書に記載されるような宿主細胞から抽出、あるいは植物から抽出することができることを意味する。
【0095】
他の実施形態において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、好ましくは第1のクロマトグラフィーステップにC18カラム、第2のクロマトグラフィーステップにビフェニルカラムを使用して、植物抽出物から精製される。
【0096】
また、本発明は、植物からのオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、植物を改変すること、
並びに、適切な条件下でそれぞれの植物抽出からオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを精製することで、
改変前の植物と比較して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成量を増大させることを含む。
【0097】
本明細書において、植物は、好ましくは、Taraxacum koksaghyz、Adiantum capillus-veneris、Ajuga reptans、Aquilegia coerulea、Arabidopsis thaliana、Arachis hypogaea、Artemisia annua、Aster sedifolius、Aster tataricus、Avena strigose、Barbarea vulgaris、Betula platyphylla、Bruguiera gymnorhiza、Bupleurum falcatum、Catharanthus roseus、Cicer arietinum、Centella asiatica、Chenopodium quinoa、Citrullus lanatus、Citrullus colocynthis、Costus speciosus、Cucumis melo、Cucumis sativus、Cucurbita pepo、Eleutherococcus senticosus、Euphorbia tirucalli、Gentiana straminea、Glycine max、Glycyrrhiza glabra、Glycyrrhiza uralensis、Ilex asprella、Kalanchoe daigremontiana、Kandelia candel、Laurencia dendroidea、Lens culinaris、Luffa cylindrica、Lotus japonicus、Maesa lanceolata、Malus domestica、Maytenus ilicifolia、Medicago truncatula、Nicotiana benthamiana、Nicotiana tabacum、Nigella sativa、Ocimum basilicum、Olea europaea、Oryza sativa、Phaeodactylum tricornutum、Phaseolus vulgaris、Pisum sativum、Platycodon grandifloras、Polygala tenuifolia、Polypodiodes niponica、Panax ginseng、Pisum sativum、Rhizophora stylosa、Ricinus communis、Saponaria vaccaria、Siraitia grosvenorii、Stevia rebaudiana、Solanum aculeatissimum、Solanum chacoense、Solanum tuberosum、Solanum lycopersicum、Sorghum bicolor、Taraxacum officinale、Taraxacum brevicorniculatum、Taraxacum mongolicum、Taraxacum platycarpum、Triticum aestivum、Vaccaria hispanica、Veratrum californicum、Vitis vinifera、Withania somnifera、及びZea maysからなる群より選択される。
【0098】
さらに、本発明の方法において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの精製は、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップによって行うことができる。この実施形態において、第1のクロマトグラフィーステップにはC18カラムを使用することが好ましい。この実施形態において、第2のクロマトグラフィーステップにはビフェニルカラムを使用することがさらに好ましい。第1のクロマトグラフィーステップにはC18カラムを、第2のクロマトグラフィーステップにはビフェニルカラムを使用することがさらにより好ましい。
【0099】
C18カラムは、固定相としてC18物質を使用するHPLC(高速液体クロマトグラフィー)カラムである。C18のHPLCカラムは、環境科学及び化学分析、並びに、化学物質混合物の個々の成分を分析するために、医薬や環境科学などの産業において使用される。C18固定相は、一方のC18のHPLCカラムと他方のものとで同一ではない。C18は、単に分子が18炭素原子を含むことを意味するので、分子における他の原子は変化して、大きく異なる物質をもたらし得る。しかしながら、当業者は、C18カラムを流れる化合物の特性を知っていると、所望の結果を得るためのカラムを選択することができる。C18カラムは、多様なサイズを有していてもよく、エンドキャップがあってもなくてもよく、種々の粒子径及び細孔径を有していてもよく、種々の疎水性の程度を有していてもよく、酸性成分及び/又は塩基性成分を分離する能力が異なっていてもよい。C18カラムを用いた本発明におけるそうしたクロマトグラフィーステップは、好ましくは、溶媒相としてメタノールを使用することで行われる。
【0100】
本発明において使用されるようなビフェニルカラムは、リガンドタイプとしてビフェニル残基を含む。ビフェニルカラムを用いたそうしたクロマトグラフィーステップは、好ましくは、溶媒相としてメタノール及び水の勾配を使用することで本発明において行われる。
【0101】
本発明の方法を適用することで、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの各少なくとも1つは、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%の高純度で得ることができる。
【0102】
本発明の方法において、さらに2つ以上のオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの生成量を増大することができる。
【0103】
「生成量」という用語は、例えば改変宿主細胞又は植物抽出物から採取した、それぞれ本明細書に記載されるオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの量を指し、増大した生成量は、宿主細胞によってオキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成又は分泌の量が増大したためであり得る。生成量は、メバロナート経路のタンパク質g/宿主細胞のバイオマスg(乾燥細胞重量又は湿細胞重量として測定)であってもよい。生成量の増大は、本発明において一般に、改変宿主細胞から得た生成量を、改変前の宿主細胞から、すなわち非改変宿主細胞から得た生成量と比較したとき、測定することができる。
【0104】
本発明は、さらなる実施形態において、本明細書に記載の任意の方法によって得ることができる抽出物、好ましくは植物抽出物をさらに提供する。
【0105】
本発明は、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための組換え宿主細胞をさらに提供し、該宿主細胞は、タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、及び、タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、改変される。
【0106】
本明細書で使用するとき、「宿主細胞」は、タンパク質発現、任意でタンパク質分泌が可能である細胞を指す。そうした宿主細胞は、本発明の方法に適用される。その目的で、宿主細胞がメバロナート経路に関与するポリペプチドを過剰発現又は低発現するように、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に存在させる又は宿主細胞に導入する。本発明によって提供される宿主細胞は、真核生物又は原核生物の宿主細胞であり得る。本発明における好ましい宿主細胞は、真核生物細胞である。より好ましいものは、非哺乳動物の真核生物宿主細胞である。また、好ましいものは、真菌宿主細胞又は酵母細胞である。当業者に理解されるように、原核生物細胞は膜結合性核を持たず、一方で真核生物細胞は膜結合性核を有する。真核生物細胞の例は、脊椎動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、線形動物細胞、昆虫細胞、幹細胞、真菌細胞、又は酵母細胞を含むが、これらに限らない。
【0107】
本明細書で使用するとき、「改変」宿主細胞とは、遺伝子工学を用いて、ヒトの介入によって操作した宿主細胞である。宿主細胞が所定のタンパク質を「過剰発現するように改変」されるとき、宿主細胞は、該宿主細胞が遺伝子発現を調節する能力を有する、好ましくは、メバロナート経路の遺伝子及び/若しくはタンパク質又はそれらの機能的相同体を過剰発現するように操作され、それにより所定のタンパク質の発現が操作前の同じ条件下の宿主細胞と比較して増加する。
【0108】
本発明の宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Nicotiana benthamiana、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Pichia stipitis、Candida albicans、Candida utilis、及びBY2細胞からなる群より選択される宿主細胞である。
【0109】
本発明の宿主細胞は、タンパク質が3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAを生成可能であるという条件で、配列番号3を含む、又は、配列番号3と少なくとも44%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、さらに改変することができる。
【0110】
本発明の宿主細胞は、タンパク質がラノステロールを生成可能であるという条件で、好ましくはCTR3-プロモーターの挿入及び/又は硫酸銅CuSOの添加によって、配列番号9に示すアミノ酸配列を含むラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制する、又は、配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を抑制するように、さらに改変することができる。好ましい実施形態において、パリンドロームTTTGCTC(A/G) ... (T/C)GAGCAAAを含む配列は、銅の転写調節に必要とされる(Yamaguchi-Iwai et al., 1997; Jamison McDaniels et al., 1999; Labbe et al., 1997)。
【0111】
宿主細胞は、ROX1(配列番号25)、BTS1(配列番号54)、YPL062W(配列番号55)、DOS2(配列番号56)、YER134C(配列番号57)、VBA5(配列番号58)、YNR063W(配列番号59)、YJL064W(配列番号60)、及びYGR259C(配列番号61)からなる群より選択される少なくとも1つの座位をノックアウトするようにさらに改変されることが好ましい。宿主細胞は、ROX1(配列番号25)、YPL062W(配列番号55)、DOS2(配列番号56)、YER134C(配列番号57)、VBA5(配列番号58)、YNR063W(配列番号59)、YJL064W(配列番号60)、及びYGR259C(配列番号61)からなる群より選択される少なくとも1つの座位をノックアウトするようにさらに改変されることがさらに好ましい。
【0112】
オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つが、オキシドスクアレン、好ましくは2,3-オキシドスクアレン、ステロール、好ましくはシグマステロール又はシトステロール、トリテルペン、好ましくは5員環トリテルペン、より好ましくは、限定されないがlup-19(21)-en-3-ol及びlup-20(29)-en-3-olなどのルペオール、β-アミリン、α-アミリン、タラキサステロール、トリテルペンアセテート、アシル化トリテルペン、サポニン、サポゲニン、lup-19(21)-en-3-one、lup-20(29)-en-3-one、タラキセロール、タラキセロン、α-アミロン、β-アミロン、タラキサステロン、フリーデリン、ベツリン、ベツリン酸、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、グルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、ゲスターゲン、カルデノリド、ブファジエノリド(bufadienolide)、ステロイドアルカロイド、サポニン、サポゲニン、又はアシル化トリテルペンであることが、本発明の宿主細胞に好ましい。本発明の宿主細胞の特定の一実施形態において、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つは、上述のようなグリチルレチン酸ではない。
【0113】
また、本発明の方法に関して本明細書に記載されるすべての実施形態は、宿主細胞に適用される実施形態であり、逆もまた同様である。
【0114】
また、本発明は、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを製造するための本発明の宿主細胞の使用にある。
【0115】
ラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するための、CuSOを介した転写抑制のため、CTR3プロモーター(配列番号42)を使用することによって、発明者らは、工業プロセス(Paddon et al., 2013)と比較してコストを下げることができた。
【0116】
つまり、発明者らは、本明細書にて、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つを合成するための新しいプラットフォームを提供する。例えば、発明者らは、これらの遺伝子によってコードされるタンパク質の過剰発現をもたらすMVA経路遺伝子ERG13(配列番号14)及びtHMGR(配列番号32)の過剰発現、ROX1(配列番号25)の破壊、並びにCTR3プロモーターを介したERG7(配列番号20)の銅調節性制御を組み合わせた。このプラットフォームにより、本発明の発明者らは、MVA経路の生産性を上げるとともに、後期ステロール生合成の代謝の流れを変更して、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生成を最大127倍高めることができた。
【0117】
例えば、発明者らは、酵母において、MVA経路の重要な酵素であるERG13(配列番号14)及びHMG-CoA還元酵素1(tHMGR)(配列番号1)を過剰発現させた。同改変段階において、例えば、発明者らは、経路及びステロール生合成の負の調節因子を欠失させ(ROX1)、プッシュプル方法をなして、システムにおいて代謝の流れを高めた。第2の段階において、例えば、発明者らは、この後期ステロール生合成の高めた代謝の流れを、5員環トリテルペンの直接的な前駆物質である2,3-オキシドスクアレンの生成に変更した。この方法により、発明者らは、最大127倍の5員環トリテルペン量を生成することができ、ロシアタンポポTaraxacum koksaghyzのルペオール合成酵素である、第2生成物のモデル酵素TkLUPを検出できた。
【0118】
これは、一実施形態において、本発明が宿主細胞においてルペオールの生成量を増大させる方法を提供し、該方法は、
タンパク質がメバロン酸を生成可能であるという条件で、配列番号1に示すアミノ酸配列を含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素を過剰発現する、又は、配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する該タンパク質を過剰発現するように、
及び、
タンパク質がアセトアセチル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA、メバロナート-5-ホスフェート、メバロナート-5-ピロホスフェート、イソペンテニル-5-ピロホスフェート、ファルネシル-ピロホスフェート、若しくはジメチルアリル-ピロホスフェートの少なくとも1つを生成可能であるという条件で、配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、又は配列番号2、3、4、5、6、7、及び8からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも44%の配列同一性を有する少なくとも1つのアミノ酸配列を含む該タンパク質を過剰発現するように、宿主細胞を改変すること、
及び、
ROX1(配列番号25)座位をノックアウトするように、宿主細胞を改変すること、
及び、
タンパク質がラノステロールを生成可能であるという条件で、配列番号9に示すアミノ酸配列を有する、又は配列番号9と少なくとも34%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するラノステロール合成酵素(ERG7)を抑制するように、宿主細胞を改変すること、
及び、
T.koksaghyzルペオール合成酵素TkLUP(配列番号12)を発現するように、宿主細胞を改変すること、
ルペオールを生成する少なくとも1つの異種タンパク質を発現するように、宿主細胞を改変すること、
ルペオールを発現するように、適切な条件下で該宿主細胞を培養すること、
並びに、ルペオールを精製することで、
改変前の宿主細胞と比較して、ルペオールの生成量を増大させることを含むことを意味する。
【0119】
つまり、本発明の実施形態において、例えば5員環トリテルペンの生成を高めるための改変プラットフォームが提供される。例えば、tHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)の過剰発現を行った、酵母プラットフォームが提供される。さらに、例えば、ROX1(配列番号25)をノックアウトして、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つ並びに後期ステロール生合成の生産性を高めた。特定の実施形態において、T. koksaghyz ルペオール合成酵素(TkLUP,合成酵素12)による後期ステロール生合成から5員環トリテルペン合成への代謝の流れが誘導される。ゆえに、例えば、CTR3プロモーター(CTR3-P)(配列番号42)を使用して、銅(Cu2+)の添加の際、ERG7(配列番号20)発現を減少させた。2,3-オキシドスクアレン蓄積におけるさらなる効果は、この実施形態におけるステロール含有量(ラノステロール及びエルゴステロール)の減少による、ERG9(配列番号49)及びERG1(配列番号51)の抑制欠如によって得られ得る。
【0120】
本明細書に使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈において明らかに示されない限り、複数形をも含むことが留意される。このように、例えば、「試薬」というとき、1つ以上のそうした種々の試薬を含み、「方法」というとき、本明細書に記載される方法では改変又は置換され得る、当業者に既知の同等のステップ及び方法を指すことを含む。さらに、例えば、「宿主細胞」というとき、それぞれ1つ以上のそうした宿主細胞を含む。同様に、例えば、「方法」又は「宿主細胞」(複数)というとき、それぞれ宿主細胞又は方法(単数)を含む。
【0121】
示されない限り、一連の構成要素の前の「少なくとも」という用語は、一連の構成要素すべてを指すと理解される必要がある。当業者は、本明細書に記載の本発明における特定の実施形態の多数の同等形を認識する、又は慣例的な実験のみで把握することができる。そうした同等形は本発明に包含することが意図される。
【0122】
本明細書のいずれかの個所に使用される「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」、並びに「該用語で接続された構成要素のすべて、又は任意の他の組合せ」の意味を含む。例えば、A、B、及び/又はCは、A、B、C、A+B、A+C、B+C、及びA+B+Cを意味する。
【0123】
この明細書及び以下の特許請求の範囲において、文脈において必要とされない限り、「含む」という文言、並びに「含む(三人称)」及び「含むこと」などの変形は、記載される構成物又はステップ又は構成物若しくはステップの群を包含することを指し、他の任意の構成物又はステップ又は構成物若しくはステップの群を除外するわけではない、ということを理解する必要がある。本明細書で使用するとき、「含むこと」という用語は、「含有すること」又は「包含すること」という用語と置き換え可能であり、本明細書で使用するとき「有する」という用語で置き換え可能でもある。本明細書で使用するとき、「からなる」は、特定されない任意の構成要素、ステップ、又は成分を除外する。
【0124】
「含む」という用語は、「含むがこれらに限らない」ということを意味する。「含む」と「含むがこれらに限らない」とは、互換的に使用される。
【0125】
この発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、材料、試薬、及び物質など限らず、したがって変わり得るということが理解される必要がある本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のみに使用され、特許請求の範囲のみによって規定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0126】
本明細書の文中で引用されたすべての刊行物(すべての特許、特許出願、科学出版物、指導書などを含む)は、上述又は以下に記載を問わず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる記載も、本発明は先の発明を理由にそうした開示に先行する権利が与えられないと認めるものと解釈されるものではない。参照により組み込まれた資料が本明細書と矛盾するか、又は一致しないところまで、本明細書が任意のそうした資料に代わるものとなる。
【0127】
本明細書で使用するとき「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。また、これは具体的な数値、例えば、約20は20を含む。
【0128】
さらに、本発明の代表的な実施形態を記載する際、本明細書では、本発明の方法及び/又はプロセスを特定のステップのシーケンスとして提示している場合がある。しかしながら、方法又はプロセスが本明細書に記載された特定のステップの順序に基づくものではないところまで、方法又はプロセスが、記載された特定のステップのシーケンスに限定されるべきではない。当業者であれば理解するように、他のステップのシーケンスも可能であり得る。ゆえに、明細書に記載された特定のステップの順序は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。さらに、本発明の方法及び/又はプロセスに関する特許請求の範囲は、記載された順序でそれらのステップを実行することに限定されるべきではなく、当業者であれば、シーケンスが変わってもよく、それでも本発明の趣旨及び範囲内にとどまることを容易に理解することができる。
【0129】
本発明及びその利点のより良い理解は、例示目的のためだけに提供される以下の実施例から得ることができる。実施例は、本発明の範囲をいかようにも限定することを意図しない。
【実施例
【0130】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を例示することのみを意図し、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0131】
[材料と方法]
実施例1:コンストラクトのクローニング
pAG424Gal-TkLUPを生成するため、TkLUP(配列番号12)(GenBank MG646375)のコード配列を、fw-プライマー5´-AAA (GTC GAC) TAA AAA AAT GTG GAA GCT GAA AAT AGC-3´(配列番号23)及びbw-プライマー5´-AAA (CTC GAG) ATA TAT TTT GAA CAA TAC GA-3´(配列番号24)とともにT. koksaghyzcDNAでPCR増幅し、精製、消化、並びにpENTR3c(Invitrogen, カールスバッド、米国)にライゲーションした。その後、TkLUPコード配列(配列番号12)を組み換えによってpAG424Gal1-ccdB(Alberti et al. 2007; Addgene,ケンブリッジ、米国)に導入した。
【0132】
pESC-rox1-KlUra3_tHMGR/ERG13を生成するため、ROX1コード配列(配列番号25)を、酵母DNAテンプレートからfw-プライマー5´-AAA (GCG GCC GC)A TGA ATC CTA AAT CCT CTAC-3´(配列番号26)及びbw-プライマー5´-AAA (GCG GCC GC)T CAT TTC GGA GAA ACT AGG-3´(配列番号27)(制限部位は丸括弧部分)を用いてPCR増幅した。さらに、pESC-Ura(Agilent Technologies, サンタクララ、米国)をテンプレートとして使用して、fw-プライマー5´- AAA (GCG GCC GC)C CAG CTG CAT TAA TGA ATC G(配列番号28)、bw-プライマー5´- AAA (GCG GCC GC)G AAG TTC CTA TTC TCT AGA AA(配列番号29)を用いてNotI制限部位を含むpESC-Uraベクターバックボーンを増幅した。両NotI消化フラグメントをライゲーションして、pESC-rox1を得た。このベクターをBglIIで消化し、KlUra3マーカーカセット(配列番号30)(Gueldener et al., 2002)及びAsiSI/Nb.BsmI USERカセット(配列番号31)(Hansen et al., 2012)からなる合成DNAフラグメント(Invitrogen, カールスバッド、米国)を挿入してpESC-rox1-KlUra3を得た。並行して、tHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)のコード配列を、酵母DNAテンプレートから、tHMGRではfw-プライマー5`- AAA (GGA TCC) AAA AAA ATG GTT TTA ACC AAT AAA AC-3`(配列番号33)及びbw-プライマー5´- AAA (GTC GAC) TTA GGA TTT AAT GCA GGT GAC(配列番号34)、並びにERG13ではfw-プライマー5`- AAA (GAA TTC) AAA AAA ATG AAA CTC TCA ACT AAA CTT TG-3´(配列番号35)及び bw-プライマー5´- AAA (GCG GCC GC)T TAT TTT TTA ACA TCG TAA GAT C-3´(配列番号36)を用いてPCR増幅した。得られたフラグメントをBamHI/SalI及びEcoRI/NotIで消化して、pESC-Uraにライゲーションし、pESC-Ura_tHMGR/ERG13を生成した。製造者による手順に従って、NotI制限部位をQuikChange Lightning Site-Directed Mutagenesisキット(Agilent Technologies, サンタクララ、米国)によって除去した。最終ステップにおいて、tHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)コード配列、並びに双方向性Gal1/Gal10-プロモーター及びADH-1/CYC-1ターミネーターを含む発現カセットを、fw-プライマー5´-CGT GCG A{U}T CAG AGC GAC CTC ATG CTA TAC -3´(配列番号37)及びbw-プライマー5´-CAC GCG A{U}C TTC GAG CGT CCC AAA ACC -3´(配列番号38)を用いてPCR増幅し(USERのためのウラシルベースクローニング、波括弧部分)、ウラシル特異的切除反応(USER)ベースクローニングによって、AsiSI消化pESC-rox1-KlUra3にクローニングした。
【0133】
pESC_ERG7-P_KlLeu2_CTR3-P_ERG7を生成するため、第1段階にて、それぞれ、ERG7フラグメント(配列番号39)を、fw-プライマー5´- [CAC ATT TAA GGG CTA TAC AAA G]AT GAC AGA ATT TTA TTC TGA CA-3´(配列番号40)(角括弧部分は重複領域を示す)及びbw-プライマー5´-AAA (GCG GCC GC)C CCA ATA AAC GTA AGA TTA CA-3´(配列番号41)を用いて酵母DNAで増幅し、CTR3プロモーターフラグメント(配列番号42)を、fw-プライマー5´- AAA (GCG GCC GCC AGC TG)A A(GG ATC C)GG TAT TCC AAT GAG AAT CGC-3´(配列番号43)及びbw-プライマー5´-[TGT CAG AAT AAA ATT CTG TCA T]CT TTG TAT AGC CCT TAA ATG T-3´(配列番号44)を用いて増幅した。両フラグメントを、オーバーラップPCRによってCTR3プロモーターfw-プライマー(配列番号43)及びERG7-bwプライマー(配列番号41)に融合させ、NotI消化させて、NotI消化pESC-Uraベクターバックボーンにライゲーションして、pESC_CTR3-P_ERG7を得た。第2段階において、上流ERG7-プロモーターフラグメント(配列番号45)を、fw-プライマー5´-AAA (CAG CTG) AAT CTG CTG CTA TTC GTG-3´(配列番号46)及びbw-プライマー5´-AAA (GGA TCC CCT GCA GG)C GCT GCA GGT CGA CAA C-3´(配列番号47)を用いて酵母DNAでPCR増幅し、PvuII/BamHI制限部位を介してライゲーションして、pESC_ERG7-P_CTR3-P_ERG7を得た。最終段階において、KlLeu2栄養要求性カセット(配列番号48)(Gueldener et al., 2002)を含む合成DNAフラグメント(Invitrogen, カールスバッド、米国)を、SbfI/BamHI制限部位にライゲーションして、pESC_ERG7-P_KlLeu2_CTR3-P_ERG7を得た。
【0134】
すべてのコンストラクトを、ABI PRISM 3100ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems, フォスターシティ、米国)においてシーケンシングによって検証した。酵母株CEN.PK2-1CをEUROSCARF(オーバーウルゼル、独国)から得た。New England Biolabs GmbH (フランクフルト、独国)から制限酵素を得た。
【0135】
実施例2:株作製と培養条件
S. cerevisiae株CEN-PK2-1Cを、選択マーカーとしてウラシル(pCFB255_rox1_KlUra3_tHMGR/ERG13, 配列番号11)、ロイシン(pCFB255_ERG7-P_KlLeu2_CTR3-P_ERG7, 配列番号10)、及びトリプトファン(pAG424Gal-TkLup)を用いて酢酸リチウム法(Gietz 2007)によって形質転換した。安定して酵母ゲノムに組み込むため、pCFB255_rox1_KlUra3_tHMGR/ERG13(配列番号11)及びpCFB255_ERG7-P_KlLeu2_CTR3-P_ERG7(配列番号10)をNotI消化してプラスミドのバックボーンを除去した。細胞を最小合成培地(SD培地, Clontech, マウンテンビュー、米国)にプレーティングし、30℃で増殖させた。必要な場合組込みコンストラクトの両側のプライマーを用いてコロニーPCRによって、クローンを健常性について確認した。
【0136】
ガラクトース誘導遺伝子の発現のため、単一のコロニーを取り出し、5mLのSD培地に播種して、回転させながら一晩30℃で培養した。この培養物から、50mLの新しいSD培地(ERG7(配列番号20)の発現を抑制する場合150μM CuSO4を含む)を、10cells/mLの最終細胞密度まで加え、250mLエルレンマイヤーフラスコにおいて30℃及び140rpmで増殖させた。培養物が、0.4×10cells/mLの細胞密度に達すると、培地を、グルコースではなくガラクトースを含むSD培地に交換して、遺伝子発現を誘導した。4×10cells/mLの細胞密度に達するまで酵母を増殖させ、遠心分離(10分,1000 xg)によって採取した。
【0137】
実施例3:スクアレン及びトリテルペンの抽出及び測定
酵母代謝物の抽出は、Rodriguez等(2014)のプロトコルに従って行った。手短に説明すると、凍結乾燥酵母細胞は、メタノール中の1mLの6%[w/v]KOH(Roth,カールスルーエ、独国)及び100μgのコレステロール(内部標準物質として、Sigma, セントルイス、米国)を各サンプルに添加後、80℃の温浴で5分間インキュベートした。メタノール混合物から代謝物を抽出するため、2mlのn-ヘキサン(Roth, カールスルーエ、独国)を3段階で、ボルテックス後に添加した。上部相を新しいバイアルに移し、n-ヘキサンを蒸発させて除去した。その後、サンプルを1mLのアセトン(Roth, カールスルーエ、独国)に再溶解し、GC-MSを行った。GC-MS分析を、30m Rtx-5MSカラムを備えたGC-MS-QP 2010 Ultra(Shimadzu, デュースブルク、独国)で行い、温度グラジエント(120-330°C; 21°C per min; 圧力: 58,8 kPa)を、120℃で1分の保持時間、その後330℃で10分間の保持時間後に用いた。イオン質量43m/z、55m/z、69m/z、95m/z、109m/z及び189m/z、204m/z、207m/z、218m/z、271m/z、285m/z、411m/zによって分子を検出した。それぞれLabSolutionソフトウエア(Shimadzu, デュースブルク、独国)及びNISTライブラリによって、ピーク積分及び同定を行った。検出した物質のトータルイオンカレント(TIC)を、内部標準物質に由来するコレステロール及び使用したサンプルの乾燥重量に対してノーマライズした。2つのサンプルのt検定をp<0.05で用いて、結果の統計的有意性を確認した。
【0138】
実施例4:T. koksaghyzのルペオール合成酵素としてのTkLUPの同定
提示した酵母システムのモデル酵素として、ゴム産生タンポポTaraxacum koksaghyz由来のルペオール合成酵素を選んだ(図6参照)。T. officinaleのルペオール合成酵素であるTRXの増幅に用いるプライマーにより(Shibuya et al., 1999)、759アミノ酸をコードする(配列番号12)T. koksaghyz(GenBank受託番号MG646375)のcDNAの2277bpのORFを増幅することができた。この配列は、記載のルペオール合成酵素と99.3%のアミノ酸配列類似性を有するので、SalI/XhoI制限部位を介してpENTR3cにクローニングした。CEN.PK2-1C酵母株(WT)にて発現させるため、アドバンスドゲートウェイデスティネーションベクターシステム(pAG-ベクターシステム)を用い、得られた配列を、GAL1プロモーターの制御下での発現を可能にするpAG424GAL1-ccdBに組み換えた。コンストラクトの概略図を図6aに示す。空のべクターpAG424GAL1-ccdBは、発現実験においてベクターコントロールとした。培養及びトリテルペン抽出後、2つのさらなるm/z218フラグメントが、推定ルペオール合成酵素配列(配列番号12)を有する3つの個別の形質転換体からの抽出物のGC-MS測定において同定できた(図6b参照)。これらのピークは、WTでもベクターコントロールサンプルでも同定できなかった。検出フラグメントの保持時間がβ-アミリン及びルペオール標準物質において測定される保持時間に適合するので(Extrasynthese, ジュネ,仏国;図1b)、得られたフラグメントは、微量の定量不可能な量のβ-アミリンの蓄積、及び0.16mg/gCDWのルペオールの蓄積を示すと推測した(図6c)。配列相同性と、おそらくルペオールを示す主要な同定ピークとにより、得らえた配列は、TkLUPという名称のT. koksaghyzからのルペオール合成酵素(配列番号12)をコードすると結論付けた。
【0139】
実施例5:ROX1の欠失とtHMGR及びERG13の過剰発現によりルペオール蓄積が16.5倍高まる
酵母における推定ルペオールの生成をさらに高めるため、以前に異種酵母システムにおいてイソプレノイド生成量を高めることを示した酵母メバロナート経路遺伝子を過剰発現させることにした(Kirby et al., 2008; Asadollahi et al., 2010; Paddon et al., 2013)。HMG1は経路の重要な酵素であり、フィードバック機構による厳密な制御の基盤となるので、ユビキチン化信号欠如のためフィードバック機構の基盤とならないトランケート形態(tHMGRと呼ぶ)(配列番号32)を過剰発現させた(DeBose-Boyd, 2008)。一方で、イソプレノイド生合成に正の効果を有することも示されているERG13(配列番号14)を過剰発現させることを選択した(Yuan et al.,2014)。さらに経路をディレギュレート/アップレギュレートするため、発明者らは、メバロナート経路及び後期ステロール生合成の負の調節因子として記載されるROX1(配列番号25)をノックアウトすることを考え(Henry et al., 2002; Montanes et al., 2011; Ozaydin et al., 2013; Jakociunas et al., 2015)、後期ステロール生合成を高めることによるスクアレンのダウングレード向上に関して、メバロナート経路自体をディレギュレートすることによってメバロナート経路における流れを高めることを狙いとした。これらの段階を組み合わせるため、双方向性GAL1/GAL10プロモーターの制御下でtHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)を発現させることを選択し、過剰発現カセットをrox1(配列番号25)座位に組み込んで、ノックアウトさせた。したがって、NotI消化pCFB255_rox1_KlUra3_tHMGR/ERG13(配列番号11)からもたらされるフラグメントで、CEN.PK2-1C酵母細胞を形質転換した(図7a)。予期されるように、組込み遺伝子の発現及びrox1(配列番号25)のノックアウト後、TkLUP配列(配列番号12)のみを有する細胞と比較して、コンストラクト及びTkLUP配列(配列番号12)を有する酵母において、スクアレンの有意な8.2倍の蓄積向上を検出できた(図7b)。さらに、指定したルペオールの蓄積において、16.5倍の増加が見受けられ(図7b)、ラノステロール含有量の3.6倍の増加を観察できた(以下の表1参照)。
【0140】
以前に記載されたデータのとおり、酵母細胞は、誘導後及び細胞回収前に細胞密度(材料及び方法の項に記載)に達するためにより長い時間を必要としたので、わずかに少ない増殖を示すものであり、これは細胞に毒性のある高レベルスクアレンの結果として起こり得るものであった(Donald et al., 1997; Asadollahi et al., 2010)。しかしながら、この改変ステップは、測定ルペオール標準物質の質量スペクトル(図7d)に対する推定ルペオールピークの質量スペクトル(図7c)の比較を可能にした。同等のピーク質量は、観察されたコード配列がT. koksaghyzのルペオール合成酵素をコードするという本発明の発明者らの推測をはっきりと示す。推定β-アミリンピークは、詳しい質量分析にはなお非常に弱いものであった。
【0141】
TkLUP(配列番号12)の基質である2,3-オキシドスクアレンではなく5員環トリテルペン前駆物質スクアレンの蓄積を観察することができたので、経路のこの時点でのボトルネックが観察された。このボトルネックは、ERG9と比較したERG1の低い能力のため(Asadohalli et al., 2010により提示)、及びTkLUP自体の2,3-オキシドスクアレンに対する高活性のため、又は内在性後期ステロール生合成の活性のため起こり得る。この制限要因を克服するため、ERG1(スクアレンから2,3-オキシドスクアレンへの反応を触媒する、酵母スクアレンエポキシダーゼをコードする)の過剰発現が考えられるが、2,3-オキシドスクアレンの蓄積がERG1を過剰発現する酵母株において観察できなかったので、5員環トリテルペン生成向上には適切ではない(Veen et al., 2003)。ゆえに、発明者らは、内在性だが競合性の後期ステロール生合成に影響を与える後期ステロール生合成の開始点である、ERG7(配列番号20)をダウンレギュレートした。
【0142】
実施例6:CTR3プロモーターを介したERG7(配列番号20)の抑制は、2,3-オキシドスクアレンの蓄積、さらに7.6倍向上したルペオール蓄積をもたらす
必須の後期ステロール生合成におけるノックアウトは、致死性酵母株をもたらし、ERG1の過剰発現は、5員環トリテルペン生成において2,3-オキシドスクアレン蓄積を高めるのに十分ではないので、発明者らは、2,3-オキシドスクアレン合成のボトルネックを克服するためERG7(配列番号20)を抑制して、後期ステロール生合成からルペオール生成への代謝の流れを変更した。ゆえに、内在性ERG7コード配列(配列番号20)の前に銅輸送体の735bpプロモーターフラグメント(CTR3)(配列番号42)を挿入し、同段階において、内在性コアプロモーターの196bpフラグメントを欠失させることを選択した(図8a)。挿入したCTR3プロモーターフラグメント(配列番号42)では、2つのシスエレメント(TTTGCTC, 銅応答エレメント、略語はCuRE)がCuSOの存在下において遺伝子発現低下の原因となることが示された(Labbe et al., 1997)。さらに、CTR3プロモーターフラグメント(配列番号42)は、アルテミシニン生成を高めるためERG9(配列番号49)を抑制するように適切に使用して、この工業プロセスにおいてコストを下げ、著述者らの以前の研究に使用されたMET3プロモーター(配列番号50)との同等性を示した(Paddon et al., 2013)。
【0143】
コンストラクトの効果をテストするため、選択マーカーとしてKlLeu2及びCTR3プロモーターフラグメント(配列番号42)を含むpCFB255_ERG7-P_KlLeu2_CTR3-P_ERG7(配列番号10)のNotI消化フラグメントを、pCFB255_rox1_KlUra3_tHMGR/ERG13(配列番号11)を有する酵母株に形質転換させた。正の形質転換体を0μM、150μM、及び375μMのCuSOの存在下で培養し、tHMGR(配列番号32)及びERG13(配列番号14)の遺伝子発現をガラクトースで誘導して、酵母においてスクアレンから2,3-オキシドスクアレンの蓄積への変化をもたらした(図8b)。銅の欠如下においても、抽出したGC-MSサンプルにおいて2,3-オキシドスクアレンのわずかな蓄積を検出でき、内在性ERG7プロモーター(配列番号45)と比較してより弱いCTR3フラグメント(配列番号42)のプロモーター活性を示す。150μMのCuSOの存在下で増殖させた酵母において、この効果はさらに強いものであった。2,3-オキシドスクアレンの蓄積が4.7倍高まると(p=0.00507)、スクアレンの量は有意に減少し(p=0,00613)、これは、エルゴステロールによるERG9(配列番号49)及びERG1(配列番号51)の抑制の欠如、並びに限定的なラノステロール条件下でのERG1(配列番号51)の誘導の向上に起因し得る(表1; M´Baya et al., 1989)。375μMの上昇銅濃度における酵母の培養後、スクアレンレベルにおけるさらなる有意な減少(p=0.00061)を観察することができた。しかしながら、2,3-オキシドスクアレンの有意な変化は観察できなかったものの、酵母は増殖速度の低下を示して、2,3-オキシドスクアレン合成のボトルネックを克服するため高レベルのCuSOの毒性及び150μMのCuSOの存在下でのERG7(配列番号20)の有意な抑制を示した。このように、発明者らは、rox1::PGAL1-tHMGR PGAL10-ERG13(配列番号11)Perg7Δ::PCTR3(配列番号10)と、TkLupのコード配列(配列番号12)又はコントロールをなすpAG424GAL1_ccdBの空のプラスミドとを組み合せた株におけるルペオールの生成を高めるため十分な量の銅をとして、150μMのCuSO濃度を選択した。
【0144】
予期されるように、3つのコンストラクトを有するとともに銅の存在下で培養した酵母株は、CTR3プロモーターフラグメント(配列番号42)を欠失するその親株と比較してスクアレン及び2,3-オキシドスクアレンのレベルの変化を示した。ゆえに、スクアレンの蓄積は2.6倍少なく(p=0.04422)、2,3-オキシドスクアレンの蓄積を観察することができた。さらに、ラノステロール(6.5倍; p = 0.02384)及びエルゴステロール(3.9倍; p=0.00941)で示されるステロール量の減少を検出でき、TkLUP(配列番号12)を発現する株におけるこれらの化合物による銅抑制の機能、並びにERG9(配列番号49)及びERG1(配列番号51)の調節を示した。さらに、銅抑制プロモーターの使用によるルペオール蓄積のさらなる向上を検出でき、測定サンプル(図10a)及びβ-アミリン外部標準物質(図10b)のMSスペクトルの比較で見られることからβ-アミリンの同定が可能になった。ルペオールレベルは7.6倍増加する(p=0.00637)一方、β-アミリンの定量はなお可能ではなかった。しかしながら、2,3-オキシドスクアレン及びルペオールの蓄積、並びにステロール量の減少は、この改変酵母株においてステロール生合成からルペオール生成へと代謝の流れを変更したことを示す。
【0145】
表1は、GC-MSにより定量したg/gCDWにおけるWT及び改変酵母株の代謝物レベルを示す。
【表1】
【0146】
g/gCDW(±標準偏差)。標準偏差は、スチューデントt検定によってn=3の個々の形質転換体からを計算した。n.d.=検出不可能。CDWは細胞乾燥重量。
【0147】
実施例7:HPLCによるトリテルペン精製
UV検出器(SPD-M20A)及びフラクションコレクター(FRC-10A)に接続されたShimadzu LC20A HPLCシステム(Shimadzu, デュースブルク、独国)を用いてセミ分取HPLCを行った。UltraC18カラム(250 x 21.2 mm, 粒径: 5 μm, Restek GmbH, バート・ホムブルク、独国)及び10ml/minの流量で溶媒としてメタノールを使用して、トリテルペンを分離した。カラムオーブン温度を40℃に設定した。205nmで検出を行い、トリテルペンフラクションを収集し、Rocketエバポレーターシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用して乾燥させ、アセトンに溶解して、GC-MSによって分析した。第2の固定相として、Ultraビフェニルカラムを使用した(250 x 21.2 mm, 粒径:5 μm, Restek GmbH, バート・ホムブルク、独国)。カラムオーブン温度を40℃に設定し、トリテルペンを、以下の溶出プロファイルを用いて、8ml/minの流量でメタノール(A)及び水(B)のグラジエントにおいて分離した:0~25分、アイソクラティック90% A;25~71分、リニア90%~100% A;71~75分、アイソクラティック100% A;その後カラム再平衡化:75~76分、リニア100%~90% A;76~85分、アイソクラティック90% A。
【0148】
[化学分析]
トリテルペンを、上述のようにCG-MSによって定量及び同定した(Putter et al., 2017)。
【0149】
上述の方法によって、発明者らは、T. koksaghyzの根の天然ゴムアセトン抽出物における5員環トリテルペノイド組成物の詳しい分析を行うことができた。単一のトリテルペノイドのHPLCベース精製により、新しい5員環トリテルペンlup-19(21)-en-3-ol、及び、その対応する5員環トリテルペノイドケトンlup-19(21)-en-3-oneを同定できた。
【0150】
Taraxacum koksaghyz天然ゴムアセトン抽出物はトリテルペン組成物を明らかにする
主要な成分ポリ(cis-1,4-イソプレン)を除いて、天然ゴムは、ポリマーの物性に影響を与えるタンパク質、脂肪酸、及びトリテルペンといったさらなる物質を含む(Xu et al., 2017)。NR特性に関与する単一のトリテルペンの詳しい全体像を得るため、溶媒としてアセトンを用いてT. koksaghyz NRから脂質フラクションを抽出した。アセトン抽出物をHPLCによってC18カラムで分離し、205nmでUV検出を使用して7つの主要なフラクションを観察することができた(図12a)。これらを収集して、その後GC-MSによって分析した。7つのフラクションのうち3つにおいて、フラクションF1のルペオール(lup-20(29)-en-3-ol)、F4のタラキサステロール及びβ-アミリン、並びにF6のα-アミリンを含む、Taraxacum種の根に非常に豊富であると記載される(Post et al. 2012)種々の5員環トリテルペンを検出できた。アルコールに加え、これらの4つの5員環トリテルペンのケトン誘導体、すなわちF2のルペノン(lup-20(29)-en-3-one)、F5のタラキサステロン及びβ-アミロン、並びにF7のα-アミロンも3つのフラクションで同定された。さらに、2つのフラクション(F3及びF5)において、Taraxacum種の根材に存在するとして以前に記載されている2つのステロール化合物、スチグマステロール及びシトステロールを検出した(Post et al. 2012)。
【0151】
HPLCに第2の固定相(ビフェニルカラム)を用いて、本発明の発明者らは、図12bのF4及びF5に示すように単一のトリテルペンを互いからさらに分離することができた。タラキサステロール及びβ-アミリンに加えて、現在のところ未知の第3のトリテルペンが、F4において検出でき、F5において対応するケトンを検出できた(GC-MSデータは図12cにおいてβ-アミリン、タラキサステロール、及びそれらのケトンを例示的に示す)。約1.5mgのトリテルペン純物質と、0.3mgの対応するケトンを、NMR分析のため精製し、現在未知の5員環トリテルペンlup-19(21)-en-3-ol、及びその対応する5員環トリテルペノイドのケトンlup-19(21)-en-3-oneを同定した(図12d)。
【0152】
アセトン抽出物にて見つかったすべてのトリテルペノイドを以下の表2にまとめる。
【0153】
フラクションF2、F3、F5、F6、及びF7において、さらなる微量の化合物を検出し、それらのGC-MSプロファイルによりトリテルペノイドとして分類することができたが、これらの化合物のうちの8つにおける詳しい分子構造は未だ未知である。単一のトリテルペンの量が限定的であるため、NMR分析は行えなかった。
【0154】
表2は、NRアセトン抽出物において同定し、C18HPLCフラクションにおけるその発生に従って分類したトリテルペノイドを示す。
【表2】
【0155】
本明細書において、本発明の発明者らは、酵母などの異種システムにおいて、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つ、例えば5員環トリテルペンを生成するための新しいプラットフォームを確立した。したがって、T.koksaghyz(配列番号12)のルペオール合成酵素は、モデル酵素として使用されている。
【0156】
このプラットフォームは、例えばメバロナート経路遺伝子の過剰発現と好ましくは該経路及び後期ステロール生合成の負の調節因子の欠失を含む、プッシュプル方法に基づく。さらに、発明者らは、銅調節プロモーターによって、ラノステロールの形成で開始する後期ステロール生合成から、直接的な5員環トリテルペン前駆物質2,3-オキシドスクアレンの生成へ代謝の流れを変更することで、例えば5員環トリテルペン生成を高めることができた。
【0157】
一実施形態において、発明者らは、MVA経路遺伝子ERG13(配列番号14)及びtHMGR(配列番号32)を過剰発現することを選択した。HMGRは経路の重要な段階を触媒し、そのディレギュレーション形態tHMGRとして、種々の酵母プラットフォームにおいてスクアレン蓄積及びイソプレノイド生成量を高めるように使用されている(Kirby et al., 2008; Asadohalli et al., 2010; Westfall et al., 2011; Scalcinati et al., 2012; Paddon et al., 2013; Lv et al., 2014; Yuan et al., 2014; など)。記載の過剰発現カセットの組込み部位として、本発明の一実施形態においてrox1(配列番号25)座位を選択し、メバロナート経路及び後期ステロール生合成におけるこの負の調節因子をノックアウトさせた(Henry et al., 2002; Montanes et al., 2011; Ozaydin et al., 2013; Jakociunas et al., 2015)。ノックアウトは、ディレギュレートした後期ステロール生合成のスクアレン消費向上に起因する、メバロナート経路のその後の部分へのスクアレンのダウングレードに関して、概してメバロナート経路のアップレギュレートをもたらす。この方法によって、スクアレン、ラノステロール、エルゴステロール、及びルペオールの蓄積を高めて(図7b及び表1)、この方法及びコンストラクトの機能について証明することができた。
【0158】
5員環トリテルペン合成の直接的な前駆物質分子である2,3-オキシドスクアレンの蓄積を観察できなかったので、発明者らは、内在性ERG7プロモーター(配列番号45)を銅抑制性CTR3-プロモーター(配列番号42)に置き換えることで、後期ステロール生合成から5員環トリテルペン生成へと代謝の流れを変更した(Labbe et al., 1997)。つまり、2,3-オキシドスクアレンの蓄積の欠如には2つの理由がある。第1に、ERG9(配列番号53)と比較したERG1(配列番号52)の低い能力(Asadohalli et al., 2010により提示)、第2に、ERG7(配列番号9)消費によるラノステロール(Veen et al., 2003)、及び/又はこの場合TkLUP(配列番号12)の消費による5員環トリテルペンへの急速な反応である。
【0159】
本発明の発明者らは、本発明の一実施形態において、使用したスクアレン及び5員環トリテルペン蓄積酵母株において内在性ERG7(配列番号20)を抑制すると、スクアレンレベルの減少及び2,3-オキシドスクアレンの蓄積を検出することができた。一方で、この蓄積はERG7(配列番号20)自体の発現低下により起こり得るが、ERG1(配列番号51)及びERG9(配列番号49)の調節機構もこの知見に寄与し得る。発明者らは、この特定の実施形態において、エルゴステロール及びラノステロールのレベル低下を検出したので、記載される負のフィードバックループのディレギュレートはまた、酵母スクアレン合成酵素及びスクアレンエポキシダーゼをコードするERG9(配列番号49)及びERG1(配列番号51)の発現向上に寄与し得る。ゆえに、ステロール量の減少は、限定的なエルゴステロールレベルにより、ERG9(配列番号49)及びERG1(配列番号51)の抑制の欠如こと、及びラノステロール由来の抑制の欠如によるERG1(配列番号51)の発現向上につながり得る(M´Baya et al., 1989)。しかしながら、本発明の発明者らは、多数の直接的なTkLUP(配列番号12)基質を提供することで、例えば、ルペオールの蓄積をさらに高めることができ、さらに、β-アミリンとしてそれぞれのCG-MSスペクトルにおいて現在のところ未知のピークを同定することができた。
【0160】
つまり、本発明の発明者らは、例えば5員環トリテルペン合成などの、オキシドスクアレン、トリテルペン、及び/又はトリテルペノイドの少なくとも1つの生産性を最大127倍高めることができた。さらに、本発明者らは、例えば、本発明に使用されるモデル酵素TkLUP(配列番号12)により合成された第2の5員環トリテルペン(β-アミリン)を特徴づけることができた。
【0161】
さらに、本発明の発明者らは、例えば、T.koksaghyz植物材料からのトリテルペン混合物について例示的に示される、第1のクロマトグラフィーステップのC18カラム、及び第2のクロマトグラフィーステップのビフェニルカラムを使用して、単一のトリテルペンを精製することができた。
【0162】
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図1
図2A
図2B
図2C
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図3A
図3B
図4A
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図5
図6A
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図6C
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図13B
図14
【配列表】
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