(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】槽内中和のためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20240318BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20240318BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240318BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61B1/12 510
C02F1/70 Z
C02F1/72 Z
A61L2/18
(21)【出願番号】P 2020556854
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2019000752
(87)【国際公開番号】W WO2019239212
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520395938
【氏名又は名称】エイエスピー・グローバル・マニュファクチャリング・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・サンウク
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-285526(JP,A)
【文献】特開2005-200414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0068701(US,A1)
【文献】特開2001-272110(JP,A)
【文献】特開2003-201500(JP,A)
【文献】特許第2718221(JP,B2)
【文献】特開平08-257572(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0060087(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24-23/26
A61L 2/00- 2/28
A61L 11/00-12/14
C02F 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバと流体連通している槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法において、
中和剤を、前記リザーバ内の処理溶液
の消毒剤を中和するのに適した前記中和剤の量を超えて、前記槽に加えることと、
前記処理溶液の第1の部分を前記槽に加えることと、
前記槽内で前記中和剤を前記処理溶液の前記第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、前記処理溶液の前記第1の部分を前記中和剤で中和することと、
前記槽から前記二次溶液の第1の部分を除去することであって、前記二次溶液の第2の部分が前記槽内に残る、ことと、
前記処理溶液の第2の部分を前記槽に加えることと、
前記槽内で前記処理溶液の前記第2の部分を前記二次溶液の前記第2の部分と接触させて三次溶液を形成し、前記処理溶液の前記第2の部分を前記二次溶液の前記第2の部分中の前記中和剤で中和することと、
を含み、
前記消毒剤がアルデヒド
である、方法。
【請求項2】
前記槽が第1の溶液容量を有し、前記リザーバが前記第1の溶液容量より大きい第2の溶液容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三次溶液を前記槽から除去することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記三次溶液を除去した後に、前記リザーバおよび前記槽のうちの少なくとも一方を水溶液ですすぐことをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記三次溶液の一部を除去し、前記処理溶液の第3の部分を前記槽に加えて四次溶液を形成することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記二次溶液の前記第2の部分が、前記処理溶液の前記第2の部分を中和するのに適した量の前記中和剤を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
中和することが、前記処理溶液と前記中和剤との間に付加物を形成することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記中和剤は、前記中和剤中の活性基の前記処理溶液中の活性基に対するモル比が1.3:1超で、前記槽に加えられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記中和剤
がアミノ酸
である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記
消毒剤がオルトフタルアルデヒド
であり、前記中和剤がグリシン
である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記二次溶液および前記三次溶液のうちの少なくとも一方を加熱すること、攪拌すること、および循環させること、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記中和剤が、前記処理溶液の前記第1の部分および前記第2の部分を中和するために、前記槽に1回加えられる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記三次溶液中の残留活性処理溶液が、前記三次溶液の0.01重量%未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
リザーバと流体連通している槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法において、前記槽は、第1の溶液容量を有し、前記リザーバは、前記第1の溶液容量よりも大きい第2の溶液容量を有し、前記方法は、
中和剤を、前記リザーバ内の消毒剤溶液を中和するのに適した前記中和剤の量を超えて、前記槽に加えることと、
前記消毒剤溶液の第1の部分を前記槽に加えることと、
前記槽内で前記中和剤を前記消毒剤溶液の前記第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、前記消毒剤溶液の前記第1の部分を前記中和剤で中和することと、
前記二次溶液の第1の部分を前記槽から除去することであって、前記二次溶液の第2の部分が前記槽内に残り、前記二次溶液の前記第2の部分が前記消毒剤溶液の第2の部分を中和するのに適した量の前記中和剤を含む、ことと、
前記消毒剤溶液の前記第2の部分を前記槽に加えることと、
前記消毒剤溶液の前記第2の部分を前記槽内の前記二次溶液の前記第2の部分に接触させて三次溶液を形成し、前記消毒剤溶液の前記第2の部分を前記二次溶液の前記第2の部分中の前記中和剤で中和することと、
を含み、
前記消毒剤溶液が
消毒剤を含み、
前記消毒剤がアルデヒド
である、方法。
【請求項15】
前記
消毒剤がオルトフタルアルデヒド
であり、前記中和剤がグリシン
である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記中和剤が、前記消毒剤溶液の前記第1の部分および前記第2の部分を中和するために前記槽に1回加えられる、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2018年6月11日に出願された米国特許出願第16/004,755号の優先権を主張する。その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の分野〕
本開示は、処理溶液の槽内中和のためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
〔背景〕
医療分野では、医療処置のために様々な装置が使用されている。そのような1つの装置は、身体の中空臓器または空洞の内部を検査する内視鏡である。全ての医療処置および装置の重要な側面は、交差汚染および疾患の蔓延の防止である。この点に関して、例えば、洗浄溶液、消毒剤溶液、および/または滅菌剤溶液などの処理溶液が、医療装置および設備表面上で使用される。これらの溶液は、その性質上、装置および/または表面を効果的に洗浄、消毒および/または滅菌するために比較的刺激の強い成分(relatively harsh constituents)を含む。使用後に処理溶液を処分することは、操作者にとって不便であり、かつ/または操作者を処理溶液に曝露する可能性がある。
【0004】
環境、操作者、患者の健康および安全条件の改善は、医療分野の重要な焦点である。この点に関して、操作者および病院職員の処理溶液への曝露を制限する努力がなされている。
【0005】
〔概要〕
1つの態様において、本開示は、リザーバと流体連通する槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法を提供する。より具体的には、中和剤が、リザーバ内の処理溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて、槽に加えられる。処理溶液の第1の部分が、槽に加えられる。中和剤を処理溶液の第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、処理溶液の第1の部分を中和剤で中和する。二次溶液の第1の部分が槽から除去され、二次溶液の第2の部分が槽内に残る。処理溶液の第2の部分が、槽に加えられる。処理溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分と接触させて三次溶液を形成し、処理溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分中の中和剤で中和する。
【0006】
別の態様では、本開示は、リザーバと流体連通する槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法を提供する。より具体的には、中和剤が、リザーバ内の消毒剤溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて、槽に加えられる。槽は第1の溶液容量を有し、リザーバは第1の溶液容量より大きい第2の溶液容量を有する。消毒剤溶液の第1の部分が、槽に加えられる。中和剤を消毒剤溶液の第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、消毒剤溶液の第1の部分を中和剤で中和する。二次溶液の第1の部分が槽から除去され、二次溶液の第2の部分が槽内に残る。二次溶液の第2の部分は、消毒剤溶液の第2の部分を中和するのに適した量の中和剤を含む。消毒剤溶液の第2の部分は、槽に加えられる。消毒剤溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分と接触させて三次溶液を形成し、消毒剤溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分中の中和剤で中和する。
【0007】
別の態様では、槽内中和のためのシステムが提供される。システムは、リザーバと、リザーバと流体連通する槽と、を含む。リザーバは、消毒剤溶液を含む。槽は、リザーバから消毒剤溶液を受け取るのに適している。槽は第1の溶液容量を有し、リザーバは第1の溶液容量より大きい第2の溶液容量を有する。槽は、リザーバ内の消毒剤溶液を中和するのに適した中和溶液を含む。中和剤中の活性基と消毒剤溶液中の活性基とのモル比は1.3:1より大きい。
【0008】
本明細書に記載された発明は、この概要において手短に述べた実施例に限定されないことが理解される。様々な他の態様が本明細書に記載され、例示される。
【0009】
添付図面と共に理解される実施例に関する以下の説明を参照することによって、実施例の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法が、より明らかになり、実施例が、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示による処理溶液の槽内中和のためのシステムの描写である。
【
図2】本開示による処理溶液の槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3A】本開示による中和の第1ステージにおける槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3B】本開示による中和の第2ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3C】本開示による中和の第3ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3D】本開示による中和の第4ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3E】本開示による中和の第5ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3F】本開示による中和の第6ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3G】本開示による中和の第7ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【
図3H】本開示による中和の第8ステージにおける
図3Aの槽内中和のためのシステムの概略正面図である。
【0011】
対応する参照文字は、いくつかの図面にわたって対応する部分を示す。本明細書に記載される例示は、1つの形態で特定の実施例を例示するものであり、そのような例示は、いかなる方法によっても実施例の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0012】
〔詳細な説明〕
ここで、本開示の特定の例示的態様を説明して、本明細書に開示された装置および方法の構造、機能、製造、および使用の原理の全体的な理解を提供する。これらの態様の1つ以上の実施例が添付図面に示されている。当業者は、本明細書に具体的に記載され、添付図面に例示されている装置および方法が非限定的な例示的態様であり、本発明の様々な実施例の範囲が特許請求の範囲によってのみ定められることを理解するであろう。1つの例示的態様に関連して例示または説明される特徴は、他の態様の特徴と組み合わせることができる。このような変更および変形は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0013】
本明細書に参照により組み込まれると言われるあらゆる特許、刊行物、または他の開示資料の全部または一部は、組み込まれる資料が、本開示に記載される既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾しない範囲においてのみ、本明細書に組み込まれる。したがって、必要な範囲で、本明細書に明示的に記載された開示は、参照により本明細書に組み込まれる、いかなる矛盾する資料にも取って代わる。参照により本明細書に組み込まれると言われているが、本明細書に記載されている既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲においてのみ組み込まれる。
【0014】
本明細書における「様々な実施例」、「いくつかの実施例」、「1つの実施例」、「ある実施例」への言及、「態様」への同様の言及などは、実施例に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のところどころにおける語句「様々な実施例において」、「いくつかの実施例において」、「1つの実施例において」、「ある実施例において」の出現、「態様」への同様の言及などは、必ずしもすべてが同じ実施例に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施例において任意の適切な方法で組み合わせることができる。したがって、1つの実施例に関連して例示または説明される特定の特徴、構造、または特性は、全体として、または一部が、1つ以上の他の実施例の特徴、構造、または特性と無制限に組み合わせることができる。このような変更および変形は、本実施例の範囲内に含まれることが意図されている。
【0015】
本明細書では、別段の指示がない限り、すべての数値パラメータは、全ての場合において、用語「約」が前置され、これにより修飾されるものとして理解されるべきであり、数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定技術の固有の可変特性を有する。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、本明細書に記載される各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0016】
また、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、列挙される範囲内に包含される全ての部分範囲を含む。例えば、「1~10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の(かつこれらを含む)、すなわち最小値が1以上で最大値が10以下である、全ての部分範囲を含む。本明細書に列挙されるいかなる最大数値限定も、その中に包含される全てのより低い数値限定を含むことが意図され、本明細書に列挙されるいかなる最小数値限定も、その中に包含される全てのより高い数値限定を含むことが意図されている。したがって、出願人は、明示的に列挙された範囲内に包含される任意の部分範囲を明示的に列挙するために、特許請求の範囲を含む本明細書を補正する権利を留保する。
【0017】
本明細書で使用される文法上の冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」が特定の例で明示的に使用されていても、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことが意図される。したがって、本明細書では、冠詞は、冠詞の文法上の目的語のうちの1つ、または1つ超(すなわち、「少なくとも1つ」)を指すのに使用される。さらに、使用の文脈上別段の定めがある場合を除き、単数名詞の使用は複数を含み、複数名詞の使用は単数を含む。
【0018】
本明細書中で使用される「活性基」とは、中和反応に関与する化学物質を意味することが意図されている。
【0019】
本明細書中で特定の成分の存在に言及する場合に使用される、「実質的に含まない(substantially free)」とは、その成分が少なくとも90%含まれないこと、いくつかの実施例では少なくとも95%、96%、97%、および98%含まれないこと、他の実施例では少なくとも99%含まれないこと、他の実施例では少なくとも99.9%含まれないこと、他の実施例では少なくとも99.99%含まれないこと、いくつかの実施例では少なくとも99.999%含まれないこと、他の実施例ではその成分が少なくとも99.9999%含まれないことを意味することが意図されている。
【0020】
処理溶液プロセスは、洗浄溶液、消毒剤溶液、および滅菌剤溶液のうちの少なくとも1つとすることができる。処理プロセスは、洗浄プロセス、消毒プロセス、および滅菌プロセスのうちの少なくとも1つとすることができる。洗浄プロセスは、洗浄溶液を用いて、汚れ、ゴミ、粒子等を低減および/または排除するプロセスとすることができる。消毒プロセスは、消毒剤溶液を利用して、細菌および/または他の形態の生物を低減および/または排除する一種の洗浄プロセスであり得る。滅菌プロセスは、滅菌剤を使用して、細菌および/または他の形態の生物を実質的に含まない滅菌対象物をもたらす、細菌および/または他の形態の生物を低減および/または排除する一種の消毒プロセスとすることができる。
【0021】
多用途処理システムでは、処理プロセスサイクル中の処理溶液のあらゆる損失を考慮するために、処理プロセスサイクルに必要とされるよりも多くの量の処理溶液をリザーバに保持することができる。典型的には、多用途処理システムから処理溶液を処分するには、多用途処理システムから全ての処理溶液を除去し、多用途処理システムの外側の二次容器に処理溶液を入れることが必要となり得る。処理溶液は、二次容器に中和剤を添加することにより、二次容器内で中和され得る。その後、中和された溶液は、例えば、中和された溶液を廃液ドレンに移すことによって、処分することができる。このプロセスは、時間がかかり、多用途処理システムの操作者を処理溶液の比較的不快な影響に曝露することがある。したがって、処理溶液への操作者の曝露を制限し、処理溶液の中和に費やされる時間を短縮し、かつ/または処理溶液の中和のための自動化手順を作成することができる、槽内中和のための方法およびシステムが提供される。
【0022】
本開示によれば、中和剤は、槽と流体連通するリザーバ内の処理溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて、槽に加えられ得る。処理溶液の第1の部分が、槽に加えられ得る。中和剤を処理溶液の第1の部分に接触させて、槽内に二次溶液を形成することができ、処理溶液の第1の部分を中和剤で中和することができる。二次溶液の第1の部分が、槽から除去され得、二次溶液の第2の部分が槽内に残る。処理溶液の第2の部分が、槽に加えられ得る。処理溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分と接触させて、槽内に三次溶液を形成することができ、処理溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分中の中和剤で中和することができる。
【0023】
図1および
図2は、本開示による処理溶液の槽内中和のためのシステム100を示す。図示のように、システム100は、リザーバ106と流体連通する槽104を含むチャンバ102を含み得る。チャンバ102は、医療装置(不図示)を受容するのに適していてよく、医療装置に対して処理プロセスを実行するのに適していてもよい。様々な実施例において、チャンバ102は、加熱要素、ポンプ、洗浄アーム、スプレーノズル、チューブ、および当業者に既知の他の装置のうちの少なくとも1つを含み得る。様々な実施例において、チャンバ102は、洗浄チャンバ、消毒チャンバ、および滅菌チャンバのうちの少なくとも1つとすることができる。ある実施例では、医療装置は内視鏡を含み得る。様々な実施例において、システム100は、内視鏡再処理装置を含み得る。
【0024】
リザーバ106は、処理溶液を受け取るのに適していてよく、処理溶液が槽104内に出力され得るまで処理溶液を貯蔵することができる。槽104は、処理ライン108を介してリザーバ106と流体連通することができる。処理ライン108は、リザーバ106から処理溶液を受け取り、処理溶液を槽104に輸送するのに適し得る。様々な実施例において、処理ライン108は、チューブ、バルブ、およびポンプのうちの少なくとも1つを含み得る。処理ライン108は、槽104に供給される処理溶液の量を制御し得る。例えば、選択された量の処理溶液が槽104に供給されるまで、処理ライン108によって、処理溶液を槽104内に計量して提供することができる。槽104は、処理ライン108を介してリザーバ106から処理溶液を受け取るのに適し得る。
【0025】
処理溶液は、洗浄溶液、消毒剤溶液、および滅菌剤溶液のうちの少なくとも1つを含み得る。ある実施例において、処理溶液は、消毒剤を含む消毒剤溶液を含む。消毒剤は、アルコール、アルデヒド、第4級アンモニウム化合物、酸化剤、および抗菌性金属溶液のうちの少なくとも1つを含み得る。ある実施例において、消毒剤は、オルトフタルアルデヒド(OPA)を含み得る。様々な実施例において、消毒剤溶液は、カリフォルニア州アーバインに位置するJohnson & Johnson companyのEthicon, Inc.の1部門であるAdvanced Sterilization Productsから入手可能なAERO-OPA(商標)を含み得る。
【0026】
槽104は槽溶液容量を有することができ、リザーバ106はリザーバ溶液容量を有することができる。様々な実施例において、リザーバ溶液容量は、槽溶液容量よりも大きくすることができる。例えば、リザーバ溶液容量は、槽溶液容量よりも少なくとも10%大きくすることができ、例えば、槽溶液容量よりも少なくとも20%大きいか、槽溶液容量よりも少なくとも30%大きいか、槽溶液容量よりも少なくとも50%大きいか、または槽溶液容量よりも少なくとも100%大きいなどとすることができる。ある実施例において、リザーバ溶液容量は、槽溶液容量よりも10%~200%大きくすることができ、例えば、10%~100%大きいなどとすることができ、他の態様では、槽溶液容量よりも20%~100%大きい。様々な実施例において、リザーバは、1リットル(L)~50L、例えば、2L~30L、10L~15L、または12Lなどの溶液容量を有する。
【0027】
処理溶液が地域法に従って環境中への処分(例えば、排水管への廃棄、廃水処理施設への輸送など)に不適切とみなされる特性を有する場合、処理溶液は特別な取り扱いを必要とし、かつ/または中和を必要とすることがある。例えば、カリフォルニア州規則集(CCR)第22編第66261.24項によると、「「水および廃水の検査のための標準的な方法(第16版)」(米国公衆衛生協会、1985年)の第800部(Part 800 of the “Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater (l6th Edition),” American Public Health Association, 1985)、および「有害廃棄物サンプルの静的急性バイオアッセイ手順」カリフォルニア州漁業狩猟局、水質汚濁防止研究所、1988年11月改訂版(“Static Acute Bioassay Procedures for Hazardous Waste Samples,” California Department of Fish and Game, Water Pollution Control Laboratory, revised November 1988)に記載された手順に従って、軟水(総硬度40~48mg/Lの炭酸カルシウム)中で、ファットヘッドミノー(ピメファレス・プロメラス(Pimephales promelas))、ニジマス(サルモ・ガイルドネリ(Salmo gairdneri))またはゴールデンシャイナー(ノテミゴヌス・クライソルーカス(Notemigonus crysoleucas))と共に測定した場合に、急性水生毒性に関する96時間LC50(acute aquatic 96-hour LC50)が500mg/L未満である場合」、廃棄物は、特別な取り扱いを必要とし、かつ/または処分前に中和を必要とする場合がある。処理溶液を中和するために、中和剤を槽104に加えることができ、それによって、処理溶液に対して特別な取り扱いが必要とされなくてもよくなり、かつ/または、処理溶液を地域法に従って環境中に処分することができる。様々な実施例において、中和剤は、処理溶液のLC50が500mg/Lを超えることができるように、処理溶液のLC50を増加させることができる。
【0028】
中和剤を槽104に加えることは、例えば、中和剤を槽104内に送り込むことによって、または中和剤を槽104に手動で加えることによって、自動化することができる。中和剤は、中和剤または固体濃縮中和剤の溶液とすることができる。中和剤は、アミノ酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、および重亜硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含み得る。アミノ酸は、アラニン、プロリン、アミノカプロン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、システイン、チロシン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびヒスチジンのうちの少なくとも1つを含み得る。種々の実施例において、アミノ酸はグリシンを含み得る。ある実施例では、中和剤は6重量%グリシン溶液を含み得る。様々な実施例において、中和剤は、ニューヨーク州ファーミングデールに所在するKem Medical Products Corp.から入手可能なKemSafe(商標) Solution Neutralizer Catalog#9074を含み得る。
【0029】
中和剤は、リザーバ106内の処理溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて槽104に加えられ得る。リザーバ106内の処理溶液を中和するのに適した中和剤の量は、中和剤中の活性基の処理溶液中の活性基に対するモル比が、少なくとも1であってよい。例えば、中和剤は、中和剤中の活性基の処理溶液中の活性基に対するモル比が1.3:1超で、例えば1.5:1超、2:1超、または3:1超で、槽104に加えられ得る。特定の実施例において、中和剤は、中和剤中の活性基の処理溶液中の活性基に対するモル比が1.1:1~10:1、例えば、1.2:1~5:1、1.3:1~3:1、または1.3:1~1.5:1などの範囲で、槽に加えられ得る。
【0030】
処理溶液の中和は、処理溶液と中和剤との間に付加物を形成することを含み得る。例えば、処理溶液がアルデヒド(例えば、OPA)を含み、中和剤がアミノ酸(例えば、グリシン)を含む場合、中和剤と処理溶液との反応はスキーム1に示すように進行することができる。
スキーム1:
【化1】
【0031】
スキーム1に示すように、アミノ酸のアミン基は、アルデヒドと反応して付加物を形成することができる。アミン基は、アルデヒド単独よりも取り扱いおよび/または処分に適した付加物を形成することによって、アルデヒドを不活性化することができる。ある実施例では、付加物はN-置換付加物である。様々な実施例において、OPAおよびグリシンを用いる場合、形成された付加物は黒色であり得、これは溶液が中和されたことを示し得る。
【0032】
処理溶液の中和は、少なくとも2段階で行われ得る。例えば、第1段階では、過剰な中和剤を槽104に加えることができ、処理溶液の第1の部分をリザーバ106から槽104に、本明細書に記載の量および比で加えることができる。処理溶液の第1の部分は、リザーバ溶液容量未満であり得る。様々な実施例において、処理溶液の第1の部分は、リザーバ溶液容量の5%~95%、例えば、10%~90%または65%~80%などである。処理溶液の第2の部分は、リザーバ106から処理溶液の第1の部分を除去した後、リザーバ106内に残ることができる。
【0033】
第1段階では、中和剤を槽104内の処理溶液の第1の部分に接触させて二次溶液を形成することができ、処理溶液の第1の部分を中和剤によって中和することができる。接触は、加熱、撹拌、および循環のうちの少なくとも1つを含み得る。二次溶液は、形成された付加物と、リザーバ106内の処理溶液の第2の部分を中和するのに適した中和剤と、を含み得る。様々な実施例において、二次溶液は、処理溶液および水のうちの少なくとも1つを含み得る。様々な実施例において、二次溶液は、処理溶液を実質的に含まなくてよい。ある実施例では、中和剤は第1段階中のみ加えられる。
【0034】
二次溶液の第1の部分は、ドレン管路110を介して槽104から除去することができる。ドレン管路110は、槽104から二次溶液を受け取るのに適することができ、二次溶液を槽104から輸送することができる。二次溶液の第2の部分は、二次溶液の第1の部分を除去した後、槽104内に残ることができる。除去される二次溶液の第1の部分の量は、二次溶液の第2の部分がリザーバ内の残りの処理溶液を中和するのに適した量の活性中和剤を含むように制御され得る。様々な実施例において、二次溶液の第2の部分は、槽溶液容量の5%~95%、例えば、10%~90%または5%~40%などである。
【0035】
第2段階では、処理溶液の第2の部分が、リザーバ106から槽104に加えられ得、槽104内の二次溶液の第2の部分に加えられ得る。第2段階では、二次溶液中に残留している活性中和剤を、槽内の処理溶液の第2の部分に接触させて三次溶液を形成することができ、処理溶液の第2の部分を中和剤によって中和することができる。接触は、加熱、撹拌、および循環のうちの少なくとも1つを含み得る。様々な実施例において、三次溶液の量は、槽溶液容量に等しいか、またはそれ未満であり得る。三次溶液は、形成された付加物を含み得る。様々な実施例において、三次溶液は、中和剤、処理溶液、および水のうちの少なくとも1つを含み得る。様々な実施例において、三次溶液は、処理溶液を実質的に含まない。特定の実施例では、第2段階中に追加の中和剤は加えられない。
【0036】
処理溶液を中和するための段階数は限定的なものと考えるべきではない。例えば、リザーバ内の処理溶液は、少なくとも3段階など、2つ以上の段階で、槽104内で中和することができる。様々な実施例において、処理溶液の第2の部分は、処理溶液の第1の部分の除去後のリザーバ106内の残りの処理溶液の全てである。様々な実施例において、処理溶液の第2の部分は、リザーバ106内の残りの処理溶液の全てよりも少ない。ある実施例では、第1段階の後に追加の中和剤は加えられない。
【0037】
ある実施例では、リザーバ106内の処理溶液は、少なくとも3段階で中和することができる。例えば、第3段階では、三次溶液の第1の部分は、ドレン管路110を介して槽104から除去することができる。三次溶液の第2の部分は、三次溶液の第1の部分を除去した後、槽104内に残ることができる。三次溶液の第2の部分は、リザーバ内の残りの処理溶液を中和するのに適した量の活性中和剤を含む。
【0038】
処理溶液の第3の部分が、リザーバ106から槽104に加えられ得、槽104内の三次溶液の第2の部分に加えられ得る。三次溶液の第2の部分に残った活性中和剤を、槽104内の処理溶液の第3の部分と接触させて四次溶液を形成することができ、処理溶液の第3の部分を中和剤によって中和することができる。接触は、加熱、循環、および撹拌のうちの少なくとも1つを含み得る。様々な実施例において、四次溶液の量は、槽溶液容量と等しいか、またはそれ未満であり得る。四次溶液は、形成された付加物を含み得る。様々な実施例において、四次溶液は、中和剤、処理溶液、および水のうちの少なくとも1つを含み得る。様々な実施例において、四次溶液は、処理溶液を実質的に含まない。ある実施例では、第3段階中に追加の中和剤は加えられない。
【0039】
処理溶液が取り扱いおよび/または処分にさらに適したものとなり得るように、必要に応じてさらなる中和段階を追加してリザーバ106内の処理溶液を中和してもよい。槽から除去される、中和プロセスの二次、三次、および/もしくは四次溶液、ならびに/または追加の溶液は、LC50が、500mg/L超、例えば、600mg/L超、700mg/L超、800mg/L超、1000mg/L超、または2000mg/L超など、とすることができる。様々な実施例において、槽から除去される、中和プロセスの二次、三次、および/もしくは四次溶液、ならびに/または追加の溶液は、0.1重量%未満の、活性処理溶液(例えば、中和されていない活性基を含む処理溶液)の二次溶液、例えば、0.01重量%未満の二次溶液、また、ある実施例においては、実質的に0重量%の二次溶液を含有する。
【0040】
二次、三次、および/もしくは四次溶液、ならびに/または追加の溶液は、ドレン管路110を介して槽104から除去することができ、処分することができる。三次溶液を除去した後、リザーバ106および槽104のうちの少なくとも一方を水溶液ですすぐことができる。様々な実施例では、リザーバ106および槽104のそれぞれを、水溶液で複数回すすぐことができ、いくつかの実施例では、少なくとも2回、他の実施例では、少なくとも3回、他の実施例では、3回すすぐ。水溶液は水を含み得る。
【0041】
様々な実施例では、処理の第1段階および第2段階は、1分~20分、例えば2分~10分など、また、他の実施例では2~5分、の持続時間を有することができる。ある実施例では、すすぎステージは、1分~30分、例えば、1分~20分または1分~10分など、の持続時間を有することができる。様々な実施例において、リザーバ106内の処理溶液を中和する時間は、6分~1時間、例えば、12分~30分または20分~25分など、とすることができる。
【0042】
第1段階で加えられ得る中和剤の量は、式1で表すことができる。
【数1】
式中、
比
Mは、中和剤の活性基の処理溶液の活性基に対する望ましいモル比であり、
TSは、リザーバ内の処理溶液の量であり、
SS
Rは、除去される二次溶液のパーセントであり、
N
Rは、中和のその後の各段階で除去される、中和された溶液のパーセントの積である。2段階中和の場合、変数N
Rは1に等しい。
【0043】
図3A~
図3Hは、本開示による中和の様々なステージにおける槽内中和のためのシステム100の概略正面図である。
図3Aは、中和の第1ステージにおけるシステム100を示す。システム100は、チャンバ102を含み、このチャンバは、処理ライン108を介してリザーバ106と、ドレン管路を110介して処分システム312と、流体連通している槽104を含む。リザーバ106は、処理溶液314で満たされ得る。
【0044】
図3Bは、中和の第2ステージを示しており、ここでは、中和剤316が、リザーバ106内の処理溶液314を中和するのに適した中和剤316の量を超えて槽104に加えられている。
図3Cの中和の第3ステージに示すように、処理溶液314の第1の部分を槽104に加えることができ、処理溶液314の第1の部分を中和剤316に接触させて、二次溶液318を形成することができる。様々な実施例において、中和剤316は処理溶液314の第1の部分と反応して、処理溶液314の第1の部分と中和剤316との間に付加物を形成する。様々な実施例において、処理溶液314の第1の部分は、中和剤316を槽104に加える前に、槽104に加えられ得る。
図3Dは、中和の第4ステージを示しており、ここでは、二次溶液318の第1の部分が、ドレン管路110を介して槽104から除去され、廃棄物320として処分システム312に提供される。二次溶液318の第2の部分318aは、槽104内に残る。二次溶液318の第2の部分318aは、リザーバ106内の残りの処理溶液3l4aを中和するのに適した量の中和剤316を含む。様々な実施例では、
図3B~
図3Dは中和の第1段階とすることができる。
【0045】
図3Eは、中和の第5ステージを示しており、ここでは、処理溶液314の第2の部分を槽104に加えることができ、処理溶液314の第2の部分を二次溶液318の第2の部分318aと接触させて三次溶液322を形成することができる。様々な実施例において、二次溶液318中の中和剤316は、処理溶液314の第2の部分と反応して、処理溶液314の第2の部分と二次溶液318中の中和剤316との間に付加物を形成することができる。様々な実施例において、処理溶液314の第2の部分は、リザーバ106内の残りの処理溶液3l4aを含み得る。他の実施例では、処理溶液314の第2の部分は、リザーバ106内の残りの処理溶液314aより少なくてもよい。
図3Dの第4ステージおよび
図3Eの第5ステージは、リザーバ106内の残りの処理溶液を中和するために、必要に応じて繰り返され得る。様々な実施例において、
図3Eは、中和の第2段階とすることができる。
【0046】
様々な実施例では、
図3Fの第6ステージに示すように、三次溶液322は、ドレン管路110を介して槽104から除去され、廃棄物320として処分システム312に供給されている。
図3Gは、第7ステージを示しており、ここでは、槽104が水溶液324aで満たされて、槽104をすすぎ、残留中和剤316、処理溶液314、二次溶液318、三次溶液322、および/または槽104から除去される中和プロセスの追加の溶液を除去することができる。様々な実施例において、第7ステージでは、リザーバ106は水溶液324bで満たされ得る。水溶液324a、324bは、ドレン管路110を介してシステム100から除去することができ、
図3Hの第8ステージに示すように、廃棄物320として処分システム312に提供することができる。
図3Gの第7ステージおよび
図3Hの第8ステージは、リザーバ106から残留処理溶液314を、かつ/または残留中和剤316、処理溶液314、二次溶液318、三次溶液322、および/もしくは槽104から除去される中和プロセスの追加の溶液を、除去するために、必要に応じて繰り返され得る。
【0047】
本開示によれば、槽内中和は、中和剤をリザーバに加える必要がないので、リザーバ内の交差汚染を制限することができる。中和剤をリザーバに直接加えた場合、中和プロセス後に残留中和剤が残る場合があり、リザーバに加えられるその後の処理溶液を劣化させる可能性がある。劣化した処理溶液は、処理プロセスにおいて、有効でないか、または適切に洗浄、消毒および/もしくは衛生化しない場合がある。
【0048】
様々な実施例において、本開示による方法およびシステムは、中和剤を槽に1回加えるだけで、リザーバ内の処理溶液を中和することができる。中和剤を1回加えることで、操作者に曝露される溶液の状態を改善し、かつ/または処理溶液の中和に費やす時間を減少させることができる。
【0049】
〔実施例〕
12L容量のリザーバを、内視鏡再処理装置の9Lの槽と流体連通させて準備した。リザーバは、カリフォルニア州アーバインに位置するJohnson & Johnson companyのEthicon, Inc.の1部門であるAdvanced Sterilization Productsから入手可能な、12LのAERO-OPA(商標)(0.55重量%のOPA)で満たされた。リザーバ内の12LのAERO-OPA(商標)は、2段階で中和された。各段階の持続時間は5分であり、総中和時間は10分であった。
【0050】
第1段階では、ニューヨーク州ファーミングデールに所在するKem Medical Products Corp.から入手可能な、2LのKemSafe(商標) Solution Neutralizer Catalog#9074(6%重量のグリシン)を、槽に満たした。7LのAERO-OPA(商標)をリザーバから槽に提供した。7LのAERO-OPA(商標)を2Lの中和剤と接触させ、二次溶液を形成した。5Lの二次溶液が槽から除去され、4Lの二次溶液が槽に残った。
【0051】
第2段階では、残りの5LのAERO‐OPA(商標)をリザーバから槽に供給し、槽に残っている4Lの二次溶液と接触させて三次溶液を形成した。三次溶液を槽から除去し、槽を9Lの水ですすいだ。
【0052】
二次溶液と三次溶液を混合して試験し、混合溶液のLC50を決定した。この試験は、「水および廃水の検査のための標準的な方法(第16版)」米国公衆衛生協会、1985年、および「有害廃棄物サンプルの静的急性バイオアッセイ手順」カリフォルニア州漁業狩猟局、水質汚濁防止研究所、1988年11月改訂版に準拠して、ファットヘッドミノー(ピメファレス・プロメラス)で実施された。LC50試験に用いた混合溶液の濃度は、250mg/L、500mg/L、および750mg/Lであった。96時間にわたるファットヘッドミノーの平均生存率は、250mg/Lおよび500mg/L濃度で、100%であり、750mg/L濃度では、ファットヘッドミノーの平均生存率は、95%であった。混合溶液のLC50は、750mg/Lより大きいと決定された。したがって、槽がリザーバに存在するAERO‐OPA(商標)の全量を保持しないとしても、AERO‐OPA(商標)は中和剤を1回加えるのみで中和された。
【0053】
本開示による本発明の様々な態様は、以下の番号付きの項に列挙された態様を含むがこれらに限定されない。
1.リザーバと流体連通している槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法において、
リザーバ内の処理溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて中和剤を槽に加えることと、
処理溶液の第1の部分を槽に加えることと、
槽内で中和剤を処理溶液の第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、処理溶液の第1の部分を中和剤で中和することと、
槽から二次溶液の第1の部分を除去することであって、二次溶液の第2の部分が槽に残る、ことと、
処理溶液の第2の部分を槽に加えることと、
槽内で処理溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分に接触させて三次溶液を形成し、二次溶液の第2の部分中の中和剤で処理溶液の第2の部分を中和することと、
を含む、方法。
2.槽が第1の溶液容量を有し、リザーバが第1の溶液容量より大きい第2の溶液容量を有する、第1項に記載の方法。
3.三次溶液を槽から除去することをさらに含む、第1項または第2項に記載の方法。
4.三次溶液を除去した後に、リザーバおよび槽のうちの少なくとも一方を水溶液ですすぐことをさらに含む、第3項に記載の方法。
5.三次溶液の一部を除去し、処理溶液の第3の部分を槽に加えて四次溶液を形成することをさらに含む、第1項~第4項のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
6.二次溶液の第2の部分が、処理溶液の第2の部分を中和するのに適した量の中和剤を含む、第1項~第5項のいずれか一項に記載の方法。
7.中和することが、処理溶液と中和剤との間に付加物を形成することを含む、第1項~第6項のいずれか一項に記載の方法。
8.中和剤は、中和剤中の活性基と処理溶液中の活性基とのモル比が1.3:1超で、槽に加えられる、第1項~第7項のいずれか一項に記載の方法。
9.中和剤が、アミノ酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、および重亜硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、第1項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
10.処理溶液が、アルコール、アルデヒド、第4級アンモニウム化合物、酸化剤、および抗菌性金属溶液の群から選択される少なくとも1つの消毒剤を含む、第1項~第9項のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
11.処理溶液がオルトフタルアルデヒドを含み、中和剤がグリシンを含む、第1項~第10項のいずれか一項に記載の方法。
12.二次溶液および三次溶液のうちの少なくとも一方を加熱すること、攪拌すること、および循環させること、のうちの少なくとも1つをさらに含む、第1項~第11項のいずれか一項に記載の方法。
13.中和剤が、処理溶液の第1の部分および第2の部分を中和するために槽に1回加えられる、第1項~第12項のいずれか一項に記載の方法。
14.三次溶液中の残留活性処理溶液が三次溶液の0.01重量%未満である、第13項に記載の方法。
15.リザーバと流体連通している槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法において、槽は、第1の溶液容量を有し、リザーバは、第1の溶液容量よりも大きい第2の溶液容量を有し、方法は、
リザーバ内の消毒剤溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて中和剤を槽に加えることと、
消毒剤溶液の第1の部分を槽に加えることと、
槽内で中和剤を消毒剤溶液の第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、消毒剤溶液の第1の部分を中和剤で中和することと、
二次溶液の第1の部分を槽から除去することであって、二次溶液の第2の部分が槽内に残り、二次溶液の第2の部分が消毒剤溶液の第2の部分を中和するのに適した量の中和剤を含む、ことと、
消毒剤溶液の第2の部分を槽に加えることと、
消毒剤溶液の第2の部分を槽内の二次溶液の第2の部分に接触させて三次溶液を形成し、消毒剤溶液の第2の部分を二次溶液の第2の部分中の中和剤で中和することと、
を含む、方法。
【0056】
16.中和剤が、消毒剤の第1の部分および第2の部分を中和するために槽に1回加えられる、第15項に記載の方法。
17.槽内中和のためのシステムにおいて、
消毒剤溶液を含むリザーバと、
リザーバと流体連通しており、リザーバから消毒剤溶液を受け取るのに適した槽であって、槽が、第1の溶液容量を有し、リザーバが、第1の溶液容量よりも大きい第2の溶液容量を有する、槽と、
槽内にあり、リザーバ内の消毒剤溶液を中和するのに適した中和溶液であって、中和剤中の活性基と消毒剤溶液中の活性基とのモル比が1.3:1より大きい、中和溶液と、
を含む、システム。
18.中和剤と消毒剤溶液中の活性基とのモル比が、1.5:1より大きい、第17項に記載のシステム。
19.中和剤が、アミノ酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、および重亜硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、第17項または第18項に記載のシステム。
20.消毒剤溶液が、アルコール、アルデヒド、第4級アンモニウム化合物、酸化剤、および抗菌性金属溶液のうちの少なくとも1つを含む、第17項~第19項のいずれか一項に記載のシステム。
【0057】
当業者であれば、本明細書に記載の構成要素(例えば、動作)、装置、物体、およびそれらに付随する説明が、概念の明確化のための例として使用されていること、ならびに様々な構成の改変が企図されることを理解されよう。したがって、本明細書で使用される場合、記載された特定の典型および付随する議論は、それらのより一般的な種類を表すことを意図している。一般に、任意の特定の典型の使用は、その種類を表すことを意図しており、特定の構成要素(例えば、動作)、装置、および物体を含まないことが、限定とみなされるべきではない。
【0058】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者は、そこに記載される動作が一般に任意の順序で実行され得ることを理解するであろう。また、種々の動作フローがシーケンスで示されているが、種々の動作は、示されている順序以外の順序で実行されてもよく、または同時に実行されてもよいことを理解されたい。このような代替順序の例としては、文脈上別段の指示がない限り、重複、差し挟み(interleaved)、中断、順序変更、増加、予備、補足、同時、逆、または他の変形順序が挙げられる。さらに、「~に反応して(responsive to)」、「~に関連して(related to)」、または他の過去時制形容詞のような用語は、文脈がそうでないと指示しない限り、一般に、そのような変形を排除することを意図しない。
【0059】
当業者であれば、本明細書に記載の構成要素、装置、動作/行動、および物体、ならびにそれらに付随する説明が、概念の明確化のための例として使用されていること、ならびに様々な構成の改変が企図されることを認識するであろう。したがって、本明細書で使用される場合、記載される特定の実施例/実施形態および付随する議論は、それらのより一般的な種類を表すことを意図している。一般に、任意の特定の典型の使用は、その種類を表すことを意図しており、特定の構成要素、装置、動作/行動、および物体を含まないことが、限定とみなされるべきではない。本開示は、本開示の様々な態様および/またはその潜在的適用を説明する目的で様々な特定の態様の説明を提供するが、当業者は変形および改変を想到するであろうことが理解される。
【0060】
したがって、本明細書に記載される1つまたは複数の発明は、少なくとも特許請求される範囲と同程度に広く、本明細書に提供される特定の例示的態様によってより狭く定義されることはないと理解されるべきである。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) リザーバと流体連通している槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法において、
前記リザーバ内の処理溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて中和剤を前記槽に加えることと、
前記処理溶液の第1の部分を前記槽に加えることと、
前記槽内で前記中和剤を前記処理溶液の前記第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、前記処理溶液の前記第1の部分を前記中和剤で中和することと、
前記槽から前記二次溶液の第1の部分を除去することであって、前記二次溶液の第2の部分が前記槽内に残る、ことと、
前記処理溶液の第2の部分を前記槽に加えることと、
前記槽内で前記処理溶液の前記第2の部分を前記二次溶液の前記第2の部分と接触させて三次溶液を形成し、前記処理溶液の前記第2の部分を前記二次溶液の前記第2の部分中の中和剤で中和することと、
を含む、方法。
(2) 前記槽が第1の溶液容量を有し、前記リザーバが前記第1の溶液容量より大きい第2の溶液容量を有する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記三次溶液を前記槽から除去することをさらに含む、実施態様1または2に記載の方法。
(4) 前記三次溶液を除去した後に、前記リザーバおよび前記槽のうちの少なくとも一方を水溶液ですすぐことをさらに含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記三次溶液の一部を除去し、前記処理溶液の第3の部分を前記槽に加えて四次溶液を形成することをさらに含む、実施態様1から4のいずれかに記載の方法。
【0062】
(6) 前記二次溶液の前記第2の部分が、前記処理溶液の前記第2の部分を中和するのに適した量の中和剤を含む、実施態様1から5のいずれかに記載の方法。
(7) 中和することが、前記処理溶液と前記中和剤との間に付加物を形成することを含む、実施態様1から6のいずれかに記載の方法。
(8) 前記中和剤は、前記中和剤中の活性基の前記処理溶液中の活性基に対するモル比が1.3:1超で、前記槽に加えられる、実施態様1から7のいずれかに記載の方法。
(9) 前記中和剤が、アミノ酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、および重亜硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施態様1から8のいずれかに記載の方法。
(10) 前記処理溶液が、アルコール、アルデヒド、第4級アンモニウム化合物、酸化剤、および抗菌性金属溶液の群から選択される少なくとも1つの消毒剤を含む、実施態様1から9のいずれかに記載の方法。
【0063】
(11) 前記処理溶液がオルトフタルアルデヒドを含み、前記中和剤がグリシンを含む、実施態様1から10のいずれかに記載の方法。
(12) 前記二次溶液および前記三次溶液のうちの少なくとも一方を加熱すること、攪拌すること、および循環させること、のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施態様1から11のいずれかに記載の方法。
(13) 前記中和剤が、前記処理溶液の前記第1の部分および前記第2の部分を中和するために、前記槽に1回加えられる、実施態様1から12のいずれかに記載の方法。
(14) 前記三次溶液中の残留活性処理溶液が、前記三次溶液の0.01重量%未満である、実施態様13に記載の方法。
(15) リザーバと流体連通している槽を含むチャンバ内での槽内中和のための方法において、前記槽は、第1の溶液容量を有し、前記リザーバは、前記第1の溶液容量よりも大きい第2の溶液容量を有し、前記方法は、
前記リザーバ内の消毒剤溶液を中和するのに適した中和剤の量を超えて中和剤を前記槽に加えることと、
前記消毒剤溶液の第1の部分を前記槽に加えることと、
前記槽内で前記中和剤を前記消毒剤溶液の前記第1の部分に接触させて二次溶液を形成し、前記消毒剤溶液の前記第1の部分を前記中和剤で中和することと、
前記二次溶液の第1の部分を前記槽から除去することであって、前記二次溶液の第2の部分が前記槽内に残り、前記二次溶液の前記第2の部分が前記消毒剤溶液の第2の部分を中和するのに適した量の中和剤を含む、ことと、
前記消毒剤溶液の前記第2の部分を前記槽に加えることと、
前記消毒剤溶液の前記第2の部分を前記槽内の前記二次溶液の前記第2の部分に接触させて三次溶液を形成し、前記消毒剤溶液の前記第2の部分を前記二次溶液の前記第2の部分中の中和剤で中和することと、
を含む、方法。
【0064】
(16) 前記中和剤が、前記消毒剤の前記第1の部分および前記第2の部分を中和するために前記槽に1回加えられる、実施態様15に記載の方法。
(17) 槽内中和のためのシステムにおいて、
消毒剤溶液を含むリザーバと、
前記リザーバと流体連通しており、前記リザーバから前記消毒剤溶液を受け取るのに適した槽であって、前記槽が、第1の溶液容量を有し、前記リザーバが、前記第1の溶液容量よりも大きい第2の溶液容量を有する、槽と、
前記槽内にあり、前記リザーバ内の前記消毒剤溶液を中和するのに適した中和溶液であって、中和剤中の活性基と前記消毒剤溶液中の活性基とのモル比が1.3:1より大きい、中和溶液と、
を含む、システム。
(18) 中和剤と前記消毒剤溶液中の活性基とのモル比が、1.5:1より大きい、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記中和剤が、アミノ酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、および重亜硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施態様17または18に記載のシステム。
(20) 前記消毒剤溶液が、アルコール、アルデヒド、第4級アンモニウム化合物、酸化剤、および抗菌性金属溶液のうちの少なくとも1つを含む、実施態様17から19のいずれかに記載のシステム。