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特許7455768内視鏡較正システム、内視鏡装置、内視鏡装置の較正方法および内視鏡較正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】内視鏡較正システム、内視鏡装置、内視鏡装置の較正方法および内視鏡較正プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240318BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61B1/045 610
G02B23/26 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021012689
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116504
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】宮屋敷 英弘
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0295085(US,A1)
【文献】特開2012-147871(JP,A)
【文献】特開2007-171941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡を較正するシステムであって、
前記光学アダプタと前記内視鏡のスコープとを組み合わせた光学系により画像を取得する撮像部と、
第一スコープと第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータと、
前記第一スコープと第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータと、
第二スコープと前記第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータと、
を測定するパラメータ測定部と、
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定するパラメータ推定部と、
を備える、
内視鏡較正システム。
【請求項2】
前記光学的特性を示すパラメータは、前記光学系の光学系歪みを補正するパラメータを含む、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項3】
前記光学的特性を示すパラメータは、前記光学系の視野マスク形状に関するパラメータを含む、
請求項2に記載の内視鏡較正システム。
【請求項4】
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータは、同一の光学的特性の測定方法により測定したパラメータである、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項5】
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータは、前記光学アダプタを取り付けた前記内視鏡の前記光学系により取得した前記画像から測定される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項6】
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータは、前記内視鏡が備える制御装置により算出される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項7】
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータは、前記内視鏡が備える制御装置とは別体の外部演算装置により算出される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項8】
前記第二パラメータは、前記内視鏡に装着される記録媒体に保存される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項9】
前記第三パラメータは、前記内視鏡または前記第二スコープ内に備えられた記録部に保存される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項10】
前記第一パラメータと前記第二パラメータと前記第三パラメータの少なくとも一部は、前記内視鏡と通信を行うサーバに保存される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項11】
前記第四パラメータは、前記第一パラメータと前記第二パラメータと前記第三パラメータとを加減算することにより算出される、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項12】
前記パラメータ推定部は、前記内視鏡が備える制御装置である、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項13】
前記パラメータ推定部は、前記内視鏡と通信を行うサーバである、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項14】
前記第四パラメータが保存される記録部と、
前記第二スコープおよび前記第二光学アダプタの個体識別情報を受け付け、前記記録部に前記第四パラメータが保存されているかを判定し、保存されている場合は前記第四パラメータを使用し、保存されていない場合は新たに前記第四パラメータを推定する制御装置と、
を有する、
請求項1に記載の内視鏡較正システム。
【請求項15】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡と、
前記内視鏡を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第一スコープと第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータと、前記第一スコープと第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータと、第二スコープと前記第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータと、を外部から取得して、
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定する、
内視鏡装置。
【請求項16】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置を較正する方法であって、
第一スコープと第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータを測定するステップと、
前記第一スコープと第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータを測定するステップと、
第二スコープと前記第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータを測定するステップと、
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定するステップと、
を備える、
内視鏡装置の較正方法。
【請求項17】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置が備えるコンピュータに、
第一スコープと第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータを測定するステップと、
前記第一スコープと第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータを測定するステップと、
第二スコープと前記第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータを測定するステップと、
前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定するステップと、
を実施させる、
内視鏡較正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡較正システム、内視鏡装置、内視鏡装置の較正方法および内視鏡較正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置では、内視鏡のスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系に固有の光学的歪みが生じる場合がある。特許文献1などに記載の従来の内視鏡装置においては、予め測定可能なスコープや光学アダプタの光学的特性を示すパラメータを予め測定しておき、スコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系における固有の光学的歪みを予め測定したパラメータを組み合わせて補正する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-171941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などに記載の従来の内視鏡装置においては、光学アダプタを取り付けていないスコープのパラメータと、光学アダプタを取り付けたスコープのパラメータと、をそれぞれ測定する必要があり、別々の較正手段や設備が必要であった。また、特許文献1などに記載の従来の内視鏡装置においては、測定した各種パラメータから光学的歪みを含む光学的特性を補正する方法は、スコープの差分パラメータを事前に算出する必要があり、光学アダプタとスコープとを組み合わせたパラメータを直接算出できないため、作業や計算が複雑であった。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、より簡易な方法により内視鏡のスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系における固有の光学的特性を補正できる内視鏡較正システム、内視鏡装置、内視鏡装置の較正方法および内視鏡較正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る内視鏡較正システムは、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡を較正するシステムであって、前記光学アダプタと前記内視鏡のスコープとを組み合わせた光学系により画像を取得する撮像部と、第一スコープと第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータと、前記第一スコープと第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータと、第二スコープと前記第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータと、を測定するパラメータ測定部と、前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定するパラメータ推定部と、を備える。
【0007】
本発明の第二の態様に係る内視鏡装置は、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡と、前記内視鏡を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、第一スコープと第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータと、前記第一スコープと第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータと、第二スコープと前記第一光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータと、を外部から取得して、前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタとを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定する。
【0008】
本発明の第三の態様に係る内視鏡装置の較正方法は、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置を較正する方法であって、第一スコープと第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータを測定するステップと、前記第一スコープと第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータを測定するステップと、第二スコープと前記第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータを測定するステップと、前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定するステップと、を備える。
【0009】
本発明の第四の態様に係る内視鏡較正プログラムは、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置が備えるコンピュータに、第一スコープと第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第一パラメータを測定するステップと、前記第一スコープと第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第二パラメータを測定するステップと、第二スコープと前記第一光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第三パラメータを測定するステップと、前記第一パラメータ、前記第二パラメータおよび前記第三パラメータを用いて、前記第二スコープと前記第二光学アダプタを組み合わせた光学系の光学的特性を示す第四パラメータを推定するステップと、を実施させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内視鏡較正システム、内視鏡装置、内視鏡装置の較正方法および内視鏡較正プログラムによれば、より簡易な方法により内視鏡のスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系における固有の光学的特性を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態に係る内視鏡較正システムの内視鏡装置の斜視図である。
図2】同内視鏡装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3】同内視鏡装置の光学アダプタとスコープとを示す模式図である。
図4】同内視鏡較正システムを示す図である。
図5】同内視鏡較正システムの動作フローチャートである。
図6】同内視鏡較正システムの光学特性測定装置による測定されるパラメータを説明する図である。
図7】測定されたパラメータの保存先を示す図である。
図8】同内視鏡較正システムのキャリブレーション装置により算出されるパラメータを示す図である。
図9】第二実施形態に係る内視鏡較正システムの光学特性測定装置による測定されるパラメータを示す図である。
図10】同内視鏡較正システムにおける測定されたパラメータの保存先を示す図である。
図11】第三実施形態に係る内視鏡較正システムの光学特性測定装置による測定されるパラメータを示す図である。
図12】第四実施形態に係る内視鏡較正システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡較正システム200について、図1から図8を参照して説明する。
【0013】
[内視鏡装置100]
図1は内視鏡装置100の斜視図である。
内視鏡装置100は、工業用の内視鏡装置であり、内視鏡1と、制御装置3と、表示部4と、装置本体5と、操作部6と、を備える。表示部4は、内視鏡1で撮像された被写体の画像や操作メニュー、計測画像等を表示する。装置本体5は、制御装置3を格納する筺体である。操作部6は、内視鏡1の制御に必要な操作が入力される入力装置である。
【0014】
表示部4は、装置本体5と一体に設けられている。表示部4のディスプレイは、装置本体5の表面に配置されている。表示部4は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどである。表示部4のディスプレイは、タッチパネルであってもよい。表示部4は、内視鏡装置100と通信可能な外部端末に設けられていてもよい。外部端末は、例えばコンピュータ、携帯電話、タブレット、スマートフォンなどである。
【0015】
操作部6は、湾曲操作部およびボタン操作部を有する。湾曲操作部には、ジョイスティックまたはレバー等が配置されている。ユーザは、ジョイスティックまたはレバーを操作することにより、湾曲部12を湾曲させることができる。複数のスイッチがボタン操作部に配置されている。ユーザは、スイッチを操作することにより、内視鏡装置100による撮像動作や計測動作を制御することができる。これらの操作は、内視鏡装置100と通信可能な外部端末から実施されてもよい。外部端末は、例えばコンピュータ、携帯電話、タブレット、スマートフォンなどである。
【0016】
[内視鏡1]
内視鏡1は、細長な挿入部10と、挿入部10に着脱可能な光学アダプタ2と、を備える。内視鏡1は、光学アダプタ2を交換することによって光学系の一部を変更可能である。
【0017】
挿入部10は、観察または計測の対象である被検体の内部に挿入される。挿入部10は、硬質な先端部11と、複数の異なる方向に湾曲可能な湾曲部12と、柔軟性を有する可撓管部13と、を有する。先端部11と、湾曲部12と、可撓管部13と、は先端側から順に接続されている。可撓管部13は、操作部6に接続されている。挿入部10は、挿入部10に着脱可能な光学アダプタが先端部11に装着されることで光学系を形成し、観察及び計測が可能となる。
【0018】
図2は、内視鏡装置100の内部構成を示す機能ブロック図である。
先端部11は、スコープ16を有する。スコープ16は、光源15と、光学系17と、撮像素子18と、スコープ内部記録部19と、を有する。先端部11には、被写体像を結像するための光学アダプタ2が着脱可能である。
【0019】
スコープ16は、交換可能なスコープユニットが装着されたものであってもよい。ユーザは、例えば、観測用スコープユニット、計測用スコープユニット、長さや径の異なるスコープユニット等、使用する目的に対応したスコープユニットを装着してもよい。また、ユーザは、古くなったスコープユニットを同一種類かつ新品(異なる個体)のスコープユニットに交換してもよい。
【0020】
光源15は、被写体に照射する光を発光する光源である。光源15は、制御装置3から出力された駆動信号に応じた光量およびタイミングで、光を発光する。光源15は、例えば、白色LED(Light Emitting Diode)光源や、R(赤)、G(緑)、B(青)など、複数の異なる波長の光を出射する複数のLEDが含まれてもよい。
【0021】
撮像素子18は、光学系17を経由して結像された被写体像を光電変換し、撮像信号を生成する。撮像素子18は、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等である。
【0022】
スコープ内部記録部19は、スコープ16に関するパラメータや、ID情報(シリアルナンバーなどの個体識別番号)等のスコープ16の個体ごとに異なる情報を記録する不揮発性の記録媒体である。スコープ内部記録部19は、例えばROM、フラッシュメモリなどの書き込み可能な不揮発性メモリ等で構成される。
【0023】
光学アダプタ2は、先端部11の挿入部10に着脱可能なアダプタであり、例えばステレオ計測光学アダプタである。光学アダプタ2は、光学系21を有する。光学アダプタ2の光学系21は、スコープ16の光学系17と組み合わされて内視鏡1の光学系を構成する。内視鏡1の光学系は、被写体像の光を撮像素子18に入射させる。
【0024】
図3は、光学アダプタ2とスコープ16とを示す模式図である。
光学アダプタ2の光学系21は、2つの対物レンズ23(第一対物レンズ231および第二対物レンズ232)と、リレー光学系24と、を有する。
【0025】
2つの対物レンズ23(第一対物レンズ231および第二対物レンズ232)のそれぞれは、入射した光、すなわち、光源15が発光した光が照射された被写体からの反射光を撮像素子18側に出射し、被写体像を撮像素子18に結像させる光学レンズである。第一対物レンズ231および第二対物レンズ232のそれぞれは、被写体からの反射光を、同じ(共通の)結像領域に結像させる光学レンズである。第一対物レンズ231および第二対物レンズ232のそれぞれは、被写体からの反射光を、撮像素子18の撮像領域の全体に結像させる。第一対物レンズ231および第二対物レンズ232は、いずれか一方が右目に相当する光学レンズであり、他方が左目に相当する光学レンズである。このため、第一対物レンズ231および第二対物レンズ232のそれぞれが撮像素子18に結像させる被写体像には、視差が表れる。これにより、内視鏡装置100は、被写体の3次元画像を生成して、ステレオ計測を行うことができる。
【0026】
なお、光学アダプタ2は、ステレオ計測光学アダプタに限らず、計測可能であれば、二眼、単眼、直視、側視用など様々な光学系を有してもよい。また、光学アダプタ2を用いた計測方式は、上述したステレオ計測に限定されず、例えば位相シフト法などを含む位相計測であってもよい。
【0027】
リレー光学系24は、光学アダプタ2側からスコープ16側まで光線をリレーし、ステレオ光学系からの光線を平行化する。リレー光学系24は移動可能な遮光部材等を備えてもよい。遮光部材等は例えば、遮光部材等を移動させることによって、2つの対物レンズ23(第一対物レンズ231および第二対物レンズ232)から撮像素子18に入射する光を切り替える機械的な機構(例えば、アクチュエータなど)を含む。
【0028】
制御装置3は、図2に示すように、画像処理部31と、メイン制御部32と、演算処理部33と、記録部36と、記録媒体読み込み部37と、を有する。
【0029】
画像処理部31は、撮像素子18を駆動し、撮像素子18から撮像信号を取得する。画像処理部31は、撮像信号をNTSC信号等の映像信号に変換する。生成された映像画像は、表示部4に転送される。撮像素子18、画像処理部31およびメイン制御部32は、「撮像部」の一例である。
【0030】
制御装置3、とくにメイン制御部32は、図10に示すように、1つ以上のプロセッサと、プログラムを読み込み可能なメモリ等を有するプログラム実行可能な処理装置(コンピュータ)である。メイン制御部32は、内視鏡較正プログラムを実行することにより内視鏡装置100の較正を実施する。1つ以上のプロセッサのそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などを含むハードウェアであり、1つ以上のメモリ等に記憶されている図示しないプログラムを実行することで、プログラムされた処理を行う。また、1つ以上のプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含んでもよい。
【0031】
演算処理部33は、内視鏡装置100の較正するときに実施する測定やキャリブレーションにおける演算処理の一部および全部を実施する。演算処理部33は、例えば専用の演算回路によって構成されている。専用の演算回路とは、メイン制御部32が有するプロセッサとは別体のプロセッサ(CPU,GPU、DSP等)、ASICやFPGAに実装された論理回路、およびそれらの組み合わせである。つまり、制御装置3は、前述の1つ以上のプロセッサや専用の演算回路によって構成されている。
【0032】
画像処理部31および演算処理部33の少なくとも一部の処理は、メイン制御部32によって実施されてもよい。
【0033】
記録部36は、上述したプログラムや必要なデータを記憶する不揮発性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。記録部36は、例えば1つまたは複数の任意の半導体メモリであり、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリなどの書き込み可能な不揮発性メモリや、CD-ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置等で構成される。
【0034】
記録媒体読み込み部37は、USBメモリ、外付けハードディスク、メモリカード等の記録媒体Mが着脱可能であり、装着された記録媒体Mから記録されたデータを読み出すことができる。読み出されたデータは、メイン制御部32に転送される。記録媒体Mに記録されているデータとは、例えば内視鏡装置100に装着しているスコープ16や光学アダプタ2に関するパラメータ、ID番号(個体識別情報)などである。
【0035】
[内視鏡較正システム200]
図4は、内視鏡較正システム200を示す図である。
内視鏡較正システム200は、内視鏡1の光学系を較正するシステムである。内視鏡較正システム200は、光学特性測定装置210と、キャリブレーション装置220と、を備える。
【0036】
[光学特性測定装置210]
光学特性測定装置210は、内視鏡装置100を用いて内視鏡1のスコープ16と光学アダプタ2とを組み合わせた光学系に固有の光学的歪みを含む光学的特性を測定する装置である。光学特性測定装置210は、例えば内視鏡装置100の生産工場内に設置される治具装置である。光学特性測定装置210は、内視鏡装置100と、格子状のチャート211と、を備える。
【0037】
光学特性測定装置210は、光学アダプタ2とスコープ16とを組み合わせた内視鏡1の光学系により、格子状のチャート211を撮像し、取得した画像に基づいて光学系の光学的特性を示すパラメータを測定する。取得した画像に基づくパラメータの測定は、内視鏡装置100の制御装置3のメイン制御部32や演算処理部33や計測処理部34によって実施される。内視鏡装置100の制御装置3は、「パラメータ測定部」の一例である。
【0038】
光学特性測定装置210は、取得した画像に基づくパラメータ測定における演算を実施する外部演算装置をさらに有してもよい。この場合、外部演算装置が「パラメータ測定部」に相当する。外部演算装置は、制御装置3とは別体の演算装置であって、例えば外部端末やサーバ(クラウド含む)である。外部端末は、例えばコンピュータ、携帯電話、タブレット、スマートフォンなどである。外部端末は、装置本体5に格納されていてもよい。なお、外部端末やサーバ(クラウド含む)は、制御装置3が実施する処理の一部を実施してもよい。
【0039】
光学系の光学的特性を示すパラメータは、例えば、光学系の光学中心の距離、焦点距離などのパラメータと、視野マスク形状に関するパラメータと、光学系歪みを補正するパラメータと、二次元画像から三次元座標を演算するためのパラメータと、を含む。光学系の光学的特性を示すパラメータの測定は、特許文献1(特開2007-171941号公報)などに記載された公知の光学的特性の測定方法により実施される。
【0040】
光学特性測定装置210により光学的特性を測定する内視鏡1は、基準内視鏡1Sおよびユーザ内視鏡1Uである。光学的特性を測定する内視鏡1に取り付けられる光学アダプタ2は、基準光学アダプタ2Sおよびユーザ光学アダプタ2Uである。
【0041】
基準内視鏡1Sは、内視鏡装置100の生産工場内において歪み測定の基準として選定された内視鏡1である。以降の説明において、基準内視鏡1Sのスコープ16を「基準スコープ16S(第一スコープ)」とする。
【0042】
ユーザ内視鏡1Uは、ユーザが購入等した内視鏡装置100の内視鏡1であって、基準内視鏡1Sと同一の光学的仕様を有する。以降の説明において、ユーザが使用するユーザ内視鏡1Uと共にユーザが使用するスコープ16を「ユーザスコープ16U(第二スコープ)」とする。なお、スコープ16が内視鏡装置100に対して着脱可能である場合、ユーザ内視鏡1Uには、複数種類のユーザスコープ16Uが装着される。同一種類のユーザスコープ16Uであっても、異なる二つのユーザスコープ16Uには光学的特性において個体差による違いがある。
【0043】
基準内視鏡1Sとユーザ内視鏡1Uとは、光学的仕様が同一であるが、異なる内視鏡1である。そのため、基準スコープ16Sとユーザスコープ16Uとには、光学的特性において個体差による違いがある。
【0044】
基準光学アダプタ2S(第一光学アダプタ)は、内視鏡装置100の生産工場内において歪み測定の基準として選定された光学アダプタ2である。
【0045】
ユーザ光学アダプタ2U(第二光学アダプタ)は、ユーザが購入等した光学アダプタ2である。ユーザは、ユーザ内視鏡1Uにユーザ光学アダプタ2Uを取り付けて使用する。
【0046】
なお、ユーザスコープ16Uおよびユーザ光学アダプタ2Uには、様々な観察用途や観察向きに対応した複数の種類がある。また、同一種類のユーザスコープ16Uやユーザ光学アダプタ2Uであっても光学的特性において個体差が存在するため、ユーザスコープ16Uやユーザ光学アダプタ2Uの個体ごとに固有の光学的特性が存在する。対して基準スコープ16Sおよび基準光学アダプタ2Sは、ユーザが使用するものではく、生産工場等において較正用に用意された一個体である。
【0047】
[キャリブレーション装置220]
キャリブレーション装置220は、ユーザ内視鏡1Uの光学系をキャリブレーションする装置である。キャリブレーション装置220は、内視鏡装置100のユーザが使用する装置である。キャリブレーション装置220は、ユーザが使用する内視鏡装置100と、計測用被写体221と、を備える。
【0048】
キャリブレーション装置220は、計測用被写体221を撮像し、光学特性測定装置210が測定した複数のパラメータを組み合わせて、実際にユーザ光学アダプタ2Uとユーザスコープ16Uを組み合わせた測定を実施することなく、ユーザ光学アダプタ2Uとユーザスコープ16Uとを組み合わせたユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正するパラメータを推定する。パラメータの推定は、内視鏡装置100の制御装置3のメイン制御部32や演算処理部33や計測処理部34によって実施される。内視鏡装置100の制御装置3は、「パラメータ推定部」の一例である。
【0049】
キャリブレーション装置220は、パラメータ推定における演算を実施する外部演算装置をさらに有してもよい。この場合、外部演算装置が「パラメータ推定部」に相当する。外部演算装置は、外部演算装置は、制御装置3とは別体の演算装置であって、例えば外部端末やサーバ(クラウド含む)である。外部端末は、例えばコンピュータ、携帯電話、タブレット、スマートフォンなどである。外部端末は、装置本体5に格納されていてもよい。なお、外部端末やサーバ(クラウド含む)は、制御装置3が実施する処理の一部を実施してもよい。
【0050】
[内視鏡較正システム200の動作]
次に内視鏡較正システム200の動作(内視鏡装置100の較正方法)について説明する。図5は、内視鏡較正システム200の動作フローチャートである。初めに、光学特性測定装置210によるパラメータ測定の動作を説明する。図6は、光学特性測定装置210による測定されるパラメータを示す図である。
【0051】
<ステップS1>
ステップS1の準備として、操作者は、生産測定治具である基準内視鏡1Sに搭載された基準スコープ16Sに基準光学アダプタ2Sを取り付ける。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップS1において、基準内視鏡1Sの基準スコープ16Sと基準光学アダプタ2Sとを組み合わせた光学系の特性を示すパラメータP1(第一パラメータ)を測定する。制御装置3は、パラメータP1を、内視鏡装置100に装着された記録媒体Mに保存する。
【0052】
<ステップS2>
ステップS2の準備として、操作者は、生産測定治具である基準内視鏡1Sに搭載された基準スコープ16Sに、出荷された複数のユーザ光学アダプタ2Uのうちの一個体であるユーザ光学アダプタ2Uを取り付ける。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップS2において、基準内視鏡1Sの基準スコープ16Sとユーザ光学アダプタ2Uとを組み合わせた光学系の特性を示すパラメータP2(第二パラメータ)を測定する。制御装置3は、パラメータP2を、内視鏡装置100に装着された記録媒体Mに保存する。
【0053】
<ステップS3>
ステップS3の準備として、操作者は、ユーザ内視鏡1Uに搭載され、出荷された複数のユーザ光学アダプタ2Uのうちの一個体であるユーザスコープ16Uに基準光学アダプタ2Sを取り付ける。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップS3において、ユーザ内視鏡1Uのユーザスコープ16Uと基準光学アダプタ2Sとを組み合わせた光学系の特性を示すパラメータP3(第三パラメータ)を測定する。制御装置3は、パラメータP3を、ユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19に保存する。また、制御装置3は、ステップS1において測定したパラメータP1を、ユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19に保存してもよい。なお、パラメータP3は、内視鏡装置100に装着された記録媒体Mに保存しても良い。
【0054】
ステップS1、ステップS2およびステップS3を実行する順番は限定されない。例えば、ステップS1は、基準スコープ16Sを含む基準内視鏡1Sおよび基準光学アダプタ2Sを選定したときに実施すればよい。例えば、ステップS2は、ユーザ光学アダプタ2Uを出荷するときに実施すればよい。また、ステップS3は、ユーザ内視鏡1Uを出荷するときに実施すればよい。また、ユーザ光学アダプタ2Uを用いるステップS2は、ユーザが実際に使用するユーザ光学アダプタ2Uの個体が判明した後に実施すればよい。ユーザ内視鏡1Uを用いたステップS3は、ユーザが実際に使用するユーザスコープ16Uの個体が判明した後に実施すればよい。
【0055】
図7は、測定されたパラメータの保存先を示す図である。
パラメータP1およびパラメータP2が保存された記録媒体Mは、パラメータP2の測定に用いられたユーザ光学アダプタ2Uと共に出荷される。
【0056】
次に、キャリブレーション装置220によるパラメータ推定の動作を説明する。
図8は、キャリブレーション装置220により推定されるパラメータを示す図である。
【0057】
キャリブレーション装置220によるキャリブレーションは、例えば使用者が新たに購入等したユーザ光学アダプタ2Uを使用中のユーザ内視鏡1Uに取り付けるときに実施する。
【0058】
<ステップC1>
ステップC1の準備として、操作者は、ユーザ内視鏡1Uに搭載されたユーザスコープ16Uにユーザ光学アダプタ2Uを取り付ける。また、使用者は、ユーザ光学アダプタ2Uと共に出荷された記録媒体Mを内視鏡装置100に装着する。
【0059】
内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップC1において、光学特性測定装置210が測定したパラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3を組み合わせて、ユーザ光学アダプタ2Uとユーザスコープ16Uとを組み合わせたユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正するパラメータP4(第四パラメータ)を推定する。
【0060】
制御装置3は、記録媒体読み込み部37を介して記録媒体MからパラメータP1とパラメータP2を取得する。制御装置3は、ユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19に保存されたパラメータP3を取得する。
【0061】
内視鏡装置100の制御装置3は、記録媒体Mとユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19からパラメータP1を読み出す。内視鏡装置100の制御装置3は、記録媒体Mとユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19のいずれか一方からパラメータP1を読み出してもよい。制御装置3は、記録媒体Mとユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19の両方からパラメータP1を読み出す場合、パラメータP1のデータ整合性チェックを実施してもよい。
【0062】
制御装置3は、パラメータP2の要素とパラメータP3の要素とを加算した結果から、パラメータP1の要素を差し引くことによりパラメータP4を算出する。なお、加減算の順序は特に限定されない。「推定」とは、パラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3を用いて、実際には測定していないユーザスコープ16Uとユーザ光学アダプタ2Uの組み合わせたユーザ内視鏡1Uの光学系の特性を示すパラメータP4を算出することである。制御装置3は、推定したパラメータP4を用いてユーザ光学アダプタ2Uとユーザスコープ16Uとを組み合わせたユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正する。
【0063】
制御装置3は、パラメータP4によっての光学的特性が補正されたユーザ内視鏡1Uの光学系により計測用被写体221を撮像し、ユーザ内視鏡1Uの光学系の確認や微調整等を行ってもよい。
【0064】
記録媒体Mには、複数の種類のパラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3が保存されていてもよい。例えば、パラメータP2およびパラメータP3は、ユーザスコープ16Uまたはユーザ光学アダプタ2Uを用いて測定したパラメータであるので、ユーザスコープ16Uやユーザ光学アダプタ2Uの種類または個体の数に応じて複数のパラメータP2およびパラメータP3が保存されていることが望ましい。また、パラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3は、記録媒体Mではなく、制御装置3の記録部36やスコープ内部記録部19に複数保存されていてもよい。
【0065】
本来ならば、複数の種類および個体のユーザスコープ16Uおよび複数の種類および個体のユーザ光学アダプタ2Uを組み合わせた光学系の光学的特性を示すパラメータを全て取得しておくのが望ましい。しかし前述のように、光学アダプタ2およびスコープ16には様々な種類があり、同一種類のものでも個体ごとに異なる光学的特性を持つ。つまり、ユーザスコープ16Uとユーザ光学アダプタ2Uの組み合わせは膨大な数となり、全ての組み合わせに対応するパラメータを事前に実測するのは不可能である。加えて、ユーザが実際に使用する光学アダプタ2またはスコープ16の種類および個体は出荷時には不明であり、使用される可能性が高い組み合わせを事前に予測してパラメータを計測しておくことも難しい。しかし、基準スコープ16Sおよび基準光学アダプタ2Sは一個体しかないため、基準スコープ16Sまたは基準光学アダプタ2Sと組み合わせた内視鏡1の光学系の光学的特性を示すパラメータを事前に取得しておくことは可能である。本発明はこのような課題に鑑み、事前に実測可能であるパラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3を組み合わせ、ユーザがどのようなスコープとアダプタの組み合わせを使用することになっても、実際にユーザスコープ16Uとユーザ光学アダプタ2Uを組み合わせた計測を実施することなくパラメータP4を推定可能である。
【0066】
本実施形態に係る内視鏡較正システム200によれば、光学アダプタ2を取り付けたスコープ16において測定した光学系の光学的特性を示すパラメータを組み合わせることにより、新たに組み合わされた光学アダプタ2とスコープ16による固有の光学的特性を補正できる。光学アダプタ2とスコープ16を組み合わせた内視鏡1の光学的特性の補正は、格子チャート撮像などの公知の方法で行えるが、光学アダプタ2を取り付けていないスコープ16の補正を行う場合、光学アダプタ2を組み合わせた場合の補正とは異なる設備や方法を用いなければならない。光学アダプタ2を取り付けていないスコープ16の光学系の光学的特性を示すパラメータを測定する必要がないため、内視鏡較正システム200の設備を簡易化できる。
【0067】
本実施形態に係る内視鏡較正システム200によれば、ユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性の補正を、実際に計測用被写体221を撮像しなくても、パラメータP4を推定することのみにより実施できる。これにより、光学的特性の補正を簡易に行うことができる。
【0068】
本実施形態に係る内視鏡較正システム200によれば、ユーザ光学アダプタ2Uとユーザスコープ16Uとを組み合わせたユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性の補正を、事前に測定したパラメータの加減算のみで実施できる。そのため、ユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性の補正を複雑にすることなく高速に実施できる。
【0069】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0070】
(変形例1-1)
上記実施形態において、測定された光学的特性を示すパラメータP1、パラメータP2、パラメータP3およびパラメータP4の一部はユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19に保存される。しかしながら、内視鏡装置100におけるパラメータの保存先はスコープ内部記録部19に限定されない。内視鏡装置100におけるパラメータの保存先は、制御装置3の記録部36であってもよい。
【0071】
(変形例1-2)
上記実施形態において、パラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3の測定は制御装置3が実施するが、パラメータ測定の態様はこれに限定されない。例えば、上述した外部演算装置(特に外部端末)が、内視鏡装置100が取得した画像に基づいてパラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3を算出してもよい。
【0072】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る内視鏡較正システム200Bについて、図9から図10を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。内視鏡較正システム200Bは、第一実施形態に係る内視鏡較正システム200と比較して、光学特性測定装置210がパラメータP4を測定する点が異なる。
【0073】
[内視鏡較正システム200B]
内視鏡較正システム200Bは、第一実施形態に係る内視鏡較正システム200と同様に、光学特性測定装置210と、キャリブレーション装置220と、を備える。
【0074】
[内視鏡較正システム200Bの動作]
次に内視鏡較正システム200Bの動作について説明する。光学特性測定装置210は、第一実施形態と同様に、ステップS1、ステップS2およびステップS3を実行する。
【0075】
光学特性測定装置210の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ユーザ光学アダプタ2Uおよびユーザ内視鏡1Uが生産工場内において同時に利用可能な組み合わせである場合(例えばユーザ光学アダプタ2Uとユーザ内視鏡1Uとの組み合わせが固定された内視鏡装置として出荷される場合など、ユーザが使用する光学アダプタ2およびスコープ16の種類および個体が判明している場合)、さらにステップS4を実施する。
【0076】
<ステップS4>
図9は、光学特性測定装置210による測定されるパラメータを示す図である。
ステップS4の準備として、操作者は、ユーザ内視鏡1Uに搭載されたユーザスコープ16Uにユーザ光学アダプタ2Uを取り付ける。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップS4において、ユーザ内視鏡1Uのユーザスコープ16Uとユーザ光学アダプタ2Uとを組み合わせたユーザ内視鏡1Uの光学系のパラメータP4(第四パラメータ)を実際に測定する。
【0077】
図10は、測定されたパラメータの保存先を示す図である。
制御装置3は、実際に測定したパラメータP4を、ユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19などに保存する。
【0078】
なお、パラメータP4は、パラメータP1、パラメータP2およびパラメータP3の少なくとも一つとともに記録媒体Mなどに保存されていてもよい。また、パラメータP4は、ユーザスコープ16Uまたはユーザ光学アダプタ2Uを用いて測定したパラメータであるので、ユーザスコープ16Uやユーザ光学アダプタ2Uの種類または個体の数に応じて複数のパラメータP4が保存されていることが望ましい。ただし、種類や個体の数を考えるとパラメータP4として考えられる組み合わせは膨大であるので、実際にユーザが使用する可能性のある最低限の組み合わせに対応したパラメータP4を保存しておけばよい。また、パラメータP4は、記録媒体Mではなく、装置本体の記録部36、スコープ内部記録部19、外部演算装置内の記録部等に複数保存されていてもよい。
【0079】
<ステップD1>
次に、キャリブレーション装置220は、ステップD1を実施する。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップD1において、内視鏡装置100がユーザ光学アダプタ2Uとユーザ内視鏡1Uとの組み合わせが固定された内視鏡装置であるかどうか、または所望のパラメータP4が保存されているかどうかを判定する。制御装置3は、例えばユーザ光学アダプタ2Uおよびユーザスコープ16Uに関する個体識別番号等の情報を受け取り、上記の判定を実施してもよい。個体識別情報は、接続時にスコープ内部記録部19等から受け取る、記録媒体Mなどの外部の記録媒体から受け取る、既知の個体識別情報を操作者が入力するなどの方法が考えられる。また、制御装置3は、ユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19や記録部36にパラメータP4が保存されていることを確認することにより、上記の判定を実施してもよい。キャリブレーション装置220は、次にステップD2を実施する。
【0080】
<ステップD2>
制御装置3は、内視鏡装置100がユーザ光学アダプタ2Uとユーザ内視鏡1Uとの組み合わせが固定された内視鏡装置であると判定した場合、実際に測定されたパラメータP4を用いてユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正する。例えば、ユーザ光学アダプタ2Uおよびユーザスコープ16Uに関する個体識別番号の情報(個体識別情報)を使用したパラメータP4が保存されていた場合、制御装置3は実際に測定され保存されているパラメータP4を用いる。
【0081】
制御装置3は、内視鏡装置100がユーザ光学アダプタ2Uとユーザ内視鏡1Uとの組み合わせが固定された内視鏡装置でないと判定した場合、第一実施形態のステップC1と同様の方法によりパラメータP4を推定し、推定したパラメータP4を用いてユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正する。例えば、ユーザ光学アダプタ2Uおよびユーザスコープ16Uに関する個体識別番号の情報(個体識別情報)を使用したパラメータP4が保存されていなかった場合、制御装置3はパラメータP4を推定する。
【0082】
本実施形態に係る内視鏡較正システム200Bによれば、内視鏡装置100がユーザ光学アダプタ2Uとユーザ内視鏡1Uとの組み合わせが固定された装置である場合に、推定したパラメータP4でなく、実際に測定した信頼性の高いパラメータP4を用いてユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を確実に補正できる。
【0083】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0084】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係る内視鏡較正システム200Cについて、図11を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。内視鏡較正システム200Cは、第一実施形態に係る内視鏡較正システム200と比較して、基準内視鏡1Sが更新される点が異なる。
【0085】
[内視鏡較正システム200C]
内視鏡較正システム200Cは、第一実施形態に係る内視鏡較正システム200と同様に、光学特性測定装置210と、キャリブレーション装置220と、を備える。
【0086】
[内視鏡較正システム200Cの動作]
次に内視鏡較正システム200Bの動作について説明する。第一実施形態のステップS1、ステップS2、ステップS3およびステップC1の後に基準光学アダプタ2Sが新しい光学アダプタ2(以降、「第二基準光学アダプタ2T」という)に更新された場合、光学特性測定装置210の制御装置3は、さらにステップR1とステップR2を実施する。
【0087】
<ステップR1>
図11は、光学特性測定装置210による測定されるパラメータを示す図である。
ステップR1の準備として、操作者は、基準内視鏡1Sに搭載された基準スコープ16Sに第二基準光学アダプタ2Tを取り付ける。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップR1において、ユーザ内視鏡1Uの基準スコープ16Sと第二基準光学アダプタ2Tとを組み合わせた光学系の更新パラメータP1’(更新第一パラメータ)を測定する。
【0088】
<ステップR2>
ステップR2の準備として、操作者は、ユーザ内視鏡1Uに搭載されたユーザスコープ16Uに第二基準光学アダプタ2Tを取り付ける。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップR2において、ユーザ内視鏡1Uのユーザスコープ16Uと第二基準光学アダプタ2Tとを組み合わせた光学系の更新パラメータP3’(更新第三パラメータ)を測定する。
【0089】
ステップR1およびステップR2を実行する順番は限定されない。例えば、ステップR1は、基準スコープ16Sが更新されたときに実施すればよい。例えば、ステップR2は、ユーザ内視鏡1Uを出荷するときに実施すればよい。
【0090】
制御装置3は、更新パラメータP1’および更新パラメータP3’を、ユーザスコープ16Uのスコープ内部記録部19に保存する。
【0091】
次に、キャリブレーション装置220は、第一実施形態と同様にステップC1を実施する。内視鏡装置100の制御装置3(主にメイン制御部32)は、ステップC1において、パラメータP1の代わりに更新パラメータP1’、パラメータP3の代わりに更新パラメータP3’を用いて、更新パラメータP4’を推定する。
【0092】
本実施形態に係る内視鏡較正システム200Cによれば、基準光学アダプタ2Sが更新された場合であっても、再度測定したパラメータを用いてユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正できる。
【0093】
更新パラメータP1’および更新パラメータP3’は、記録媒体Mまたはスコープ内部記録部19に保存される。記録媒体Mおよびスコープ内部記録部19に記録されているパラメータP1やP3と、更新パラメータP1’や更新パラメータP3’を制御装置3などが互いに照合を行うことで、同じ基準機材を使用していることを判別可能である。これにより、計測が常に最新の較正機材で行われていることを確認することができ、計測結果の信頼性を担保できる。
【0094】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0095】
(変形例3-1)
上記実施形態において、更新される装置は基準光学アダプタ2Sである。しかしながら、基準スコープ16Sが更新される場合でもあっても同等の方法により、ユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正できる。この場合、パラメータP2が、ユーザ光学アダプタ2Uと更新ユーザスコープ16Tを組み合わせて光学的特性を測定した更新パラメータP2’となり、記録媒体Mやスコープ内部記録部19に保存される。
【0096】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態に係る内視鏡較正システム200Dについて、図12を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。内視鏡較正システム200Dは、上記の実施形態に係る内視鏡較正システム200等と比較して、外部演算装置としてサーバ300をさらに備える点が異なる。
【0097】
[内視鏡較正システム200D]
図12は、内視鏡較正システム200Dを示す図である。
内視鏡較正システム200Dは、内視鏡1の光学系を較正するシステムである。内視鏡較正システム200Dは、光学特性測定装置210と、キャリブレーション装置220と、サーバ300と、を備える。光学特性測定装置210とキャリブレーション装置220とサーバ300とは、ネットワークNWを経由して接続される。この場合、光学特性測定装置210やキャリブレーション装置220は、ネットワークNWを通してサーバ300と通信する通信装置を備える。また、内視鏡装置100の制御装置3が通信装置を備えてもよい。
【0098】
ネットワークNWは、いわゆるインターネットなどの広域網(WAN)であってもよく、光学特性測定装置210やキャリブレーション装置220が設けられた建物内の私設網(LAN)であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。また、ネットワークNWは、有線通信と無線通信のいずれであってもよい。各装置間の通信には、アクセスポイントなどの他の装置が介在してもよい。
【0099】
サーバ300は、データの中継や、データの保存、データの演算、プログラムの実行等を実施する装置である。内視鏡較正システム200Dにおいて、光学特性測定装置210が測定したパラメータの一部または全部は、サーバ300に保存される。サーバ300に保存されるパラメータの種類は限定されない。サーバ300は、内視鏡装置100とは別体に設けられていてもよいし、クラウド環境に置かれていてもよい。また、スコープ内部記録部19や記録部36の役割をサーバ300が果たしてもよい。
【0100】
キャリブレーション装置220は、光学特性測定装置210が測定したパラメータを、記録媒体M等からではなく、サーバ300からネットワークNWを経由して取得して用いる。
【0101】
本実施形態に係る内視鏡較正システム200Dによれば、記録媒体M等からではなくネットワークNWを経由して取得したパラメータを用いてユーザ内視鏡1Uの光学系の光学的特性を補正できる。これにより、操作者やユーザは記録媒体M等を運搬および挿入することなく、遠隔で各種パラメータを受信し内視鏡1の光学系の光学的特性を補正できる。特にユーザが新たなユーザスコープ16Uやユーザ光学アダプタ2Uを導入した場合、サーバ300にそれらに関するパラメータP2およびパラメータP3が保存されていれば、即座にパラメータP4を算出することができ、較正を素早く行うことが出来る。
【0102】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0103】
(変形例4-1)
上記実施形態において、サーバ300は光学特性測定装置210が測定したパラメータを保存する。しかしながら、サーバ300の態様はこれに限定されない。サーバ300は、パラメータP4の推定する演算を実施し、パラメータP4をキャリブレーション装置220に取得させてもよい。この場合、サーバ300が「パラメータ推定部」に相当する。
【0104】
なお、各実施形態において例示した「パラメータ測定部」「パラメータ推定部」は、内視鏡装置100の制御装置3や、外部演算装置(外部端末を含む)、サーバ300などの任意の組み合わせであってもよい。
【0105】
各実施形態におけるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0106】
200,200B,200C,200D 内視鏡較正システム
210 光学特性測定装置
220 キャリブレーション装置
300 サーバ
100 内視鏡装置
1 内視鏡
1S 基準内視鏡
1U ユーザ内視鏡
16 スコープ
16S 基準スコープ
16U ユーザスコープ
2 光学アダプタ
2S 基準光学アダプタ
2T 第二基準光学アダプタ
2U ユーザ光学アダプタ
3 制御装置
4 表示部
5 装置本体
6 操作部
図1
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