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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】建築物の防振構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20240318BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
F16F15/02 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021047700
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146635
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小村 倫生
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-188264(JP,A)
【文献】特開平11-131519(JP,A)
【文献】特開2001-193209(JP,A)
【文献】特開昭63-114726(JP,A)
【文献】特開2017-057681(JP,A)
【文献】国際公開第97/042265(WO,A1)
【文献】特開2006-008455(JP,A)
【文献】特開平06-158679(JP,A)
【文献】特開平09-209374(JP,A)
【文献】実開昭52-152329(JP,U)
【文献】特開昭59-137998(JP,A)
【文献】特開昭56-128830(JP,A)
【文献】米国特許第05295337(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
E02D 31/08
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎部分と、
前記基礎部分の少なくとも1つの外面を覆うように設置された、合成樹脂発泡体からなる防振材と、を備え、
前記防振材は、
前記防振材にかかる面圧に対する圧縮クリープ変形率が5%未満であり、かつ
前記面圧が2.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒以下となり、
前記面圧が2.0t/mよりも大きく10.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒よりも大きく220m/秒以下となり、
前記面圧が10.0t/mよりも大きく40.0t/m以下である場合、横波伝播速度が220m/秒よりも大きく325m/秒以下となるように、せん断弾性率が設定されており
前記防振材の厚みが20mm以上、且つ100mm未満であり、
前記防振材は、ポリエチレン系樹脂発泡体、およびポリプロピレン系樹脂発泡体の少なくとも1つからなる、建築物の防振構造。
【請求項2】
山留め壁と、
前記防振材の厚み方向に挿通する固定部材と、を備え、
前記防振材は、前記固定部材により、前記山留め壁に接続している、請求項1に記載の建築物の防振構造。
【請求項3】
建築物の基礎部分と、
前記基礎部分の少なくとも1つの外面を覆うように設置された、合成樹脂発泡体からなる防振材と、
山留め壁と、
前記防振材の厚み方向に挿通する固定部材と、を備え、
前記防振材は、
前記防振材にかかる面圧に対する圧縮クリープ変形率が5%未満であり、かつ
前記面圧が2.0t/m 以下である場合、横波伝播速度が125m/秒以下となり、
前記面圧が2.0t/m よりも大きく10.0t/m 以下である場合、横波伝播速度が125m/秒よりも大きく220m/秒以下となり、
前記面圧が10.0t/m よりも大きく40.0t/m 以下である場合、横波伝播速度が220m/秒よりも大きく325m/秒以下となるように、せん断弾性率が設定されており
前記防振材は、前記固定部材により、前記山留め壁に接続している、建築物の防振構造。
【請求項4】
前記防振材にかかる面圧に対し、以下の(i)~(ix)の関係を満たすように、前記防振材のせん断弾性率が設定されている、請求項1~3の何れか1項に記載の建築物の防振構造:
(i)前記防振材にかかる面圧が0.4t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.110MPa以下となる、
(ii)前記防振材にかかる面圧が0.4t/mよりも大きく、0.8t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.11MPaよりも大きく、0.180MPa以下となる、
(iii)前記防振材にかかる面圧が0.8t/mよりも大きく、1.6t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.180MPaよりも大きく、0.290MPa以下となる、
(iv)前記防振材にかかる面圧が1.6t/mよりも大きく、2.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.290MPaよりも大きく、0.560MPa以下となる、
(v)前記防振材にかかる面圧が2.0t/mよりも大きく、5.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.560MPaよりも大きく、1.50MPa以下となる、
(vi)前記防振材にかかる面圧が5.0t/mよりも大きく、10.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が1.50MPaよりも大きく、2.90MPa以下となる、
(vii)前記防振材にかかる面圧が10.0t/mよりも大きく、20.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が2.90MPaよりも大きく、4.20MPa以下となる、
(viii)前記防振材にかかる面圧が20.0t/mよりも大きく、30.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が4.20MPaよりも大きく、7.30MPa以下となる、
(ix)前記防振材にかかる面圧が30.0t/mよりも大きく、40.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が7.30MPaよりも大きく、21.0MPa以下となる。
【請求項5】
前記防振材は、互いに接合した複数の構成部品からなる、請求項1~4の何れか1項に記載の建築物の防振構造。
【請求項6】
地下鉄、鉄道、道路からなる群から選択される少なくとも1つの振動源から前記基礎部分へ伝わる振動を低減する、請求項1~5の何れか1項に記載の建築物の防振構造。
【請求項7】
前記防振材は、無機系フィラーを含有する発泡体である、請求項1~6の何れか1項に記載の建築物の防振構造。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の建築物の防振構造の施工方法であって、
前記建築物の基礎部分の少なくとも1つの面を覆うように防振材を配設する配設工程を含む、建築物の防振構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防振構造に関し、より具体的には、地下防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄、自動車等の屋外の振動発生源からの振動(音)が、地中や建物の構造体を伝搬して建物内部に音として放射されたり、あるいは振動そのものとして居住者に体感されたりすることは極力回避されなければならない。このために、従来、防振壁構造が採用されており、特に、地下建造物においては、掘削部の山留め壁と建築物側壁面部分との間に合成樹脂発泡体等の防振材を配設して振動の伝達を低減しようとする試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、山留め壁と建築物の基礎部分との間に合成樹脂板状の発泡体と防振ゴムとを含む充填材が設けられた地下防振構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、山留め壁と建築物の基礎部分との間に防振材が配された建築物の地下防振壁を備えた地下防振構造として、山留め壁と建築物の基礎部分との間に、合成樹脂発泡体からなる防振材および防振ゴムが配され、防振対策を施そうとする下限の振動周波数をf、地下防振壁部分の共振周波数をf0(=(k/M)1/2/2π)としたときに、
0≦2-1/2・f
となるように地下防振壁部分のバネ定数kと質量Mとを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-146318号公報
【文献】特開平11-131519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1および2に記載の技術では、山留め壁と建築物の基礎部分との間に、合成樹脂発泡体からなる防振材だけでなく、防振ゴムも配置している。このため、地下防振構造の工事が複雑になる。それゆえ、特許文献1および2に記載の技術では、工事の施工性を確保しつつ、防振効果を良好にするという点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は、工事の施工性を確保しつつ、防振効果を良好にする建築物の防振構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を含む。
【0009】
〔1〕建築物の基礎部分と、前記基礎部分の少なくとも1つの外面を覆うように設置された、合成樹脂発泡体からなる防振材と、を備え、前記防振材は、前記防振材にかかる面圧に対する圧縮クリープ変形率が5%未満であり、かつ前記面圧が2.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒以下となり、前記面圧が2.0t/mよりも大きく10.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒よりも大きく220m/秒以下となり、前記面圧が10.0t/mよりも大きく40.0t/m以下である場合、横波伝播速度が220m/秒よりも大きく325m/秒以下となるように、せん断弾性率が設定されている、建築物の防振構造。
【0010】
〔2〕前記防振材にかかる面圧に対し、以下の(i)~(ix)の関係を満たすように,前記防振材のせん断弾性率が設定されている、〔1〕に記載の建築物の防振構造:
(i)前記防振材にかかる面圧が0.4t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.110MPa以下となる、
(ii)前記防振材にかかる面圧が0.4t/mよりも大きく、0.8t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.110MPaよりも大きく、0.180MPa以下となる、
(iii)前記防振材にかかる面圧が0.8t/mよりも大きく、1.6t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.180MPaよりも大きく、0.290MPa以下となる、
(iv)前記防振材にかかる面圧が1.6t/mよりも大きく、2.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.290MPaよりも大きく、0.560MPa以下となる、
(v)前記防振材にかかる面圧が2.0t/mよりも大きく、5.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.560MPaよりも大きく、1.50MPa以下となる、
(vi)前記防振材にかかる面圧が5.0t/mよりも大きく、10.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が1.50MPaよりも大きく、2.90MPa以下となる、
(vii)前記防振材にかかる面圧が10.0t/mよりも大きく、20.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が2.90MPaよりも大きく、4.20MPa以下となる、
(viii)前記防振材にかかる面圧が20.0t/mよりも大きく、30.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が4.20MPaよりも大きく、7.30MPa以下となる、
(ix)前記防振材にかかる面圧が30.0t/mよりも大きく、40.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が7.30MPaよりも大きく、21.0MPa以下となる。
【0011】
〔3〕前記防振材の厚みが20mm以上、且つ100mm未満であり、前記防振材は、ポリエチレン系樹脂発泡体、およびポリプロピレン系樹脂発泡体の少なくとも1つからなる、〔1〕または〔2〕に記載の建築物の防振構造。
【0012】
〔4〕山留め壁と、前記防振材の厚み方向に挿通する固定部材と、を備え、前記防振材は、前記固定部材により、前記山留め壁に接続している、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の建築物の防振構造。
【0013】
〔5〕前記防振材は、互いに接合した複数の構成部品からなる、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の建築物の防振構造。
【0014】
〔6〕地下鉄、鉄道、道路からなる群から選択される少なくとも1つの振動源から前記基礎部分へ伝わる振動を低減する、〔1〕~〔5〕の何れかに記載の建築物の防振構造。
【0015】
〔7〕前記防振材は、無機系フィラーを含有する発泡体である、〔1〕~〔6〕の何れに記載の建築物の防振構造。
【0016】
〔8〕〔1〕~〔7〕の何れかに記載の建築物の防振構造の施工方法であって、前記建築物の基礎部分の少なくとも1つの面を覆うように防振材を配設する配設工程を含む、建築物の防振構造の施工方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、工事の施工性を確保しつつ、防振効果を良好にする建築物の防振構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る防振構造の構成を模式的に示した図である。
図2】201~203は、本発明の一実施形態に係る防振構造に適用可能な山留め壁の施工例を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る建築物の防振構造の具体的構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0020】
〔本発明の一実施形態に係る建築物の防振構造〕
図1は、本発明の一実施形態に係る防振構造10の構成を模式的に示した図である。図1に示すように、建築物の防振構造10は、建築物の基礎部分Bと、防振材Aと、を備えている。基礎部分Bは、建築物における地表以下の土台となる部分である。防振材Aは、合成樹脂発泡体からなり、基礎部分Bの少なくとも1つの面を覆うように配置されている。防振材Aは、例えば地下鉄などの振動源から建築物へ伝わる地盤振動が軽減されるように、基礎部分Bを構成する面のうち、振動源に最も近い面を覆うように配置されることが好ましい。また、防振構造10では、防振材Aと基礎部分Bとの間には、コンクリートが打ち込まれている。また、防振構造10では、防振材Aの外側(振動源側)を覆うように、山留め壁Cが設けられている。
【0021】
なお、前記振動源は、地下鉄に限定されない。前記振動源は、防振構造10により防振可能な振動源であればよく、好ましくは、地下鉄、鉄道、道路からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0022】
防振構造10は、基礎部分Bの少なくとも1つの面を覆う防振材Aの外側を山留め壁Cにより覆う構造となっている。より具体的には、図1に示す防振構造10は、基礎部分Bの側面および底面の全面を覆う防振材Aを有し、防振材Aの外側に山留め壁Cが設けられている。山留め壁Cは、防振材Aの外周および底面を覆う。防振材Aは、振動抑制(減衰)のための緩衝層として機能する。このように、防振構造10では、防振材Aおよび山留め壁Cの二重構造により、振動源から発せられる地盤振動の振動絶縁を図っている。
【0023】
防振材Aには、土圧によって、圧力(面圧)がかかる。土圧は、地中深さに応じて変化する。ここで、防振構造10では、防振材Aは、次の(a)および(b)の両方を満たすように設定されている。(a)防振材Aにかかる面圧に対する圧縮クリープ変形率が5%未満である。(b)前記面圧が2.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒以下となり、前記面圧が2.0t/mよりも大きく10.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒よりも大きく220m/秒以下となり、前記面圧が10.0t/mよりも大きく40.0t/m以下である場合、横波伝播速度が220m/秒よりも大きく325m/秒以下となる。
【0024】
(a)および(b)のようにせん断弾性率が設定されていることによって、防振材Aは、地中深さに応じて変化する土圧に対して、形状を保持しつつ、適度な防振性能を発現し得る。それゆえ、防振構造10では、防振のために、山留め壁Cと建築物の基礎部分Bとの間に、防振材Aおよび防振ゴムを組み合わせた構造体を配設する必要がない。このため、防振構造10の工事が簡便になる。それゆえ、防振構造10によれば、工事の施工性を確保しつつ、防振効果を良好にすることができる。
【0025】
(防振構造の施工方法)
防振構造10の施工方法は、建築物の基礎部分Bの少なくとも1つの面を覆うように防振材Aを配設する配設工程を含む。より具体的には、地盤の掘削部に設けられた山留壁Cに合成樹脂発泡体からなる防振材Aを配設する(配設工程)。防振材Aは、固定部材により、山留め壁Cにおける基礎部分B側の面に固定される。
【0026】
また、防振材Aの配設方法は、地中深さに応じて、建築物の基礎部分Bにかかる土圧に耐え得、上述の横波伝播速度となるようにせん断弾性率を設定して配設できれば、特に限定されない。例えば、地中深さに応じて、せん断弾性率が異なる複数の防振材Aを配設してもよい。
【0027】
(防振材の施工構造)
防振材Aの施工構造は、図1に示すような防振材Aおよび山留め壁Cを組み合わせた構造に限定されない。防振材Aの施工構造は、例えば、浮き床構造などが挙げられる。当該浮き床構造では、防振材Aを介して建築物の部屋同士が結合し、静寂性が必要となる場所(部屋)それぞれが建築物の床から浮遊し、建築物の本体内の振動が伝わらないようになっている。
【0028】
(山留め壁C)
山留め壁Cは、建築物の基礎部分Bのコンクリートを打設するために設けられるものであり、周囲の土が崩壊しないようにするための防護手段となる。
【0029】
山留め壁Cは、従来公知の構造を採用することができる。図2の201~203は、防振構造10に適用可能な山留め壁Cの施工例を示す斜視図である。図2の201に示す山留め壁C’の施工例は、親杭横矢板法施工である。また、図2に202に示す山留め壁C’’の施工例は、SMW施工である。また、図2の203に示す山留め壁C’’’の施工例は、シートパイル施工である。
【0030】
(防振構造の具体的構成)
図3は、本発明の一実施形態に係る建築物の防振構造10の具体的構成を示す断面図である。図3に示すように、防振構造10は、防振材Aと、建築物の基礎部分Bと、山留め壁Cと、コンクリートDと、型枠Eと、止水ゴムFと、セパボルトGと、を備えている。
【0031】
図3に示す防振構造10では、山留め壁Cは、H鋼C1とパネルC2とを備えている。H鋼C1とパネルC2とは互いに接合している。H鋼C1における基礎部分B側の面にパネルC2が接合している。
【0032】
また、防振材は、複数の矩形板状の防振材構成部品A1~A5によって構成されている。地表から地底へ向かって、防振材構成部品A1、A2、A3、A4がこの順で配設されている。また、同じ深さ位置には、複数の防振材構成部品A5が水平方向に連結して配設されている。防振材構成部品A1~A5それぞれは、地中深さに応じて変化する面圧に対して、前記(b)を満たすようにせん断弾性率が設定されている。
【0033】
また、図3に示す防振構造10は、防振材構成部品A1~A4それぞれの厚み方向に挿通する固定部材1を備えている。防振材構成部品A1~A4はそれぞれ、この固定部材1により、山留め壁Cに接続している。
【0034】
防振材構成部品A1~A5と基礎部分Bとの間には、コンクリートDと型枠Eとが配設されている。型枠Eは、コンクリートDを流し込むための枠である。
【0035】
また、コンクリートDには、セパボルトGが設けられている。セパボルトGは、防振構造10の施工時に土圧を支える耐圧支柱として機能する。基礎部分Bと山留め壁Cとの間に防振材構成部品A1~A4を配設するに際し、山留め壁Cにおける土圧が比較的強くかかる部分にセパボルトGを設ける。これにより、防振構造10の施工中に、防振材構成部品A1~A4に耐圧以上のかかることがない。それゆえ、セパボルトGにより、防振材構成部品A1~A4は、防振効果を保持しつつ、土圧によって潰れることなく、安全に配設可能である。
【0036】
止水ゴムFはセパボルトGとコンクリートDとの隙間の止水を行うために設けられている。
【0037】
(防振材)
本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材は、合成樹脂発泡体からなるものであれば、特に限定されない。当該防振材の材料としては、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体;ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、ブテン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体等からなるポリオレフィン系樹脂発泡体;ポリウレタン系樹脂発泡体;ポリ塩化ビニル系樹脂発泡体が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂発泡体が好適に用いられる。なお、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂発泡体は、架橋されたものであっても、無架橋のものであってもよい。
【0038】
ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂発泡体は、押出発泡成形体およびビーズ発泡成形体のいずれの発泡体であってもよい。
【0039】
押出発泡成形体は、次の手順によって製造される。まず、必要に応じて気泡調整剤、難燃剤を加えたポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給し、押出機にて加熱溶融する。次いで、溶融したポリオレフィン系樹脂組成物に発泡剤を圧入し、さらに加熱溶融しつつ混練して均一流動組成物とする。そして、この均一流動組成物をフラットダイ先端のダイオリフィスから押し出し、その直後に、ガイダーと呼ばれる賦形装置に通す。これにより板状の発泡体を得ることができる。
【0040】
また、ビーズ発泡成形体は、次の手順によって製造される。まず、例えばポリオレフィン系樹脂粒子を発泡させ発泡ビーズを得る。そして、所定の板形状に対応する金型に当該発泡ビーズを充填し、蒸気等で加熱して発泡ビーズを融着させる。
【0041】
また、本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材の形状は、特に限定されない。作業性を考慮すると、防振材の形状は、平面視矩形状であることが好ましい。
【0042】
また、合成樹脂発泡体からなる防振材の密度は、10kg/m以上、300kg/m以下であることが好ましく、15kg/m以上、200kg/m以下であることがより好ましい。
【0043】
また、防振材のせん断弾性率としては、0.050MPa以上、30.0MPa以下であることが好ましく、0.100MPa以上、25.0MPa以下であることが好ましい。防振材のせん断弾性率が0.050MPa未満である場合、土圧に耐えうることができず、防振材が潰れてしまう傾向にある。また、防振材のせん断弾性率が30.0MPaを超える場合、防振材は、土中深さに対応して適切な防振効果を発現し難くなる傾向にある。
【0044】
本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材は、前記防振材にかかる面圧に対する圧縮クリープ変形率が5%未満である。より具体的には、防振材にかかる面圧に対して、30日後の圧縮クリープ変形率が5%未満、好ましくは4%未満、より好ましくは3.2%未満である。前記圧縮クリープ変形率が5%以上である場合、防振材の近傍で作業する作業者に危険を及ぼす可能性がある。それだけではなく、防振材の使用時間が長くなることに伴い、防振材の変形が徐々に進行する。そして、防振材がつぶれ、周囲の地盤が緩み、隣接する建築物が傾いたりするおそれがある。このため、建築物に多大なる影響を及ぼし、安定した基礎地盤の構築が困難になる傾向にある。さらには、防振材の変形(つぶれ)により、防振材は、元の形状に復元することができなくなり、所望される防振性能を発現できなくなる傾向にある。
【0045】
本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材のせん断弾性率は、防振材にかかる圧力に対して横波伝播速度が以下のようになるように設定されている。
【0046】
(I)前記面圧が2.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒以下となる、
(II)前記面圧が2.0t/mよりも大きく10.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒よりも大きく220m/秒以下となる、
(III)前記面圧が10.0t/mよりも大きく40.0t/m以下である場合、横波伝播速度が220m/秒よりも大きく325m/秒以下となる。
【0047】
これにより、土圧によって防振材にかかる圧力(面圧)に対して、防振材は、形状を保持しつつ、適度な防振性能を発現し得る。
【0048】
さらに、適度な防振性能を発現するためには、土圧によって防振材にかかる圧力(面圧)に対して、防振材のせん断弾性率は、以下の(i)~(ix)の関係となるように設定されていることが好ましい。
【0049】
(i)前記防振材にかかる面圧が0.4t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.110MPa以下となる、
(ii)前記防振材にかかる面圧が0.4t/mよりも大きく、0.8t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.110MPaよりも大きく、0.180MPa以下となる、
(iii)前記防振材にかかる面圧が0.8t/mよりも大きく、1.6t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.180MPaよりも大きく、0.29MPa以下となる、
(iv)前記防振材にかかる面圧が1.6t/mよりも大きく、2.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.290MPaよりも大きく、0.560MPa以下となる、
(v)前記防振材にかかる面圧が2.0t/mよりも大きく、5.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が0.560MPaよりも大きく、1.50MPa以下となる、
(vi)前記防振材にかかる面圧が5.0t/mよりも大きく、10.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が1.50MPaよりも大きく、2.90MPa以下となる、
(vii)前記防振材にかかる面圧が10.0t/mよりも大きく、20.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が2.90MPaよりも大きく、4.20MPa以下となる、
(viii)前記防振材にかかる面圧が20.0t/mよりも大きく、30.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が4.20MPaよりも大きく、7.30MPa以下となる、
(ix)前記防振材にかかる面圧が30.0t/mよりも大きく、40.0t/m以下となる土中深さに対して、前記防振材のせん断弾性率が7.30MPaよりも大きく、21.0MPa以下となる。
【0050】
また、本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材の厚みは、20mm以上、100mm未満であることが好ましく、25mm以上、75mm以下であることがより好ましい。防振材の厚みが20mm未満である場合、防振材が適正な防振効果を発現しにくくなる傾向にある。また、防振材の厚みが100mm以上である場合、防振材の防振効果は発現し易い傾向にある一方、防振材に対してコストを要する傾向にある。
【0051】
また、本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材は、互いに接合した複数の構成部品(例えば、図3に示す防振材構成部品A1~A5)からなることが好ましい。複数の構成部品が地中深さの方向に並んで配置される場合、複数の構成部品のせん断弾性率は互いに異なる。一方、複数の構成部品が同一地中深さ水平方向に並んで配置される場合、複数の構成部品のせん断弾性率は互いに同じである。防振材に対して複数の構成部品からなる構成を採用することにより、防振材は、土圧に耐え得るせん断弾性率を有する一方で、適正な防振効果を発現できる。
【0052】
また、本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材は、無機系フィラーを含有する発泡体であることが好ましい。これにより、特に防振材がポリオレフィン系樹脂発泡体である場合、防振材のクリープ特性が改善される。前記無機系フィラーは、従来公知のフィラーを採用することができる。前記無機系フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、アルミナ、マイカ、ガラスバルーン等が挙げられる。また、前記無機系フィラーの含有量は、求められる防振材のクリープ特性に応じて適宜設定可能である。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係る防振構造に使用される防振材は、山留め壁のコンクリート面または矢板面に固定部材により接続されることが好ましい。当該固定部材として、例えば、釘状のビスなどが挙げられる。このため、前記固定部材は、防振材の厚み方向に防振材を貫通する。
【実施例
【0054】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例について、具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0055】
(評価項目)
1.圧縮弾性率:
JIS K7181に準じ、試験片の調製を行い、精密万能試験機(島津製作所社製 AG-IS)を用いて、対象となる試験片を圧縮した。そして、圧縮歪み0.05%および0.25%における試験片の圧縮応力を測定した。そして、圧縮応力差を圧縮歪み差で除した値として、圧縮弾性率を算出した。
【0056】
2.せん断弾性率:
防振材の圧縮弾性率[N]を用い、以下の計算式にて算出した。
【0057】
せん断弾性率[G]=圧縮弾性率[N]/(2*(1+ポアソン比(γ))) …(1)
ポアソン比(γ)は、0.15とした。
【0058】
3.横波伝播速度:
防振材のせん断弾性率[G]と、密度[ρ]を用い、以下の計算式にて算出した。
【0059】
横波伝播速度[V]=√(せん断弾性率[G]/密度[ρ]) …(2)
(評価指標)
面圧に応じた横波伝播速度の評価指標は、以下の通りである。
【0060】
・面圧が2.0t/m以下である場合;
横波伝播速度: 75m/秒以下 ◎
75~125m/秒 ○
125~175m/秒 △
175m/秒超 ×
・面圧が2.0t/mよりも大きく10.0t/m以下である場合;
横波伝播速度: 125m/秒以下 ◎
125~220m/秒 〇
220~270m/秒 △
270m/秒超 ×
・面圧が10.0t/mよりも大きく40.0t/m以下である場合;
横波伝播速度: 220m/秒以下 ◎
220~325m/秒 〇
325~420m/秒 △
420m/秒超 ×。
【0061】
4.荷重性能:
4-1.圧縮減量率:
防振材から所定寸法の試験片を切り出し、ASTM D-621に準じ、23℃×50RH%の環境下で、試験片に所定の荷重をかけた。そして、試験片に荷重をかけて15分後の試験片の高さの変化率を圧縮減量率として求めた。
【0062】
(評価指標)
圧縮減量率の評価指標は、以下の通りである。
荷重減量率:0% ◎ 、5%以下 〇 、5~25% △ 、 25%超 × 。
【0063】
4-2.圧縮クリープ変形率:
防振材から所定寸法の試験片を切り出し、ASTM D-621に準じ、23℃×50RH%の環境下で、試験片に所定の荷重をかけた。そして、30日間放置後、荷重を取り除き、荷重除去後1時間経過した試験片の高さの変化率を圧縮クリープ変化率として求めた。
【0064】
(評価指標)
圧縮クリープ変形率の評価指標は、以下の通りである。
【0065】
クリープ変化率:
3.2%以下 ◎ 、3.2~5% 〇 、5~10% △ 、10%超 ×。
【0066】
(総合評価)
上述した「横波伝播速度」、「圧縮減量率」および「圧縮クリープ変形率」について、全評価指標が◎の場合は◎とし、1つでも〇、△または×がある場合は、その最も低い評価指標の評価結果を示した。なお、当該総合評価において、◎、〇、および△は、面圧に対する防振材の形状保持性能と防振効果との両方が適正であることを示し、◎、〇、△の順番で良好である。一方、×は、面圧に対する防振材の形状保持性能と防振効果との両立が適正でないことを示す。
【0067】
〔実施例1〕
防振材として、密度16.8Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-60;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.24MPaであった。
【0068】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.104MPaであり、横波伝播速度は79m/秒であった。
【0069】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力0.4t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0070】
また、圧力0.4t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は2.5%であった。
【0071】
〔実施例2〕
防振材として、密度25.1Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-38;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.39MPaであった。
【0072】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.170MPaであり、横波伝播速度は82m/秒であった。
【0073】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力0.8t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0074】
また、圧力0.8t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は2.8%であった。
【0075】
〔実施例3〕
防振材として、密度18.8Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-45;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.65MPaであった。
【0076】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.283MPaであり、横波伝播速度は123m/秒であった。
【0077】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力1.6t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0078】
圧力1.6t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.0%であった。
【0079】
(実施例4)
防振材として、密度48.8Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-20;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、1.26MPaであった。
【0080】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.548MPaであり、横波伝播速度は106m/秒であった。
【0081】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力2.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0082】
圧力2.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.1%であった。
【0083】
〔実施例5〕
防振材として、密度40.9Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-20;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体よりサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。結果、圧縮弾性率は、3.34MPaであった。
【0084】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は1.45MPaであり、横波伝播速度は188m/秒であった。
【0085】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力5.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0086】
圧力5.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.2%であった。
【0087】
〔実施例6〕
防振材として、密度60.8Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-15;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、6.42MPaであった。
【0088】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は2.79MPaであり、横波伝播速度は214m/秒であった。
【0089】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力10.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0090】
圧力10.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.1%であった。
【0091】
〔実施例7〕
防振材として、密度82.1Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-11;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、9.40MPaであった。
【0092】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は4.09MPであり、横波伝播速度は223m/秒であった。
【0093】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力20.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0094】
圧力20.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は2.8%であった。
【0095】
〔実施例8〕
防振材として、密度109Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-8;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、16.5MPaであった。
【0096】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は7.18MPaであり、横波伝播速度は257m/秒であった。
【0097】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力30.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0098】
圧力30.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.1%であった。
【0099】
〔実施例9〕
防振材として、密度197Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-5;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、46.9MPaであった。
【0100】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は20.4MPaであり、横波伝播速度は322m/秒であった。
【0101】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力40.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0102】
圧力40.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.0%であった。
【0103】
〔実施例10〕
防振材として、密度25.1Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-38;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.39MPaであった。
【0104】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.170MPaであり、横波伝播速度は82m/秒であった。
【0105】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力1.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は8mm、圧縮減量率は16%であった。
【0106】
圧力1.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は3.4%であった。
【0107】
〔実施例11〕
防振材として、密度18.8Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランPP-45;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.65MPaであった。
【0108】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.283MPaであり、横波伝播速度は123m/秒であった。
【0109】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力0.8t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0110】
圧力0.8t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は1.7%であった。
【0111】
〔実施例12〕
防振材として、密度48.8Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-20;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、1.26MPaであった。
【0112】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.548MPaであり、横波伝播速度は106m/秒であった。
【0113】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力0.8t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0114】
圧力0.8t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は1.1%であった。
【0115】
〔実施例13〕
防振材として、密度60.8Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-15;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、6.42MPaであった。
【0116】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は2.79MPaであり、横波伝播速度は214m/秒であった。
【0117】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力7.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0118】
圧力7.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は2.3%であった。
【0119】
〔実施例14〕
防振材として、密度109Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-8;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、16.5MPaであった。
【0120】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は7.18MPaであり、横波伝播速度は257m/秒であった。
【0121】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力28.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0122】
圧力28.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は2.5%であった。
【0123】
〔実施例15〕
防振材として、密度109Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-8;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、16.5MPaであった。
【0124】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は7.18MPaであり、横波伝播速度は257m/秒であった。
【0125】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力32.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は12mm、圧縮減量率は24%であった。
【0126】
圧力32.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は4.1%であった。
【0127】
〔比較例1〕
防振材として、密度16.8Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-60;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.24MPaであった。
【0128】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.104MPaであり、横波伝播速度は79m/秒であった。
【0129】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力0.8t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は20mm、圧縮減量率は40%であった。
【0130】
圧力0.8t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は10%超であった。
【0131】
〔比較例2〕
防振材として、密度18.8Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-45;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.65MPaであった。
【0132】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.283MPaであり、横波伝播速度は123m/秒であった。
【0133】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力5.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は40mm、圧縮減量率は80%であった。
【0134】
圧力5.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は10%以上であった。
【0135】
〔比較例3〕
防振材として、密度25.1Kg/mのポリエチレン系樹脂発泡体(ビブランE-38;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、0.39MPaであった。
【0136】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は0.170MPaであり、横波伝播速度は82m/秒であった。
【0137】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力20.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は45mm、圧縮減量率は95%であった。
【0138】
圧力20.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は10%超であった。
【0139】
〔比較例4〕
防振材として、密度60.8Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-15;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、6.42MPaであった。
【0140】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は2.79MPaであり、横波伝播速度は214m/秒であった。
【0141】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力40.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は40mm、圧縮減量率は80%であった。
【0142】
圧力40.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は10%超であった。
【0143】
〔比較例5〕
防振材として、密度60.8Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-15;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、6.42MPaであった。
【0144】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は2.79MPaであり、横波伝播速度は214m/秒であった。
【0145】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力1.6t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0146】
圧力1.6t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は0.4%であった。
【0147】
(比較例6)
防振材として、密度197Kg/mのポリプロピレン系樹脂発泡体(ビブランPP-5;900mm幅×1200mm長×50mm厚)を準備した。そして、当該発泡体からサンプルを切り出し、圧縮弾性率を測定した。その結果、圧縮弾性率は、6.42MPaであった。
【0148】
この圧縮弾性率の値から、せん断弾性率および横波伝播速度を算出した。その結果、せん断弾性率は20.4MPaであり、横波伝播速度は322m/秒であった。
【0149】
また、当該発泡体からサンプルを切り出し、万能試験機を用いて、圧力10.0t/mとなるよう圧縮試験を実施した。圧縮による厚み減量(歪み量)は0mm、圧縮減量率は0%であった。
【0150】
圧力10.0t/mとなるようにサンプルに荷重をかけ、30日放置した。放置前後の厚み方向の寸法変化率を測定した結果、圧縮クリープ変形率は0.6%であった。
【0151】
実施例1~15、および比較例1~6の結果を、以下の表1、2に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
実施例1~15および比較例1~6の結果から、以下の(a)および(b)を満たすように防振材のせん断弾性率を設定することによって、防振材にかかる荷重(面圧)に対して防振材の形状が保持されるとともに防振効果が適正であることが分かった。(a)防振材にかかる荷重(面圧)に対する圧縮クリープ変形率が5%未満である。(b)前記荷重(面圧)が2.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒以下となり、前記荷重(面圧)が2.0t/mよりも大きく10.0t/m以下である場合、横波伝播速度が125m/秒よりも大きく220m/秒以下となり、前記荷重(面圧)が10.0t/mよりも大きく40.0t/m以下である場合、横波伝播速度が220m/秒よりも大きく325m/秒以下となる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の防振構造は、建築物の地下の防振性能を低減する用途に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0156】
1 固定部材
10 防振構造
A 防振材
A1~A5 防振材構成部品
B 基礎部分
C 山留め壁
C1 H鋼
C2 パネル
D コンクリート
E 型枠
F 止水ゴム
G セパボルト
図1
図2
図3