(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】一体化ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240318BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20240318BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
H01B7/18 D
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2021079188
(22)【出願日】2021-05-07
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】淺野 知奈美
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠太
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522913(JP,A)
【文献】特開2017-134925(JP,A)
【文献】特開2018-190524(JP,A)
【文献】特開昭61-171010(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の出力軸の回転を検出する検出器から出力される信号を伝搬する信号線がシールドにより囲繞されてなる遮蔽信号線と、
前記電動機に電力を供給する電動機線である第1の動力線と、
前記電動機の出力軸を制動するブレーキに電力を供給するブレーキ線である第2の動力線と、
アース線と、
前記遮蔽信号線と前記第1の動力線と前記第2の動力線と前記アース線とが収容された略円形断面の絶縁シースと
を備え、
前記絶縁シースの内周面周方向に沿って、前記第1の動力線と前記アース線と前記第2の動力線とが順に配置されている、
一体化ケーブル。
【請求項2】
前記ブレーキは、電力が供給されていない状態では前記出力軸に当接して前記出力軸の回転を規制し、前記第2の動力線を通じて電力が供給された状態では前記出力軸から離れて前記出力軸を回転可能とする、請求項1に記載の一体化ケーブル。
【請求項3】
前記シールドが、編組チューブとアルミ箔テープの二重シールド構造を有する、請求項1又は2に記載の一体化ケーブル。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか一項に記載の一体化ケーブルが接続された検出器及びブレーキ付き電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一体化ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、動力線をシールドで囲繞した遮蔽動力線と、信号線をシールドで囲繞した遮蔽信号線とを絶縁シースによって略円形断面の一体のケーブルに形成した動力、信号一体化ケーブルが記載されている。この絶縁シース内には複数の上記遮蔽動力線が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブル内で動力線と信号線とがそれぞれ別個にシールドされている場合、ケーブルの外径が大きくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑み、複数の動力線と信号線とが一体化されたケーブルの外径が大きくなることを抑えつつ、第1の動力線から第2の動力線へのノイズ混入を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一体化ケーブルは、電動機の出力軸の回転を検出する検出器から出力される信号を伝搬する信号線がシールドにより囲繞されてなる遮蔽信号線と、前記電動機に電力を供給する電動機線である第1の動力線と、前記電動機の出力軸を制動するブレーキに電力を供給するブレーキ線である第2の動力線と、アース線と、前記遮蔽信号線と前記第1の動力線と前記第2の動力線と前記アース線とが収容された略円形断面の絶縁シースとを備え、前記絶縁シースの内周面周方向に沿って、前記第1の動力線と前記アース線と前記第2の動力線とが順に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の動力線と信号線とが一体化されたケーブルの外径が大きくなることを抑えつつ、第1の動力線から第2の動力線へのノイズ混入を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。なお、図において、矢印A1の側が、電動機100に対して負荷が接続される側である負荷側であり、矢印A2の側が反負荷側である。
本明細書において、「略筒状」とは、内周面が円いか又は角張っており、外周面が内周面の形状にかかわらず円いか又は角張っている形状を指す。「略筒状」は、「略円筒状」と「略角筒状」とをもちろん含む。
【0010】
図1に付加部品付き電動機100を示す。付加部品付き電動機100は、一例としてステッピングモータであり、出力軸1が取り付けられた回転子2と、回転子2の周囲に設けられた固定子3とを備えている。
固定子3の負荷側及び反負荷側にはそれぞれ第1ブラケット4及び第2ブラケット5が取り付けられている。第1ブラケット4には第1ベアリング6が配置され、第2ブラケット5には第2ベアリング7が配置されている。第1ベアリング6及び第2ベアリング7はいずれも、出力軸1が回転自在となるよう出力軸1を支持している。
【0011】
付加部品付き電動機100においては、固定子3に電力が供給されることによって磁界が発生し、固定子3から発生する磁界と回転子2から発生する磁界との相互作用によって、回転子2及び出力軸1が回転する。出力軸1の回転力は、電動機100に接続された負荷へと伝達される。
【0012】
第2ブラケット5の反負荷側には、第1の付加部品として、電動機100の出力軸1の回転を制動するブレーキ8が取り付けられている。ブレーキ8は、一例として、電力が供給されていない状態では出力軸1に当接して出力軸1の回転を規制し、電力が供給された状態では出力軸1から離れて出力軸1を回転可能とする。第2ブラケット5に取り付けられたブレーキ8は、ブレーキカバー9により覆われている。
ブレーキカバー9は、略筒状体であり、第2ブラケット5の反負荷側の端面に対して同ブレーキカバーの軸方向が出力軸1と略平行になるように取り付けられる。ブレーキカバー9の反負荷側の端部は塞がれている。ブレーキカバー9の負荷側に形成されている凹部にブレーキ8が収容される。
【0013】
ブレーキカバー9の反負荷側には、第2の付加部品として、電動機100の出力軸1の回転位置を検出する検出器10が取り付けられている。ブレーキカバー9の反負荷側に取り付けられた検出器10は、導電性材料によるシールドキャップ12によって覆われている。検出器10及びシールドキャップ12は、検出器カバー11により覆われている。
検出器カバー11は、略筒状体であり、ブレーキカバー9の反負荷側の端面に対して同検出器カバーの軸方向が出力軸1と略平行になるように取り付けられる。検出器カバー11の反負荷側の端部は塞がれている。検出器カバー11の負荷側に形成されている凹部に検出器10及びシールドキャップ12が収容される。
【0014】
検出器10は、回転による機械的な変位量を電気信号に変換して、電気信号の処理によって回転位置を検出するロータリー式のエンコーダである。あるいは、検出器10は、出力軸1に取り付けられた永久磁石の回転による磁界の変化を磁気センサで検出して得られた電気信号を基に、出力軸1の回転位置を検出する磁気式のエンコーダである。検出器10は、出力軸1に取り付けられた歯車による歯車減速機構による各歯車に取り付けられた各磁石と各磁気センサで検出して得られた各々の電気信号を演算することで多回転の回転量を検出できる磁気式の多回転アブソリュートエンコーダであってもよい。検出器10は、出力軸1に取り付けられたディスクを透過した光又はディスクから反射した光を検出して、検出された光のパターンを基に出力軸1の回転位置を検出する光学式のエンコーダであっても良い。
【0015】
図2に示すように、第1ブラケット4と、固定子3と、第2ブラケット5と、ブレーキカバー9と、検出器カバー11とは、付加部品付き電動機100の外殻を構成している。
同図において、検出器カバー11内の配線状態を示すため、検出器カバー11を半透明の部材として示している。
【0016】
付加部品付き電動機100は、固定子3に接続され固定子3に電力を供給するための第1の動力線である電動機線14と、ブレーキ8に接続されブレーキ8に電力を供給するための第2の動力線であるブレーキ線15とを有する。付加部品付き電動機100はさらに、検出器10に接続され検出器10から出力された電気信号が伝搬する信号線16を有する。
【0017】
検出器カバー11の外周面にはコネクタ13が設けられている。コネクタ13は、検出器カバー11の外周面に取り付けられるレセプタクル13aと、付加部品付き電動機100の外部のケーブル18が接続されるプラグ13bとを備えている。
図3に示すように、レセプタクル13aは、検出器カバー11の外周面に設けられた取付穴と嵌め合う嵌合部13a1を備えている。嵌合部13a1には、アース端子導通部17が設けられている。このアース端子導通部17は、レセプタクル13aの端子の一つであるアース端子17bと導通している。レセプタクル13aが検出器カバー11に取り付けられると、検出器カバー11とレセプタクル13aのアース端子17bとが導通することになる。
【0018】
検出器カバー11にはアースねじ11aが設けられている。このアースねじ11aに締結されたアース接合線(不図示)を、付加部品付き電動機100が取り付けられる機器(不図示)の接地端子または外部電源の接地端子に接合することで、安全な接地が構築される。これは、IEC(国際電気標準会議)規格などの安全規格で要求されるPE(プロテクティブアース、保護接地)として利用できる。
【0019】
電動機線14は、3本、4本、5本等で構成される。複数の電動機線14はいずれも、一方の端部が固定子3に接続され、他方の端部はコネクタ13のレセプタクル13a内の端子に接続されている。
ブレーキ線15は、例えば2本で構成される。複数のブレーキ線15はいずれも、一方の端部がブレーキ8に接続され、他方の端部はコネクタ13のレセプタクル13a内の端子に接続されている。
信号線16は、2本が一対となった信号電源線と複数の信号出力線とで構成される。信号線16は、一方の端部が検出器10に接続され、他方の端部はコネクタ13のレセプタクル13a内の端子に接続されている。
【0020】
コネクタ13のレセプタクル13aの内部では、電動機線14と、ブレーキ線15及び信号線16との間が電気的に遮蔽されており、電動機線14からブレーキ線15内の電気信号及び信号線16内の電気信号に対するノイズの混入が抑制されている。電動機線14を流れる電流に含まれるノイズの1つは、図示しない制御装置に設けられているインバーターのPWM駆動に起因するスイッチングノイズである。
【0021】
さらに、電動機100の内部においては、電動機線14とブレーキ線15及び信号線16との配線が分離されており、検出器10は、導電性材料のシールドキャップ12により電気的、磁気的に外部から遮断されている。そのため、電動機100において、ブレーキ線15、信号線16及び検出器10に対する電動機線14からのノイズの混入が抑制されている。
【0022】
付加部品付き電動機100の外殻を構成している、第1ブラケット4と、固定子3と、第2ブラケット5と、ブレーキカバー9と、検出器カバー11とは、インロー嵌め合いと導電性のネジの締結により、導電性が維持されている。
【0023】
電動機線14と、ケーブル18内の外部電動機線14aとは、コネクタ13のレセプタクル13aとプラグ13b内の端子を介して接続される。これにより、固定子3はケーブル18に接続された制御装置から電力の供給を受けることができる。
ブレーキ線15と、ケーブル18内の外部ブレーキ線15aとは、コネクタ13のレセプタクル13aとプラグ13b内の端子を介して接続される。これにより、ブレーキ8は、ケーブル18に接続された制御装置から、ブレーキを動作させるための電力の供給を受けることができる。
信号線16と、ケーブル18内の外部信号線16aとは、コネクタ13のレセプタクル13aとプラグ13b内の端子を介して接続される。これにより、検出器10から出力された電気信号は、ケーブル18に接続された制御装置へ送られる。
【0024】
アース端子17bには、ケーブル18内の外部アース線17aが接続される。これにより、付加部品付き電動機100の外殻は、ケーブル18に接続された制御装置を介して接地される。
【0025】
電動機の外部にある制御装置と付加部品付き電動機100との接続のための作業を簡易なものとするため、外部電動機線14aと外部ブレーキ線15aと外部信号線16aと外部アース線17aとは、1本のケーブル18にまとめられている。ケーブル18は、コネクタ13のプラグ13bに接続されている。
【0026】
ケーブル18においては、外部電動機線14aから、外部ブレーキ線15aや外部信号線16aに対するスイッチングノイズの混入が抑制される構成となっている。
図4にケーブル18の断面を示す。
【0027】
外部信号線16aは、2本の電源線が組み合わされてなるツイストペア線である信号電源線16a1と、2本の信号出力線が組み合わされてなるツイストペア線である信号出力線16a2とを有する。信号電源線16a1と信号出力線16a2とがまとめてシールド20により囲繞され、さらには内部シース21により囲繞されることにより、略円形断面の外部信号線16aとしてまとめられている。
外部信号線16aと、4本の外部電動機線14aと、2本の外部ブレーキ線15aと、1本のアース線17aとは、絶縁シース19により略円形断面のケーブル18にまとめられている。
外部信号線16aは、シールド20により、シールド20の外部から電気的に遮断されている。そのため、外部電動機線14aから外部信号線16aに対する電気的干渉を抑えることができる。シールド20が、編組チューブ20aとアルミ箔テープ20bの二重シールド構造の場合には、幅広い周波数のノイズが遮蔽され、電気的干渉のさらなる抑制効果が得られる。
【0028】
外部ブレーキ線15aも、別のシールドで囲繞することで外部から電気的に遮断され、外部動力線14aからの電気的干渉を抑制することができる。しかし、ケーブル18の外径が大きくなるという問題がある。また、ケーブルが高価になるという問題と、シールドの処理が煩雑になるという問題もある。
【0029】
外部ブレーキ線15aを流れる電流は、外部信号線16aを流れる電流に比べると大きい。つまり、外部信号線16aに比べて、外部ブレーキ線15aは、外部電動機線14aからのスイッチングノイズによる電気的干渉を受けにくいと言える。
【0030】
斯かる事情を踏まえ、ケーブル18においては、外部電動機線14aと、外部アース線17aと、シールドにより囲繞されていない外部ブレーキ線15aとが、絶縁シース19の内周面周方向に沿って順に配設されている。つまり、周方向において、外部電動機線14aと外部ブレーキ線15aとの間に、外部アース線17aが位置している。そのため、外部電動機線14aからのノイズが、外部電動機線14aに隣接する外部アース線17aに吸収されやすく、外部電動機線14aからみて外部アース線17aよりも遠い位置にある外部ブレーキ線15aには伝わりにくい。これにより、外部ブレーキ線15aに対する外部電動機線14aからの電気的干渉の抑制が図られる。
また、外部信号線16aのシールドとは別のシールドで外部ブレーキ線15aが囲繞されないため、シールド処理の煩雑さの増加及びケーブル自体のコストが抑えられる。
このようにして、本実施形態に係るケーブルによれば、シールド処理の煩雑さの増加及びケーブル自体のコストを抑えつつ、外部電動機線からの電気的干渉による悪影響を抑えることができる。
【0031】
以上の実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
・検出器及びブレーキ付きの電動機において、ケーブルを一本化することができる。
・外部ブレーキ線を別途シールドせずに、外部電動機線からの電気的干渉が抑制される。
・安価で、外径の増加が抑えられたケーブルが提供される。
【0032】
なお、これまでに述べた実施形態は一例に過ぎない。外部信号線16aの信号出力線16a2に含まれる電線は2本以上であってもよい。また、信号出力線16a2それ自体が複数となる場合もある。外部電動機線14aは、3本や5本であってもよい。
【0033】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
信号線がシールドにより囲繞されてなる遮蔽信号線と、
第1の動力線と、
第2の動力線と、
アース線と、
前記遮蔽信号線と前記第1の動力線と前記第2の動力線と前記アース線とが収容された略円形断面の絶縁シースと
を備え、
前記絶縁シースの内周面周方向に沿って、前記第1の動力線と前記アース線と前記第2の動力線とが順に配置されている、
一体化ケーブル。
[付記2]
前記第1の動力線は、電動機に電力を供給する電動機線であり、
前記第2の動力線は、前記電動機の出力軸を制動するブレーキに電力を供給するブレーキ線であり、
前記信号線は、前記出力軸の回転を検出する検出器から出力される信号を伝搬するものである、
付記1に記載の一体化ケーブル。
[付記3]
前記シールドが、編組チューブとアルミ箔テープの二重シールド構造を有する、付記1又は2に記載の一体化ケーブル。
[付記4]
付記2に記載の一体化ケーブルが接続された検出器及びブレーキ付き電動機。
【0034】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
100 電動機
18 ケーブル
14a 外部電動機線
15a 外部ブレーキ線
16a 外部信号線
16a1 信号電源線
16a2 信号出力線
17a アース線
19 絶縁シース
20 シールド
20a 編組チューブ
20b アルミ箔テープ
21 内部シース