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特許7455781発電プラント用のアンモニア供給ユニット、発電プラント用のアンモニア気化処理方法、及び発電プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】発電プラント用のアンモニア供給ユニット、発電プラント用のアンモニア気化処理方法、及び発電プラント
(51)【国際特許分類】
   F01K 9/00 20060101AFI20240318BHJP
   F23K 5/22 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
F01K9/00 D
F01K9/00 A
F23K5/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021114843
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011172
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】外野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】住田 忠
(72)【発明者】
【氏名】山内 康弘
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 9/00;17/06;25/10
F23K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンから排出される蒸気を復水処理するための復水器の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器を備え
前記復水器は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管と、
前記伝熱管を収容する第1容器と、
を含み、
前記復水器の一部を形成するように前記第1容器と連通して設けられ、前記少なくとも1つのアンモニア気化器を収容する第2容器を備える、発電プラント用のアンモニア供給ユニット。
【請求項2】
前記第2容器の底部は、前記第1容器の底部よりも高い位置に設けられる、
請求項に記載の発電プラント用のアンモニア供給ユニット。
【請求項3】
タービンから排出される蒸気を復水処理するための復水器の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器を備え、
前記復水器は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管と、
前記伝熱管を収容する第1容器と、
を含み、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器は、前記第1容器内において前記伝熱管の上流側に配置される、アンモニア供給ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアンモニア気化器は、並列に設けられた2以上の気化器を含む、
請求項1乃至の何れか一項に記載の発電プラント用のアンモニア供給ユニット。
【請求項5】
各々の前記気化器の稼働状態を切り替えるための切替弁をさらに備える、
請求項に記載の発電プラント用のアンモニア供給ユニット。
【請求項6】
各々の前記気化器の出口側のアンモニアガスの温度を検出するための温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記切替弁を制御するためのコントローラと、をさらに備える、
請求項に記載の発電プラント用のアンモニア供給ユニット。
【請求項7】
前記アンモニア気化器によって気化処理されたアンモニアガスをボイラに供給するためのアンモニアガス供給管をさらに備える、
請求項1または3に記載の発電プラント用のアンモニア供給ユニット。
【請求項8】
タービンからの蒸気を復水処理するための復水器の内部に設けられた少なくとも1つのアンモニア気化器により、液体アンモニアを気化処理する気化処理工程を備え
前記復水器は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管と、
前記伝熱管を収容する第1容器と、
を含み、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器は、前記復水器の一部を形成するように前記第1容器と連通して設けられる第2容器に収容される、発電プラント用のアンモニア気化処理方法。
【請求項9】
タービンからの蒸気を復水処理するための復水器の内部に設けられた少なくとも1つのアンモニア気化器により、液体アンモニアを気化処理する気化処理工程を備え、
前記復水器は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管と、
前記伝熱管を収容する第1容器と、
を含み、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器は、前記第1容器内において前記伝熱管の上流側に配置される、発電プラント用のアンモニア気化処理方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアンモニア気化器は、互いに並列に接続された2以上の気化器を含み、
前記気化処理工程では、各々の前記気化器の稼働状態を切り替える、
請求項8または9に記載の発電プラント用のアンモニア気化処理方法。
【請求項11】
前記気化処理工程では、各々の前記気化器の出口側のアンモニアガスの温度を検出するための温度センサの検出結果に基づいて、各々の前記気化器の稼働状態を切り替えるための切替弁を制御する、
請求項10に記載の発電プラント用のアンモニア気化処理方法。
【請求項12】
ボイラと、
前記ボイラからの蒸気を動力源として回転するためのタービンと、
前記タービンの回転により発電するための発電機と、
前記タービンから排出される前記蒸気を復水処理するための復水器と、
前記復水器の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器と、
を備え
前記復水器は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管と、
前記伝熱管を収容する第1容器と、
を含み、
前記復水器の一部を形成するように前記第1容器と連通して設けられ、前記少なくとも1つのアンモニア気化器を収容する第2容器を備える発電プラント。
【請求項13】
ボイラと、
前記ボイラからの蒸気を動力源として回転するためのタービンと、
前記タービンの回転により発電するための発電機と、
前記タービンから排出される前記蒸気を復水処理するための復水器と、
前記復水器の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器と、
を備え、
前記復水器は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管と、
前記伝熱管を収容する第1容器と、
を含み、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器は、前記第1容器内において前記伝熱管の上流側に配置される発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電プラント用のアンモニア供給ユニット、発電プラント用のアンモニア気化処理方法、及び発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液化天然ガス(以下、LNGという)が燃料として用いられる発電プラントを開示しており、復水器が冷媒配管を介してLNG気化器と接続される。タービンから復水器に流入した蒸気は冷媒配管を流れる冷却水によって熱を回収され、熱を回収した冷却水はLNG気化器に流入しLNGの気化処理に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-200017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献では、液体アンモニアを気化処理するための構成は開示されておらず、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保するための構成も開示されていない。また、上記特許文献の復水器の内部では、タービンを通過した蒸気と、冷媒配管を流れる冷却水との熱交換が行われるのみであるため、復水器内での復水処理が不十分となるおそれがある。この場合、復水器の内部の圧力が十分に下がらず、発電効率が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保し、且つ熱サイクルの熱効率を向上できる発電プラント用のアンモニア供給ユニット、発電プラント用のアンモニア気化処理方法、及び発電プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る発電プラント用のアンモニア供給ユニットは、
タービンから排出される蒸気を復水処理するための復水器の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器を備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る発電プラント用のアンモニア気化処理方法は、
タービンからの蒸気を復水処理するための復水器の内部に設けられた少なくとも1つのアンモニア気化器により、液体アンモニアを気化処理する気化処理工程を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る発電プラントは、
ボイラと、
前記ボイラからの蒸気を動力源として回転するためのタービンと、
前記タービンの回転により発電するための発電機と、
前記タービンから排出される蒸気を復水処理するための復水器と、
前記復水器の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保し、且つ熱サイクルの熱効率を向上できる発電プラント用のアンモニア供給ユニット、発電プラント用のアンモニア気化処理方法、及び発電プラントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るボイラを表す概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係る発電プラントの概略図である。
図3】本開示の第1の実施形態に係るアンモニア供給ユニットを示す概略図である。
図4】本開示の一実施形態に係る2つの気化器の稼働期間を概念的に示すグラフである。
図5】本開示の第2の実施形態に係るアンモニア供給ユニットを示す概略図である。
図6】本開示の第3の実施形態に係るアンモニア供給ユニットを示す概略図である。
図7】本開示の一実施形態に係る発電プラント用のアンモニア気化処理方法を示すフローチャートである
図8】本開示の一実施形態に係る気化処理工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る好適な実施形態を図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
また、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
<ボイラ10及び発電プラント1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係るボイラを表す概略図である。
【0013】
本開示の一実施形態に係るボイラ10は、石炭(炭素含有固体燃料)を粉砕した微粉炭を微粉燃料として用い、この微粉燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚き(微粉炭焚き)ボイラである。本実施形態のボイラ10は、微粉燃料の他に、液体アンモニアを気化処理することで生成されるアンモニアガスをバーナにより燃焼させる。従って、本実施形態のボイラ10では、微粉炭とアンモニアガスとの混焼が行われる。
【0014】
本実施形態において、図1に示すように、ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と燃焼ガス通路13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11を構成する火炉壁101は、複数の伝熱管とこれらを接続するフィンとで構成され、微粉燃料またはアンモニアガスの少なくとも一方の燃焼により発生した熱を伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して、火炉壁101の温度上昇を抑制している。
【0015】
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁101の下部側に設けられている。本実施形態では、燃焼装置12は、火炉壁101に装着された複数のバーナ(例えば21,22,23,24,25)を有している。例えばバーナ21,22,23,24,25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って複数段(例えば、図1では5段)配置されている。但し、火炉の形状や一つの段におけるバーナの数、段数、配置などはこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
バーナ21,22,23は、アンモニアガス供給管69に連結されている。アンモニアガス供給管69は、液体アンモニアを気化処理してアンモニアガスを生成するための発電プラント用のアンモニア供給ユニット60(以下、単にアンモニア供給ユニット60という場合がある)の構成要素である。アンモニア供給ユニット60の詳細は後述する。
【0017】
バーナ24,25は、微粉炭供給管29,33を介して複数の粉砕機(ミル)34,35に連結されている(以下、粉砕機34,35を総称して、粉砕機3という場合がある)。この粉砕機3では、例えば、ハウジング内に粉砕テーブル(図示省略)が駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示省略)が粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている。石炭が、複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、粉砕され、搬送用ガス(1次空気、酸化性ガス)により粉砕機3のハウジング内の分級機(図示省略)に搬送されて、所定の粒径範囲内に分級された微粉燃料を、微粉炭供給管29,33からバーナ24,25に供給することができる。なお、搬送用ガスは微粉燃料を乾燥させる役割も併せて担う。
【0018】
上述の搬送用ガスは、外気を取り込む1次空気通風機31(PAF:Primary Air Fan)から空気管30を介して粉砕機3に送出される。空気管30は、1次空気通風機31から送出された空気のうちエアヒータ42で加熱された熱空気が流れる熱空気誘導管30Aと、1次空気通風機31から送出された空気のうちエアヒータ42を経由しない常温に近い冷空気が流れる冷空気誘導管30Bと、熱空気と冷空気が合流して流れるための搬送用ガス流路30Cとを備える。熱空気誘導管30Aと冷空気誘導管30Bには、それぞれ、熱空気ダンパ30Dと冷空気ダンパ30Eが設けられる。これらダンパの各々の開度が、微粉炭燃料の供給条件に応じて調整されることで、搬送用ガス流路30Cを流れる搬送用ガスの流量及び温度が調整される。なお、本実施形態では、搬送用ガス流路30Cを流れる搬送用ガスには、熱空気誘導管30Aからの熱空気が含まれる。つまり、空気管30は、燃料としての石炭を粉砕する粉砕機3にエアヒータ42で加熱された熱空気を導くように構成される。
【0019】
また、火炉11は、バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト(風道)37の一端部が連結されている。空気ダクト37は、他端部に押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)38が設けられている。
【0020】
燃焼ガス通路13は、図1に示すように、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0021】
燃焼ガス通路13は、図1に示すように、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出される煙道14が連結されている。煙道14には、空気ダクト37と空気管30の各々を流れる空気を加熱するためのエアヒータ(空気予熱器)42が設けられる。エアヒータ42において、空気ダクト37を流れる外気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換が行われ、バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。また、エアヒータ42において、熱空気誘導管30Aに向けて流れる外気と、煙道14を流れる燃焼ガスとの間で熱交換が行われ、外気は熱空気に変化することができる。従って、エアヒータ42はボイラ10の排熱を用いて外気を加熱するように構成されていると了解される。
【0022】
また、煙道14は、エアヒータ42より上流側の位置に脱硝装置43が設けられている。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を煙道14内に供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。なお、上述したアンモニアガス供給管69は、脱硝装置43に接続されてもよい。つまり、アンモニア供給ユニット60から供給されるアンモニアガスは還元剤として用いられてもよい。この場合のアンモニア供給ユニット60は図1では2点鎖線によって図示されている。
煙道14に連結されるガスダクト41は、エアヒータ42より下流側の位置に、電気集塵機などの集塵装置44、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45、脱硫装置46などが設けられ、下流端部に煙突50が設けられている。
【0023】
一方、複数の粉砕機34,35(3)が駆動すると、生成された微粉燃料が搬送用ガス(1次空気、酸化性ガス)と共に微粉炭供給管29,33を通してバーナ24,25に供給される。また、煙道14から排出された排ガスとエアヒータ42で熱交換することで、加熱された燃焼用空気(2次空気、酸化性ガス)が、空気ダクト37から風箱36を介してバーナ21,22,23,24,25に供給される。バーナ24,25は、微粉燃料と搬送用ガスとが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに微粉燃料混合気が着火することで火炎を形成することができる。火炉11内の下部で火炎が生じ、高温の燃焼ガスがこの火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路13に排出される。微粉燃料混合気の吹込み開始と同時に(あるいは微粉燃料混合気の着火後)、バーナ21,22,23がアンモニアガスを火炉11に吹き込むことで、アンモニアガスの燃焼が起こり、微粉炭とアンモニアの混焼が行われる。なお、酸化性ガスとして、本実施形態では空気を用いる。空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、燃料流量との適正化を図ることで使用可能になる。
【0024】
その後、燃焼ガスは、図1に示すように、燃焼ガス通路13に配置される第2過熱器103、第3過熱器104、第1過熱器102、(以下単に過熱器と記載する場合もある)、第2再熱器106、第1再熱器105(以下単に再熱器と記載する場合もある)、節炭器107で熱交換した後、脱硝装置43により窒素酸化物が還元除去され、集塵装置44で粒子状物質が除去され、脱硫装置46にて硫黄酸化物が除去された後、煙突50から大気中に排出される。なお、各熱交換器は燃焼ガス流れに対して、必ずしも前記記載順に配置されなくともよい。
【0025】
なお、図1では燃焼ガス通路13内の各熱交換器(過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107)の位置を正確に示しているものではなく、各熱交換器の燃焼ガス流れに対する配置順も図1の記載に限定されるものではない。
【0026】
図2は、本開示の一実施形態に係る発電プラントの概略図である。本実施形態の発電プラント1は、一例として上述の各熱交換器を含むボイラ10と、ボイラ10からの蒸気を動力源として回転するためのタービン110と、タービン110の回転により発電するための発電機115と、タービン110から排出される蒸気を復水処理するための復水器114と、復水器114によって復水処理された凝縮水をボイラ10に送るためのボイラ給水ポンプ123と、アンモニア供給ユニット60とを備える。ボイラ10、タービン110、復水器114、及びボイラ給水ポンプ123は、規定の熱サイクル(例えばランキンサイクル)を形成する。この熱サイクルでタービン110から取り出された仕事によって、発電機115は電力を生成する。この熱サイクルにおける循環熱媒体は、三重点以上の圧力と温度で循環する水である。
一実施形態では、アンモニア供給ユニット60を除く発電プラント1の上述の構成要素はいずれも既存の設備であり、アンモニア供給ユニット60はこれら既存の設備に対して追設される。
【0027】
本実施形態のタービン110は、例えば、高圧タービン111と中圧タービン112と低圧タービン113とから構成され、燃焼ガス通路13(図1参照)を流れる燃焼ガスから熱回収する再熱器105,106を介して、高圧タービン111と中圧タービン112は互いに接続される。低圧タービン113には、復水器114が連結されている。復水器114は、冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管117を収容する。冷却水は、例えば、海水、淡水、又は汽水などである。本実施形態の復水器114の内部には、アンモニア供給ユニット60の構成要素である少なくとも1つのアンモニア気化器61が設けられる。アンモニア気化器61は、液体アンモニアを気化処理するように構成される。低圧タービン113を回転駆動した蒸気は、復水器114に流入して、冷却水と液体アンモニアにより冷却されて凝縮水となる。このとき、アンモニア気化器61では液体アンモニアが気化処理されてアンモニアガスが生成される。
【0028】
復水器114は、給水ラインL1を介して節炭器107に連結されている。給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ(CP)121、低圧給水ヒータ122、ボイラ給水ポンプ(BFP)123、高圧給水ヒータ124が設けられている。低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ124には、タービン111,112,113(110)を駆動する蒸気の一部が抽気されて、抽気ライン(図示省略)を介して高圧給水ヒータ124と低圧給水ヒータ122に熱源として供給され、節炭器107へ供給される給水が加熱される。
【0029】
上述した実施形態では、ボイラ10をアンモニアガスとの混焼が行われる石炭焚きボイラとしたが、石炭専焼ボイラであってもよい。この場合、アンモニア供給ユニット60は、還元剤としてのアンモニアガスを煙道14へ供給するように構成されればよい。
また、ボイラ10で用いられる燃料としては、バイオマス燃料や石油精製時に発生するPC(石油コークス:Petroleum Coke)燃料、石油残渣などの固体燃料であってもよい。また、燃料として固体燃料に限らず、重油、軽油、重質油などの石油類や工場廃液などの液体燃料も使用することができ、更には、燃料として気体燃料(天然ガス、副生ガスなど)も使用することができる。さらに、これら燃料を組み合わせて使用する混焼焚きボイラにも適用することができる。
また、気化したアンモニアガスはボイラ10の燃料以外に、他の発電手段(ガスタービン発電等)の燃料としてもよい。さらに、ガスタービンコンバインドサイクルプラントにおいて設置された復水器114で気化されたアンモニアガスを、ガスタービンの燃料として用いてもよい。
【0030】
<アンモニア供給ユニット60の詳細の第1の例示>
図3は、本開示の第1の実施形態に係るアンモニア供給ユニットを示す概略図である。第1の施形態に係るアンモニア供給ユニット60A(60)の詳説に先立ち、復水器114について詳説する。復水器114は、伝熱管117を収容する第1容器81を含む。復水器114はタービン110(低圧タービン113)の真下に配置される。
第1の実施形態に係るアンモニア供給ユニット60A(60)は、液体アンモニアを貯留するアンモニアタンク71と、復水器114の内部に設けられた少なくとも1つのアンモニア気化器61と、アンモニアタンク71からアンモニア気化器61に液体アンモニアを供給するための供給ライン72と、供給ライン72に設けられた供給ポンプ73とを備える。一例として、アンモニア気化器61は復水器114の第1容器81の内部に設けられた伝熱管であり、供給ポンプ73の駆動に伴いアンモニアタンク71から供給される液体アンモニアは伝熱管を流れる過程で気化する。
【0031】
本実施形態では、タービン110(低圧タービン113)から復水器114の第1容器81に流入した蒸気が、上述した伝熱管117を流れる冷却水との間で熱交換をするとともに、アンモニア気化器61を流れる液体アンモニアとの間で熱交換をする。これにより、復水器114内の蒸気は復水処理されて凝縮水が生成されるとともに、アンモニア気化器61にある液体アンモニアは気化処理されてアンモニアガスが生成される。アンモニアガスはアンモニア気化器61から排出され、例えばボイラ10に供給される。
【0032】
なお、伝熱管117またはアンモニア気化器61は、復水器114の底部に溜まる凝縮水に浸漬してもよい(図示省略)。例えばアンモニア気化器61が凝縮水に浸漬する場合、液体アンモニアは凝縮水との間で熱交換をする。この場合でも、アンモニア気化器61は凝縮水を熱源として液体アンモニアを気化処理するとともに、凝縮水の冷却を通じて復水器114は蒸気を復水処理できる。また、凝縮水に浸漬するアンモニア気化器61は、蒸気の流れる方向において、伝熱管117に対して下流側に配置されてもよい。さらに、複数のアンモニア気化器61のいずれかのみが伝熱管117に対して下流側に配置されてもよい。また、アンモニア供給ユニット60はアンモニアタンク71と供給ポンプ73を備えなくてもよい。例えば、アンモニア気化器61への液体アンモニアの供給は、液体アンモニアを貯留する大型タンクローリまたは船舶などによって行われてもよい。
【0033】
上記構成によれば、アンモニア気化器61は、復水器114の内部にある蒸気または凝縮水の少なくとも一方を直接的な熱源として、液体アンモニアを気化処理する。従って、液体アンモニアを気化処理するための熱源を確保できる。同時に、冷却水の他に液体アンモニアが復水処理に用いられるので、復水器114における復水処理が促進される。結果、復水器114の内部の圧力は十分に下がり、タービン110、復水器114、及びボイラ10を含む例えばランキンサイクルなどの熱サイクルの熱効率は向上する。よって、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保し、且つ熱サイクルの熱効率を向上できるアンモニア供給ユニット60が実現する。
また、アンモニアにおける発熱量に対する蒸発潜熱の割合は約6%であり、例えばプロパン(発熱量に対する蒸発潜熱の割合は約0.8%)などの燃料と比較しても高い。従って、タービン110から抽気した蒸気を熱源として液体アンモニアを気化処理する場合には、発電効率の低下を招きやすい。しかしながら、本実施形態では、復水器114において排熱されることとなる熱を利用して液体アンモニアの気化処理を行うと共に、復水器114における圧力降下を促進するので、タービン110のタービン効率が上昇し、発電効率の低下を抑制することができる。
【0034】
図3で例示される実施形態では、アンモニア気化器61は、並列に設けられた2以上の気化器61Aを含む。図示される実施形態では、伝熱管としての2つの気化器61Aが設けられている。アンモニアタンク71から供給される液体アンモニアは、いずれかの気化器61Aを流れる過程で気化する。2つの気化器61Aは互いに異なるタイミングで稼働(気化処理)してもよし、同時に稼働してもよい。上記構成によれば、並列に設けられた2以上の気化器61Aの各々では、同程度の温度のアンモニアガスが排出される。従って、規定温度に達したアンモニアガスの単位時間当たりの生成量が増大する。
【0035】
本実施形態では、2つの気化器61Aの稼働状態は互いに切り替わる。より詳細には、アンモニア供給ユニット60Aは各々の気化器61Aの稼働状態を切り替えるための切替弁76を備える。本例の切替弁76は、2つの液体アンモニア供給管74の各々に設けられる開閉バルブであり、切替弁76の個数は2個である。切替弁76が開いた液体アンモニア供給管74には、供給ライン72からの液体アンモニアが流れて気化器61Aに供給される。これにより、気化器61Aは稼働して気化処理を実行する。なお、他の実施形態では、切替弁76は、2つの液体アンモニア供給管74と供給ライン72との接続部に設けられた3方弁(流路切替弁)であってもよい。この場合、切替弁76の個数は1個である。
【0036】
図4は、本開示の一実施形態に係る2つの気化器の稼働期間を概念的に示すグラフである。本実施形態では、2つの気化器61Aは、切替弁76の動作に応じて交互に気化処理を実行するように構成される。図4で例示される実施形態では、一方の気化処理の終了時刻と、他方の気化処理の開始時刻が同じであるが、他の実施形態では、一方の気化処理が終了してから規定の時間を空けて、他方の気化処理が開始してもよい。
さらに他の実施形態では、一方の気化処理が終了する前に他の気化処理を開始してもよい。切り替え時に二つの気化器が一定の時間重複して稼働したほうが、切り替え時の流量の変動が少なく、安定して一定量のアンモニアガスを供給できるためである。
【0037】
液体アンモニアの温度は極めて低いので、蒸気または凝縮水が、稼働中の気化器61Aに霜または氷などの析出物として付着するおそれがある。より具体的な一例として、気化器61Aを構成する伝熱管の外表面に析出物は付着する。なお、このような析出物の付着は、気化器61Aが凝縮水に浸漬する場合であっても発生し得る。
気化器61Aがそのまま気化処理を継続すると、析出物がさらに堆積し、液体アンモニアへの熱伝達が阻害されるおそれがあり、気化器61Aから排出されるアンモニアガスに液体アンモニアが残存するおそれがある。この点、上記構成によれば、一方の気化器61Aが気化処理し、且つ他方の気化器61Aが休止する時間帯が生じる。他方の気化器61Aでは、付着した析出物が復水器114の内部の蒸気または凝縮水によって除去される。よって、アンモニア供給ユニット60Aは、液体アンモニアの気化処理を継続的且つ安定的に実行することができる。
このように、並列に設けられた2以上の気化器61Aを全て同時に稼働させるよりも、各々の気化器61Aの稼働状態を選択的に切り替える方が、規定温度に達したアンモニアガスを継続的且つ安定的に生成できる。
【0038】
図3に戻り、第1実施形態のアンモニア供給ユニット60Aは、気化器61Aの出口側のアンモニアガスの温度を検出するための温度センサ78を含む。図示される実施形態では、温度センサ78は、2つのアンモニアガス出口管77の各々に設けられる。2つのアンモニアガス出口管77はそれぞれ2つの気化器61Aの出口に接続される。本実施形態では、2つのアンモニアガス出口管77を流れるアンモニアガスが、上述したアンモニアガス供給管69を経由してボイラ10に供給される。
【0039】
アンモニア供給ユニット60Aは、2つの温度センサ78の計測結果に基づき切替弁76を制御するように構成されたコントローラ90を備える。但し、図3では図面を見易くする都合、コントローラ90は、一方側の温度センサ78及び切替弁76とのみ電気的に接続されている。
コントローラ90は、各種演算処理を実行するプロセッサと、プロセッサによって処理される各種データを非一時的または一時的に記憶するメモリとを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、これら以外の各種演算装置、又はこれらの組み合わせなどによって実現される。メモリは、ROM、RAM、フラシュメモリ、またはこれらの組み合わせなどによって実現される。なお、コントローラ90は発電プラント1を制御するように構成されてもよい。
【0040】
アンモニア気化器61に過度の析出物が堆積しないよう、コントローラ90は切替弁76の制御を通じて、アンモニア気化器61の稼働期間を調整するように構成される。その原理は以下の通りである。アンモニア気化器61に析出物が堆積するほど、液体アンモニアの気化処理に用いられる熱量が低下するため、アンモニアガスの出口温度は下がる傾向にある。従って、稼働中のアンモニア気化器61から排出されるアンモニアガスの出口温度が規定の降下条件(詳細は後述)を満たすことに応答して、稼働中のアンモニア気化器61での気化処理を休止し、他方のアンモニア気化器61で気化処理を開始する。これにより、気化処理を実行するアンモニア気化器61を自動的に切り替え、液体アンモニアがアンモニア気化器61から排出されるのを抑制できる。
【0041】
上記の原理に基づき、本実施形態のコントローラ90は、一方の温度センサ78によって計測される出口温度が規定の降下条件を満たすと判定した場合に、一方の温度センサ78に対応する開いた切替弁76が閉じ、閉じている他方の切替弁76が開くよう、2つの切替弁76を制御する。この制御は、コントローラ90から各々の切替弁76に制御信号が送られることで実現する。
なお、上記の降下条件は、温度センサ78により計測される出口温度に基づいて特定される温度特性値が規定の閾値を下回ることである。本実施形態の温度特性値は、温度センサ78によって計測された出口温度と同一である。他の実施形態の温度特性値は、温度センサ78が複数回に亘り計測することで特定される。より具体的な一例として温度特性値は、アンモニアガスの出口温度の温度平均値、温度予測値、または温度変化率などである。なお、アンモニアガスの出口温度が継続的に低下する場合には、上記の温度変化率は負の値となる。
【0042】
なお、他の実施形態では、単一の温度センサ78がアンモニアガス供給管69に設けられてもよい。この場合であっても、2つ気化器61Aの稼働期間が重ならないのであれば、この温度センサ78の検出結果に基づき、稼働中の気化器61Aから排出されるアンモニアガスの出口温度を検出することは可能である。従って、コントローラ90は、単一の温度センサ78の検出結果に基づいて切替弁76を制御できる。
【0043】
上記構成によれば、アンモニアガスの出口温度に応じて、切替弁76の開閉動作を自動的に実行させることができる。よって、アンモニア気化器61に析出物が過度に堆積するのを自動的に抑制できる。
【0044】
図3で例示されるアンモニア供給ユニット60Aは、気化処理により生成されたアンモニアガスをボイラ10に供給するように構成される。より具体的には、アンモニア供給ユニット60Aは、アンモニア気化器61によって気化処理されたアンモニアガスをボイラ10に供給するためのアンモニアガス供給管69を備える。上記構成によれば、液体アンモニアをアンモニアガスに変化させてボイラ10に燃料として供給できる。従って、復水器114にある熱源を有効に活用して、燃料としてのアンモニアガスをボイラ10に供給することができる。
【0045】
図3で例示される実施形態では、アンモニア供給ユニット60Aの第1容器81が、アンモニア気化器61と伝熱管117とを収容する。アンモニア気化器61は伝熱管117に対して、蒸気が流れる方向において上流側に位置する。上記構成によれば、復水器114おいて、蒸気と冷却水との熱交換の前に、蒸気と液体アンモニアとの熱交換が行われる。冷却水によって冷却される前の蒸気から液体アンモニアに伝熱がなされるので、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保できる。
【0046】
<アンモニア供給ユニット60の詳細の第2の例示>
図5は、本開示の第2の実施形態に係るアンモニア供給ユニットを示す概略図である。第2の実施形態に係るアンモニア供給ユニット60B(60)は、少なくとも1つのアンモニア気化器61を収容する第2容器82と、復水器114の第1容器81と第2容器82とを連通する連通管85とを備える。第2容器82には、タービン110(低圧タービン113)からの蒸気が連通管85を経由して流入する。流入した蒸気はアンモニア気化器61を流れる液体アンモニアと熱交換することで凝縮する。従って、第2容器82はタービン110からの蒸気を復水する機能を担うので、復水器114の一部を形成すると了解される。第2容器82で生じた凝縮水は、アンモニア供給ユニット60Bの構成要素である排水管83を経由して第1容器81に流れる。
なお、図示される実施形態では、連通管85が第1容器81と第2容器82とに接続されるが、これに代えて、タービン110及び第1容器81の間にある蒸気流路89と第2容器82とに接続されてもよい。この場合であっても、蒸気流路89の下流端が第1容器81と接続されているのであれば、第1容器81と第2容器82は互いに並列に設けられる。図5の例示では、アンモニア気化器61は、第2容器82の内部に設けられた2つの気化器61Aを備えるが、これら2つの気化器61Aは互いに並列に接続されてもよい。また、第1容器81の内部に別のアンモニア気化器61が設けられてもよい。つまり、アンモニア気化器61の個数は2個以上であってもよい。
【0047】
上記構成によれば、第1容器81が既存の設備であっても、第2容器82、排水管83、及び連通管85を追設すれば、アンモニア供給ユニット60Bは完成する。よって、アンモニア供給ユニット60Bの施工を容易化できる。
【0048】
図5で例示される実施形態では、第2容器82の底部82Aは、第1容器81の底部81Aよりも高い位置に設けられる。上記構成によれば、第2容器82で生じた凝縮水が排水管83を経由して第1容器81に流れ易い。従って、蒸気または凝縮水が滞ることなく循環できる。
【0049】
<アンモニア供給ユニット60の詳細の第3の例示>
図6は、本開示の第3実施形態に係るアンモニア供給ユニットを示す概略図である。第3の実施形態に係るアンモニア供給ユニット60C(60)は、第1容器81と第2容器82とが直列に設けられる点で、アンモニア供給ユニット60Bとは異なる。構成の具体的な違いを説明すると、蒸気流路89の接続先を第1容器81に代えて第2容器82とし、アンモニア供給ユニット60C(60)は、連通管85(図5参照)に代えて、連通管86を備える。蒸気流路89は、タービン110(低圧タービン113)の下流側流路を形成しており、タービン110と第2容器82とに接続される。連通管86は、第2容器82と第1容器81とに接続される。従って、タービン110から排出される蒸気は蒸気流路89を経由して第2容器82に流入する。第2容器82で生じた凝縮水は排水管83を介し、第2容器82の復水処理において残存した蒸気は連通管86を介し、第1容器81に流入し、第1容器81は残存した蒸気を復水処理する。
【0050】
上記構成によれば、第1容器81が既存の設備であっても、蒸気流路89の接続先を変更し、第2容器82、排水管83、及び連通管86を追設すれば、アンモニア供給ユニット60Cは完成する。穴開け作業など、既存の第1容器に対する追加的な施工が低減するため、アンモニア供給ユニット60Cの施工の容易化を実現できる。
【0051】
<発電プラント用のアンモニア気化処理方法の例示>
図7は、本開示の一実施形態に係る発電プラント用のアンモニア気化処理方法を示すフローチャートである。図8は、本開示の一実施形態に係る気化処理工程を示すフローチャートである。図7図8で示されるフローチャートは、一例としてコントローラ90によって実行される。また、以下で説明するアンモニア気化処理方法によって生成されるアンモニアガスは燃料または還元剤のいずれに用いられてもよい。以下の説明では、ステップを「S」と略記する場合がある。
【0052】
図7に示すように、発電プラント用のアンモニア気化処理方法が開始されると、気化処理工程が実行される(S11)。気化処理工程では、少なくとも1つのアンモニア気化器61により、液体アンモニアを気化処理する。より具体的な一例として、本例の気化処理工程では、互いに並列に接続された2以上の気化器61Aの各々の稼働状態を切り替える。各々の気化器61Aの稼働状態の切り替えは、温度センサ78の検出結果に基づいてコントローラ90が切替弁76を制御することで実行される。以下では、アンモニア気化器61の個数は2つであり、2つの切替弁76がそれぞれ2つの液体アンモニア供給管74に設けられる実施形態を説明する。
【0053】
図8に示すように、気化処理工程でははじめに、片方のアンモニア気化器61で気化処理を実行する(S31)。コントローラ90は、いずれも閉じている2つの切替弁76のうち片方の切替弁76に対して、開状態に切替わるための制御信号を送信する。これにより、片方のアンモニア気化器61に液体アンモニアが流れ、液体アンモニアの気化処理が実行される。気化処理に伴い生成された液体アンモニアは、例えばボイラ10の燃料として利用される。
【0054】
続いて、気化処理を実行しているアンモニア気化器61に対応する温度センサ78の計測結果に基づいて特定される温度特性値が降下条件を満たすか判定される(S33)。降下条件が満たされないとコントローラ90が判定した場合(33:NO)、気化処理工程を終了するかが判定される(S35)。例えば、コントローラ90は、オペレータから送られる気化処理工程の終了指示信号を受信したか否かに基づき判定する。コントローラ90が気化処理工程を終了しないと判定した場合(S35:NO)、処理はS33に戻る。稼働中のアンモニア気化器61に過度の析出物が堆積しなければ、降下条件は満たされず(S33:NO)、気化処理工程の終了指示信号が受信されない間(S35:NO)、コントローラ90はS33、S35を繰り返す。
【0055】
やがて、稼働中のアンモニア気化器61に一定量の析出物が付着して降下条件が満たされると(S33:YES)、コントローラ90は、気化処理を実行するアンモニア気化器61を切り替える(S37)。コントローラ90は、開いている切替弁76が閉じ、閉じている切替弁76が開くよう、2つの切替弁76の各々に対して制御信号を送る。その後、処理はS33に戻る。このように、コントローラ90がS31~S37を繰り返すことによって、2つのアンモニア気化器61は交互に気化処理を自動的に実行する。
【0056】
気化処理工程を終了すると判定されると(S35:YES)、コントローラ90は、気化処理を実行しているアンモニア気化器61を停止させる(S39)。具体的には、コントローラ90は、開いている切替弁76が閉じるよう、この切替弁76に制御信号を送る。気化処理工程の終了後、処理は図7で例示されるフローに戻り、アンモニアの気化処理方法は終了する。
【0057】
<まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0058】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る発電プラント用のアンモニア供給ユニット(60)は、
タービン(110)から排出される蒸気を復水処理するための復水器(114)の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器(61)を備える。
【0059】
上記1)の構成によれば、アンモニア気化器(61)は、復水器(114)の内部にある蒸気または凝縮水の少なくとも一方を直接的な熱源として、液体アンモニアを気化処理する。従って、液体アンモニアを気化処理するための熱源を確保できる。同時に、冷却水の他に液体アンモニアが復水処理に用いられるので、復水器(114)における復水処理が促進される。結果、復水器(114)の内部の圧力は十分に下がり、タービン(110)及び復水器(114)を含む熱サイクルの熱効率は向上する。よって、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保し、且つ熱サイクルの熱効率を向上できる発電プラント用のアンモニア供給ユニット(60)が実現する。
【0060】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
前記復水器(114)は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管(117)と、
前記伝熱管(117)を収容する第1容器(81)と、を含み、
前記復水器(114)の一部を形成するように前記第1容器(81)と連通して設けられ、前記少なくとも1つのアンモニア気化器(61)を収容する第2容器(82)を備える。
【0061】
上記2)の構成によれば、伝熱管(117)と第1容器(81)を含む復水器(114)が既存の設備であっても、アンモニア供給ユニット(60)を追設する施工を容易化できる。
【0062】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
前記第2容器(82)の底部(82A)は、前記第1容器(81)の底部(81A)よりも高い位置に設けられる。
【0063】
上記3)の構成によれば、第2容器(82)で生じた凝縮水が第1容器(81)に流れ易い。従って、蒸気または凝縮水が滞ることなく循環できる。
【0064】
4)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
前記復水器(114)は、
冷却水が内部を流れるように構成された伝熱管(117)と、
前記伝熱管(117)を収容する第1容器(81)と、
を含み、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器(61)は、前記第1容器(81)内において前記伝熱管(117)の上流側に配置される。
【0065】
上記4)の構成によれば、復水器(114)において蒸気は、冷却水との熱交換の前に、液体アンモニアとの熱交換を行う。これにより、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保できる。
【0066】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器(61)は、並列に設けられた2以上の気化器(61A)を含む。
【0067】
上記5)の構成によれば、並列に設けられた2以上の気化器(61A)の各々では、同程度の温度のアンモニアガスが排出される。従って、規定温度に達したアンモニアガスの単位時間当たりの生成量を増大させることができる。
【0068】
6)幾つかの実施形態では、上記5)に記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
各々の前記気化器(61A)の稼働状態を切り替えるための切替弁(76)をさらに備える。
【0069】
液体アンモニアの気化処理に伴いアンモニア気化器(61)に付着する霜または氷などの析出物は、液体アンモニアへの熱伝達を阻害するおそれがある。この点、上記6)の構成によれば、切替弁(76)の切り替えによって、いずれかの気化器(61A)に析出物が過度に堆積するのを抑制できる。
【0070】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
各々の前記気化器(61A)の出口側のアンモニアガスの温度を検出するための温度センサ(78)と、
前記温度センサ(78)の検出結果に基づいて前記切替弁(76)を制御するためのコントローラ(90)と、をさらに備える。
【0071】
上記7)の構成によれば、アンモニアガスの出口温度に応じて切替弁(76)をコントローラ(90)が制御することで、気化器(61A)に析出物が過度に堆積するのを自動的に抑制できる。
【0072】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載のアンモニア供給ユニット(60)であって、
前記アンモニア気化器(61)によって気化処理されたアンモニアガスをボイラ(10)に供給するためのアンモニアガス供給管(69)をさらに備える。
【0073】
上記8)の構成によれば、液体アンモニアをアンモニアガスに変化させてボイラ(10)に燃料として供給できる。従って、復水器(114)にある熱源を有効に活用して、燃料としてのアンモニアガスをボイラ(10)に供給することができる。
【0074】
9)本開示の少なくとも一実施形態に係る発電プラント用のアンモニア気化処理方法は、
タービン(110)からの蒸気を復水処理するための復水器(114)の内部に設けられた少なくとも1つのアンモニア気化器(61)により、液体アンモニアを気化処理する気化処理工程(S11)を備える。
【0075】
上記9)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保し、且つ熱サイクルの熱効率を向上できる発電プラント用のアンモニア気化処理方法が実現する。
【0076】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の発電プラント用のアンモニア気化処理方法であって、
前記少なくとも1つのアンモニア気化器(61)は、互いに並列に接続された2以上の気化器(61A)を含み、
前記気化処理工程(S11)では、各々の前記気化器(61A)の稼働状態を切り替える。
【0077】
上記10)の構成によれば、いずれかの気化器(61A)に析出物が過度に堆積するのを抑制できる。
【0078】
11)幾つかの実施形態では、上記10)に記載の発電プラント用のアンモニア気化処理方法であって、
前記気化処理工程(S11)では、各々の前記気化器(61A)の出口側のアンモニアガスの温度を検出するための温度センサ(78)の検出結果に基づいて、各々の前記気化器(61A)の稼働状態を切り替えるための切替弁(76)を制御する。
【0079】
上記11)の構成によれば、アンモニアガスの温度に基づいて切替弁(76)を制御することで、気化器(61A)の稼働状態を安定的に切り替えることができる。
【0080】
12)本開示の少なくとも一実施形態に係る発電プラント(1)は、
ボイラ(10)と、
前記ボイラ(10)からの蒸気を動力源として回転するためのタービン(110)と、
前記タービン(110)の回転により発電するための発電機(115)と、
前記タービン(110)から排出される前記蒸気を復水処理するための復水器(114)と、
前記復水器(114)の内部に設けられ、液体アンモニアを気化処理するための少なくとも1つのアンモニア気化器(61)と、
を備える。
【0081】
上記12)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、液体アンモニアを気化処理するための熱量を確保し、且つ熱サイクルの熱効率を向上できる発電プラント(1)が実現する。
【符号の説明】
【0082】
1 :発電プラント
10 :ボイラ
60 :アンモニア供給ユニット
61 :アンモニア気化器
61A :気化器
69 :アンモニアガス供給管
76 :切替弁
78 :温度センサ
81 :第1容器
81A :底部
82 :第2容器
82A :底部
83 :排水管
85、86:連通管
89 :蒸気流路
90 :コントローラ
110 :タービン
111 :タービン
114 :復水器
115 :発電機
117 :伝熱管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8