(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】照明制御装置、照明制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/11 20200101AFI20240318BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20240318BHJP
H05B 47/18 20200101ALI20240318BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20240318BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20240318BHJP
H05B 47/155 20200101ALI20240318BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B47/19
H05B47/18
H05B47/165
H05B47/16
H05B47/155
(21)【出願番号】P 2021145604
(22)【出願日】2021-09-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 多寿子
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0270933(US,A1)
【文献】特表2019-511101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/11
H05B 47/19
H05B 47/18
H05B 47/165
H05B 47/16
H05B 47/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置において、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第1受信電力を収集する第1収集手段と、
前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集する第2収集手段と、
前記収集された第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する特定手段と
を具備
し、
前記照度検出器は、無線機を搭載し、
前記第1収集手段は、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機と前記照度検出器に搭載されている無線機との間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第2受信電力を収集し、
前記特定手段は、前記収集された第2受信電力に基づいて、前記無線機IDを特定する
照明制御装置。
【請求項2】
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機に対して、当該照明器具の照明パターンを指示する制御手段を更に具備し、
前記特定手段は、前記指示された照明パターンに基づいて、前記無線機IDを特定する
請求項1記載の照明制御装置。
【請求項3】
前記照明パターンは、前記照明器具の各々が点灯及び消灯する際の設定時刻及び設定照度を含み、
前記複数の照明器具の各々は、当該照明器具に搭載されている無線機に対して指示された照明パターンに含まれる前記設定時刻及び前記設定照度に基づいて点灯または消灯する
請求項2記載の照明制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、1の時刻に前記複数の照明器具のうちの1つの照明器具が点灯する照明パターンを前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機に対して指示する請求項3記載の照明制御装置。
【請求項5】
前記第1収集手段は、複数の照度検出器が取り付けられている場合、前記複数の照度検出器の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第3受信電力を収集し、
前記特定手段は、前記収集された第3受信電力に基づいて、前記無線機IDを特定する
請求項
1記載の照明制御装置。
【請求項6】
前記特定手段は、複数の既知の位置の各々に取り付けられている照度検出器に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する請求項
5記載の照明制御装置。
【請求項7】
複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置において、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第1受信電力を収集する第1収集手段と、
前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集する第2収集手段と、
前記収集された第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する特定手段と、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機に対して、当該照明器具の照明パターンを指示する制御手段と、
互いに直交する複数の符号列を生成する生成手段
と
を具備し、
前記特定手段は、前記指示された照明パターンに基づいて、前記無線機IDを特定し、
前記照明パターンは、前記照明器具の各々が点灯及び消灯する際の設定時刻及び設定照度を含み、
前記複数の照明器具の各々は、当該照明器具に搭載されている無線機に対して指示された照明パターンに含まれる前記設定時刻及び前記設定照度に基づいて点灯または消灯し、
前記制御手段は、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機毎に前記生成された複数の符号列のうちの異なる符号列を割り当てることによって、当該無線機に対して複数の時刻における当該無線機を搭載している照明器具の点灯または消灯を指示する
照明制御装置。
【請求項8】
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機は、ブルートゥースに基づく無線通信を実行する機器であり、
前記第1収集手段は、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で3つのアドバタイズチャネルで無線信号を送受信することによって測定された当該3つのアドバタイズチャネル分の受信電力を前記第1受信電力として収集する
請求項1記載の照明制御装置。
【請求項9】
前記複数の照明器具が複数の部屋に取り付けられている場合、前記第1受信電力に基づいて、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDをクラスタリングするクラスタリング手段を更に具備し、
前記照度検出器は、前記複数の部屋の1以上に取り付けられており、
前記第2収集手段は、前記複数の部屋の1以上
に取り付けられた照度検出器によって検出された当該部屋毎の照度を収集し
、
前記特定手段は、前記クラスタリングの結果及び前記収集された部屋毎の照度に基づいて、前記複数の部屋の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する
請求項1記載の照明制御装置。
【請求項10】
複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置において、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第1受信電力を収集する第1収集手段と、
前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集する第2収集手段と、
前記収集された第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する特定手段と、
前記複数の照明器具が複数の部屋に取り付けられている場合、前記第1受信電力に基づいて、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDをクラスタリングするクラスタリング手段と
を具備し、
前記照度検出器は、前記複数の部屋の1以上に取り付けられており、
前記第2収集手段は、前記複数の部屋の1以上に取り付けられた照度検出器によって検出された当該部屋毎の照度を収集し、
前記特定手段は、前記クラスタリングの結果及び前記収集された部屋毎の照度に基づいて、前記複数の部屋の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定し、
前記クラスタリング手段は、前記収集された部屋毎の照度に基づいて、前記クラスタリングの結果の誤りを検出する
照明制御装置。
【請求項11】
複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置において、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第1受信電力を収集する第1収集手段と、
前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集する第2収集手段と、
前記収集された第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する特定手段と、
クラスタリング手段
と
を具備し、
前記照度検出器は、前記複数の照明器具が複数の部屋に取り付けられている場合、当該複数の部屋の各々に取り付けられており、
前記クラスタリング手段は、前記複数の部屋の各々に取り付けられた照度検出器によって検出された当該部屋毎の照度に基づいて、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDをクラスタリングし、
前記特定手段は、前記クラスタリング結果に基づいて、前記部屋毎に、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する
照明制御装置。
【請求項12】
前記照度検出器は、画像を撮像する撮像装置を含み、
前記第2収集手段は、前記撮像装置によって撮像された前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯した空間を含む画像から検出された照度を収集する
請求項1記載の照明制御装置。
【請求項13】
複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具と、既知の位置に取り付けられた照度検出器と、前記複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置とを備える照明制御システムにおいて、
前記照明制御装置は、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の
第1受信電力を収集する第1収集手段と、
前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、前記既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集する第2収集手段と、
前記収集された
第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する特定手段と
を含
み、
前記照度検出器は、無線機を搭載し、
前記第1収集手段は、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機と前記照度検出器に搭載されている無線機との間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第2受信電力を収集し、
前記特定手段は、前記収集された第2受信電力に基づいて、前記無線機IDを特定する
照明制御システム。
【請求項14】
複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置が実行する方法であって、
前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の
第1受信電力を収集するステップと、
前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集するステップと、
前記収集された
第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定するステップと
を具備
し、
前記照度検出器は、無線機を搭載し、
前記第1受信電力を収集するステップは、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機と前記照度検出器に搭載されている無線機との間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第2受信電力を収集するステップを含み、
前記特定するステップは、前記収集された第2受信電力に基づいて、前記無線機IDを特定するステップを含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明制御装置、照明制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明器具の制御は高度化しており、例えば多数の照明器具が取り付けられている中規模施設または大規模施設においては、ゾーン毎に照明器具の点灯及び消灯を制御するまたは環境に応じて自動で明るさを制御するようなことが可能である。
【0003】
このような照明器具は当該照明器具を制御する照明制御装置と通信するための無線機を搭載(内臓)しており、当該無線機を介して照明器具を制御することにより、配線の簡易化を実現することができる。
【0004】
なお、上記した照明器具に搭載されている無線機には、当該無線機を識別するための無線機IDが割り当てられている。特定の照明器具を制御する(点灯または消灯させる)場合には、当該照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機ID(以下、照明器具に対応する無線機IDと表記)を指定し、当該無線機IDが割り当てられている無線機(を搭載する照明器具)に対して制御信号を送信する必要がある。すなわち、特定の位置に取り付けられている照明器具を適切に制御するためには、当該照明器具が取り付けられている位置と当該照明器具に対応する無線機IDとの紐づけを行っておく(つまり、当該照明器具が取り付けられている位置と当該照明器具に対応する無線機IDとの対応関係を予め登録しておく)必要がある。
【0005】
ところで、照明器具を施設等に取り付けるタイミングでは当該照明器具に対応する無線機IDを確認するようなことはせず、当該照明器具の取り付け後に当該照明器具に対応する無線機IDを人手により確認する作業を行う場合が多い。
【0006】
しかしながら、施設の規模が大きい場合には、照明器具の数は数千個にも及ぶため、上記した無線機IDを確認する作業には多大な労力と時間がかかる。
【0007】
このため、照明器具が取り付けられている位置と当該照明器具に対応する無線機IDとの紐づけを自動で行う仕組みが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Cam Ly Nguyen, et al., IEEE Internet of Things Journal, VOL. 4, NO. 5, 2017, p.1312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、照明器具が取り付けられている位置と当該照明器具に対応する無線機IDとの紐づけを高い精度で行うことが可能な照明制御装置、照明制御システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、複数の既知の位置に取り付けられた複数の照明器具を当該複数の照明器具の各々に搭載されている無線機を介して制御するための照明制御装置が提供される。前記照明制御装置は、第1収集手段と、第2収集手段と、特定手段とを具備する。前記第1収集手段は、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第1受信電力を収集する。前記第2収集手段は、前記複数の照明器具のうちの少なくとも1つが点灯することによって、既知の位置に取り付けられた照度検出器によって検出された照度を収集する。前記特定手段は、前記収集された第1受信電力及び前記収集された照度に基づいて、前記複数の既知の位置の各々に取り付けられている照明器具に搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する。前記照度検出器は、無線機を搭載する。前記第1収集手段は、前記複数の照明器具の各々に搭載されている無線機と前記照度検出器に搭載されている無線機との間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の第2受信電力を収集する。前記特定手段は、前記収集された第2受信電力に基づいて、前記無線機IDを特定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る照明制御装置の概要について説明するための図。
【
図4】照明制御装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図5】照明制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】照度センサによって検出される照度について具体的に説明するための図。
【
図7】照度センサによって検出される照度の一例を示す図。
【
図8】符号分割多重が適用された場合の照明制御装置の機能構成の一例を示す図。
【
図10】第2実施形態における紐づけ処理について説明するための図。
【
図11】第3実施形態に係る照明制御装置の機能構成の一例を示す図。
【
図12】照明制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図13】複数の照明器具及び複数の照度センサの配置の一例を示す図。
【
図14】クラスタリング結果の誤りを修正する構成の一例を示す図。
【
図15】複数の照明器具に対して実行されたクラスタリングの結果の一例を示す図。
【
図16】第4実施形態における複数の照明器具及び複数のカメラ型照度センサの配置の一例を示す図。
【
図17】部屋内の明るさを制御する際に照度を検出するエリアについて説明するための図。
【
図18】点灯している照明器具の位置を特定する際に照度を検出するエリアについて説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。なお、以下では、実施形態の説明に関する部分のみを示し、例えば電源等については図示と説明を省略している。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る照明制御装置は、無線機が搭載された複数の照明器具の照明(点灯または消灯)を制御するために、既知の位置に取り付けられた複数の照明器具に搭載(内臓)されている無線機に割り当てられている無線機IDを特定する用途に用いられる。
【0014】
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る照明制御装置の概要について簡単に説明する。
図1は、1つの部屋1に取り付けられている複数の照明器具2の位置を示している。
【0015】
本実施形態において、複数の照明器具2の各々には、無線機が搭載されている。この場合、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に制御信号を送信することによって、当該照明器具2を制御することができる。
【0016】
ここで、例えば部屋1に取り付けられている複数の照明器具2のうちの1つの照明器具2aを制御する場合、当該照明器具2aに搭載されている無線機に対して制御信号を送信する必要がある。この場合、制御信号は、照明器具2aに搭載されている無線機に割り当てられている無線機IDを指定することによって送信される。
【0017】
しかしながら、複数の照明器具2の各々が取り付けられている位置と当該照明器具2に搭載されている無線機に割り当てられている無線機ID(以下、照明器具2に対応する無線機IDと表記)との対応関係が不明である場合には、特定の位置に取り付けられている照明器具2の照明を制御することができない。
【0018】
具体的には、
図1に示す例えば照明器具2aを点灯させたいような場合において、当該照明器具2aに対応する無線機IDが不明である場合には、当該照明器具2aに搭載されている無線機に制御信号を送信することができないため、当該照明器具2aを点灯させることができない(つまり、照明器具2aを制御するための制御信号の送信先となる無線機を判別することができない)。
【0019】
そこで、本実施形態に係る照明制御装置は、複数の照明器具2の各々が取り付けられている位置(以下、単に照明取り付け位置と表記)及び当該複数の照明器具2の各々に対応する無線機ID(のリスト)は既知であるが、当該照明取り付け位置に取り付けられている照明器具に、いずれの無線機IDが割り当てられている無線機が搭載されているか(つまり、照明取り付け位置に対応する無線機ID)が不明であるとの状況において、既知の照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの自動的な紐づけを行う構成を有する。
【0020】
ところで、複数の照明器具の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定される当該無線機毎の受信電力は、当該無線機間の距離と相関関係を有している。このため、無線機毎の受信電力を利用して、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機の位置を推定する(つまり、照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとを紐づける)ことが考えられる。なお、本実施形態における受信電力とは、例えば一方の無線機(送信機)から送信された無線信号が他方の無線機(受信機)によって受信された際の当該無線信号(受信信号)の強度に相当する。
【0021】
しかしながら、照明器具2が取り付けられる部屋(屋内)には壁、天井及び什器(例えば、家具等)が存在するため、当該壁、天井及び什器で無線信号が反射することにより、強いマルチパスが発生する。この場合、周波数選択性フェージングが発生し、受信電力が大きくばらつく可能性がある。上記した無線信号を送受信するための通信帯域がこのようなばらつきを抑圧することができる程度に十分に広帯域であればよいが、照明器具2を制御するための照明制御システムには高い通信レートは要求されないため、広帯域な通信帯域が使用されることは少ない。
【0022】
この場合、上記したように測定される受信電力は大きくばらつくことになるが、無線信号が送受信される空間(パス)の状況が変化すると、マルチパスの干渉状態が変化し、受信電力も変化する。例えば人等の移動体が常に移動している環境であれば、十分に長い時間をかけて何回も受信電力を測定することで平均的に安定した受信電力を得ることができるが、上記した照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの紐づけは、当該照明器具2が取り付けられた施設の実用前に行う必要がある。このような施設の実用前の状態では、受信電力の測定中に移動するようなものがないことが多く、当該受信電力が十分に変動しないため、距離と高い相関関係(対応関係)を有する受信電力を得ることは困難である。
【0023】
すなわち、上記したように受信電力(無線電力)と距離との相関関係を利用して、照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの紐づけを行ったとしても、無線機の遠近(位置)を正しく判別することができず、精度の低い結果となることが多い。
【0024】
このため、本実施形態においては、受信電力と無線機間の距離との相関が低い場合であっても照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの紐づけを高い精度で行うために、上記した受信電力に加えて照度センサ(照度検出器)によって検出される照度を用いる。
【0025】
図2は、本実施形態における照明制御システムの構成の一例を示す。
図2に示すように、照明制御システムは、複数の照明器具2、複数の照度センサ3及び照明制御装置10を備える。
【0026】
複数の照明器具2の各々には、異なる無線機IDが割り当てられている無線機が搭載されている。なお、複数の照明器具2の各々は、施設の天井等の既知の照明取り付け位置に取り付けられている。
【0027】
本実施形態においては、複数の照度センサ3の各々は、複数の照明器具2とは異なる既知の位置(以下、センサ取り付け位置と表記)に取り付けられている。複数の照度センサ3の各々は、例えば当該照度センサ3の直下2mの直径5mの範囲の照度を検出(計測)するような性能を有しているものとする。なお、本実施形態においては、照明制御システムが複数の照度センサ3を備えるものとして説明するが、当該照度センサ3は1つ以上であればよい。また、照度センサ3は照明器具2と一体として構成されていてもよい(つまり、照明器具2と同じ位置に取り付けられていてもよい)。
【0028】
照明制御装置10は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に制御信号を送信することによって、当該照明器具2(の点灯及び消灯)を制御する。
【0029】
また、照明制御装置10は、通信回線4を介して、複数の照明器具2及び複数の照度センサ3と通信可能に接続される。照明制御装置10は、このような通信回線4を介して、上記した複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機毎の受信電力及び複数の照度センサ3の各々によって検出された照度を受信(収集)する。なお、受信電力及び照度を受信するための通信回線4は、基本的には無線であるが、有線によるものであってもよい。
【0030】
ここで、本実施形態において、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機は、互いに無線通信を実行する(つまり、無線信号を送受信する)ことによって、受信電力を測定する(受信電力情報を取得する)ことができる。この無線機は、無線通信を実行するものであればよいが、例えばブルートゥース(登録商標)に基づく近距離無線通信を実行する機器であり、具体的にはBLE(Bluetooth Low Energy)無線機であってもよい。BLEは、安価であるために種々のシステムに導入されており、比較的利用しやすい無線通信規格である。
【0031】
BLEは2.4~2.48GHz内に40チャネルを規定しており、そのうちの3チャネルがアドバタイズチャネルであり、ビーコンの送出等に使用されている。アドバタイズチャネルは、コネクションを張らずにブロードキャストで使用可能なチャネルである。アドバタイズチャネルは、帯域の両端の2チャネルとその中間の1チャネルとから構成される。
【0032】
上記したように部屋等の屋内では強いマルチパスによる強いフェージング発生する。したがって、BLEのような狭帯域通信では、多くの場合で受信電力が大きくばらつく。仮に40チャネル分の受信電力を全て取得すれば、フェージングの影響を抑圧した値(平均的な受信電力)を利用することが可能であるが、3つの周波数の受信電力(3つのアドバタイズチャネル分の受信電力)しか取得することができない場合には、フェージングの影響を抑圧するには不十分である。
【0033】
なお、受信電力は、無線信号を送受信する無線機(送信機及び受信機)間の距離と相関関係を有する(つまり、距離に依存する)。自由空間であれば、受信電力は、距離の二乗に反比例して減少する。一方、屋内で測定される受信電力は、フェージング(マルチパスや遮蔽)の影響によりばらつくため、必ずしも距離の二乗反比例しないが、無線機間の距離が離れれば測定される受信電力が減少するという傾向には変わりはない。なお、受信電力と無線機間の距離との間の関係をフェージングによるばらつきまで考慮してモデル化しておくようなことも可能である。
【0034】
更に、上記した距離に対応するのは受信電力そのものではなく、送信から受信までの無線信号(電波)の減衰量であるため、送信電力(送信時の無線信号の強度)は既知である必要がある。可変である送信電力を取得して減衰量に相当する量を計算する構成も可能であるが、本実施形態においては、送信電力は無線機によらず同一の値である(つまり、固定されている)という前提の下で測定された受信電力(値)を使用するものとする。なお、上記したように複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機がBLE無線機である場合、受信電力は、無線信号を受信する無線機(受信機)がパケット毎に出力するRSSI(Radio Signal Strength Indication)の値であるものとする。
【0035】
図3は、照明制御装置10の機能構成の一例を示す。
図3に示すように、照明制御装置10は、マップ格納部11、照明制御部12及び紐づけ処理部13を含む。
【0036】
マップ格納部11には、上記した既知の照明取り付け位置が定義されたマップ形式の情報(以下、取り付け位置マップと表記)が格納されている。取り付け位置マップは、例えば上記した
図1に示すような照明取り付け位置(複数の照明器具2の位置)の各々を示す座標を保持しているものとする。ただし、取り付け位置マップは、照明取り付け位置が定義されているのみであって、どの取り付け位置にどの照明器具2(に搭載されている無線機)が配置されているかまでの情報を保持するものではない。また、マップ格納部11に格納されている取り付け位置マップは、上記したセンサ取り付け位置(複数の照度センサ3の位置)を示す座標を更に保持しているものとする。
【0037】
照明制御部12は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に制御信号を送信することにより、当該無線機(照明器具2)の各々に対して当該照明器具2の照明パターンを指示する。すなわち、本実施形態において、複数の照明器具2の各々は、照明制御部12からの指示に基づいて予め定められた照明パターンで照明する。
【0038】
なお、照明パターンとは、特定の無線機IDを指定して当該無線機IDが割り当てられている無線機が搭載されている照明器具2を点灯及び消灯させることをいい、例えば当該照明器具2が点灯及び消灯する時刻(設定時刻)及び当該照明器具2が点灯する際の当該照明器具2の照度(設定照度)が含まれているものとする。これによれば、複数の照明器具2の各々は、当該照明器具2に搭載されている無線機に対して指示された照明パターンに含まれる設定時刻に設定照度で点灯するまたは当該設定時刻に消灯するように動作することができる。なお、照明制御部12は、点灯または消灯、照度測定をその度に指示してもよいし、照明パターンを予めまとめて送信し、照明器具2、照度センサ3がタイミングを合わせて点灯・消灯、照度測定を行うよう指示してもよい。
【0039】
また、照明制御部12は、上記した複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に対して指示された照明パターンを複数の照度センサ3の各々に対して指示する。これにより、複数の照度センサ3の各々は、複数の照明器具2の各々が点灯するタイミング(時刻)で照度を検出することができる。
【0040】
紐づけ処理部13は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された受信電力を、当該無線機の各々から収集する。
【0041】
ここで、第1及び第2無線機間で無線信号が送受信されることによって受信電力が測定される場合について説明する。例えば第1無線機から第2無線機に無線信号が送信されるものとすると、第2無線機は、当該無線信号を受信し、当該無線信号の強度(つまり、受信電力)を測定する。この場合、第1無線機から送信される無線信号には当該第1無線機に割り当てられている無線機ID(以下、第1無線機の無線機IDと表記)が含まれており、第2無線機は、測定された受信電力、受信された無線信号に含まれている第1無線機の無線機ID及び当該第2無線機に割り当てられている無線機ID(以下、第2無線機の無線機IDと表記)を、上記した通信回線4を介して照明制御装置10に送信する。照明制御装置10は、このように第2無線機から送信された受信電力、第1無線機の無線機ID及び第2無線機の無線機IDを受信することによって、当該第1及び第2無線機間で無線信号が送受信されることによって測定された受信電力(以下、単に第1及び第2無線機間で測定された受信電力と表記)を収集することができる。
【0042】
ここでは、便宜的に、第1及び第2無線機間で測定された受信電力を収集する場合について説明したが、紐づけ処理部13は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機の無線通信可能な全ての組み合わせにおいて測定された受信電力を収集する。
【0043】
なお、紐づけ処理部13において収集される受信電力は、例えば上記したBLEにおいて規定されているアドバタイズチャネル(3チャネル分)のRSSIである。
【0044】
また、紐づけ処理部13は、複数の照度センサ3の各々によって検出された照度を、当該照度センサ3から収集する。この場合、紐づけ処理部13によって収集される照度には、当該照度を検出した照度センサ3に割り当てられている照度センサID及び当該照度が検出された時刻(を示す情報)が付加されているものとする。
【0045】
紐づけ処理部13は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機から収集された受信電力及び複数の照度センサ3の各々から収集された照度に基づいて、既知の照明取り付け位置の各々に対応する無線機IDを特定する。なお、このような照明取り付け位置の各々に対応する無線機IDを特定する処理は、上記したマップ格納部11に格納されている取り付け位置マップ及び照明制御部12によって指示された照明パターン(設定時刻及び設定照度)等を用いて実行される。
【0046】
上記したように紐づけ処理部13によって照明取り付け位置の各々に対応する無線機IDが特定された場合には、当該取り付け位置と当該無線機IDとを紐づけることができるため、当該取り付け位置に取り付けられている照明器具2を点灯させる際には当該取り付け位置と紐づけられた無線機IDが割り当てられている無線機に制御信号を送信すればよいことがわかる。すなわち、このような紐づけ結果は、例えば照明制御装置10内に保持(登録)され、複数の照明器具2の照明を制御するために用いられる。なお、紐づけ結果は、複数の照明器具2の照明を制御する外部の装置に出力されても構わない。
【0047】
図4は、照明制御装置10のハードウェア構成の一例を示す。
図4に示すように、照明制御装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103及び通信デバイス104等を備える。
【0048】
CPU101は、照明制御装置10内の様々なコンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU101は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。また、複数のプロセッサは、物理的にほぼ同じ場所にあってもよいし、異なる場所にあってネットワークを介して接続されていてもよい。すなわち、本実施形態に係る照明制御装置10は、複数の装置から構成され、当該照明制御装置10の処理を当該複数の装置で分散して実行するような構成であってもよい。CPU101は、不揮発性メモリ102から主メモリ103にロードされる様々なプログラムを実行する。
【0049】
通信デバイス104は、無線通信または有線通信を実行するように構成されたデバイスである。この通信デバイス104により、照明制御装置10は、複数の照明器具2に搭載されている無線機及び複数の照度センサ3の各々と通信可能に接続される。
【0050】
図4においては不揮発性メモリ102及び主メモリ103のみが示されているが、照明制御装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0051】
なお、本実施形態において、
図3に示すマップ格納部11は、不揮発性メモリ102または他の記憶装置等によって実現される。
【0052】
また、
図3に示す照明制御部12及び紐づけ処理部13の一部または全ては、CPU101(つまり、照明制御装置10のコンピュータ)に所定のプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この所定のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて参照可能な場所に保存されていてもよい。なお、各部12及び13の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0053】
次に、
図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係る照明制御装置10の処理手順の一例について説明する。
【0054】
まず、紐づけ処理部13は、上記したように複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機間で測定された受信電力(例えば、RSSI)を収集する(ステップS1)。
【0055】
次に、照明制御部12は、複数の照明器具2の各々の照明パターンを当該照明器具2に搭載されている無線機に送信する(指示する)ことによって、当該複数の照明器具2を制御する(ステップS2)。なお、無線機に送信される照明パターンは、予め用意されていればよいが、例えばステップS2の処理が実行される時点で取り付け位置マップ(既知の照明取り付け位置の数等)に基づいて作成(決定)されてもよい。また、この複数の照明器具2の各々の照明パターンは、複数の照度センサ3の各々に送信されるとともに、紐づけ処理部13に通知される。
【0056】
ステップS2の処理が実行されると、複数の照度センサ3の各々は、照明制御部12から送信された照明パターンに従って照度を検出し、当該検出された照度及び当該照度センサ3に割り当てられている照度センサIDを当該照度が検出された時刻(検出時刻)とともに照明制御装置10に送信する。
【0057】
紐づけ処理部13は、複数の照度センサ3の各々から送信された照度、照度センサID及び検出時刻を受信する。これにより、紐づけ処理部13は、複数の照度センサ3の各々によって検出された照度(つまり、照度センサIDが割り当てられている照度センサ3によって検出時刻に検出された照度)を収集する(ステップS3)。
【0058】
ここで、
図6を参照して、上記したステップS2及びS3の処理(つまり、照度センサ3によって検出される照度)について具体的に説明する。
【0059】
上記したようにステップS2においては照明パターン(制御信号)が複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に送信されることによって当該照明器具2が制御されるが、最も単純な照明パターンとしては、複数の照明器具2の各々を時分割で順次点灯させることが考えられる。
【0060】
具体的には、
図6に示すように、24個の照明器具2及び12個の照度センサ3が部屋1内の既知の取り付け位置に取り付けられているものとする。ここでは、24個の照明器具2に対応する無線機IDのリストは予め保持されているが、当該無線機IDが割り当てられている無線機がどの照明取り付け位置に取り付けられている照明器具2に搭載されているかは不明であるものとする。
【0061】
この場合において、例えば第1~第4無線機IDが割り当てられている無線機を搭載している照明器具2を時分割で順次点灯及び消灯させるような照明パターンが当該第1~第4無線機IDが割り当てられている無線機に送信された場合を想定する。
【0062】
この場合、時刻1において第1無線機IDが割り当てられている無線機を搭載している照明器具2aが点灯し、時刻2において当該照明器具2aが消灯するとともに第2無線機IDが割り当てられている無線機を搭載している照明器具2bが点灯し、時刻3において当該照明器具2bが消灯するとともに第3無線機IDが割り当てられている無線機を搭載している照明器具2cが点灯し、時刻4において当該照明器具2cが消灯するとともに第4無線機IDが割り当てられている無線機を搭載している照明器具2dが点灯したものとする。
【0063】
ここで、
図7は、上記したように照明器具2a~2dが順次点灯した場合の
図6に示す照度センサ3aによって検出される照度の一例を示している。
図7においては、照明器具2aが点灯している時刻1のタイミングで検出された照度、照明器具2bが点灯している時刻2のタイミングで検出された照度、照明器具2cが点灯している時刻3のタイミングで検出された照度、照明器具2dが点灯している時刻4のタイミングで検出された照度が示されている。
【0064】
図7に示すように、照度センサ3aによって検出される照度は、当該照度センサ3aと点灯している照明器具2a~2dとの間の距離に応じて増減する。
【0065】
図7においては照度センサ3aによって検出される照度についてのみ説明したが、このような照度は、複数の照度センサ3の各々によって検出される。
【0066】
複数の照度センサ3の各々は、上記したように複数の照明器具2の各々が点灯しているタイミングで検出された照度を照明制御装置10に送信する。
【0067】
ここでは複数の照明器具2を1つずつ順次点灯させるような照明パターンについて説明したが、当該照明パターンは、複数の照明器具2のうちの2つ以上を同時に点灯させるようなものであってもよい。
【0068】
また、例えば複数の照明器具2の全てを消灯させた状態で背景光(当該照明器具2以外の光)の照度を複数の照度センサ3によって検出し、当該検出された照度を照明制御装置10に通知するような構成であってもよい。これによれば、複数の照明器具2の各々が点灯しているタイミングで複数の照度センサ3によって検出された照度から背景光の照度を減算することで、当該背景光の影響を除去することができる。
【0069】
なお、照度センサ3が部屋内に3つ以上あり、どの照度センサ3がどのセンサ取り付け位置に取り付けられているかが既知である(以下、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知であると表記)場合には、当該照度センサ3によって検出された照度から変換される距離を用いて三辺測量の拡大版であるマルチラテレーションを実施して点灯している照明器具2の位置を求める(推定する)ことは可能である。点灯している照明器具2に対応する無線機IDは照明パターンにより判別可能であるため、点灯している照明器具2の位置を求めることによって、当該照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとを紐づけることができる。
【0070】
しかしながら、受信電力と同様に、距離が離れると、照度と距離との相関関係(対応関係)の精度は劣化する。このため、上記したように照度センサ3が3つ以上取り付けられている場合であっても、当該3つの照度センサ3に囲まれた範囲外に取り付けられている照明器具の位置についての誤差は大きくなる。また、照明器具2と照度センサ3との取り付け位置の関係によっては、上記したように点灯している照明器具2の位置を求めることが不可能な場合もある。また、部屋内に必ずしも3つ以上の照度センサ3が取り付けられているとも限らない。
【0071】
このため、照度センサ3(によって検出された照度)のみに基づいて、照明器具2の取り付け位置と当該照明器具2に対応する無線機IDを紐づけることは困難である。
【0072】
再び
図5に戻ると、紐づけ処理部13は、ステップS1において収集された受信電力及びステップS3において収集された照度を併用して、既知である照明取り付け位置の各々と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの紐づけ(つまり、各無線機IDが割り当てられている無線機の位置推定)を行う(ステップS4)。
【0073】
なお、既知の照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとを紐づけるためには、当該無線機IDが割り当てられている無線機がいずれの照明取り付け位置に配置されているかを推定する必要がある。すなわち、ステップS4の処理は、既知の照明取り付け位置の中から各無線機の位置を推定する処理に相当する。以下の説明においては、照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとを紐づける(当該照明取り付け位置に対応する無線機IDを特定する)処理を、便宜的に、紐づけ処理と称する。
【0074】
上記した紐づけ処理は、例えばセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合と、当該センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知でない(未知である)場合とがあるが、ここではセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合について主に説明する。
【0075】
上記したようにセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合、紐づけ処理(ステップS4の処理)は、例えば多次元尺度構成法(MDS:Multi-Dimensional Scaling)のようなアルゴリズムを用いて実行される。MDSは、相対位置推定アルゴリズムであり、例えば全てのノードの組み合わせの距離(ノード間距離)を利用する。本実施形態においては、ステップS1において収集された受信電力に基づく距離(複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機間の距離)と、ステップS3において収集された照度に基づく距離(複数の照明器具2の各々と複数の照度センサ3の各々との間の距離)と、複数の照度センサ3間の距離とが、上記したMDSにおけるノード間距離に相当する。なお、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知であるため、複数の照度センサ3間の距離は、上記したマップ格納部11に格納されている取り付け位置マップに保持されている複数のセンサ取り付け位置を示す座標から既知である。なお、「距離」は必ずしも照明器具間の距離と同じスケールでなくてよく、受信電力や照度を処理して得られる他の「位置の離れ具合」を示すパラメータであってもよい。したがって必ずしもメートルといった距離の単位を有さない。
【0076】
ここで、受信電力(RSSI)に基づく距離は、公知の手法により定義することができる。具体的には、受信電力に基づく距離は、上記したように二乗減衰を用いて定義されてもよいし、その他の減衰乗数を用いてモデル化されていてもよい。また、上記した3チャネル分のRSSIが受信電力として収集されている場合には、当該3チャネル分のRSSIの真値平均、dB値のままで平均化した値、または最大値等(つまり、当該3チャネル分のRSSIを集約した値)に基づく距離を用いてもよい。
【0077】
一方、照度に基づく距離についても同様に公知の手法により定義することができる。具体的には、照度に基づく距離は、照度と距離に関する二乗減衰則や、角度に関するコサイン4乗則を用いて定義されてもよい。また、別途測定を行うことによって作成された関係式等を用いてもよい。
【0078】
なお、例えば屋内の壁紙、塗装面、カーペット等は概ね平面形状であるため、電波は鏡面反射する。また、金属で形成された面や柱が存在する場合、電波で励起された電流による再放射が発生するため、屋内では複雑なマルチパスが形成される。一方、可視光は波長が0.4μm~0.8μmであり、電波の波長よりも非常に短い。壁面や床面の粗さはこれよりも大きいため、可視光は、反射ではなく散乱される。可視光の鏡面反射は鏡や平面ガラスのような面以外では発生しないが、このような面が床面に使用される施設は少ないと考えられる。天井に取り付けられた照明器具2からの光を床面方向を向いた照度センサ3で検出(測定)する場合、照度として検出される光は概ね床面での散乱光である。また、電波の場合に生じるマルチパスフェージングは干渉縞による電力の増減と同様の現象であるが、光の場合は干渉縞ができたとしても縞の繰り返し単位はμm~mmオーダーである。また、照明器具2は、例えば1オクターブの可視光を出力するため、非常に比帯域が大きい。このため、フェージングによる電力の増減が照度センサ3で観測されることはない。したがって、屋内では数10dBの電力の増減がフェージングで頻繁に発生するマイクロ波帯電波と比較して、光では、距離と照度とについて、よりばらつきの少ない関係を得ることができる。
【0079】
ところで、上記したMDSを用いて複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機(つまり、各無線機IDが割り当てられている無線機)及び複数の照度センサ3の各々の位置を推定することができるが、当該推定される位置は相対位置である。
【0080】
このため、上記したようにセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合には、当該センサ取り付け位置に対応する照度センサID(センサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係)をアンカーとして利用し、各無線機IDに対応する照明器具2が取り付けられている位置(つまり、無線機IDが割り当てられている無線機がどの照明取り付け位置にあるか)をハンガリアン(Munkres)アルゴリズム等を用いて決定してもよい。
【0081】
なお、MDSは、全てのノード間距離を平等な重みで評価するアルゴリズムである。一方、本実施形態において、複数の照度センサ3間の距離は既知であり、照度に基づく距離は、上記したように受信電力(RSSI)に基づく距離よりも精度が高い。また、受信電力も照度も距離が短いほど精度は高くなる。このように距離によって精度が異なる場合、精度が高い距離(ノード間距離)を高い重みで評価するアルゴリズムを適用することが望ましい。この場合、例えば「Seco, F, et al., “A review of multidimensional scaling techniques for RSS-based WSN localization, ” International Conference on Indoor Positioning and Indoor Navigation (IPIN) 2018」に記載された複数の手法のうち、SMACOF等の一部の手法は距離に重みをつけて評価することができる。このような手法を利用することによって、精度が高い距離の重みを高くするようにしてもよい。
【0082】
更に、大規模施設では、フロアサイズが大きく、必ずしも全ての無線機間の受信電力(RSSI)を測定することができるとは限らない。また、照度に関しても、照度センサ3から遠距離に取り付けられている照明器具2では測定照度が雑音レベルを下回り、実質的に照度を検出することができない場合がある。このような場合には、一部の無線機間の受信電力または一部の照明器具2の照度が収集されない(つまり、当該受信電力に基づく距離または当該照度に基づく距離がない)ため、MDSを用いることができない。この場合には、上記したSMACOFのような重みづけが可能な手法または当該SMACOFと同じ文献に記載されているPush-Pullのような重みづけだけでなく切れているリンク(収集されない受信電力または照度に基づく距離)を使用しないことが本質的に可能な手法を用いればよい。
【0083】
また、本実施形態においては、例えば非特許文献1記載の尤度を使用した遺伝的アルゴリズムを使用することも可能である。この遺伝的アルゴリズムは、切れているリンクを本質的に使用しないことが可能な手法である。また、この遺伝的アルゴリズムは尤度の合計値を評価するアルゴリズムであるため、値の尤もらしさが受信電力と照度とで異なるのであれば、尤もらしさに対応して尤度を変更することで重みを付与し、精度の高い照度の影響をより強くするようなことを実現することができる。遺伝的アルゴリズムでは受信電力や照度を距離に換算することなく使用することが可能である。
【0084】
本実施形態においては、上記したように推定される複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機(各無線機IDが割り当てられている無線機)及び複数の照度センサ3の各々の相対位置を、ハンガリアンアルゴルズム等を用いて既知の取り付け位置と紐づけるが、上記したようにセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合には、当該センサ取り付け位置と照度センサIDとの組み合わせを既知のアンカーとして、その他の組み合わせ(照度取り付け位置と無線機IDとの組み合わせ)を特定すればよい。
【0085】
なお、詳しい説明については省略するが、遺伝的アルゴリズムにおいては、例えば初期遺伝子を用いて「評価」、「選択」、「交叉」及び「突然変異」と称される遺伝的操作を実行する処理が選択的に繰り返し実行される。上記したようにセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合にこのような遺伝的アルゴリズムを用いるのであれば、既知であるセンサ取り付け位置と照度センサIDとの組み合わせを固定した状態で「交換」及び「突然変異」が実行されるようにすればよい。
【0086】
上記したように本実施形態においては、複数の既知の位置(照明取り付け位置)に取り付けられた複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機間で無線信号を送受信することによって測定された当該無線機毎の受信電力(第1受信電力)を収集し、複数の照明器具2のうちの少なくとも1つが点灯することによって、当該複数の照明器具2とは異なる既知の位置(センサ取り付け位置)に取り付けられた照度センサ3(照度検出器)によって検出された照度を取集し、当該収集された受信電力及び当該収集された照度に基づいて、照明取り付け位置の各々に対応する無線機ID(つまり、照明取り付け位置と、当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの対応関係)を特定する。
【0087】
本実施形態においては、上記した構成により、単に受信電力(RSSI)を用いる構成と比較して、照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの紐づけを高い精度で行うことが可能となる。
【0088】
また、特定の無線機IDに対応する照明器具2が点灯した場合の照度を各照度センサ3によって検出するために、当該照明器具2は所定のタイミング及び所定の照度で点灯または消灯する必要があるが、本実施形態においては、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に対して当該照明器具2の照明パターン(当該照明器具2が点灯または消灯する際の設定時刻及び設定照度)を指示し、当該照明器具2が当該照明パターンに基づいて点灯または消灯することにより、上記した各無線機IDに対応する照明器具2が点灯した場合の照度を正確に検出(測定)することが可能となる。
【0089】
更に、本実施形態においては、上記した複数の照明器具2の各々(に搭載されている無線機)に対して指示された照明パターンを管理し、当該照明パターンに基づいて既知の照明取り付け位置に取り付けられている照明器具2に対応する無線機IDを特定することにより、照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとを適切に紐づけることができる。
【0090】
ここで、本実施形態においては、複数の照度センサ3の各々を用いて照度を収集するために、照明器具2を1つずつ順次点灯及び消灯させながら当該照度センサ3が照度を検出する(つまり、1の時刻に複数の照明器具2のうちの1つの照明器具2が点灯する照明パターンを各照明器具2に搭載されている無線機に対して指示する)ものとして説明したが、これは、通信でいう時分割多重に相当する。このような多重化する手法はこの他にも多数あり、代表的なものとしては周波数分割多重及び符号分割多重がある。
【0091】
しかしながら、周波数分割多重については、正弦波で変調しても照度は正確な正弦波とはならず、他の周波数へスプリアスが漏れこむ可能性があるため、照明器具2の照度を正確に正弦波で変調して照度を検出することは難しい。また、複数の周波数を分離するには、正弦波の多数の周期を含むように検出時間を設定し、かつ、これがサンプリング定理を満たす程度の速度で照度センサ3が照度を検出する必要がある。照明器具2自体の機能としては高速な照度変調は不要であり、照度センサ3にも早い間隔での照度検出は要求されないため、多数の周波数の正弦波を分離しようとすると検出時間が非常に長くなる。
【0092】
そこで、ここでは符号分割多重を適用する場合を考える。
図8は、符号分割多重が適用された場合の照明制御装置10の機能構成の一例を示す。
図8においては、上記した
図3と同様の部分には同一参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0093】
図8に示すように、照明制御装置10は、直交符号生成部14を更に含む。なお、直交符号生成部14の一部または全ては、ソフトウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0094】
直交符号生成部14は、部屋に取り付けられている照明器具2の数に応じた数の直交符号列(つまり、互いに直交する複数の符号列)を生成し、照明制御部12に通知する。なお、直交符号生成部14によって生成される符号列は、相互相関の小さい符号列であれば公知のものであってよい。
【0095】
また、本実施形態においては、全ての照明器具2の点灯タイミングを制御することができるため、自己相関の高低は考慮する必要はない。このため、相互相関は低くないが自己相関が十分に低いPN系列、M系列といった疑似乱数系列を使用し、当該疑似乱数系列を時間方向に巡回シフトさせて実質的に相互相関を低めた複数の直交符号列を利用してもよい。
【0096】
なお、
図9は、上記した直交符号列の例として8bitのウォルシュ符号を示している。また、
図9に示す横軸に付されている数字は、符号列のビット番号を示している。
【0097】
ここで、直交符号生成部14は、複数の照明器具2の数以上の数の符号列を作成する。照明制御部12は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機に異なる符号列を割り当て、当該割り当てられた符号列を照明パターンとして当該無線機(を搭載している照明器具2)に対して指示する。この場合、照明制御部12は、1ビットで点灯または消灯を指示してもよいし、更に設定照度(点灯時の照度)を指示してもよい。また、照明制御部12は、符号列、符号切り替え間隔及び設定照度をまとめて指示(送信)し、複数の照度センサ3の各々に符号切り替え間隔を送信し、その後、複数の照明器具2に切り替え(指示)を、複数の照度センサ3に検出開始命令を送信してもよい。このように本実施形態においては、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機毎に異なる符号列を割り当てることによって、当該無線機(に搭載されている照明器具2)に対して設定時刻及び設定照度の変更(つまり、照明パターン)を指示するようにしてもよい。
【0098】
なお、照度の符号による変調は照明器具2のオン及びオフ(つまり、点灯及び消灯)でよく、オン時の照度を照明制御部12が指示する。照度は指示されなくてもよく、この場合、複数の照明器具2は規定の照度で点灯すればよい。このような構成によれば、通信量を削減することができるだけでなく、照度を変更する機能を有さない照明器具2を利用することが可能となる。
【0099】
また、照明器具2は、点灯及び消灯を切り替えるのではなく、大きい照度と小さい照度とを切り替える(つまり、照度を切り替える)ように点灯してもよい。照度を変更する機能を有する照明器具2であれば、照度を切り替える構成とした方が高速な変調を実現することができる。
【0100】
更に、照明器具2のオン及びオフを切り替える場合は、符号の各ビット間に全ての照明器具2が完全にオフになる(消灯する)バッファ期間を設けるようにしてもよい。この場合、1ビット分の点灯時間よりビット切り替え間隔を長くすることにより、照明器具2や照度センサ3に多少のタイミングのずれがあったとしても、当該ずれを検出して修正することが可能となる。
【0101】
また、全ての照明器具2が明確にオフである(消灯している)期間を設けて背景光の照度(量)を検出してもよい。このような背景光の照度を各照明器具2がオンしているときの照度(照度センサ3によって検出された照度)から減算することによって、背景光の影響を排除し、当該照度(に基づく距離)の精度を向上させることが可能となる。
【0102】
なお、各照度センサ3によって各ビットでの照度が検出された場合、当該照度(列)は、照明制御装置10に送信される。照明制御装置10は、各照度センサ3によって検出された照度列から各符号列の強度を復調する。この場合、例えば符号多重の復調の公知の手法である逆拡散が行われる。上記した
図9に示す系列は1と-1とからなるが、照度には負の値がないため、0以上の値での切り替えとなり、符号列で変調された光はその平均分のバイアスを有する。このバイアス成分は直流光であり、符号変調されていない成分であるが、当該バイアス成分の大きさは符号変調振幅に対して既知であるため、独立した未知の値とはならない。なお、バイアス成分は、照明器具2のオン及びオフで変調する場合は当該照明器具2の照度の半分であり、当該照明器具2の照度の大小で変調する場合は当該大小の照度の中間の値である。各符号列を同じ符号列で逆拡散したときの利得及び異なる符号列で逆拡散したときの抑圧度は、符号の種類や長さによって予め決まっている。また、各照明器具2の設定照度も既知であるため、未知の値は各照明器具2が点灯した場合の当該照明器具2からの光が各照度センサ3によって検出された照度となるまでの減衰量のみであり、当該未知の値の数は照明器具2の数と等しい。上記した照度列をそれぞれの符号列で逆拡散して得られる値も照明器具2の数だけ得られるため、利得や抑圧度、更には、符号変調時の平均照度を利用して、各照明器具2の点灯時に照度センサ3によって検出された場合の照度を推定することができる。
【0103】
また、上記した背景光は全ての照明器具2がオフである期間を設けることによって検出されてもよいが、他の手法により得てもよい。具体的には、照明制御装置10は、照明器具の数より多い直交符号列を準備(作成)する。各照明器具2を異なる符号列で変調させて得られた照度列を逆拡散する際、照明器具2に割り当てなかった符号列でも逆拡散する。その結果、照明器具2の数+1の値が得られるが、未知の値は各照明器具2からの光の減衰量と背景光であるであるため、連立方程式を解いて各減衰量と背景光(の照度)を推定する構成とすることも可能である。
【0104】
また、本実施形態においては、複数の照明器具2の各々が無線機を搭載しており、当該無線機間で測定された受信電力を用いるものとして説明したが、複数の照度センサ3の各々に無線機が搭載されていても構わない。この場合には、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機と複数の照度センサ3に搭載されている無線機との間で測定された受信電力(第2受信電力)を、当該照明器具2と当該照度センサ3との間の距離に関する情報として利用することができる。
【0105】
照度センサ3によって検出された照度に基づく距離の精度は距離とともに劣化する。これは受信電力(RSSI)でも同様であるが、距離に対応する精度の変化の仕方は受信電力と照度とで異なる。このため、照明器具2と照度センサ3との間の距離に関する情報として受信電力及び照度を併用することによって、既知の照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの紐づけ(つまり、紐づけ処理)を更に高精度に行うことができる可能性がある。この場合、上記した紐づけ処理においては、例えば精度の観点から尤度等で重みをつけて受信電力及び照度を合成した値(または当該値に基づく距離)を利用してもよいし、当該尤度の高さ等に基づいて選択された受信電力及び照度の一方(または当該一方に基づく距離)を利用してもよい。
【0106】
なお、本実施形態においては、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である(つまり、どの照度センサ3がどのセンサ取り付け位置に取り付けられているかが既知である)ものとして主に説明したが、当該センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である場合もある。ただし、複数のセンサ取り付け位置及び複数の照度センサ3の各々に割り当てられている照度センサIDのリストは既知であるものとする。
【0107】
この場合、センサ取り付け位置が既知であるとしても、個々の照度センサ3がいずれの取り付け位置に取り付けられているかが不明であるため、マップ格納部11に格納されている取り付け位置マップから特定の照度センサ3間の距離を得ることはできない。また、複数の照度センサ3が無線機を搭載していない(つまり、照明制御装置10との通信を有線により実行している)場合、当該照度センサ3間の距離に関する情報として受信電力を利用することはできない。更に、照度センサ3は照度を検出するが、照明ではないため、照度センサ3間の距離に関する情報として照度を利用することはできない。
【0108】
すなわち、上記したようにセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知であり、かつ、複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載していない場合には、複数の照度センサ3間の距離に関する情報が欠損した状態で上記した紐づけ処理を実行する必要がある。この場合には、このような欠損を許容するアルゴリズム、例えば、Push-Pullを用いて紐づけ処理を実行されるようにしてもよい。
【0109】
一方、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である場合であっても、複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載している場合には、当該複数の照度センサ3間の距離に関する情報として当該複数の照度センサ3間で測定された受信電力(第3受信電力)を利用することができる。なお、上記したように欠損を許容するアルゴリズムを用いる場合であっても、照度センサ3間で測定された受信電力を用いて欠損(特に、ノード間距離が遠距離でない場合の欠損)を減少させることにより、紐づけ処理の精度を向上させることができる。また、上記したようにセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である場合に実行される紐づけ処理においては、既知の複数のセンサ取り付け位置に取り付けられている照度センサ3の各々に搭載されている無線機に割り当てられている無線機ID(つまり、センサ取り付け位置と当該センサ取り付け位置に対応する無線機IDとの対応関係)が更に特定され、当該センサ取り付け位置と当該無線機IDとの紐づけが行われる。
【0110】
更に、複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載している場合には、当該無線機間で測定された受信電力に基づいて、全てのセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDを特定し、当該センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合の紐づけ処理が実行されるようにしてもよい。この場合、全てのセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である必要はないが、一部のセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知であり、当該センサ取り付け位置及び照度センサIDの対応関係(つまり、いずれのセンサ取り付け位置に取り付けられているかが判明している照度センサ3)をアンカーとして使用することで、全てのセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDを特定することができる。照度センサ3は照明器具2よりも数が少なく、比較的広い間隔で取り付けられるため、受信電力のみでも精度の高い紐づけを行うことが可能である。
【0111】
なお、複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載している場合には、当該複数の照度センサ3は、当該無線機を介して照明制御装置10と無線による通信を実行することができる。
【0112】
また、本実施形態においては、複数の照明器具2(及び照度センサ3)の各々に搭載されている無線機がブルートゥースに基づく無線通信を実行する機器(BLE無線機)であるものとして説明したが当該無線機は、他の無線機と無線通信を実行することによって受信電力を測定することができるものであれば、他の機器であってもよい。
【0113】
更に、本実施形態において、照明制御装置10は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバ装置、スマートフォン、タブレット端末等として実現され得るが、FPGA(Field Programmable Gate Array)やマイコンボード等に実装されていてもよい。更には、これらの組み合わせによって実装されていてもよい。
【0114】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の部分についての説明を省略し、当該第1実施形態と異なる部分について主に説明する。また、本実施形態に係る照明制御システム及び照明制御装置10の構成については、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、
図2及び
図3等を用いて説明する。
【0115】
ここで、照度センサ3から遠く離れた位置に照明器具2が取り付けられている場合、当該照度センサ3は、当該照明器具2が点灯したとしても有効な照度(値)を検出することができない場合がある。例えば1辺が100m程度のフロアの場合、当該フロアの端近傍に取り付けられている照度センサ3は、当該照度センサ3とは反対の端に取り付けられている照明器具2の点灯による照度を検出しようとしても、背景光に埋もれて有効な照度を検出することができない。
【0116】
これに対して、照度センサ3は、当該照度センサ3の近傍(直近)に取り付けられている照明器具の点灯による照度は高い精度で検出することができる。
【0117】
本実施形態においては、上記したような照度センサ3の特性を利用した紐づけ処理を実行する点で、前述した第1実施形態とは異なる。
【0118】
以下、
図10を参照して、本実施形態における紐づけ処理について説明する。ここでは、
図10に示すように、4つの照明器具2-1~2-4と2つの照度センサ3-1及び3-2とが既存の取り付け位置に取り付けられているものとする。更に、照明器具2-1及び2-2は照度センサ3-1の近傍に取り付けられており、照明器具2-3及び2-4は照度センサ3-2の近傍に取り付けられているものとする。ただし、照明制御装置10(紐づけ処理部13)は、
図10に示す照明器具2-1~2-4と照度センサ3-1及び3-2との位置関係は把握していないものとする。
【0119】
まず、紐づけ処理部13は、照度センサ3-1及び3-2によって検出された照度に基づいて、照明器具2-1~2-4に対応する無線機ID(当該照明器具2-1~2-4の各々に搭載されている無線機に割り当てられている無線機ID)を順位づけする。
【0120】
この場合、照度センサ3-1は、照明器具2-1及び2-2が点灯した際に大きい照度を検出するが、照明器具2-3及び2-4が点灯した際に小さい照度を検出する。なお、照明器具2-1が点灯した際に照度センサ3-1によって検出される照度は、照明器具2-2が点灯した際に照度センサ3-1によって検出される照度と同程度である。また、照明器具2-4が点灯した際に照度センサ3-1によって検出される照度は、照明器具2-3が点灯した際に照度センサ3-1によって検出される照度よりも小さい。
【0121】
これによれば、紐づけ処理部13は、照明器具2-1及び2-2が照度センサ3-1の直近に取り付けられており、照明器具2-3が照明器具2-1及び2-2よりも遠い位置に取り付けられており、照明器具2-4が照明器具2-3よりも更に遠い位置に取り付けられていると順位づけすることができる。
【0122】
同様に、照度センサ3-2は、照明器具2-3及び2-4が点灯した際に大きい照度を検出するが、照明器具2-1及び2-2が点灯した際に小さい照度を検出する。なお、照明器具2-3が点灯した際に照度センサ3-2によって検出される照度は、照明器具2-4が点灯した際に照度センサ3-2によって検出される照度と同程度である。また、照明器具2-1が点灯した際に照度センサ3-2によって検出される照度は、照明器具2-2が点灯した際に照度センサ3-2によって検出される照度よりも小さい。
【0123】
これによれば、紐づけ処理部13は、照明器具2-3及び2-4が照度センサ3-2の直近に取り付けられており、照明器具2-2が照明器具2-3及び2-4よりも遠い位置に取り付けられており、照明器具2-1が照明器具2-2よりも更に遠い位置に取り付けられていると順位づけすることができる。
【0124】
ここで、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知であり、4つの照明取り付け位置が既知である場合には、紐づけ処理部13は、照度センサ3-1によって検出された照度に基づいて照度センサ3-1の左右の照明取り付け位置に取り付けられている照明器具2を照明器具2-1及び2-2に絞ることができる。更に、照度センサ3-2によって検出された照度によれば、照明器具2-1が照明器具2-2よりも遠い位置に取り付けられている(つまり、照明器具2-2の方が照明器具2-1よりも近い)ことがわかる。これにより、紐づけ処理部13は、照度センサ3-1の左隣が照明器具2-1であり、当該照度センサ3-1の右隣が照明器具2-2であると特定することができる。すなわち、紐づけ処理部13は、照度センサ3-1の左隣の照明取り付け位置と照明器具2-1に対応する無線機ID(つまり、照明器具2-1を点灯させるために指定された無線機ID)とを紐づけるとともに、照度センサ3-1の右隣の取り付け位置と照明器具2-2に対応する無線機ID(つまり、照明器具2-2を点灯させるために指定された無線機ID)とを紐づけることができる。
【0125】
同様に、紐づけ処理部13は、照度センサ3-1及び3-2によって検出された照度に基づいて、照度センサ3-2の左隣の照明取り付け位置と照明器具2-3に対応する無線機ID(つまり、照明器具2-3を点灯させるために指定された無線機ID)とを紐づけるとともに、照度センサ3-2の右隣の照明取り付け位置と照明器具2-4に対応する無線機ID(つまり、照明器具2-4を点灯させるために指定された無線機ID)とを紐づけることができる。
【0126】
なお、センサ取り付け位置に対応する照度センサID(つまり、センサ取り付け位置と当該センサ取り付け位置に取り付けられている照度センサ3に割り当てられている照度センサIDとの関係)が既知であり、かつ、
図10に示すように照明器具2の数が少ない場合であれば、全ての照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの対応関係を特定することができる可能性があるが、大規模施設において多数の照明器具2が取り付けられている場合や当該多数の照明器具2が不規則に取り付けられている場合には、照度センサ3によって検出される照度のみでは全ての対応関係を特定することは困難である。
【0127】
このため、上記した照度に基づく照明取り付け位置と無線機IDとの対応関係の特定(推定)を補助的に使用する。この場合、例えば照度に基づいて特定することができた照明取り付け位置と無線機IDとの対応関係はアンカーとして固定し、当該対応関係を特定することができなかった照明取り付け位置及び無線機IDに関して、前述した第1実施形態と同様の処理(紐づけ処理)が実行されればよい。
【0128】
ここでは、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合について説明したが、当該センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である場合には、各照度センサ3の近傍に取り付けられている照明器具2(に対応する無線機ID)の順位づけは可能であるが、複数の照度センサ3間の位置関係が不明であるため、照明取り付け位置と無線機IDとの対応関係を特定することが困難である。
【0129】
この場合、紐づけ処理部13は、例えば複数の照度センサ3の各々を中心とした小規模クラスタを作成する。
図10に示す例では、照度センサ3-1を中心とした照明器具2-1及び2-2からなるクラスタと、照度センサ3-2を中心とした照明器具2-3及び2-4からなるクラスタとが作成される。ここでは、このような小規模クラスタに基づく照明器具2(に対応する無線機ID)と照度センサ3との位置関係(距離関係)を拘束条件として利用する。すなわち、
図10に示す例では、照明器具2-1及び2-2が照度センサ3-1と隣接し、照明器具2-3及び2-4が照度センサ3-2と隣接する位置関係が存在するという拘束条件を満たすように、前述した第1実施形態において説明した各種アルゴリズム(例えば、遺伝的アルゴリズム等)を適用すればよい。
【0130】
更に、全ての照明器具2をいずれかの照度センサ3を含む小規模クラスタにクラスタリングし、当該小規模クラスタを1つのノードとして扱うことによって、当該小規模クラスタ間の位置関係を推定するようにしてもよい。この場合、推定された小規模クラスタ間の位置関係を固定した後、当該各小規模クラスタ内で照明取り付け位置と無線機IDとの対応関係を特定する処理(紐づけ処理)が実行されればよい。
【0131】
具体的には、紐づけ処理部13は、複数の照度センサ3の各々によって検出された照度(つまり、複数の照度センサ3の各々から収集された照度)に基づいて、複数の照明器具2の各々を、当該照明器具2が点灯した際に最も大きな照度を検出した照度センサ3を含む小規模クラスタにクラスタリングする(つまり、照度センサ3毎の小規模クラスタを作成する)。
【0132】
また、このように作成された小規模クラスタを1つのノードとして扱うために、1つの小規模クラスタから他の1つの小規模クラスタに出入りする受信電力(RSSI)について、平均化、重み付き平均化、中央値及び最大値等の統計的手法による代表値(以下、受信電力代表値と表記)を計算する。なお、「1つの小規模クラスタから他の1つの小規模クラスタに出入りする受信電力」とは、当該1つの小規模クラスタに含まれる照明器具2の各々に搭載されている無線機と当該他の1つの小規模クラスタに含まれる照明器具2の各々に搭載されている無線機間で測定された受信電力をいう。
【0133】
このように計算された受信電力代表値を使用して、小規模クラスタ間の相対位置関係を求める。具体的には、例えば前述した
図6に示すように複数の照明器具2及び複数の照度センサ3が取り付けられている場合であれば、各照度センサ3と当該照度センサ3の左右に位置する2つの照明器具2とをセットにして、当該セットの重心等を位置の代表値として計算する。次に、各照度センサ3によって検出された照度を使用して、1つの照度センサ3と当該照度センサ3の左右に位置する2つの照明器具2とを含む小規模クラスタを作成し、当該小規模クラスタ間の受信電力代表値を計算する。最後に、上記した位置の代表値と小規模クラスタとを受信電力代表値を用いてマッチングさせるように、遺伝的アルゴリズムまたはPush-Pullのようなアルゴリズムを適用することによって、当該小規模クラスタの配置推定を行う。
【0134】
なお、いくつかの照明器具2または照度センサ3はアンカーとして使用するために取り付け位置(照明取り付け位置またはセンサ取り付け位置)とID(無線機IDまたは照度センサID)との対応関係が既知であるものとする。また、アンカーを含む小規模クラスタは、小規模クラスタのアンカーとして、上記した位置の代表値と当該小規模クラスタとの紐づけを予め行っておくものとする。なお、このような紐づけが行われた場合、小規模クラスタ内の照度センサ3は1つであるので、当該照度センサ3のセンサ取り付け位置を特定可能である。一方、小規模クラスタ内に複数の照明器具2が含まれる場合には、隣接すると推定された小規模クラスタに含まれる照度センサ3によって検出された照度を使用して、上記した照明器具2(に対応する無線機ID)の順位づけを行うことによって、照明取り付け位置と当該照明取り付け位置に対応する無線機IDとの対応関係を特定してもよい。
【0135】
上記したように小規模クラスタを作成した場合において当該小規模クラスタを1つのノードとしてみると、当該ノード間で測定される受信電力の数が増加することによりフェージングの影響が緩和される(つまり、当該受信電力に基づく距離の精度が改善される)ため、当該小規模クラスタの配置推定を高い精度で行うことができる。また、小規模クラスタ内の照明取り付け位置と無線機IDとの紐づけについては照度センサ3によって検出される照度に基づいて行うことによって、当該紐づけ結果において誤りが生じることを抑制することができる。
【0136】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の部分についての説明を省略し、当該第1実施形態と異なる部分について主に説明する。また、本実施形態に係る照明制御システムの構成及び照明制御装置のハードウェア構成については、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、
図2等を用いて説明する。
【0137】
ここで、中規模または大規模施設は多くの場合、複数の部屋(または廊下)に区切られている。前述した第1実施形態においては、便宜的に、複数の照明器具2及び複数の照度センサ3が1つの部屋に取り付けられているものとして説明したが、当該複数の照明器具2及び複数の照度センサ3が上記した複数の部屋等に取り付けられている場合には、当該複数の照明器具2及び複数の照度センサ3がいずれの部屋に属しているかを事前に把握しておく必要がある。
【0138】
図11は、本実施形態に係る照明制御装置10の機能構成の一例を示す。
図11においては、上記した
図3と同様の部分には同一参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0139】
図11に示すように、照明制御装置10は、クラスタリング部15を更に含む。なお、クラスタリング部15の一部または全ては、ソフトウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0140】
クラスタリング部15は、上記したように複数の照明器具2及び複数の照度センサ3が複数の部屋に取り付けられている場合に、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機間で測定された受信電力に基づいて、複数の照明器具2(の各々に対応する無線機ID)をクラスタリングする。
【0141】
すなわち、本実施形態は、第1実施形態において説明したような紐づけ処理が実行される前に複数の照明器具2をクラスタリングしておく点で、前述した第1実施形態とは異なる。
【0142】
なお、本実施形態においては、複数の照明器具2及び複数の照度センサ3が取り付けられている複数の部屋の配置(部屋割り)、当該部屋毎の照明取り付け位置及びセンサ取り付け位置が、マップ格納部11に格納されている取り付け位置マップにおいて予め定義されているものとする。
【0143】
以下、
図12のフローチャートを参照して、本実施形態に係る照明制御装置10の処理手順の一例について説明する。
【0144】
まず、照明制御装置10(クラスタリング部15)は、複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機間で測定された受信電力(RSSI)を収集する(ステップS11)。本実施形態においては、複数の照明器具2が複数の部屋に取り付けられているものとする。
【0145】
次に、クラスタリング部15は、マップ格納部11に格納されている取り付け位置マップから部屋割りを取得し、クラスタリングを実行する(ステップS12)。このステップS12の処理はステップS11において収集された受信電力に基づいて公知の手法により実行されればよいが、当該ステップS12の処理が実行された場合には、複数の照明器具2の各々(に対応する無線機ID)がクラスタリングされた複数のクラスタが作成される。なお、上記したクラスタリングの結果として作成される複数のクラスタの各々は、複数の照明器具2が取り付けられている複数の部屋の各々に対応づけられる。
【0146】
ここで、
図13は、3つの部屋に取り付けられた複数の照明器具2及び複数の照度センサ3(照明取り付け位置及びセンサ取り付け位置)の配置の一例を示している。
【0147】
図13に示す例によれば、上記したステップS12の処理が実行された場合には、部屋1aに取り付けられている4個の照明器具2(に対応する無線機ID)を含むクラスタが作成され、部屋1bに取り付けられている8個の照明器具2(に対応する無線機ID)を含むクラスタが作成され、部屋1cに取り付けられている24個の照明器具2(に対応する無線機ID)を含むクラスタが作成される。
【0148】
なお、例えば複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載している場合には、ステップS11において、当該無線機と他の無線機との間において測定された受信電力が更に収集され、当該複数の照度センサ3も複数の照明器具2とともにクラスタリングされる。また、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知である場合には当該センサ取り付け位置と当該照度センサIDとの対応関係をアンカーとして利用することができる。また、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である場合は、別のアンカーを用いてもよいし、部屋毎の照明器具2の数等を用いてクラスタと部屋との対応関係を特定する。
【0149】
一方、複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載しておらず、かつ、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である場合には、上記したように作成されたクラスタと部屋との対応づけが完了した後に、各照度センサ3を部屋に対応づけることができる。例えば全ての照明器具2を順次点灯及び消灯していき、各クラスタに含まれる照明器具が点灯したときに、最も大きい照度を検出した照度センサ3を特定する。各クラスタにおいて、最も大きい照度を検出したとして特定された回数が多い照度センサ3(照度センサID)を、当該クラスタに属する照度センサ3(つまり、当該クラスタに対応する部屋に取り付けられている照度センサ3)として決定する。なお、部屋に複数の照度センサ3が取り付けられている場合には、最も大きい照度を検出したとして特定された回数が多い順に照度センサ3を当該部屋に割り当てればよい。また、各クラスタに含まれる全ての照明器具2の各々を順次点灯させた際に検出された照度の合計値を照度センサ3毎に計算し、当該合計値に基づいて各部屋に取り付けられている照度センサ3(照度センサID)を決定してもよい。
【0150】
上記したステップS12の処理が実行されると、前述した
図5に示すステップS2~S4の処理に相当するステップS13~S15の処理が実行される。なお、このステップS13~S15の処理は、上記した部屋(つまり、クラスタ)毎に実行されればよい。
【0151】
上記したように本実施形態においては、複数の照明器具2が複数の部屋に取り付けられている場合に、当該複数の照明器具2の各々に搭載されている無線機から収集された受信電力に基づいて当該照明器具2(に対応する無線機ID)をクラスタリングする構成により、事前に各照明器具2が取り付けられている部屋を把握した上で、当該部屋(クラスタ)毎に紐づけ処理を実行することができる。なお、本実施形態においては、複数の部屋の各々に照度検出器3が取り付けられている場合を想定しているが、当該照度検出器3は複数の部屋の1以上に取り付けられていればよい。この場合、照度検出器3が取り付けられている部屋に対する紐づけ処理には、当該照度検出器3によって検出された照度を利用することができる。
【0152】
ところで、受信電力(つまり、電波)を使用したクラスタリングは多少のフェージングがあっても高い精度で行うことが可能であるが、当該クラスタリング結果に誤りがないということはできない。以下、
図14を参照して、照度を使用してクラスタリング結果の誤りを修正する構成について簡単に説明する。
【0153】
まず、クラスタリング部15は、上記したように受信電力(RSSI)を使用してクラスタリングを実行する。
【0154】
ここで、
図15は、複数の照明器具2及び複数の照度センサが3つの部屋1a~1cに取り付けられていることを示している。なお、
図15においては、部屋1bに対応づけられたクラスタにクラスタリングされた照明器具2(クラスタリングが行われることによって部屋1bに取り付けられていると判定された照明器具2)をハッチングにより表している。
【0155】
図15に示す例において、照明器具2eは、部屋1cに取り付けられているにもかかわらず、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれており、このクラスタリング結果は誤りである。なお、照明器具2fは、部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれているものとする。
【0156】
この場合、照明制御部12は、クラスタリング結果に基づいて、同一のクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯(及び消灯)させる。
図15に示す例では、例えば部屋1aに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させ、その次に部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させ、最後に部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させる。このように部屋1a~1c(クラスタ)毎に照明器具2を順次点灯させた際の照度を各照度センサ3に検出させる。
【0157】
なお、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知である(センサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係が不明である)場合であっても、
図15に示される部屋割りであれば、各部屋1a~1cに取り付けられる照明器具2の数(つまり、照明取り付け位置の数)が異なるため、クラスタリング結果(つまり、作成されたクラスタ)と部屋との対応関係は一意に対応づけることが可能である。照明器具2の数が同一である部屋がある場合もあるが、ここではクラスタリグ結果(つまり、クラスタ)と部屋とが適切に対応づけられたものとして説明する。
【0158】
ここで、部屋1aに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させた場合を想定する。部屋1aに関するクラスタリング結果に誤りがないものとすると、当該部屋1aに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させた場合には、当該部屋1aに取り付けられている照度センサ3によって十分な照度が検出されるため、当該クラスタリング結果が正しい(つまり、誤りがない)とわかる。
【0159】
次に、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させた場合を想定する。部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2のうちの照明器具2e以外の照明器具2が点灯した場合、当該部屋1bに取り付けられている照度センサ3b等は、十分な照度を検出することができる。一方、照明器具2eは部屋1bに対応するクラスタに含まれているが、実際には部屋1cに取り付けられているため、当該照明器具2eを点灯させたとしても、照度センサ3b等は十分な照度を検出することができない。このため、照明器具2e(に対応する無線機ID)が部屋1b以外に取り付けられている(属している)ことがわかる。なお、照明器具2eが点灯した場合には部屋1cに取り付けられている照度センサ3c等によって十分な照度が検出されるため、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を点灯させる場合であっても、他の部屋に取り付けられている照度センサ3(例えば、照度センサ3c)によって検出された照度を収集することによって、当該照明器具2eが部屋1cに取り付けられていることがわかる。
【0160】
次に、部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させた場合を想定する。部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2のうちの照明器具2f以外の照明器具2が点灯した場合、当該部屋1cに取り付けられている照度センサ3c等は、十分な照度を検出することができる。一方、照明器具2fは部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれているが、実際には部屋1bに取り付けられているため当該照明器具2fを点灯させたとしても、照度センサ3c等は十分な照度を検出することができない。このため、照明器具2f(に対応する無線機ID)が部屋1c以外に取り付けられているがわかる。なお、照明器具2fが点灯した場合には部屋1bに取り付けられている照度センサ3b等によって十分な照度が検出されるため、当該照度センサ3bによって検出された照度を収集することによって、当該照明器具2fが部屋1bに取り付けられていることがわかる。
【0161】
上記したように各部屋1a~1cに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させることによって、クラスタリング結果の誤り(ここでは、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2e及び部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2f)を検出することができる。クラスタリング部15は、このように検出された照明器具2に関するクラスタリング結果の誤りを修正する。
【0162】
一方、照度センサ3に関するクラスタリング結果に誤りが発生することがある。具体的には、例えば
図15に示す照度センサ3bが部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれており、照度センサ3cが部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれている場合を想定する。
【0163】
この場合、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させていくと、当該部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる照度センサ3cでは、当該照明器具2の点灯によっても十分な照度が検出されない。一方、部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれているにもかかわらず、照度センサ3cで十分な照度が検出される。
【0164】
同様に、部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれる照明器具2を順次点灯させていくと、当該部屋1cに対応づけられたクラスタに含まれる照度センサ3bでは、当該照明器具2の点灯によっても十分な照度が検出されない。一方、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれているにもかかわらず、照度センサ3cで十分な照度が検出される。
【0165】
これによれば、照度センサ3b及び3cに関してクラスタリング結果に誤りが発生していることを検出することができる。クラスタリング部15は、このように検出された照度センサ3に関するクラスタリング結果の誤りを修正する。
【0166】
上記したようにクラスタリング結果の誤りが修正された後は、上記した
図12に示すステップS13以降の処理が実行されればよい。
【0167】
なお、クラスタリング結果が誤っている照明器具2または照度センサ3の数が少数であれば、上記したように誤りを順次修正すればよいが、多数の誤りが発生する場合には、照度センサ3によって検出された照度に基づく尤度判定等を適用して当該クラスタリング結果を修正するようなことも可能である。
【0168】
更に、本実施形態においては主に受信電力に基づいてクラスタリングを実行するものとして説明したが、当該クラスタリングは、照度に基づいて実行されてもよい。具体的には、例えば無線機IDの順に当該無線機IDに対応する照明器具2を順次点灯(及び消灯)させ、当該照明器具2が点灯しているタイミング(時刻)毎の照度を各照度センサ3で検出する。このように各照度センサ3によって検出される照度は、照明器具2の各々と当該照度センサ3との間の距離に関する情報であり、複数の照明器具2間の距離及び複数の照度センサ3間の距離に関する情報は含まない。しかしながら、全てのノード間のリンクが定義されていなくてもクラスタリングが可能な公知の手法(例えば、遺伝的アルゴリズム等)を利用すれば、照度に基づくクラスタリングを実行ことが可能である。このような照度に基づくクラスタリングは、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知であり、かつ、複数の照度センサ3の各々が無線機を搭載していない場合であっても適用可能であり、いくつかのアンカー、各部屋内の照明器具2(照明取り付け位置)の数及び照度センサ3(センサ取り付け位置)の数から、クラスタリング結果(つまり、クラスタリングが実行されることによって作成されたクラスタ)と部屋とを対応づけることができる。
【0169】
また、本実施形態においては、前述した第1実施形態において説明した紐づけ処理と同様に、受信電力及び照度を併用してクラスタリングを実行するようにしてもよい。
【0170】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の部分についての説明を省略し、当該第1実施形態と異なる部分について主に説明する。また、本実施形態に係る照明制御システム及び照明制御装置10の構成については、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、
図2及び
図3等を用いて説明する。
【0171】
ここで、前述した第1実施形態においては直下の照度を単純に検出するように構成された照度センサ3を用いるものとして説明したが、本実施形態においては、カメラのような撮像装置(以下、カメラ型照度センサ3と表記)を照度センサとして用いる点で、当該第1実施形態とは異なる。
【0172】
このようなカメラ型照度センサ3は、当該カメラ型照度センサ3によって撮像された画像に対する画像処理を実行することで照度を検出する(つまり、複数の照明器具2のうちの少なくとも1つが点灯した空間を含む画像から照度を検出する)ことができる。すなわち、カメラ型照度センサ3によれば、当該カメラ型照度センサ3(つまり、カメラ)の視野に入っているフロア内の異なる場所の照度を検出することができる。このようなカメラ型照度センサ3を用いる場合、当該カメラ型照度センサ3の数は、前述した第1実施形態において説明したような単に光量のみを検出する照度センサよりも少なくてよい。部屋内に取り付けられるカメラ型照度センサ3の数が少ない場合、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDの確認作業が容易であるため、多くの場合、センサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係を既知とすることができる。また、センサ取り付け位置に対応する照度センサIDが未知(不明)であったとしても、1つのカメラ型照度センサ3で部屋の全ての場所をカバーすることができる(つまり、部屋に1つのカメラ型照度センサ3のみが取り付けられている)場合であれば、センサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係は自動的に決定される。また、部屋に複数のカメラ型照度センサ3が取り付けられている場合であっても、当該複数のカメラ型照度センサ3は照明器具2と比較して非常に疎にしか取り付けられない(設置されない)ため、例えばいくつかのセンサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係を事前に確認してアンカーとして用いて、無線機を搭載している複数のカメラ型照度センサ3間で測定された受信電力に基づく配置推定(センサ取り付け位置と照度センサIDとの紐づけ)を行うことで、各センサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係を確定することができる。
【0173】
また、部屋に取り付けられている複数のカメラ型照度センサ3の各々によって撮像された画像に対する画像処理を実行することによって重複部分を検出し、当該重複部分の配置から各カメラ型照度センサ3の相対位置を決定するようなことも可能である。
【0174】
上記したようにカメラ型照度センサ3はセンサ取り付け位置と照度センサIDとの紐づけが容易であるので、以下においては、当該センサ取り付け位置と照度センサIDとの対応関係が既知であるとして、照明取り付け位置に対応する無線機IDを特定する(つまり、照明取り付け位置と無線機IDとを紐づける)処理について説明する。
【0175】
図16は、複数の部屋1a~1cに取り付けられた複数の照明器具2及び複数のカメラ型照度センサ3の配置の一例を示している。なお、
図16に示す例では、複数のカメラ型照度センサ3として4つのカメラ型照度センサ31~34が取り付けられている例を示している。ここでは、受信電力(RSSI)に基づくカメラ型照度センサ31~34のクラスタリングが完了しており、各センサ取り付け位置に対応する照度センサIDは既に判明しているものとする。すなわち、
図16に示す例では、カメラ型照度センサ31が部屋1aのセンサ取り付け位置に取り付けられており、カメラ型照度センサ32が部屋1bのセンサ取り付け位置に取り付けられており、カメラ型照度センサ33が部屋1cの部屋1a側のセンサ取り付け位置に取り付けられており、カメラ型照度センサ34が部屋1cの部屋1b側のセンサ取り付け位置に取り付けられていることが既知であるものとする。更に、カメラ型照度センサ31~34の各々は適切な向きで部屋内の空間(フロア)を撮像するように設置されており、当該カメラ型照度センサ31~34の各々によって撮像される画像の上下左右とフロアの方向(向き)とは予め対応づけられているものとする。
【0176】
ここで、部屋1bについて具体的に説明する。照明制御部12は、部屋1bに対応づけられたクラスタに含まれる複数の照明器具2の各々に対応する無線機IDを指定して当該照明器具2を順次点灯(及び消灯)させる。この場合、カメラ型照度センサ32は、各照明器具2が点灯しているタイミング(時刻)で画像を撮像する。なお、照明器具2の点灯による各場所の照度の増加を確実に検出するために、全ての照明器具2が消灯している(点灯していない)状態で画像を撮像し、当該画像と各照明器具2が点灯しているタイミングで撮像された画像とを比較した結果(つまり、差分)に基づいて照度を検出(計算)するようにしてもよい。
【0177】
例えば
図16に示す照明器具2gのみを点灯させた場合には、上側で、かつ、左右方向の中央からやや左に位置する部分が明るいことがわかるような画像がカメラ型照度センサ32によって撮像される。
【0178】
ところで、部屋内の明るさをゾーン毎に制御するために照度を使用する場合、必要以上に細かく場所を分割して照度を検出する必要はない。そのため、
図17に示すように、例えば一辺が数m程度の範囲(エリア)に部屋を分割して、各エリアの平均的な照度を検出し、当該照度に基づいて照明の明るさ(例えば、照明器具2の設定照度)を制御すればよい。
【0179】
一方、本実施形態において説明しているように照明取り付け位置と無線機IDとを紐づけるために点灯している照明器具2の位置を特定する場合には、より細かい位置で照度を検出する方がよい。この場合には、例えば
図18に示すように明るさを制御する場合のエリアよりも細かく部屋を分割して、当該エリア毎に照度を検出すればよい。例えば1画素まで細かく分割してもよい。背景光がある場合には、全ての照明器具を消灯した上で各エリアの照度を背景光として検出し、照明器具2を順次点灯した際に検出された各エリアの照度から当該背景光(の照度)を減算することにより、照明器具2の点灯による照度(すなわち、光量の増分)を検出するようにすればよい。
【0180】
紐づけ処理部13は、このように検出された各エリアの照度をマップ化し、照度が最大のエリアを検出する。なお、1画素に対応する大きさのエリアやそれに近い大きさのエリアにまで細かく分割している(区切っている)場合は、当該エリア毎に検出される照度の誤差が大きくなるため、簡単なFIR(有限インパルスレスポンス)低域通過フィルタを適用してスムージング(平滑化)してから照度が最大のエリアを検出するとよい。
【0181】
次に、紐づけ処理部13は、検出された照度が最大のエリアの位置(ピーク位置)と当該照度を抽出する。
図18に示す例においてカメラ型照度センサ32が部屋1bの全てをカバーしている(部屋1bのフロア全体を撮像することができる)ものとすると、当該照度が検出された(画像が撮像された)際に点灯していた照明器具2が、当該照度が最大のエリアの位置に最も近い照明取り付け位置に取り付けられていると特定(推定)することができる。
【0182】
ただし、カメラ型照度センサ3によって検出される照度は光が照射される面の明るさ(反射率)にも依存するため、照明器具2によって光が照明される面(例えば、床面や壁面等)の素材や色等が均一でない場合には、上記したように検出された照度が最大のエリアに基づいて特定された照明取り付け位置が、実際に点灯した照明器具2が取り付けられている照明取り付け位置と異なっている場合がある。このため、上記した低域通過フィルタは、このような不均一さを均す程度のサイズであるとよい。
【0183】
また、低域通過フィルタを適用したとしても、照度が最大のエリアの位置に基づいて特定された照明取り付け位置が、実際に点灯した照明器具2が取り付けられている照明取り付け位置と異なる場合があるが、この場合には、全ての照明器具2を点灯または消灯させた状態でカメラ型照度センサ3によって撮像された画像から、各エリアにおける面の明るさ(すなわち、当該面に光が照射された際にどの程度の散乱光が画像に影響を与えるか)を事前に計算しておくとよい。このように計算された値(つまり、各エリアにおける面の明るさ)がエリア毎に異なる場合には、当該値を用いることによって、上記したようにエリア毎に検出された照度を、同じ明るさの面で検出された場合の照度となるように補正すればよい。
【0184】
また、このような補正を行わない場合には、例えば照度が最大のエリアの位置から当該エリアとカメラ型照度センサ3との間の距離を抽出し、前述した第1実施形態において説明したようなアルゴリズムを用いて紐づけ処理を実行する。この場合、照度が最大のエリアの位置に基づいて、当該照度が検出された際に点灯していた照明器具2が取り付けられている可能性が高いいくつかの照明取り付け位置を特定し、当該照明器具2に対応する無線機IDと紐づける照明取り付け位置が当該特定された照明取り付け位置の中から選択(決定)されるような拘束条件を設定する。
【0185】
なお、カメラ型照度センサ3によって照度が検出された際に点灯していた照明器具2が取り付けられている可能性が高い照明取り付け位置とは、当該照度が最大のエリアの周辺の範囲に位置する照明取り付け位置である。この場合における周辺の範囲は、例えば床面の不均一さ等に応じて変更されてもよい。また、照度が最大のエリアに近い照明取り付け位置の確率(重み)を高くし、当該照度が最大のエリアから遠い照明取り付け位置の確率(重み)を低くしてもよい。このような確率を上記した拘束条件に反映することにより、照度が最大のエリアから遠い照明取り付け位置よりも照度が最大のエリアに近い照明取り付け位置の方が無線機IDと紐づけられやすくしてもよい。
【0186】
ただし、背景光が大きい場合または照度検出面(床面等)の均一性が低い場合には、設定照度に対して検出される照度が距離や角度による減衰以外の要因で変化する可能性が高く、照度が最大のエリアの位置の誤差が大きいと推測される。このように照度が最大のエリアの位置の誤差が大きくなる可能性が高い場合には、上記した確率が紐づけ処理に与える影響を小さくする(つまり、照度が最大のエリアからの距離に応じて確率が減少する度合いを緩やかにする)ようにしてもよい。
【0187】
ここでは
図16に示す部屋1bについて主に説明したが、部屋1cの場合は、2つのカメラ型照度センサ33及び34が取り付けられている。すなわち、カメラ型照度センサ33及び34の一方のみでは部屋1c全体をカバーしていない。具体的には、例えば照明器具2hが点灯したとしても、カメラ型照度センサ33によって撮像される画像には、当該照明器具2hの点灯によって光が強く照射される当該照明器具2hの真下の床面は含まれない。同様に、例えば照明器具2iが点灯したとしても、カメラ型照度センサ34によって撮像される画面には、当該照明器具2iの点灯によって光が強く照射される当該照明器具2iの真下の床面は含まれない。
【0188】
したがって、上記したように照度が最大のエリアを検出する手法では、当該照度が最大のエリアが画像の端近傍に位置し、かつ、当該照度は設定照度から期待される照度より低い状態となる。
【0189】
このような場合に対応する方法の例として第1~第3方法を説明する。第1方法においては、照度が最大のエリアの位置が画像の端近傍であり、かつ、当該照度が例えば所定の値よりも低い場合には、当該画像が撮像された際に点灯していた照明器具2(に対応する無線機ID)に関する照度(に基づく距離)の検出を断念し、当該照度に基づく距離を用いることなく(リンク切れとして)紐づけ処理を実行するものとする。なお、この場合における紐づけ処理においては、切れているリンクを使用しないことが本質的に可能な手法が用いられる。
【0190】
第2方法においては、カメラ型照度センサ3から照度が最大のエリアまでの距離を推定し、当該距離に光の減衰量から推定される距離(つまり、照度が最大のエリアから点灯している照明器具2までの距離)を加算した値を、当該カメラ型照度センサ33から点灯している照明器具2までの距離として用いる。第2方法においては、このような距離を前述した第1実施形態において説明したアルゴリズムに使用することで、照明取り付け位置と照明器具2に対応する無線機IDとの紐づけを行うことができる。
【0191】
なお、第2方法においてはカメラ型照度センサ3(の位置)から照度が最大のエリアに向かう方向(つまり、カメラ型照度センサ3及び当該エリアを結ぶ延長線上)に照明器具2が位置しているものと推定し、上記したように推定された距離と当該照明器具2の方向とから計算される位置の周辺の照明取り付け位置を拘束条件として使用してもよい。また、上記した確率を設定して、拘束条件に反映してもよい。
【0192】
第3方法においては、部屋の領域を例えば
図17に示すような比較的大きなエリアに粗く分割し、当該分割されたエリアの中央に仮想的な照度センサ(以下、仮想照度センサと表記)があるものとして紐づけ処理を実行する。この場合、各照明器具2が点灯した際に測定された各エリアの照度を当該エリアに取り付けられた仮想照度センサによって検出された照度であるとして仮定し、当該照度に基づく距離(つまり、当該仮想照度センサと照明器具2との間の距離)を用いて紐づけ処理が実行される。この紐づけ処理においては、前述した第1実施形態において説明したセンサ取り付け位置に対応する照度センサIDが既知であり、かつ、照度センサ3が無線機を搭載していない場合のアルゴリズムを適用すればよい。
【0193】
上記したように本実施形態においては、画像を撮像する撮像装置(カメラ)を照度センサとして利用し、当該撮像装置によって撮像された複数の照明器具2のうちの少なくとも1つが点灯した空間を含む画像から検出された照度を収集して紐づけ処理を実行することが可能となる。
【0194】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、照明器具が取り付けられている位置と当該照明器具に対応する無線機IDとの紐づけを高い精度で行うことが可能な照明制御装置、照明制御システム及び方法を提供することができる。
【0195】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0196】
1…部屋、2…照明器具、3…照度センサ(照度検出器)、10…照明制御装置、11…マップ格納部、12…照明制御部、13…紐づけ処理部、14…直交符号生成部、15…クラスタリング部、101…CPU、102…不揮発性メモリ、103…主メモリ、104…通信デバイス。