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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】チップ除去方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/57 20140101AFI20240318BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240318BHJP
【FI】
B23K26/57
H01L33/48
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021166311
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056853
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】森 英治
(72)【発明者】
【氏名】武久 翔多
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-188261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0151418(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0374738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に保持層を介して保持されているチップのうち、除去対象チップを取り除くチップ除去方法であって、
前記除去対象チップに粘着層を有する粘着キャリアを当接させる粘着キャリア当接ステップと、
前記除去対象チップに向けてレーザビームを照射し、当該除去対象チップと前記保持層との保持力を、当該除去対象チップと前記粘着キャリアとの粘着力よりも弱める、レーザ照射ステップとを有することを特徴とする、チップ除去方法。
【請求項2】
前記粘着キャリア当接ステップでは、前記除去対象チップを含む複数の前記チップに前記粘着キャリアを当接させ、
前記レーザ照射ステップでは、前記除去対象チップに対して選択的に前記レーザビームを照射することを特徴とする、請求項1に記載のチップ除去方法。
【請求項3】
前記レーザビームは、
前記除去対象チップと前記保持層との界面にプラズマ又はガスを発生させる波長 又は 当該界面に衝撃を与える波長 を有している
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のチップ除去方法。
【請求項4】
前記レーザ照射ステップは、前記除去対象チップに対して、前記粘着キャリア越しに、前記レーザビームを照射する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のチップ除去方法。
【請求項5】
前記レーザビームが照射されて前記除去対象チップが貼り付いた前記粘着キャリアを回収するキャリア回収ステップと、
前記キャリア回収ステップで回収された前記粘着キャリア上の前記除去対象チップの有無および/または位置を検出する回収チップ検出ステップと、
前記回収チップ検出部で検出された前記除去対象チップについて、前記レーザ照射部で前記レーザビームを照射したものと数および/または位置が一致するか検査する、検査ステップとを有する
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のチップ除去方法。
【請求項6】
基板上に保持層を介して保持されているチップのうち、除去対象チップを取り除くチップ除去装置であって、
前記除去対象チップに粘着キャリアを当接させる粘着キャリア当接部と、
前記除去対象チップに向けてレーザビームを照射し、当該除去対象チップと前記保持層との保持力を、当該除去対象チップと前記粘着キャリアとの粘着力よりも弱める、レーザ照射部とを備えたことを特徴とする、チップ除去装置。
【請求項7】
前記粘着キャリア当接部は、前記除去対象チップを含む複数の前記チップに前記粘着キャリアを当接させ、
前記レーザ照射部は、前記除去対象チップに対して選択的に前記レーザビームを照射することを特徴とする、請求項6に記載のチップ除去装置。
【請求項8】
前記レーザビームは、
前記除去対象チップと前記保持層との界面にプラズマ又はガスを発生させる波長 又は 当該界面に衝撃を与える波長 を有している
ことを特徴とする、請求項6または請求項7に記載のチップ除去装置。
【請求項9】
前記レーザ照射部は、前記除去対象チップに対して、前記粘着キャリア越しに前記レーザビームを照射する
ことを特徴とする、請求項6~8のいずれかに記載のチップ除去装置。
【請求項10】
前記レーザビームが照射されて前記除去対象チップが貼り付いた前記粘着キャリアを回収するキャリア回収部と、
前記キャリア回収ステップで回収された前記粘着キャリア上の前記除去対象チップの有無および/または位置を検出する回収チップ検出部と、
前記回収チップ検出部で検出された前記除去対象チップについて、前記レーザ照射部で前記レーザビームを照射したものと数および/または位置が一致するか検査する、検査部とを備えた
ことを特徴とする、請求項6~9のいずれかに記載のチップ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に粘着材やはんだ等の仮接合材の層(以下、「保持層」と呼ぶ)を介して保持されている電子部品やマイクロLED等のチップのうち、不良チップや不要なチップ状部材にレーザビームを照射して取り除く、チップ除去方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装される電子部品やマイクロLED等は、ウエハと呼ばれる比較的大きな基板上に素子構造を造り込んだ後、切断(ダイシング)して個片化される。
【0003】
そして、個片化された後の電子部品やマイクロLEDのうち、外観不良のチップや動作不良のチップ、下流工程で不要になる部材(つまり、除去対象チップ)の検査・判別が行われる。その後、除去対象チップにレーザビームを照射して基板から分離(剥離とも言う)する、レーザリフトオフ工法が知られている。
【0004】
レーザリフトオフ工法では、窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体チップの材料層がレーザビームの照射により窒素ガスを発生し、ガスの圧力によりチップが基板から勢いよく飛び出すことが知られている。このとき、基板から分離した除去対象チップを、気流により押し流して回収する手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-199094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、基板上に保持層を介して保持されている電子部品やマイクロLED等のチップに対して、チップ側からレーザビームを照射させて、従来のレーザリフトオフ工法と同様に、基板から除去対象となるチップを勢い良く離脱させて取り除くする手法を開発した。一方、レーザビームの波長や照射条件等を適宜設定することで、チップを基板から離脱しなくて、保持力を弱めて分離を容易にできることも確認した。
【0007】
しかし、特許文献1の様な、基板から分離した除去対象チップを気流により押し流して回収する方式では、気流が強く流れるところに除去対象チップが舞い上がらないと、上手く回収できない。つまり、レーザリフトオフ工法と同様の手法により不良チップ等を除去しようとしても、チップの離脱速度や方向が不規則なため、除去したチップがあちこちに飛散して回収が困難であった。さらに、チップ自体が小さいと、回収できたかどうかの確認が困難であった。
【0008】
そこで本発明は、基板から分離した除去対象チップの飛散を防ぎつつ、確実かつ容易に回収できる除去対象チップ方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明に係る一態様は、
基板上に保持層を介して保持されているチップのうち、除去対象チップを取り除くチップ除去方法であって、
除去対象チップに粘着層を有する粘着キャリアを当接させる粘着キャリア当接ステップと、
除去対象チップに向けてレーザビームを照射し、当該除去対象チップと保持層との保持力を、当該除去対象チップと粘着キャリアとの粘着力よりも弱める、レーザ照射ステップとを有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る別の一態様は、
基板上に保持層を介して保持されているチップのうち、除去対象チップを取り除くチップ除去装置であって、
除去対象チップに粘着キャリアを当接させる粘着キャリア当接部と、
除去対象チップに向けてレーザビームを照射し、当該除去対象チップと保持層との保持力を、当該除去対象チップと粘着キャリアとの粘着力よりも弱める、レーザ照射部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
基板から分離した除去対象チップの飛散を防ぎつつ、確実かつ容易に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。
図3】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す断面図である。
図4】本発明を具現化する形態の別の一例の全体構成を示す概略図である。
図5】本発明を具現化する形態のさらに別の一例の要部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX方向、Y方向と表現し、XY平面に垂直な方向(つまり、重力方向)をZ方向と表現する。また、X方向は奥/手前、Y方向は左/右と表現する。また、Z方向は、重力に逆らう方向を上、重力がはたらく方向を下と表現する。また、X方向を中心軸として回転する方向をα方向とし、Z方向を中心軸として回転する方向をθ方向とする。
【0014】
図1は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。図1には、本発明に係るチップ除去装置1の概略図が示されている。
【0015】
チップ除去装置1は、基板W上に保持層Hを介して保持されているチップCのうち、除去対象チップCbを取り除くものである。
【0016】
基板Wの表面には、不図示の回路パターンが形成されており、所定の位置に複数のチップCが保持層Hを介して保持されている(2点鎖線の円内に示す断面図を参照)。なお、保持層Hは、導電性を有する金属粒子や炭素材料等を含有した粘着性を有する樹脂材料や、はんだ等の層で構成されており、チップCの電極と基板上の回路パターンとが電気的に導通しつつ、製造過程や通常の使用環境下で加わる振動や外力等で容易に分離しない程度の保持力で保持(仮接合ともいう)されている。
【0017】
具体的には、チップ除去装置1は、基板保持台2、粘着キャリア3、粘着キャリア当接部4、レーザ照射部5、制御部9等を含んで構成されている。
【0018】
基板保持台2は、基板Wを所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、基板保持台2は、基板Wの下面を支え水平状態で保持するものである。
より具体的には、基板保持台2は、保持面(つまり、基板Wの下面と接する側。上面とも言う)が平坦な板状部材で構成されており、当該保持面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、基板Wを保持面上に置いた状態で負圧吸引手段を作動させると、これら細孔や溝と基板Wとで形成される空間に吸引力が発生する。そのため、基板Wが保持面に吸引されて吸着保持される。
【0019】
粘着キャリア3は、除去対象チップCbを回収するものである。
具体的には、粘着キャリア3は、基板Wから分離させた除去対象チップCbを貼り付けて、外部へ排出するものである。
より具体的には、粘着キャリア3は、ベース基板Kの表面(チップCと向き合う側。図では下面側)に粘着層Sが形成されている。
【0020】
ベース基板Kは、所定の面積を有しており、所定の厚みを有する平坦な板材で構成されている。具体的には、ベース基板Kは、レーザ照射部5から照射されるレーザビームLの波長を効率よく透過する材料で構成されており、ここでは透明なガラス板を例示する。
【0021】
粘着層Sは、除去対象チップCbに当接して密着保持するものである。
【0022】
具体的には、粘着層Sは、レーザビームLを効率よく透過させつつ、耐熱性が高く粘着力が低下しづらい材料(シリコン樹脂など)で構成されている。なお、チップCに対する粘着層Sの粘着力は、チップCに対する保持層Hの保持力よりも弱く設定されている。
【0023】
粘着キャリア当接部4は、除去対象チップCbに粘着キャリア3を当接させるものである。
具体的には、粘着キャリア当接部4は、粘着キャリア3を除去対象チップCbの上面に近づけ、当接させるものである。
より具体的には、粘着キャリア当接部4は、キャリア保持部41、搬送ロボット42を備えており、制御部9から出力される制御信号に基づいて駆動・制御される。
【0024】
キャリア保持部41は、粘着キャリア3の外縁や外周部を保持するものである。
具体的には、キャリア保持部41は、粘着キャリア3の外周部の複数個所(図では右奥を代表して例示)を上下面から狭持する構成を例示する。
【0025】
搬送ロボット42は、キャリア保持部41を所定の方向に移動させ、所定の位置で静止させるものである。
具体的には、搬送ロボット42は、多軸アクチュエータで構成されており、キャリア保持部41をXYθ方向に移動させたり、Z方向に昇降させたり、所定の位置で静止させたりする構成をしている。
【0026】
レーザ照射部5は、保持層Hに向けてレーザビームLを照射し、除去対象チップCbと保持層Hとの保持力を、除去対象チップCbと粘着キャリア3との粘着力よりも弱めるものである。
具体的には、レーザ照射部5は、除去対象チップCbにレーザビームLを照射し、除去対象チップCbを透過したエネルギーによって、その下層にある保持層Hの表面をアブレーションすることで、界面E1にはたらく保持力を低下させるものである。
より具体的には、レーザ照射部5は、レーザ発振器51、ビーム走査部52等を備えている。
【0027】
レーザ発振器51は、レーザビームLを出力するものである。
具体的には、レーザ発振器51は、制御部9からの制御信号に基づいてレーザビームLのパワーや照射ON/OFFが制御される。
より具体的には、レーザ発振器51は、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)であるレーザビームLを出力するもの(グリーンレーザと呼ばれる)が例示できる。このレーザビームLの波長は、除去対象チップCbが厚みの薄い半導体材料であれば、エネルギーが透過し、保持層Hの表面がアブレーションされて、界面E1にプラズマ又はガスを発生させることができる。そうすることで、除去対象チップCbが基板Wから勢いよく飛び出す力がはたらき、除去対象チップCbと保持層Hとの界面E1にはたらく保持力が低下する。
【0028】
ビーム走査部52は、レーザビームLの照射位置を変更するものである。具体的には、ビーム走査部52は、ミラー52Mと、ミラー52Mの回転角度を変更するガルバノスキャナ52Sと呼ばれる機構を備えたものが例示できる。より具体的には、ビーム走査部52は、基板W上に保持された複数チップCのうち、除去対象チップCbが配置されている範囲をカバーするように2組備えられており(図では1組のみ例示)、レーザビームLの照射位置をXY方向に変更できる。
【0029】
制御部9は、チップ除去装置1の各部を制御するものである。
具体的には、制御部9は、下記の機能を有している。
・上流工程の検査装置等から直接またはホストコンピュータを介して、除去対象チップCbの配置情報Jを取得する。
・基板保持部2の切替バルブを制御して、基板Wを保持したり、保持を解除する。
・粘着キャリア当接部4のキャリア保持部41を制御して、粘着キャリア3を把持したり、把持を解除する。
・粘着キャリア当接部4の搬送ロボット42を制御して、粘着キャリア2を搬送・排出したり、粘着キャリア2と基板Wとの隙間Gを調節したりする。
・配置情報Jと、撮像カメラ43から取得したアライメントマークMを含む画像とに基づいて、基板W上のどの位置にレーザビームLを照射するか演算する。
・レーザ照射部5のビーム走査部52に対して制御信号を出力し、レーザビームLの照射方向を決定・変更する。
・レーザ照射部5のレーザ発振器51に対して、レーザビームLを照射するための制御信号を出力する。
より具体的には、制御部9は、コンピュータとその実行プログラムで構成されている。
【0030】
[動作フロー]
以下に、上述のチップ除去装置1を用いて、基板W上の除去対象チップCbを取り除くチップ除去方法について、動作フローを例示しつつ詳細な手順の説明を行う。
【0031】
図2は、本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。
【0032】
図3は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。図3(a)~(d)には、本発明に係るチップ除去装置1を用いて除去対象チップCbを取り除く様子が、段階的に示されている。
【0033】
先ず、基板W上に保持層Hを介して保持されているチップCのうち、除去対象チップCbがどこに配置されているかを示す配置情報Jを取得する(ステップs1)。
【0034】
続いて、基板Wを基板保持台2に載置して保持する(ステップs2)。
【0035】
そして、基板W上に付されたアライメントマークMを読み取り、粘着キャリア3と除去対象チップCbが所定の隙間Gを隔てて対向配置されるように、基板Wをアライメントする(ステップs3:図3(a)参照)。
【0036】
そして、粘着キャリア当接部4の昇降機構を制御して、粘着キャリア3を除去対象チップCbに当接させる(ステップs4:図3(b)参照)
その後、保持層Hに向けてレーザビームLを照射し、除去対象チップCbと保持層Hとの保持力(つまり、界面E1に作用する結合力)を、除去対象チップCbと粘着キャリア3との粘着力よりも弱める(ステップs5:図3(c)参照)。このとき、基板W上のどの位置にレーザビームLを照射するかは、配置情報Jに基づいて演算する。
【0037】
具体的には、保持層Hを介して基板Wに保持されている除去対象チップCbに、除去対象チップCbと保持層Hとの界面E1をアブレーションさせる波長のレーザビームLを照射する。このとき、除去対象チップCbと保持層Hとの界面E1にはたらく保持力は、除去対象チップCbと粘着キャリア3(より具体的には、粘着層S)との界面E2にはたらく粘着力よりも弱められる。なお、粘着層Sは、レーザビームLを効率よく透過させつつ、耐熱性が高く粘着力が低下しづらい材料(シリコン樹脂など)で構成されているため、除去対象チップCbと保持層Hとの保持力を弱める条件でレーザビームLが照射されても、除去対象チップCbと粘着層Sとの粘着力は保たれる。
【0038】
その後、粘着キャリア3をキャリア搬送部4で基板Wから遠ざけるように離隔させる(ステップs6:図3(d)参照)。このとき、レーザビームLを照射した除去対象チップCbは、保持層Hとの界面E1で分離し、粘着キャリア3(詳しくは、粘着層S)の下面に貼りついた状態で搬送される。一方、レーザビームLが照射されていないチップCは、保持層Hとの保持力が強いため、粘着層Sとの界面E2で分離し、基板W上に残ったままになる。
【0039】
その後、除去対象チップCbが貼り付いた粘着キャリア3を回収する(ステップs7)。
【0040】
そして、別のエリアを処理するかを判定し(ステップs8)、処理する場合は上述のステップs3~s7を繰り返す。一方、別のエリアを処理しない場合は、基板Wを搬出し(ステップs9)、一連のフローを終了する。
【0041】
この様な構成をしているため、本発明に係るチップ除去装置1およびチップ除去方法によれば、基板Wから分離した除去対象チップCbの飛散を防ぎつつ、除去対象チップCbを確実かつ容易に回収できる。
【0042】
[変形例]
[粘着キャリア3、粘着キャリア当接部4について]
なお上述では、チップ除去装置1として、粘着キャリア3として、透明なガラス板Kの表面(チップCと向き合う側)にシリコン樹脂からなる粘着層Sが形成された構成を例示した。また、粘着キャリア当接部4として、粘着キャリア3の外縁や外周部を保持するキャリア保持部41と、搬送ロボット42とを備えた構成を例示した。
しかし、本発明を具現化する上で、粘着キャリア3や粘着キャリア当接部4は、この様な構成に限らず、種々の変形例を選択しうる。例えば、下述のような構成のチップ除去装置1Bとしても良い。
【0043】
図4は、本発明を具現化する形態の別の一例の全体構成を示す概略図である。図4には、本発明に係るチップ除去装置1Bの概略図が示されている。
【0044】
具体的には、チップ除去装置1Bは、基板保持台2、粘着キャリア3B、粘着キャリア当接部4B、レーザ照射部5、シート搬送部6、制御部9B等を含んで構成されている。
なお、基板保持台2、レーザ照射部5は、上述のチップ除去装置1に備えられた構成を概ね同じため、詳細な説明は省略する。
【0045】
粘着キャリア3Bは、粘着キャリア3と同様、除去対象チップCbを回収するものである。
具体的には、粘着キャリア3Bは、基板Wから分離させた除去対象チップCbを貼り付けて、外部へ排出するものである。
より具体的には、粘着キャリア3Bは、可撓性を有するシート状の粘着シートFを含んで構成されており、粘着シートFの表面(チップCと向き合う側)に粘着層S(シリコン樹脂等)が形成されている。
【0046】
シート搬送部6は、除去対象チップCbの上方にシート状の粘着キャリア3Bを搬送するものである。
具体的には、シート搬送部6は、除去対象チップCbが貼り付いた粘着シートFを巻出(排出とも言う)し、除去対象チップCbが貼り付いていない粘着シートFを基板Wの上方に配置(供給とも言う)するものである。
より具体的には、シート搬送部6は、巻出ロール61、巻出駆動部62、ガイドローラ63、巻取ロール66、巻取駆動部67、ガイドローラ68等を備えている。
【0047】
巻出ロール61は、粘着キャリア3Bが巻き付けてあり、回転しながら粘着キャリア3Bを巻き出して供給するものである。
【0048】
巻出駆動部62は、巻出ロール61を所定の回転速度で回転させて粘着キャリア3Bをα方向に巻き出すものであり、回転モータやクラッチ等を備えている。
【0049】
ガイドローラ33は、巻出ロール61から供給された粘着キャリア3Bの搬送方向を変更し、基板Wとその上を通過する粘着キャリア3Bとの距離を一定に保つするものである。
【0050】
巻取ロール66は、回転しながら粘着キャリア3Bを巻き取り、貼り付いた除去対象チップCbを回収するものである。
【0051】
巻取駆動部67は、巻取ロール66を所定の回転速度でα方向に回転させるものであり、回転モータやクラッチ等を備えている。
【0052】
ガイドローラ68は、基板Wとその上を通過する粘着キャリア3Bとの距離を一定に保ちつつ、巻取ロール66に巻き取られる粘着キャリア3Bの方向を変更するものである。
【0053】
粘着キャリア当接部4Bは、粘着キャリア当接部4と同様、除去対象チップCbに粘着キャリア3Bを当接させるものである。
具体的には、粘着シート当接部4Bは、シート搬送部6で供給された粘着キャリア3Bを除去対象チップCbに近づけ、その上面に当接させるものである。
より具体的には、粘着シート当接部4Bは、ガイドローラ63,68をZ方向に移動させる昇降機構を備えている。
【0054】
昇降機構は、ガイドローラ63,68の回転軸の両端を、Z方向に移動させ、所定の高さで静止させるものである。具体的には、昇降機構は、ボールネジと回転モータを組み合わせた電動アクチュエータや、エアの圧力で往復動作するエアシリンダ等を備えた構成をしており、制御部9Bから出力される制御信号に基づいて駆動される。
【0055】
制御部9Bは、チップ除去装置1Bの各部を制御するものである。
具体的には、制御部9Bは、上述の制御部9と同様の機能に加え、下記の様な機能を有している。
・粘着キャリア当接部4Bを制御して、ガイドローラ63,68をZ方向に移動させる。
・シート搬送部6を制御して、粘着キャリア3Bを搬送・静止させる。
【0056】
なお、粘着キャリア当接部4Bの昇降機構が上昇位置にあるとき、粘着キャリア3BとチップCや除去対象チップCbとの間には所定の隙間がある。一方、粘着キャリア当接部4Bの昇降機構が下降位置にあるとき、粘着キャリア3Bは、粘着層SがチップCや除去対象チップCbと当接して粘着力がはらたく。
【0057】
[粘着キャリア当接部の変形例]
なお上述では、粘着キャリア当接部4Bとして、粘着キャリア3Bの搬送経路に配置されたガイドローラ33,38をZ方向に移動させる昇降機構を備え、除去対象チップCbに粘着キャリア3Bを当接させる構成を例示した。
【0058】
しかし、本発明を具現化する上で、フィルム状の粘着キャリア3BをZ方向に移動させる機構としては、この様な構成に限らず、種々の変形例を採用しうる。例えば、下述のような構成のチップ除去装置1Cとしても良い。
【0059】
図5は、本発明を具現化する形態のさらに別の一例の要部を示す概略図である。
図5(a)には、粘着キャリア3Bを上昇位置に移動させた状態が示されている。
図5(b)には、粘着キャリア3Bを下降位置に移動させた後、除去対象チップCbにレーザビームLを照射している状態が示されている。
【0060】
具体的には、チップ除去装置1Cは、基板保持台2、粘着キャリア3B、粘着キャリア当接部4C、レーザ照射部5、シート搬送部6、制御部9C等を含んで構成されている。
なお、基板保持台2、粘着キャリア3B、レーザ照射部5、シート搬送部6は、上述のチップ除去装置1Bに備えられた構成を概ね同じため、詳細な説明は省略する。
【0061】
粘着キャリア当接部4Cは、粘着キャリア当接部4Bと同様、除去対象チップCbに粘着キャリア3Bを当接させるものである。
具体的には、粘着シート当接部4Cは、シート搬送部6で供給された粘着キャリア3Bを除去対象チップCbに近づけ、その上面に当接させるものである。
より具体的には、粘着シート当接部4Cは、粘着キャリア3Bの上方(つまり、基板Wとは反対側)に配置した板状部材45と、板状部材45を下方(つまり、粘着キャリア3B側)に移動させる昇降機構46を備えている。
【0062】
板状部材45は、レーザビームLのエネルギーを透過させつつ、フィルム状の粘着キャリア3BをZ方向に移動させるものである。
具体的には、板状部材45は、所定の厚みを有しつつ、下面側(粘着キャリア3Bと向き合う側)が平坦で透明なガラスやサファイヤ等で構成されている。
【0063】
昇降機構46は、粘着キャリア3Bを上昇位置ないし下降位置に移動させるものである。具体的には、昇降機構46は、制御部9等から出力された制御信号を受け付け、連結金具等を介して板状部材45が取り付けられた可動部を上下に移動させるものである。
より具体的には、昇降機構46は、1軸のアクチュエータで構成され、ボールネジと回転モータを組み合わせたものやエアシリンダ等が例示できる。
【0064】
制御部9Cは、チップ除去装置1Cの各部を制御するものである。
具体的には、制御部9Cは、上述の制御部9Bと同様の機能に加え、下記の様な機能を有している。
・粘着キャリア当接部4Cを制御して、板状部材45をZ方向に移動させる。
【0065】
なお、粘着キャリア当接部4Cは、昇降機構46が上昇位置にあるとき、板状部材45と粘着キャリア3Bとの間には所定の隙間G1があり、粘着キャリア3BとチップCや除去対象チップCbとの間には所定の隙間G2がある。一方、昇降機構46が下降位置にあるとき、粘着キャリア3Bは、粘着層SがチップCや除去対象チップCbと当接して粘着力がはらたく。
[粘着キャリア3について]
なお上述では、除去対象チップCbの上方に粘着キャリア3,3Bを配置させる際、基板Wに付されたアライメントマークMが露出するように配置させる構成を例示した。
しかし、粘着キャリア3,3Bが透明で薄い材料で構成されているなど、アライメントマークMの識別や位置検出に影響がなければ、アライメントマークMの上に粘着キャリア3,3Bが配置されても良い。
【0066】
[粘着キャリア当接部4について]
なお上述では、粘着キャリア当接部4として、粘着キャリア3の外縁や外周部を保持するキャリア保持部41と、搬送ロボット42とを備えた構成を例示した。
しかし、粘着キャリア当接部4は、この様な構成に限定されず、種々の変形例を採用し得る。例えば、キャリア保持部41として、粘着キャリア3の外周部の複数箇所を上下面から狭持する構成や、基板上面を吸引吸着して搬送する構成であっても良いし、ローラコンベアによる搬送や、ムービングビームによるシャトル搬送等であっても良く、水平方向に粘着キャリア3を供給・排出させたり、Z方向に昇降させてたりする機構を備えた構成であれば良い。
【0067】
[レーザ照射部5について]
なお上述では、レーザ照射部5として、YAGレーザの第2高調波を出力するグリーンレーザを例示し、波長532nmのレーザビームLを出力する構成を例示した。波長532nmのレーザビームLであれば、粘着キャリア3のガラス基板Kや粘着層Sのシリコンを効率よく透過する一方で、導電性樹脂からなる保持層Hに対しては高い吸収特性を示す。つまり、保持層Hの表面がアブレーションされて、除去対象チップCbと保持層Hとの界面E1にはたらく保持力が著しく低下する一方で、除去対象チップCbと粘着キャリア3との界面E2にはたらく粘着力は保たれているので、除去対象チップCbの分離・回収が容易となり、好ましい。
【0068】
しかし、本発明を具現化する上では、レーザビームLの波長は、除去対象チップCbの下層にある保持層Hの表面をアブレーションして、界面E1にプラズマやガスを発生させる波長に限定されず、当該界面E1に衝撃を与える波長であっても良い。例えば、レーザビームLのエネルギーを除去対象チップCbの表面や内部で吸収させて、除去対象チップCbを急激に振動させるなどして、当該界面E1に衝撃を与える。そうすることで、界面E1にはたらく保持力が低下し、転写キャリア3を基板Wから離隔させて、除去対象チップCbを保持層H1から分離することが出来る。この手法であれば、レーザビームLのエネルギーが除去対象チップCbを透過しづらくても、除去対象チップCbの分離が可能である。なお、粘着キャリア3のガラス基板Kや粘着シートFの粘着層Sを構成する材料が異なれば、これら材料の光透過特性や耐熱温度に応じて、レーザビームLの波長を変更しても良い。
【0069】
なお上述では、レーザ照射部5のビーム走査部52として、ガルバノスキャナ52Sを備えた構成を例示した。しかし、ビーム走査部52は、この様な構成に限らず、ポリゴンミラーや音響光学変調器等を備えた構成であっても良い。或いは、ビーム走査部52に代えて基板保持台2をXY方向に移動させる機構を備えても良い。
【0070】
[チップ検査部7について]
なお上述のチップ除去装置1,1B,1Cは、上述の構成に加え、チップ検査部7を備えた構成であっても良い。
【0071】
チップ検査部7は、レーザ照射された除去対象チップCbが、基板Wから分離して粘着キャリア3に貼り付いているかを検査するものである。
具体的には、チップ検査部7は、粘着キャリア3に貼り付している除去対象チップCbの数をカウントしたり、位置を検出したりするものである。
より具体的には、チップ検査部7は、回収チップ検出部、検査部等を備え、例えば図1,4中の破線で示す位置に配置されている。
【0072】
キャリア回収部は、レーザビームLが照射されて除去対象チップCbが貼り付いた粘着キャリア3を回収するものである。
具体的には、キャリア回収部は、粘着キャリア3を基板Wから遠ざけ、別の場所(例えば、廃棄場所や搬出用コンベア等)に移動させるものである。
より具体的には、キャリア回収部は、チップ除去装置1における粘着キャリア当接部4の搬送ロボット42や、チップ除去装置1Bにおけるシート搬送部6と兼用する。
【0073】
回収チップ検出部は、粘着キャリア3上の除去対象チップCbの有無および/または位置を検出するものである。
具体的には、回収チップ検出部は、X方向に所定の長さを有する帯状の光を発するバー照明と、X方向に多数の受光素子が並んだラインセンサを備えている。
【0074】
検査部は、回収チップ検出部で検出された除去対象チップCbについて、レーザ照射部5でレーザビームLを照射したものと数および/または位置が一致するか検査するものである。
具体的には、検査部は、回収チップ検出部で検出した除去対象チップCbの数および/または位置と配置情報Jとを比較して、基板W上の除去対象チップCbが正しく分離されて粘着キャリア3,3B側に転写されているかを検査する。
より具体的には、検査部は、コンピュータとその実行プログラムで構成されており、制御部9の一部に組み込まれいる。
【0075】
本発明に係るチップ除去装置1,1B,1Cは、この様な構成のチップ検査部7を備えていれば、除去対象チップCbが確実に回収できているか否かについて、粘着キャリア3の搬送中に検査(いわゆる、インライン検査)が行えるので、好ましい。
【0076】
なお上述では、回収チップ検出部は、バー照明とラインセンサを備えた構成を例示した。この照明とセンサは、粘着キャリア3を挟むように上下面側に離れて配置された透過式であっても良いし、片方に配置された反射式であっても良い。
【0077】
この様な構成であれば、搬送キャリア3が通過する狭い隙間にバー状の照明とセンサを配置できるので、装置が省スペース化でき、好ましい。
しかし、回収チップ検出部は、バー照明とラインセンサに限らず、エリアカメラを用いても良い。また、照明やセンサは、搬送キャリア3を装置外に搬出させる際の待機場所や搬送経路等に配置して検査する構成であっても良い。
【0078】
[除去対象チップCbの回収について]
なお上述した除去対象チップCbの回収は、粘着キャリア3に除去対象チップCbが貼り付いた状態で装置外に搬出して廃棄しても良いし、除去対象チップCbが貼り付いたフィルム状の粘着キャリア3Bを巻取ロール26に巻き付けてロールが満杯になった後廃棄しも良いし、粘着キャリア3,3Bの搬送中にヘラ状部材(スクレーパー)等で除去対象チップCbを掻き落とし、粘着キャリア3,3Bを再利用する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0079】
1,1B,1C チップ除去装置
2 基板保持台
3,3B 粘着キャリア
4,4B,4C 粘着キャリア当接部
5 レーザ照射部
6 シート搬送部
7 チップ検査部
9,9B,9C 制御部
41 キャリア保持部
42 搬送ロボット
45 板状部材
46 昇降機構
51 レーザ発振器
52 ビーム走査部
52M ミラー
52S スキャナ
61 巻出ロール
62 巻出駆動部
63 ガイドローラ
66 巻取ロール
67 巻取駆動部
68 ガイドローラ
W 基板
C チップ
Cb 除去対象チップ
H 保持層(基板側:導電性樹脂、はんだ等)
S 粘着層(粘着キャリア側)
K ガラス基板
G 隙間
J 除去対象チップの配置情報
L レーザビーム
E1 界面(基板側)
E2 界面(粘着キャリア側)
図1
図2
図3
図4
図5